金融審議会「第二部会」第5回会合議事録

 日時:平成11年5月7日(金)10時00分〜11時58分
 場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室

○倉澤部会長 予定の時間が参りましたので、ただいまから、第5回金融審議会「第二部会」を開催いたします。
 皆様、御多用のところをお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 まず、オブザーバーの交替がございましたので、御紹介させていただきます。
 東京三菱銀行の中原専務取締役に代わりまして、第一勧業銀行の野田忠男常務取締役がオブザーバーとして新たに参加されることになりました。
○野田オブザーバー 野田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○倉澤部会長 どうぞよろしく。
 では、議事次第に従いまして、議事を進行させていただきたいと思います。
 本日は、当部会に設置されております二つのワーキング・グループ、具体的には、「個人信用情報保護と利用の在り方に関する合同作業部会」と、「保険相互会社の株式会社化ワーキング・グループ」から、それぞれ審議状況の御紹介をいただくことになっておりますが、それに先立ちまして、今回の会合の趣旨及び金融システム改革の進捗状況等につきまして事務局より説明がございます。
 それでは、津曲企画課調査室長からよろしくお願いいたします。
○津曲調査室長 資料番号の「第二部会5−1」という資料でございます。
 当金融審議会第二部会では、「安心で活力ある金融システムの構築」をテーマに、現在を出発点とした21世紀の金融システムに向けての問題解決の積み上げと、環境整備を図るための審議をいただいているところでございます。そうした中で特に専門的、実務的観点からの詳細な検討が必要とされる事項につきましては、論点を整理した上で、部会に素材提供するためのワーキング・グループを設置するということになっておりまして、当部会では、保険相互会社の株式会社化に関するワーキング・グループ、個人信用情報保護と利用の在り方に関する合同作業部会、預金保険制度に関するワーキング・グループの三つが設置されているところでございます。
 預金保険制度に関するワーキング・グループにつきましては、前回の部会で特別保険料の料率についての報告があったところでございましたが、本部会及び総会での審議を経まして特別保険料の料率に関する考え方が公表され、それを受け、大蔵省及び金融再生委員会において、特別保険料率の据え置きが決定されたところでございます。
 預金保険制度のワーキング・グループでは、引き続き預金保険制度全般についての審議を始めており、その内容につきましては次回以降御報告をさせていただくとともに、当部会で御審議をいただく予定でございます。
 したがいまして、本日は、三つのワーキング・グループのうちの残りの二つ、すなわち個人信用情報保護と利用の在り方に関する合同作業部会及び保険相互会社の株式会社化に関するワーキング・グループにつきまして、その検討状況を御報告いただきますとともに、主要論点、今後の進め方などにつきまして御議論いただくこととしたいと思っております。
 それぞれワーキング・グループの進捗状況なども異なり、扱いにつきましては別途御検討いただきますけれども、審議事項について内外の関心も高いこともありまして、今年の夏にはこの検討状況について何らかの対外的なプレゼンテーションが必要になると考えております。本日は、そうした流れも踏まえまして、ワーキング・グループの論点について御議論いただければと考えております。
 さて、本日は、専門的な検討を進めておりますワーキング・グループでの議論の紹介をいただくわけでございますが、そうしたトピックとは別に、金融システム改革につきましては着実に進展しているところでございますけれども、前回御議論いただきました規制緩和推進計画の改定、それから、金融関連法案の国会審議なども日々進められてまいりました。そこで、初めに、そうした進捗につきまして概況を説明させていただきまして、後の議論の参考としていただければと存じます。
 続きまして、この資料の3ページ目でございます。
 まず、「金融システム改革の進捗状況」でございます。こちらにつきましては、既に昨年に金融システム改革法が施行されまして、そのほとんどが既に実施済みとなっておりますが、大体ほとんどのものについては報告してございますが、この中で申し上げますと、3ページの一番下のところでございますが、「多様なサービスの提供」というところで、「金融業者の資金調達の多様化」ということで、こちらにつきましては、先般、法案が成立したところでございまして、後ほど説明させていただきます。
 それと、次のページでございますが、7.のところで一番下でございますが、「証券税制の見直し」というところで、有価証券取引税、それから取引所税が今年の4月から廃止されたところでございます。
 次のページ、5ページ目になりますが、これは「金融システム改革のスケジュール」ということで、残された項目についてのスケジュール表が付けてございます。
 上の方からいきますと、株式売買委託手数料が今年の10月1日から完全に自由化されるという予定でございます。それから、銀行の資金調達の多様化ということで、普通銀行による普通社債の発行が解禁される。これも10月1日からということになっております。それから、相互参入の促進ということで、証券子会社・信託子会社の業務範囲制限の撤廃、それから保険会社と金融他業態との間の参入、これらがやはり10月1日、一部についてはもっと先になりますが、予定されてございます。それから、ディスクロージャーの充実ということが書かれてございます。
 次のページを御覧いただきますと、6ページでございますが、ここは先ほど申し上げましたが、「銀行・証券の相互参入に係る業態別子会社残余の業務範囲制限の撤廃」ということで、これは2.でございますが、これにつきましては平成9年10月1日に既に一部緩和を実施したところでございますが、本年10月1日より残余の業務範囲の制限、証券子会社に係る株式の流通・発行業務、信託銀行子会社に係る年金信託・合同運用金銭信託について解禁するということでございます。
 それから、一番下の4.でございますが、「保険会社の子会社形態での銀行業務への参入」ということで、これは昨年の12月1日の金融システム改革法の施行に伴いまして、現在、保険会社は破綻金融機関に限り子会社とすることが認められておりますが、本年10月1日よりこの制限を撤廃し、保険会社が破綻金融機関以外の銀行も子会社とすることを認めるということになっております。
 次の7ページ目と8ページ目につきましては、今御説明申し上げましたことが表になっておりまして、7ページ目の方が、網かけの部分が、今度10月から解禁されるというところでございます。
 それから、8ページ目でございますが、こちらの方は、「銀行・信託・証券・生保・損保の相互参入の状況」ということでございまして、△もしくは▲が○になるところが今年の10月1日でございます。なお、一部、生保・損保のところにつきましては、平成13年3月31日までの政令で定める日というふうなことになってございます。
 私の方からは以上でございますが、こうした流れの中で国会におきましても関連法案の幾つかが審議されまして、また、国会がこの金融審議会の活動状況に言及する機会もございました。
 そこで、今国会はまだ審議途上ではございますけれども、現時点までの状況につきまして企画課長の方から、新たに成立しました金融関連法及び金融審議会への言及につきまして紹介させていただきます。
○三國谷企画課長 企画課長の三國谷でございます。資料の「第二部会5−2」というものを御覧いただきたいと思います。
 5−2の1枚目、先ほど御説明ありました「金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律」でございます。通称「ノンバンク社債発行法案」と言われておりますけれども、これにつきましては先般国会で成立したところでございます。
 これにつきましては、実は、経緯のところに書いてございますとおり、平成7年、このときに行政改革委員会から、規制緩和の観点からこの解禁の指摘がなされたところでございます。以降、党の決定、あるいは閣議決定等を経まして、ノンバンクに関する懇談会というのが開催されまして、9年5月16日に「ノンバンクに関する懇談会」報告書が出たところでございます。これを受けまして、金制の答申の方でもこのこと についての言及がございまして、実は昨年の5月に国会へ提出したわけでございますが、提出時期が微妙にずれる等の関係がございまして、継続審議を繰り返しまして、本年に入りましてようやく審議をいただき、成立したというものでございます。
 この法案の中身でございますけれども、実はこれまで、いわばノンバンクの社債発行、これは貸付の財源にすることが禁じられておりました。その理由は二つ言われておりまして、昭和29年の出資法で禁じられてきたわけでございますが、一つには、当時は資金逼迫期。いわゆるこういった業務につきましては、銀行という装置を通してやるべきであると、そういった時代背景。あるいは、当時は社債市場が発達しておりませんで、こういったことは非常に預金と誤認等をされることによりまして、消費者保護上問題があると、こういった背景があったとされております。時代が変わりまして、規制緩和といった観点から、この規制を緩和するというものでございます。
 趣旨につきましては、そういった意味で、広い意味での間接金融から、直接金融を含めました資金調達の自由化というところでございます。
 資料2ページでございますが、概要につきましては、登録制度の実施。これにつきましては一定の財産的基礎、大体資本金を10億円以上と考えておりますが、こういったところ。あるいは人的構成等の要件を課すということ。あるいはディスクロージャーの充実を課すというものでございます。これにつきましては、一番下にございますが、「公布の日から起算して1月を超えない範囲内において政令で定める日」、これは5月の20日前後になろうかと思いますけれども、その施行を目指しておりまして、現在、政省令をパブリック・オピニオンと申しますか、パブリック・コメントを求めているという段階でございます。
 これがノンバンクの状況でございます。
 続きまして、4ページ目を御覧いただきたいと思います。「特定融資枠契約に関する法律」というのがございます。
 これは実は議員立法でございまして、これは法務省に対する規制緩和事項といたしまして宿題が下りておったものでございますが、今般、議員立法で、審議の場所としては財政金融委員会で審議されたものでございます。
通称「コミットメントライン」と言われておりますが、これは欧米等では広く普及されている手法でございますけれども、金を借りる場合に、当座借越契約といったことではなくて、借りる権利を予め借方に付与する。そのかわり、その分のフィーをもらうというものでございます。このフィーが、計算次第によりましては、出資法あるいは利息制限法に抵触するということで、かなりこのコミットメントライン契約につきましてはリーガルリスクがあると従来言われておったものでございますが、今般、これにつきまして一定の解禁をしたというものでございます。
 しかしながら、もともと出資法が弱者保護という観点から設定されております関係で、どこまでその辺を緩和するかという議論がございまして、今般の暫定的な結論といたしましては、商法特例法上の大会社に適用するという形になっているところでございます。
 今後さらにこの問題は、いわば直接金融等におけるバックアップ・ラインをどうするか、あるいは中小会社をどうするか等々の問題が広がりがございまして、これにつきましてはさらに2年間をかけて検討していこうということが附則で規定されているところでございます。
 なお、外国会社につきましても商法の規定がございまして、類似するものであれば同様の適用があるというようなことも、一部そういった適用の道が残されているところでございます。
 これがコミットメントライン契約に関する法律でございます。
 3点目は、6ページでございます。これまでの国会審議におきまして、金融審議会の活動に触れた審議が幾つかございます。ポイントだけ申し上げさせていただきますが、まず最初、預金保険制度関連でございます。大体大きく分けて、これと個人信用情報保護・利用、それから金融サービス法、こういったところが指摘されております。なお、株式会社化の問題につきましては、昨年の国会では質問があったところでございます。
 なお、預金保険につきましては、特別保険料率の扱いに関する検討内容と考え方、あるいは、ペイオフの適用において金融機関の規模に応じて区分対応する可能性等を問うと、こういった文脈の中で、金融審議会の活動についての言及がございます。詳細な説明は省略させていただきます。
 続きまして、7ページ、個人信用情報保護・利用関連でございますが、これは金融消費者保護法と個人データ保護の関係整理、それから、消費者金融業者の競争促進の観点から、情報共有の必要性等の文脈で審議会の活動が言及されているところでございます。
 それから、次のページ、8ページでございますが、金融サービス法の関連でございますが、これはノンバンク社債法の審議等の中におきまして、いわば業者法整備に対する概念とか、そういった形から、消費者・利用者保護の観点に立った横断的・統一的法制の利用が論じられております。そういった中で、金融サービス法に関します金融審議会の議論、これに対する質疑が行われているといった状態でございます。
 主に今回は、ノンバンク社債法案の中でいろんな審議が行われたところがあるわけでございますが、ノンバンク社債法案につきましては、この趣旨自体については大筋異論はなかったと思われますが、むしろ貸付段階、いろんな消費者保護、こういった形で種々議論が行われ、附帯決議が付いたということを御報告させていただきたいと思います。
 大体、国会関係は以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして、御質問等がございましたら御自由にどうぞ。
 よろしゅうございますか。
 それでは、引き続き、議事次第に従いまして、ワーキング・グループからの報告に移らせていただきます。
 まずは産業構造審議会及び割賦販売審議会との合同作業部会であります「個人信用情報保護と利用の在り方に関する合同作業部会」の座長を務めておられます中央大学法学部教授の堀部先生においでいただいておりますので、堀部先生から審議状況の御報告をいただきたいと思います。お願いいたします。
○堀部座長 ただいま御紹介いただきました中央大学の堀部です。
 産業構造審議会及び割賦販売審議会との合同作業部会であります「個人信用情報保護・利用の在り方に関する合同作業部会」につきましては、今日の資料「第二部会5−3」にありますので、これを御覧いただきたいと思います。
 1枚目は、この資料の全体の項目を掲げております。下にページがありまして、上に資料番号がありますので、これによりながら説明申し上げますが、まず1ページ目に「資料1」とあります。後に御説明申し上げますような経緯で、個人信用情報保護・利用のあり方につきまして、既に一昨年から昨年にかけて検討いたしました。その結果を踏まえまして、今度新たに金融審議会、それから、先ほど来出ております通産省の二つの審議会の合同作業部会ということで発足いたしまして、第1回を今年の1月14日に開きました。
 その経過はここに記載のとおりでありまして、最初は全体の論点整理をいたしまして、第2回で法制化等の論点につきまして意見聴取をいたしました。ここでは信用情報機関としまして、主なものとして四つありますので、その四つの信用情報機関から意見を出していただきました。それとともに、日弁連からも意見を出していただいたところであります。
 そうした外部からの意見も踏まえまして、第3回では、法制化等の論点について、今度は−−次のページに委員の構成がございますが−−専門委員の方から意見を出していただくということで、第3回、第4回をそれに充てました。また、第4回は、消費者団体からも意見を出していただくということにいたしまして、主婦連合会からおいでいただきまして、意見を聴取したところであります。
 次の2ページに合同作業部会の委員名簿がありまして、金融審議会第二部会の中では、田島委員と山下委員が作業部会の方の委員も務めておられます。オブザーバーとして、法務省、警察庁、金融監督庁からも出てきていただいています。
 3ページ、「資料2」でありますが、これが先ほど触れました、一昨年から昨年にかけまして開きました大蔵省・通産省の「共同懇談会」などと一般には呼ばれておりますが、「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」の報告書のポイントをまとめたものであります。ここに「第一部」とありますのは、昨年の6月12日に取りまとめて発表しましたときの資料で、最も簡単にまとめたのは第一部で、第二部が概要となっていまして、第三部が報告書本文になっております。今日は、このうち、第一部の最も簡単に概要をまとめたものを用意いたしました。これで昨年6月12日に取りまとめました報告書、それがどういうことを扱っているかということを御説明したいと思います。
 まず最初に、懇談会の趣旨でありますが、近年、金融機関、貸金業者、クレジット業者等の与信業者、それから、信用情報機関からの情報漏洩が社会問題となっているというふうに捉えました。これは実際に新聞等でもかなり大きく取り上げられまして、今のところで議論になったところであります。また、国際的に見ますと、これは個人信用情報というより個人情報保護一般ですが、その保護の強化の流れにありまして、EU諸国(欧州連合諸国)では、個人情報全般を対象とした保護法が制定されるに至っております。
 このEUの個人情報保護指令というのがありまして、これは1995年の10月24日に採択されましたが、3年以内に各国がこの指令に基づいてそれぞれ法的措置を講ずるということになっていました。昨年、1998年の10月24日が期限でありまして、25日に指令自体が発効いたしました。その前日、OECDの会議の後、ブラッセルでEUの関係者とも懇談いたしましたが、その段階では、EU、現在15カ国で構成されていますけれども、そのうち指令にきちんと対応した国はまだ五つであるというようなことでありました。最近の情報でも、今のところまだ6カ国ぐらいというようなところがありますが、この中で、第三国、EUの構成国以外のところが十分なレベルの保護措置を講じてない場合には、そういう国には個人データを移転してはならないと、そういう趣旨の規定を各国の法律に設けるようにと、こういうこともありまして、金融、あるいは様々な情報が日本に来なくなる、そういうおそれもありまして、これは今、非常に大きな問題になっております。
 そうした強化の流れが一方でEUにありますが、他方、これと対照的なのがアメリカでして、アメリカの場合には分野別の個別法とか、さらに自主規制で対応するというようなやり方をしております。そういう傾向をここではまとめましたし、さらに、アジア太平洋地域でも、多くの国で個人情報の法制の整備が行われているというふうにまとめました。アジア太平洋地域で、オーストラリア、ニュージーランドが早くから法律を作っておりますが、これは個人情報ほぼ全般にわたるものであります。その後、香港、それから台湾、韓国で、それぞれ違いはありますけれども、個人情報案、あるいは信用情報保護措置がとられる、こういう傾向にあります。それに対しまして我が国では、民間部門が利用いたします個人情報については、保護立法が未整備の状況にある、こういうふうにまず状況を捉えました。
 一方、与信業者が与信するに当たりましては、顧客の資産ですとか、負債、収入、過去の債務の返済状況など、返済能力を判断するための情報、これを一応「個人信用情報」というふうに捉えていまして、これを収集、蓄積し、利用いたします。それとともに、このような情報を金融機関、貸金業者、クレジット業者の各業態ごとに設置されております信用情報機関を通じまして共有しております。その信用情報機関が、先ほどの1ページの「資料1」でございますが、第2回のところで、信用情報機関としまして、一つは全国銀行協会・個人信用情報センター。それから次がシー・アイ・シー、これはクレジット関係のところです。それから、三つ目としまして、全国信用情報センター連合会でありまして、これは貸金専門業者の団体でして、そこが運営しています個人信用情報センターがあります。それから、これらはそれぞれの業種・業態に応じて設立されているものでありますが、もう一つ業界横断的にセントラル・コミュニケーション・ビューローというのができております。これ以外にも、債権回収組合が個人信用情報をかなり蓄積しているという実態もあるわけでありまして、そうした個人信用情報機関を通じまして、それぞれの業者は個人信用情報を共有している状況にあります。
 個人破産の急増等多重債務問題の解決のためには、こうした情報機関相互間の情報交流の推進が必要であるとの指摘もなされているところであります。これは今のところはブラック情報、ネガティブ情報といいましょうか、焦げつきがあるという情報だけを三つの情報機関、先ほど挙げました四つのうちの最初の三つの間で、クレジット・インフォメーション・ネットワーク(CLIN)で交換はしておりますが、これをもっとポジティブ情報にまで広げられるかどうかというようなことも問題になっております。
 それから、懇談会の趣旨としますと、こういうことを背景にしまして個人信用情報保護・利用のあり方について専門的な立場から検討を行う場としまして、金融機関・貸金業を所管する大蔵省と、割賦販売業を所管する通産省が共同で懇談会を開催いたしました。これは一昨年の4月から16回にわたって検討を行いまして、昨年の6月12日に取りまとめを行ったわけであります。
 次に、2としまして「報告書の立場」でありますが、個人信用情報につきましては、まず、与信時に半ば強制的に提供させられるといいましょうか、どういう借金の状況かなどということを含めまして提供させられる。それから、第2としまして、個人の信用に係るセンシティブな情報ではないか。後の方でまた「ハイリーセンシティブ」という言葉も出てまいりますが、住所とか氏名などですと、一般の情報として、それほど保護の程度を高くしなくもいいのではないかというような議論もありますが、幾らどこで借りているか、あるいは資産の状況がどうかというようなことになりますと、これはセンシティブな情報ではないか。そういうものが使われるわけでありますので、それを2番目に掲げました。3番目に、業者間で共有される。一つの業者だけではなくて、それが先ほどのような信用情報機関を通しまして共有されております。第4に、この経済的価値が大きいものですから、盗用等の事件も発生している。
 こういうことが個人信用情報についての特徴でありまして、他の個人情報一般に先駆けて何らかの保護措置を講ずる必要があるのではないか。そういう可能性も含めまして懇談会としては、一方では保護。しかし、その情報をまた利用するということに意味がありますので、その利用のための法的整備、これをできるだけ早急に講じるべきである、こういう立場で報告書をまとめております。
 ただし、個人情報一般の保護法の中で措置すべきではないかとか、あるいは消費者信用に係る一般的な保護の中で措置すべきである、こういう考え方もあり得ますので、「当報告書を基に広く活発に議論が行われることを期待する」ということで報告書をまとめました。
 次に、3としまして「個人信用情報の保護のための措置」でありますが、このあたりは今回の合同作業部会で引き継いで細かく検討しておりますので、むしろそちらの説明で内容を御説明したいと思いますが、簡単に申し上げますと、3のところは、個人信用情報保護のための措置ということで、一方では保護、4のところでは今度は、「個人信用情報の利用促進のための措置」ということで、一方での保護、他方における利用促進、この二つの側面から検討しましてまとめたところであります。
 そうした懇談会を踏まえまして、それぞれ関係の審議会の方でこの問題を検討するということになりまして、先ほど申し上げましたような合同作業部会になっているわけでありますが、そこで、4ページの「資料3」を御覧いただきますと、先ほどの意見聴取の主なポイントとしまして、そこに掲げたような項目で意見を出していただくことにしました。
 まず、「1.個人信用情報保護のための措置」であります。
 一つは、法制化についてでありまして、法制化の必要性についてどう考えるかというようなことであります。次が、規制の対象となる個人信用情報の範囲をどうするのか。次に、罰則のあり方とその適用範囲がどうかでございます。
 そうした保護に対しまして、2.では利用のための措置としまして、まず情報交流についてどうか。先ほどネガティブ、あるいはブラック情報の交流が行われているということを申しましたが、今度は、誰が幾ら借りているかという、ポジティブの情報の交流の必要性はどうか。また、その手段はどうなのかということであります。もう一つは、今度は消費者の方が業者に申込みをする際に、どこまで本人に関する情報を出させるべきか。それを、情報提供の義務化をするかどうかということも議論になっております。これは、次に書きましたように、「消費者が与信業者に対し正確な情報を提供するよう義務づけ、それについて法律的な効果を持たせることの是非」についても意見を聞くことにいたしました。
 もう一つ、「3.その他」は、次のページ、5ページに「資料4」としてありますが、ここに「今後の論点」といたしまして掲げております。この中から適宜項目を選んでいただいて、意見を出していただく、こういうことにいたしました。
 そのようなことで、これまで意見を出していただいたものを、6ページの「資料5」に簡単にまとめてありますので、これを御覧いただきたいと思います。
 まず、「1.法制化について」でありますが、個人信用情報保護を他の個人情報に先駆けて法制化することについては、意義のあることとする意見が出された一方で、まず民間部門の個人情報保護法を制定すべきとの意見もありました。このまとめはこういうふうに、意見があることを明らかにしておりますので、後ほどこれらにつきまして御意見を伺わせていただきまして、それをまた作業部会の検討に使わせていただきたいと思います。
 次のところになお書きとしまして、「なお、法制化に際しては、マル1個人信用情報の流通・利用が阻害されないこと、また、マル2過大な事務負担やシステム投資負担とならないことに十分配慮すべきである」との意見が出されております。特に事業者からは、こうした点にぜひ配慮してほしいという意見が出されているところであります。
 次に、「2.保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲について」でありますが、保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲につきましては、信用情報機関、これは必ずしも個人情報だけでないところもありますので、信用情報機関とここではして、信用情報機関に登録及び回答される情報とすべきとの意見が出された一方で、原則として民間部門の個人情報全般を対象とすべきとの意見もありました。
 次に、なお、個別企業内で利用される情報等、信用情報機関に登録及び回答される情報以外の情報については、自主ルール等で保護を図ることが適当ではないかとの意見が出されております。
 この自主ルールとの関係ですが、昨年6月にまとめました懇談会の報告書では、これまで既に自主ルールで対応していますので、それと法的措置との関係をどのように考えるかということが議論になりまして、それらを重層的に捉える。法的措置も必要ですし、自主ルールも必要であるということがありまして、場合によりますと法的措置を講ずべき部分と、自主ルールで対応をすればいいではないかという、そういう捉え方もされるところがあります。こういうところにそれが出ております。
 また、実務面を考慮しますと、保護・規制の対象は当面電算情報に限定すべきではないかとの意見がありました。
 これは実際の申込みのときなどに、申込書に資産の状況等も含めて書くわけでありますけれども、多くの場合、それは電算処理されていますので、電算情報に限定すれば足りるというふうにも考えられますし、他方、よく「電算情報」に対しまして「手作業処理の情報」、あるいは「マニュアル情報」などと言ったりいたしますが、そういうものについてもどうかということの関連でこういうのが出てきております。
 そのほか、保護される情報の種類によっては規制の程度が異なることもあり得るのではないかとの意見も出されております。
 次の、「3.罰則の在り方とその適用範囲について」であります。
 実際に先ほど申し上げました漏洩等の問題がありましたので、罰則で法律の実効性を担保する、こういう考え方ですので、この項目は大変重要な意味を持ちますが、そこで、この罰則のあり方につきましては、悪質な情報漏洩や不正利用など、情報主体の利益を著しく侵害する行為に対しては刑罰が必要との意見が出されております。あれもこれもと、全て罰則を科するということにすべきではないのではないかというような御意見であります。
 また、罰則を適用する情報の範囲につきましては、与信業者が保有する個人信用情報全てではなくて、さらにその中でハイリーセンシティブということで、これは情報をハイリーセンシティブ、モデレートリーセンシティブ、ローセンシティブと、このように分けるイギリスの学者の考え方がありまして、それを取り入れまして、懇談会ではハイリーセンシティブというような表現を用いたものですから、それがずっと続けて使われております。そういう情報や、あるいは与信判断に直結する情報等重要な情報に限定すべきとの意見がありました。また、罰則を適用する主体としては、信用情報機関、会員与信業者、それから信用情報機関の無権限利用者とすべきである、こういう意見もありました。
 なお、両罰規定、これは法人・個人に科するわけでありますが、これにつきましては、組織的な犯罪や重大な管理・監督を怠った場合等に限定すべきとの意見が出されております。
 このほか、罰則の構成要件については厳密にすべきとの意見も出されております。これは当然といえば当然なんですが、そういう意見が出ましたので、紹介しておきました。
 次に、7ページで、「4.ポジティブ情報の交流について」であります。
 信用情報機関におけるポジティブ情報(残高情報等)の交流につきましては、過剰貸付防止や適正与信実施の観点から必要であるとの意見が出された一方で、交流されている情報を認識しにくいとして反対する意見もありました。
 なお、ポジティブ情報の交流の必要性を認める意見の中でも、全面的な交流を主張する意見と、段階的な交流を主張する意見とがありました。
 「5.与信業者への正確な情報提供を義務づけることについて」でありますが、与信業者への正確な情報提供を法律によって義務づけることは困難であるとの意見が出されました。
 もっとも、正確な情報提供を義務づけ、それに法律的な効果を持たせることは有効であるとの意見や、虚偽の申告により与信を受けた借り手については、現行法を活用していくことでやむを得ないとの意見が出されたほか、悪質なものについては何らかのペナルティを科す必要があるとの意見もありました。
 これは、現行法を活用してといいますのは、例えば虚偽の事実を相手に伝えてということになりますと、詐欺罪が適用になるのではないだろうか、こういう議論もしております。むしろ詐欺罪で対応すればいいことで、この法律で義務まで課する必要はないのではないかということであります。
 一方、消費者に正確な情報提供を義務づける前に、各事業者及び信用情報機関に対しまして内部の情報管理、本人情報の取扱いを消費者に周知徹底させて、消費者の自覚を促すとともに、消費者・事業者間の信頼関係を明確に構築していくことが先決ではないか意見も出されております。
 この5.のところは、意見を聞いておりますが、なかなかこのあたりは実際問題として難しいのではないかという感触も受けているところであります。
 以上、合同作業部会のこれまでの審議の概要、それの前提となります懇談会の報告書について説明させていただきました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、今御報告のありました「個人信用情報保護と利用の在り方に関する合同作業部会」の作業につきまして、御意見、御質問がございましたら御自由に御討議いただけたらと思います。
 どうぞ、松下委員、お願いいたします。
○松下委員 1点質問と、それから2点お願いというんでしょうか、意見を申し上げます。
 今御説明いただきました資料の最後のページ、7ページの4.の「ポジティブ情報の交流について」でございますが、前の方のページで、多重債務問題等の解決のために、この種の情報の交流が必要であるという問題提起があるということを受けてのこの4.の記述だと思いますが、反対意見として、「交流されている情報を認識しにくい」というのは、ちょっと意味が、私、率然とわからなかったものですから、どういうことなのか、もう少し御説明いただければというのが第1点、質問でございます。
○堀部座長 ポジティブ情報をどういう形で実際に交流するかということになりますと、かなりここはこれまでも随分議論があったところで、大変難しい問題を含んでおります。例えば、いわゆる庶民金融業者のところにあります個人信用情報を見まして、別のところが−−今、それぞれの業態でどこまで見られるかということがありますので、仮の話ですけれども、全国銀行個人信用情報センター系の銀行が、今度は貸金業者の信用情報機関の情報を見られるとしますと、場合によると、一方は非常に利息が高いわけですから、そういう人に対して、それを見て自分の方に借り換えないかというような、顧客を取られるのではないかというようなものも実際にはありまして、非常に難しいところがあります。
 そこで、全部を交流するというのは無理であろう。そうなりますと、どこに幾らというようなことではなくて、全体をコンピュータで計算しまして、残高が幾ら、どこから幾ら借りているかということがわからないようにするというようなこともあるわけでして、そういうことも考えられるのではないか。そうしますと、交流されている情報が一体どこのものか。ちょっとこれは、そういう特定の事業者から多く借りているような人については、また別のところは、今度は逆にそれを見て貸したくないというようなことにもなりますので、その交流する情報がどこのものか認識しにくいのは困るというような意見も出たりしているということで、今のところは、これをどうするかというのは、むしろ今日、いろいろまた御意見なども出していただきまして、考えていきたいところであります。
 ちょっと簡単にまとめていますので、わかりにくいかと思いますが、趣旨はそういうようなことであります。
○倉澤部会長 どうぞ。
○松下委員 もう一点は、これはお願いというか、もう既にお考えのあるところだと思いますけれども、最後の同じページの5.の一つ目の「もっとも、」以下の部分でございますが、「現行法を活用していくことでやむを得ない」という、3行目に記述があるわけですけれども、非常に抽象的な意味でのペナルティという意味では、多重債務者が破産法に基づく破産手続に入って、免責を得て、その免責不許可になるというようなものも広い意味でペナルティと考えられるのではないかと思うのですが、現在、破産法の全面改定作業が進行しておりまして、そこで恐らく、ここ2年ぐらいの間に、個人についても大幅な見直しをするということで、免責不許可事由であるとか、非免責債権の範囲の検討ですとかいうことについて検討されるということだと思いますので、ぜひそちらの方と緊密な連絡をとって、整合的なものを作っていただきたい。非常に抽象的なお願いで恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。
 以上です。どうもありがとうございました。
○倉澤部会長 ほかに。
 森本委員、どうぞ。
○森本委員 お話をお聞きしておりまして、要するにこういう個人信用に関しては二つの問題がある。一つは、半ば強制的に提供させられる個人情報を保護する。これは一般的な個人情報の保護の理念があって、そのうちの特に緊急性を要するから、できれば前倒しにしようという問題ですが、それとともに、こういう個人金融については一つ一つの、本来は個別企業が自己の責任で借り主の信用状況をチェックして、企業の経営判断として貸し出すべきだけれども、それをするとコストもかかるし、一応共有しようと。これが一つの網で共有財産になるから、これの信用というのか、信頼性を維持向上しようと。いわば業界の効率性の問題だと思うんですが、後者につきまましても無視することはできないと思いますけれども、これはやはり基本的には信用情報、個人情報、とりわけ個人信用情報を保護するというものをベースにお考えいただければどうかと。
 そして、こういう形で合理的な保護があれば、合理的な経済ベースでそれなりの情報の収集ができるように思いますので、とりわけ最後に言われましたけれども、もちろん悪質な場合には、この7ページの5.例えば先ほどお話がありました破産免責についてのペナルティとかですが、これを見るとどうも刑罰で、強制力を持ったところが「えい、やっ」とやる、そういう威嚇効果をもって何かしようというきらいがあるように思いますが、これは少なくともこういうところでそれを持ち出す前から民事責任、民事のレベルで考えるべきことで、刑罰という公権力が情報の正確性を確保するためにそういう形で乗り出すというのは最後の最後の問題で、それは伝統的な詐欺罪なり何なりあるし、それを超えて刑罰を拡充する必要があるのかないのか。これは十分慎重に考えていただきたい。
 そして、個人信用情報を保護するという観点からは、やはりそれなりの合理的なルールをお考えいただきたい。並列的にありますが、やはり前段を中心に、前段の合理的な措置がなされた段階で、最小限度のものとして後段をお考えになるというのがこういうものの追加。何か今、効率性、効率性ということを言われていますけど、それよりもまず公正さということをベースにお考えいただけばというふうに思います。
 以上です。
○堀部座長 ありがとうございました。では、要望としてお聞きしていきたいと思います。
○倉澤部会長 ほかに御意見ございますか。あるいは御質問。
 この利用者であるオブザーバーの方々に、何か御感想なり御意見ございましょうか。
 あるいは山下委員、田島委員、何か付け加えるべき印象がございましたら。
 どうぞ、山下委員、お願いいたします。
○山下委員 審議の状況につきましては、堀部先生から御説明されたとおりでございまして、全体の方向というのも、最低限何を決めるかということについてはある程度のコンセンサスができつつあるのではないかと思いますけど、周辺部で、先ほど森本教授が御指摘になったような保護の範囲をどの程度にするかというふうなあたりで、まだ実務の立場からと、あるいは例の非実務と若干食い違いがあるのかなということでございますが、保護法を法制化するというのもいろんな手段があるわけで、刑事法的なところ、行政法的なところ、それから民事法と言っていいんでしょうか、消費者の開示、請求権であるとか訂正請求権ですね、そういういろんな法規制の手法をミックスして対処しようというわけですから、罰則であるとか、行政的な規制は極力拡大しないということは一般論として結構かと思いますが、民事的なところは結構広く規制をかけるというのがいいのではないかというのが私個人の意見でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 ほかにどなたかございましょうか。
 よろしゅうございますか。
 どうも堀部先生、ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、「保険相互会社の株式会社化ワーキング・グループ」についての議論に移らせていただきます。
 まず初めに、事務局から、株式会社化に関連する基礎的事項について概略の説明をいただき、引き続き、ワーキング・グループの座長をお願いしている山下委員より論点と審議状況の御紹介をいただきたいと思います。
 それでは、まず、菅野保険企画室長からお願いいたします。
○菅野保険企画室長 ワーキング・グループの事務局を務めさせていただいております保険企画室長の菅野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 保険相互会社の株式会社化に関するワーキング・グループにおける検討状況の御報告というわけでございますが、その前に私の方から、背景事情など基礎的な事項についての御説明を申し上げたいと思います。
 資料、お手元に「第二部会5−4」というのが右肩に付いております資料でございますが、これに沿って御説明を申し上げたいと思います。
 目次からさらに1ページめくっていただきまして、(資料1)「株式会社化の背景・目的」という資料でございます。
 まず、株式会社化の背景といたしましては、保険事業を巡る環境変化があります。具体的には、金融システム改革の進展、金融機関の自己資本強化の動き、業態を超えた資本提携・再編の動きといったことが指摘されます。一方、世界的に見ましても、各国におきまして株式会社化の動きが見られます。資料には例示的には、米国エクイタブル社、英国ノーリッチユニオン社、豪州AMP社を挙げておりますけれども、さらに現在、既に株式会社化の計画を公表し、実質的に準備に入っているところも多く見受けられるところでございます。
 このような背景の中、株式会社化の目的といたしましては、資本調達能力の向上、自己資本の充実ですとか、事業展開の自由度の確保といったことがございます。すなわち、相互会社形態では株式会社における増資というような資本調達はできないため、自己資本の増強には相対的に制約が大きいということがありますし、また、株式保有を介した会社相互間の事業展開にも限界があるということが指摘されております。
 (資料2)でございますけれども、株式会社と相互会社の比較を簡単に御説明いたします。
 法人としての性格につきましては、株式会社が商法に基づく営利を目的とした法人であるのに対しまして、相互会社は保険業法に基づく営利も公益も目的としない中間法人と整理されます。資本の中心にございますのは、株式会社では株主の出資する資本金であるのに対して、相互会社でこれに相当するのは基金ということになるわけです。構成員は、株式会社の株主に対しまして、相互会社では保険契約者であるところの社員ということになります。このほか、意思決定機関ですとか、保険関係ですとか、いろいろな面で差異が生じてまいります。
 (資料3)でございますが、これから何枚か続きますけれども、生命保険、損害保険それぞれの会社形態別社数など主な計数的な状況をお示しするものでございます。
 まず、「生命保険会社数の推移」でございますが、戦後、潰滅的な打撃を受けた生命保険各社の多くは、相互会社形態の第二会社を設立して今日に至っておりまして、現在15社を数える、そういうところとなっております。一方、株式会社形態の会社もともにございますので、両形態の会社が併存している状況にあります。ただ、後ほど改めて御説明申し上げますが、いわゆる大手社は相互会社で占められているところでございます。なお、平成7年度から8年度にかけて会社数が急に増加いたしましたのは、ここで保険業法の大改正がございまして、損保系生保子会社ですとか、外資系の会社の設立、これが多く見られたことによるものでございます。
 次に、1枚めくっていただきまして、「損害保険会社数の推移」ですが、こちらは表の下にありますとおり、現在2社、相互会社形態となっております。戦後、昭和20年代に組織変更、あるいは発足した2社が今日に至っているという形となっております。
 次の5ページの表ですが、これは生命保険、損害保険それぞれの相互会社形態の会社の社員数でございます。ここでは1人の方が複数の契約をしている場合、その数だけカウントしておりますので、実際にいわゆる名寄せをしてみれば、これよりも多少小さい数字になるかと思いますけれども、それにいたしましても、生命保険相互会社の大手会社では、 1,000万を超えるような数字になるかと思います。
 また、損害保険相互会社の場合、これは下に2社書いてございますけれども、1年物で契約金額が比較的小さなものが数としては多いということで、これまた 1,000万ぐらいの大きな数の社員を有していることになります。このような巨大な数の社員の存在というものが、株式会社化を考える上では大きな問題となるというところでございます。
 次に、「生命保険会社の主要計数」という表でございますが、生命保険業界全体の中で相互会社形態の会社がどのようなウェイトを占めるのか、幾つかの項目について計算してみたものでございます。
 先にもありましたように、業界の中では相互会社形態の会社は、いわゆる大手社の全てを占めるといった実態にございます。例えば、個人保険の新契約高で見てみますと82%、保有契約高、これも個人保険でございますけれども、保険料収入、総資産、これらの数字ではそれぞれ9割前後を占めると。相当大きなウェイトを占めているところでございます。
 次に、(資料4)でございますが、こちらでは諸外国の事例をお示ししているものでございます。株式会社化に関する法制度、実際にあった株式会社化事例などを挙げてございます。
 「各国の組織変更関連規定」という表でございますが、これを御覧いただきますと、各国ではそれぞれの法制度の下で組織変更がなされているということがおわかりいただけるかと思います。
 米国につきましては、保険は州法の下に置かれておりますので、州によって組織変更規定も差がございます。ここでは代表的な例といたしまして、ニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州の例を挙げてございます。ニューヨーク州では、第1方式から第4方式まで4種類の制度がございます。しかし、実際には、ニューヨーク州で株式会社化が図られた事例といたしましては、第4方式によるものだけとなっております。これは、州監督当局の個別認可によるものとされておりまして、社員権の補償につきましても、契約者に公正かつ公平に補償するとされておりますけれども、他の方式のような具体的な基準を示してはおりません。カリフォルニア州では、株式の優先購入申込権を分配して、購入価格は株式公募価格の50%と設定。購入権が行使されない場合には、購入価格に等しい対価を支払うというような方式でございますし、イリノイ州では、理論上、社員による相互会社所有を否定するという考え方をとりながら、実際には保険契約者の権利の公正な取扱いとして、株式の購入申込権を分配するということとなっている模様です。
 英国では、組織変更に関する規定自体がございませんで、実際には包括移転という形をとりました事実上の株式会社化を図るということとなっているようです。
 ドイツでは、法的には組織変更法に基づく方法と、保険監督法上の包括移転の規定に基づく方法、この両方があるようでございますが、後ほど御紹介するファウ・ハー・ファウ社(VHV社)の例などでは、後者の方法がとられているようでございます。
 豪州では、組織変更に関する規定は存在しないようでございますが、監督当局から都度、必要な条件を求められるということとなっているようです。
 カナダにつきましては、表では小規模会社のみが組織変更可能とされておりますけれども、実は最近、新法が成立いたしまして、大規模相互会社にも株式会社化の道が開けてきたということとなっております。
 9ページを御覧いただきたいと思います。「諸外国の保険会社の株式会社化」でございますが、幾つの事例を挙げてございます。
 モニー社でありまして、これは最近の事例でありますけれども、ニューヨーク州の第4方式による組織変更です。社員権の補償といたしましては、持株会社の株式を、一律補償と寄与に応じた補償として、旧社員に交付しております。小口株主を削減するということから、コミッション・フリー・プログラムを実施するというような工夫も行っております。
 エクイタブル・ライフ社は、90年の計画発表から92年の実施と、若干この中では古い事例になりますけれども、基本的にはモニー社の事例と類似の方法によっているものと言えるかと思います。ただし、こちらはAXA社との投資協定による破綻回避といった色彩があったことが言われております。
 プリンシパル社は、持株相互会社形態となっております。これは、親会社が相互会社のままで、実際に保険契約を結んでいるのは子株式会社といった形態のものでございます。
 英国では、先ほど申し述べましたように包括移転方式による株式会社化となっております。スコティッシュ・エクイタブル社では、議決権信託というような工夫も行っております。
 ドイツのファウ・ハー・ファウ社では、一部契約を除いた包括移転を行っております。
 オーストラリアではAMP社。これは持株会社の株式を交付して、社員権を補償する形で株式会社化を行ったところでございます。
 次の11ページの資料でございますけれども、これらは株式会社化の結果、あるいは計画の状況というものを御覧いただく上で、米国の大手生保について見てみたものでございます。これを御覧いただきますと、トップテンのほとんどが、持株相互会社化といったものを含めまして、株式会社化しているか、あるいは検討中の状況にあるということが御覧いただけるかと思います。
 (資料5)でございまして、これは過去の保険審議会の答申等の抜粋でございます。
 13ページでございますけれども、平成4年の答申、「新しい保険事業の在り方」では、株式会社化積極論と相互会社形態の維持を主張する議論の双方を御紹介されております。相互会社の運営の改善ということを指摘しながら、さらに、これまで保険業法に株式会社化といいますか、株式会社への転換規定がなかったこと、この背景説明が行われているところでございます。その上で、最後のホ.のところでございますが、ニューヨーク州法の動きなど諸外国の動向を踏まえつつ、「資本調達能力の向上やこれを背景とした事業展開等を目的として、相互会社が社員の合意に基づき、株式会社への転換を図る可能性が生じるものと考えられる。」として、転換規定整備の必要性を指摘しているところでございます。
 さらに、14ページ、平成6年の報告、「保険業法等の改正について」では、具体的な保険業法改正の要綱的な性格を持った報告であるわけですが、ただ、概ね現行の保険業法の骨格が示されているところでございます。
 そして、平成7年成立、8年施行の保険業法の改正の中で、株式会社への組織変更の規定が新設されたところであるわけですが、15ページ、平成9年の保険審議会報告、「保険業の在り方の見直しについて」では、「相互会社から株式会社への組織変更の規定については、新保険業法において導入されたところであるが、実務的な手続き等について、今後、検討していくことが適当である。」とされたところでございます。
 (資料6)でございまして、「現行の組織変更制度の概要と主な論点」でございます。
 現行保険業法における相互会社から株式会社への組織変更制度でありますが、資料の左側にありますように、まず、社員権の補償を行うこと。これは株式の割当てをもって行うこと。またそれは、社員の寄与分、すなわち各社員の会社の純資産形成への貢献度合いに応じてするということとなっております。
 資料を1枚めくっていただきまして、17ページを御覧いただきますと、組織変更のイメージ図といったものがございますけれども、ここで寄与分に応じた株式の割当てを行いますと、実際には整数単位の株式のほか、端株ですとか、端株未満も割り当てられるといった事態が生じることになります。この点につきましては、後ほど課題としてもう一度触れさせていただきます。
 資料を戻りまして、マル2のところでございますけれども、既に保険契約が終了して会社から退社した社員が会社の純資産形成に貢献している分もございますので、この分については組織変更剰余金額を定款において設定できることとして、資本の額と合わせて株式配当として社外流出することを阻止するというようなことが規定されているところでございます。
 一方、右側の「主な論点」の方になるわけですけれども、このような制度につきまして、特に実務的な観点から指摘されている論点がございます。
 まず、マル1の「株式割当てによる補償について」でございますが、先ほど申し述べましたように、実際に寄与分に応じた株式の割当てを実行しようとしますと、相当大きな数の端株主、端株未満が生ずるものと予想されます。
 資料の18ページを御覧いただきますと、これは「現行規定による社員に対する株式割当」という表でございますけれども、保険相互会社の中には、社員数が 1,000万人を超すようなところもあるわけでございまして、この場合、資料の下の<参考>にございますように、株主の数の大きな上場株式会社、NTT等々ございますけれども、こういったところの株主数と比較いたしましても、はるかに大きな数の社員が存在しているわけでございます。さらに、これを株式会社化して株式を割当てしますと、株式は小口分散所有となることが考えられますし、加えて、特に端株主、端株未満株主が数百万人というような膨大な数となることが見込まれるところでございます。このような場合の管理上の問題というものは、実務的には大きな問題となるわけでございます。
 また、寄与分の計算を行いますと、社員によっては寄与分がゼロ、あるいはマイナスと計算される場合が出てまいります。このような社員に対する取扱いはどのようにしたらよいのかという問題もございます。また、組織変更について反対する社員がいることも想定する必要があるわけでございますけれども、このような社員についての対応をどのようにするかといった問題がございます。また、株式の割当て以外の補償手段、例えば現金の交付ですとか、新株引受権の付与といったものも考えられるのではないかといった御意見もございます。一方、例えば現金の交付の場合、資金の社外流出が生じるといった問題も指摘されております。
 次に、寄与分に応じた補償でございますけれども、これにつきましては具体的にどのような計算とすべきか、こういった問題がございます。現行業法では、アセット・シェア方式による計算が前提となっているように見えるところでございますけれども、これと組織変更に当たっての会社の純資産額との関係はどのように整理されるのか。この資料では、純資産額の算定、評価として記載してございます。また、社員寄与分の算定方法につきましても、アクチュアリー、すなわち保険経理の立場から、寄与分計算に当たっては、現行業法に規定される方法以外の計算方法も考えられるのではないかといった御意見もございます。
 また、組織変更剰余金額の取扱いにつきましては、組織変更剰余金額の性格につきまして整理する必要があるのではないかというようなこと。また、現行業法では、削減ですとか廃止につきまして特段の規定は置かれていないことから、その要件につきまして明確化を図る必要があるのではないか。また、会社清算時の取扱いはどうなるのかといった問題が指摘されているところでございます。
 マル4の「ガバナンスに係る問題」でございますけれども、株式が小口分散所有されることが想定できる中で、それに伴う問題といたしまして、管理上の問題ですとか、円滑に増資を図るための手当て、どのようにしたらよいのかといった問題が指摘されるところでございます。また、保険契約者と外部株主、ここでは旧社員以外で株主となった人を考えているわけでございますけれども、その関係はどういうふうになるのか。利益が相反するようなことがあるのか。権利保護のようなことは必要ないのかといった問題がございます。
 マル5の「その他」でございますけれども、ここでは幾つかの問題を挙げております。
 まず、組織変更による株式会社化のほか、包括移転方式や、持株相互会社方式によって事実上の株式会社化を実現してもよいのではないか、こういった考え方があるところでございますけれども、一方、利益相反の問題があるのではないかとか、諸外国の事例をさらに見ていくべきではないかというような御指摘もございます。また、さらにここでは、株式公開というようなことを視野に入れた場合に、それに伴う諸問題があるというようなこと。それから、これから国際的にも議論されることとなると見込まれます、保険会社に係るところの時価評価の問題があるというようなことも挙げております。
 資料といたしましては、この後、19ページは現行業法による手続を一応時系列的に並べたものを添付させていただいているほか、参考といたしまして、保険相互会社の株式会社化に関する作業部会の審議状況、それから現行制度といたしまして、現行保険業法と平成6年の保険審議会報告とを対比するような形で並べたもの、こういったものを付けさせていただいておりますが、これにつきましては御参考として御覧いただければというふうに思う次第でございます。
 私からの御説明は、以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、山下委員、お願いいたします。
○山下委員 それでは、若干お時間をいただきまして、ただいまの菅野さんの御報告を補足させていただきたいと思います。
 資料20ページにございますような経緯で検討してきたわけでございますが、本日夕刻、改めて第7回の会合を予定しておりまして、そこから、検討結果を踏まえまして、作業部会としての意見を取りまとめていく予定でございます。
 これまでの検討によりまして大きな方向感というものは徐々に形成されてきたように思っておりますが、なお意見調整を図るべき点や、技術的な詰めをすべき点がたくさんございます。現状はそういうところであるということを前提といたしまして、本日の御審議の参考としていただくために、菅野室長の報告と多少重複する点はあるかと思いますが、主要な論点についての検討状況について、簡単に御報告させていただきます。なお、時間の関係から、網羅的なものではないということで御承知おきいただければと思います。
 私のこれからの話の項目は、「資料第二部会5−5」というレジュメがお手元にあるかと思います。これを御参照いただければと思います。
 まず、組織変更による方式につきましての検討を中心に行っておりまして、その問題点を、アから2ページ目のクまで並べております。
 アの「社員に対する補償の基本的な考え方」につきましては、組織変更による方式では、相互会社の保険加入者である社員に対して、その財産的な持分に対する補償として、組織変更後の株式会社の株式が割り当てられることになります。
この補償する際の社員の持分の算出の方法として、先ほど御説明がありました寄与分に応じてする。それで、寄与分についてはアセット・シェア方式で算出するということが法定されているわけですが、このアセット・シェア方式を具体的にどのように実施していけばいいのかという点については、必ずしもまだ法令レベルでははっきりしておりませんし、実務レベルでもなお難しい問題がある。特に、寄与分の算出を厳密に行うということは、ある意味では公正・公平の確保に役立つわけですが、余りこれを厳密にやり過ぎると、膨大な作業が必要となりまして、迅速に株式会社化を進める障害ともなり得るわけでございます。諸外国でも、先ほど御説明がありましたけれども、ある程度は柔軟な算出方法を認めているようでございまして、それらを参考としながら、公正かつ公平な寄与分算出の方法について検討しているところでございます。
また、我が国の保険会社の現状では、アセット・シェア方式をそのまま適用すると、寄与分ゼロ又はマイナスの社員が極めて多数に上るのではないかということでございまして、そうすると、現在の状況の数値、アセット・シェアを算出して、その数値に基づいて株式を補償として交付するということでいいのかどうかについては、やはり議論があるところでございまして、一つには、外国でかなり広く行われているように、全ての社員に対する一律補償部分を設けてはどうか。例えば、一律に一定数の株式を割り当てる、そういうふうな方法をとってはどうかというような意見もあるわけでございますが、これは腰だめというか、理論的にちゃんと説明がつくのだろうかというふうな意見もあるわけでございまして、なかなか難しいところがある。
そのほかには、寄与分計算をする際に、部分的には将来の配当期待権というものも、それぞれの社員の寄与分算出に加味していくようなことは考えられないかというふうなことを考えておるところでございます。
 次の「補償の方法」でございますが、現行法では株式や端株の交付というか、割当てをするということでございますが、これを柔軟にしてほしいと、補償方法を柔軟にしてほしいという実務的な要望があるわけで、例えばその一つとして、現金の補償というのも認めるべきではないか。しかし、資金流出を伴う等の問題はあるのではないかというようなことでありますとか、あるいは、昨今の状況から、川上持株会社の株式を割り当てるという方式などは認められないのかというような点を検討しております。
 次の「端株・端株未満部分の処理」でございますが、膨大な端株・端株未満部分が生ずるというのは、先ほどの説明にあったとおりでございまして、これに対してどう対処するかということで、一つの考え方としては、端株未満部分については、現在の法律の下でも一括売却ができるわけでございますが、端株部分も一括売却をするというふうな仕組みは考えられないであろうかというようなことを検討しております。この一括売却ということを端株部分についてもいたしますと、これは商法の一般原則を大きく修正するということになりますから、かなり公正さという面では配慮が要るのではないか。売却の方法、売却先、売却価格の決定の方法などといった問題を詰めておく必要があろうかということでございますし、それから、株式会社化後に株式を上場することを予定するような場合には、この売却の時期をどうするかというふうなあたりの問題も考えているところでございます。
 次の「組織変更手続と同時増資・直後増資」ということでございますが、相互会社ですから、そう内部留保も多くあるわけではございませんで、そういう会社が純資産の額を上限として株式会社化すると、株式会社化してもそのままではかなり低い自己資本の水準になりますので、資本を増強するには、円滑に増資をしていくということが必要になるわけでございますが、これも商法の授権資本枠が発行済株式総数の4倍までしか増加できないというような制約がかぶってまいりましたり、あるいは第三者割当てをしようというようなことになると、有利発行規制等の関係などから、株主総会の特別決議を経ることが望ましい場合があるだろう。しかし、それは株式所有の極端な分散化で、なかなか総会も開けないのではないか、こういうふうな問題がございますので、組織変更の手続の中で新株を発行するというか、増資をする。あるいは株式会社化の効力発生後直後に増資ができるように、予め組織変更の手続の中で決めておく、そういうことができないであろうかというふうなことを考えております。
 それから、「株主分散への対応」につきましては、これは商法の株主総会の定足数などの特例を設けるべきかどうかというあたりの問題でございます。
 それから、「組織変更剰余金額」につきましては、なぜこういうものがあるかというと、先ほどの菅野室長の説明にございましたように、相互会社の純資産の中には、既に退社していった社員が会社に残していった部分が存在する。「退社員寄与分」というふうに呼びますと、こういうものが株式会社化後直ちに株主配当に充てられるということになると、これはたまたま組織変更の時点で社員であった者、それが株主になっているわけですが、そういう者にウィンド・フォールというか、偶然の利得を与えるというようなことで、現行法では退社員寄与分は配当してはいけない。細かい、どの程度かというのは、またいろいろ話がありますが、基本的にはそういう退社員寄与分について配当制限をかけているわけですが、どうもその手段としての組織変更剰余金額という制度について、それを設けることが義務なのかどうか。一旦設けた場合に、これを取り崩すというか、減額するというふうなことが可能なのかどうか。これは解釈論としては、平成7年の改正の後から議論があるところでございますが、改めてこの特別の剰余金額という制度について、本質的なところから検討しているところでございます。
 「保険契約者と株主の利害調整」という点につきましては、組織変更で株式会社化されるわけですが、従来社員であった有配当契約者の配当に対する期待は極力保護すべきであろうということがあるわけで、それは、では、経営の判断に任せておけばいいのか、何らかの規制というか、法的な仕組みを設けて、そういう有配当契約者の保護を図るべきかというような問題があるわけで、諸外国でも、例えば旧社員、相互会社の社員であった契約者のための閉鎖勘定を設けるとか、あるいは有配当契約のためのオープンファンドというようなものを設けて、そういう有配当契約者の配当に対する期待を保護する、そういうふうなことが行われているところがございますが、そういう制度が我が国でも必要かどうかというあたりを検討しております。
 「その他」の、数は少ないんですが、損保相互会社というものを考えていくと、保険期間が1年というふうなことで、組織変更手続を進めていくと、これは諸外国では相当の期間がかかりますけれども、そのままでは短期の契約が多い相互会社の組織変更を円滑にできるのだろうかとか、寄与分を計算しても極めて微小な契約というのが多いという状況がある。そのあたりをどうするかという問題がございます。
 最後に、「組織変更以外の方法」として、包括移転、あるいは相互持株会社という仕組みが外国にはございますので、それらの方式も検討しておりますが、それぞれいろいろ問題点も多いということで、組織変更の制度を実用的なものにすることにより、基本的には対処していくということなんだろうと私個人は思っておりますが、なお、組織変更の制度を使うのではどうしても対処できない課題というのがあるかどうか、そんなあたりを詰めて、最終的な結果を出したいというふうに思っております。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 引き続き、自由討議に移りたいと思います。ただいま御紹介のございました「保険相互会社の株式会社化ワーキング・グループ」の審議状況につきまして、御意見、御質問等がございましたら、御自由に御発言いただきたいと思います。
 江頭委員、何かございますか。お願いいたします。
○江頭委員 山下委員のお話にありました問題点の中で、私よくわからないのは一律補償部分の件ですが、これは積極的にこれを主張しておられる方がおられるのかどうか、よく知りませんけれども、主張するとしたら、これは何だという説明になるんでしょうかね。
 恐らく、一律と言うからには、現行の相互会社の下で一律に権利が帰属しているというのは、相互会社ですから、1人1票なわけで、恐らくそういう共益権の対価だというような説明ぐらいしかないんでしょうけれども……。どういうことから出てきているのか。現にアメリカではやっているようですけれども、その辺の、これを主張しておられる方がいるのかどうか。それから、もしおられるとしたら、どういう根拠なのかというあたりを説明していただければと思います。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか。山下委員、お願いいたします。
○山下委員 主張されているというんですか、できればいいねと言うメンバーはいらっしゃるわけですが、理論的にこれをどう説明するかというところが問題で、アメリカに限らず、イギリス、オーストラリア、どこでもこういう一律部分を実際には設けて組織変更しているわけで、むしろそれがグローバル・スタンダードだと言えばそういうことなんですけど、アクチュアリー的に説明がつくかというと、これはそうではない。やはり江頭教授が言われたような共益権の対価というふうなぐらいの説明しかつかない。実質は、賛成を社員に得るための手段というふうな状況ではないかと思っておりますので、この一律補償というのを正面から我々が取り入れるというのは、なかなか難しい面があるのではないかというふうには思っております。
○倉澤部会長 寺阪オブザーバー、何かございますか。
○寺阪オブザーバー 今の点でですか。
○倉澤部会長 今の点じゃなくて、全体の中でどんな点でも結構でございますから。今の点でも結構です。考えありましたらお願いいたします。
○寺阪オブザーバー 山下委員の方から御説明ございましたように大きな方向感が見えてきたということでございまして、私も本当に短期間のうちに、業界でいろいろ申し上げましたことを正面から受け止めていただきまして、この段階まで御検討が進んだということにつきましては、大変感謝申し上げる次第でございます。
 あとは、時間も限られている中で、こういう作業をやっていかなきゃいかぬということでございますので、予め決められたスケジュールの中で、さらなる御検討をお願いしたいと、こういうのが率直な気持ちでございます。
 今の問題で、実務家といたしましては、やはり社員に対して個別に賛否を、法的にはそういうことは必要は多分ないような手当てがされるんだろうと思うんですけれども、実務的には、全社員に対してやはり「株式会社化をしますよ。あなたの権利はこうなりますよ」というようなことを御通知を事前にしなきゃいけないだろうというふうに思うんですね。そのときに、御指摘がありますように、組織変更剰余金とかいろいろなことを考えていきますと、分配する財産が非常に少ないから、全く何の経済的利益も得られない社員の方が非常に多くなる可能性もあるということで、そういうようなことを回避する手段として何かないものかなというところから、諸外国の事例などを見ておりますと、グローバル・スタンダードかどうかというようなこともありますけれども、一律に補償しているようなことでそういうような問題を回避されているようだというようなことを、いろいろ調べてみますとわかってきたわけでございまして、何らかのそういうような工夫があれば、手続として非常にやりやすいなというふうに考えておる問題でございます。
○倉澤部会長 理論的な難しさのほかに、相互会社の企業が順風満帆の環境の中ですとこういう問題も起こらないで、かえって企業のリストラといったものが必要な時期に寄与分を計算すると、かなりゼロやマイナスの人が出てくるということは考えられる状況なんですね。
 森本委員、お願いいたします。
○森本委員 まず、総論的なところですが、(資料1)として「株式会社化の背景・目的」ということについて御説明がありましたけれども、これは確か今年の始めぐらいにも一般的にこの話をしたときに、数年前の議論と、業界と言われたのか、一般的な議論の趨勢と言われたのか、ちょっと失念いたしましたが、ちょっと変わっているんじゃないかという御指摘があったように記憶しております。やはりいろいろな目的があるでしょうけど、なぜこの時点で、一応既にあるんですけど、それをもう少し使いやすくするためには、何のためかというのをもう少し整理していただくと、つまり、この10年ぐらいの議論を振り返りながら整理していただくということも必要じゃないかなというのが総論的なところでございます。これはそもそも論ですけれども。
 あと、法律、技術的な点で、特に山下委員のメモの中ですが、現金補償とか端株の一括売却あたりをどう考えるかという問題は、当初端株制度が想定していなかったようなもので、確かに有限会社から株式会社への組織変更の場合にも同じような問題が起こるのかわかりませんけれども、有限会社の場合には原則として50名以下の社員しかいない小さな会社の組織変更ですけれども、この場合には、素直にいけば、場合によっては 1,000万の株主ないしは端株主が生ずるかもわからないという事態ですので、ある程度弾力的に解することが合理的なのではないかと思いますけれども、やはり余り特例、特例と言うと、最初に申しました、そもそもなぜ組織変更が必要かという問題にもぶち当たりますので、できるだけ現行法、特に商法の立場と整合性を保ちつつ、何かお知恵をお出しいただけたらありがたいなと思いまして、その一つとして、現金補償の可否、もしくは端株についての一括売却ですが、現行法は端株原簿への記載をするなと言われたものについて、例外的にいわゆる現金補償をするということになっているんですが、その原則と例外を逆転する場合のことは、別に商法上の制度との整合性には問題ないし、そうしておけばほとんどの人は何も言わないから、実質的には端株の大多数については一括売却されるようになるのかなと。あるいは、甘いのかもわかりませんけれども、できるだけ整合性を保ちながら実務も納得できるような方策をお考えいただければと思っております。
 ただ、最後に、2枚目の冒頭に「株式分散への対応」とありますけれども、この点につきましては、例えば株主総会の特別決議要件の緩和ないしは定足数不足になったときにはまた何とかしてくれといったようなことが、事業会社というのか、現行の株式会社の中にもあるようですけれども、その問題についてはやはり慎重に、私、一切それを否定するつもりはありませんけれども、慎重にしなきゃいけない。先ほどの個人信用情報のところと同じですけれども、やはり効率的な企業運営を確保しなきゃいけませんけれども、持続的な効率性を支えるためには、やはりある種のコーポレート・ガバナンスというんですか、チェックも必要ですし、そういうときに何か、極端な分散による株主総会の運営が困難になるでしょうけれども、その困難を回避するための知恵を一生懸命経営側としてはとられるべきで、それを例えば、いわゆる安定株主とかいう形で安易に乗り切ろうということであれば、少し問題かと思いますので、経済的・合理的な要望については、できる限り商法との整合性を保ちながら柔軟に対処する必要があるけれども、その裏側にある公正さというのか、株主権の確保という点についても十分に御配慮いただきたいと思います。
○倉澤部会長 確かに商法の端株というのは、もう既に株式を持っている株主には無償の株式分割なんかのときに出てくる問題なのが、今度は新しく生まれる株式会社に、株主権に足りない者に端株を割り当てるということで、これはある意味で言えば、理論的にも特例を考慮する余地があるかもしれません。そういう点で出された二つの問題のうち、前者と後者はちょっと理論的には性格の差がある問題かもしれませんね。
 ほかに何かございましょうか。
 先ほど寺阪オブザーバーからもお話がありましたように、このワーキング・グループでここまで、限られた時間で詰めていただいたことに、私からも敬意を表させていただきたいと思います。
 それでは、ほかに御意見等がなければ……。
 どうぞ、杉田委員。
○杉田委員 本日の主要テーマと少しそれるんですが、部会あるいは審議会全体の問題になるかもしれませんが、進め方について、部会長あるいは事務当局の方からちょっと伺いたい点があるんですが、それは、先ほどの国会審議の中でも触れられておりますけれども、ペイオフの問題を国会でも質問が出ているわけですね。それに対して大蔵大臣が、関係の審議会で議論をお願いしているところだというふうにお答えになっておられるわけですが、当審議会は最初に貝塚会長がお話しになりましたように、2001年の4月1日からペイオフを予定どおり実行するという前提に立って議論をするということで、粛々と議論が行われているわけであります。
 しかしながら、現実に、今想定されるペイオフを単純に実行できるかどうかについては、相当専門家の皆さんの間でもいろいろ意見があるところではないか。しかしながら、金融審議会としては、どういう場面でそういうことを議論する機会があるのか、今のところ一向に見えてこない。次回は預金保険についての議論があるとおっしゃっているんですが、そこで議論されるのか。あるいはもっと遠い先の方で議論する機会があるのか。その辺について展望をちょっとお示しいただきたい。
 私自身で言えば、やはり単純実行ということについては、なかなか技術的にも難しい問題があるのではないか。ペイオフを実行しなければ、また一方、単純延期いたしますと、現在の法律の諸制度というものが全部2001年4月1日をもって切り替わるということを前提に組み立てられているようでありますから、これは単純延期ということになると、いろんな混乱を来す面があると思いますので、そうすると、第三の道というのがあるのか、ないのか。これは日本銀行の速水総裁も私どもの経済部長とのインタビューで3月の始めに、何とか新制度を検討をしてもらいたいというようなことを言っているわけです。
 「新制度」というのは一体何かということが、速水総裁は明らかにしていないわけなのでありますが、そこに私が言うような第三の道というのが何らかあるのではないかということを、金融の運営の最高責任者としてやはり考えておられるのではないかという気がしているわけでありまして、この辺は金融審議会の専門の皆さんにとっても非常に大きなテーマなのではないか。こういうことは一体、御専門の皆さんがいつ腹蔵なく議論する機会があるのか、ないのか。あるいはこれはもう審議会の議論抜きで、行政の判断として何か措置をとるお考えなのか、この辺についてちょっとお考え方をお聞きしたい。
○倉澤部会長 私には重過ぎる問題で、幸いなことに、今日は貝塚会長御出席でございますので。
○窪野参事官 それではまず、事務局の方から、預金保険のワーキング・グループの検討状況をお話しさせていただきたいと思います。
この第二部会の下、神田委員に座長をお願いしておりまして、翁委員等もメンバーに入っていただいておりますが、3月末までは特別保険料の扱いの検討をお願いしておりましたが、4月に入りまして、今、杉田委員から御指摘がありましたような2001年以降の、まさに預金者にリスクを取っていただくような、そういう状況に移行する。そこが実務上円滑にいくのかどうか、何か制度の抜本的な見直しが要るのかどうか。その辺も含めまして、ただいま精力的に検討をお願いしているところでございます。
 この部会には、実は事務局から後ほど御紹介する予定でございましたが、次回の部会でその検討状況を御報告したいと思っております。
 主な検討の流れでございますが、まさに事務的に、実際に預金者にリスクを取っていただくような実務がうまく回るのかどうか。そこで預金者への保険金の支払い、あるいは現行法でも預金の設定方式、あるいは預金の買い取りといったような、いわばちょっとお話がありましたようなアメリカでありますいわゆるP&Aですとか、それと同等の仕組みがあるわけでございますが、そういうのが本当に回るのかどうか、その辺の実務的な詰めも行われているところでございます。
 さらには、そういったものを破産法定との関係でございますが、前回の法改正で既に会社更生法を銀行に適用した場合の特例がございますが、そういった破産法定を使った場合、そこが円滑にいくのか。どこか例えば、どうしても破産法の体系でございますと、預金の支払いとか決済が止まってしまうのではないか、そんな問題がありまして、実務でも裁判所の判断でできるようにはなっておりますが、その辺を法律ではっきりした方がいいのかどうか、そんな問題がございます。その辺が実務的な大きな流れでございまして、日本とアメリカの仕組みもかなり類似しておりますが、なお新しい仕組みを入れるかどうか。
そのほかの問題としましては、例えば預金保険の対象商品。金融商品にも預金類似のもの、元本保証のあるもの。一方、元本保証のある預金商品でも、大変ボラタイルなものも出てきておりますので、その辺をもう一回見直す。当然その中には、金融債をどうするか、こんな問題もございます。そのほか、預金保険料の体系も、可変保険料というような提案もございますし、また、なかなかそうはいかないというような議論もございますが、そういったものも含めた保険料、財政面の議論も行う。その辺を大変精力的に今行っておりまして、一通りある程度事務局からの御説明とか済んで、これから、池尾委員とか、翁委員とかもいらっしゃいますが、そういう委員のメン バーから意見を詳細に伺い、何とか次回にはその辺の検討状況を御報告し、また、部会での御議論をいただいて、さらにワーキング・グループへフィードバックしていく、こんな取組みをしているところでございます。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
○貝塚会長 今の御質問は大変センシティブな御質問で、お答えするのは非常に難しい。やや私の個人的な意見も入るんですが、やはり元来の出発点は、私は審議会の方も、あるいは金融局の方も、この議論をするときには金融制度はある程度安定化が済んで、その段階ではペイオフの問題というのは、ある意味ではそれほどセンシティブな問題にならないんじゃないかという予想の下で議論は始まったんですが、実を言うと先ほどの株式会社化の議論もある程度そうなんですが、その問題は依然としてハングしておる段階で。
 ですから、非常に微妙な側面を含んでいるということがあって、その辺の判断は本当は難しいと思うんですが、あとは私の個人的な意見ですが、やはり制度を変えてペイオフを実施することはあり得ると。そういうふうに制度を変えるということを日本政府が一応宣言したわけですね。それはやっぱり期限もちゃんとつけて議論したわけですから、それを変えるということはどうなのかな。これはある意味では政治的にも、外交的にも非常に重要な変更であって、恐らく海外の投資家、あるいはいろんな外国の資本市場参加者、金融関係者もそれを当然のこととしてある程度行動を既に起こしているわけですから、その辺のところを変えるというのは、やはり相当、よほどの事情がない限り、ある意味では困難ではないか。金融部局はどのようにお考えか知りませんが、一応私はそういうふうに考えております。
 したがって、あとは、実際はかなり、私も二、三回ワーキング・グループというのは出席して、議論はお聞きしたことがあるんですが、特別保険料の話はもう一応セトルして、これから先どうするかというところは、今の段階で議論は煮詰まっているわけではありません。ただし、やっぱりタイムリミットがありますので、常識的に考えれば、アメリカでもペイオフを実行に移すというのは、この辺は翁委員とか、あるいは池尾さんの御専門でもあるんですが、実際問題として非常に煩雑であって、ごく一部、ペイオフということがある意味で実質的に原則になるというふうなものでは基本的にはなくて、そういうこともあり得るという制度にしておいて、あとは円滑に金融機関の経営でちゃんとうまくいっている部分は残しておいて、それをうまく継承して、そのプロセスで預金も実質的に保護されるというふうにするのが、現実的には、アメリカも実際は多分そうなっているんだと思いますので、そういう方向がうまく進むようにすればいいというのが私の個人的な意見で、企画局の意見と合っているのかどうか知りませんが、そういうふうに思っているということを申し上げておきます。
○杉田委員 いずれにしましても、預金保険の新しい仕組み、それについて議論ができるということですよね。そういうふうに理解してよろしいですね。
○貝塚会長 それは金融審議会の重要な審議事項と御理解いただいて差し支えないと思います。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、予定の時間が迫ってまいりました。
 以上で本日の論点は、一通り終了したこととさせていただきます。
 最後に、次回以降の日程につきまして、事務局より御相談させていただきます。
 室長、どうぞ。
○津曲調査室長 次回の会合につきましては、6月16日(水曜日)の午前中に開催させていただきたいと考えております。
 テーマといたしましては、本日報告のなかったもう一つのワーキング・グループでございますが、今お話もございましたが、「預金保険制度に関するワーキング・グループ」からの報告でございます。及び、本日報告のあった二つの部会についての議論の整理が予定されております。
 本第二部会につきましては、6月中にさらにもう一回開催して、その段階までの整理を金融審議会総会に御報告いただけないかと考えております。よろしくお願いいたします。
○倉澤部会長 ただいまの次回以降の進め方について、御質問等ございますか。
 よろしゅうございますか。
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。
                                (以 上)