金融審議会「第一部会」第26回会合議事録



日時:


平成12年6月16日(金)10時03分〜12時01分
場所: 大蔵省本庁舎(3階)第二特別会議室




蝋山部会長 おはようございます。ただいまから第26回の金融審議会第一部会を開催いたします。
 委員の方、あと3人お見えになる予定ですが、お見えになっていませんが、始めた方がいいかというふうに思います。
 昔もっぱらこの「馬の部屋」というのは、こういう審議会ですごく使った部屋なんですけれども、それだけ審議会が部会にせよ大きなサイズになって、この部屋ではもう精いっぱいだと、あと三、四人お見えになるともうだめだということで、最近余り使いませんでした。昔に比べてみると大分、小さな政府の中での大きな審議会ということになっているかもしれませんね。
 本日は初めに、「証券決済システムの改革に関するワーキング・グループ」におきまして、昨年10月から検討をお願いしておりました証券決済システムの改革について、ワーキング・グループからの御報告を頂戴するということにしたく思います。本日はこの報告書に関します御説明を、このワーキンググループの座長を務められた池尾委員にお願いするということで出席をしていただいております。どうもありがとうございます。池尾さんは第二部会の委員なんですが、今日はわざわざ御出席いただきました。
 後半では、前回十分な時間がありませんでしたけれども、御議論いただきました、「日本版金融サービス法」という資料を配付いたしましたけれども、これをもとに審議会のこれまでの検討結果を取りまとめた答申案を一応作成しておりますので、これについて御討議をいただくと。これが後半のテーマであります。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。
 初めに、証券決済システムの改革に関するワーキング・グループより提出されました報告書につきまして、まず事務局から説明を頂戴して、続いて座長である池尾委員からの補足的な御説明を頂戴したいと、このように考えます。
 まず事務局から、松川さん、よろしくお願いいたします。


松川市場課長
 市場課長の松川でございます。
 証券決済システムの改革に関するワーキング・グループにおきまして、このたび「21世紀に向けた証券決済システム改革について」と題する報告書がまとめられております。
 お手元の資料26−1、26−2がございまして、26−2がこの報告書の本体でございまして、26−1がそのポイントをまとめたものでございます。
 説明の便宜上、ポイントの2枚紙の方を中心に、適宜本体の部分を引用しながら御説明させていただきたいと存じます。
 まず、この証券決済システム改革では何を目標にしてやっていくかという考え方でございます。資料26−1の1ページ目でございますけれども、決済期間の短縮化を図る。現在、約定日から起算して4日後、T+3になっておりますけれども、それをできるだけ短くしていく、それから、DVPと言いまして、証券の引渡しと資金の支払の同時履行を確保する仕組みを実現していく、これらによりまして、証券決済の安全性、効率性、利便性の向上を図っていく。そして、そういうことが証券市場の機能を十分に発揮するとともに、証券市場の国際競争力の強化につながると、そういう考え方でございます。この点は本体の方の1ページ以下の「はじめに」のところ、それから、6ページ以下の「改革の目標」というところに諸外国取組みの状況なども含めながら、縷々書いているところでございます。
 この2枚紙の2ページ目の(参考)を御覧いただきたいと思いますが、決済期間の短縮化というのは、先ほど申し上げましたように、現在がT+3ということで、取引日から起算して4日後に証券の引渡しと資金の支払が行われておりますけれども、とりあえず現在のところの目標としては、これを翌日に決済すると、翌日に権利の移転と資金の支払をしていこうと、そうすることによって、効率性、利便性が向上する、さらには、取引日と決済日の間が短くなることによりまして、未決済残高が少なくなっていくということで、未決済残高が積み上がりますと、それに伴って投資者の信用リスクでありますとか、あるいは市場の変動リスクがどうしても生ずるわけですけれども、リスクの軽減、低減に資するという効果が考えられているわけであります。
 それから、下の方の証券の引渡しと資金の支払の同時履行につきましても、決済に伴うリスクを低減させる意味で非常に不可欠の条件とされておりまして、国際的標準でもこれをあらゆる取引において実現していくことが求められているわけでありますが、現状のところでは国債及び社債については実現済みであります。さらに国債につきましては、2001年1月によりリスク低減に資する形での即時グロス決済というやり方でのDVPが実現予定になっております。また、東証、大証におきましての株式取引につきましては、2001年前半にDVPが実現予定になっておりますけれども、株式取引全般、さらには転換社債等についてはDVPは実現のめどがまだ立っていないということですので、これをいち早く取り入れていこうというのが目標でございます。この効果でございますけれども、同時履行を確保するということですので、資金が支払われても証券が引き渡されないなどのリスクが回避されるということでございます。
 1ページに戻っていただきますが、ねらいということで共通認識はございました。そこで、全体として証券決済の安全性、効率性、利便性の向上を図っていくために何をやっていかなければいけないかということでありますけれども、報告書では問題点として4つの点を指摘しております。1つは、証券決済制度の分立ということで、証券の種類ごとに異なるルールによって決済が行われている。あるいはそういうことが起因して、証券の種類ごとに異なる機関によって決済が行われているということで、様々な非効率が生じているというふうに言われております。
 2ページ目にまた戻っていただきまして、我が国の主な証券の決済方法(現状)とありますけれども、国債は日本銀行がやっておりまして、日銀ネットによる口座振替の振決方式、あるいは登録国債という形で決済が行われていると。社債は、登録機関がやっておりますけれども、それを効率化するために債券決済ネットワークというのが移転登録という形で仲介機関に入っております。株式につきましては、証券保管振替機構がやっておりまして、証券保管振替機構のシステムによる口座振替というやり方、転換社債は日本証券決済がやっているなどの異なった仕組みによって行われているということで、証券を横断的に行うような仕組み、あるいは決済機関が存在していれば不要と考えられるような重複投資を迫られるおそれなど、いろいろ問題が生じているところでございます。
 それから、2番目の問題は、ペーパーレス化が遅れているということで、権利の移転等によって券面の使用が多いということでございます。現在、我が国の法律では、できるだけ券面使用を少なくするために、方法として保管振替法ということで、振替決済のための法律、それから社債等登録法ということで、登録という形で券面をなくしていくというやり方がありますけれども、それぞれ問題を抱えている。保管振替法については、1つはまだまだ預託率が低いということで、完全には利用されていないという問題があります。それから、保管振替法で扱う有価証券の対象範囲が必ずしも全ての有価証券が対象になっているわけではないという問題があります。もう一つの社債等登録法の方は、記番号管理などと言われておりまして、券面の特定性を維持した形で、どの券面を誰が持っているかということを維持するやり方で管理されていることで効率が悪いという問題が指摘されております。
 3番目の問題は、電子化の遅れでございます。もちろん決済に関連する事務処理も部分的には電子化されておりますけれども、人手による処理と電子的な処理が混在しているということ、それから、同じ電子的な処理についても、担い手等によりまして異なる様式になっているということで、効率が悪いという問題が指摘されております。様式とも標準化の必要性が指摘されているわけでございます。
 それから、先ほど言いましたように、一部の証券におきまして、DVP同時履行が未実現になっているという問題が指摘されております。
 これらの問題点を解決していくために改革をやっていこうということでございます。
 恐縮でございますが、本文の7ページを御覧いただきたいと思いますが、このような問題点を解決しながら、先ほど言った証券決済の安全性、効率性、利便性を向上するためにやっていこうということですけれども、7ページの (2)に改革の視点といたしまして、1番目に、利用者の立場に立った改革を進めていく、それから2番目に、情報通信技術等の進展に対応した改革を進める、3番目には国際標準に沿った改革を進める、4番目には競争可能性に配意した改革を進めるという考え方がとられております。そういった視点も踏まえながら、具体的に改革の柱が以下の本文に記載されておりますが、主な柱を2枚紙の方に戻っていただきまして説明させていただきます。
 改革の大きな柱は2つでございます。1つは統一的な証券決済法制の整備を図っていくということで、証券の種類等の如何にかかわらず共通のルールで決済していくものを整備していこうということでございます。その際、共通のルールの基準としては、流通段階におけるペーパーレス化を拡充していこうという考え方でございます。このペーパーレス化につきましては、2つのレベルがありまして、まず1つは現物の券面を一旦預かったままで券面を動かさないで、あとは帳簿上の記録によって権利移転をやるということで効率化をする仕組みとして保管振替法というのがあるわけですけれども、これをもう少し使いやすくするということで、具体的には対象証券を幅広い有価証券にしていくなどの改善をしていこうと。もう一つは、券面を発行あるいは印刷するということではなくて、権利の発生段階から券面をなくしていく形で法制を整備できないかということで、無券面化法制の整備を図っていこうということでございます。そして、その下にありますのは社債の取り扱いですけれども、社債については現在、社債等登録法に基づくものが主流になっておりますけれども、社債等登録法を廃止しまして、新たな法制度に移行させていこうという考え方になっております。
 権利の発生の段階から券面をなくす方法につきましては、具体的には2つの考え方が指摘されております。恐縮ですが、本文の9ページの下の方、B.無券面化法制の整備のところをちょっと御覧いただきたいと思います。
 2つございまして、1つは現在の保管振替決済制度上のみなし預託制度を拡充するということでございまして、一言で言いますと、現物の紙のある券面を印刷するという手続をとることなく、預託されたものとみなすという考え方で整理していくという考え方であります。現在も株券につきましては、株券の券面を持たないことができるという、株券の不所持制度とみなし預託を組み合わせた形で、券面を発行しないでも保管振替機関が預かった形にすると、そのことによって、あたかも現物の紙を引き渡すのと同じような形で、権利の移転の効果を考えていくという考え方がとられております。それを株券だけではなくて、社債券等にも適用範囲を拡大していこうという考え方であります。従いまして、これは既存の制度との関係を強く意識した考え方になっております。他方、みなしということですので、みなしによります法律上の解釈について、わかりにくいという指摘も一方ではございます。
 もう一つの考え方は、次のページ、10ページでございますけれども、電子登録による振替決済制度を整備するということで、電子的な登録によってペーパーレス化、無券面化を実現するという方式でありまして、電子的な登録によって権利の移転等を考えていこうということでございます。したがって、この下にありますように、この場合には券面の存在を前提として定められている権利の移転等に関する商法の特例を設けるということでございます。
 そういう2つの考え方があります。それのいずれによるかということにつきましては、下のパラグラフに書いてありますけれども、既存の制度からの円滑な移行に配慮しつつ、関連する諸制度との関係を整理しながら、可能な方式・有価証券から法制整備を行っていくことが適当であるという考え方でございます。これは、法制整備全体の整合性を確保しながら、できるだけ速やかにペーパーレス化を図っていこうという考え方でございます。可能な方式からやっていく、あるいは究極的には全ての有価証券について共通のルールが適用されることが望ましいわけでありますけれども、有価証券については権利の形態がそれぞれ異なる面もありますので、できるところから整備をやっていこうという考え方でございます。
 以上、ややテクニカルな部分がございましたけれども、報告書における無券面化の法制の整備の考え方であります。
 それでは、2枚紙の方に戻っていただきまして、もう一つの大きな課題でございます。包括的な証券決済機関の実現を図っていこうということで、先ほど申し上げましたように、証券の種類等の如何にかかわらず統一的なルールで証券決済法制の整備をする。その整備をされますと、欧米諸国と同様に1つの決済機関が多様な証券を扱うことができるようになる。そうしたことを通じて、多様な証券を取り扱う証券決済機関が実現されることが望ましい、としております。他方におきましては、そうした場合において、絶えずサービスの向上に向けての努力が続けられるインセンティブがよく働くように、証券決済機関のガバナンス機能を充実したり、あるいは決済機関の競争可能性を確保することが大事であるとされております。これらの観点から、現在の保管振替機構の運営につきましても、組織形態のあり方などを含めて幅広い観点から運営のあり方について見直しを図るべきであるとしております。
 その他の問題ですが、これは問題点のところにありましたように、電子化を推進していく、DVPを実現していくということでございまして、1つは取引報告書等につきまして、現在売買内容を確認するために書面を交付することになっておりますけれども、機関投資家などが大量取引をする場合にいちいち書面でやるということであると非効率でありますので、電子的な扱いも可能にしていけないかということでございます。あと、商品横断的な照合システムの構築でありますとか、フェイル・ルールといいまして、決済日に債務不履行が発生した場合に事後的な処理のルールをあらかじめ定めておこうというようなことが必要であるとされております。
 最後に、改革の進め方でありますけれども、決済期間の短縮化やDVP実現のための方策は速やかに検討して、速やかに実施していくべきであるとしております。もう一つ、社債等決済制度のあり方については、新たな制度に移行することになっておりますけれども、数年後には新たな制度に移行できるように、これも速やかに法整備を図るべきであるとされております。それから、政府における法制整備とあわせて、市場関係者の主体的、積極的な改革努力が不可欠でありまして、市場慣行等の見直しを進めてもらうことが大事であるという指摘がされております。
 以上が、非常に簡単でございましたけれども、証券決済システムの改革に関するワーキンググループの報告書の骨子でございます。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、池尾委員の方から補足的な説明なりを頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。


池尾委員 内容に関しましては、今、松川さんの方から手際よく御説明いただきましたので、内容そのものを補足するということは特にないんですが、ワーキンググループをやってきまして感じたような感想といいますか、そういうのを大きく3つだけ述べさせていただきたいと思います。
 1番目は、私自身は単にタイムキーパーをやっていただけで、ここでも岩原先生とか岩村先生とか、柳川先生、それからまだ来られていませんが神田先生とか、そういう非常に有力な論客の方に参加していただきまして、法制度や決済機関のあり方等について、実務的な問題点も踏まえた上で精力的に検討していただいたということで、それを通じて、改めて証券市場が本来の機能を十分に発揮するためにフィジカルな部分も含めてインフラの整備をきちっとやって、この場合ですと安全で効率的な決済の仕組みというのを作らないと駄目なんだということについて、改めて再認識し、関連した論点についての認識が関係者間で深まったのではないかというふうに思います。その点、ワーキンググループに参加していたただいた方々に感謝をしたいというのが1点目です。
 それから、2点目は、商法等との関係がありまして、詰めなければならない論点はまだ残されているんですが、大きな方向性というのはかなり見えてきたのではないかというふうに思っております。その方向性は3つでありまして、1つは有価証券の種類とか、決済機関の担い手にかかわらず、振替決済の仕組みをベースとする統一的な共通の証券決済法制を作らなければいけない、そういう統一的な証券決済法制が必要であるという方向性が確認されたということと、それから、ペーパーレス化といいますか、券面をなくすための法制を新たに整備する一方で、現在の社債決済制度は廃止をする、社債決済制度に関しては新たな法制に移行させるということが方向性として確認されたと思います。それから、いろいろな有価証券を縦割りではなくて、横断的に、包括的に取り扱う証券決済機関の実現を目指すわけですが、それと同時に、証券決済機関が絶えずサービスの質を高めようとする、あるいはイノベーションをやっていこうとするインセンティブが働くように、証券決済機関に関するガバナンス機能の拡充でありますとか、組織運営等のあり方について、さらに検討していかなければいけないという点も方向性として確認されたというふうに思います。
 3番目ですが、今申し上げたことはそれで非常に結構なことで、現在の欧米諸国の動向にも沿ったようなものとなっていると思うんですが、証券決済システムの改革もそうですし、ちょっと前に私も少し関わらせていただきましたが、証券取引所の株式会社化の話なんかもそうでしたけれども、諸外国の動向がほぼ固まって、立ち遅れがはっきり見えてきた段階になって、キャッチアップで急いで頑張ってやるという感じの、後追い型の改革というのを繰り返してきている。そこからまだ脱却していないという点がやはり問題であって、今後はそういうキャッチアップ型の改革に終始するのではなくて、先取り的な改革が行われるような、そういうことがぜひとも必要で、そのためにも市場関係者の方々が主体的、積極的に頑張っていただくということが基本にならないと、なかなかそういう形にはならないのではないか。もちろん大蔵省といいますか、7月から金融庁かもしれませんが、政府・行政レベルがバックグラウンドできちっとしたサポートをする、必要な法制整備についての取組みをするということは当然のことでありますが、やはり基本は市場参加者のイニシアチブで改革というのは進めていかないと、どうしても後追いになるのではないかということを感じた次第であります。
 一応以上です。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局からの報告並びに池尾委員からの補足的な御感想といいますか、御印象を含めて全体的に御意見なりあるいは御質問なりを頂戴したいと思いますが、いかがでございましょうか。岩原さん、岩村さん、池尾さんとは違った感じがもしもあれば御紹介ください。
 岩村さん、どうですか。


岩村委員 現在の状況の中で現実的にできること、しかも、今の日々行われている証券決済を壊さないで移行できる手段について、随分大きな意見の食い違いも最初はあったように思うんですが、実務的に詰めていくうちに、やれることとやれないこと、それから考えなければいけないことについて、それなりにというんでしょうか、よい落としどころに来たように私は思っております。
 いずれにしても、このワーキングで考えたことは、短期的にできるだけ早く効率的な決済制度を作ろうということであったと思います。そのために必要な論点は相当の部分が出たと思います。
 長い目で議論しますと、これも何度か出た点でもありますけれども、例えば証券を預かっているという言い方をするわけですが、預かっているというのはどういう信任関係に基づいて預かっているのかというようなことは、やはり本来であれば、時間がもう少し許せば、そこも考える必要はあるんだと思うんです。例えばフェイル・ルールという話も出ていますけれども、フェイルというのは物を渡せないわけであります。渡せなくてどうするかというと、お金も止めて物も止めるわけでありますが、ではお金を止めて物も止めるというのは、預けたお客さんと預かった金融機関との間で一体どういう法律関係に基づいて止めているのかというのは、本当はまだ議論すべきことが多いと思います。それは第一部会で議論されている、またこれからも議論されなければいけない問題の中にもはまってくる話でありまして、そういうことは意識しながら、差し当たり──差し当たりというのもおかしいですけれども、喫近の課題について、座長の努力、事務局の努力もありまして、よくまとめていただいていると思っております。


蝋山部会長 岩原さん、どうですか。


岩原委員 松川課長からの御説明、あるいは池尾座長の御指摘でもうほとんど問題は尽きていると思いますし、それから、今、岩村委員がおっしゃったこともいずれもそのとおりだと思います。池尾座長が最後におっしゃいました市場関係者の御努力というのは非常に大事だと思っていまして、実はこのワーキンググループも、正直申しまして、開始したときはここまでの成果を上げることができると余り期待していなかったんですけれども、期待以上の大きい成果が上げられましたのは、何よりも市場関係者の方々が大変努力してくださって、お互いに大きい目的のために譲るところは譲って協力していただいたということが非常に大きかったと認識しております。今後とも市場関係者の方々に御協力をぜひお願いしたい。我々法律家は制度の枠組みは作りますけれども、中身を埋めて、そして実際に運営していくのは市場関係者の方々ですので、今後ともまず御協力をよろしくお願いしたいというのが第1点であります。
 それからもう1点、先ほどの松川課長の御説明にもございましたように、これから先の作業は、商法の改正、それから保管振替決済法の改正、あるいは場合によっては新しい立法という形で全面的な商事法の立法作業に入ることになります。できれば来年の通常国会での成立を目指して、法務当局等もこれから──というか既にかなりの努力もされているところでありまして、我々商法関係者も協力して何とか実現したいと思っております。ただ、これは単に法務省だけの問題ではなくて、保管振替決済法は大蔵省との共管の法律でもありますので、大蔵省、さらにはそれを引き継いだ金融庁においても、ぜひ多大な御協力をいただいて、できれば来年の通常国会で立派な法律を作るということにお力添えを願いたいと思っている次第であります。


蝋山部会長 吉野さん、どうぞ。


吉野委員 感想だけちょっと述べさせていただきます。
 先ほど池尾さんが先取り型の改革というふうにお話しして、もうちょっと大きなところがあると、インターナショナルなアスペクトといいますか、こういう決済システムがアジアの市場で使われるような、それくらいの大きな気持ちを持って改革をしていただきたいと思っていまして、アメリカというのは市場の参加者ばかりではなくて、世界の機関というIMFとか世銀がまずそういう音頭をとって、それから政府がそれについて、市場がそれについていって、香港とかシンガポールネットまで作っていこうという形ですので、今後、大蔵省の金融企画局と国際局が金融庁と財務省に分かれてしまいますが、金融庁の中でもそういうインターナショナルなアスペクトでも市場の参加を政府が考えていただけるようなことをぜひお願いしたいと思います。国内で喧嘩しているうちに海外は全部取られてしまうということがないようにぜひお願いしたいと思います。


蝋山部会長 わかりました。そういうことをしておく必要があるでしょうね。
 福間さん、どうぞ。


福間委員 本当に嫌味ではなく、大変であったと思います。いろいろな既得権益をお持ちの方もございましたし、その意味では本報告は1つのブレイクスルーじゃないかと思います。先ほどお話があったように、グローバルな決済システムの整備が進む中で、日本の現状の決済システムは欠陥商品になってしまっている。今回の報告はそのような決済システムの改善というより、変革に近いものを提案されている。こういう形で変革が提案されるのは初めてだと思いますので、お願いしておきたいことは、もう河は渡ったので後は進むだけということ、ノーリターンだという認識を持っていただきたいということです。我々市場参加者も、決済の中核になる機関とともに、この報告書の実現に努力する必要があると思います。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 竹田さん、どうぞ。


竹田オブザーバー もう一人の市場関係者といたしましてお願いしたいと思いますが、民間のイニシアチブによる改革というお話がありましたが、それの例としまして、現在、CP(コマーシャルペーパー)のペーパーレス化、あるいはそれに関連した電子決済を早期に実現したいということで民間の企業ベースで作業をしているわけですが、今回統一的な決済機構というような形でそういう方向にいくということは大きな前進だと思います。しかし、統一的な決済機構を実現するには時間がかかることが予想され、一方CPの電子決済、ペーパーレス化のための作業はかなり進んでおりますから、それが統一的な決済機構の構築のために遅れることがないようにお願いしたいと思います。
 御承知のとおり日本のCP市場はアメリカのCP市場に比べて規模が10分の1ぐらいということに加えて、質的にも遅れております。CPというのは、短期資金調達の重要な手段でありますから、利便性が増して、質、量ともにCP市場がもっと発展させる必要があります。そのためのペーパーレス化、電子決済というのは不可欠なインフラでありますので、その点も提案の中にぜひ盛り込んでいただきたいと思います。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 今の点は、松川さん、前にコマーシャルペーパーのペーパーレス化については御報告も頂戴したと思いますが、何か付け加えることはありますか。


松川市場課長 特段ありませんが、前にも御説明させていただいておりますように、CPのペーパーレス化につきましては、昨年来検討されていまして、方向性が出ておりますので、それに沿ってできるだけ早く具体的な作業ができるように今後とも努力していきたいと思っております。それはそれとしてやっていくと、ただし、全体的な証券決済システムの方向性も見ながらやっていくということでありますけれども、できるだけ早くやっていきたいと思ってございます。


蝋山部会長 2つは矛盾するものじゃないんですね、当然。


松川市場課長 はい。


蝋山部会長 いろいろ御注文が出ましたが、日本銀行として鮫島さん何か、御意見なり、ここで御披瀝できるようなものがございますか。


鮫島日銀参事役 特にあるわけではありませんが、私どもは御承知のように国債の決済を担っているという立場でありますので、先ほどから統一的な決済機構ということが出ておりますけれども、この報告書の主な趣旨は、統一のルールで扱っていくということで理解をしておりますので、私どもは私どもなりに今の振決国債、登録国債の決済について、よりサービスの向上を図っていくということで考えて参りたいと思いますし、取引の利便に資するような改善を図っていきたいというように考えております。
 このあたりはまた市場参加者の方々とよく御相談しながら、この後も進めてまいりたいというように考えております。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 小異を捨てて大同についた結果、当初予測された以上にどうもいい成果が出たという評価も得ていますし、あとは紙の問題ではなくて──いや、紙の問題かな、法律をどういうふうにうまく円滑に改正なり、あるいは新たな法律の作成なりになっていくかという点で、この第一部会としてもそういう具体化の作業が円滑に進むということを期待したいと思いますし、様々な形での支援も惜しまない形でウォッチしたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
 池尾さんを初め、このワーキンググループのメンバーの方々、岩原さん、岩村さん、ほかにも神田さんとか、たくさんの方々がこの部会からもワーキンググループに入っていただきましたが、大変精力的にとりまとめていただきまして、当初、今までの経緯の自然な延長線から言えば、潜在成長率は大変に低いだろうと思ったのが結構高くなったと、どこかである主のジャンピングストーンを踏んだのではないかというふうに思います。そういう点、いい成果が出たということを改めて第一部会を代表して感謝申し上げるとともに、先ほども触れましたように、今後の行政面における法制整備の努力や市場関係者において、これまでの慣行にとらわれないグローバルな面での競争をも視野に入れた市場慣行の見直し、システム構築といったところにぜひ一生懸命取り組んでいただきたいというふうに思います。どうも本当にありがとうございました。
 この報告書につきましては、本日会議の終了後の記者会見で私の方から公表させていただきますとともに、これから審議していただきます6月末をめどに作成・公表が予定されております、大蔵省のもとでの最終的な報告書に添付させていただくという予定でおりますので、お含みおきいただきます。
 関さん、ありますか。


関オブザーバー 先ほどから市場関係者の今後の積極的な努力に期待したいという御発言が幾つかございましたが、この問題につきましては、冒頭の報告書にも書いていただいておりますけれども、金融審議会の議論が始まることを前提に、私どもが呼びかけ人になりまして、市場関係者に広く集まっていただく「証券受渡・決済制度改革に関する懇談会」というのを開きまして、そこである程度の議論の整理をし、そのメンバーがこのワーキンググループ等にも参加をさせていただいて、全体を進めることにある程度お役に立ったと思っております。
 今後でありますが、この懇談会はそのまま残っておりまして、市場関係者の努力を具体的に行う場として、6月中にもここで幾つか指摘されております振替機構のガバナンスの問題も含めて、3つほどワーキンググループを立ち上げてこの問題に引き続き取り組んでいきたい、こういうふうに思っておりますので、それだけ御報告しておきたいと思います。


蝋山部会長 ありがとうございます。
 次の議事に進みましてよろしゅうございますね。
 それでは、第2の後半の案件として冒頭に御紹介いたしました、6月末に公表を予定しております金融審議会としての答申(案)の検討をここで行いたく思います。
 本日、皆様のお手元に「21世紀を支える金融の新しい枠組みについて」という案文がございますが、これは前回の会合において皆様に御検討いただきました横長の資料をもとにいたしまして、前回の議論を振り返りながら事務局と相談して作ったものであります。
 報告ではなくて、答申ということになっておりまして、これは最終的に総会に提出して御了解をいただいた上で、金融審議会全体の総会としての答申という形で公表することを想定しているわけであります。
 初めに、全体を通して内容を把握するという意味で、答申案を事務局より一度読み上げていただいた上で討議に入りたく思います。
 それでは、玉木さん、よろしく。


事務局 それでは、答申案「21世紀を支える金融の新しい枠組みについて」を読み上げさせていただきます。

はじめに

 金融審議会は、10年8月、大蔵大臣から「21世紀を見据え、安心で活力ある金融システムの構築に向けて、金融制度及び証券取引制度の改善に関する事項について、審議を求める」という諮問を受けて以来、2つの部会を設けて審議を進めてきた。その第一部会では、金融システム改革の進展を踏まえつつ、21世紀を見据えた金融のルールの枠組みや証券市場の在り方について、第二部会では安心で活力ある金融システムの構築を目指し預金保険制度、保険会社の基本問題等についての検討を行い、逐次、その成果を公表してきた。
 これらの検討の成果を踏まえ、先の通常国会において、我が国の金融システムの一層の安定化と利用者の保護を図るためのセーフティネット関係の2法案、および、公正でかつ効率的な金融資本市場の構築と金融サービスの利用者保護の環境の整備等を行う金融インフラ関係の3法案が、政府から提出され、5月に成立した。
 以下の I .では、金融サービスのルールに関する新しい枠組みについて、これまでに第一部会名で発表してきた「中間整理(第一次)」(昨年7月)、および、「中間整理(第二次)」(同12月)を受け、これまでの取組みを振り返りながら、今後取り組むべき課題を明らかにする。特に、昨年12月の「中間整理(第二次)」の発表の段階で引き続き検討すべき課題とされた、金融分野における裁判外紛争処理制度の整備、および、消費者教育の充実についても、第一部会や「ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループ」における検討を踏まえてとりまとめを行った。
 また、21世紀の我が国証券市場を支えるインフラの整備についても、証券決済システム改革と証券取引所等の組織形態の在り方の見直しを主要テーマとして、それぞれワーキング・グループを設けて検討を行った。証券取引所等の組織形態の在り方については、既に本年2月に第一部会名で報告書を公表した。そこで、以下の II . では、21世紀の我が国証券市場を支えるインフラ整備の在り方について、これまでの取組みを振り返りつつ、残されたテーマである証券決済システム改革を中心に、第一部会や「証券決済システムの改革に関するワーキング・グループ」の検討を踏まえ、その基本的な考え方を示す。
 なお、各ワーキング・グループ報告は、別添に示されている通りである。

.金融サービスのルールに関する新しい枠組みについて


.取組みの背景

(1)

 経緯
 金融システム改革に関する平成9年6月の金融制度調査会答申や証券取引審議会報告書において、金融システム改革の進展状況を踏まえつつ、金融サービスを幅広くとらえ、これに整合的に対応しうる新しい法的な枠組み(いわゆる「日本版金融サービス法」)の検討の必要性が指摘された。
 これを受けて、金融を巡る諸問題に関係する13省庁等の共同勉強会である「新しい金融の流れに関する懇談会」が組織され、今後の新しい金融法制・ルールの枠組みの検討が行われ、平成10年6月に「論点整理」がとりまとめられ、その後、さらに金融審議会への検討へと引き継がれた。

(2)

 いわゆる「日本版金融サービス法」の必要性
 これまでの検討を踏まえれば、いわゆる「日本版金融サービス法」が必要な理由は、次のように整理される。
 すなわち、従来の我が国金融法制は、業法中心の枠組みの下で、金融商品・サービスが各関係業法により業態別に縦割りで規制される体系となっており、主として、業者に対して行為規制や健全性規制等を行い、監督当局による監督・是正措置を通じて、円滑な金融取引と利用者保護を達成する仕組みとなっていた。
 このような仕組みには、以下のような問題があると指摘されてきた。

マル1

 利用者保護の観点からみると、適用される業法が異なることにより、規制内容に不整合が生じやすい。また、業法に基づく行政当局の監督は、業者に対する制裁・抑止力としては機能するが、利用者等の私法上の救済という面で不十分である。さらに、金融の自由化や規制緩和の進展により様々な金融商品が生み出され的確なリスク説明が求められるなかで、特に、業法の適用が無い場合には利用者保護が十分に図られない。

マル2

 業者の立場からみると、業法の枠組みを超えた、新しい商品・サービスについては、法律関係が不明確となる。また、金融商品が異なれば適用する業法も異なり、取扱主体もそれに応じて異なってくるという事情から、実質的に業態を超えた競争が阻害されたり、金融商品の間の公正な競争が阻害される恐れがある。
 とりわけ、多様なリスクとリターンの組合せを実現しうる仕組み型の金融商品であり、いわゆる市場型間接金融の中枢となる集団投資スキームについては、投資対象が特定された縦割り法制となっており、利用者利便の向上にもつながる自由なイノベーションが困難である。
 こうした問題を解決し、利用者保護とイノベーションの促進を図るため、機能別・横断的なルールとして「日本版金融サービス法」が必要であるとされたのである。

(3)

 ルールの基本的な枠組み
 今後目指すべき機能別・横断的なルールの基本的な枠組みについては、金融取引の当事者間の私法的な権利義務関係の明確化に関する「取引ルール」、業者に対する行為ルールである「業者ルール」、および、証券取引法の開示および公正取引確保のためのルールのように市場の取引参加者全てに適用される一般的な行為ルールである「市場ルール」の三つに類型化される。これらを、以下の視点に立って、透明性に留意しつつ、整備していくことが基本と考えられる。

マル1

 取引ルールについては、これまでは一般民商法に委ねられてきたが、業者と利用者の情報格差といった金融取引の特性を踏まえ、利用者の保護のみならず、利用者が安心して金融取引を行い得る環境を整備することにより金融取引の発展を促すために、できるだけ広範囲の金融商品・サービスを対象として、一般民商法を強化するルールを整備する。

マル2

 業者ルールについては、利用者被害の予防や公正取引の確保等を図るために、取引ルールを補完するものとして、業者に対し特定の行為ルールを義務づけ、同時に、現在の各業法間の整合性を図り、ルールの横断化を進める。

マル3

 市場ルールについては、公正・円滑な価格形成を通じた健全な市場の発展を図るため、各金融取引における価格形成機能の違いなどに反映される市場の組織化の程度を踏まえつつ、市場取引参加者の守るべき行為ルールの横断的な整備を行う。


.これまでの法整備
 
 上記1.の問題意識については、平成10〜11年の金融システム改革と今般の「中間整理(第二次)」を踏まえた法整備により、以下のような対応が図られてきた。

(1)

 金融システム改革における対応
 金融システム改革においては、縦割りの法体系を残しつつも、利用者利便の観点を重視し、それまで大きな課題とされてきた業者の参入ルールの大幅な緩和を図り、さらに、市場ルールを含めた包括的なルールが整備されている証券取引法の活用によってルールの横断化が進められた。こうした点での主要な改革は以下の2点にまとめられる。

マル1

 銀行、信託銀行、保険会社、証券会社の間において、持株会社や子会社形態による相互参入を促し、業態間の競争を促進する。とりわけ、証券会社については、登録制への移行や専業義務の撤廃により、相互参入だけでなく他業からの新規参入を容易にした(10年12月以降の登録数は45件)。

マル2

 証券取引法が対象とする金融商品の拡大を行うとともに、銀行等に対し証券取引法を一部適用しつつ証券投資信託の窓販を認める等の措置を講じた。

(2)

 「中間整理(第二次)」を踏まえ法整備における対応 
 金融審議会第一部会において、金融システム改革の進展を踏まえつつ、機能別・横断的法制の具体化が求められる問題として、販売・勧誘ルールの制定および集団投資スキームの法的整備の2つが取り上げられ、第一部会はこれらに
ついて精力的に検討を行い、昨年12月に「中間整理(第二次)」を公表した。
 その検討結果を踏まえ、先の国会で以下の法制化が行われた。

マル1

 金融商品の販売・勧誘ルールの整備について
 すべての金融商品を横断的に対象とする「金融商品の販売等に関する法律」を制定し、今後登場が予想される新商品には政令指定を行うことによりその対象としうる仕組みを導入するとともに、業法の適用の有無にかかわらず、販売業者等の説明義務違反に対する損害賠償責任(取引ルール)を定め、同時に制定された「消費者契約法」とも併せ、利用者の民事上の救済を充実させた。
 また、適合性の原則や不招請勧誘等の不適切な勧誘への対応については、業者に勧誘方針の策定・公表を義務づけ、適正な勧誘を確保するための業者による自主的な取組みを促すこととした。

マル2

 集団投資スキームの整備について
 集団投資スキームについては、幅広い資産を運用対象とする一般的な仕組みを導入するとともに、投資者から集めた資金の運用を業とする運用業者に対し行為規制や民事責任の明確化などを一般的に規定し、縦割りでない機能別規制の導入を図った。
 また、このスキームにより発行される証券や信託受益権については、証券取引法の業者ルール・市場ルールを適用することとし、ルールの横断化が進められた。
 これらの改革は、機能別・横断的法制に向かっての努力の成果である。特に、今般の法整備は、民事法制の特則として位置付けられる取引ルールを制定したこと、および、一般的な集団投資スキーム法制を整備し、資産運用業者への行為規制を定めるとともに、証券取引法において規定されている業者ルール・市場ルールを適用することにより、ルールの横断化を図った点に特徴がある。


.ルールの実効性の確保と消費者教育
 
 金融取引の適正化を実現していくためには、ルールの策定とあわせて、消費者保護のためのルールの実効性を確保するための制度の整備を進めることが不可欠である。また同時に、公正かつ効率的な金融取引を実現するためには、消費者に必要な知識や情報が容易に入手できる仕組みが完備され、自己責任原則の下、消費者が自らの向上を図りやすくする環境の整備も重要な課題である。
 これらの課題については、昨年12月の「中間整理(第二次)」において、引き続き検討を行うこととされ、その後、「ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループ」において裁判外紛争処理制度の整備についての報告書をとりまとめるなど、精力的な検討を行った。

(1)

 金融分野における裁判外紛争処理制度の整備について

(イ)

 近年、金融分野での苦情・紛争の顕著な増加にもかかわらず、司法制度の使い勝手の悪さ等の問題が指摘されている。こうした問題意識を背景に、第一部会は、「ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループ」に、金融分野における裁判外紛争処理制度の在り方について検討を依頼し、同ワーキング・グループは、金融取引の特性を踏まえつつ民事訴訟制度を補完する制度の整備を念頭に検討を行った。

(ロ)

 金融分野での消費者トラブルの解決では、一般に、迅速性・簡易性が求められるとともに、当事者双方の納得が特に重視される。それには、金融の専門家の活用や解決過程への当事者の積極的参加を可能にする等、柔軟な対応が求められる。こうした点に裁判制度で対処することには限界があり、当事者の合意に基づきつつ、簡易・迅速な紛争解決を実現する裁判外の紛争処理に期待されるところは大きい。一方、金融トラブルには高額紛争も多く、事実認定も容易でないケースが少なくない等、裁判外での最終解決を目指すことについての当事者間の合意が難しい面もある。
 こうした特性を踏まえれば、金融分野での裁判外紛争処理制度の機能強化を図るに当たっては、紛争の処理段階のみでなく、苦情処理・相談等、申立の初期段階での対応をも重視し、そうした全過程を通して、裁判外での合意による解決の意思を醸成できる体制の整備が必要である。
 また、裁判外紛争処理制度の確立は、業者にとっても、プラスである。すなわちコンプライアンスの観点から問題是正のための重要なツールとなるほか、裁判外紛争処理への積極的な取組み姿勢が市場での業者の評価に繋がり、ひいては取引の円滑化、金融市場の健全な発展にも資するなど、大きな意義があると考えられる。

(ハ)

 こうした認識を踏まえ、ワーキング・グループは紛争処理機関の中立・公正性の確保、紛争処理機能の向上や制度の実効性・透明性の確保、紛争処理機関の統一化・包括化、コスト負担の問題、窓口の明確化や広報活動による裁判外紛争処理制度の活用促進等、広範な論点について、多面的な検討を行った。
 金融分野における既存の裁判外紛争処理機関は、法的根拠やその実態等の面で多種多様である。そのため、ワーキング・グループでは、上記の各論点のすべてについて意見を一致させることはできなかった。しかし、それらに関する当面の施策として、意見の集約をみたものも少なくなかった。なお、統一的・包括的な第三者型機関の設立可能性については、中長期的には一つの理想型として評価すべき、との議論がなされた。

(ニ)

 以上の結果、将来的な統一的・包括的制度も視野に入れつつ、既存機関の運用面での改善等、現時点で取り得る効果的な方策を早急に実施することが、先ずは重要である。中立・公正な人材の活用等、各機関毎のイニシアチブで今後自主的改善が図られるものもあろうが、少なくとも、ワーキング・グループの報告書で提言されているように、
マル1個別紛争処理における機関間連携の強化、
マル2苦情・紛争処理手続の透明化
マル3苦情・紛争処理事案のフォローアップ体制の充実、
マル4苦情・紛争処理実績に関する積極的公表、
マル5広報活動を含む消費者アクセスの改善、
を早期に実施することが求められる。さらに、
マル6これらの着実な実施を担保するとともに、業態の枠を超えた情報・意見交換等を行い、金融分野における裁判外紛争処理制度の改善につなげるため、金融当局、消費者行政機関、消費者団体、各種自主規制機関・業界団体、弁護士会等の参加する「金融トラブル連絡調整協議会(仮称)」を設置すべきである。
 なお、こうした施策の実現に当たっては、既存の紛争処理機関の自主的努力だけではなく、国や地方自治体の様々な面でのサポートが不可欠であり、行政の積極的なリーダーシップが期待される。
 今後は、これらの実施状況や具体的効果の検証、司法制度等を含む紛争処理制度全般に関する幅広い議論等を踏まえた、裁判外紛争処理制度のあるべき姿に関する更なる検討の進展を望むものである。

(2)

 消費者教育の充実について
 金融イノベーションが進む下で、様々な金融商品が提供されるとともに、インターネット取引等に見られるようにその提供方法も多様化している。こうした中で、消費者が主体的に商品を選択し、そのメリットを享受していくためには、消費者が金融の仕組みに対する知識を深め、多数の選択肢の中でその商品がどのように位置付けられているかを理解するよう努めることが基本である。また、市場の効率性を高め健全な進展を促す上でも、リターンとリスクを厳しく判断する消費者の存在は不可欠の要素である。
 消費者教育については、これまでも、行政機関や業界等による説明会の開催やパンフレットの作成等、地道な努力が行われているが、それぞれ個別主体毎の取組みであり、また、その内容が消費者のニーズに必ずしも応えていない等の問題が指摘されている。このような現状を踏まえると、今後は、業界、消費者団体、地方公共団体、関係省庁等が参加する貯蓄広報中央以下・都道府県貯蓄広報委員会のネットワークを活用し、消費者教育を体系的・効率的に実施することが重要である。さらに、不特定多数の消費者向けにインターネットを媒体としてより一層活用することも当然考えられてしかるべきであるし、学校教育における更なる取組みも必要である。
 これらの施策の実施も含め、今後、金融庁を中心とする関係当局は消費者教育に積極的に取り組むべきであり、そのための具体的対応の検討が期待される。


.新しいルールの枠組みに向けた今後の取組み

(1)

 基本的な考え方
 今般の「中間整理(第二次)」を踏まえた法整備により、いわゆる「日本版金融サービス法」の第一歩が記された。
 他方、今後、新たな金融商品の開発や取引はさらに活発化するものと見込まれ、そのような状況に応じて、利用者が安心して取引を行い得る環境の整備に引き続き努めることが重要であり、これは同時に、我が国金融市場の発展につながるものと考える。
 したがって、21世紀の金融を支える新しいルールの枠組みとして、取引ルール・業者ルール・市場ルールについての機能別・横断的法制の整備・拡充は、引き続き重要な政策課題である。

(2)

 今後の課題
 いわゆる「日本版金融サービス法」の理念型は、すべての金融商品に横断的な取引ルール、業者ルール、市場ルールが整備されることである。今後も、これに向かっての着実な努力が必要とされる。一方、情報通信技術(IT)革命、グローバル化による非対面取引、クロスボーダー取引の発達や金融再編といった金融環境の急速な変化にも迅速かつ現実的に対応することが求められる。
 したがって、金融行政当局に求められる今後の課題は、今般制定された取引ルールについて、今後の新たな金融商品の登場や取引実態等を踏まえた迅速な対応を行うとともに、なお縦割りの法制が残っている業者ルール、市場ルールについて、横断化の努力を継続していくことである。具体的な課題は以下のように考えられる。

マル1

 取引ルールについては、来年4月に新たに金融商品の販売等に関する法律が施行されるが、新しい商品が登場した場合等には、本法の枠組みを活用して、速やかに政令指定することが必要である。適合性の原則や不招請勧誘等の不適切な勧誘への対応については、勧誘方針の策定・公表を通じて市場メカニズムの機能を生かすようにすべきである。これによって、業者による自主的な取組みが利用者保護を促すことが期待される。もちろん、業者の取組み状況いかんによっては、こうした方策を適切に見直すこともありえよう。すなわち、不適切な勧誘については、上記の対応に加え、各業法の見直しなど業者ルールの強化によって改善を図ることも可能と考えられ、必要に応じて、このような対応を検討すべきである。

マル2

 業者ルール、市場ルールについては、集団投資スキームに関し幅広い資産を運用対象とする一般的な仕組みを導入したところであり、また、今後の金融市場の展開等に応じて、利用者保護等の観点から、各業法の整合的な整備に努めることが望まれる。更に、参入規制の大幅な緩和等が進む中で、有価証券等に関する横断的な法制としての性格をもつ証券取引法について、その見直しを含め一層の活用を検討していくことも考えられる。
 特に当面の課題として、新たな形態による銀行業への新規参入への対応が求められているほか、保険業についても業態を超えた参入促進が検討課題とされている。こうした問題に加えて、銀行や保険会社の業務範囲の見直しも求められている。今後、このような検討を進めていく場合には、機能別・横断的な考え方(誰が行うのかではなく、何をするのか)に立った対応が必要である。

マル3

 さらに、消費者保護の観点からは、現在、政府の高度情報通信社会推進本部で行われている一般的な個人情報保護の検討を踏まえて、個人信用情報保護のための望ましい制度を整備することが求められている。また、持株会社や子会社形態による業態間の相互参入を踏まえ、そのような金融グループ内における情報の共有の在り方についても、ルール整備の検討が考えられる。

 以上のような今後の課題に積極的に取り組んでいくことこそが、我々が理想とする一覧性のある機能別・横断的法制に着実に進む道である。小さな努力にせよ、それを積み重ねていくことにより、その理想とする具体的法制の姿が明瞭に視野に入ってこよう。



II


. 21世紀の我が国証券市場を支えるインフラ整備の在り方について


.証券市場のインフラ整備について

(1)

 証券市場のインフラ整備の重要性
 我が国においては、高齢化社会を目前に控え、個人金融資産のより有利な運用が求められているとともに、次代を担う新規産業への資金供給が重要になってきている。また、発展途上国を含む世界への円滑な資金供給という、国際的な役割を果たすことも必要である。
 このような状況の下で、我が国証券市場は、国内外から要請されている利用者利便の向上に的確に応えていくことが重要であり、また、取引の決済リスクの低減を通じて利用者保護の徹底や取引の円滑化などを図っていくことが求められている。そのためには、証券市場のインフラ整備を積極的かつ継続的に行っていく必要があり、こうしたインフラ整備は、上記I.に述べた金融サービスのルールに関する新しい枠組みの整備とともに、21世紀を支える金融の新しい枠組みを構築するに当たっての柱と位置付けられる。

(2)

 これまでの取組み
 こうした問題意識に立って、第一部会では、証券決済システム改革と証券取引所等の組織形態の在り方の見直しを、21世紀の我が国証券市場を支えるインフラ整備を検討する上での主要テーマとして検討を行ってきた。
 まず、ニューヨークやロンドンの証券取引所が相次いで非会員組織化の計画を発表したこと等を踏まえ、昨年11月、「証券取引所の組織形態の在り方等に関するワーキング・グループ」を設置し、証券取引所等の組織形態として株式会社を可能とすることについてどのように考えるべきか、また、証券取引所等が株式会社化した場合、その公共性を如何に確保すべきか、といった問題について検討を行った。その結果、市場間競争が国内的にも国際的にも一段と激化してきている中で、証券取引所等が、円滑な資金調達や迅速な意思決定を行うことで利用者のニーズにより適切に対応することを可能とする観点から、公共性確保のための措置を講じたうえで、組織形態の選択肢として株式会社を可能とすべきとの結論に到り、これを踏まえ先の国会で証券取引法等の改正が行われた。
 一方、証券決済システム改革については、平成9年の証券取引審議会の報告の中で、中長期的な観点から進めていくべき課題として位置付けられていたが、近年、金融機関等の破綻を契機として決済リスクに関する意識が高まってきたことや、金融システム改革の進行により市場関係者の決済コスト低減に対する意識が高まってきたこと、および、諸外国において証券決済システム改革が積極的に進められていること等を背景として、我が国の証券決済システムを抜本的に改革し、その安全性・効率性を向上させることが必要であるとの認識が高まってきた。こうした背景の下、昨年9月に「証券決済システムの改革に関するワーキング・グループ」を設置し、検討を行ってきた。


.証券決済システム改革の基本的な考え方

(1)

 統一的な証券決済法制の整備
 現在の我が国の証券決済は、有価証券の種類ごとに異なる法制に基づいて行われている。例えば、株式については「株券等の保管及び振替に関する法律」に基づき、社債等一般債については「社債等登録法」に基づき、また、国債については「国債ニ関スル法律」に基づき、それぞれ決済が行われている。このため、証券決済機関も有価証券の種類ごとにそれぞれ別々に存在している。
 このように有価証券横断的な統一的法制が存在しないことから、以下のような問題の所在が指摘されてきた。

マル1

 証券決済機関の立場からみると、多様な有価証券に係る決済を行うことができないため、利用者のニーズを十分に満たしたサービスを提供することができないだけでなく、範囲の経済を活かした決済事務の効率化を図ることができない。

マル2

 証券決済機関の利用者の立場からみると、複数の種類の有価証券の決済サービスを利用しようとする場合、それぞれの有価証券を扱う証券決済機関の参加者となる必要があり、その結果、有価証券全般を横断的に取り扱う証券決済機関が存在すれば不要と考えられる重複投資が発生するおそれがある。
 こうした問題を解決し、より効率的な決済を可能するためには、有価証券の種類にかかわらず共通に適用される新たな証券決済法制の整備が不可欠である。また、この新たな証券決済法制は、単に有価証券横断的に適用されるだけでなく、証券決済機関の担い手の如何にかかわらず適用されることが必要である。

(2)

 有価証券の無券面化を可能とする法制の整備
 現在の「株券等の保管及び振替に関する法律」に基づく保管振替制度は、株券等を保管振替機関に集中保管した上で、帳簿上の記録により権利の移転等を行うことで実際の株券等のやり取りを不要とし、決済の効率化を図る制度である。ただし、この制度においては、株券等の預託が前提となっているため、発行企業は預託すべき株券等を実際に発行する必要があり、また、保管振替機関においては株券等の保管が必要になり、そのために固有のコストが生じている。
 したがって、こうした現状や、今後予想される電子取引の拡大等に対応し、証券決済の一層の効率化を図るためには、現物証券の存在を不要とする(無券面化)法制の整備が必要である。また、こうした法制については、上記の統一的な証券決済法制についての考え方を踏まえて整備する必要がある。

(3)

 証券決済機関の在り方の見直し
 先に述べたような統一的な証券決済法制に基づき、多様な有価証券を取り扱う証券決済機関が実際に現れることが望ましい。また、証券決済機関が環境変化に対して積極的かつ柔軟に対応できるよう、自らのサービスの質を高めようとするインセンティブが常に働く仕組みを整備することも重要である。こうした観点から、証券保管振替機構の組織形態の在り方などについても幅広く見直しを進める必要がある。

(4)

 電子化の推進おびDVPの実現等
 現在の証券取引に係る事務処理については、部分的に電子化されているものの、依然として人手を介して行われているものも多い。したがって、事務の効率化によるコストの低減とともに、決済期間の短縮化によるリスクの低減を図るためには、証券取引の約定から証券の決済までの一連の事務処理全体を電子化することが不可欠である。
 また、決済リスクを低減させるためには、すべての取引の決済においてDVP(Delivery versus Payment;証券決済において、証券の引渡しと資金の支払とを相互に条件付け、同時履行を確保する仕組み)を実現することが不可欠である。

(5)

 今後の取組み
 統一的な証券決済法制や無券面化を可能とする法制等の整備を図るため、金融行政当局においては、立法化に必要な検討を早急に進めるべきである。また、証券決済システムの改革には、政府における法制整備だけでは不十分である。真に利用者のニーズを満たした証券決済システムの実現のためには、幅広い市場関係者が主体的かつ積極的に改革の努力を行うことが不可欠である。
 なお、諸外国においても、決済リスクの一層の低減や証券決済システムの一層の効率化に向けた改革が着実に行われており、特に、米国では、具体的な目標時点(現時点では、2002年6月)を設定した上で、取引日の翌日における決済(T+1)の実現を目指し、包括的な改革を進めようとしている。こうした状況を踏まえると、証券決済システムの改革は差し迫った課題である。特に、翌日決済(T+1)を目指した決済期間の短縮化やすべての証券取引におけるDVPの実現のために必要な法制整備や市場慣行等の見直しは、速やかに検討を進め、実現させなければならない。

おわりに

 以上、21世紀を支える、金融サービスのルールに関する新しい枠組みと証券市場のインフラ整備について、金融行政の企画立案部門が大蔵省から新たに設立される金融庁に移管されることを一つの節目として、これまでの検討のとりまとめを行った。
 今後の我が国金融を展望すると、金融サービスはIT革命の影響を最も強く受けている分野の一つであり、また、経済のグローバル化の更なる進展も想定されるなど、一層の環境変化が見込まれ、これに的確に対応していくためには制度面においても検討すべき課題は多い。
 今後の新たな展開の下で、機能別・横断的法制の更なる推進を基本軸とすることによって、利用者保護の徹底に努めることが一層求められよう。また、国際的な市場間の競争の高まりも予想され、民間の創意工夫が活かされ、かつ、市場の機能が十分発揮されるような、効率的で利用者利便の向上につながる市場インフラの整備に努めることが、引続き重要である。
 今後、金融庁において、利用者保護の確保、業者間の競争促進や技術革新等を通じた利用者利便の向上、取引の円滑化や市場の安定等の観点を踏まえ、こうした21世紀を支える金融の新しい枠組みを構築するための努力を続けていくことにより、我が国金融市場の一層の発展につなげることを期待したい。




以上でございます。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。
 時間をかけて朗読していただきましたけれども、全体の内容というものを把握していただけたのではないかというふうに思います。
 それでは、ただいま読み上げられました案文につきまして、御意見なり御質問がございましたら、御自由にお願いしたいというふうに思います。ただ、討議を効率的に進めるために、報告書案の修正をお求めの場合には、こういうふうに修正したらいいという御提案もあわせて頂戴できますと、大変幸いであります。
 それでは、いかがでございましょうか。
 関さん、どうぞ。


関オブザーバー 全体として非常によくまとまっていると思いますが、今回の第一部会の検討で明示的に議論したことではないんですが、また、大蔵省の金融審議会としては最後の報告書を作るというその節目のときに書くものでありますので、1つだけちょっと入れておいた方がいいんじゃないかなということを感じることがあります。
 それは、この中でもいろいろなルールの整備を図ってきたし、これからもいろいろな意味でルールの整備をしていかなければならないということは随所に書かれているわけですけれども、ルールの整備をするということは、当然ルールどおりに動いていて、もし万一ルール破りが発生したら、それは迅速に発見して是正できるということをどうやって担保するか、つまり、常時監視をして、ルール破りを摘発できるような体制を整備しておくというのが、今ここでずっと議論されていることの1つとして、それこそインフラの重要なことだと思うんですね。
 具体的にちょっと申しますと、新聞にも出ましたけれども、南証券の問題が発生いたしまして、これは経営者として非常に問題がある、グレーだと思われるような方が証券会社の社長になり、そこでそれを利用して支店を新設して、詐欺的な行為をやったということも、結局現行法では押さえられなかったということが1つあります。
 それから、これはごく最近ですけれども、IOSCOが音頭を取って、各国でインターネットでいろいろな情報が流れているところに何か問題があるようなところはないだろうかという証券取引法の観点から総点検をやったということがこの間発表されております。これは各国、たしか20カ国ぐらいが協力し、日本も入ったんですが、1万件くらいのウェブをチェックして、たしか1,000件ぐらい継続的に監視を要するものが発見されたと。それで日本でもたしか2,30そういうものがあるということも発表されていたと思うんですね。そういうところをきちんと監視をしていくというようなことについては、まだまだ十分ではないじゃないかと、こういうふうに思うんですね。
 ですから、例えば10ページの「新しいルールの枠組みに向けた今後の取組み」の基本的な考え方の「横断的法制の整備・拡充は、引き続き重要な政策課題である。」というようなところに書いてありますが、このあたりにそういうルールがきちんと執行されているかどうかを監視モニターしていく体制の整備というのもやはり必要じゃないかという問題意識ぐらいは、こういうところに載せておいてはどうかなというのが私の指摘でございますが、御検討いただければ幸いです。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 今の点について内藤さんから何かありますか。大変重要な御提案を頂戴したというふうに思います。


内藤企画課長 私どもも今、お考えを伺っていまして、そのとおりだというふうに思っております。一方で、質のエンフォースメントといいますか、例えば取引ルールとかそういったことについての民事上のエンフォースメントといった問題については、裁判外の問題とか消費者教育とか、幅広い意味でそういったことも指摘しておりますけれども、今御指摘のような、いわば取引ルール、業者ルール、あるいは市場ルールかもしれませんが、そういったことについてのエンフォースメントいったことも角度としてはあり得ますので、事務局として検討させていただきたいと思います。


蝋山部会長 座長としても、今の御提案は非常にもっともだというふうに思いますので、前向きに文案の中に何とかうまく入れ込むところを考えてみたいというふうに思います。
 ほかにございませんでしょうか。
 どうぞ、柳川さん。


柳川委員 今の関さんの前半のところに関係するんですけれども、インターネット取引を中心としたクロスボーダー取引の拡大というのが、今後は国際的な法整備のコンセンサスも含めてかなり重要になってくるだろうと思います。それは今後の課題ということなんですけれども、10ページのところにクロスボーダー取引の発展ということで、この課題の最初のパラグラフにはそう書いていただいているんですが、その後のところはどちらかというと横断的な法整備、ルール整備の重要性が強調されていて、もちろん横断化のところは非常に重要なのですけれども、もう少し国際的な取引の整備の重要性というところをつけ加えていただけると、その部分が際立つかなというふうに思っております。具体的にはお任せします。


蝋山部会長 内藤さんからどうぞ。


内藤企画課長 私ども事務局の趣旨としては、10ページでございますけれども、今後の課題の「一方」というところで、IT革命とかグローバル化の進展があるということもありまして、それを受けて取引ルールのところ、11ページにつながっていきますけれども、当面は業者による勧誘等についてもいろいろ取組みを行っていく、さらに、業者の取組み状況いかんによってはこうした方策を適正に見直すということもあり得ようというところが、そういった状況変化も踏まえてということなんですが、横断化という話とIT化とかグローバル化という今後の進展とが必ずしもつながらない、明確ではないということであれば、少し言葉を補うような形で工夫をしていくことはできると思います。
 趣旨としては、3行目あたりですが、「業者の取組み状況いかんによっては、こうした方策を適正に見直すこともありえよう。」とか、あるいは業者ルールによる補充をして強化をしていくといったことも、そうした展開の中で考えていくべき事柄ではないかなというふうに思っておりますが、そうした御指摘については、少し言葉を補いながらわかりやすくするということは考えられると思います。


蝋山部会長 今の柳川さんの御指摘の問題も、問題としては至極もっともなんですが、インターネット取引、あるいはさらにそれに加えてクロスボーダー取引というような、今までにない取引の形態が出てきたことによって生じる新しい問題と、それから、法制に欠点があるがゆえに従来の法制ではうまく対応できない問題、そこら辺の識別をもしも時間があったらちゃんとやりたかったわけですけれども、いかんせん、そこまではこの審議会で議論が進められなかった。そういう問題はたくさんあるわけです。
 エンフォースメントの絡みで言いますと、自主規制機関と、先ほど関さんが御指摘の問題とどう絡ませるべきなのかといったような問題も大事な問題としてあるのではないかと思いますが、そういう点で重要な問題の御指摘を頂戴いたしましたので、もう少し入れ込みたいとは思いますが、しかし、十分に満足できる形で入れることができるかどうか、柳川さんの御期待の半分ぐらい満たすことができれば合格とさせていただきたく思います。努力はします。


柳川委員 私も今、部会長がおっしゃったような、横断化のところですね、法整備の不備のところがやっぱり一番の課題だと思っていますので、それをまず最重点に書いていただくということで、そのほかの新しい問題とかいっぱいつけ加えてしまうとそこの部分がぼやけてしまうということであれば、余りそれにこだわるわけではございませんので、今書いていただいているところが一番、とりあえずまずは重要なところだと思っています。それを検討していくのを一番の目的としていただければそれで結構でございます。


蝋山部会長 ほかにございませんか。どうぞ。


河野金融監督庁企画課長 恐れ入ります。ちょっと執行面な話なども出ておりましたので、一言だけお願いをさせていただきますと、先ほど関オブザーバーおっしゃったこともごもっともでございますし、その後いろいろ御議論いただいております点も、エンフォースメント等でいろいろと当審議会からも御指導、御鞭撻はいただくことは大変ありがたいお話でございまして、ぜひ引き続き叱咤激励をいただきたいと思っておりますけれども、他方で文章表現上、エンフォースメントについてお触れいただきます際には、市場規律とか、あるいは自己責任とか、今の新しい監督行政の考え方の基本理念でもございますので、そういったところでバランスもぜひとっていただければというふうに感じますので、お願いをさせていただきます。


蝋山部会長 下手すると、昔に戻れというふうにとられる恐れがあるということですな。その辺は、内藤さん、どうでしょうか。


内藤企画課長 もちろん今の指摘ももっともなので、むしろ事後チェック型といいますか、そういった観点を踏まえながら、今のような内容を盛り込むという形で考えさせていただきたいと思います。


蝋山部会長 十分注意して書きたいというふうに思います。
 ほかにございませんでしょうか。
 井上さん、どうぞ。


井上委員 全体的に「流れ懇」から最終的な答申ということになって考えてみますと、理念型については譲らないで基本的には主張していると思うんです。理念型と現実をどのように橋渡しをしていくかという点でも、幾つかの点で当初考えられて、より横断的なルールであるとか、今日の証券に関する少し難しいところを踏み込んだというようなところでの進展があると思うんです。そういう点で全体として評価はできると思うんですが、理念型と現実の間の距離がまだ遠過ぎるような表現があちこち残っていると思うんです。
 例えば8ページ目の、裁判外紛争処理の問題に関わるんですが、(ハ)の最後の3行「意見の集約をみたものも少なくなかった。なお、統一的・包括的な第三者型機関の設立可能性については、中長期的には一つの理想型として評価すべき、との議論がなされた。」これは経過としては全くそのとおりなんです。こういう考え方に立つとすれば、次のページの9ページ目の上から7行目「今後は、これらの実施状況や具体的効果の検証、司法制度等を含む紛争処理制度全般に関する幅広い議論等を踏まえた、裁判外紛争処理制度のあるべき姿に関する更なる検討の進展」という、「検討の」という言葉が一体必要なんだろうかと。当然内容的には検討するわけですが、これまでの理念型との距離を埋めるために、ここで「検討の」というのは、まあどうなるかわからんがという表現で普通は使うもので、方向性だけはもう少し明確にして、あるべき姿に関する更なる──その辺の表現は任せてもいいんですが、ここで「検討の」というのは、もうこれで結構と、現状の様々な諸機構を運用上の改善をするということと、それを緩くつないだ金融トラブル連絡調整協議会でほぼ終わりということでないように読むためには、ここに「検討の」という3文字は必要がないんじゃないかというふうに私は考えます。


蝋山部会長 ありがとうございました。ここのところは、何か深い意味があるのでしょうか。


内藤企画課長 いえ、深い意味はそれほどあるわけではございませんで、先週の部会で一応御了解いただきました、今日25−1でお配りしております参考資料で、第一部会のワーキンググループ報告の最後のまとめの17ページを御覧いただきますと、「なお」というパラグラフがございますけれども、その中で、最後のあたりの「裁判外紛争処理制度のあるべき姿に関する更なる検討の進展」をそのまま持ってきたというだけでございます。


井上委員 ワーキンググループではそういう議論であったとおりだと思うんです。ここの部会はまた別ですから、方向性だけが明確に出るように。理念的な方向も「検討の」とつけますと、止まった感じがするんです。という意見を申し述べておきます。


蝋山部会長 今の点は、高木さん。


高木参事官 要は私ども事務的に処理するに当たって、ワーキンググループの報告に忠実に書いてあるだけなんです。ですから、それについて、また皆さんの御意見があれば、それを踏まえて修文するのは当然我々の仕事だと思っています。


蝋山部会長 そこで改めて確認させていただきますが、今、井上委員が御提案の「検討の」という3文字を外した方向で文章を作ってみます、ちょっと今すぐに出ないものですから。その上で、次回26日にそこを改めて御確認いただきます。そして部会の委員の方々の御賛同が得られれば、あるいは適切なる修正の御指示をいただければ、それに従うという形で、次回にもう一度この部分の「検討の」の扱いについて御提案させていただきますので、よろしくお願いいたします。今ここで外すかどうかの議論をしてもあれでしょう、次回に回した方がいいのではないかというふうに思いますので、次回の修文を見ての御判断をお願いしたいというふうに思います。
 では、吉野委員、どうぞ。


吉野委員 すみません、2つあるんですけど、細かいところなんですが、9ページの2行目の「既存の紛争処理機関の自主努力だけではなく」という文章なんですが、もし既存の紛争処理機関が1つに統一されないとしますと、紛争処理機関の相互の競争といいますか、紛争処理機関自身が競争しながらこういうことを解決していくという部分があった方がいいのかなと思いまして、「既存の紛争処理機関の間での競争促進並びにその自助努力」というような感じがよろしいかなと思いました。
 それから、最後に16ページですけれども、文章がドメスティック過ぎるような気がするのが2カ所ありますので、恐縮なんですが、第2パラグラフの2行目ですが、「最近のグローバル化の更なる進展も想定される」、これもう進んでいると思いますので、「進展の中で」とか。それからその次のパラグラフの2行目から3行目、「国際的な市場間の競争の高まりも予想され」と書いてあるんですが、これはもう高まっていますので、「競争も高まっており」というふうにしていただければと思うんですが。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 吉野さんらしく、紛争処理機関も、いわば紛争処理サービスについて競争的な体制を持つべきである、持った方がいいと、こういう御判断ですが、現行の様々な紛争処理機関というものは、ワーキンググループ報告の後ろの方にありますけれども、それを前提にして競争というのはやや無理があるのではないだろうか。ややというのは、主要な紛争処理機関の1つは業態別に作られているものですね。これはそれぞれの業について言えば、例えば今日の日経には不動産証券化商品の信託の問題が報道されていまして、それを例にとれば信託協会にある苦情処理から始まっていくわけですね。ほかに行くところないでしょう。
 それから、もう一つ、各地にある消費者生活センターとか国民生活センターではいろいろな問題を扱ってくれますけれども、公の機関ですから、料金競争、サービス競争ということがそれほど有効に実現する手だてがないと思うんですね。
 そういう点では、紛争処理サービスがばらばらにあるから、その間で競争させれば紛争処理サービスの向上が期待できるというのは、私の今の制度ではちょっと無理だと思うんですけれども。


吉野委員 わかりました。では、その点は取り下げさせていただきます。


蝋山部会長 ほかに御意見、御注意ございませんでしょうか。
 田中さん、黙っているけど、何かありませんか。


田中委員 「つや」の部分かなと思っているんですけれども。


蝋山部会長 「つや」?


田中委員 2点なんですが、私、聞き逃したのかもしれませんが、この文中に受託者責任というのは入っていなかったと思うんですが、先ほど河野さんから市場規律とか投資家の自己責任のお話も出ましたけれども、市場の内部において1つ1つ情報を確立するという非常に重要なことがございまして、それは21世紀を支える金融の新しい仕組みについてということであれば、受託者責任の重要性はどこかでちゃんと触れられる必要があるし、それとの関係でこの制度、枠組みも位置付けるというのは私は要るのではないかというのが1点です。
 もう1点は、証券市場を支えるインフラ整備の在り方についてのところなんですが、つやと言ったのはそこなんですが、これは蝋山先生にぜひ書き込んでいただきたいと思うのは、我が国の金融において間接金融優位が長く続いた理由というのはもちろんいろいろな理由があると思うんですが、証券決済に関わって、これだけ準備が悪いというのか、流動性に関わる問題が実務的には蔑ろにされてきたということだと思うんです。
 30年も前でしょうか、蝋山先生にガーレイ・ショウの講義をしていただきまして、なるほど金融商品における流動性というのはこういう形でイノベーティブに動くものかというふうに教えられた30年前を思い出してみますと、証券決済の問題というのは金融の根っこのところにある流動性の問題なので、ここはやっぱり、リスク・リターンのお話はあちこちに書いてありますけれども、金融は流動性というのがあるんだと、それが証券市場のインフラでこれまで蔑ろにされていたところが日本の資本市場のゆがみにつながってきたという認識を──ですからそれを是正するんですけれども、それはやっぱり蝋山先生に書き込んでほしい。2のところで「証券市場を支えるインフラ整備の在り方について」という、それだけです。


蝋山部会長 30年前に今ごろしっぺ返しを食うとは思いませんでしたけれども、考えます。
 前半の方の田中さんの御指摘の受託者責任という重要なコンセプトが触れられていないというのは問題じゃないか、受託者責任というのは非常に広くとっているわけですね。ここでは集団投資スキームの新しい法制、投資信託なり投資法人というところでは受託者責任というのが以前に比べてみて、もっと法律の内容として盛り込まれているわけですが、そういう個別具体的なケースよりも一般的な形で受託者責任という言葉が重要で、そのコンセプトがどこかにきちんと盛り込まれている必要があるんだと。それが21世紀の金融の仕組みのいわば哲学的というか、そこまで大げさでなくても重要なキー概念だという、そういうことだろうと思うんですが、そういう御指摘だというふうに考えていいですね。その辺どうでしょうか。


内藤企画課長 御指摘はごもっともだというふうに思います。私どもの事務局の整理としましては、全体にいろいろ散りばめておりますけれども、機能別規制と横断的な規制という方向へ持っていくんだということでいろいろ書いていまして、横断的という意味合いは、型どおりの各業法をできるだけ実質的に横断化していこうと、そういうための努力を着実に進展させていこうという考え方でございまして、その中に取引ルールはもちろんですけれども、業者ルール、市場ルールも入っていく。もう一つの機能別というのは、今までは取扱う商品ごとにいろいろな法律があった。そういうことではなくて、今回用意しましたけれども、集団投資スキームの整備という中で、いわば運用業者、あるいは資産の管理業者といったような機能に着目して、それについての横断的な法制を作っていくということで、横断的であって、かつ機能的であるという中で、まさに機能別規制というものを導入したということで、そういうふうな表現になっていますけれども、中身はどうかという話になると、その中に受託者責任というものが1つの点として出てくるのかなというふうに思っております。


蝋山部会長 非常にうまく文章の中に入れ込むことが今すぐに、市場の流動性の点は何とかなりそうな感じがしないでもないんですけれども、受託者責任をどううまく書くべきかについては、考えてみます。
 さっき岩村さんがちょっと触れられた点、預かるということはどういうことなのか、という点についてもっと詰めた議論が必要であったというようなことも田中さんの御指摘と相通ずるところがあって、1つの具体的な例だというふうに思いますので、重要性はよくわかるわけですが、表現の仕方については頭をひねらせていただきたく思います。
 井上さん、どうぞ。


井上委員 私も最後に1つつや出し的な意味で発言をしたいんですが、「おわりに」の最後のページあたりのイメージを読んでみますと、どちらかというと変化に一生懸命後ろからついていくというか、受け身の印象が強いです。確かに過去10年間あるいは15年、失われた10年の根幹には日本の金融システムの機能不全があったと思います。しかしこれを乗り越えて、本来は最も高い貯蓄率で豊かな資金を持つ国日本で金融業、あるいは金融市場というのは、アジアにおいて、あるいは世界においてもっと延びる可能性があるはずなんです。そのためにこのようなルール化をしたんだと思うんです。もうちょっと受け身よりもプラスの方向で、むしろ新しい21世紀の日本の金融市場の整備と、それが利用者に還元される仕組みをこれによってスタートを切って、もっと前向きに構築しようじゃないかという印象で、もう少し力強く書いたらどうかという感想を述べておきます。


蝋山部会長 わかりました。どれだけ御期待に添えるかどうか。
 では、岩村さんの方から。


岩村委員 証券決済の在り方についてのまとめでございますけれども、ワーキンググループの報告書の中では、簡潔な表現ではありますけれども、競争可能性の確保ということを述べております。もちろん証券決済機構について、どのような形で競争を確保したらいいのか、並列的な競争なのか、時間軸の中での競争なのか、そういったことはワーキンググループの議論としても詰め切っていないと私は認識しておりますので、これこれこういうふうに競争の可能性を確保するんだというところまで踏み込めないのはやむを得ないところであろうというふうには思いますが、やはり金融審議会の答申として証券決済機関の競争の可能性というのは今までに余り踏み込んでいない議論でありますので、その点について相当の議論が行われた記録は答申の中に残っている方がむしろ自然なのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。


蝋山部会長 私の方から質問させていただきますと、そうすると今の御指摘は、14ページの……。


岩村委員  (3)の証券保管振替機構の組織形態の在り方や競争可能性の確保。


蝋山部会長 ここに入れるわけですか。英語で言えば、ここに書いてある証券保管振替機構というのは複数で書くんですか。それとも単数になっているんですか。「the」ないしは「a」が付くんですか。それとも「s」という形、インステューションズということですか。


岩村委員 これは難しいところ──難しいところというのは、競争可能性の確保というのは時間軸の中で入れ替わることがあり得るんだと。潜在的に競争させられているという認識があれば十分だという意見もあると同時に、複数での競争ということもあり得ると。ただ、ごく一般的に言えば「s」が付くと思います。


蝋山部会長 そうすると、などと言わないで、などの中の押しやられているものから1つ選び出して、競争可能性の確保云々というところを少し考えてみるということですか。


岩村委員 そうですね。ワーキンググループの報告の中でコンテスタビリティーという言葉を入れております。


蝋山部会長 だから競争でもコンテスタブル・マーケットにするべきだということね。
 その辺、松川さん、どうですか。あるいはこれをまとめた側として企画課長。


松川市場課長 具体的な問題意識はわかりますので、どういう修文がいいかはさらにワーキングの報告書の中、あるいはこれまでの議論を振り返りながら考えてみたいと思います。何らかの形でそういう要素をもう少しはっきり出すべきだということだと思いますので、考えてみたいと思います。


蝋山部会長 ここでは「the」とか「a」の方に非常にウエートのいく書き方になっていますよね。


岩村委員 そうですね。


蝋山部会長 1つしか在ってはいけないんだというところまでは書いていないけれども、1つがちゃんと公共的に、しかしイノベーティブにやってほしいというような色合いが非常に濃いですよね。


岩村委員 その点を言えば、証券保管振替機構の組織形態の在り方などについても幅広く見直しを進めるとともに、競争可能性の確保、とした方がよろしいのではないでしょうか。


蝋山部会長 その辺も含めて考えさせていただきたいと思います。
 岩原さん、どうぞ。


岩原委員 先ほどの田中委員の受託者責任の問題は私も実は触れたいと思った点です。それはどういう関連でかと申しますと、10ページ (2)の今後の課題の中のマル1に取引ルールについての今後の法制整備の課題が書いてありますが、ここに書いてあることは金融商品販売法の具体的な政令指定等の問題とか、あるいはそこでなお課題として残ったコンプライアンス等のことに限られています。しかし、今後なお金融サービスに関して取引ルールを整備する必要のある問題はこれには限らないのではないかと思います。受託者責任も、確かに今回集団投資スキームの法制などは整備されたわけですけれども、その他いろいろなタイプの金融サービスにおける受託者責任の問題が取引ルールとして全部整備されたかというと、多分そうではないと思います。カストディアンその他のいろいろなタイプの新しいサービスが今後どんどん充実されてくると思いますし、あるいは年金基金等もそうであります。そういった受託者責任に関する取引ルールというのは、現状では必ずしも十分でない。例えば信託法や信託業法の中のそういった関連の規定でさえ、必ずしも完全なものではないわけでありまして、そういった問題についてなお横断的に受託者責任等に関する取引ルールの整備が必要です。受託者責任だけに限らず、これは果たして今後金融庁なりで検討するのがいいのか、あるいは法務省との関連でどうするかという問題がありますけれども、例えば電子決済ですとか、電子マネーですとか、あるいは倒産法制の中における、例えば信託の扱いその他、金融関連で取引ルールの整備が必要な問題はまだまだたくさんある、というか、手がついている方が少ないというふうに私は認識しております。そこでマル1の中に今後なお整備する課題はいろいろあると──どこまで書くはお任せしますけれども、そういうことがわかるような一文を入れていただければありがたいと思う次第であります。


蝋山部会長 いかがですか。


内藤企画課長 いずれも御趣旨はよくわかります。問題がどんどん拡大していくような感じも受けたんですけれども、どういうふうに書くかを含めて少し考えさせていただきたいと思います。


蝋山部会長 受託者責任というコンセプトをそうした取引ルールとして位置づけるというのは、法学者の間では分類学としていわば通念化されていると考えてよろしいですか。業者ルールではないわけですね。


岩原委員 通念化と言われると非常に困りまして、そもそも受託者責任という言葉を使う人と、信任義務という言葉で使う人があることからわかるように、必ずしも固まった概念ではありませんけれども、そういった方向での考え方は次第に固まってきているのではないかと思っています。


蝋山部会長 ほかにございませんでしょうか。
 大変たくさん──でもないかな、数としてはたくさんではありませんが、非常に重要と思われる点を御指摘いただきまして、ありがとうございました。 100%御注文に応えられるような文章化ができるかどうか、できるだけ努力して、さらに次回皆様方にお諮りしたいというふうに思います。
 今日はとりあえず時間もまいりましたので、このくらいにさせていただきます。
 改めて申し上げますが、次回の部会の会合にもう一度この文章を提出いたしまして、改めて御議論をいただくことにしたいというふうに思います。その上で皆さん方の御了承を得て総会に提出する扱いというふうにさせていただきます。
 それでは、事務局から最後に次回の日程等の連絡をお願いいたします。


乙部債権等流動化室長 次回は6月23日金曜日でございますが、午後5時に開催を予定しております。場所は、いつものとおり4階の第三特別会議室となります。テーマは本日に引き続きまして、これの最終とりまとめということを予定しております。


蝋山部会長 大変申しわけないんですが、まだとりまとめが終わっていませんで、この間の金融商品販売法みたいなことになるとちょっとまずいものですから、この紙は回収させていただきます。その点、私の方が申し上げるのを遅くなりまして失礼いたしました。よろしくお願いします。
 それでは、以上をもちまして、今日は散会いたします。
 ありがとうございました。

(以 上)