金融審議会「第二部会」第4回会合議事録
日時:平成11年3月8日(月)14時00分〜15時59分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○倉澤部会長 定刻になりますので、ただいまから、金融審議会「第二部会」第4回会合を開催いたします。
皆様、本日は御多用のところ御参集くださいまして、ありがとうございます。
初めに、委員の任免の件がございます。本第二部会のメンバーであられる片田哲也委員が、金融再生委員会委員への御就任に伴い、金融審議会委員を退任されることとなりましたので、御報告申し上げます。
本日のテーマは、規制緩和要望関連事項及び特別保険料率の検討ということになっております。テーマとの関連性にも鑑み、第一部会の岡本オブザーバーにも御出席いただいております。また、預金保険制度に関するワーキング・グループを代表して、審議会委員の神田先生にも御参加をお願いしております。神田委員は、行革推進本部・規制緩和委員会委員も兼任しておられます。
それでは、早速ですが、議事次第に従いまして進めさせていただきます。
前半のテーマは、「規制緩和推進3カ年計画への対応状況と論点紹介」となっています。まず、事務局から、規制緩和推進計画の金融・証券・保険関連部分について御紹介させていただき、引き続いて、本日の題材となる幾つかの論点について御説明申し上げます。
なお、議論にめり張りをつけるために、前半は、直接金融市場関係について御説明申し上げたところで一旦区切り、ひとしきり御議論いただいた後に銀行関連の項目を扱うことにいたします。
それでは、まず事務局からお願いいたします。
○津曲調査室長
御説明申し上げます。資料で申し上げますと、「第二部会4−1」の資料でございますが、「規制緩和推進計画の概要と対応状況」というところで、最初は、要検討項目等について御説明申し上げます。
まず、これまでの経緯でございますけれども、金融・証券関係の規制緩和が金融システム改革のプラン(平成9年6月)の下、着実に進められておりまして、昨年12月の金融システム改革法施行により、本格実施の段階にございます。一方、政府行政改革推進本部では、平成7年度から3年タームで規制緩和推進計画を策定しておりまして、金融を含む幅広い分野にわたる規制緩和に取り組んでおります。現行の規制緩和計画は、平成10年3月に規制緩和委員会のイニシアチブで策定されました第2次計画(新3カ年計画)でございまして、金融・証券関係の67項目を含む全部で
624項目が改善措置を講ずる対象とされているところでございます。
規制緩和委員会は、昨年の10月に計画の実施状況に関するフォローアップを行いまして、12月に規制緩和についての第1次見解を公表しました。その後、現在は、今年度末を目処に改定計画の閣議決定に向けた作業に取り組んでいるところでございます。
大蔵省では、金融システム改革を着実に実施し、自由な枠組みの下での金融・経済の活性化に努めているところでございますが、政府の一員といただきまして、制緩和推進3カ年計画の着実な実現にも責任を負っておりまして、特に金融・証券関係項目は、金融システム改革の整合性などの観点で重大関心事項となっております。
具体的に申し上げますと、資料の2枚目以降を御覧いただきますと、いろいろな項目が出てございます。現行計画などで指摘されております金融・証券関連指摘事項でございますが、お手元の資料の一覧のとおりだと思います。金融システム改革の進展もございまして、その過半は措置済みとなっております。網掛けの部分が措置済みということでございますが、次年度以降の措置が想定される事案で、今年度内の検討・結論が求められている項目は残されております。中には、金融審議会の場で検討するという形のコミットがなされているケースが複数ございます。
本日は、足元の問題解決の積み上げを行う場でございますこの金融審議会「第二部会」におきまして、そうした項目について御議論いただき、規制緩和推進計画改定作業に当たっての論点整理及びより長期的な方向性を考える機会とさせていただくものでございます。この資料の1枚目を御覧いただきたいのでございますけれども、その中で、主として※印の付いた項目、これは「金融審議会等の場で検討」ということになっていますが、これと、3.の昨年12月の主要指摘事項について御議論いただきたいと考えております。
具体的には、まず、市場課長の方から御説明申し上げます。
○楠市場課長 市場課長の楠でございます。
資料の9ページを御覧いただきたいと思います。そこに、「CP(コマーシャル・ペーパー)のペーパーレス化について」ということで資料を用意しております。
昨年の12月15日の行政改革推進本部・規制緩和委員会「規制緩和についての第1次見解」で、コマーシャル・ペーパーのペーパーレス化につきまして、アンダーラインの部分を読ませていただきますと、「券面を必要としないCPの発行、移転、償還等の在り方について、「CPのペーパーレス化」を実現するための立法措置を含め、関係者の参加を得つつ、早期に検討を開始すべきである。」と提言されております。
また、次の行でございますけれども、1月29日の閣議決定、「経済構造の変革と創造のための行動計画(第2回フォローアップ)」におきまして、またアンダーラインのところを読ませていただきますけれども、「企業の重要な資金調達手段であるCP市場の一層の拡大に資するよう、券面を必要としないCP制度の在り方について、立法措置を含め総合的見地から、早期に検討を開始する。」と決定されておるところでございます。
それで、今具体的な作業としましては、一つは、経団連の方で「CPペーパーレス化検討ワーキング・グループ」というのが昨年12月22日に設置されまして、これまで4回、コマーシャル・ペーパーのペーパーレス化について議論されております。このワーキング・グループの場には、私どもも法務省等とともにオブザーバーとして参加しておるところでございます。これが経団連ベースでの検討でございますけれども、政府の方としましても、政府ベースの検討ということで、まだ具体的な日程は決めておりませんけれども、法務省と共同の検討会というものを設けまして、コマーシャル・ペーパーのペーパーレス化について検討を進めていきたいというふうに考えております。
次に、2枚繰っていただきまして、11ページを御覧いただきたいと思います。そこに「公開前規制について」と書いた資料を用意しております。
公開前規制の概要でございますけれども、株式公開の公正性を確保する観点から、日本証券業協会及び証券取引所の規則において、株式公開前の第三者割当増資などについての一定の規制が行われております。
この公開前規制は、昭和63年のリクルート事件を契機としまして、特定の者が公開予定株式を低廉な価格で譲り受け、公開後に大幅な値上がり益を享受するのは不公平ではないかなどの指摘がありまして、平成元年4月より現在の形で強化されたものでございます。
具体的には、そこの資料にございますように、一つは、公開前の第三者割当増資についての規制、それから、2番目に株式移動についての規制が行われております。
この公開前規制につきましては、前回の当部会でプラザクリエイトの大島社長からも見直しの必要性が言及されておりましたけれども、○のところでございますが、行政改革推進本部・規制緩和委員会の「規制緩和についての第一次見解」(平成10年12月15日)におきまして、「いわゆる「公開前規制」の見直しも早期に検討を開始すべきである。」と提言されております。
また、その下でございますけれども、「経済構造の変革と創造のための行動計画」、去る1月29日の閣議決定でございますが、「企業の円滑な資金調達を阻害している公開前規制については、その見直しが重要であるとの認識の下、日本証券業協会において早期に検討を行う。」と閣議決定されたところでございます。
このような閣議決定を踏まえまして、去る2月25日に、日本証券業協会に「公開前規制検討グループ」が設置されまして、検討が開始されているところでございます。
私からは、以上でございます。
○内藤参事官 それでは、私、参事官の内藤でございますが、引き続きまして、資料の13ページを御覧いただきたいのですが、私募債につきましての適格機関投資家の範囲といったもの、それから、発行登録制度の利用適格要件ということで手続の簡素化でございますが、こういった関連につきまして、既に新聞発表で一般的な意見を求めているという形で今作業を進めておりまして、これについて御説明いたします。
14ページでございますが、適格機関投資家の範囲という問題につきましては、行革推進本部の規制緩和委員会におきまして、昨年の12月に第1次見解ということで、私募債市場、現在は適格機関投資家ということで、3行目あたりですが、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」と認められる者として金融関係の法人といったものを指定しておりますけれども、これを広げていくということで、一般事業法人まで拡大すべきではなかろうかということで、「本年度中に結論を出し、早期に実施すべきである」と、こういう指摘が行われているわけでございます。
御承知のとおり、証券取引法におきましては、有価証券の勧誘という方法としては公募と私募というものがございまして、公募はディスクロージャー義務を踏まえた上で行われる。私募につきましては、現行におきまして、少人数の場合で私募であるという場合と、相手がディスクロージャーの保護を要しないという機関投資家については手続を簡略化してもよいのではないかという考え方で、「プロ私募」と言われておりますが、そうしたプロの人たちに対しては人数が多数であっても手続を簡素化していく、こういう考え方で、現在は、適格機関投資家については、金融機関というものを業態ごとに列挙しているわけでございます。
改正案でございますが、米国においては、既に約10年近く前にプロ私募といったものでの私募債市場というものが活性化をされておりまして、かなり広範な一般事業法人というものを対象にしたものを適格機関投資家という形で認め得るというような形になっておりまして、それをも参考にいたしまして、3行目あたりでございますが、 「当面、「最近2事業年度に係る有価証券報告書に記載された貸借対照表における 『有価証券』の額と『投資有価証券』の額との合計額が
1,000億円以上である国内の有価証券報告書提出会社のうち」、こうしたものを対象にいたしまして、当該会社が申請を行った上で大蔵大臣が指定するという形で、新たに一般事業法人にもこうした対応が可能となるような、そういう形にしていきたいということでございます。
次に、15ページでございますが、「発行登録制度の利用適格要件の拡大」というものでございます。
これは、主に社債発行いたしますときに、通常でありますと有価証券届出書というようなディスクロージャーの義務が課されておりますが、これが繰り返し大量に発行するというような場合には手続を簡略化していくということで、非常に簡単な手続で社債の発行が可能となるというものでございます。
この基本的な要件と現行制度でございますけれども、まずでございますが、継続開示要件ということで、1年間継続して有価証券届出書を提出しておる。
それから、で周知性の要件というものがございます。イで「上場又は店頭登録企業である」ということ。そして、それに加えまして、ロで「次のいずれかに該当すること」ということで、その売買の時価総額でありますとか、3年平均の時価総額、あるいは社債券について複数の指定格付機関からA格以上の格付を取得している。さらに(ニ)
法令により優先弁済を受ける権利を保証されている社債券の発行実績があるといった条件のいずれかに該当するというルールになっております。
今回の改正のポイントでございますが、これまで上場あるいは店頭登録企業という形で、株式市場というものにある程度知名度があるといいますか、周知性が高いと、こういった考え方に基づいて整理をされておったわけでございますけれども、社債市場というものは最近非常に活性化をしてきておる。それから、社債において非常に周知性が高い企業であっても、必ずしも上場店頭登録していないというようなものもございます。そうしたことを考えてまいりますと、必ずしも上場登録ということでなくても、そうした周知性の基準に当てはまるようなものについては、これを広げて認めていってはどうか、こういうことでございまして、今提案をしております考え方としては、まず、としての継続開示要件は変わりませんが、周知性要件につきましては、これは社債券でございますので、複数の指定格付機関からA格以上の格付を取得している、こういう考え方一本で整理をしていくということで提案をさせていただいております。
次に、16ページでございますが、これは「臨時報告書の重要性基準の見直し」ということでございまして、これは今回の私どもの見直しの中で、今の2点に加えまして提案をさせていただいている点でございます。
これはディスクロージャーの強化というような考え方になりますが、下の2.を御覧いただきますと、現行制度で臨時報告書、つまり企業が期中におきまして様々な事象が発生した場合にディスクローズをしていくということで、訴訟でありますとか合併、営業譲渡等々ございます。その中で特に一番下の「財政状態及び経営成績に著しい影響を与える事象の発生」という項目がございます。
現行は、著しい重要な事象が発生をしたというところの基準でございますが、「損益への影響額が資産の総額の
1/100以上かつ最近5事業年度の当期純利益平均額の20/100以上」と、こういうふうな規定がございます。実はこれは金融機関に様々な不祥事案が生じたときでございますけれども、金融機関が非常に資産規模が大きい。これは他の一般事業法人と比べますと、ずば抜けて大きいような状況でございまして、かなりの大きな、いわば一般常識的に本来臨時報告書が提出されるべきものであっても、ほとんどこの規定にはひっかからない、こういう問題がございます。
したがいまして、むしろ総資産というベースではなかなかこれは対応できないということで、純資産ベースにいたしまして、総資産と純資産というのは大体比率が3対1ぐらいでございますので、純資産ベースの
3/100ということで、金融機関においては、これまでの基準よりはかなり下になる可能性はございますけれども、一般事業法人においては特段の問題は現在生じておりませんので、大きな変更はない、こういうふうな形での整理でございまして、全体のバランスとしては、こういうあたりのところかなということで、いずれにいたしましても御提案を申し上げているということでございます。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました規制緩和関連の論点につきまして、御意見、御質問等ございましたら、御自由に御討議いただければと思います。
江頭委員、お願いいたします。
○江頭委員 今御説明いただいた資料では、15ページの「発行登録制度の利用適格要件の拡大について」でございますが、この発行登録制度というのはアメリカの制度を導入したわけですけれども、私の理解する限りでは、アメリカではいわゆる効率的資本市場仮説、つまり情報が公表されると、それが瞬時に証券価格に織り込まれるという効率的資本市場が相当程度実現しているという実証研究が相当あって、それゆえ証券発行のたびに詳細なディスクロージャーを改めてする必要はないと、そういうことで制度はできた。
それを日本も取り込んだのでありますが、私の知る限りでは、この制度を取り込んだときの証取審の報告書等を見ても、日本で効率的資本市場仮説がどの程度成り立っているかということは一言も出てこない。それから、数年前にこの適用要件は大幅に緩和されましたけれども、そのときも証券取引審議会にかけなかったと思うんですね。ですから、そのときも議論されてない。今回またこのように緩和するということなのでありますが、本当にこれらの会社に関する情報が証券価格に織り込まれているということがあるのか。そういう実証研究は、いろいろな証券関係の研究所等でやっていると思いますけれども、どういう研究を採用した結果、こういう結論になってきているのか。その点について御説明いただきたいと思う次第であります。
○倉澤部会長 どうぞ、内藤さん、お願いいたします。
○内藤参事官 どういう合理的な情報の開示といいますか、市場の期待といったことについて、私の方から申し上げるような特段の議論といいますか、材料というわけではございませんけれども、やはり今の周知性の要件が、株式市場というものについての周知性にかなり重きがあるというような整理になっております。
最近の社債市場というものの適債基準も撤廃をし、そして、格付というものがかなり浸透をしてきたというふうに考えておりまして、格付と、そのリターンというものについても、プライシングについてもかなり浸透してきたのではなかろうかというふうに考えております。実際において、上場でない会社で格付を取り、国際的なマーケットでも発行しておるというようなこともございまして、複数の指定格付機関からA格以上であるというようなことであれば、やはりアメリカの制度というものも勘案しながら、社債市場の活性化と。主にこの発行登録制度といいますのは、基本的には社債市場の活性化というものを目指した考え方でございますので、そうしたものをある程度念頭に置きながら緩和をしていくというのが決して不合理なことではないのではないか、こういうふうなことで、規制緩和推進委員会の御意見も踏まえまして、こういったことを御提案させていただいているということでございます。
○倉澤部会長 どうぞ。
○江頭委員 格付というのは、証券の安全性に関する指標としてできているわけでありまして、発行登録制度というのは、情報が浸透しているから改めてディスクロージャーの必要はないと、そういう考え方でできているので、これらは別問題だと私は考えております。
どうも日本ではディスクロージャー制度というのは、要するに単なる規制である。だからこれは今の御時世は緩和しなきゃいかぬのだということで、少なくともこの制度に関する限り、この制度の導入当時から発行登録制度につきましては、どうもディスクロージャーの本質を忘れた議論がずっと続いてきているのではないかというふうに私は思っておりますので、現在、意見を申し上げさせていただいている次第でございます。
○倉澤部会長 そもそも現行制度の成り立ち自体に問題があったという御趣旨になりますか。
○江頭委員 そのとき本当にディスクロージャーの制度の趣旨を検討した結果、結論が出たのか。少なくともあのときの証券取引審議会の報告書は、私も証券取引法の授業をしておりますので読んだのですが、そういうことは一言も出てこなかったことは記憶しております。
○倉澤部会長 どなたか、関連する点でも。
深尾委員、どうぞ。
○深尾委員 関連の質問ですけれども、この格付を取得というのは、いわゆる勝手格付については除かれると考えるべきなんですか、それとも入るというふうに考えるべきなんでしょうか。
○倉澤部会長 どうぞ。
○内藤参事官 これまでこの格付の取得については、既に現在の周知性要件には入っておりますけれども、私どもの考え方としては、勝手格付というのは入りませんで、あくまで依頼格付ということで考えております。
○倉澤部会長 どうぞ。
○江頭委員 私はこの問題について、結論がどうだかよくわかりません。しかし、とにかく本来出てくるべき資料が出てきてないんじゃないかと、そういうことを申し上げている次第であります。
○倉澤部会長 この案だと、現行の周知性要件についてだけ、株式に関する情報の周知性しか考えられていなかったのを、もっと社債に関連しては周知性を拡大し得るんじゃないかという改正案の提案という形にはなっているんですね。
どうぞ。
○江頭委員 要するに情報が周知かどうかということで言えば、これは1年継続して有価証券届出書を提出しておれば、当該発行の必要な情報は証券市場に全て浸透しているんだと考えるかどうかですね。しかし、本当にそうなのかということであります。
○倉澤部会長 堀内委員、どうぞ。
○堀内委員 恐らくこれは規制緩和小委員会の方から出てきているわけですから、一つは、規制緩和小委員会でこれがどういう論拠で−−確か私が小委員会に入っていた頃にもこういう問題は出ていたんですけれども、こういう形では結実していませんでしたが、どういう根拠があったかということは、ちょっと確かめていただく必要があると思いますが、一般論として、確かめ日本の社債市場などは、向こうの経済学者が言うところのエフィシェント・マーケットになっているかというと、私はそうではないというふうに思います。
それは現実には非常に個々の社債市場のマーケットは不振でありまして、実際に流通市場は必ずしもうまくワークしてないんじゃないかというのは、実務家の方々ははっきりおっしゃっているのではないか。
ただ、この問題は、私は、これは急なので十分準備していないのですが、やや「鶏と卵」の関係がありまして、社債市場をもっと幅広く利用するということが、ある意味では情報の効率を高めるという面もあるんですね。そういう点から言うと、今までのこの基準は、特に周知性要件については、企業の株式についての条件が非常に厳しくあって、その企業が本来マーケットで活動していて、とりわけ投資家の目から見てどの程度の評価を下せるかということについての情報は余り考えられてないんじゃないかということがあったように思います。そういう意味では、確かにこれで全く問題が解決できるというものではないとしましても、私は、基本的にはこの案、あるいはもう少し積極的にでも進めていくべきではないかと思うんです。
ただ、冒頭に申しましたように、まず規制緩和小委員会とか、非常に強くこの問題を進めたいと思っていらっしゃる方々が、どういうふうな論拠というか、確かあったと思うんですが、それをもしできればお示しいただければありがたいと思います。
○倉澤部会長 いろいろと関連する点も多いかと思いますが、なお残された時間で後の問題、例えばCPのペーパーレス化とか、あるいはそのほかの直接金融市場に関連をする問題点について御意見ございましょうか。
深尾委員、どうぞ。
○深尾委員 その一つ前の「適格機関投資家の範囲の拡大」のところですけれども、新たな定義の中で「当面」というところですが、「当該会社の申請により大蔵大臣が指定する者」というふうに書いてありますけれども、この「大蔵大臣が指定する者」という場合には、これは申請を受けて大蔵大臣が一々選んで審査するという考え方なんでしょうか。また、その理由はどういうところにあるのかというところをお聞かせ願いたいのですが、
1,000億円以上のポートがあるといいますと、相当大きな資産を持っているわけですけれども、これについて、もう一度それを大蔵大臣サイドが指定する必要があるのかどうかという点について、少しお聞かせいただければと思います。
○倉澤部会長 お願いいたします。
○内藤参事官 これは現行制度におきましては、金融の各業態について、省令で各業態の名前が並んでおるという形になっておりまして、ただ、非常に中小の小規模の金融機関とされる農協でありますとか漁業の連合会、これにつきましては、それぞれ申請を受けて指定をしていく、こういうふうな体制をとっております。したがって、ここには「申請により大蔵大臣が指定する者」と、こうなっておりますが、大蔵大臣がそれを何か審査をして裁量をもって決めると、こういうふうな考え方は全くございません。この基準というものに当てはまったということが明らかにされれば、自動的に指定をしていくというふうなことで考えております。
あくまで「当該会社の申請」といいますのは、そうした基準に当てはまるかどうかという問題と、それから、自分自身がディスクロージャーというものの保護を受ける必要がないということをいわば明らかにするということでございますので、あくまでその当該会社の意思を明らかにしていただくというふうなことで、申請ということでございます。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか。
○深尾委員 普通の日本語として読みますと、あたかも今おっしゃられた趣旨とは違うように読めまして、大蔵大臣が一々指定するように読めてしまうので、「申請によりその条件に合うと認められた者」とかいう形で、普通に読めばわかるように書くべきではないかと思います。
○倉澤部会長 表現ということですか。
○深尾委員 御返答いただければと思うんですが。
○倉澤部会長 お願いいたします。
○内藤参事官 表現ぶりについては、御意見も踏まえまして、できるだけ誤解のないような形に工夫できるものかどうか、検討させていただきます。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか。
○深尾委員 はい。
○倉澤部会長 ほかの点でも結構ですが、どなたか御意見、御質問ございましょうか。よろしゅうございますか。
それでは、引き続き、今度は、銀行・信託関連の論点紹介をお願いいたします。
○津曲調査室長 資料で申し上げますと、17ページからになります。
昨年3月に閣議決定されました規制緩和推進3カ年計画に記載されています銀行関連の規制緩和事項のうち、法律改正や制度論に係るものといたしましては、銀行による信託業務に関わるもの、それから、営業所の認可制に関わるものがございまして、加えまして、昨年12月の規制緩和委員会の第1次見解に取り上げられたものがございます。まず、銀行による信託業務に関わる規制緩和事項について御説明いたします。17ページでございます。
まず、信託業務につきましては、現在、信託業法に基づき免許を取得して信託業務を行う信託会社は存在はしておりません。全て銀行その他の金融機関でございまして、金融機関の信託業務の兼営などに関する法律、いわゆる兼営法により認可を受けて信託業務を行っているものでございます。現在、都市銀行及び長期信用銀行は、兼営法に基づく認可を受けられないことになっております。これが兼営法施行令に信託業務を兼営する金融機関の範囲が定められておりますが、全国展開をしている銀行、都市銀行及び長期信用銀行は除外されます。19ページにその施行令を付けてございます。
これは平成3年に、金融制度調査会が銀行による信託業務の本体兼営につきまして、「競争条件の公平の確保等の観点からみて、少なくとも現時点においては、金融機関本体での相互参入を図ることは問題なしとしない。」という答申を取りまとめたことを踏まえまして、これは17ページに付けてございますが、子会社形態による参入を原則としたものでございます。本件につきましては、平成9年6月の金融制度調査会答申「我が国金融システムの改革について」におきましては、「なお、信託業務を銀行等の本体で兼営することについては、引き続き検討を行っていくことが必要である。」とされておりまして、継続的検討課題とされたところでございます。
これに対しまして、関係業界からの規制緩和要望を踏まえまして、平成9年12月の行政改革委員会最終答申におきまして、銀行本体による信託業務の兼営が取り上げられまして、「普通銀行及び長期信用銀行本体での信託業務の全面的兼営について早急に検討を行い、結論を得るべきである。」とされ、これを受けまして、規制緩和推進3カ年計画におきましても、「普通銀行及び長期信用銀行本体での信託業務の全面的兼営について検討を行い、結論を得る。」とされたところでございます。
これにつきましては、これらの指摘を踏まえまして、銀行の本体での信託兼営について今後検討をしていくこととしておりますが、信託業務に係る基本的な法律でございます信託法及び信託業法は、いずれも大正11年に制定された法律でございまして、信託法は民事信託を念頭に置いて制定されたものであること、また、信託業法に基づく信託会社は昭和23年に消滅した後存在しておらず、現在まで具体的な設立申請もないということなどから、これらの法律は必ずしも現在の商事信託に適合したものとはなっていないという指摘もございます。このため、信託業務の担い手の範囲拡大に当たりましては、信託に係る種々の法制、例えば信託法、信託業法、兼営法、銀行法等を再検討し、現在の商事信託に適合した行為規制のあり方について議論する必要があると考えてございます。
銀行の本体兼営につきましては、本審議会「第一部会」において検討することになっております金融サービス法の議論なども踏まえながら、それらの問題や銀行の他業禁止と併営業務のあり方などについて、今後検討していくことが必要であると考えております。
また、今度は20ページの方に飛びますけれども、平成3年の金融制度調査会答申におきましては、地方銀行が協同組織金融機関などの地域金融機関につきまして、子会社方式による信託業務への参入が困難なこともあり得るとの考えから、子会社方式の補完的措置として本体での信託業務を限定的に認めるべきであるとされておりまして、それに基づいて、公益信託や土地信託などの業務を兼営する道が開かれ、17行の地方銀行が現在信託業務を兼営しております。この考え方は、平成9年の金融制度調査会において踏襲されておりますが、利用者の利便性を向上させる観点から、若干の業務の追加を行ってきております。現在、地域金融機関が本体で行うことができる信託業務の範囲は、金融監督庁の事務ガイドライン、22ページに付けてございますが、ここに列挙されているところでございます。
これに対しまして、行政改革委員会より、それらの銀行の本体兼営の解禁までの間の措置として、地域金融機関が本体で行うことができる信託業務について、引き続き拡大を検討すべきであるとされたところでございます。
続きまして、銀行の営業所に関する規制緩和事項についてでございます。23ページからになります。銀行の営業所につきましては、その設置、それから、位置の変更又は廃止などをしようとするときは、銀行法第8条に基づきまして店舗ごとの認可が必要とされております。従来は、いわゆる店舗通達によりまして出店規制が行われておりましたが、平成7年の通達を最後に出店規制は廃止しております。現在は、銀行法施行規則第9条の認可基準が規定されておりますが、これは客観的な基準となっておりまして、認可制といいましても行政の裁量が働く余地が極めて少ないのが実情でございます。また、銀行は代理店を設置することができるようになっておりますが、その代理店の設置や廃止につきましても同様に認可制となっておりまして、その認可基準につきましては、銀行法施行規則第9条の3でございますが、ここに規定されております。
銀行の営業所につきましては、設置などの認可のほか、臨時休業や業務を再開するに当たっても当局への届出が必要とされております。銀行法の第16条でございますが、25ページに付けてございます。これは店舗外自動支払機などについても適用されております。
これらの銀行の営業所に係る各種規制につきましては、関係業界から、営業所の認可制の見直しをはじめ緩和要望が出されておりまして、規制緩和推進3カ年計画におきましては、営業所の認可制についての見直し、法人代理店の従たる事務所設置に係る規制の緩和、それから、個人代理店の代理店主の交代があった場合の設置と廃止の認可の届出制への移行、それから、店舗外の自動支払機の臨時休業などの届出の廃止について検討することとなっております。
このうち、営業所の認可制の見直しにつきましては、今年度中に結論を得るということとされております。なお、先に開催されましたこの部会の下に設けられてございます「銀行の機能と役割に関するインフォーマルな検討会」がございますが、こちらの方におきまして営業所の認可制について御議論いただいたときには、廃止の意見が大勢であったということを御報告申し上げます。
続きまして、銀行の営業免許に係る需給調整規制について御説明いたします。これが26ページになります。
経済的な規制の代表例と言われるのが需給調整規制ということでございますが、これにつきましては、第3次行革審が平成4年に取りまとめた第3次答申におきまして、需給調整規定については「原則として、10年以内のできるだけ早い時期に廃止の方向で検討する」ということとされております。
銀行の営業免許につきましては、銀行法第四条第2項第三号でございます。これは27ページに付けてございますけれども、「申請者による銀行の業務の開始が、当該銀行の業務が営まれる地域における資金の需給状況、銀行その他の金融機関の営業状況、その他経済金融の状況に照らして、金融秩序を乱すおそれがないか等適当なものであること。」というのを免許の要件に書いてございます。
これにつきまして規制緩和委員会の方から、免許申請者の状況とは別に、「周囲の市場状況を判断して免許の可否を判断する需給調整条項と見られる」との見解が示されておりまして、「銀行法の見直しを行うに当たり、この条項を見直して需給に係る規定を廃止すべきである。」とされたところでございます。現在、銀行の免許に当たりましては、需給調整というものは行われてはおりませんが、規制緩和委員会の見解を踏まえまして、ほかの金融関連法制も参考にしつつ、同条項の見直しについて検討していくということとしております。
銀行に関わる項目の説明は、以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま御説明のありました論点につきまして、御意見、御質問等ございましたら、御自由に御議論いただければと思います。
銀行本体での信託業務の全面的兼営、あるいは地域金融機関が行う信託業務の拡大といったようなことについて、岡本オブザーバー、何か御意見ございますか。
○岡本オブザーバー 信託協会の一般委員長をやっております岡本でございます。今、調査室長からお話があったとおりでございまして、繰り返しになりますけれども、若干意見を申し上げたいと思います。
信託制度というのは御承知のとおり、ほかの金融制度とかなり異なった制度だということをまず第1点御理解いただきたいわけでございまして、例えば銀行業務の場合ですと、銀行は確定の元本保証をやる代わりに、銀行に預けられた預金、資金というものは、専ら自己の利益のために運用するということでいいわけですけれども、しかし、信託の場合は、御承知のとおり受託者は、他人である委託者あるいは受益者の利益のためにまず第一に行動するという点が違っておりまして、そのために実績配当をやり、信託報酬を手数料としていただく。上がった成果は、原則として全てお客様のもとにお返しするという点で全く異なった制度でございますので、したがいまして、ここに書いていますように、平成3年の答申にありますように、信託業務というのは、委託者・受託者間の長期にわたる高度な信頼関係を基礎とする業務であります。だから、信託のそういう特質を考えて、これまで信託業務を主業とする金融機関がやるべきであって、それ以外の金融機関が副業として補完的なビジネスとして信託をやるということは、余りふさわしいことではないのではないかということで整理されてきたものと理解しておるわけでございます。
仮に、今規制緩和委員会等で御議論がありますように、信託を主業としない都市銀行あるいは地方銀行が本体で信託参入を検討されるということでございますと、この場合は自己の利益でなく、他人の利益のために行動するいわゆる受託者、英語で「フィデューシャリー」と言っておりますけれども、こういうフィデューシャリーを担うサービス機関に要求される受託者概念の明確化を行った上で、信託業務を遂行するために必要なルールとか、あるいは参入の適格性に関する議論がなされることが前提だと思っておりまして、そういう議論を十分踏まえた上で検討されるのが適切ではないか。その議論の場は、金融審議会の第一部会で用意されておりまして、そこの議論に委ねるのが筋ではないかなと思っている点が第2点でございます。
第一部会では、御承知のとおり、市場型間接金融とか、あるいは集団投資スキームについて検討されるはずでございまして、ここで言われておる集団的な投資スキームの担い手は、全て他人のために行動するという点で広い意味でのフィデューシャリー、あるいはフィデューシャリー・デューティを負っておりまして、今後受託者責任としての忠実義務とか、あるいは善管注意義務、分別管理義務、あるいは自己執行事務というふうなことが、今後具体的にどういうことであるべきかということが検討されることになると思っておりますし、また、業者としての適格性についての議論も、その場で話されていくものだと思っております。
ちょっと2点だけ補足させていただきました。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
今の点について、事務局の方は、特別何かございますか。
銀行あるいは証券関係のオブザーバーの方で、これに関連する御意見ございましょうか。
中原オブザーバー、どうぞ。
○中原オブザーバー 全銀協の中原でございます。
信託銀行さんは全銀協のメンバーなものですから、私の立場で今どうこう申し上げることはございません。ただ、一方で、第一部会での検討もあると思いますが、FS、ファイナンシャル・サービス法の議論のときにいろいろと私ども申し上げているんですが、利用者利便ということ、この拡大という視点からの検討も併せて必要だろうということでございますので、一言。
○倉澤部会長 杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 今の信託だけではなくて、銀行部門と証券部門についても既に子会社方式ということでやってきておられますけれども、こちらの方も本体でどうするかという問題が残っているんだと思うんですが、その辺の検討は一体どうされるのかということが一つ。これは質問です。
それから、今の信託部門については、これは第二部会としましては、サービスを受ける側の立場からどういう意見を言うかというのはかなり大事な点だろうと思うんですね。そういう点で申し上げますと、今、信託業界のオブザーバーの方がおっしゃったように、銀行が自己の利益のためにやって、信託が資産を預けている人たちのためにやるんだと、抽象的には多分そういう概念の区別なんだろうと思うんですが、さて、では実績はどうなんだろうかということをひとつ見せていただきたいなと。既にここ何年かの実績もあるわけですから。
例えば銀行の場合には、大和銀行さんが既に兼営でやってきておられるわけですね。私も大和銀行さんの信託の実績はわからないんですけれども、兼営されている大和銀行さんと、専任でやってこられている各信託さんとの間に、銀行のためを第一に考えておられる大和銀行さん、それから、預り資産のために第一に考えておられる信託さんの間に、どの程度の開きが実際にあったのか。恐らく各企業の年金を預かったりいろいろされていると思うので、この5年ぐらいの実績が出ていると思うんです。そういうものをお出しいただいて、やっぱり専任信託の方が我々資産を預ける側にとっては十分やっておられるという実績差が本当にあるのかどうか。その辺も見た上で結論は出すべきなんではないだろうかなと、そういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○倉澤部会長 今の点について、どなたかオブザーバーの方、御意見ございますか。
岡本オブザーバー、どうぞ。
○岡本オブザーバー これはなかなか言いづらい点でございますが、ニューヨークで保管しておった有価証券がどのような措置になったかというふうなことを踏まえて御議論願えればありがたいと思っております。
○倉澤部会長 堀内委員、どうぞ。
○堀内委員 この問題は、たびたび申し訳ないんですが、私、規制緩和小委員会にいたときに実際に問題になったことで、大分議論になりました。それで、確かに受託者義務といいましょうか、これを非常に明確にし、そして投資家といいますか、個人ですね。委託をした側の人たちの権利を守るということが非常に重要な点で、その点はどういう場合にも必要なことなんですが、恐らく我々のこの委員会で議論すべきなのは、もう一つの点。つまり金融のシステム全体の効率性を高めていく上で、どういう仕組みが必要かということになりますと、私は、岡本委員のお話にもかかわらず、特に信託という業務を特定の専門の機関がやらなければいけないという理由は余りないのではないかと思うんです。
もちろんどういう場合にも、どういうものが信託の業務を行うにしても、先ほど岡本委員から御指摘があったような受託者義務の明確化とか、委託者の側の保護というのは非常に重要ですけれども、それはどういう枠組みの下でもきちんとやるべきであって、現行の枠組みでそれが十分かというと、そうでもないと思うんです。
むしろ、やはり我々としては、特に最近重要性を増している資産管理業務の一環としての信託業務というのをもっと活性化していくということが必要で、そのためにはかなり新規参入の可能性が広がるような、あるいは新規参入でなくても、いろんな形で直接・間接にこの業界に参入できるようなチャンスを広げていっていただきたいというふうに思います。
○倉澤部会長 では、渡辺オブザーバー、先にどうぞ。
○渡辺オブザーバー 私、たった今、金融再生委員会に金融健全化計画・公的資金の申請をお願いしてまいりました。
それで、健全化計画をずっと考えてまいった実感からちょっと申し上げますと、三つ視点がございまして、私ども、企業のあらゆるニーズにきちんと応えていく金融機関にならなければいけないという、そういう観点が一つございます。
それから、もう一つ、先ほどございましたが、日本の金融システム全体を安定化して非常に強化していく。産業の再編成がこれから始まりますが、そういったものをきちっとサポートしていくためにも、グローバルに通用するような非常に強い金融機関を作っていかなきゃいけない。結局外銀との競争というようなことになるわけでございまして、そういうときに、いろんな機能をきちっと持っていないと十分な競争にならないかなと。
それから、三つ目は、私どもいろんな他業態とのアライアンスを進めているわけでございますけれども、こういったアライアンスを本当に実効性のあるものにしていく上でも、いろんな業態にまたがる規制を相当程度緩和もしくは廃止をしていかないと、本当の意味でのアライアンスの実効性というものが効果が上げられないなということを、健全化計画を作って、これをきちっと実行していくという意味で、非常に重い責務を負っているわけでございますが、そのための環境整備といいましょうか、そういう側面からも、こういった規制をできるだけ早いタイミングで緩和もしくは廃止をしていただくということをぜひお願いしたいということでございます。
○倉澤部会長 深尾委員、どうもお待たせしました。
○深尾委員 私も、信託業務についてこれだけ厳しく分けてきたのは、主要国では日本ぐらいではないかというふうに理解しておりまして、そういう意味では、分離する意義というのは余りないのではないかというふうに思っております。そういう意味では、信託業務への参入ということには方向としては賛成ですけれども、同時に、現在ある信託法を、例えば信託法第3条の信託の公示に関わる問題で、現物債あるいは登録債について規定どおりにやっている信託銀行はないのではないかと思われるわけです。つまり法律上の対抗要件をちゃんと備えた格好で分けていらっしゃるところはないのではないかと思われるんですが、これは法律の方が不備なのであって、例えば投資信託について、受益者全部何十万人というのを一々変わるたびに書かないと登録の変更ができないというような、そもそも使うに耐えないような制度になっているから問題があるかと思いますけれども、同時にそういう法律をそのままにしておいた信託業界にも相当問題があるのではないか。そうであれば、何十万人か人数のついた書類を法務省に持っていくなりして、使いものにならないことをはっきり示すべきではなかったのかというふうに思います。
そういう意味では、この相互参入には賛成ですけれども、その前にといいますか、それと同時に、現在の信託法を本当に信頼に足るような登録制度というものに早急にする必要があって、そうでなければ、そもそも今の信託制度自身がおかしいのではないかというふうに思います。そういう意味で、早急に信託法についての改正をやると同時に、相互参入を認めるべきではないかなと。
ほかにも問題点が幾つかあるかと思いますが、あえてただいまは信託法のところと、もう一つは分別管理の罰則ですね。これは
100万円以下の過料しかないかと思いますけれども、もちろん業法がありますので、免許を取り上げるとかいうことは可能だと思いますが、このあたりの分別管理義務を怠った場合のペナルティを、もう少し責任に見合った重いものにしていくということをやった上で、相互に参入するようにしていってはどうかというふうに思います。
○倉澤部会長 室長のお話の中にも、銀行の信託法が民事信託をむしろ主たる対象に考えていて、金融商品としての信託の場合にはいかがかというような問題がございましたけど、今の深尾委員にコメントすることはございますか。
では、お願いいたします。
○津曲調査室長
先ほど御説明申し上げましたけれども、これに関連する法規というものをいろんな面から検討していかなくちゃいけないという御指摘だと思います。それと、これまで慣行や内部規則に委ねられてきているところもございますので、これらに関連する検討、法的手当てを含めた統一したルール作りというものも必要だろうというふうに考えております。
○倉澤部会長 お願いいたします。
○三國谷企画課長 いろいろ御指摘いただいておりますけれども、すぐれて現状をどう認識するかという問題と、あるいは制度をどうするか。あるいは整合性、いろんな議論があるのかと思います。また、事制度ということになりますと、一方でそれぞれの歴史とか生い立ちとかということも相当ある。その中にいろいろな御指摘をいただきながらいろいろ検討しているわけでございますが、一方、現在におきまして、今、第一部会におきまして集団投資スキームということの検討に入っていることも事実でございます。ただ、しかしながら、これも率直に申し上げますと、集団投資スキーム自体、これ一つを取り上げましても、大変複雑難解な問題が錯綜している状態でございます。そういったところと信託というところが、それでは直ちに同時並行的にいけるかどうかという制度論になりますと、また相当難しい問題もあるところかと思います。
いずれにしても、現在いろいろな委員会から相当広範な御指摘をいただいているわけでございまして、これはまた、いろいろなそれぞれ絡み合ったところもございまして、相当幅広いところから検討していかなくてはいけない問題が多々あろうかと思います。本日いろいろな御指摘いただいておることにつきまして、直ちにここで即答できるというようなことは、現実問題としてはなかなかないのかもしれませんが、いろいろな御指摘を踏まえまして、また私どもなりにいろいろ、余り現段階で歯切れの良いことを申し上げるということはなかなか無理であることも御理解いただきたいわけでございますが、問題意識として受け止めてまいりたいと思っております。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
なお、今の問題について、その他の論点、例えば店舗とか代理店とか、あるいはそもそもの営業免許制等についても御説明があったんですが、これらの点について何か御意見なり御質問ございましょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、本日のもう一つのテーマの方に進めさせていただきます。もう一つのテーマは特別保険料率の問題でありまして、その検討に移らせていただきます。
初めに、神田委員から、預金保険制度に関するワーキング・グループでのこの問題についての議論について簡単な御紹介をいただいた後、事務局より資料の説明を行い、続いて、再び神田委員から補足説明をいただきます。
それでは、よろしくお願いいたします。
○神田委員 それでは、まず最初に、今御紹介いただきましたように、預金保険制度に関するワーキング・グループの模様について簡単に御説明をさせていただきます。
〔資料配付〕
○神田委員 なお、現在配付していただいておりますけれども、これは預金保険制度に関するワーキング・グループにおきまして特別保険料率のあり方について議論したところを、私の責任でメモとしてまとめたものでございます。皆様方の本日この部会における御議論の御参考にしていただければという趣旨でございますので、よろしくお願いいたします。
それで、この預金保険制度に関するワーキング・グループでは、特別保険料率につきまして金融界からのヒアリングをさせていただきまして、それに基づきまして検討を行いました。
この特別保険料率といいますのは、また後で御説明があると思いますが、お手元の資料で申しますと4−2という資料の1ページ目に預金保険法施行令の附則の第二条というのが左下にございます。そこにありますように、「遅くとも平成十年度末(すなわち今年のこの3月末)までに、預金保険機構の預金保険法附則第十九条第一項に規定する特例業務の実施の状況を踏まえて検討を行うものとする。」とされているものでありまして、したがいまして、特別保険料率についての検討というのは、この3月末までに見直すそのあり方についての検討という意味で、現在既に存在している法律・政令、すなわち法令の枠に基づいて、その中での話だという位置づけになります。
金融界からのヒアリングにおきましては、本日御出席の全銀協の一般委員長であられる中原さんをはじめといたしまして、そのほか全国信用金庫協会、それから全国信用組合中央協会、そして、全国労働金庫協会をそれぞれ代表される方々から御意見をいただきました。4人の方々からの御意見は、内容は若干ニュアンスの違いはございますが、しかし、一言で申しますと、現在の状況に照らせば、現状の特別保険料率というのは既に限界であるということで、できれば引き下げてほしい。あるいは引き下げることが難しいとしても、引上げというのはあり得ない選択肢であるという御意見であったのではないかというふうに理解しております。
それに基づきましてワーキング・グループで議論いたしましたけれども、ワーキング・グループでは、主として経済学あるいは金融論の先生方から理論的な観点で重要な御指摘を受けました。しかし、他方、先ほど申し上げましたように、現在の法令の枠内での特別保険料率の検討ということと、それから、この特別保険料率が設けられたときの経緯、その後の変化というものも踏まえましていろいろ議論しました結果が、繰り返しになりますけれども、現在配付させていただきました、私がまとめさせていただいたメモに書かせていただいたとおりでございます。したがいまして、資料説明及びメモについて、これは事務局の木下室長から御説明をお願いします。
○倉澤部会長 では、お願いします。
○木下信用機構室長 信用機構室長の木下でございます。
それでは、まず、お手元に配付いたしました「第二部会4ー2」と書いた資料に基づきまして、特別保険料率に関する条文、それから背景となる考え方、それから、今日の御審議の参考となる数字について御説明をしたいと思います。
まず、1ページ目をお開きいただけますでしょうか。まず、特別保険料につきましては、1ページ目の上にございますように、預金保険法第十九条におきまして、ポイントとなるところに傍線を引いてございますが、「金融機関は、平成八年度から平成十二年度までの間、」5年間でございます。「第五十条第一項に規定する保険料のほか」、これはいわゆる一般保険料のことを言っております。「機構の特例業務の実施に要する費用に充てるため、機構に対し、特別保険料を納付しなければならない。」と書いてございます。
そして左へいきまして、3項というところで、特別保険料率を設定するに当たっての考え方が書いてございます。読み上げますと、「特別保険料率は、特例業務に要する費用の予想額及び金融機関の財務の状況を勘案し、政令で定めるものとする。この場合において、政令で定める特別保険料率は、特定の金融機関に対し差別的なものであってはならない。」
これを受けまして、下の段でございます。預金保険法施行令第三条第2項におきまして、特別保険料率は
0.036%と定まっておるわけでございます。
そして、今、神田座長から御紹介がありましたように、附則第二条というのがございまして、特別保険料率については、遅くとも平成十年度末までに、この3月末までに「特例業務の実施の状況を踏まえて検討を行うものとする。」という規定がございます。したがいまして、この3月末までに金融審議会総会での御意見をいただき、それを踏まえて行政として結論を出したいと、こういうふうに考えているわけでございます。
次のページをおめくりいただきますでしょうか。これは一般保険料についての条文を参考までに記載しているものでございますので、これは御参考までということでございます。
もう1ページおめくりいただきますと、3ページ目でございます。「預金保険料率の推移」がございます。ここにございますように、預金保険料率は、まず平成8年度までは特別保険料というのはございません。一般保険料だけでございました。それが平成8年開設、平成8年の6月に成立いたしました預金保険法改正によりまして、それまでの一般保険料
0.012%から、一般保険料を4倍に引き上げて 0.048%、それから特別保険料を創設いたしましたので、これが一般保険料の3倍に相当する
0.036%、合わせまして、従前の 0.012%の7倍に相当する料率に引上げを行ったわけでございます。
その背景を御説明いたしますと、次のページをおめくりいただければと思います。ここに「金融安定化・破綻処理制度の推移」ということで、これまでの預金保険法の改正を中心とした制度の変更の概要をまとめてございますが、これの上から四つ目の○のところ「平成8年改正(金融3法)による措置(2000年度までの時限措置)」、・の一つ目で、「預金の全額保護のため、受皿金融機関に対しペイオフコストを超える資金援助を可能とする。(その財源として特別保険料を徴収)」と書いてございます。
これをもう少し敷衍して申し上げますと、この平成8年改正前までは、基本的にペイオフコストを超える資金援助というものが法律上不可能でございました。しかしながら、例えば平成6年あるいは7年を中心に、例えば木津信用組合に代表されるような金融機関の破綻というものが表面化をしてきたわけでございます。その当時におきましては、今御説明いたしましたように、ペイオフコストを超える資金援助ができないわけでございましたので、それを超える損失が破綻金融機関に生じているような場合、典型的には木津信用組合がそうでございましたが、その損失をどのように埋めるかということが非常に問題になったわけでございます。当時といたしましては、すなわちペイオフコストを超える資金援助ができない時代におきましては、したがって、その分を例えば関係金融機関、あるいは必ずしも関係金融機関とは言えない金融界全般の御協力を仰いで、例えば債権放棄をしていただくとか、あるいは収益支援をしていただくとか、そういう形でその損失を穴埋めいたしまして、預金の全額保護ということを現実問題として行っていたわけでございます。
それが一方で奉加帳批判というものを受ける一つの原因になったのも事実でございます。そういう反省を踏まえまして、平成8年改正におきましては、いわば金融機関から任意に御協力いただいていた部分を特別保険料という形で法律上明示して納付をしていただく。そして、それによって、2000年度までの時限措置でございますけれども、その預金の全額保護の特例。言い換えればペイオフコストを超える資金援助を可能にする措置をとったわけでございます。これが特別保険料の導入された背景でございます。
そして、その当時、何でこういう料率で決まったのかということについて御説明をいたします。
恐縮でございますが、2ページほどおめくりいただきまして、6ページを開いていただければと思います。これは平成7年12月22日の金融制度調査会答申の文章の関係部分を持ってきたものでございます。この金融制度調査会答申で、いわば平成8年改正の骨格となる考え方が示されまして、これを受けて立法化作業が行われて、先ほど申し上げました平成8年改正が行われたわけでございます。
その6ページ目ののところでございます。ここは、なぜそういう料率になったかという説明の部分でございますが、ちょっと読み上げさせていただきますと、
の2行目からでございますが、「預金保険が発動されるようになったこの4年間と同程度の破綻が生じた場合にも対処しうるよう、この間の破綻処理コスト合計額である
2.0〜 2.5兆円を今後5年間で引きなおし、それをカバーしうるよう料率を算定すると、保険料率は一般保険料で現行料率の4倍程度、特別保険料で3倍程度、合計7倍程度の水準に引き上げることが必要であると考えられる。」と。
それから、2番目に、「なお、この引上げにより金融機関の利益に対する保険料負担の割合−−これは「保険料負担」を分子に、分母に「業務純益÷一般貸倒引当金繰入額÷保険料負担」を置いたものでございますが、これは米国の金融機関の保険料負担のピークである8%とほぼ同程度となり、現時点においてこの水準を超える負担を金融機関に求めることは、我が国金融機関の国際競争力への悪影響等をも勘案すると、極めて困難と考えられる。」とされておりました。
1ページおめくりいただいて、7ページでございます。ここについては、実は当時、公的資金についてどういうふうに議論していたのかという点で簡単に御紹介いたしますと、?..冒頭でございますが、基本的考え方は、「金融機関の破綻処理は金融システム内の最大限の負担により行われることが原則である」という考え方が書いてございました。
そして、.の後半の部分でございますが、「このような意味で、金融・決済システムは経済のインフラストラクチュアであり、その安定性確保は金融機関、預金者のみならず、広く国民経済全般の安定の基礎となるものである。したがって、上記のように金融システム内の手立てを講じてもなお破綻処理費用が不足するような場合には、経済全般の安定を確保するためのコストとして、広く間接的な受益者として、納税者にも負担を求めることとせざるを得ないと考えられる。」と、そうしておりました。
.で、しかしながらということで、そこの考え方に限定を加えてございます。
.の3行目の中ほどからでございますが、「公的資金の導入は信用組合特別勘定に限定することが適当である。具体的には、5年後に信用組合特別勘定の積極的な業務が終了した際に、一般金融機関特別勘定に黒字があり、これを充当してもなお信用組合特別勘定に赤字が生じている場合には、政府が適切な財政措置を講ずることとすることが適当である。」と。
これを踏まえまして、具体的なやり方としては、信用組合特別勘定というのを預金保険機構に当時設けることにいたしまして、それに対する政府保証という形で法律で は措置をされておりました。そして、「なお」という次のところでございますが、 「納税者に安易に負担を求めるべきではないこと等を踏まえると、3年後に勘定の損益の状況、金融機関の財務状況等を勘案の上、特別保険料の適正な見直しを行うことが適当である。」ということで、先ほど御紹介した政令が設けられたという経緯でございます。
また4ページにお戻りいただけますでしょうか。今、口頭で御説明いたしましたように、○の四つ目、平成8年改正の・の二つ目の「?破綻信用組合処理のための資金として、預金保険機構が行う借入に対し、政府保証の付与を可能とする。」ということでございます。
それ以降、預金保険機構の財源、保険料というのは財源でございますので、財源に関連した法改正を御紹介いたしますと、4ページの一番下でございます。平成10年改正、これはいわゆる金融安定化2法による措置でございます。これは平成10年の2月に成立しておる法律でございますが、・の一つ目で、信用組合のみならず銀行の破綻が相次いで発生している状況に鑑み、ちょっとこの1行目を飛ばしまして、5ページに移っていただきまして、5ページの?破綻金融機関処理のための資金として、預金保険機構に対し7兆円の国債交付、
預金保険機構が行う借入に対し、10兆円の政府保証の付与が行われました。
それから、5ページ目の中ほどの○金融再生関連法におきましては、特別公的管理銀行という制度が設けられまして、それに対しても、いわゆる特別資金援助と同様の性格の資金援助ができる旨法定をされております。
これが今までの法改正の経緯でございます。
それから、数字を申し上げます。8ページでございますが、これが現在の特例業務勘定、及び参考までに一般勘定の収支の状況の表でございます。
まず、5年間の財源見込み約 2.7兆円、(8年度〜12年度)と書いてございます。これは、先ほど申し上げた一般保険料率4倍部分、特別保険料率3倍部分を合計いたしますと大体年
4,600億円程度の保険料収入がございます。そして、それが5年間でどうなるかということでございますと、これに5を掛けまして、さらに当時存在していた7年度末責任準備金、いわばたまりでございますが約
4,000億円、これが(注1)に書いてございますが、それを合計したものが約
2.7兆円。すなわち12年度までの5年間でこの程度の保険料収入が見込まれるという数字でございます。内訳は、一般勘定
1.7、特例業務勘定1兆円でございます。
(B)実効済金銭贈与でございますが、本日現在のところ、40金融機関に対しまして、これは運営委員会の議決ベースで言っておりますけれども、約
4.2兆円金銭贈与、いわばロス埋めの資金贈与がなされたわけでございます。一部なされる予定というふうに言っていいんですけれども、その内訳が、一般勘定2兆円、特例業務勘定が2兆2,000
億円ということで、結局、合計で言いますと、差し引きまして約1兆
5,000億円もう既に保険料収入を超過しているわけでございます。一般勘定で見ますと、その差額約
0.3、これは現在一般勘定の借入金になっております。それから、特例業務勘定で見ますと
1.2兆円のマイナスと、これが(注3)にございます交付国債の現金償還額ということで、現在
1.2兆円、先ほど御説明した7兆円の中から現金償還がなされております。
(注2)でございますが、既に破綻済公表しておりますのが12金融機関及び特別公的管理銀行が2行ございまして、今後この処理が予定をされておりますので、(B)の数字はさらに拡大をしていくということに相なろうかと思います。
したがって、この仕組みから申し上げますと、特別保険料を引き下げれば、より交付国債に負担が回る。それから、引き上げれば、より交付国債への負担がその分減ると、そういう構造になったわけでございます。
それから、9ページでございます。これが「金融機関の預金保険料負担割合の日米比較」。預金保険料負担割合の定義は、(注1)に示してございます。
アメリカから見ていただきますと、先ほど御説明したように、91年のピークが負担割合で8.32%、順次低下いたしまして、現在は0.02%ということになってございまして、極めて低い水準となっています。一方、日本を見ていただきますと、96年度、すなわち8年度から特別保険料の導入等によりまして上がりまして、直近の9年度決算(97年度決算)では6.46%になってございます。
しかしながら、(注3)でございますけれども、6.46をさらに細かく見ますと、97年度の金融機関業態別の負担割合は、都市銀行5.21%、長期信用銀行0.75%、信託銀行6.22%、地方銀行8.21%、第二地方銀行9.03%、信用金庫8.45%、信用組合8.62%、労働金庫9.03%と、このように業態別にばらしますと、8%を上回る金融機関の業態がございます。さらにこれを個別の金融機関に区分けをしていきますと、さらにばらつきが出ることが推測されるところでございます。
以上でございます。
○谷内補佐 それでは、事務局から、神田座長のメモを朗読させていただきます。
特別保険料の料率についての考え方
1.はじめに
金融機関の破綻処理については、現在、預金者に負担を求めるための条件が整っていないとの考え方の下、金融システムの安定を図る観点から、平成8年度から12年度までの時限的な特例措置として、ペイオフコストを超える資金援助等を行うことにより預金等の全額保護が図られているが、その財源に充てるために、一般保険料に付加する形で特別保険料が金融機関に課されている。
預金保険法附則第19条第3項において、特別保険料率は、「特例業務に要する費用の予想額及び金融機関の財務の状況を勘案して、政令で定めるものとする。」とされるとともに、一般保険料率と同様に「特定の金融機関に対し差別的なものであってはならない。」と規定されている。
なお、特別保険料の料率については、預金保険法施行令附則第2条に「遅くとも平成10年度末までに、預金保険機構の預金保険法附則第19条第1項に規定する特例業務の実施の状況を踏まえて検討を行うものとする。」との検討規定が置かれている。
2.特別保険料導入時の考え方
平成7年12月22日の金融制度調査会答申は、「金融機関の破綻処理は金融システム内の最大限の負担により行われることが原則であり、ペイオフコストを超える資金援助を行うために設けられる特別基金の財源も、基本的には金融機関の最大限の負担により賄われることとなる。」とし、新たに制度化する特別保険料の料率については、「預金保険が発動されるようになったこの4年間と同程度の破綻が生じた場合にも対処し得るよう」、「保険料率は一般保険料で現行料率の4倍程度、特別保険料で3倍程度、合計7倍程度の水準に引き上げることが必要であると考えられる。」とし、その水準について、「この引上げにより金融機関の利益に対する保険料負担の割合は、米国の金融機関の保険料負担のピークである8%とほぼ同程度となり、現時点においてこの水準を超える負担を金融機関に求めることは、我が国金融機関の国際競争力への悪影響等をも勘案すると、極めて困難と考えられる。」としていた。
同答申は、「上記のように金融システム内の手立てを講じてもなお破綻処理費用が不足するような場合には、「経済全般の安定を確保するためのコストとして、広く間接的な受益者として、納税者にも負担を求めることとせざるを得ないと考えられる。」としていたが、その場合でも、「公的資金の導入は信用組合特別勘定に限定することが適当である。」とし、「業務終了時点において赤字が生じているときに、「政府が適切な財政措置を講ずることが適当である。」としていた。
なお、特別保険料率の検討については、「納税者に安易に負担を求めるべきではないこと等を踏まえると、3年後に損益の状況、金融機関の財務状況等を勘案の上、特別保険料の適正な見直しを行うことが適当である。」としていた。
3.その後の状況の変化
平成10年2月の預金保険法改正では、北海道拓殖銀行をはじめとする銀行の破綻の表面化という状況の変化を踏まえ、預金保険機構の財政基盤の強化を図るために、7兆円の国債が特例業務勘定に交付され、破綻処理に伴って発生する損失等に対して国債の償還金が充てられることとするとともに、信用組合以外の金融機関の破綻処理に当たっても、公的資金の導入が図られた。また、特例業務勘定における資金調達が円滑に行われるために、10兆円の政府保証が付与された。
7兆円の交付国債が導入された背景には、金融・決済システムは経済のインフラストラクチュアであり、その安定性確保は金融機関、預金者のみならず、広く国民経済全般の安定の基礎となるものである。金融機関の破綻の増加に伴い特例業務に要する費用の全てを特別保険料に求めることは困難であり、財政基盤の強化を図る必要がある、との考え方があったものと考えられる。従って、その導入は、金融機関の保険料負担を現状より軽減することまでを念頭に置いたものではなかったと考えられる。
(注)なお、平成10年10月に成立した金融再生法では、特別公的管理銀行に対して、この17兆円の枠組みを活用して特例資金援助ができることとされた。
4.特別保険料の料率についての検討
上記の経緯に鑑み、預金保険法及び同施行令に基づき、これまでの特例業務の実施の状況を踏まえつつ特例業務に要する費用の予想額及び金融機関の財務の状況を勘案し、特別保険料の料率について検討を行うと、以下のとおりである。
特例業務の実施の状況及び特例業務に要する費用の予想額
平成8年の預金保険法改正以降、40件の金融機関の破綻事例に対し総額で約4.2
兆円の金銭贈与がなされており、既に平成8年度から12年度までの5年間の財源見込額約
2.7兆円を超過している。また、特例業務勘定だけをみても、財源見込額約
1.0兆円に対して実行済金銭贈与額は約 2.2兆円と大幅な超過になっている。更に、既に破綻を表明している金融機関及び2つの特別公的管理銀行の処理も予定されていることを勘案すれば、実行済金銭贈与額と財源見込額とのギャップは、今後一層拡大することが見込まれる。
また、一般に、金融機関は、預金保険制度の存在によって便益を得ており、それに対応する負担を負うべきものと考えられるが、特に預金等の全額保護が図られている特例期間中においては、例えば、預金吸収コストの面においてより大きな便益を受けていることに留意する必要がある。
以上から、特別保険料の料率を引き下げ得るような状況にはないと考えられる。
金融機関の財務の状況
我が国の金融機関の保険料負担の割合は、預金保険制度の対象金融機関全体でみると、平成8年度5.72%、平成9年度6.46%となっているが、平成9年度の業態毎の保険料負担の割合をみると、地方銀行8.21%、第2地方銀行9.03%、信用金庫8.45%、信用組合8.62%、労働金庫9.03%となっており、多くの業態において既に8%を超えている。一方、米国の金融機関の保険料負担の割合をみると、95年3.24%、96年0.08%、97年0.02%とピーク時の8%から大幅に低下しており、日本の保険料負担の割合は、米国の現在の水準と比較しても相対的に高い水準となっている。
以上から、特別保険料の料率を引き上げることは、特に中小金融機関については、その利益に比較して保険料負担が過大となり、金融システムに対する不安を助長しかねない可能性があること、また、国際的に活動する金融機関については、その国際競争力への悪影響が懸念されることから、困難な状況にあると考えられる。
以上のような状況を総合的に勘案すると、残る2年間の特別保険料の料率については、これを据え置くことが適当であると考えられる。
○倉澤部会長 どうぞ、神田委員、お願いします。
○神田委員 今御説明いただき、また、読み上げていただきましたメモの内容と重複するかもしれませんけれども、若干の補足をさせていただきます。
4点ほど補足させていただきたいと思いますけれども、第1点は、あくまでこれは特別保険料率の見直しということで、2001年3月末までの時限措置というか、その状態を前提に議論をしたということでございます。
それから、第2点は、これは繰り返しになりますが、現在の預金保険制度の法令の体系を前提として、その枠内で先ほどの政令の規定に従って、附則の規定に従ってということですけれども、見直しをする場合にどういうふうに考えたらよいかということで議論をしました。それは、メモで言えば「はじめに」のところに書いてあることでございます。
それから、3点目ですけれども、これも先ほどからの繰り返しになりますが、この制度導入から今日に至るまでの経緯というのがございまして、金融制度調査会の答申から、それから昨年の2月の若干の制度の変化。これは公的資金の導入についての考え方の変更というものが若干ございましたけれども、そういうこれまでの経緯を踏まえて、どうしたらいいかということを検討したということでございます。これはメモの2.と3.になります。その結果が、メモの4.で書きました2枚目の最後から3枚目に書いたようなことになっているのではないかと思います。
ワーキング・グループでは、先ほどもちょっと申し上げましたが、経済学及び金融論の先生方から理論的な点の御指摘を幾つかいただいておりまして、ちょっと簡単に御紹介しておきますと、一つは、考え方として、預金保険制度というものが存在する以上、金融機関は、保険料負担という費用というか負担を当然強いられるわけですけれども、逆にその制度があることによって便益を受けているはずであると。その便益を本来であればきちんと計測して、その受けた便益に見合うコストを負担するというのが正しい考え方であろうという御指摘がありました。これも2001年3月末までの特例措置中は預金全額保護ということになっておりますので、預金が全額保護されているということによって、資金調達上あるいはその他の面で金融機関がどういう便益を受けているかを、本来であればきちんと計測して、その上でしかるべき保険料負担というものの率を計算すべきだということに、理論的には筋合いのものであります。
それから、もう一点これに関連して、保険料は金融機関が負担するということではありますけれども、これはどの程度金融機関が負担しているのか、あるいは預金者の負担に回っているのかということは、預金市場における需要あるいは供給の弾力性によってこれは違ってくるのであって、その点も、本来であればきちんと計算をして決めるべき筋合いのものだという御指摘がありました。
そしてまた、他方、金融の中というよりは、国民全体で、あるいは納税者が負担すべきだと考えられる部分もないわけではなくて、その典型的なものが、これは金融制度調査会にも言及がありましたけれども、ペイメント・システムの維持とか確保とかいった部分に関する部分は、考え方としても国民全体で負担するのが適切ではないかという御意見もございました。
ただ、これらの御意見は、今日の私のメモで申しますと、3枚目のの「また」という4行ぐらいのところに書かせていただいておりますけれども、預金保険制度一般にも関わる問題でございまして、ワーキング・グループでは、引き続き預金制度一般について、例えばその制度の対象となる預金の種類をどう考えたらいいか等々、議論を今後も積み重ねていき、この部分に御報告する予定でございます。
今回は、繰り返しになりますけれども、特別保険料率の改定といういわば差し迫った、しかし、狭い論点について、今までの体系の枠組み、これまでの経緯を重視して検討すると、こういうことになるというところをワーキング・グループで議論していただきまして、その結果をメモにさせていただいたものでございます。
最後に、ワーキング・グループには貝塚先生にも御出席いただきましたし、それから、この中でも、第二部会の委員の先生方で御出席いただいている先生方もいらっしゃいます。本日御出席の松下さん、池尾先生は今日は御欠席ですので、また補足いただけると思います。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、引き続き自由討論に移りたいと思いますけれども、今、神田委員から、ワーキング・グループでの議論に御参加なさった方で補足をしたいという方がおられましたら……。よろしゅうございますか。
では、中原オブザーバー、どうぞ。
○中原オブザーバー
私どもからの意見をお聞きいただきまして、その機会を頂戴して大変感謝しておるんですが、今の先生のメモを拝見していまして、実は私どもが御意見申し上げたときも、委員の方から御質問をいただいたんですけれども、3ページ目、の「また」以下のところ、確かに今神田先生の方から、金融機関として便益を受けておる。あるいは一部は金融システムの安定性という点、あるいは決済システムという点から、国民経済的な意味でも便益があるはずだとおっしゃっていただいておりますが、ここには「金融機関が便益を受けておる」ということを言っておられるんですが、ただ、特別保険料の場合を考えますと、この辺についてはいろんな議論ができるんじゃないかということを一言申し上げておきたいと思って、今、手を挙げさせていただいたわけです。
全体の結論としては、もちろん大変妥当な結論をいただいているのではないかと思いますけれども、預金吸収コストの面において、より大きな便益を得ているかどうかというのは、なかなかこれは難しいところだと思いまして、特に、もしあえて言うのであれば、預金吸収の量的な面、アベイラビリティの面において、より大きな便益ということは言えるかもしれませんが、これは見方によりまして、全ての預金が保護されるというある種のモラルハザードを通じて預金者に便益が回っておるということも言えないことはないだろうという気もいたします。そのときも申し上げたのですが、預金保険料というのは、私ども預金の金利を決めるときに全くコストとしてはもちろん織り込んでおりませんし、それから、アメリカなどでは預金保険料が大幅に上がった後、資金運用利差というのはかなり拡大しておるわけですが、日本の場合には、ほとんどその辺は特別保険料導入後も変わっていないというのが現実だろうと思います。
セーフティネットという点から、本質的な預金保険制度がどうあるべきかというこ議論は、これから改めてまたしていただくわけでございまして、そこに大いに期待したいところでございます。
特別保険料の制度がなく、あるいは全額保証がなかったとき、どうなっておったんだろうかという議論は難しいところですけれども、それでは郵貯に全部行ったのかということになりますと、
1,000万円という預入限度がきちっと守られている限りにおいては、かなりの部分が銀行システムの中に残ったかもしれないわけです。その量的な意味であれば、銀行システムの中で資金の遍在ということは起き得ただろうと思いますけれども、その預金というものが例えばほかの投資商品にどんどん回るというような状況がそれで起きたのかどうかというあたりも、本当は問題になるのではないかと思います。
あえて言葉にとらわれるようで申し訳ございませんけれども、この辺の議論は相当本質的な議論が必要だろうということで、あえてちょっとお時間を頂戴しました。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
神田委員、どうぞ。
○神田委員 若干私も責任があるかと思いますので、お答えさせていただきたいと思いますけれども、今御指摘の点は、基本的には私も同意見でありまして、私のメモは若干舌足らずの、短く書いたというところがあると思います。ただ、ワーキング・グループでどういう議論をしたかをもうちょっと御紹介させていただきたいと思います。
それは、まず第一に、一般の預金保険ですね。それから、2001年3月末までの特例措置期間中とでも呼んでおきますけれども、預金を全額保護すると政府が宣言している期間とを区別して考え、現在は後者の議論をしているということで申しますと、ワーキング・グループでは、基本的な考え方は、預金全額保護のコストというのは誰が負担すべきなのかということで議論をしていたわけですけれども、ある委員の御意見では、預金全額保護するといういわば政府の宣言があるということは、その結果、これは金融機関の資金調達コストは変わってくるはずである。その分の便益というのは金融機関がやはり受けているはずであり、その受けている便益に対応するしかるべき負担は金融機関がするというふうに考えるのが合理的ではないかという御意見がございました。
ただ、今、中原さん御指摘のとおり、これは数字で計算したら出てくるというような問題ではありませんで、ロジック上の問題で、それを計算したらこれは幾らになるということが簡単に計算できるといいんですけれども、その辺の点については、例えば政府の保証という部分が、例えば金融機関の株価に反映していると言えるのか。株価を頼りに何らかの便益の分を計算できるのかとか、あるいはコールレートの差がリスクを反映していると言えるのかというような論点。それから、先ほどの繰り返しになりますけれども、預金の全額保護というのは、それを通じて決済システムが保護されているという部分については、これはむしろ税金で負担してもいいのではないかという御指摘等々が、結局いろいろなされたわけであります。
しかし、なかなかこれは計測することは非常に難しいということはございまして、したがいまして、先ほどの程度のメモでは簡略化させていただいたのですけれども、他方において、現在の法令の体系は、見直しの要件というのは、そこの政令にも書いてありますとおりでありますので、そちらの方に沿った検討をさせていただいたということがございます。
そういうことで、今御指摘の点につきましては、考え方の面では私もかなり共通のものがございますけれども、ワーキング・グループの議論としては、金融機関が便益を受けているということはあり、逆に言うと、仮に預金を全額保護しないという状態だったらどうだったであろうかということと比較しても、金融機関が資金調達面で受けている便益というものはあるという点は動かないだろうという点については、委員の間での合意はあったと考えられます。
以上です。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
深尾委員、どうぞ。
○深尾委員 この案を読みまして、1点質問なんですけれども、負担率から見ますと長期信用銀行が一番低いわけですが、これは利付金融債、金融債について預金保険料がかかっていないことがあるんだろうと思います。しかし、2001年までは全ての債務が保証されていると私は理解しておりますので、その部分について保証の便益を受けているけれども、かつ、国有化された、特別公的管理になった日債銀と長銀について保護するというふうに理解しておりますけれども、それにもかかわらず、長期信用銀行についての預金保険料率について、等々金融債について保険料を課さないのではないかというふうに思われるんですが、つまり従来どおりということですので、そういうことについてどういうふうに整理されておられるのか。
これは政令を見ますと、「特定の金融機関に対して不公平であってはいけない。差別的なものであってはならない」というふうに書いてあるわけですから、むしろこれは長期信用銀行以外の金融機関に対して差別的な形になっているのではないか、便益とそれからコストという面から見ると。それについてお考えをお聞かせいただければと思います。
○倉澤部会長 お願いいたします。
○木下信用機構室長 その点につきましては、現在の法律の仕組みを申し上げますと、まず、「差別的な取扱いをしてはならない」と書いてございます。その場合に、一つのやり方として、仮に長期信用銀行がそれなりのメリットを受けているのであるから、長期信用銀行だけ、例えば他の業態と異なった保険料率を設定することが法律上可能であろうかという論点が一つあると思います。我々としましては、現行法令上、それはなかなか難しいであろうと、現在の条文の書き方から申しますと。そういうことが一つ議論としてあろうかと思います。
それから、金融債の発行額を、仮に保険料率を変えないで保険料算定上の対象に入れてしまうと、これも実は法律改正が必要な話でございます。
以上のことを考えますと、3月末までの限られた中で、法律改正を前提とするような結論あるいは議論というものは、この際横に置きまして、現行制度の中でどういうことができるのかという観点から議論いたしましたので、このようなメモになっておるわけでございます。
いずれにせよ、これは今後また預金保険制度のワーキング・グループで、その点に関して種々また御議論が出ようかと思いますので、活発に議論する論点の一つだとは考えております。
○倉澤部会長 神田委員、どうぞ。
○神田委員 また若干補足というか、同じようなことなのかもしれませんけれども、深尾先生の御指摘は、実質論としてはそのとおりだと思うんです。そういう問題は本当にあると思うんですけれども、現在、今ある法令を前提としますと、金融債というのは預金保険の対象ではありませんので、それに対して保険料を取るわけにいかないわけでありまして、これは制度を変えればもちろんできるんですけれども、そういう制度改正も併せて、この時点で検討すべきかどうかという、結局そういう論点になると思うんですけれども、今回は今ある法令の枠内で考えたということであります。
したがいまして、金融債だけでなく−−金融債は一番大きいと思います。資金調達ということでは御指摘のとおりだと思いますけれども、ほかのオペレーションも多分止めないという考え方で2001年3月までは行くというふうに考えられますから、そういうことからよる便益という部分も全然勘案されないわけで、そういう意味では、現在存在している預金保険制度の適用対象その他からきている歪みということをいわば前提としているという意味で、実質論を言えば矛盾があるというか、ある種の制約条件の中での議論にとどまっているというのは全くそのとおりだと思います。
しかし、その中であれば、今度はロジックなしでいいかというと、そうはいかないので、今そういう形で存在している制度の中でロジックもやっぱりあるだろうということで、受けている便益に応じた負担という発想がロジックの上では基礎になるべきではないかというのが、主として経済学とか金融論の先生方の御意見だったように思います。
○倉澤部会長 ほかにございましょうか。
○杉田委員 ちょっと念を押しますけれども、いいですか。
○倉澤部会長 はい、杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 そうすると、法的には適用対象になってないんだけど、政治的には適用対象にするということを確か政府側は表明していると思うんですよね。ですから、我々マスコミも、一般の国民の方も、金融債も対象になると思っているわけなんだけど、それは単に思っているだけであって、法制度的には全く根拠がないということになると、ちょっと変な具合になっちゃうんですけど、それについては事務当局の方はどういうふうに説明されますか。
○木下信用機構室長 すみません、ちょっと言葉足らずで失礼いたしました。
法的には、今、私が金融債が対象になっていないと申し上げたのは、まず、保険金支払の場合の対象になってない。それから、保険料を徴収するときに、先ほど申し上げた
0.084%という料率を掛ける対象に入っていないという意味でございます。
一方、長期信用銀行と日本債券信用銀行が特別公的管理銀行になりましたときに、これは総理及び監督庁長官等の談話でも、負債は全額保護する旨明言をしております。
これは、では、法律上いかなる根拠でできるかと申しますと、現時点では、いわゆる保険金支払方式ではなくて資金援助方式と。しかも、ペイオフコストを超える資金援助が可能ないわゆる特別資金援助という方式が可能でございますので、それを使うことによりまして、資産サイドのロスについて、いわば全額それを保険料と公的資金により埋めましてバランスをさせることが可能であるということでございまして、別に法令違反をしているとか、法の根拠がないことをしているということでは決してございませんので、その点はぜひ御理解いただければと思います。
○倉澤部会長 時間も迫ってまいりましたが、斎藤委員、最後ということでお願いいたします。
○斎藤委員 別に結論に特に何か異議があるとか、そういうことは全然ないんですけれども、このデータが一般に公表されたときに、もしかしたら私と同じようなちょっと疑問を感じる人もいるかもしれないと思いまして、念のために申し上げますが、日米の保険料負担ということを比較された部分がありまして、日本の現在の負担というのがアメリカのピークにほぼ近づいているということで、確かにそのとおりかもしれないと思いますが、この負担率を計算する計算式の分母が、例えば一般貸倒引当金繰入れとアメリカの貸倒引当金繰入額というのは、必ずしも比較可能かどうかちょっとわからないという気がするんです。
私、最近のデータを見ていませんので、もしかしたら全く間違っているかもしれませんが、日本の場合、まず一般貸倒引当金に限っているということもさることながら、貸出金総額に対する引当率というのは、もともとはかなり低かったと思うんです。最近は大分改善されたと思いますけれども、もし繰入率が非常に低いとなりますと、日本の場合には、かなり分母が小さく計算されている可能性もある。この貸倒引当金というのは業務純益から控除されておりませんので、足して同じになるという性質のものじゃないものですから、念のために、それはちょっと整理しておいていただけるといいんじゃないかなという感じがいたします。
○倉澤部会長 この(注1)をわざわざ書いてくださったのは、単純比較ができないという趣旨だと思うんですが、これをもっとわかりやすくということでございましょうか。
時間が予定に迫ってまいりました。この問題につきましては、当第二部会としては、大筋として「特別保険料率を据え置くことが適当であるという考え方であった」というふうに私が認識することでよろしゅうございましょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 ありがとうございました。
したがいまして、そうなりますと、19日に開催される金融審議会総会においては、第二部会の意見は「据え置き」であるということを述べることになると思いますが、御異議ございませんでしょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 ありがとうございました。
では、そのようにさせていただきます。
なお、本日の記者会見におきましては、第二部会としての意見は、「特別保険料率は据え置きである」と答えることもあり得る。問い詰められると答えることになるかもしれないということもあり得るということを御了解願います。
第二部会までの議論、神田座長の下のワーキング・グループの議論、それから、今日の第二部会での議論を総会に報告いたします際に、私のメモという形で配付するメモにつきましては、神田委員からの御報告及びただいまの御討議を踏まえて作成するということで、中身については私に御一任いただくということでよろしゅうございましょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 ありがとうございました。
御異議ないようですので、本日の議論を踏まえた私のメモを総会へ提出することといたします。
なお、お手元の神田委員の御説明の際の「座長メモ」につきましては、神田委員からも御説明のありましたような性格でありますところから、これは回収させていただきたいと思います。
それでは、以上で本日の論点は一通り終了いたしましたので、最後に、次回の日程につきまして、事務局より御説明申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
○津曲調査室長
次回の会合につきましては、4月の中旬、保険相互会社の株式会社化作業部会及び個人信用情報ワーキング・グループからのこれまでの議論の紹介をテーマに開催を予定いたしております。具体的な日程につきましては、確定し次第、正式に御連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
次回の進め方は、そういうテーマでよろしゅうございましょうか。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。
(以 上)