金融審議会「第二部会」第2回会合議事録
日時:平成10年12月18日(金)10時00分〜11時53分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室
○倉澤部会長 定刻になりました。ただいまから、第2回金融審議会第二部会を開催いたします。
皆様、御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は第2回目の会合でございますが、前回御欠席で、今回が初出席となります委員、及び、前回でお認めいただきまして今回新たに御参加を得ることになりました業界からのオブザーバーの皆様について、事務局より紹介させていただきます。お願いいたします。
○三國谷企画課長 それでは、御紹介させていただきます。
まず、前回御都合により御欠席されまして、今回が初めての御出席となられました委員の皆様方を御紹介いたしたいと存じます。
皆様の席の左手からでございますが、山下友信委員でございます。
○山下委員 山下でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 森本滋委員でございます。
○森本委員 森本です。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 森田宏樹委員でございます。
○森田委員 森田でございます。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 江頭憲治郎委員でございます。
○江頭委員 江頭でございます。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 池尾和人委員でございます。
○池尾委員 池尾でございます。
○三國谷企画課長 続きまして、実務界からのオブザーバーでございますが、渡辺雄司日本興業銀行常務取締役でございます。
○渡辺オブザーバー 渡辺でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 森崎公夫外国損害保険協会副会長でございます。
○森崎オブザーバー 森崎でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 中原眞東京三菱銀行専務取締役でございます。
○中原オブザーバー 中原でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 寺阪元之住友生命取締役でございます。
○寺阪オブザーバー 寺阪でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 田山泰之安田火災海上保険取締役でございます。
○田山オブザーバー 田山でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 高橋厚男日本証券業協会常務理事でございます。
○高橋オブザーバー 高橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 金子義昭東京証券取引所専務理事でございます。
○金子オブザーバー 金子でございます。どうぞよろしく。
○三國谷企画課長 なお、ウィリアム・ハント・ステート・ストリート信託銀行株式会社社長、松崎 広横浜銀行常務取締役は、本日、御都合により御欠席されております。
以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
○倉澤部会長 よろしくお願いいたします。
次に、本日の議題に入ります前に、最近の金融を巡る話題として、日債銀の国有化問題について、金融企画局信用課より御説明いただきます。畑中課長、よろしくお願いいたします。
○畑中信用課長 信用課長の畑中でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料、第二部会2−1の「日債銀の特別公的管理の開始決定について」という資料を配付させていただいておりますので、それを御覧いただきながらお聞き取りいただきたいと存じます。
御案内のとおり、去る13日(日曜日)、日本債券信用銀行におきましては、特別公的管理の開始決定がございましたので、それについて御報告を申し上げます。
まず、資料の1ページ目に内閣総理大臣の談話がございますので、これについて御説明申し上げます。
一.のところにおきまして、日債銀については、今般の金融監督庁の検査により、本年3月末時点で債務超過と見込まれたことから、監督庁は、債務超過を解消するための資本充実策について逐次報告を求めてきたが、11月16日の検査結果通知から1カ月近くが経過しようとする中で、中央信託との合併問題を含め、同行より実現性のある資本充実策が提示されなかったというふうに記述をいたしております。
第二に、金融再生委員会が15日に設立されたところでございますが、それまでの間、その権限を代行することになっておりました内閣総理大臣は、こうした状況を踏まえて、冒頭申し上げました13日の日曜日に、金融再生法第36条に基づき特別公的管理の開始決定を行い、併せて、預金保険機構による日債銀の株式の取得の決定を行ったということでございます。
なお、特別公的管理の決定は、10月23日の長銀に次いで2回目でございます。
三.のところでございますが、日債銀につきましては、特別公的管理の下で新経営陣の選任、経営合理化計画の策定、取得株式の対価の決定等の所要の手続が進められることになるわけでございます。
また、特別公的管理の開始決定と同時に、資産劣化防止の観点から、金融監督庁から銀行法に基づく業務改善命令が発出されたところであり、適切な業務運営が求められる。
今後、日債銀に対しては、金融再生法に基づき、業務に必要な資金の貸付や特別資金援助が行われることとなっており、日債銀の預金、金融債、インターバンク取引、デリバティブ取引等の負債は全額保護されるとともに、善意かつ健全な買い手に対する融資も継続されるということでございます。
政府としては、今後とも、預金者等の保護や金融システムの安定性確保に万全を期すこととしておりまして、大蔵省といたしましても、金融制度の企画・立案を所管する立場から、今般設立をされました金融再生委員会、金融監督庁、日本銀行とも緊密に連絡をとりながら、金融システムの安定性確保に万全を期してまいりたいと考えております。
次に、資料の3ページは、監督庁長官の談話が同時に発表されておりますので、簡単にポイントだけ申し上げますと、3.のところにおきまして、今般の特別公的管理の決定が年末の金融繁忙期と重なったことも踏まえ、金融システム不安や信用収縮が再燃することのないよう必要な対応をとる。
それから、4.におきまして、今般の決定の内容が内外の市場関係者に正確に理解されるよう、海外の関係当局に十分説明を行うことが述べられておりまして、私ども大蔵省としても、必要な協力を行っているところでございます。
また、5.におきましては、検査、モニタリングの強化と早期是正措置の厳正な運用など、監督権限の適切な行使について述べられております。
次の4ページは、日債銀の概要でございますので、御覧のとおりでございます。
続きまして、5ページないし6ページには、日債銀の検査結果について、監督庁の検査部が公表した資料を付けさせていただいております。この検査結果によりまして、本年3月末の同行の自己資本の状況を見ますと、5ページの3.のところにございますように、自己資本額
4,671億円に対しまして、要追加償却・引当見込額というものが、その次にございます▲
5,615億円ございまして、バランスシート上、差引 944億円の債務超過となっているということでございます。
なお、6ページを御覧いただきますと、10年3月期の検査結果の取りまとめ結果でございますが、?の欄が金融監督庁の査定、それから、?の欄が日債銀の自己査定でございます。一見してすぐおわかりいただけますように、この分類換えに伴いまして、 III 分類
7,178億、 IV 分類 1,277億、これが実は増加をして、これに伴います要追加償却・引当見込額というのが、5ページにございますように
5,615億増加をして、結果、差引で 944億の債務超過ということでございます。
その他、有価証券等の含み損が、ここにございますように 1,803億ということでございます。
以上、簡単でございますが、御報告申し上げます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明に対しまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。
杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 こういうときでないと聞けない質問を、ちょっと二つだけよろしいでしょうか。
○倉澤部会長 どうぞ。
○杉田委員 余り時間を取るつもりはないんですけど、一つは基礎的な話なんですが、2001年のペイオフ開始後に、例えば日長銀、今度の日債銀のような問題で国の管理という事態が生じた場合に、預金保証はどうなるのかと。つまり、国の管理下に入っても、それが再生できればいいんですが、再生できなかった場合に
1,000万で切られるのか。それとも国の管理下に入った以上は、再生できない場合でも全額保証されるのか。その辺はどういうふうになっているのかということを一つお聞きしたいと思います。
○倉澤部会長 お願いいたします。
○畑中信用課長 お答え申し上げます。
実は、特別公的管理は2001年3月までの時限措置でございますので、それ以降に不幸にしてこういう出来事が起こった場合には、その制度は使えないということで、通常の処理になろうかと思います。
○杉田委員 それから、もう一つ、どうも我々が間接的にいろいろ聞くところによりますと、今回の日債銀の国の管理決定が非常に迅速だった反面で、株の取引をやった人の中で、多分機関投資家なのかどうかはよくわからないんですけれども、信用取引で反対取引ができないまま終わっちゃったという人がどうもいるらしいと。そうすると、結局価格がないわけですから、反対取引をどういうことで始末をつけるのか、宙に浮いているという話を聞くんですが、この点についてはどういうふうに処理されるということになっているんでしょうか。あるいはそういう事実関係は余りないのかしら。
○畑中信用課長 日債銀の個々の取引の内容については、残念ながら私ども承知をする立場ではございませんので、その辺のお答えは御容赦いただきたいのでございますが、いずれにいたしましても、特別公的管理の開始決定、それから、先ほど申し上げました株式の取得決定を行いまして、現在、既に預金保険機構が全株式を取得をいたしております。この取得株式の価格につきましては、今般創立をされました金融再生委員会の中に株価算定委員会というものが設けられておりまして、この5名の委員で協議をされまして、この価格の決定ということに至るわけでございます。これが何ほどの価格になるかというのがこれからの問題でございますから、その決定を待って、その保有者への影響というのが確定していくのであろうと、そのように考えております。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか。
どうぞ。
○木下信用機構室長 今回の特別公的管理の決定と日本債券信用銀行株の取扱いでございますけれども、特別公的管理の決定というのは、当然のことながら、事前に何がしかのアナウンスをしてできるものじゃありませんので、今回のように、ただ今回でしたら日曜日ですけれども、一定の日に行われるということになるわけです。それで、今回の場合は日曜日に行われましたので、それから後、特別公的管理の決定をされまして、最終的に公告されますと、株券が無効になるという法律の制度になっておりますものですから、そこら辺を踏まえまして、前回の日本長期信用銀行のときと同様に、東京証券取引所、また、全国の取引所の方では、その次の日、月曜日からの商いにつきまして、上場廃止決定ということで取引はストップしたわけです。それで、そういうふうにいたしますと、当然のことながら、信用取引の売りであるとか買いであるということについて精算するということになるわけですけれども、それにつきましては、証券会社と個々のお客さんとの間で、今後決定されます日本債券信用銀行株の買取価格というものも踏まえて決定されていくと。それで、それに基づいて精算されていくというふうになろうかと思います。
ただ、今回の場合につきましては、前回の日本長期信用銀行の場合には直前の株価が2円でありましたのに対しまして、日本債券信用銀行の場合には
158円の株価であったということ。それからまた、信用売りの残高も非常に大きかったということもありますので、今回のケースを一つの材料としまして、今後こういうふうなケースの場合について、どういうことができるのか、また、どういうふうなことをすべきなのか、そこら辺については一つの検討課題だというふうに思っております。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
よろしゅうございますか。
本日は議事も詰まっておりますので、説明については、このぐらいにさせていただいてよろしゅうございましょうか。
それでは、引き続き、議事に進んでまいります。議事次第に従いまして進行させていただきたいと思います。
今日の最初のテーマは、「金融システム改革下の銀行業・銀行規制」となっております。まず、事務局に、関連素材の提供と、それから論点の提供をお願いし、引き続いて、全国銀行協会連合会の「金融システム改革の評価と銀行業の将来展望」を聞くことといたします。
それでは、まず事務局お願いいたします。
○三國谷企画課長 企画課長の三國谷でございます。お手持ちの資料「第二部会2−2」と書いております「金融システム改革下の銀行業と銀行規制について」というところで、ざっとした資料を簡単に御説明させていただきたいと思います。
とうに御案内の資料も多々あろうかと思いますが、まず、1ページ目をお開きいただきたいと思います。1ページ目は、我が国の金融の特色ということを見てみる場合に、よく言われる話といたしまして、日米における直間比率の比較ということでございます。この場合、切り口は二つございまして、個人の金融資産という切り口で捉えた場合と、それから、企業の資金調達という面から捉えた場合。上の方は、個人金融資産という面から捉えた場合に、1997年末であれば、我が国の場合、間接金融が90.3%、直接金融が
9.6%。これに対して、米国の場合には約半々ということでございます。
一方、これを企業の資金調達という形で見ますと、株式、債券等の形で企業側から直接金融という形で調達しておりますのは37.7%、アメリカの場合には、この直接金融部門が84.4%という形になるわけでございます。
これは日米比較でございますが、次のページへ移っていただきますと、各国比較でございますけれども、日、米、英、独、仏と広げますと、日本とドイツ、ドイツの方が日本よりも間接金融の割合が高い。米、英、仏が直接金融の割合が高いといった傾向が読み取れるかと思います。
続きまして、資料の3ページ目以下を御説明申し上げたいと思います。3ページ目以下は、一つの機械的な数値でございますので、この機械的な数値自体がどれほどの意味を持つかという、そういう議論はさておかせていただきたいと思います。一つは、主要国におきます銀行1行当たりの名目GDPということでございまして、日本の場合に、銀行数、それから名目GDP、こういったものを掛けますと、1行当たりの数値は、米、英、独、仏に比べまして、最後の/
でございますが、比較的多いところの数値、計数が出ておろうかと思います。
ただ、(注2)に書いてございますけれども、母体を?という国内銀行で捉えた場合、それから、協同組織金融機関まで捉えた場合でありますと、分母の数が相当変わってまいりますので、計数も大きく変容するということでございます。
右側の方でございますが、主要国におきます銀行1行当たりの人口ということでやりますと、これも日本の場合に、?ベースで捉えるか、?で捉えるかによりまして、諸外国とのそういった傾向の違いは、それぞれの別な色彩を伴ってくるということになろうかと思います。
4ページ目へ進ませていただきたいと思います。4ページ目は、主要国におきます銀行資産の対名目GDPでございまして、これから見ますと、/
でございますが、一番下の3番目の欄、イギリスが3.12、ドイツが2.50、日本が1.55で、その中間ぐらいに来ているかなというところでございます。
ただ、右の表を御覧いただきますと、主要国におきます銀行の貸出残高の対GDP比の推移という形で見ますと、それぞれ計数はいろいろな捉え方があろうかと思いますが、日本の場合には、ここ数年減少傾向にある。米、英、独は、この数値は上昇傾向にあるのではないか。フランスは、表の見方でございますが、減少かなということでございますけれども、日本はやや減少傾向にあるのかなという感じがしております。
続きまして、資料5ページ目でございますけれども、我が国の金融機関数の推移でございます。最近いろんな波動がございますけれども、実は94年3月末、今から約4年半前でございますけれども、この時点で信用組合まで含めました金融機関の数は961
行でございました。これが4〜5年の間に実は 842行になっているわけでございます。この中で信用組合の減少傾向が大きいわけでございますけれども、金融機関の数がこういった形で減少傾向にあるということは、一つトレンドとしてあろうかと思います。
一方、その中で、下の表でございますが、外国銀行の対日進出状況でございます。その着眼点は、銀行数なのか、店舗数なのか、貸出金なのか、預金なのか、資産なのかということでございますが、貸出金、預金、資産というのをそれぞれシェアで見ますと、最近着実に増加する傾向にあるということが読んで取れるかと思います。
その次に、6ページでございますけれども、ここでは、金融業と金融・保険業のGDPに占める割合というものを見てみた表でございます。このうち点線部分はアメリカでございまして、実線部分が日本。それぞれ金融・保険というので捉えたのが上の方のライン、金融のみを捉えたのが下のラインでございます。この表から見て取れますことは、アメリカの方は、GDPに占める割合というのが上昇傾向にあるのに対しまして、日本は漸減傾向にあるということが読み取れるかと思います。
下の表でございますが、民間金融機関の資産のうち銀行等の占める割合でございまして、実線部分が銀行等でございますが、ここの部分がこの実線のようなトレンドをたどっているということでございます。
7ページ目へ移らせていただきたいと思います。7ページ目は、金融機関の非金利収入の対経常収益比率という切り口で捉えたものでございます。これは、しからばどのようなものが金利収入か、非金利収入かということになりますと、必ずしも明確な線引きということでもなくて、むしろ実務界の皆様が一番お詳しいところかと思いますが、例えば非金利収入ということの中にはデリバティブ等も入りますが、一方、金利スワップなんかは資金運用収益に入るとか、いろいろ基準の違いはございますけれども、これで見て取れますことは、非金利収入の対経常収益比率に占めるウェイトはだんだん増加傾向にあるということでございます。
御注意いただきたいことは、ここの数値に出ておりますのは、いわゆる純益とかという概念ではございませんでして、全くグロスの数字でございます。したがいまして、あるデリバティブというのがあった場合に、勝ちも負けもあろうかと思いますけれども、勝った負けたのネットではございませんので、こういった収入があれば、費用の方も逆にその裏返しとしてあるということでございまして、したがって、この数値がそういった単なる収益、儲けの源というよりも、銀行行動といいますか、どのようなところでいろいろな事業展開をしているかという、むしろそういった方で仮に読むとすれば、このような傾向が読み取れるのではないかということでございます。
下の表でございますが、今度は業態別に金融機関の非金利収入の対資産比率というのを見てみますと、そこに記してあるような表という形になるわけでございます。
8ページへ移らせていただきたいと思います。8ページ目は、経常収益に占める主な科目の割合でございます。この中で、貸出金利息、それから金利スワップは、このような傾向を示しております。ただ、この表から見て取れますのは、貸出金利息だけ単一に見るのではなくて、貸出金利息と金利スワップは比でございますから、逆相関関係みたいなところにあるわけでございまして、下が増えれば上が減ると、このような関係にあろうかと思いますけれども、このような全体のトレンドでございます。
ここまでの資料、いずれにいたしましても、我が国の金融業のパフォーマンスということにつきましては、こういった指標から見る限り、若干いろいろな傾向は読み取れるわけでございます。GDPに占めるいろんな比率等は低下してくる。その中で、それぞれの銀行業の比率ということもありますが、一方でその事業形態というのも、よく言われていることでございますが、質的な変化も進行しているのではないか。それから、個人の金融資産面、企業資金調達、この直間比率をどう表現するかは別といたしまして、この橋渡しをどうするかという点も一つのテーマかと思います。この問題を、言葉の表現によりましては、「日本型直接金融」と言うのか、あるいはむしろ「日本型間接金融」と言うのか、こういういろんな捉え方があるかと思いますが、それぞれのプレイヤー、調達者、それから投資者、間に入る仲介者、広い意味での仲介者がどのような役割を果たしていくかということが、今後の一つの課題になってこようかと思います。
次へ進ませていただきます。次のページ以下は、若干視点を変えまして、銀行法上の各種の規制というのが大体どのようなことになっているかというのを組み立ててみたものでございます。一つの試みでございます。
銀行法の目的は、第1条に、いろいろ記してございますが、信用秩序の維持、預金者保護、金融の円滑と、仮にその条文に出てまいります文言を拾って三つの分類にしたといたします。これをまたどのようにするか、組立て方はございますけれども、さらにそれを構成いたしまして、参入・退出につきましてどういう規制があるか。あるいは組織に関しましてどのような規制があるか。業務に関してどのような規制があるか。行為についてあるかということで捉えました。この網掛けというのは、今般新たに付け加わったものでございます。
細かい説明は省略させていただきますが、傾向といたしまして、行為の規制、ここについて今回の金融システム改革法が幅広くいろいろなものをかけてきたと。例えば、大口信用供与規制、アームズ・レングス・ルール、自己資本比率規制、株式の取得の制限、これまでの通達から法律化するというような話でございますが、等々でございます。一方で、業務の規制につきましては、右から3番目、業務の範囲、他業制限はむしろ拡大する。あるいは持株会社のところが大変規定が整備されてくるといったものでございます。
下の方に、規制のための監督規制とありまして網掛けしておりますが、大体これは持株会社に関するものでございますので、これはそれだけのものとして御覧いただきますと、これによりましても、現在の銀行法はどのようなところに考え方、あるいは銀行法の広い意味でのコントロールというか、法的事項が着眼しているかというのが読み取れるかと思います。
それから、10ページ以下は、銀行及び子会社がどのような業務を営むことができるかといったものを記したものでございます。
時間の関係で、次に進ませていただきますが、11ページ以降は、それぞれ先般の持株会社の設立等の禁止の解除に伴う金融関係整備法、これで銀行法関係でどのようなところが整備されたかという点、持株会社の規定が幅広く整備されております。
さらに、14ページ以下は、金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案要綱でございまして、どのようなところが整備されたかといったところでございます。
なお、この資料から離れまして若干説明させていただきますと、いずれにいたしましても、金融技術の進歩、国際化、こういったものの進展等、金融関係の変化が生じております。したがいまして、新しい金融商品の登場、業務・業種間差別の縮小、あるいは中間的な金融サービス、これはいろいろな言葉の定義があろうかと思います。国際競争等ということの中で、金融自体いろいろな表現方法があろうかと思いますが、外延が広がったといいますか、あるいは内包が変化してきたといいますか、あるいはシステム化が行われたといいますか、いろいろな変化が着実に生じていようかと思います。そういった中で、組織形態の変化に対応するもの、あるいは行為規制での対応、こういったところに、いわば法的な制度の着眼点が移りつつあると。そういった中で、今後金融機能というものを考えながら、あるいはセーフティネットの問題をどう考えるか。そういった文脈の中で預金保険法、再生法、あるいは健全化法等をどうするかといった議論があろうかと思います。
なお、ちなみに、この問題につきまして、銀行関連につきまして、最近の規制緩和の要望といったものがどのようなものであるかということでございます。これは、新しいサービスの展開に関しますところの規制緩和はどういったものがあるかというのですが、大部分は、その部分は業務規制に集中してきているというような傾向が、最近の状況から言うとあろうかと思います。こういったものは、最初、通達の配信による商品等の自由化、こういった形で始まりましたが、その後、業務範囲の拡大、それから今度は子会社・関連会社を用いました業際規制緩和と、こういったところに広がってきているということでございまして、これは各界共通のところではなかろうかと思います。
それから、監督規制のうち行為規制に関しましては、届出・報告の簡素化といったような要望も大分見られております。こういったことにつきましては、相当逐次改善されているところでございますが、またさらに今後、新しい展開局面も想定されるわけでございます。考えられる論点はいろいろあろうかと思いますが、今後考えていくとすれば、銀行の公共性というのは何かといった視点、あるいは金融商品革新が行われる中で、あるいは他の金融業の銀行代替機能の高まりといったものが見られる中で、銀行というので、そういうところの本質的な機能は何かと。これはセーフティーネットとかいろいろな問題とも絡んでくるのかと思いますが、そういった点。あるいは業務拡大により生じますリスクの多様化、こういったことに対しまして、どのような制度体系、規制体系というか、あるいはセーフティーネットが考えられるのかといったようなところ等々、これから幅広い論点があろうかと思っております。
そういったところは議論にお回しすることといたしまして、取り急ぎ大ざっぱな資料紹介をさせていただきました。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうも三國谷課長、ありがとうございました。
引き続き、全国銀行協会連合会より、「金融システム改革の評価と銀行業の将来展望」、また、金融審議会に望むことなどをお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中原オブザーバー 東京三菱銀行の中原でございます。貴重な機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。ただいまお話のございました三つのポイントにつきまして、取りまとめ述べさせていただきます。
この1年間、金融界は、かつてない大変動を経験いたしまして、足元では、マスコミ等から、再生法、諸健全化法など金融システムの安定化のための諸制度について、連日大きく取り上げられてきたところでございます。まず、足元の不良債権処理とシステムの早期安定が焦眉の急であることは当然でございますけれども、今後の日本経済の構造改革に向けた金融システムの改革というものも極めて大きなテーマでございまして、その意味で、6月に成立いたしました金融システム改革法並びに新銀行法というものの意義は、大変大きなものあるというふうに理解いたしております。
御承知のとおりでございますが、平成8年11月に示されました我が国金融システムの改革、いわゆる日本版ビッグバン、この構想の目指すところといたしましては、金融機能の活性化を図り、21世紀の高齢化社会における我が国経済の活力を維持・拡大すること。そして、そのために規制を撤廃し、業態の垣根を低くして金融機関の競争条件を整備する。そして、我が国金融市場をニューヨーク・ロンドン並みの国際市場にする。そして、利用者の利便と市場の健全性・透明性の向上を図るというようなことだろうと思います。
こうした位置づけで制定されました金融システム改革法のうち、改正銀行法のポイントは、私どもの理解といたしまして、以下3点であろうかと考えております。
まず第1に、商品、サービス、組織形態等の自由かつ多様な展開の実現でございます。今月から銀行の窓口で投資信託という証券運用商品を販売することができるようになりました。このほか、有価証券店頭デリバティブの取扱いが認められるなど、銀行の提供できる商品、サービスが拡大してまいりまして、銀行それぞれが創意工夫によりまして独自の商品を提供できるようになってまいりました。
また、銀行持株会社制度が解禁されまして、我が国でも欧米諸国と同様に、持株会社、親子会社双方の形態を活用した金融コングロマリットのようなものの形成が可能となったわけでございます。
また、相互参入のタイミングこそ明示されてはおりませんが、グループの傘下に保険子会社を保有することも認められてきておりまして、このような新しい銀行法の下では、業務、組織形態の多様化を通じて、高度かつ多様な金融サービスの提供を行うための環境が整って、お客様の多様なニーズに適した魅力的な商品を提供する環境ができてきたと考えております。
第2でございますが、グループ形態による多様な業務展開が予想される中で、銀行単体に加えまして、グループとしての経営の健全性の確保、リスクの管理の枠組みも整備されたと思います。グループの範囲を明確化するとともに、幾つかの規制の適用範囲を、単体から銀行グループ、連結に拡大しております。同時に、規制の内容につきましても、諸外国の規制と整合性のあるものに整備されてきておると感じております。
第3でございますが、金融機関の提供するサービスが多様化する中で、利用者との取引のルール及びインフラの整備も行われました。すなわち投資信託、商品ファンドなど、預金等の誤認の虞のある商品につきまして、預金等でないこと等の、誤認の防止のための事項につきまして利用者に対しまして説明義務が課されておりますし、銀行業務全般につきまして、利用者への重要事項の説明等の社内規則の整備とか、この社内規則に基づく業務運営を適切に確保するための体制整備も求められております。
さらに、銀行のディスクロージャーの充実、これも単体から連結ベースでのディスクロージャーということが求められておりまして、自己責任原則の下で、利用者が自らの判断で金融機関や銀行を選ぶことを容易にするようなインフラの整備、これも進められてきておるわけでございます。
このように、今回の金融システム改革法は、利用者利便の向上という観点から、金融機関の業務や組織形態の自由化・多様化を認める一方で、経営の健全性の確保、利用者との取引のルール及びインフラの整備を行っておりまして、これまでどちらかといいますと金融機関の立場から作られていた金融制度というものでございましたが、これに関する法律の枠組みを、利用者の立場に立った、利用者の視点に立ったものに作り替えるものであるというふうに私ども理解をいたしております。利用者の利便性を拡大し、利用者と金融機関との関係の公平性を担保する。これと同時に、金融機関に対して経営の透明性を高めることを求めるという金融システム改革の狙いは、広く利用者の納得が得られるものでございまして、21世紀の金融制度の柱になるものというふうに感じております。
ただ、いろいろな審議会の報告書にも指摘されているところでございますが、例えば信託、投資信託、商品ファンドなど、株式、債券、先物商品等、個別金融商品の組合せ商品という点で、いろいろな性格を持っている商品が出てまいりますが、それぞれが異なる法律の規制を受けるというような点。また、商品の担い手とかディスクロージャーに格差が生じるというようなことは、利用者にとってわかりにくく、市場の透明性、開放性という点からも問題があろうかと思います。したがいまして、利用者利便の向上という観点から、金融システム改革をさらに進めていただく余地は、まだまだこのような点にもあろうかと考えております。
さて、銀行界は、現在大きく変貌しつつございます。海外では、この1年間に、米国のトラベラーズグループとシティコープの合併とか、スイスのSBCとUBSの合併、あるいは最近のドイツ銀行によるバンカース・トラストの買収など、極めて激しい動きがございました。我が国でも、業態を超えた提携、また、業態内での提携、それから企業グループ内での連携・提携、さらに海外からの撤退、あるいは得意分野の集中など、様々な動きが相次いで起こっているわけでございます。個別なことを申し上げて恐縮でございますが、私ども東京三菱銀行といたしましても、三菱信託、東京海上、明治生命の3社と投信の評価会社を作るとか、あるいは確定拠出年金の分野で協力して業務展開を図るとか、このようなものを進めているわけでございます。
また、事業戦略の見直し、最近のキーワードですが、選択と集中、これをいかに進めるかは、ビッグバンの下で銀行経営の死命を制するものとも言えようかと思います。私どもも先般来、ATカーニ社とコンサルティング契約を結びまして、事業ポートフォリオの内容の見直し、その戦略の見直し、この全面的な検討に着手いたしております。今後も、各金融機関がそれぞれの経営を見直していく動きは、ますます加速するものと思います。
一方で、先般成立いたしました早期健全化法。この法律は、早期是正措置制度とも効果的に組み合わせることによりまして、我が国の金融機能、システムの健全化・安定化を促すとともに、個別の金融機関の経営に自らの状況を環境に応じて改善するような自主的な努力を促すと。結果といたしまして、金融機関等の再編を通じて金融システムの効率化を促進することになるものと理解いたしております。金融機関にとりましては、公的資金の注入を受けるかどうかというような点にもかかわらず、早期健全化法の立法趣旨を十分に踏まえて、不良債権処理を引き続き積極的に進め、内外からの信認回復を狙うとともに、リストラ、業務、戦略の再構築、これを行いまして、新しい環境に応じた経営の改善を進めていく自主的な努力が急務であると、こういうふうに考えております。
こうした再編の動きを経まして、銀行業は、いわば狭い意味の銀行業務というものから脱皮いたしまして、総合的な、より広い、いわば金融サービス業。英語でよく言われますファイナンシャル・サービス・インダストリーといったサービス業の一分野へ変貌していくのではないかと考えております。アメリカでは、1975年のメーデーの際に、金融以外の異業種からの金融分野への参入が目立ちましたが、我が国でも既に一部では異業種からの参入が活発化いたしております。しかも、情報・通信技術をはじめとする技術進歩が大変なスピードで進行している中で、金融商品のいわゆるデリバリーチャネルというようなものも、そのあり方が大きく変わっていくと考えております。店舗というようなインフラがなくても、テクノロジーをいち早く使いこなすことができれば、優れたアイデアと創造力のある業者が、金融サービス業に比較的容易に新規参入することが可能になってきておるわけでございます。
このため、既存の金融業、金融企業といたしましても、従来のマーケティングや販売方法、それに則して作られていた各種のインフラや組織、人事、人事制度、こういうものの仕組みを根本的に見直していかなければならないと思います。これまでの銀行業の形態というものは、商品、サービスの開発から製造とマーケティング、販売、この全てのプロセスを自前で一貫して行おうというものでございました。しかし、金融技術の高度化、お客様のニーズの多様化、さらに新規業務をフルラインで自前で行うための投資の巨大化、こういうような要因から、機能分化が起こってくることは不思議ではございません。金融サービス業のお客様との接点というのは、一般の小売の業界と同じようなものでございます。そういう点で、金融商品の販売という面では、コンビニもあればブティックというような形態もいろいろと出てくるという一方で、規制緩和を背景にいたしまして、最先端の高度な金融技術を駆使し、利用者のニーズに適した商品の開発、供給を主たる業務とするような、いわば製造というようなものを担う金融機関も出てくることが考えられると思います。
さらに、金融の機能分化に適応するために、金融コングロマリット化というようなものの流れも活発になるかと思います。先に申し上げましたトラベラーズグループとシティコープの合併のように、欧米ではコングロマリット化の動きが出ておりますが、金融コングロマリットには、子会社間で協力して多様な商品を提供できる機動的なリストが可能、あるいは子会社独自の分化が維持できるといったような、持株会社としてのメリットがあろうかと思います。
今後の金融サービス業の経営というものは、自らの経営基盤と、人、物、金というような経営資源を認識いたしまして、金融サービス業界での自らの強みとポジション、これを適確に把握する。これによりまして、最も相ふさわしい形での独自の経営を組み立てていかねばならないと思います。そして、ほかの企業とのいろいろな形での分業、協力体制、これを促進しまして、必要に応じまして、他社、他の金融機関の資本や人材、ノウハウ、こういうものを積極的に活用していく。この活用の仕方のノウハウ、巧拙も経営として問われるようになると考えております。
最後に、今後の金融審議会においての審議につきまして、若干、個別銀行の立場からお願いを申し上げたいということでございます。
この第二部会には、下部組織として個人信用情報保護の問題とか、保険相互会社の株式会社化に関するワーキング・グループが設置されるというふうに聞いておりますが、個人信用情報保護・利用のあり方を検討することにつきましては、今年の自己破産件数が過去最高の10万件に達する見込みであるなど、多重債務者問題というのが社会問題化しつつあることは、個人信用情報が消費者の機微に深く関わる重要な情報であることから、非常に社会的意義の高いところであろうかと思います。ただし、個人信用情報保護につきましては、金融・各業界ともその重要性を十分認識しておりまして、既に自主ルールというようなものにより保護を図ってきております。検討に当たりましては、そういう実態も踏まえまして、どのような方法が目的達成のために必要かという点から、十分議論をする必要があろうと思います。
ちなみに、銀行業界におきましては、全国銀行個人信用情報センターというのがございますが、ここにおきましても、会員諸規則等により消費者信用情報の保護というようなものを図る、また、向上させるということを不断に進めております。
次に、保険に関しましては、業務上の問題でございますが、行政改革推進本部規制緩和委員会が、つい先日15日に発表いたしました規制緩和についての第一次見解というのがございますが、銀行等による保険商品の販売が取り上げられております。銀行等による保険商品の販売が、早期にかつ幅広く認められないと、販売チャネルの多様化・効率化や契約者のワンストップ・ショッピングのニーズにも対応できないということから、弊害防止措置は必要でございますが、遅くとも2001年までに住宅ローン関連の保険、信用生命保険の銀行窓販と、こういうようなものを認めること。また、銀行の子会社、兄弟会社の商品に限定しないというようなこと。早期に銀行等の販売の対象とすることが指摘されておりますが、この実現に向けて、私ども切に希望しておるところでございます。
そのほかでは、銀行等、法人とその証券子会社との間に課せられておりますファイアー・ウォールの規制がございますが、利用者の立場から再検討の必要があるのではないかと考えております。日本版ビッグバンの課題の一つは、我が国金融市場の枠組み全体をグローバル・スタンダードに合うものにしていくということでございます。我が国のファイアー・ウォールの規制というものは、米国の規制が手本とされているようでございますが、その米国におきましても、近年、従来の規制が大幅に緩和・撤廃されております。その際、そのほかの規制で目的が達成される場合は規制の重複は避けるということ。それから、顧客の誤認のリスクというものは、ディスクロージャー整備により対応することという、二つの基本原則に基づいて議論が進められておりまして、競争上の公平性を維持するために顧客利便性を犠牲にするというようなことは適当でないとの判断が、規制緩和という結果を導いているということであります。
我が国におきましても同様に、独占禁止法、銀行法、証取法で、アームズ・レングス・ルールの遵守、改正銀行法に新しく規定されました非預金商品の説明義務ルール、こういうものに基づきまして、的確な情報開示が行われれば十分であるという考え方ができるのではないかと思います。業者間競争を制限した激変緩和措置的色彩の強い現行のファイアー・ウォール規制、クロスマーケティングの禁止とか、抱き合わせ行為の禁止、共同訪問、情報の共有化等につきましては、金融機関の創意工夫の発揮と適正な競争によって、顧客利便性の向上を実現するために再検討をお願いしたいと考えておるわけでございます。
金融システム改革の実施によりまして、我が国における欧米コングロマリットの活動がさらに活発になると思いますが、そのこと自体、我が国金融機関との切磋琢磨を通じた顧客利便性の向上を図るものでございまして、金融市場の活性化に資するという好ましいことでございます。ただ、現実の問題といたしまして、同じ市場で競争する以上、その競争条件が市場で公平に形作られるようなルール作りや運用が必要であろうかと思います。こうした点も今後の御議論の際、留意していただきたいと考えております。
最後に、公的金融問題、なかんずく、郵便貯金の問題につきまして議論すべきではないかと考えております。郵便貯金は、金融市場における民間金融機関との公正な競争を妨げ、健全な市場を通じた効率的な金融サービスの提供を目指す金融システム改革の阻害要因になると思っております。今年6月に郵便貯金の公社化が決定されておりますが、国営の公社という枠組みの下で郵便貯金の問題点が国民経済全体に与える影響と、悪影響というようなものを、可能な限り軽減させる措置が必要であろうかと思います。この点もぜひ御議論いただければと思います。
これまでの審議会の議論というものは、ともすれば、それぞれの業界の利害調整が中心になりがちであったと言われております。金融制度調査会の最後の総会におきましても、金融システム改革の継続に際しましては、業際、縦割りといったものではなくて、機能中心の横断的な視点から理論的な検討を行うべきであるという発言があったというふうに伺っております。金融審議会においては、そうした指摘を受け止められておると思いますが、グローバル・スタンダードの尊重といった視点から議論をお進めいただき、顧客利便性を損なう過剰規制の排除、業態間の垣根をできるだけ低くした総合的な金融サービス提供の実現によって、金融システム改革の目的を達成していただくということにぜひ御配慮をお願いしたいと考えております。
私の方から申し上げさせていただくことは、以上でございます。ありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
この際、部会長として勝手な発言をさせていただきますが、今挙げられているような問題というのは、実はこれからこの部会で検討をするための共通の理解の一助として、御意見を承ったということでございます。今日、議論をして決着をつけるという意味ではございませんので、そういう点と、それから、もう一つは、タイムキーパーという切ない役割を私はやっておりますものですから、その点も御配慮の上、どうぞ今の事務局よりの論点提起及び全国銀行協会連合会のお話を併せて、金融システム改革下の銀行業、銀行規制等について御質問、御意見等がございましたら、御自由にお出しいただければと思います。
どうぞ、森本委員。
○森本委員 部会長の趣旨がわかってないのかもわかりませんが、2点だけ質問させていただきます。
第1点は、御報告をお聞きして驚いたのですが、時代の流れかなと思いますが、顧客利便性ということを再三強調されますが、「預金者」という言葉が確か一言も出てこなかったのではないか。あるいは聞き漏らしたのかもわかりませんが、中間ほどで、銀行業から金融業務に脱皮したいと言われたので、まあそういうことなのかなと思いますが、持株会社のレベルはともかくとして、銀行と名の付くものについては、預金者がおることが中心でありまして、その預金者というものについて、そういうふうに総合金融業の方に脱皮した場合の、銀行が預金者保護についてどのように捉えられるのか。あるいはそういう預金者の場合には小口になる可能性がありますので、それは先ほどちょっと言われた郵貯で任す気なのかと思ったら、そうでもなさそうだということで、そうすると、どういうふうに預金者をお考えになっているのか。いろいろの金利変動の預金もありますけれども、数百万円レベルなら銀行に預けておいて安心したいというのが、圧倒的多数の国民の少なくとも現時点の意識じゃないかなと思いますので、そういう点について一言メンションしていただくとともに、開示と公正な取引ルールで自由に業務を展開するのが一つの流れではあろうかと思いますけれども、その場合には、やはり違法行為をした場合に、きちっとした十分なサンクションが与えられることが必要であります。そうでないと、事前に開示しました、行為規制何とかやっていますと、口だけで結果は知らないということになろうかと思います。その観点から、例えば不適切な行為をしたときに、取締役や、さらには最近は執行役員という言葉もありますが、そういう主要な役職員に対して、例えば、これは株主からの代表訴訟ということもありますし、あるいは、例えばこういう点が自由になっているアメリカでは、クラスアクションという形で顧客がいろいろと保護されるようなスキームもあると聞いておりますけれども、そういう事後の責任について、どのようにお考えなのか、そこら辺を少しお教えいただければと思います。
○中原オブザーバー 「預金者」という言葉が一言も出なかったという御指摘を受けまして、ああなるほど、そうだったと、ややちょっと内心じくじたるところがございますけれども、「利用者」という表現、この中には預金者が大変大きな重要な位置を占めていることは当然でございます。ただ、銀行といたしましては、新しい商品がどんどん出てくる。商品ファンドも売っておりますし、投資信託も売っておるというようなところで、「預金者」という言葉だけで特定のところを取り上げるということが必ずしも適当でないものですから、「利用者」と。また、これは融資の方のお客さんもございますので、私のプレゼンテーションの中では「利用者」という一般的な表現で申し上げさせていただきましたが、預金者保護は当然ながら、まず、預金業務というのは当然ながら銀行業の中の大変重要な部分でございまして、これをないがしろにするようなことは全くございませんし、預金者保護というのは、公的なセーフティーネットと、それから個々の銀行の情報開示、それからサービスというようなものを通じて、適切に行われるべきものであることは当然でございます。
また、全銀協といたしましても、利用者、預金者とのいろんな約定類の、より公正なものにするための見直しというようなものも現在いろいろと行っておりますし、御心配のような、預金者というものが今やどこか別の片隅の方に行ってしまうような今後の展開なんだろうかということにつきましては、そのようなことは絶対にないということは申し上げておいてよろしいかと思います。
それから、もう一点は、経営としての何といいますか、おっしゃる意味は、不適正な経営としての行動、あるいは銀行としての行動があった場合の自主的なサンクションといいますか、規制と、それから、公的なペナルティについてどうかということだろうと思いますが、これは当然、銀行としての公共的使命というものを自覚した上での経営でございまして、その点から、まず公的な面では、新銀行法の下でディスクロージャーの不実記載とか、このようなものについては厳しいペナルティが明示されておりますし、また、銀行内部といたしましては、ここ一連のいろんな事件のこともございまして、内部にコンプライアンス委員会を作る、あるいはコンプライアンスマニュアルを作る、倫理規定を作る、あるいは業務監査委員会を設けると、こういうような内部的な組織、それからルール、諸制度、こういうものを作りまして、不適切な行動が起こらないよう、また、起こっても事後的に直ちに処置がとれるような対応を進めてきておりますし、また、さらにこれにつきましては拡充していくつもりでございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ほかにございましょうか。
今の利用者か預金者かというようなことについて、池尾委員か、翁委員か、深尾委員か、何か今後のあり方を考えるときに、銀行の独自性というようなもののあり方との関係で何か御意見ございますか。
では、深尾委員、お願いいたします。特にありませんか。
この問題は、もちろんこれからまさに銀行の業務が多様化していくときに、「銀行とは何か」論ということで、この委員会の後からの検討の対象にもなろうかと思いますので、今、もし何かお考えがあったらと思って、ちょっとお声をかけただけでございます。
ほかに御質問、御意見等、ほかの点でも結構ですが。
どうぞ、貝塚会長。
○貝塚会長 私は、全く個人的な意見ですが、要するに銀行業というのは、今から50年ぐらい前から、金融サービス全体の中でシェアを落とすのではないかとか、機能が、やはりそういう問題意識がもう随分前からあることはありまして、ですから、もう一回行こうかなと思って、私も金融の方は専門にしておりますが、ディクラインという言葉が時々使われている。それは、ある方が繁栄している部分があるんですけれども、そういう問題意識も基本的に長期的にあるということと、それから、日本の現状がどういうふうになっているか。これは専門家の方がいろいろおられるわけですが、その点は割と重要なポイントになっているということは確かだということだけちょっと申し上げたい。これは全く個人的な意見です。
○倉澤部会長 池尾委員、お願いいたします。
○池尾委員 折角ですから申し上げます。
銀行あるいは金融サービス企業の利用者一般の中で、預金者が別格といいますか、特別な地位を占めるというのは、一つはセーフティーネットとの関係という論点が非常に大きいと思います。金融サービスのその他の利用者に対しては、特に公的なセーフティーネットというのは提供されていないわけです。保険契約者はちょっと別ですけれども。それに対して預金者、とりわけ小口預金者に対しては、預金保険制度に代表されます公的なセーフティーネットが提供されているというところをどう考えていくのかというのが基本的な論点になるように思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ただいまいわば自ずと問題が提起されましたけれども、その銀行機能や規制体系の整理は、安心で活力のある金融システムの構築に向けて欠くべからざる作業であるように思います。そのような重要性に鑑み、この銀行論についても、より専門的観点から議論を深めるインフォーマルなワーキング・グループを設けることが適当ではないかと考えます。その点と、それから、グループの設置及びそのメンバーの選任につきまして、他のワーキング・グループ同様、私どもに御一任いただければと存じますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、大変どたばたと話を進めさせていただいて恐縮でございますけれども、本日の第2のテーマであります「保険相互会社の株式会社化」に移らせていただきます。
本テーマにつきましては、前回会合でワーキング・グループの設置が了承されており、今日はそうした作業に先立って、この部会メンバーに当該テーマについての共通理解を形成しようというものでございます。スピーカーは生命保険業界にお願いしてあります。寺阪さん、お願いいたします。
○寺阪オブザーバー 住友生命の寺阪でございます。
部会長からもお話しございましたとおり、本日は、保険業界を代表いたしまして、保険相互会社の株式会社化につきまして御説明をさせていただきたいというふうに存じます。
現在、保険相互会社の相互会社としての最大の課題の一つが、相互会社から株式会社への組織変更の問題でございます。来る2001年に完了が予定されておりますビッグバンを踏まえまして、昨今、金融機関の自己資本強化の動き、資本提携・再編の動きが日々加速している状況にございます。しかしながら、相互会社は、このような自己資本強化面、資本提携面におきまして、株式会社と比べて相対的に大きなハンディを負っているのが実情でございます。ビッグバン以降の本格競争に臨むに当たっては、株式会社と同一の条件下で競争を行えることが大前提だろうというふうに考えてございます。そのためにも、保険相互会社が経営の選択肢の一つとして、早期に株式会社化を果たせることを、ぜひとも可能としていただきたいと強く要望している次第でございます。
御高承のとおり、法律的には、既に現行の保険業法におきまして、相互会社が株式会社化する規定が存在してございます。しかしながら、この規定に従いまして株式会社化することは、莫大な時間とコストを要することをはじめといたしまして、様々な問題を伴うということから、現実には極めて困難であることがわかってまいりました。したがいまして、現在、各方面に対しまして迅速かつ簡易な手続により株式会社への転換を果たすことができるよう、関連する法制度並びに諸条件の早急なる整備を要望しているわけでございます。
保険相互会社が株式会社化するための規定整備の必然性や、現行業法の問題点及びその解決の方向性につきましては、生命保険協会におきまして、本年8月にプロジェクトチームを設置して検討を進めてまいりました。プロジェクトチームには、現在、生命保険業界にございます相互会社15社全社が参加しておりますが、その議論の成果が、お手元の「生命保険相互会社の株式会社化規定整備に関する要望書」でございます。相互会社形態をとる保険会社は、損害保険業界にも2社ございます。損害保険相互会社におきましても、「損害保険相互会社の株式会社化に関する要望書」として考え方を取りまとめてございますので、本日、お手元に資料として配付させていただいております。5ページから11ページが生命保険業界のもの、12ページから15ページが損害保険業界のものでございます。
それぞれの要望書につきまして、個別に御説明をさせていただくべきかもしれませんけれども、共通の部分も多いため、生命保険業界におきまして作成いたしました要望書に沿いまして、株式会社化に関します業界の現段階での考え方を説明させていただき、最後に、損害保険相互会社の問題について触れさせていただきたいというふうに存じます。
要望書の内容を説明させていただく前に、御参考として、資料の4ページでございますけれども、補足資料を御覧いただきたいというふうに思います。この説明は省略をさせていただきますけれども、資料にございますような内容が、株式会社と相互会社との主要な相違点でございます。
それでは、要望書の内容につきまして説明をさせていただきます。
ページ1から3が資料でございまして、資料を御覧いただきたいと思います。
まず、株式会社化規定整備の必要性ということでは、資本調達能力の向上、事業展開の自由度の確保、破綻回避、国民経済的メリットの4点を掲げてございます。
1番目の資本調達能力の向上ということでございますが、保険相互会社が現下の大規模かつ急激な金融環境の変化に対処していくためには、リスクバッファーを充実させて金融機関としての信頼性をより高めることや、成長分野へ迅速に資本投下を行って保険契約者の利益を向上させるといったことがぜひとも必要であるというふうに考えてございます。しかしながら、保険相互会社は、自己資本調達手段が実質的には基金というものに限定をされており、新株発行をはじめ多様な調達手段を持つ株式会社と比べまして相対的に自由度が低いというハンディを負ってございます。このハンディを乗り越えまして、短期間で自己資本を充実・強化するためには、株式会社に早期に転換をするということが最も近道であるというふうに考えてございます。
2番目のポイントといたしまして、事業展開の自由度の確保を挙げてございます。現在、金融業界を巡りましては、異業種の参入を含めまして、世界規模で企業同士の資本提携・再編の動きが活発化してございますが、ビッグバン後の新たな枠組みの下での競争局面を考えますと、限られた経営資源を最大限有効に活用するために最適な組織形態、会社形態というものを選択できることが、ぜひとも必要と考えます。
しかしながら、保険相互会社におきましては、構造上、川上持株会社の活用が不可能であるなど、事業展開面で多くの制約を受けているのが実情でございます。保険相互会社にも、株式会社化や持株相互会社の活用により、組織形態選択の自由度を広げることを可能としたいという要望でございます。
3番目は、破綻回避ということでございます。特に準破綻段階の保険会社が相互会社である場合は、これを株式会社形態に転換できれば、多様な手段で迅速に資本増強が図れるとともに、有力スポンサーの子会社化による救済の道も開かれることになります。実際、諸外国におきましても、このような方法により保険相互会社の破綻を未然に防いだケースが多く見られるようでございます。
最後に、4番目として、国民経済的メリットが考えられます。株式会社化により、保険相互会社各社の経営基盤が一層盤石となれば、保険契約者利益にかなうとともに、保険業全体への信頼性向上につながることが期待できます。特に、現下の金融システム全体の安定性が揺らいでいる状況に鑑みますと、その一翼を担う保険相互会社が事業基盤を強固なものにするという意義は大きいものと考えられます。
さらに、競争条件の整備や株式市場の活性化を通じて、ビッグバン以降の金融機関同士の競争が実りあるものとなりましょう。
次に、現行業法上の問題点でございますけれども、これは、社員権の補償が株式の交付に限定されている、もう一点は、寄与分計算のあり方につき不明確な点があるという2点に集約されると考えられます。
現行業法は、相互会社の社員、すなわち保険契約者は、組織変更計画書の定めるところによりまして、組織変更後の株式会社の株式の割当を受けるという規定がございます。しかし、この規定に従いまして保険契約者であります相互会社の社員1人1人に株式を割り当てれば、社員数が少なくとも数百万人に及ぶ大手生保におきましては、膨大な数の株主と大量の端株及び端株未満が発生するという問題が生じるわけでございます。これは、株主総会の運営面、管理コストの面で大きな問題となるばかりでなく、場合によりましては、全株式の大半が端株という、商法上、恐らく想定はされていない株式会社になることが予想されます。
また、社員への株式の割当は、社員の寄与分に応じて公平になされねばならない趣旨が規定をされておりますけれども、この寄与分計算の具体的算出基準につきましては、必ずしも明らかでない点がございまして、早期の株式会社化実現を目指す相互会社にとりまして、大きな支障となることが懸念されておるわけでございます。
このような保険業法に関する問題点を解決する方向性として、要望書の中では、6点を提示させていただいております。
資料を御覧いただきたいと思います。現行業法に従いまして、相互会社自身が法人格を変えずに株式会社となるためには、特に、以下申し上げます3点が問題解決の方向性として考えられると思います。
第1点が、株式以外の手段による社員権の補償を認めるという解決策でございます。
現行業法による株式会社化に伴う問題点の多くは、株式以外の手段による社員権補償を認めることで解決され得ると考えられます。諸外国の株式会社化の事例も参考にしながら、我が国においても、株式の交付以外に現金の交付、保険金の増額、新株引受権の付与等、また、株式の交付を受けた場合であっても、簡易に換金できる方法も含めて、それぞれの株式会社化を行う相互会社の実情及びその社員の意向に合わせて、多様な補償手段が可能となる法整備が行われますことをお願い申し上げます。
2点目が、端株の処理でございます。
現行業法におきまして、端株未満につきましては、これを換金して契約者に分配することが可能でございますが、大量の端株が発生する保険相互会社の株式会社化の場合には、特例として、端株部分もまとめて売却をし、その売却代金を分配する方法を早急に導入をしていただきたく存じます。
また、従業員持株会社準じまして、旧社員持株会というような仕組みを導入することについては、端株・端株主管理についての事務負荷の問題、議決権の問題等もございますけれども、懸念される多くの問題を解決することができるということが予想されますから、これにつきましても法整備を御検討いただければというふうに存じます。
3点目が、寄与分計算のあり方を明確にする点でございます。
株式会社化の際、当局によります組織変更の認可に当たりましては、認可基準の透明性が求められるというふうに考えられます。寄与分の計算方法につきましても何らかの具体的指針がその際示されることが望ましいというふうに考えてございます。
ただ、この場合、その指針はあくまでモデルとしてのものであってもらいたい。個々の会社によりまして、過去の内部留保形成過程、保険種類毎の過年度への剰余金の寄与度等は様々でございまして、現時点で存在する契約者利益を考慮した株式の公正・公平な分配の方法は、必ずしも画一的に定める必要はないというふうにも考えてございます。
実際、アメリカのユニオン・ミューチャル社、エクイタブル社の事例を見ましても、寄与分計算法は異なっております。また、アメリカでは、寄与分を勘案して株式の割当が行われておりますけれども、イギリス等においては、寄与分によらない方法がとられております。さらに諸外国の事例を詳しく見ますと、ニューヨーク州の第四方式のように、個々の会社の事情を勘案して、公正・公平性に配慮した上で、保険監督官が個別に認可する方式が規定されてございます。したがいまして、株式の割当につきましては、組織変更の円滑な実施を図るためにも、各社の経営判断に重きを置いた上で、柔軟に認めていただくようお願いをしたいと考えてございます。
このほかにも、諸外国で既に実質的な株式会社化手法として導入されてございます包括移転方式、持株相互会社方式といった方法が考えられます。資料のでございます。
包括移転方式は、相互会社が株式会社でございます第二会社を設立して、そこに保険契約の全てを包括移転することによりまして、実質的な株式会社化を果たす方法でございます。この方法は、現行業法を特に大きく変更することなく、スピーディに株式会社化を可能にするものと考えられますが、その実行のためには、包括移転の際に社員権補償をどのように行うべきかについて、現行業法上明文化された規定が存在しないという点が問題になります。この点を何らかの形で明確化すべきというふうに考えますが、検討に当たりましては、組織変更のスピードを重視する観点から、社員権補償方法の多様化・簡略化に極力配慮を願えればというふうに存じます。
併せて、包括移転に伴う根抵当権などの権利移転の問題、移転先株式会社における検査役検査の問題、移転先株式会社におけるソルベンシー・マージン確保の問題等々につきましても、御配慮いただくようお願い申し上げます。
実質的な株式会社化を果たしますもう一つの方式が、持株相互会社方式でございます。
持株相互会社方式は、相互会社自身は株式会社になることなく持株会社となりまして、傘下に保険株式会社を置くということによりまして、実質的な株式会社化と川上持株会社創立を同時に果たそうとする方法でございます。この持株相互会社制度は、米国を中心に導入の動きが活発化しておりますが、本制度の採用によりまして、先に御説明申し上げた寄与分計算や株式割当といった、現行業法に従って株式会社化する際に直面する問題の多くは解決される可能性があるというふうに考えてございます。
さらに、近時、ビッグバン対応として、持株会社設立を視野に入れた提携等の動きが活発化している状況に鑑みますと、生保相互会社におきましても、持株相互会社を通じた提携の選択肢が望まれるところでございます。
したがいまして、持株相互会社制度の導入につきましても、法制化を早急に御検討いただきたくお願いをいたします。
なお、保険業法に、現行業法に従った株式会社化、組織変更目的で行われる包括移転及び持株相互会社設立ともに現行法制度の下では課税問題の発生が大きなネックとなります。特に包括移転によります株式会社化は、株式会社化の際の財産移転、包括移転ともに実態的には同一組織内での移転に他ならないことから、税制的には中立と解釈できると考えられますけれども、現実には課税問題から断念せざるを得ない状況にございます。したがいまして、株式会社化の手続において発生いたします各種課税に対しましては、特例措置をぜひとも御検討いただきたくお願いを申し上げます。
最後に、組織変更完了後の早期の株式公開を可能とする点につきましても御配慮をいただければというふうに存じます。
公開時期を早めることは、市場からの迅速かつ広範な資本調達を可能とするばかりでなく、株式以外の社員権補償手段を採用する場合に市場価格を補償基準とするということを可能とするというメリットがございます。もちろん、株式を公開するか否かは、あくまで個別会社の経営判断でございますけれども、今申し上げましたような効果が認められますことから、東証等の上場基準の緩和につきましても、そういうことも含めまして、早期の株式公開を可能としていただきたく、要望をさせていただきます。
以上が保険相互会社の株式会社化に関します現時点での生保業界の要望でございます。
冒頭申し上げましたように、損害保険相互会社につきましては、損害保険契約が1年間というように、生命保険契約に比較しまして短いことや、1件当たりの保険料につきましても、非常に少額のものが多いという特徴がございます。これは、損害保険相互会社においては、純資産が小さいにもかかわらず契約者が多いというふうになるわけでございますけれども、生命保険相互会社に比較して、端株や端株未満になる契約者が多数発生するということと、契約者1人当たりの割当額もごく少数となるようなことがあるというようなお話も伺ってございます。このため、問題解決の方向性として、先ほど御説明をさせていただきました考え方を、損害保険相互会社のために若干修正することも必要となる場合もあるというふうに思われます。
現に、現行組織変更規定の制定に当たりまして、模範とされましたニューヨーク州保険法におきましては、生命保険相互会社の株式会社化規定とは別に、損害保険相互会社の株式会社化が規定をされてございます。
最後になりますが、株式会社化につきましては、特に法律面、税制面で課題が大きいものというふうに考えてございます。各委員の皆様におかれましては、今申し上げましたような種々の要望を御勘案いただきまして、早急なる御検討のほど、よろしくお願いを申し上げます。
どうもありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの報告につきまして、御意見、御質問等がございましたら、御自由にお出しいただきたいと思います。
江頭委員、お願いいたします。
○江頭委員 お話を伺いまして、考えられる問題解決の方向性及び留意点で挙げられた点は、よく理解できる点は多いんですが、1点だけお伺いいたしますと、9ページののところの「寄与分計算のあり方を明確にする」ということに関してでありますが、これは法律問題としては、端的に言って、「その他当局が公正・公平と認める方法」というのを法律に1カ条書いてくれということなんであって、これが実現すれば、各保険会社側としたら、現行法上認められない何らかの方法を考えて、それを当局が認めることでもいいことにしてくれということなんですが、具体的にどういうことをやりたいというふうにお考えなのか。アメリカなんかで具体的にやっているのは、少額契約者に対して政治的な配慮からばらまきをやるということだと思うんですけれども、端的に言ってそういうことをやりたいのか。やりたいのであれば、なぜそうしなければいけないのか。その辺のことをもうちょっと具体的に、
についてはお話しいただければと思いますが、簡単で結構です。
○寺阪オブザーバー ただいま私の報告の中で、いろんなな方式があるということを申し上げておりますけれども、諸外国の事例等々を見ておりますと、必ずしも現在の業法の規定してあるような考え方のみで株式会社化をしていないケースもあると。特にヨーロッパ系の相互会社が株式会社化をする場合には、私どもから見ますとかなり大胆なやり方で株式を配布しておるというような事例も見えますので、そこらあたりも含めて、多様な選択肢が私どもに与えられるということが望ましいというふうに考えているのでございます。その具体的な選択肢につきましては、今後の研究会の中で、生命保険業界として情報収集をしてございますので、御披露させていただければというふうに考えてございます。よろしゅうございますでしょうか。
○倉澤部会長 江頭委員、よろしゅうございますか。
○江頭委員 はい。
○倉澤部会長 ほかに。
深尾委員、お願いいたします。
○深尾委員 お伺いしたい点は、現在、生命保険会社の場合は、高い利回りの予定利率の保険契約の存在があると思うんですけれども、こういったところについて寄与分を考えますと、多分マイナスになるのではないか。場合によっては全部がマイナスになって、債務を時価評価した場合に純資産がマイナスになっている可能性もあるのではないかと思われるわけです。その場合は債権を切り捨てるのか、あるいはそれでも株式会社化ができるのか。このあたりについて、高利回りの予定利率の処理、それから、株式会社化にする場合の自己資本の開示といいますか、財務諸表の開示においての債務サイドの時価についての開示について、こういった点をお伺いしたいと思います。
○寺阪オブザーバー ちょっと後ろの方がよくわからなかったのでございますけれども、後ろの方をちょっとすみません。
○深尾委員 つまり、株式会社に変換する場合においても、当然開示の問題も出てくるかと思います。ディスクロージャーの問題です。この場合、例えばソルベンシー・マージンについても、資産サイドについてのリスクはカウントしておりますけれども、負債サイドのリスクは全くカウントされていないと理解しております。高金利で、高い予定利回り、予定利率を設定した長期の負債について、その時価について開示する必要がそもそもあるのではないか。また、そういった場合に、過去の寄与分について逆鞘になっているような、例えば長期の個人年金ですね。こういったものについての寄与分がマイナスのものについてどう考えていらっしゃるのか。また、現在のような株価を考えた上で資産・負債を時価評価しますと、相互会社としても既に純資産がマイナスの生命保険会社があるのではないかと疑っておるのですけれども、その場合について、どういうふうにこういった問題を考えていらっしゃるのかということです。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか、寺阪さん、質問の趣旨は。
○寺阪オブザーバー はい。ちょっと多岐にわたっておったようでございますので、全部を正確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、純資産がマイナスかどうかというのは、個別会社の問題でございますので、私もよく承知をしておりませんが、理屈だけの話をいたしますれば、純資産がマイナスになっている状況の中では、株式の分配というのは現実には行われないことになりますので、これは株式会社化というテーマにつきましては、余り考慮する必要はないのかなと。もしそうであれば、どこかから資本を調達して、純資産がプラスになるようなことをやれば、それだけで済むのではないかなというふうに、ここら辺は割り切って考えておるのでございますけれども、それができるかどうかは別でございますよ。
そこはそういうふうに考えておるのでございますが、一般的に株式会社化をするときには、どのような方法で私どもが株式会社化をしていこうかというふうに、今研究をしているところでございますけれども、まさに透明性、あるいは公正さ、公平さ、こんなものが問われるわけでございますから、会社が単独で物事を、もちろん会社の機関がございますから、取締役会、あるいは社員総代会、あるいは社員総会、そこら辺の手続は踏まえるわけでございますけれども、恐らく諸外国の事例等を参考にいたしますと、第三者の何らかの会社、インベストメントバンクのようなものが介在をしながら株式会社化を進めることになるんだろうというふうに思います。あるいはアクチュアリーファームでございますね、そのようなものが介在。あるいは公認会計士のような立場の方、そのような方々も関係者として巻き込んで株式会社化をしていくようになるのではないかというふうに考えてございまして、ディスクローズの問題でありますとか、資産と負債のマッチングの問題でございますとか、そこらあたりの御指摘のようなポイントは、そういう関係者の間できちっと評価をしていただいた上で株式会社化を進めると、そういうふうになるのではないかというふうに考えてございますので、その段階で明らかになるものが出てまいるんであろうというふうに考えてございます。
○倉澤部会長 深尾委員。
○深尾委員 寄与分がマイナスになる場合というのは、当然たくさんありまして、今申し上げた長期の個人年金でなくても、加入直後の場合ですと募集費用なんかがかかっていますから、当然マイナスになっているわけです。そもそもこの法律の寄与分計算についても、全部がプラスであるというような仮定の下で書かれているような寄与分の計算方式かのように読めるわけなんですが、それがマイナスの場合についてどう考えるのかというのが、一つの大きなポイントになるのではないかと思いまして、その点について。
これについては、住友生命の丸山さんの書かれた商事ホームの論文で、包括移転による相互会社の株式会社化というところでも、相当数がマイナスになるといいますか、特に新しい保険についてはマイナスになるという点が指摘されておりますので、それについてお考えをと思いましたけれども。
○倉澤部会長 よろしゅうございますね。
○深尾委員 お答えいただけないなら仕方ないです。
○寺阪オブザーバー わかりました。
○倉澤部会長 お答えいただけなければということでございました。寺阪さんから伺いましょう。
○寺阪オブザーバー これは基本的な寄与分計算の考え方の問題になるんだろうというふうに思いまして、現在の業法の規定をそのまま計算式で計算をいたしますと、ひょっとするとそういうことがあるかもしれない。しかし、別の方法もあるのではないかというのが現段階での私どもの考え方でございまして、その別のものがあるのかないのか、そういうことも含めて議論をさせていただければ、あるいは私どもの問題提起を具体的にさらにさせていただければというふうに考えているところでございます。
○倉澤部会長 今後の討論の論点とさせていただくということで、深尾委員、よろしゅうございますか。
○深尾委員 はい。
○倉澤部会長 杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 私は以前、ここにいらっしゃる江頭先生なんかと一緒に保険審議会の特別部会に参画いたしまして、保険業法の改正の最初のところの議論に参加いたしました。その当時以来、私は、保険会社が相互会社への転換は認められていても、株式会社への転換は認められてないというのはおかしいと。これは2ウェイにすべきであるということで一貫して主張してまいりまして、皆さんもそういうふうにお考えになって、今度のような保険業法が出来上がったわけなんですが、ですから、その点では全く今の流れに異論はないんですが、一つだけ、私自身ちょっと納得できない点があるのは、当時、保険業界の大半の皆さんは、この主張をすることに対して大変嫌悪感というか、非常に嫌がられたんです。私に対しても、「杉田さん、あなた妙な発言をしているね」というような感じで、随分御忠告を受けまして、保険業界はそういう考え方はないよということで、随分私もいろんな御意見を承りました。ですけども、制度改正なんだから、そういう制度を設けること自体は別に問題じゃないじゃないですかと。ですから、やりたい人がやればいいので、やらない人はやらなきゃいいんじゃないかということで御説得申し上げた記憶が非常に新しいのでございます。
ところが、昨今、ここのところ急速に皆さん株式会社、株式会社ということで、今一斉に声が上がってきていると。それはそれで非常にいいと思うんですが、言われている理由の幾つかは、例えば資本の調達の問題とか、業務の多様化の問題、それは当時からわかっておったわけなんですね。ビッグバンの問題というのは、それほどまだわかってなかったかもしれないけれど、そういう流れにあるということはわかっておったんですが、なぜ急にこんなに皆さんが一斉に株式会社化へというふうに走っておられるのか、ここがちょっとよくわからないというのが質問の第1点であります。
第2点は、今の深尾先生の質問と多分同じだと思うんですが、これもちょっと私、素人風に書き替えて御質問したいと思うんですが、相互会社から株式会社に転換する際に、既存の既契約の中で利回りの高いもの、つまり株式会社にすると、もしかすると赤字要因になるかもしれない商品の利回りをそのまま継続されるのか、それとも、ここで一旦株式会社に制度転換するに当たって、ここを見直すという可能性があるのか。この2点について、ちょっと今の業界の中の考え方をお伺いしたい。
○倉澤部会長 寺阪さん、お答えいただけますか。
○寺阪オブザーバー なかなか難しい問題でありまして、業界でどう考えるかというよりは、これはまさに個別それぞれの会社がどう考えて株式会社化をやっていくのかというふうに考える問題だろうというふうに思うのでございますけれども、特に後段はそのように思います。
前段の、なぜみんな急いでいるか、みんながこうなったかというお話でございまして、私ども株式会社化に転換、これも個別会社で考えておる話でございますけど、株式会社への転換規定を創設していただいて、大変業界は喜んだわけでございます。私どもも早速、株式会社に仮に転換をするとすれば、どのようにすればいいのかなというようなことを平成8年の4月以降、その前ぐらいから検討してまいりましたけれども、本日申し上げましたようなことが問題点としてあるということで、現行法のままではなかなか株式会社化ができないのではないかと、そんなことに直面しておりまして、もちろん私どもの会社のみでこの問題を検討しているということではなくて、実情を申し上げますと、インベストメントバンク等々、お互いに多少秘密を守らなきゃいけない部分がありますので、どことどういうふうにやっているとは申し上げられませんけれども、コンフィデンシャルな形で具体的な株式会社のなり方を研究は進めております。恐らく私ども以外の会社でも、そのような研究を今現在進められているんだろうというふうに思います。
したがいまして、一般論で言うと経営の一つの選択、組織変更の一つの選択肢の中に株式会社化ということを入れてくださいと、このようなことを申し上げておりますけれども、そういうことを強く望む会社は、研究が相当進んできておるのではないかなというふうに思います。その研究が進んできた中から出てきておる株式会社化を早急に、早期に実現できる道について、どうなのかということが直面している問題になってございまして、基本的に株式会社化になる道は既にあるということで、審議会の皆様方に御議論いただきまして、8年4月の業法改正は大変意義があったというふうに感謝をしているわけでございますけれども、現在の話が、そういう個別会社のニードが、早くなりたい。その早くなりたい理由の背景は、2001年4月以降、ビッグバンが日本でも完了すると。そういう中で、競争条件の公平性でありますとか、そんなものが図られた形で競争に参加したいと、そんな願いからでございます。
それから、後段は、これもなかなか難しい話でございますけれども、いろいろな考え方があるんだろうと思っておりますが、保険契約を一旦締結いたしますと、締結した保険契約で補償しております金額につきましては、ずっと補償していくというのが基本的な保険会社の使命、あるいは責任であろうというふうに考えておりますので、何かの機会にそのようなことをやるということが、果たしていいことなのかどうなのか。これは経営の重要なテーマでございまして、そういうことをやるということを保険会社の社員の皆様が望むのであれば、そういうこともやればよろしいでしょうし、恐らくはなかなかそういうことを全員が望むということにはならぬのではないかというふうに考えてございますので、予定利回りを変更して何らかの措置をするということは、なかなか難しいのではなかろうかと、現段階ではそのように考えてございます。
○倉澤部会長 まさにこれも今後また論点として浮かび上がってくると思いますので、今日のところはよろしゅうございますか。
大変恐縮でございますけれども、押せ押せになっておりますので、議題としては3番目ですが、議事のプログラムの4.「個人信用情報保護と利用について」に進ませていただいてよろしゅうございましょうか。
それでは、本日最後のテーマ、「個人信用情報保護と利用」の問題に移らせていただきます。
本テーマのワーキング・グループの設置も前回承認されております。このワーキング・グループは通産省の産業構造審議会と割賦販売審議会とのジョイントのワーキング・グループであり、現在、メンバー等につき関係先と調整中でございます。
本日は、当該テーマについて部会メンバーに共通理解を形成すべく、これまでの議論について事務局より紹介させていただきます。調査室長、よろしくお願いいたします。
○津曲調査室長
資料の「第二部会2−4」に基づきまして御報告させていただきます。この資料は、お手元に配ってございます「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」の冊子の中から抜き刷ったものでございます。
まず、金融制度調査会の答申の中でも、この個人信用情報保護と利用促進についても検討すべきである、行うべきであるという指摘がございまして、個人信用情報保護・利用に関します懇談会というものが、通産省と大蔵省での共同で作られました。これが平成9年の4月に作られまして、平成10年6月12日に取りまとめられたものでございます。
まず、この懇談会の趣旨でございますが、こちらは、片や金融機関、貸金業者、クレジット業界などの与信業者や信用情報機関からの情報漏洩が社会問題になっているということ。それから、国際的にも個人情報保護の強化の流れがあるということでございまして、例えばこの資料を付けてございますが、EU諸国、それから米国、さらにアジア太平洋地域でも多くの個人情報の保護の整備が行われてきているところでございます。この中で我が国の状況を見ますと、電子行政情報に係るものの立法はございますが、それ以外のところの保護立法がまだ未整備の状況にあるということでございます。
では、どうしているかというところでございますが、一般的には、個人情報につきまして、通産省の方が一つはガイドラインを出しておりまして、このガイドラインに基づいて各業界ではまた自主的なルールを作っているというところでございます。また、金融業界につきましては、金融情報システムセンター(FISC)の方でガイドラインを作っておりまして、このガイドラインに基づいて、またそれぞれの各業態、各業界がルールを作って自主的に対応しているというのが今のところの現状でございます。ただ、これはガイドラインでございますので、法的な拘束力はないというところでございます。
また、他方、与信業務の方が、与信に当たりまして個人信用情報というのを収集し、蓄積して利用するということが、こういうことによりまして信用情報機関として情報を共有しているわけでございますが、個人破産の急増等、多重債務問題の解決のためにも、このような情報交流の推進が必要であるという指摘もなされているというところでございます。
このような背景の下でこの報告書がまとめられてございまして、その概要でございますが、2.の「報告書の立場」というところでございます。
個人信用情報につきましては、与信時に半ば強制的に提供。それから、個人信用に係るセンシティブな情報だ。業者間で共有されている。それから、経済的価値 が大きく盗用等の事件も発生しているなどの特徴があるということで、個人情報一般ということがございますが、それに先駆けて措置するという可能性も含めて、この保護・利用のための法的措置をできるだけ早期に講じるべきではないかということが、まず書かれてございます。
それで、このような個人情報一般の保護法の中で措置、それから、消費者信用に係る一般的な保護法の中で措置というような考え方もいろいろあるだろうということで、この懇談会の報告書を基に広く活発に議論をしてくださいということになっております。
では、どういうことになるかということでございますが、3.と4.で、3.の方が「個人信用情報の保護のための措置」、それから、片や「個人信用情報の利用促進のための措置」というものがあるだろうということでございまして、保護の方の措置といたしましては、例えば個人信用情報の収集に当たっては、説明、それから同意をとったらどうか。それから、ハイリーセンシティブな情報(国籍、信教、保健医療、犯歴等)の収集は原則として禁止すべきではないか。それから、?でございますが、情報主体の個人の権利として、自分の情報についての開示請求、それから、誤った情報の訂正請求、それから、本人の意思に反した利用に対する異議申立というものを認めることはどうか。それから、個人信用情報の保護を担保するための民事、行政、刑事の整備をしたらどうかということが書かれてございます。
それから、4.目でございますが、利用促進のための措置ということで、利用促進そのものにつきましては、適正与信実施のために不可欠な社会的なインフラであるということを位置づけをした上で、各信用情報機関をまたぐ情報交流を促進する。それから、ネガティブ情報だけではなくて、ポジティブ情報の交流まで拡張したらどうか。そういうようなことを検討したらどうかというふうなことが書かれてございます。また、信用情報機関は適正に運営を行う機関に限定し、例えば登録制とすることなども考えたらどうかというようなことが書かれてございます。
大変簡単でございますが、この懇談会の報告書の内容を御報告させていただきました。ありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御報告につきまして、御意見、御質問等がございましたら、御自由にお出しいただきたいと思います。
特にございませんでしょうか。これは先ほど申し上げましたように、ワーキング・グループを、共催という形ですけれども、この部会がその作業をお願いしていることで、また問題はいろいろと浮かび上がってくるかと思いますが、今日のところは御説明を伺うだけでよろしゅうございましょうか。
どうもありがとうございました。
以上で本日用意されていた論点は一通り終了いたしました。
それぞれのテーマについては、今後、ワーキング・グループ等の場で議論を深め、ある程度整理のついた節目に当部会へ報告していただいて、さらなる検討を行いたいと思います。
ワーキング・グループの人選等については、私どもに一任をいただいておりますが、現在は私どもと事務局との調整段階にあって、大枠が固まり次第御連絡を申し上げ、作業を開始したいと考えております。
ワーキング・グループの運営について御意見、御質問等ございましたら御発言をいただきたいと思いますが、また、もし特定のワーキング・グループで取り上げるテーマに興味があり、参加したいという御希望があれば、事務局まで御連絡ください。
このワーキング・グループと、この部会との関係等運営について、何か御意見ございましょうか。
これは、前回お認めいただくときに申し上げましたように、報告書がまとまったら上げてもらうというような形ではなくて、各段階段階に、節目節目にこちらへ持ってきていただいて、またお願いするというような検討の方法にしたいということは、前回お認めいただくときに申し上げたとおりでございます。よろしゅうございましょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 ありがとうございました。
○森本委員 部会長。
○倉澤部会長 はい、一言にしてください。
○森本委員 前回欠席しましたので、ちょっとピント外れなのかもわかりませんけれども、非常に盛りだくさんのものが一度に出てまいりますので、やはり事前にどういうことをされるのか、具体的な議事、それをお教えいただくとともに、1週間前ぐらいにいただける資料があれば事前に送付していただくとか、そういうこともしていただければと思いますので、可能な範囲で御配慮いただければと思います。
○倉澤部会長 三國谷課長、どうぞ。
○三國谷企画課長 率直に申し上げさせていただきたいと思います。
当金融審議会というのは、前回も申し上げたことでございますが、旧金制、旧証取審、それから旧保険審議会と、この三つの審議会が合同しました大変な総合部会でございまして、いわばこれまで三つのものを一つに、それだけ委員の先生の皆様に御負担を大変おかけしているということでございますが、と同時に、事務局の負担も正直言って大変でございまして、正直申し上げまして、先生の御指摘を踏まえた上で、その中で、できる範囲内で努力をさせていただきたいということで御勘弁いただければと思います。もとより、できるだけできる範囲でやりたいと思いますが、部会も二つございますし、ワーキング・グループも五つでございますが、当方の局の職員は全部合わせて
100名程度で、これに携わっている者も余りそんなに数はいないものでございますから、大車輪でやっているという実情も、この機会を借りまして御説明かたがた御理解賜りたいということだけお願いさせていただきます。十分意向を受け止めて対処してまいりたいと思います。
○倉澤部会長 森本委員も、可能な限りということでよろしゅうございますね。
ありがとうございました。
それでは、最後に、次回の日程につきまして、事務局より御相談をさせていただきます。三國谷課長。
○三國谷企画課長 本年は当然のことながら本日でおしまいでございますが、来年に入りまして、1月に1回開催したいと考えております。現在のあり得べき日程といたしましては二つございまして、一つは、13日の水曜日14時から、又は19日の火曜日10時からが考えられます。
御指摘の考えられるテーマといたしましては、これからまた再調整あるかもしれませんのですが、一つは、「保険業界による金融システム改革の評価と展望」、あるいは「規制緩和委員会の金融関連要望事項」、ワーキンググループの設置・検討状況等、こういったことがテーマとして考えているところでございます。
よろしくお願いしたいと思います。
○倉澤部会長 以上をもちまして、本日の会議を閉じさせていただきます。
どうもありがとうございました。
(以 上)
金融審議会「第二部会」第2回会合議事録
日時:平成10年12月18日(金)10時00分〜11時53分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室
○倉澤部会長 定刻になりました。ただいまから、第2回金融審議会第二部会を開催いたします。
皆様、御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は第2回目の会合でございますが、前回御欠席で、今回が初出席となります委員、及び、前回でお認めいただきまして今回新たに御参加を得ることになりました業界からのオブザーバーの皆様について、事務局より紹介させていただきます。お願いいたします。
○三國谷企画課長 それでは、御紹介させていただきます。
まず、前回御都合により御欠席されまして、今回が初めての御出席となられました委員の皆様方を御紹介いたしたいと存じます。
皆様の席の左手からでございますが、山下友信委員でございます。
○山下委員 山下でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 森本滋委員でございます。
○森本委員 森本です。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 森田宏樹委員でございます。
○森田委員 森田でございます。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 江頭憲治郎委員でございます。
○江頭委員 江頭でございます。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 池尾和人委員でございます。
○池尾委員 池尾でございます。
○三國谷企画課長 続きまして、実務界からのオブザーバーでございますが、渡辺雄司日本興業銀行常務取締役でございます。
○渡辺オブザーバー 渡辺でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 森崎公夫外国損害保険協会副会長でございます。
○森崎オブザーバー 森崎でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 中原眞東京三菱銀行専務取締役でございます。
○中原オブザーバー 中原でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 寺阪元之住友生命取締役でございます。
○寺阪オブザーバー 寺阪でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 田山泰之安田火災海上保険取締役でございます。
○田山オブザーバー 田山でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 高橋厚男日本証券業協会常務理事でございます。
○高橋オブザーバー 高橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 金子義昭東京証券取引所専務理事でございます。
○金子オブザーバー 金子でございます。どうぞよろしく。
○三國谷企画課長 なお、ウィリアム・ハント・ステート・ストリート信託銀行株式会社社長、松崎 広横浜銀行常務取締役は、本日、御都合により御欠席されております。
以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
○倉澤部会長 よろしくお願いいたします。
次に、本日の議題に入ります前に、最近の金融を巡る話題として、日債銀の国有化問題について、金融企画局信用課より御説明いただきます。畑中課長、よろしくお願いいたします。
○畑中信用課長 信用課長の畑中でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料、第二部会2−1の「日債銀の特別公的管理の開始決定について」という資料を配付させていただいておりますので、それを御覧いただきながらお聞き取りいただきたいと存じます。
御案内のとおり、去る13日(日曜日)、日本債券信用銀行におきましては、特別公的管理の開始決定がございましたので、それについて御報告を申し上げます。
まず、資料の1ページ目に内閣総理大臣の談話がございますので、これについて御説明申し上げます。
一.のところにおきまして、日債銀については、今般の金融監督庁の検査により、本年3月末時点で債務超過と見込まれたことから、監督庁は、債務超過を解消するための資本充実策について逐次報告を求めてきたが、11月16日の検査結果通知から1カ月近くが経過しようとする中で、中央信託との合併問題を含め、同行より実現性のある資本充実策が提示されなかったというふうに記述をいたしております。
第二に、金融再生委員会が15日に設立されたところでございますが、それまでの間、その権限を代行することになっておりました内閣総理大臣は、こうした状況を踏まえて、冒頭申し上げました13日の日曜日に、金融再生法第36条に基づき特別公的管理の開始決定を行い、併せて、預金保険機構による日債銀の株式の取得の決定を行ったということでございます。
なお、特別公的管理の決定は、10月23日の長銀に次いで2回目でございます。
三.のところでございますが、日債銀につきましては、特別公的管理の下で新経営陣の選任、経営合理化計画の策定、取得株式の対価の決定等の所要の手続が進められることになるわけでございます。
また、特別公的管理の開始決定と同時に、資産劣化防止の観点から、金融監督庁から銀行法に基づく業務改善命令が発出されたところであり、適切な業務運営が求められる。
今後、日債銀に対しては、金融再生法に基づき、業務に必要な資金の貸付や特別資金援助が行われることとなっており、日債銀の預金、金融債、インターバンク取引、デリバティブ取引等の負債は全額保護されるとともに、善意かつ健全な買い手に対する融資も継続されるということでございます。
政府としては、今後とも、預金者等の保護や金融システムの安定性確保に万全を期すこととしておりまして、大蔵省といたしましても、金融制度の企画・立案を所管する立場から、今般設立をされました金融再生委員会、金融監督庁、日本銀行とも緊密に連絡をとりながら、金融システムの安定性確保に万全を期してまいりたいと考えております。
次に、資料の3ページは、監督庁長官の談話が同時に発表されておりますので、簡単にポイントだけ申し上げますと、3.のところにおきまして、今般の特別公的管理の決定が年末の金融繁忙期と重なったことも踏まえ、金融システム不安や信用収縮が再燃することのないよう必要な対応をとる。
それから、4.におきまして、今般の決定の内容が内外の市場関係者に正確に理解されるよう、海外の関係当局に十分説明を行うことが述べられておりまして、私ども大蔵省としても、必要な協力を行っているところでございます。
また、5.におきましては、検査、モニタリングの強化と早期是正措置の厳正な運用など、監督権限の適切な行使について述べられております。
次の4ページは、日債銀の概要でございますので、御覧のとおりでございます。
続きまして、5ページないし6ページには、日債銀の検査結果について、監督庁の検査部が公表した資料を付けさせていただいております。この検査結果によりまして、本年3月末の同行の自己資本の状況を見ますと、5ページの3.のところにございますように、自己資本額
4,671億円に対しまして、要追加償却・引当見込額というものが、その次にございます▲
5,615億円ございまして、バランスシート上、差引 944億円の債務超過となっているということでございます。
なお、6ページを御覧いただきますと、10年3月期の検査結果の取りまとめ結果でございますが、?の欄が金融監督庁の査定、それから、?の欄が日債銀の自己査定でございます。一見してすぐおわかりいただけますように、この分類換えに伴いまして、 III 分類
7,178億、 IV 分類 1,277億、これが実は増加をして、これに伴います要追加償却・引当見込額というのが、5ページにございますように
5,615億増加をして、結果、差引で 944億の債務超過ということでございます。
その他、有価証券等の含み損が、ここにございますように 1,803億ということでございます。
以上、簡単でございますが、御報告申し上げます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明に対しまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。
杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 こういうときでないと聞けない質問を、ちょっと二つだけよろしいでしょうか。
○倉澤部会長 どうぞ。
○杉田委員 余り時間を取るつもりはないんですけど、一つは基礎的な話なんですが、2001年のペイオフ開始後に、例えば日長銀、今度の日債銀のような問題で国の管理という事態が生じた場合に、預金保証はどうなるのかと。つまり、国の管理下に入っても、それが再生できればいいんですが、再生できなかった場合に
1,000万で切られるのか。それとも国の管理下に入った以上は、再生できない場合でも全額保証されるのか。その辺はどういうふうになっているのかということを一つお聞きしたいと思います。
○倉澤部会長 お願いいたします。
○畑中信用課長 お答え申し上げます。
実は、特別公的管理は2001年3月までの時限措置でございますので、それ以降に不幸にしてこういう出来事が起こった場合には、その制度は使えないということで、通常の処理になろうかと思います。
○杉田委員 それから、もう一つ、どうも我々が間接的にいろいろ聞くところによりますと、今回の日債銀の国の管理決定が非常に迅速だった反面で、株の取引をやった人の中で、多分機関投資家なのかどうかはよくわからないんですけれども、信用取引で反対取引ができないまま終わっちゃったという人がどうもいるらしいと。そうすると、結局価格がないわけですから、反対取引をどういうことで始末をつけるのか、宙に浮いているという話を聞くんですが、この点についてはどういうふうに処理されるということになっているんでしょうか。あるいはそういう事実関係は余りないのかしら。
○畑中信用課長 日債銀の個々の取引の内容については、残念ながら私ども承知をする立場ではございませんので、その辺のお答えは御容赦いただきたいのでございますが、いずれにいたしましても、特別公的管理の開始決定、それから、先ほど申し上げました株式の取得決定を行いまして、現在、既に預金保険機構が全株式を取得をいたしております。この取得株式の価格につきましては、今般創立をされました金融再生委員会の中に株価算定委員会というものが設けられておりまして、この5名の委員で協議をされまして、この価格の決定ということに至るわけでございます。これが何ほどの価格になるかというのがこれからの問題でございますから、その決定を待って、その保有者への影響というのが確定していくのであろうと、そのように考えております。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか。
どうぞ。
○木下信用機構室長 今回の特別公的管理の決定と日本債券信用銀行株の取扱いでございますけれども、特別公的管理の決定というのは、当然のことながら、事前に何がしかのアナウンスをしてできるものじゃありませんので、今回のように、ただ今回でしたら日曜日ですけれども、一定の日に行われるということになるわけです。それで、今回の場合は日曜日に行われましたので、それから後、特別公的管理の決定をされまして、最終的に公告されますと、株券が無効になるという法律の制度になっておりますものですから、そこら辺を踏まえまして、前回の日本長期信用銀行のときと同様に、東京証券取引所、また、全国の取引所の方では、その次の日、月曜日からの商いにつきまして、上場廃止決定ということで取引はストップしたわけです。それで、そういうふうにいたしますと、当然のことながら、信用取引の売りであるとか買いであるということについて精算するということになるわけですけれども、それにつきましては、証券会社と個々のお客さんとの間で、今後決定されます日本債券信用銀行株の買取価格というものも踏まえて決定されていくと。それで、それに基づいて精算されていくというふうになろうかと思います。
ただ、今回の場合につきましては、前回の日本長期信用銀行の場合には直前の株価が2円でありましたのに対しまして、日本債券信用銀行の場合には
158円の株価であったということ。それからまた、信用売りの残高も非常に大きかったということもありますので、今回のケースを一つの材料としまして、今後こういうふうなケースの場合について、どういうことができるのか、また、どういうふうなことをすべきなのか、そこら辺については一つの検討課題だというふうに思っております。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
よろしゅうございますか。
本日は議事も詰まっておりますので、説明については、このぐらいにさせていただいてよろしゅうございましょうか。
それでは、引き続き、議事に進んでまいります。議事次第に従いまして進行させていただきたいと思います。
今日の最初のテーマは、「金融システム改革下の銀行業・銀行規制」となっております。まず、事務局に、関連素材の提供と、それから論点の提供をお願いし、引き続いて、全国銀行協会連合会の「金融システム改革の評価と銀行業の将来展望」を聞くことといたします。
それでは、まず事務局お願いいたします。
○三國谷企画課長 企画課長の三國谷でございます。お手持ちの資料「第二部会2−2」と書いております「金融システム改革下の銀行業と銀行規制について」というところで、ざっとした資料を簡単に御説明させていただきたいと思います。
とうに御案内の資料も多々あろうかと思いますが、まず、1ページ目をお開きいただきたいと思います。1ページ目は、我が国の金融の特色ということを見てみる場合に、よく言われる話といたしまして、日米における直間比率の比較ということでございます。この場合、切り口は二つございまして、個人の金融資産という切り口で捉えた場合と、それから、企業の資金調達という面から捉えた場合。上の方は、個人金融資産という面から捉えた場合に、1997年末であれば、我が国の場合、間接金融が90.3%、直接金融が
9.6%。これに対して、米国の場合には約半々ということでございます。
一方、これを企業の資金調達という形で見ますと、株式、債券等の形で企業側から直接金融という形で調達しておりますのは37.7%、アメリカの場合には、この直接金融部門が84.4%という形になるわけでございます。
これは日米比較でございますが、次のページへ移っていただきますと、各国比較でございますけれども、日、米、英、独、仏と広げますと、日本とドイツ、ドイツの方が日本よりも間接金融の割合が高い。米、英、仏が直接金融の割合が高いといった傾向が読み取れるかと思います。
続きまして、資料の3ページ目以下を御説明申し上げたいと思います。3ページ目以下は、一つの機械的な数値でございますので、この機械的な数値自体がどれほどの意味を持つかという、そういう議論はさておかせていただきたいと思います。一つは、主要国におきます銀行1行当たりの名目GDPということでございまして、日本の場合に、銀行数、それから名目GDP、こういったものを掛けますと、1行当たりの数値は、米、英、独、仏に比べまして、最後の/
でございますが、比較的多いところの数値、計数が出ておろうかと思います。
ただ、(注2)に書いてございますけれども、母体を?という国内銀行で捉えた場合、それから、協同組織金融機関まで捉えた場合でありますと、分母の数が相当変わってまいりますので、計数も大きく変容するということでございます。
右側の方でございますが、主要国におきます銀行1行当たりの人口ということでやりますと、これも日本の場合に、?ベースで捉えるか、?で捉えるかによりまして、諸外国とのそういった傾向の違いは、それぞれの別な色彩を伴ってくるということになろうかと思います。
4ページ目へ進ませていただきたいと思います。4ページ目は、主要国におきます銀行資産の対名目GDPでございまして、これから見ますと、/
でございますが、一番下の3番目の欄、イギリスが3.12、ドイツが2.50、日本が1.55で、その中間ぐらいに来ているかなというところでございます。
ただ、右の表を御覧いただきますと、主要国におきます銀行の貸出残高の対GDP比の推移という形で見ますと、それぞれ計数はいろいろな捉え方があろうかと思いますが、日本の場合には、ここ数年減少傾向にある。米、英、独は、この数値は上昇傾向にあるのではないか。フランスは、表の見方でございますが、減少かなということでございますけれども、日本はやや減少傾向にあるのかなという感じがしております。
続きまして、資料5ページ目でございますけれども、我が国の金融機関数の推移でございます。最近いろんな波動がございますけれども、実は94年3月末、今から約4年半前でございますけれども、この時点で信用組合まで含めました金融機関の数は961
行でございました。これが4〜5年の間に実は 842行になっているわけでございます。この中で信用組合の減少傾向が大きいわけでございますけれども、金融機関の数がこういった形で減少傾向にあるということは、一つトレンドとしてあろうかと思います。
一方、その中で、下の表でございますが、外国銀行の対日進出状況でございます。その着眼点は、銀行数なのか、店舗数なのか、貸出金なのか、預金なのか、資産なのかということでございますが、貸出金、預金、資産というのをそれぞれシェアで見ますと、最近着実に増加する傾向にあるということが読んで取れるかと思います。
その次に、6ページでございますけれども、ここでは、金融業と金融・保険業のGDPに占める割合というものを見てみた表でございます。このうち点線部分はアメリカでございまして、実線部分が日本。それぞれ金融・保険というので捉えたのが上の方のライン、金融のみを捉えたのが下のラインでございます。この表から見て取れますことは、アメリカの方は、GDPに占める割合というのが上昇傾向にあるのに対しまして、日本は漸減傾向にあるということが読み取れるかと思います。
下の表でございますが、民間金融機関の資産のうち銀行等の占める割合でございまして、実線部分が銀行等でございますが、ここの部分がこの実線のようなトレンドをたどっているということでございます。
7ページ目へ移らせていただきたいと思います。7ページ目は、金融機関の非金利収入の対経常収益比率という切り口で捉えたものでございます。これは、しからばどのようなものが金利収入か、非金利収入かということになりますと、必ずしも明確な線引きということでもなくて、むしろ実務界の皆様が一番お詳しいところかと思いますが、例えば非金利収入ということの中にはデリバティブ等も入りますが、一方、金利スワップなんかは資金運用収益に入るとか、いろいろ基準の違いはございますけれども、これで見て取れますことは、非金利収入の対経常収益比率に占めるウェイトはだんだん増加傾向にあるということでございます。
御注意いただきたいことは、ここの数値に出ておりますのは、いわゆる純益とかという概念ではございませんでして、全くグロスの数字でございます。したがいまして、あるデリバティブというのがあった場合に、勝ちも負けもあろうかと思いますけれども、勝った負けたのネットではございませんので、こういった収入があれば、費用の方も逆にその裏返しとしてあるということでございまして、したがって、この数値がそういった単なる収益、儲けの源というよりも、銀行行動といいますか、どのようなところでいろいろな事業展開をしているかという、むしろそういった方で仮に読むとすれば、このような傾向が読み取れるのではないかということでございます。
下の表でございますが、今度は業態別に金融機関の非金利収入の対資産比率というのを見てみますと、そこに記してあるような表という形になるわけでございます。
8ページへ移らせていただきたいと思います。8ページ目は、経常収益に占める主な科目の割合でございます。この中で、貸出金利息、それから金利スワップは、このような傾向を示しております。ただ、この表から見て取れますのは、貸出金利息だけ単一に見るのではなくて、貸出金利息と金利スワップは比でございますから、逆相関関係みたいなところにあるわけでございまして、下が増えれば上が減ると、このような関係にあろうかと思いますけれども、このような全体のトレンドでございます。
ここまでの資料、いずれにいたしましても、我が国の金融業のパフォーマンスということにつきましては、こういった指標から見る限り、若干いろいろな傾向は読み取れるわけでございます。GDPに占めるいろんな比率等は低下してくる。その中で、それぞれの銀行業の比率ということもありますが、一方でその事業形態というのも、よく言われていることでございますが、質的な変化も進行しているのではないか。それから、個人の金融資産面、企業資金調達、この直間比率をどう表現するかは別といたしまして、この橋渡しをどうするかという点も一つのテーマかと思います。この問題を、言葉の表現によりましては、「日本型直接金融」と言うのか、あるいはむしろ「日本型間接金融」と言うのか、こういういろんな捉え方があるかと思いますが、それぞれのプレイヤー、調達者、それから投資者、間に入る仲介者、広い意味での仲介者がどのような役割を果たしていくかということが、今後の一つの課題になってこようかと思います。
次へ進ませていただきます。次のページ以下は、若干視点を変えまして、銀行法上の各種の規制というのが大体どのようなことになっているかというのを組み立ててみたものでございます。一つの試みでございます。
銀行法の目的は、第1条に、いろいろ記してございますが、信用秩序の維持、預金者保護、金融の円滑と、仮にその条文に出てまいります文言を拾って三つの分類にしたといたします。これをまたどのようにするか、組立て方はございますけれども、さらにそれを構成いたしまして、参入・退出につきましてどういう規制があるか。あるいは組織に関しましてどのような規制があるか。業務に関してどのような規制があるか。行為についてあるかということで捉えました。この網掛けというのは、今般新たに付け加わったものでございます。
細かい説明は省略させていただきますが、傾向といたしまして、行為の規制、ここについて今回の金融システム改革法が幅広くいろいろなものをかけてきたと。例えば、大口信用供与規制、アームズ・レングス・ルール、自己資本比率規制、株式の取得の制限、これまでの通達から法律化するというような話でございますが、等々でございます。一方で、業務の規制につきましては、右から3番目、業務の範囲、他業制限はむしろ拡大する。あるいは持株会社のところが大変規定が整備されてくるといったものでございます。
下の方に、規制のための監督規制とありまして網掛けしておりますが、大体これは持株会社に関するものでございますので、これはそれだけのものとして御覧いただきますと、これによりましても、現在の銀行法はどのようなところに考え方、あるいは銀行法の広い意味でのコントロールというか、法的事項が着眼しているかというのが読み取れるかと思います。
それから、10ページ以下は、銀行及び子会社がどのような業務を営むことができるかといったものを記したものでございます。
時間の関係で、次に進ませていただきますが、11ページ以降は、それぞれ先般の持株会社の設立等の禁止の解除に伴う金融関係整備法、これで銀行法関係でどのようなところが整備されたかという点、持株会社の規定が幅広く整備されております。
さらに、14ページ以下は、金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律案要綱でございまして、どのようなところが整備されたかといったところでございます。
なお、この資料から離れまして若干説明させていただきますと、いずれにいたしましても、金融技術の進歩、国際化、こういったものの進展等、金融関係の変化が生じております。したがいまして、新しい金融商品の登場、業務・業種間差別の縮小、あるいは中間的な金融サービス、これはいろいろな言葉の定義があろうかと思います。国際競争等ということの中で、金融自体いろいろな表現方法があろうかと思いますが、外延が広がったといいますか、あるいは内包が変化してきたといいますか、あるいはシステム化が行われたといいますか、いろいろな変化が着実に生じていようかと思います。そういった中で、組織形態の変化に対応するもの、あるいは行為規制での対応、こういったところに、いわば法的な制度の着眼点が移りつつあると。そういった中で、今後金融機能というものを考えながら、あるいはセーフティネットの問題をどう考えるか。そういった文脈の中で預金保険法、再生法、あるいは健全化法等をどうするかといった議論があろうかと思います。
なお、ちなみに、この問題につきまして、銀行関連につきまして、最近の規制緩和の要望といったものがどのようなものであるかということでございます。これは、新しいサービスの展開に関しますところの規制緩和はどういったものがあるかというのですが、大部分は、その部分は業務規制に集中してきているというような傾向が、最近の状況から言うとあろうかと思います。こういったものは、最初、通達の配信による商品等の自由化、こういった形で始まりましたが、その後、業務範囲の拡大、それから今度は子会社・関連会社を用いました業際規制緩和と、こういったところに広がってきているということでございまして、これは各界共通のところではなかろうかと思います。
それから、監督規制のうち行為規制に関しましては、届出・報告の簡素化といったような要望も大分見られております。こういったことにつきましては、相当逐次改善されているところでございますが、またさらに今後、新しい展開局面も想定されるわけでございます。考えられる論点はいろいろあろうかと思いますが、今後考えていくとすれば、銀行の公共性というのは何かといった視点、あるいは金融商品革新が行われる中で、あるいは他の金融業の銀行代替機能の高まりといったものが見られる中で、銀行というので、そういうところの本質的な機能は何かと。これはセーフティーネットとかいろいろな問題とも絡んでくるのかと思いますが、そういった点。あるいは業務拡大により生じますリスクの多様化、こういったことに対しまして、どのような制度体系、規制体系というか、あるいはセーフティーネットが考えられるのかといったようなところ等々、これから幅広い論点があろうかと思っております。
そういったところは議論にお回しすることといたしまして、取り急ぎ大ざっぱな資料紹介をさせていただきました。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうも三國谷課長、ありがとうございました。
引き続き、全国銀行協会連合会より、「金融システム改革の評価と銀行業の将来展望」、また、金融審議会に望むことなどをお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中原オブザーバー 東京三菱銀行の中原でございます。貴重な機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。ただいまお話のございました三つのポイントにつきまして、取りまとめ述べさせていただきます。
この1年間、金融界は、かつてない大変動を経験いたしまして、足元では、マスコミ等から、再生法、諸健全化法など金融システムの安定化のための諸制度について、連日大きく取り上げられてきたところでございます。まず、足元の不良債権処理とシステムの早期安定が焦眉の急であることは当然でございますけれども、今後の日本経済の構造改革に向けた金融システムの改革というものも極めて大きなテーマでございまして、その意味で、6月に成立いたしました金融システム改革法並びに新銀行法というものの意義は、大変大きなものあるというふうに理解いたしております。
御承知のとおりでございますが、平成8年11月に示されました我が国金融システムの改革、いわゆる日本版ビッグバン、この構想の目指すところといたしましては、金融機能の活性化を図り、21世紀の高齢化社会における我が国経済の活力を維持・拡大すること。そして、そのために規制を撤廃し、業態の垣根を低くして金融機関の競争条件を整備する。そして、我が国金融市場をニューヨーク・ロンドン並みの国際市場にする。そして、利用者の利便と市場の健全性・透明性の向上を図るというようなことだろうと思います。
こうした位置づけで制定されました金融システム改革法のうち、改正銀行法のポイントは、私どもの理解といたしまして、以下3点であろうかと考えております。
まず第1に、商品、サービス、組織形態等の自由かつ多様な展開の実現でございます。今月から銀行の窓口で投資信託という証券運用商品を販売することができるようになりました。このほか、有価証券店頭デリバティブの取扱いが認められるなど、銀行の提供できる商品、サービスが拡大してまいりまして、銀行それぞれが創意工夫によりまして独自の商品を提供できるようになってまいりました。
また、銀行持株会社制度が解禁されまして、我が国でも欧米諸国と同様に、持株会社、親子会社双方の形態を活用した金融コングロマリットのようなものの形成が可能となったわけでございます。
また、相互参入のタイミングこそ明示されてはおりませんが、グループの傘下に保険子会社を保有することも認められてきておりまして、このような新しい銀行法の下では、業務、組織形態の多様化を通じて、高度かつ多様な金融サービスの提供を行うための環境が整って、お客様の多様なニーズに適した魅力的な商品を提供する環境ができてきたと考えております。
第2でございますが、グループ形態による多様な業務展開が予想される中で、銀行単体に加えまして、グループとしての経営の健全性の確保、リスクの管理の枠組みも整備されたと思います。グループの範囲を明確化するとともに、幾つかの規制の適用範囲を、単体から銀行グループ、連結に拡大しております。同時に、規制の内容につきましても、諸外国の規制と整合性のあるものに整備されてきておると感じております。
第3でございますが、金融機関の提供するサービスが多様化する中で、利用者との取引のルール及びインフラの整備も行われました。すなわち投資信託、商品ファンドなど、預金等の誤認の虞のある商品につきまして、預金等でないこと等の、誤認の防止のための事項につきまして利用者に対しまして説明義務が課されておりますし、銀行業務全般につきまして、利用者への重要事項の説明等の社内規則の整備とか、この社内規則に基づく業務運営を適切に確保するための体制整備も求められております。
さらに、銀行のディスクロージャーの充実、これも単体から連結ベースでのディスクロージャーということが求められておりまして、自己責任原則の下で、利用者が自らの判断で金融機関や銀行を選ぶことを容易にするようなインフラの整備、これも進められてきておるわけでございます。
このように、今回の金融システム改革法は、利用者利便の向上という観点から、金融機関の業務や組織形態の自由化・多様化を認める一方で、経営の健全性の確保、利用者との取引のルール及びインフラの整備を行っておりまして、これまでどちらかといいますと金融機関の立場から作られていた金融制度というものでございましたが、これに関する法律の枠組みを、利用者の立場に立った、利用者の視点に立ったものに作り替えるものであるというふうに私ども理解をいたしております。利用者の利便性を拡大し、利用者と金融機関との関係の公平性を担保する。これと同時に、金融機関に対して経営の透明性を高めることを求めるという金融システム改革の狙いは、広く利用者の納得が得られるものでございまして、21世紀の金融制度の柱になるものというふうに感じております。
ただ、いろいろな審議会の報告書にも指摘されているところでございますが、例えば信託、投資信託、商品ファンドなど、株式、債券、先物商品等、個別金融商品の組合せ商品という点で、いろいろな性格を持っている商品が出てまいりますが、それぞれが異なる法律の規制を受けるというような点。また、商品の担い手とかディスクロージャーに格差が生じるというようなことは、利用者にとってわかりにくく、市場の透明性、開放性という点からも問題があろうかと思います。したがいまして、利用者利便の向上という観点から、金融システム改革をさらに進めていただく余地は、まだまだこのような点にもあろうかと考えております。
さて、銀行界は、現在大きく変貌しつつございます。海外では、この1年間に、米国のトラベラーズグループとシティコープの合併とか、スイスのSBCとUBSの合併、あるいは最近のドイツ銀行によるバンカース・トラストの買収など、極めて激しい動きがございました。我が国でも、業態を超えた提携、また、業態内での提携、それから企業グループ内での連携・提携、さらに海外からの撤退、あるいは得意分野の集中など、様々な動きが相次いで起こっているわけでございます。個別なことを申し上げて恐縮でございますが、私ども東京三菱銀行といたしましても、三菱信託、東京海上、明治生命の3社と投信の評価会社を作るとか、あるいは確定拠出年金の分野で協力して業務展開を図るとか、このようなものを進めているわけでございます。
また、事業戦略の見直し、最近のキーワードですが、選択と集中、これをいかに進めるかは、ビッグバンの下で銀行経営の死命を制するものとも言えようかと思います。私どもも先般来、ATカーニ社とコンサルティング契約を結びまして、事業ポートフォリオの内容の見直し、その戦略の見直し、この全面的な検討に着手いたしております。今後も、各金融機関がそれぞれの経営を見直していく動きは、ますます加速するものと思います。
一方で、先般成立いたしました早期健全化法。この法律は、早期是正措置制度とも効果的に組み合わせることによりまして、我が国の金融機能、システムの健全化・安定化を促すとともに、個別の金融機関の経営に自らの状況を環境に応じて改善するような自主的な努力を促すと。結果といたしまして、金融機関等の再編を通じて金融システムの効率化を促進することになるものと理解いたしております。金融機関にとりましては、公的資金の注入を受けるかどうかというような点にもかかわらず、早期健全化法の立法趣旨を十分に踏まえて、不良債権処理を引き続き積極的に進め、内外からの信認回復を狙うとともに、リストラ、業務、戦略の再構築、これを行いまして、新しい環境に応じた経営の改善を進めていく自主的な努力が急務であると、こういうふうに考えております。
こうした再編の動きを経まして、銀行業は、いわば狭い意味の銀行業務というものから脱皮いたしまして、総合的な、より広い、いわば金融サービス業。英語でよく言われますファイナンシャル・サービス・インダストリーといったサービス業の一分野へ変貌していくのではないかと考えております。アメリカでは、1975年のメーデーの際に、金融以外の異業種からの金融分野への参入が目立ちましたが、我が国でも既に一部では異業種からの参入が活発化いたしております。しかも、情報・通信技術をはじめとする技術進歩が大変なスピードで進行している中で、金融商品のいわゆるデリバリーチャネルというようなものも、そのあり方が大きく変わっていくと考えております。店舗というようなインフラがなくても、テクノロジーをいち早く使いこなすことができれば、優れたアイデアと創造力のある業者が、金融サービス業に比較的容易に新規参入することが可能になってきておるわけでございます。
このため、既存の金融業、金融企業といたしましても、従来のマーケティングや販売方法、それに則して作られていた各種のインフラや組織、人事、人事制度、こういうものの仕組みを根本的に見直していかなければならないと思います。これまでの銀行業の形態というものは、商品、サービスの開発から製造とマーケティング、販売、この全てのプロセスを自前で一貫して行おうというものでございました。しかし、金融技術の高度化、お客様のニーズの多様化、さらに新規業務をフルラインで自前で行うための投資の巨大化、こういうような要因から、機能分化が起こってくることは不思議ではございません。金融サービス業のお客様との接点というのは、一般の小売の業界と同じようなものでございます。そういう点で、金融商品の販売という面では、コンビニもあればブティックというような形態もいろいろと出てくるという一方で、規制緩和を背景にいたしまして、最先端の高度な金融技術を駆使し、利用者のニーズに適した商品の開発、供給を主たる業務とするような、いわば製造というようなものを担う金融機関も出てくることが考えられると思います。
さらに、金融の機能分化に適応するために、金融コングロマリット化というようなものの流れも活発になるかと思います。先に申し上げましたトラベラーズグループとシティコープの合併のように、欧米ではコングロマリット化の動きが出ておりますが、金融コングロマリットには、子会社間で協力して多様な商品を提供できる機動的なリストが可能、あるいは子会社独自の分化が維持できるといったような、持株会社としてのメリットがあろうかと思います。
今後の金融サービス業の経営というものは、自らの経営基盤と、人、物、金というような経営資源を認識いたしまして、金融サービス業界での自らの強みとポジション、これを適確に把握する。これによりまして、最も相ふさわしい形での独自の経営を組み立てていかねばならないと思います。そして、ほかの企業とのいろいろな形での分業、協力体制、これを促進しまして、必要に応じまして、他社、他の金融機関の資本や人材、ノウハウ、こういうものを積極的に活用していく。この活用の仕方のノウハウ、巧拙も経営として問われるようになると考えております。
最後に、今後の金融審議会においての審議につきまして、若干、個別銀行の立場からお願いを申し上げたいということでございます。
この第二部会には、下部組織として個人信用情報保護の問題とか、保険相互会社の株式会社化に関するワーキング・グループが設置されるというふうに聞いておりますが、個人信用情報保護・利用のあり方を検討することにつきましては、今年の自己破産件数が過去最高の10万件に達する見込みであるなど、多重債務者問題というのが社会問題化しつつあることは、個人信用情報が消費者の機微に深く関わる重要な情報であることから、非常に社会的意義の高いところであろうかと思います。ただし、個人信用情報保護につきましては、金融・各業界ともその重要性を十分認識しておりまして、既に自主ルールというようなものにより保護を図ってきております。検討に当たりましては、そういう実態も踏まえまして、どのような方法が目的達成のために必要かという点から、十分議論をする必要があろうと思います。
ちなみに、銀行業界におきましては、全国銀行個人信用情報センターというのがございますが、ここにおきましても、会員諸規則等により消費者信用情報の保護というようなものを図る、また、向上させるということを不断に進めております。
次に、保険に関しましては、業務上の問題でございますが、行政改革推進本部規制緩和委員会が、つい先日15日に発表いたしました規制緩和についての第一次見解というのがございますが、銀行等による保険商品の販売が取り上げられております。銀行等による保険商品の販売が、早期にかつ幅広く認められないと、販売チャネルの多様化・効率化や契約者のワンストップ・ショッピングのニーズにも対応できないということから、弊害防止措置は必要でございますが、遅くとも2001年までに住宅ローン関連の保険、信用生命保険の銀行窓販と、こういうようなものを認めること。また、銀行の子会社、兄弟会社の商品に限定しないというようなこと。早期に銀行等の販売の対象とすることが指摘されておりますが、この実現に向けて、私ども切に希望しておるところでございます。
そのほかでは、銀行等、法人とその証券子会社との間に課せられておりますファイアー・ウォールの規制がございますが、利用者の立場から再検討の必要があるのではないかと考えております。日本版ビッグバンの課題の一つは、我が国金融市場の枠組み全体をグローバル・スタンダードに合うものにしていくということでございます。我が国のファイアー・ウォールの規制というものは、米国の規制が手本とされているようでございますが、その米国におきましても、近年、従来の規制が大幅に緩和・撤廃されております。その際、そのほかの規制で目的が達成される場合は規制の重複は避けるということ。それから、顧客の誤認のリスクというものは、ディスクロージャー整備により対応することという、二つの基本原則に基づいて議論が進められておりまして、競争上の公平性を維持するために顧客利便性を犠牲にするというようなことは適当でないとの判断が、規制緩和という結果を導いているということであります。
我が国におきましても同様に、独占禁止法、銀行法、証取法で、アームズ・レングス・ルールの遵守、改正銀行法に新しく規定されました非預金商品の説明義務ルール、こういうものに基づきまして、的確な情報開示が行われれば十分であるという考え方ができるのではないかと思います。業者間競争を制限した激変緩和措置的色彩の強い現行のファイアー・ウォール規制、クロスマーケティングの禁止とか、抱き合わせ行為の禁止、共同訪問、情報の共有化等につきましては、金融機関の創意工夫の発揮と適正な競争によって、顧客利便性の向上を実現するために再検討をお願いしたいと考えておるわけでございます。
金融システム改革の実施によりまして、我が国における欧米コングロマリットの活動がさらに活発になると思いますが、そのこと自体、我が国金融機関との切磋琢磨を通じた顧客利便性の向上を図るものでございまして、金融市場の活性化に資するという好ましいことでございます。ただ、現実の問題といたしまして、同じ市場で競争する以上、その競争条件が市場で公平に形作られるようなルール作りや運用が必要であろうかと思います。こうした点も今後の御議論の際、留意していただきたいと考えております。
最後に、公的金融問題、なかんずく、郵便貯金の問題につきまして議論すべきではないかと考えております。郵便貯金は、金融市場における民間金融機関との公正な競争を妨げ、健全な市場を通じた効率的な金融サービスの提供を目指す金融システム改革の阻害要因になると思っております。今年6月に郵便貯金の公社化が決定されておりますが、国営の公社という枠組みの下で郵便貯金の問題点が国民経済全体に与える影響と、悪影響というようなものを、可能な限り軽減させる措置が必要であろうかと思います。この点もぜひ御議論いただければと思います。
これまでの審議会の議論というものは、ともすれば、それぞれの業界の利害調整が中心になりがちであったと言われております。金融制度調査会の最後の総会におきましても、金融システム改革の継続に際しましては、業際、縦割りといったものではなくて、機能中心の横断的な視点から理論的な検討を行うべきであるという発言があったというふうに伺っております。金融審議会においては、そうした指摘を受け止められておると思いますが、グローバル・スタンダードの尊重といった視点から議論をお進めいただき、顧客利便性を損なう過剰規制の排除、業態間の垣根をできるだけ低くした総合的な金融サービス提供の実現によって、金融システム改革の目的を達成していただくということにぜひ御配慮をお願いしたいと考えております。
私の方から申し上げさせていただくことは、以上でございます。ありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
この際、部会長として勝手な発言をさせていただきますが、今挙げられているような問題というのは、実はこれからこの部会で検討をするための共通の理解の一助として、御意見を承ったということでございます。今日、議論をして決着をつけるという意味ではございませんので、そういう点と、それから、もう一つは、タイムキーパーという切ない役割を私はやっておりますものですから、その点も御配慮の上、どうぞ今の事務局よりの論点提起及び全国銀行協会連合会のお話を併せて、金融システム改革下の銀行業、銀行規制等について御質問、御意見等がございましたら、御自由にお出しいただければと思います。
どうぞ、森本委員。
○森本委員 部会長の趣旨がわかってないのかもわかりませんが、2点だけ質問させていただきます。
第1点は、御報告をお聞きして驚いたのですが、時代の流れかなと思いますが、顧客利便性ということを再三強調されますが、「預金者」という言葉が確か一言も出てこなかったのではないか。あるいは聞き漏らしたのかもわかりませんが、中間ほどで、銀行業から金融業務に脱皮したいと言われたので、まあそういうことなのかなと思いますが、持株会社のレベルはともかくとして、銀行と名の付くものについては、預金者がおることが中心でありまして、その預金者というものについて、そういうふうに総合金融業の方に脱皮した場合の、銀行が預金者保護についてどのように捉えられるのか。あるいはそういう預金者の場合には小口になる可能性がありますので、それは先ほどちょっと言われた郵貯で任す気なのかと思ったら、そうでもなさそうだということで、そうすると、どういうふうに預金者をお考えになっているのか。いろいろの金利変動の預金もありますけれども、数百万円レベルなら銀行に預けておいて安心したいというのが、圧倒的多数の国民の少なくとも現時点の意識じゃないかなと思いますので、そういう点について一言メンションしていただくとともに、開示と公正な取引ルールで自由に業務を展開するのが一つの流れではあろうかと思いますけれども、その場合には、やはり違法行為をした場合に、きちっとした十分なサンクションが与えられることが必要であります。そうでないと、事前に開示しました、行為規制何とかやっていますと、口だけで結果は知らないということになろうかと思います。その観点から、例えば不適切な行為をしたときに、取締役や、さらには最近は執行役員という言葉もありますが、そういう主要な役職員に対して、例えば、これは株主からの代表訴訟ということもありますし、あるいは、例えばこういう点が自由になっているアメリカでは、クラスアクションという形で顧客がいろいろと保護されるようなスキームもあると聞いておりますけれども、そういう事後の責任について、どのようにお考えなのか、そこら辺を少しお教えいただければと思います。
○中原オブザーバー 「預金者」という言葉が一言も出なかったという御指摘を受けまして、ああなるほど、そうだったと、ややちょっと内心じくじたるところがございますけれども、「利用者」という表現、この中には預金者が大変大きな重要な位置を占めていることは当然でございます。ただ、銀行といたしましては、新しい商品がどんどん出てくる。商品ファンドも売っておりますし、投資信託も売っておるというようなところで、「預金者」という言葉だけで特定のところを取り上げるということが必ずしも適当でないものですから、「利用者」と。また、これは融資の方のお客さんもございますので、私のプレゼンテーションの中では「利用者」という一般的な表現で申し上げさせていただきましたが、預金者保護は当然ながら、まず、預金業務というのは当然ながら銀行業の中の大変重要な部分でございまして、これをないがしろにするようなことは全くございませんし、預金者保護というのは、公的なセーフティーネットと、それから個々の銀行の情報開示、それからサービスというようなものを通じて、適切に行われるべきものであることは当然でございます。
また、全銀協といたしましても、利用者、預金者とのいろんな約定類の、より公正なものにするための見直しというようなものも現在いろいろと行っておりますし、御心配のような、預金者というものが今やどこか別の片隅の方に行ってしまうような今後の展開なんだろうかということにつきましては、そのようなことは絶対にないということは申し上げておいてよろしいかと思います。
それから、もう一点は、経営としての何といいますか、おっしゃる意味は、不適正な経営としての行動、あるいは銀行としての行動があった場合の自主的なサンクションといいますか、規制と、それから、公的なペナルティについてどうかということだろうと思いますが、これは当然、銀行としての公共的使命というものを自覚した上での経営でございまして、その点から、まず公的な面では、新銀行法の下でディスクロージャーの不実記載とか、このようなものについては厳しいペナルティが明示されておりますし、また、銀行内部といたしましては、ここ一連のいろんな事件のこともございまして、内部にコンプライアンス委員会を作る、あるいはコンプライアンスマニュアルを作る、倫理規定を作る、あるいは業務監査委員会を設けると、こういうような内部的な組織、それからルール、諸制度、こういうものを作りまして、不適切な行動が起こらないよう、また、起こっても事後的に直ちに処置がとれるような対応を進めてきておりますし、また、さらにこれにつきましては拡充していくつもりでございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ほかにございましょうか。
今の利用者か預金者かというようなことについて、池尾委員か、翁委員か、深尾委員か、何か今後のあり方を考えるときに、銀行の独自性というようなもののあり方との関係で何か御意見ございますか。
では、深尾委員、お願いいたします。特にありませんか。
この問題は、もちろんこれからまさに銀行の業務が多様化していくときに、「銀行とは何か」論ということで、この委員会の後からの検討の対象にもなろうかと思いますので、今、もし何かお考えがあったらと思って、ちょっとお声をかけただけでございます。
ほかに御質問、御意見等、ほかの点でも結構ですが。
どうぞ、貝塚会長。
○貝塚会長 私は、全く個人的な意見ですが、要するに銀行業というのは、今から50年ぐらい前から、金融サービス全体の中でシェアを落とすのではないかとか、機能が、やはりそういう問題意識がもう随分前からあることはありまして、ですから、もう一回行こうかなと思って、私も金融の方は専門にしておりますが、ディクラインという言葉が時々使われている。それは、ある方が繁栄している部分があるんですけれども、そういう問題意識も基本的に長期的にあるということと、それから、日本の現状がどういうふうになっているか。これは専門家の方がいろいろおられるわけですが、その点は割と重要なポイントになっているということは確かだということだけちょっと申し上げたい。これは全く個人的な意見です。
○倉澤部会長 池尾委員、お願いいたします。
○池尾委員 折角ですから申し上げます。
銀行あるいは金融サービス企業の利用者一般の中で、預金者が別格といいますか、特別な地位を占めるというのは、一つはセーフティーネットとの関係という論点が非常に大きいと思います。金融サービスのその他の利用者に対しては、特に公的なセーフティーネットというのは提供されていないわけです。保険契約者はちょっと別ですけれども。それに対して預金者、とりわけ小口預金者に対しては、預金保険制度に代表されます公的なセーフティーネットが提供されているというところをどう考えていくのかというのが基本的な論点になるように思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ただいまいわば自ずと問題が提起されましたけれども、その銀行機能や規制体系の整理は、安心で活力のある金融システムの構築に向けて欠くべからざる作業であるように思います。そのような重要性に鑑み、この銀行論についても、より専門的観点から議論を深めるインフォーマルなワーキング・グループを設けることが適当ではないかと考えます。その点と、それから、グループの設置及びそのメンバーの選任につきまして、他のワーキング・グループ同様、私どもに御一任いただければと存じますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、大変どたばたと話を進めさせていただいて恐縮でございますけれども、本日の第2のテーマであります「保険相互会社の株式会社化」に移らせていただきます。
本テーマにつきましては、前回会合でワーキング・グループの設置が了承されており、今日はそうした作業に先立って、この部会メンバーに当該テーマについての共通理解を形成しようというものでございます。スピーカーは生命保険業界にお願いしてあります。寺阪さん、お願いいたします。
○寺阪オブザーバー 住友生命の寺阪でございます。
部会長からもお話しございましたとおり、本日は、保険業界を代表いたしまして、保険相互会社の株式会社化につきまして御説明をさせていただきたいというふうに存じます。
現在、保険相互会社の相互会社としての最大の課題の一つが、相互会社から株式会社への組織変更の問題でございます。来る2001年に完了が予定されておりますビッグバンを踏まえまして、昨今、金融機関の自己資本強化の動き、資本提携・再編の動きが日々加速している状況にございます。しかしながら、相互会社は、このような自己資本強化面、資本提携面におきまして、株式会社と比べて相対的に大きなハンディを負っているのが実情でございます。ビッグバン以降の本格競争に臨むに当たっては、株式会社と同一の条件下で競争を行えることが大前提だろうというふうに考えてございます。そのためにも、保険相互会社が経営の選択肢の一つとして、早期に株式会社化を果たせることを、ぜひとも可能としていただきたいと強く要望している次第でございます。
御高承のとおり、法律的には、既に現行の保険業法におきまして、相互会社が株式会社化する規定が存在してございます。しかしながら、この規定に従いまして株式会社化することは、莫大な時間とコストを要することをはじめといたしまして、様々な問題を伴うということから、現実には極めて困難であることがわかってまいりました。したがいまして、現在、各方面に対しまして迅速かつ簡易な手続により株式会社への転換を果たすことができるよう、関連する法制度並びに諸条件の早急なる整備を要望しているわけでございます。
保険相互会社が株式会社化するための規定整備の必然性や、現行業法の問題点及びその解決の方向性につきましては、生命保険協会におきまして、本年8月にプロジェクトチームを設置して検討を進めてまいりました。プロジェクトチームには、現在、生命保険業界にございます相互会社15社全社が参加しておりますが、その議論の成果が、お手元の「生命保険相互会社の株式会社化規定整備に関する要望書」でございます。相互会社形態をとる保険会社は、損害保険業界にも2社ございます。損害保険相互会社におきましても、「損害保険相互会社の株式会社化に関する要望書」として考え方を取りまとめてございますので、本日、お手元に資料として配付させていただいております。5ページから11ページが生命保険業界のもの、12ページから15ページが損害保険業界のものでございます。
それぞれの要望書につきまして、個別に御説明をさせていただくべきかもしれませんけれども、共通の部分も多いため、生命保険業界におきまして作成いたしました要望書に沿いまして、株式会社化に関します業界の現段階での考え方を説明させていただき、最後に、損害保険相互会社の問題について触れさせていただきたいというふうに存じます。
要望書の内容を説明させていただく前に、御参考として、資料の4ページでございますけれども、補足資料を御覧いただきたいというふうに思います。この説明は省略をさせていただきますけれども、資料にございますような内容が、株式会社と相互会社との主要な相違点でございます。
それでは、要望書の内容につきまして説明をさせていただきます。
ページ1から3が資料でございまして、資料を御覧いただきたいと思います。
まず、株式会社化規定整備の必要性ということでは、資本調達能力の向上、事業展開の自由度の確保、破綻回避、国民経済的メリットの4点を掲げてございます。
1番目の資本調達能力の向上ということでございますが、保険相互会社が現下の大規模かつ急激な金融環境の変化に対処していくためには、リスクバッファーを充実させて金融機関としての信頼性をより高めることや、成長分野へ迅速に資本投下を行って保険契約者の利益を向上させるといったことがぜひとも必要であるというふうに考えてございます。しかしながら、保険相互会社は、自己資本調達手段が実質的には基金というものに限定をされており、新株発行をはじめ多様な調達手段を持つ株式会社と比べまして相対的に自由度が低いというハンディを負ってございます。このハンディを乗り越えまして、短期間で自己資本を充実・強化するためには、株式会社に早期に転換をするということが最も近道であるというふうに考えてございます。
2番目のポイントといたしまして、事業展開の自由度の確保を挙げてございます。現在、金融業界を巡りましては、異業種の参入を含めまして、世界規模で企業同士の資本提携・再編の動きが活発化してございますが、ビッグバン後の新たな枠組みの下での競争局面を考えますと、限られた経営資源を最大限有効に活用するために最適な組織形態、会社形態というものを選択できることが、ぜひとも必要と考えます。
しかしながら、保険相互会社におきましては、構造上、川上持株会社の活用が不可能であるなど、事業展開面で多くの制約を受けているのが実情でございます。保険相互会社にも、株式会社化や持株相互会社の活用により、組織形態選択の自由度を広げることを可能としたいという要望でございます。
3番目は、破綻回避ということでございます。特に準破綻段階の保険会社が相互会社である場合は、これを株式会社形態に転換できれば、多様な手段で迅速に資本増強が図れるとともに、有力スポンサーの子会社化による救済の道も開かれることになります。実際、諸外国におきましても、このような方法により保険相互会社の破綻を未然に防いだケースが多く見られるようでございます。
最後に、4番目として、国民経済的メリットが考えられます。株式会社化により、保険相互会社各社の経営基盤が一層盤石となれば、保険契約者利益にかなうとともに、保険業全体への信頼性向上につながることが期待できます。特に、現下の金融システム全体の安定性が揺らいでいる状況に鑑みますと、その一翼を担う保険相互会社が事業基盤を強固なものにするという意義は大きいものと考えられます。
さらに、競争条件の整備や株式市場の活性化を通じて、ビッグバン以降の金融機関同士の競争が実りあるものとなりましょう。
次に、現行業法上の問題点でございますけれども、これは、社員権の補償が株式の交付に限定されている、もう一点は、寄与分計算のあり方につき不明確な点があるという2点に集約されると考えられます。
現行業法は、相互会社の社員、すなわち保険契約者は、組織変更計画書の定めるところによりまして、組織変更後の株式会社の株式の割当を受けるという規定がございます。しかし、この規定に従いまして保険契約者であります相互会社の社員1人1人に株式を割り当てれば、社員数が少なくとも数百万人に及ぶ大手生保におきましては、膨大な数の株主と大量の端株及び端株未満が発生するという問題が生じるわけでございます。これは、株主総会の運営面、管理コストの面で大きな問題となるばかりでなく、場合によりましては、全株式の大半が端株という、商法上、恐らく想定はされていない株式会社になることが予想されます。
また、社員への株式の割当は、社員の寄与分に応じて公平になされねばならない趣旨が規定をされておりますけれども、この寄与分計算の具体的算出基準につきましては、必ずしも明らかでない点がございまして、早期の株式会社化実現を目指す相互会社にとりまして、大きな支障となることが懸念されておるわけでございます。
このような保険業法に関する問題点を解決する方向性として、要望書の中では、6点を提示させていただいております。
資料を御覧いただきたいと思います。現行業法に従いまして、相互会社自身が法人格を変えずに株式会社となるためには、特に、以下申し上げます3点が問題解決の方向性として考えられると思います。
第1点が、株式以外の手段による社員権の補償を認めるという解決策でございます。
現行業法による株式会社化に伴う問題点の多くは、株式以外の手段による社員権補償を認めることで解決され得ると考えられます。諸外国の株式会社化の事例も参考にしながら、我が国においても、株式の交付以外に現金の交付、保険金の増額、新株引受権の付与等、また、株式の交付を受けた場合であっても、簡易に換金できる方法も含めて、それぞれの株式会社化を行う相互会社の実情及びその社員の意向に合わせて、多様な補償手段が可能となる法整備が行われますことをお願い申し上げます。
2点目が、端株の処理でございます。
現行業法におきまして、端株未満につきましては、これを換金して契約者に分配することが可能でございますが、大量の端株が発生する保険相互会社の株式会社化の場合には、特例として、端株部分もまとめて売却をし、その売却代金を分配する方法を早急に導入をしていただきたく存じます。
また、従業員持株会社準じまして、旧社員持株会というような仕組みを導入することについては、端株・端株主管理についての事務負荷の問題、議決権の問題等もございますけれども、懸念される多くの問題を解決することができるということが予想されますから、これにつきましても法整備を御検討いただければというふうに存じます。
3点目が、寄与分計算のあり方を明確にする点でございます。
株式会社化の際、当局によります組織変更の認可に当たりましては、認可基準の透明性が求められるというふうに考えられます。寄与分の計算方法につきましても何らかの具体的指針がその際示されることが望ましいというふうに考えてございます。
ただ、この場合、その指針はあくまでモデルとしてのものであってもらいたい。個々の会社によりまして、過去の内部留保形成過程、保険種類毎の過年度への剰余金の寄与度等は様々でございまして、現時点で存在する契約者利益を考慮した株式の公正・公平な分配の方法は、必ずしも画一的に定める必要はないというふうにも考えてございます。
実際、アメリカのユニオン・ミューチャル社、エクイタブル社の事例を見ましても、寄与分計算法は異なっております。また、アメリカでは、寄与分を勘案して株式の割当が行われておりますけれども、イギリス等においては、寄与分によらない方法がとられております。さらに諸外国の事例を詳しく見ますと、ニューヨーク州の第四方式のように、個々の会社の事情を勘案して、公正・公平性に配慮した上で、保険監督官が個別に認可する方式が規定されてございます。したがいまして、株式の割当につきましては、組織変更の円滑な実施を図るためにも、各社の経営判断に重きを置いた上で、柔軟に認めていただくようお願いをしたいと考えてございます。
このほかにも、諸外国で既に実質的な株式会社化手法として導入されてございます包括移転方式、持株相互会社方式といった方法が考えられます。資料のでございます。
包括移転方式は、相互会社が株式会社でございます第二会社を設立して、そこに保険契約の全てを包括移転することによりまして、実質的な株式会社化を果たす方法でございます。この方法は、現行業法を特に大きく変更することなく、スピーディに株式会社化を可能にするものと考えられますが、その実行のためには、包括移転の際に社員権補償をどのように行うべきかについて、現行業法上明文化された規定が存在しないという点が問題になります。この点を何らかの形で明確化すべきというふうに考えますが、検討に当たりましては、組織変更のスピードを重視する観点から、社員権補償方法の多様化・簡略化に極力配慮を願えればというふうに存じます。
併せて、包括移転に伴う根抵当権などの権利移転の問題、移転先株式会社における検査役検査の問題、移転先株式会社におけるソルベンシー・マージン確保の問題等々につきましても、御配慮いただくようお願い申し上げます。
実質的な株式会社化を果たしますもう一つの方式が、持株相互会社方式でございます。
持株相互会社方式は、相互会社自身は株式会社になることなく持株会社となりまして、傘下に保険株式会社を置くということによりまして、実質的な株式会社化と川上持株会社創立を同時に果たそうとする方法でございます。この持株相互会社制度は、米国を中心に導入の動きが活発化しておりますが、本制度の採用によりまして、先に御説明申し上げた寄与分計算や株式割当といった、現行業法に従って株式会社化する際に直面する問題の多くは解決される可能性があるというふうに考えてございます。
さらに、近時、ビッグバン対応として、持株会社設立を視野に入れた提携等の動きが活発化している状況に鑑みますと、生保相互会社におきましても、持株相互会社を通じた提携の選択肢が望まれるところでございます。
したがいまして、持株相互会社制度の導入につきましても、法制化を早急に御検討いただきたくお願いをいたします。
なお、保険業法に、現行業法に従った株式会社化、組織変更目的で行われる包括移転及び持株相互会社設立ともに現行法制度の下では課税問題の発生が大きなネックとなります。特に包括移転によります株式会社化は、株式会社化の際の財産移転、包括移転ともに実態的には同一組織内での移転に他ならないことから、税制的には中立と解釈できると考えられますけれども、現実には課税問題から断念せざるを得ない状況にございます。したがいまして、株式会社化の手続において発生いたします各種課税に対しましては、特例措置をぜひとも御検討いただきたくお願いを申し上げます。
最後に、組織変更完了後の早期の株式公開を可能とする点につきましても御配慮をいただければというふうに存じます。
公開時期を早めることは、市場からの迅速かつ広範な資本調達を可能とするばかりでなく、株式以外の社員権補償手段を採用する場合に市場価格を補償基準とするということを可能とするというメリットがございます。もちろん、株式を公開するか否かは、あくまで個別会社の経営判断でございますけれども、今申し上げましたような効果が認められますことから、東証等の上場基準の緩和につきましても、そういうことも含めまして、早期の株式公開を可能としていただきたく、要望をさせていただきます。
以上が保険相互会社の株式会社化に関します現時点での生保業界の要望でございます。
冒頭申し上げましたように、損害保険相互会社につきましては、損害保険契約が1年間というように、生命保険契約に比較しまして短いことや、1件当たりの保険料につきましても、非常に少額のものが多いという特徴がございます。これは、損害保険相互会社においては、純資産が小さいにもかかわらず契約者が多いというふうになるわけでございますけれども、生命保険相互会社に比較して、端株や端株未満になる契約者が多数発生するということと、契約者1人当たりの割当額もごく少数となるようなことがあるというようなお話も伺ってございます。このため、問題解決の方向性として、先ほど御説明をさせていただきました考え方を、損害保険相互会社のために若干修正することも必要となる場合もあるというふうに思われます。
現に、現行組織変更規定の制定に当たりまして、模範とされましたニューヨーク州保険法におきましては、生命保険相互会社の株式会社化規定とは別に、損害保険相互会社の株式会社化が規定をされてございます。
最後になりますが、株式会社化につきましては、特に法律面、税制面で課題が大きいものというふうに考えてございます。各委員の皆様におかれましては、今申し上げましたような種々の要望を御勘案いただきまして、早急なる御検討のほど、よろしくお願いを申し上げます。
どうもありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの報告につきまして、御意見、御質問等がございましたら、御自由にお出しいただきたいと思います。
江頭委員、お願いいたします。
○江頭委員 お話を伺いまして、考えられる問題解決の方向性及び留意点で挙げられた点は、よく理解できる点は多いんですが、1点だけお伺いいたしますと、9ページののところの「寄与分計算のあり方を明確にする」ということに関してでありますが、これは法律問題としては、端的に言って、「その他当局が公正・公平と認める方法」というのを法律に1カ条書いてくれということなんであって、これが実現すれば、各保険会社側としたら、現行法上認められない何らかの方法を考えて、それを当局が認めることでもいいことにしてくれということなんですが、具体的にどういうことをやりたいというふうにお考えなのか。アメリカなんかで具体的にやっているのは、少額契約者に対して政治的な配慮からばらまきをやるということだと思うんですけれども、端的に言ってそういうことをやりたいのか。やりたいのであれば、なぜそうしなければいけないのか。その辺のことをもうちょっと具体的に、
についてはお話しいただければと思いますが、簡単で結構です。
○寺阪オブザーバー ただいま私の報告の中で、いろんなな方式があるということを申し上げておりますけれども、諸外国の事例等々を見ておりますと、必ずしも現在の業法の規定してあるような考え方のみで株式会社化をしていないケースもあると。特にヨーロッパ系の相互会社が株式会社化をする場合には、私どもから見ますとかなり大胆なやり方で株式を配布しておるというような事例も見えますので、そこらあたりも含めて、多様な選択肢が私どもに与えられるということが望ましいというふうに考えているのでございます。その具体的な選択肢につきましては、今後の研究会の中で、生命保険業界として情報収集をしてございますので、御披露させていただければというふうに考えてございます。よろしゅうございますでしょうか。
○倉澤部会長 江頭委員、よろしゅうございますか。
○江頭委員 はい。
○倉澤部会長 ほかに。
深尾委員、お願いいたします。
○深尾委員 お伺いしたい点は、現在、生命保険会社の場合は、高い利回りの予定利率の保険契約の存在があると思うんですけれども、こういったところについて寄与分を考えますと、多分マイナスになるのではないか。場合によっては全部がマイナスになって、債務を時価評価した場合に純資産がマイナスになっている可能性もあるのではないかと思われるわけです。その場合は債権を切り捨てるのか、あるいはそれでも株式会社化ができるのか。このあたりについて、高利回りの予定利率の処理、それから、株式会社化にする場合の自己資本の開示といいますか、財務諸表の開示においての債務サイドの時価についての開示について、こういった点をお伺いしたいと思います。
○寺阪オブザーバー ちょっと後ろの方がよくわからなかったのでございますけれども、後ろの方をちょっとすみません。
○深尾委員 つまり、株式会社に変換する場合においても、当然開示の問題も出てくるかと思います。ディスクロージャーの問題です。この場合、例えばソルベンシー・マージンについても、資産サイドについてのリスクはカウントしておりますけれども、負債サイドのリスクは全くカウントされていないと理解しております。高金利で、高い予定利回り、予定利率を設定した長期の負債について、その時価について開示する必要がそもそもあるのではないか。また、そういった場合に、過去の寄与分について逆鞘になっているような、例えば長期の個人年金ですね。こういったものについての寄与分がマイナスのものについてどう考えていらっしゃるのか。また、現在のような株価を考えた上で資産・負債を時価評価しますと、相互会社としても既に純資産がマイナスの生命保険会社があるのではないかと疑っておるのですけれども、その場合について、どういうふうにこういった問題を考えていらっしゃるのかということです。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか、寺阪さん、質問の趣旨は。
○寺阪オブザーバー はい。ちょっと多岐にわたっておったようでございますので、全部を正確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、純資産がマイナスかどうかというのは、個別会社の問題でございますので、私もよく承知をしておりませんが、理屈だけの話をいたしますれば、純資産がマイナスになっている状況の中では、株式の分配というのは現実には行われないことになりますので、これは株式会社化というテーマにつきましては、余り考慮する必要はないのかなと。もしそうであれば、どこかから資本を調達して、純資産がプラスになるようなことをやれば、それだけで済むのではないかなというふうに、ここら辺は割り切って考えておるのでございますけれども、それができるかどうかは別でございますよ。
そこはそういうふうに考えておるのでございますが、一般的に株式会社化をするときには、どのような方法で私どもが株式会社化をしていこうかというふうに、今研究をしているところでございますけれども、まさに透明性、あるいは公正さ、公平さ、こんなものが問われるわけでございますから、会社が単独で物事を、もちろん会社の機関がございますから、取締役会、あるいは社員総代会、あるいは社員総会、そこら辺の手続は踏まえるわけでございますけれども、恐らく諸外国の事例等を参考にいたしますと、第三者の何らかの会社、インベストメントバンクのようなものが介在をしながら株式会社化を進めることになるんだろうというふうに思います。あるいはアクチュアリーファームでございますね、そのようなものが介在。あるいは公認会計士のような立場の方、そのような方々も関係者として巻き込んで株式会社化をしていくようになるのではないかというふうに考えてございまして、ディスクローズの問題でありますとか、資産と負債のマッチングの問題でございますとか、そこらあたりの御指摘のようなポイントは、そういう関係者の間できちっと評価をしていただいた上で株式会社化を進めると、そういうふうになるのではないかというふうに考えてございますので、その段階で明らかになるものが出てまいるんであろうというふうに考えてございます。
○倉澤部会長 深尾委員。
○深尾委員 寄与分がマイナスになる場合というのは、当然たくさんありまして、今申し上げた長期の個人年金でなくても、加入直後の場合ですと募集費用なんかがかかっていますから、当然マイナスになっているわけです。そもそもこの法律の寄与分計算についても、全部がプラスであるというような仮定の下で書かれているような寄与分の計算方式かのように読めるわけなんですが、それがマイナスの場合についてどう考えるのかというのが、一つの大きなポイントになるのではないかと思いまして、その点について。
これについては、住友生命の丸山さんの書かれた商事ホームの論文で、包括移転による相互会社の株式会社化というところでも、相当数がマイナスになるといいますか、特に新しい保険についてはマイナスになるという点が指摘されておりますので、それについてお考えをと思いましたけれども。
○倉澤部会長 よろしゅうございますね。
○深尾委員 お答えいただけないなら仕方ないです。
○寺阪オブザーバー わかりました。
○倉澤部会長 お答えいただけなければということでございました。寺阪さんから伺いましょう。
○寺阪オブザーバー これは基本的な寄与分計算の考え方の問題になるんだろうというふうに思いまして、現在の業法の規定をそのまま計算式で計算をいたしますと、ひょっとするとそういうことがあるかもしれない。しかし、別の方法もあるのではないかというのが現段階での私どもの考え方でございまして、その別のものがあるのかないのか、そういうことも含めて議論をさせていただければ、あるいは私どもの問題提起を具体的にさらにさせていただければというふうに考えているところでございます。
○倉澤部会長 今後の討論の論点とさせていただくということで、深尾委員、よろしゅうございますか。
○深尾委員 はい。
○倉澤部会長 杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 私は以前、ここにいらっしゃる江頭先生なんかと一緒に保険審議会の特別部会に参画いたしまして、保険業法の改正の最初のところの議論に参加いたしました。その当時以来、私は、保険会社が相互会社への転換は認められていても、株式会社への転換は認められてないというのはおかしいと。これは2ウェイにすべきであるということで一貫して主張してまいりまして、皆さんもそういうふうにお考えになって、今度のような保険業法が出来上がったわけなんですが、ですから、その点では全く今の流れに異論はないんですが、一つだけ、私自身ちょっと納得できない点があるのは、当時、保険業界の大半の皆さんは、この主張をすることに対して大変嫌悪感というか、非常に嫌がられたんです。私に対しても、「杉田さん、あなた妙な発言をしているね」というような感じで、随分御忠告を受けまして、保険業界はそういう考え方はないよということで、随分私もいろんな御意見を承りました。ですけども、制度改正なんだから、そういう制度を設けること自体は別に問題じゃないじゃないですかと。ですから、やりたい人がやればいいので、やらない人はやらなきゃいいんじゃないかということで御説得申し上げた記憶が非常に新しいのでございます。
ところが、昨今、ここのところ急速に皆さん株式会社、株式会社ということで、今一斉に声が上がってきていると。それはそれで非常にいいと思うんですが、言われている理由の幾つかは、例えば資本の調達の問題とか、業務の多様化の問題、それは当時からわかっておったわけなんですね。ビッグバンの問題というのは、それほどまだわかってなかったかもしれないけれど、そういう流れにあるということはわかっておったんですが、なぜ急にこんなに皆さんが一斉に株式会社化へというふうに走っておられるのか、ここがちょっとよくわからないというのが質問の第1点であります。
第2点は、今の深尾先生の質問と多分同じだと思うんですが、これもちょっと私、素人風に書き替えて御質問したいと思うんですが、相互会社から株式会社に転換する際に、既存の既契約の中で利回りの高いもの、つまり株式会社にすると、もしかすると赤字要因になるかもしれない商品の利回りをそのまま継続されるのか、それとも、ここで一旦株式会社に制度転換するに当たって、ここを見直すという可能性があるのか。この2点について、ちょっと今の業界の中の考え方をお伺いしたい。
○倉澤部会長 寺阪さん、お答えいただけますか。
○寺阪オブザーバー なかなか難しい問題でありまして、業界でどう考えるかというよりは、これはまさに個別それぞれの会社がどう考えて株式会社化をやっていくのかというふうに考える問題だろうというふうに思うのでございますけれども、特に後段はそのように思います。
前段の、なぜみんな急いでいるか、みんながこうなったかというお話でございまして、私ども株式会社化に転換、これも個別会社で考えておる話でございますけど、株式会社への転換規定を創設していただいて、大変業界は喜んだわけでございます。私どもも早速、株式会社に仮に転換をするとすれば、どのようにすればいいのかなというようなことを平成8年の4月以降、その前ぐらいから検討してまいりましたけれども、本日申し上げましたようなことが問題点としてあるということで、現行法のままではなかなか株式会社化ができないのではないかと、そんなことに直面しておりまして、もちろん私どもの会社のみでこの問題を検討しているということではなくて、実情を申し上げますと、インベストメントバンク等々、お互いに多少秘密を守らなきゃいけない部分がありますので、どことどういうふうにやっているとは申し上げられませんけれども、コンフィデンシャルな形で具体的な株式会社のなり方を研究は進めております。恐らく私ども以外の会社でも、そのような研究を今現在進められているんだろうというふうに思います。
したがいまして、一般論で言うと経営の一つの選択、組織変更の一つの選択肢の中に株式会社化ということを入れてくださいと、このようなことを申し上げておりますけれども、そういうことを強く望む会社は、研究が相当進んできておるのではないかなというふうに思います。その研究が進んできた中から出てきておる株式会社化を早急に、早期に実現できる道について、どうなのかということが直面している問題になってございまして、基本的に株式会社化になる道は既にあるということで、審議会の皆様方に御議論いただきまして、8年4月の業法改正は大変意義があったというふうに感謝をしているわけでございますけれども、現在の話が、そういう個別会社のニードが、早くなりたい。その早くなりたい理由の背景は、2001年4月以降、ビッグバンが日本でも完了すると。そういう中で、競争条件の公平性でありますとか、そんなものが図られた形で競争に参加したいと、そんな願いからでございます。
それから、後段は、これもなかなか難しい話でございますけれども、いろいろな考え方があるんだろうと思っておりますが、保険契約を一旦締結いたしますと、締結した保険契約で補償しております金額につきましては、ずっと補償していくというのが基本的な保険会社の使命、あるいは責任であろうというふうに考えておりますので、何かの機会にそのようなことをやるということが、果たしていいことなのかどうなのか。これは経営の重要なテーマでございまして、そういうことをやるということを保険会社の社員の皆様が望むのであれば、そういうこともやればよろしいでしょうし、恐らくはなかなかそういうことを全員が望むということにはならぬのではないかというふうに考えてございますので、予定利回りを変更して何らかの措置をするということは、なかなか難しいのではなかろうかと、現段階ではそのように考えてございます。
○倉澤部会長 まさにこれも今後また論点として浮かび上がってくると思いますので、今日のところはよろしゅうございますか。
大変恐縮でございますけれども、押せ押せになっておりますので、議題としては3番目ですが、議事のプログラムの4.「個人信用情報保護と利用について」に進ませていただいてよろしゅうございましょうか。
それでは、本日最後のテーマ、「個人信用情報保護と利用」の問題に移らせていただきます。
本テーマのワーキング・グループの設置も前回承認されております。このワーキング・グループは通産省の産業構造審議会と割賦販売審議会とのジョイントのワーキング・グループであり、現在、メンバー等につき関係先と調整中でございます。
本日は、当該テーマについて部会メンバーに共通理解を形成すべく、これまでの議論について事務局より紹介させていただきます。調査室長、よろしくお願いいたします。
○津曲調査室長
資料の「第二部会2−4」に基づきまして御報告させていただきます。この資料は、お手元に配ってございます「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」の冊子の中から抜き刷ったものでございます。
まず、金融制度調査会の答申の中でも、この個人信用情報保護と利用促進についても検討すべきである、行うべきであるという指摘がございまして、個人信用情報保護・利用に関します懇談会というものが、通産省と大蔵省での共同で作られました。これが平成9年の4月に作られまして、平成10年6月12日に取りまとめられたものでございます。
まず、この懇談会の趣旨でございますが、こちらは、片や金融機関、貸金業者、クレジット業界などの与信業者や信用情報機関からの情報漏洩が社会問題になっているということ。それから、国際的にも個人情報保護の強化の流れがあるということでございまして、例えばこの資料を付けてございますが、EU諸国、それから米国、さらにアジア太平洋地域でも多くの個人情報の保護の整備が行われてきているところでございます。この中で我が国の状況を見ますと、電子行政情報に係るものの立法はございますが、それ以外のところの保護立法がまだ未整備の状況にあるということでございます。
では、どうしているかというところでございますが、一般的には、個人情報につきまして、通産省の方が一つはガイドラインを出しておりまして、このガイドラインに基づいて各業界ではまた自主的なルールを作っているというところでございます。また、金融業界につきましては、金融情報システムセンター(FISC)の方でガイドラインを作っておりまして、このガイドラインに基づいて、またそれぞれの各業態、各業界がルールを作って自主的に対応しているというのが今のところの現状でございます。ただ、これはガイドラインでございますので、法的な拘束力はないというところでございます。
また、他方、与信業務の方が、与信に当たりまして個人信用情報というのを収集し、蓄積して利用するということが、こういうことによりまして信用情報機関として情報を共有しているわけでございますが、個人破産の急増等、多重債務問題の解決のためにも、このような情報交流の推進が必要であるという指摘もなされているというところでございます。
このような背景の下でこの報告書がまとめられてございまして、その概要でございますが、2.の「報告書の立場」というところでございます。
個人信用情報につきましては、与信時に半ば強制的に提供。それから、個人信用に係るセンシティブな情報だ。業者間で共有されている。それから、経済的価値 が大きく盗用等の事件も発生しているなどの特徴があるということで、個人情報一般ということがございますが、それに先駆けて措置するという可能性も含めて、この保護・利用のための法的措置をできるだけ早期に講じるべきではないかということが、まず書かれてございます。
それで、このような個人情報一般の保護法の中で措置、それから、消費者信用に係る一般的な保護法の中で措置というような考え方もいろいろあるだろうということで、この懇談会の報告書を基に広く活発に議論をしてくださいということになっております。
では、どういうことになるかということでございますが、3.と4.で、3.の方が「個人信用情報の保護のための措置」、それから、片や「個人信用情報の利用促進のための措置」というものがあるだろうということでございまして、保護の方の措置といたしましては、例えば個人信用情報の収集に当たっては、説明、それから同意をとったらどうか。それから、ハイリーセンシティブな情報(国籍、信教、保健医療、犯歴等)の収集は原則として禁止すべきではないか。それから、?でございますが、情報主体の個人の権利として、自分の情報についての開示請求、それから、誤った情報の訂正請求、それから、本人の意思に反した利用に対する異議申立というものを認めることはどうか。それから、個人信用情報の保護を担保するための民事、行政、刑事の整備をしたらどうかということが書かれてございます。
それから、4.目でございますが、利用促進のための措置ということで、利用促進そのものにつきましては、適正与信実施のために不可欠な社会的なインフラであるということを位置づけをした上で、各信用情報機関をまたぐ情報交流を促進する。それから、ネガティブ情報だけではなくて、ポジティブ情報の交流まで拡張したらどうか。そういうようなことを検討したらどうかというふうなことが書かれてございます。また、信用情報機関は適正に運営を行う機関に限定し、例えば登録制とすることなども考えたらどうかというようなことが書かれてございます。
大変簡単でございますが、この懇談会の報告書の内容を御報告させていただきました。ありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御報告につきまして、御意見、御質問等がございましたら、御自由にお出しいただきたいと思います。
特にございませんでしょうか。これは先ほど申し上げましたように、ワーキング・グループを、共催という形ですけれども、この部会がその作業をお願いしていることで、また問題はいろいろと浮かび上がってくるかと思いますが、今日のところは御説明を伺うだけでよろしゅうございましょうか。
どうもありがとうございました。
以上で本日用意されていた論点は一通り終了いたしました。
それぞれのテーマについては、今後、ワーキング・グループ等の場で議論を深め、ある程度整理のついた節目に当部会へ報告していただいて、さらなる検討を行いたいと思います。
ワーキング・グループの人選等については、私どもに一任をいただいておりますが、現在は私どもと事務局との調整段階にあって、大枠が固まり次第御連絡を申し上げ、作業を開始したいと考えております。
ワーキング・グループの運営について御意見、御質問等ございましたら御発言をいただきたいと思いますが、また、もし特定のワーキング・グループで取り上げるテーマに興味があり、参加したいという御希望があれば、事務局まで御連絡ください。
このワーキング・グループと、この部会との関係等運営について、何か御意見ございましょうか。
これは、前回お認めいただくときに申し上げましたように、報告書がまとまったら上げてもらうというような形ではなくて、各段階段階に、節目節目にこちらへ持ってきていただいて、またお願いするというような検討の方法にしたいということは、前回お認めいただくときに申し上げたとおりでございます。よろしゅうございましょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 ありがとうございました。
○森本委員 部会長。
○倉澤部会長 はい、一言にしてください。
○森本委員 前回欠席しましたので、ちょっとピント外れなのかもわかりませんけれども、非常に盛りだくさんのものが一度に出てまいりますので、やはり事前にどういうことをされるのか、具体的な議事、それをお教えいただくとともに、1週間前ぐらいにいただける資料があれば事前に送付していただくとか、そういうこともしていただければと思いますので、可能な範囲で御配慮いただければと思います。
○倉澤部会長 三國谷課長、どうぞ。
○三國谷企画課長 率直に申し上げさせていただきたいと思います。
当金融審議会というのは、前回も申し上げたことでございますが、旧金制、旧証取審、それから旧保険審議会と、この三つの審議会が合同しました大変な総合部会でございまして、いわばこれまで三つのものを一つに、それだけ委員の先生の皆様に御負担を大変おかけしているということでございますが、と同時に、事務局の負担も正直言って大変でございまして、正直申し上げまして、先生の御指摘を踏まえた上で、その中で、できる範囲内で努力をさせていただきたいということで御勘弁いただければと思います。もとより、できるだけできる範囲でやりたいと思いますが、部会も二つございますし、ワーキング・グループも五つでございますが、当方の局の職員は全部合わせて
100名程度で、これに携わっている者も余りそんなに数はいないものでございますから、大車輪でやっているという実情も、この機会を借りまして御説明かたがた御理解賜りたいということだけお願いさせていただきます。十分意向を受け止めて対処してまいりたいと思います。
○倉澤部会長 森本委員も、可能な限りということでよろしゅうございますね。
ありがとうございました。
それでは、最後に、次回の日程につきまして、事務局より御相談をさせていただきます。三國谷課長。
○三國谷企画課長 本年は当然のことながら本日でおしまいでございますが、来年に入りまして、1月に1回開催したいと考えております。現在のあり得べき日程といたしましては二つございまして、一つは、13日の水曜日14時から、又は19日の火曜日10時からが考えられます。
御指摘の考えられるテーマといたしましては、これからまた再調整あるかもしれませんのですが、一つは、「保険業界による金融システム改革の評価と展望」、あるいは「規制緩和委員会の金融関連要望事項」、ワーキンググループの設置・検討状況等、こういったことがテーマとして考えているところでございます。
よろしくお願いしたいと思います。
○倉澤部会長 以上をもちまして、本日の会議を閉じさせていただきます。
どうもありがとうございました。
(以 上)