金融審議会「第二部会」第7回会合議事録

 日時:平成11年6月22日(火)14時00分〜15時47分
 場所:大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室

○倉澤部会長 定刻になりました。ただいまから、第7回金融審議会「第二部会」を開会させていただきます。
 皆様、御多用のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。
 早速、お手元の議事次第に従いまして本日の議事を進行させていただきたいと思います。本日も、前回に引き続き、本部会に設置されておりますワーキンググループの検討状況につき審議を行います。具体的には、前回から御議論をいただいております「預金保険制度に関するワーキンググループ」と、前々回議論の御紹介がございました「個人信用情報保護・利用の在り方に関する合同作業部会」について、それぞれ公表物のたたき台となる素案が用意されております。
 それに先立ちまして、金融企画局市場課の楠課長より、規制緩和推進計画の項目にもございました「公開前規制の見直し」について御報告があるとのことでございます。楠課長、よろしくお願いいたします。
○楠市場課長 楠でございます。お手元には、第二部会7−1という資料がございます。それを御覧いただきたいと思います。公開前規制の見直しにつきまして御報告したいと思います。
 ?でございます。公開前規制とは、株式公開の公正性を確保する観点から、日本証券業協会及び証券取引所の規則において、株式公開前の第三者割当増資等について一定の規制を行っているものでございます。
 本年2月3日の当部会の第3回会合のヒアリングの際に、プラザクリエイトの大島社長から公開前規制の問題点につきまして指摘がありまして、また、3月8日の第4回会合では、規制緩和推進計画の概要と対応ということで、私の方から御説明させていただきました。その際にも御説明いたしましたが、?に書いておりますように、公開前規制につきましては、「経済構造の変革と創造のための行動計画」など、そこに書いてあるような決定におきまして、その見直しの必要というのが盛り込まれたところでございます。
 このような状況を受けまして、?でございますが、日本証券業協会の方で、本年の2月25日に「公開前規制検討グループ」を設置されまして、公開前規制の見直しにつきまして5月6日に報告書をとりまとめられたところでございます。
日本証券業協会及び各証券取引所は、この報告書を踏まえまして、公開前規制の見直しについてのパブリック・コメント手続を経た上で、以下の規則改正、これは7月1日施行の予定でございますけれども、を決定したところでございます。
それで、公開前規制の見直しの概要でございますが、そこの参考欄に、「直接的行為規制」と「開示」に分けて簡単に書いております。考え方を御説明いたしますと、公開前規制につきましては、従来、本規制によりまして公開を目指す企業の増資による資金調達が数年間にわたり事実上不可能となっているとか、公開準備期間を長期化させていると、そういうふうな批判があったところでございますので、今後の新しい、見直し後の規制としましては、マル2の開示制度を公開前規制の基本としつつ、特に株式公開実現の蓋然性が高いと考えられる公開時に近接した期間につきまして、必要最小限の行為規制を行うという考え方で見直しが行われたものでございます。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
何かこの点について御質問、御意見等がございましたら。
特にございませんか。よろしゅうございましょうか。
それでは、本日の主たる議題に移らせていただきます。
初めに、「預金保険制度」について、本日はワーキンググループでの議論を整理した「論点・意見の中間的な整理」のたたき台が、議論の素材として用意されております。まず、事務局からこの資料の性格等について御説明をお願いいたします。
○津曲調査室長 事務局より、この「論点・意見の中間的な整理」の性格などにつきまして御説明申し上げます。
この「整理」は、「預金保険制度に関するワーキンググループ」で進められている検討での主な論点と主要な意見をワーキンググループとして整理したものであります。最終的には、本部会の御意見も反映しつつ、後日、部会名にて公表される予定というものでございますので、本日は部会終了後回収させていただきますとともに、傍聴席の皆様にはお配りしてございませんので、どうか御了承いただきたいと思います。
○倉澤部会長 どうか御了承いただきたいと思います。
それでは、内容の御説明をお願いいたします。事務局による資料の読み上げと、ワーキンググループの座長をお引き受けいただいている神田先生から審議の概況についての御紹介をいただくとのことでございます。
それでは、神田先生からお願いいたします。
○神田委員 神田でございます。今、お手元に「預金保険制度に関する論点・意見の中間的な整理」として配付されていると思いますが、ワーキンググループはこれまで全9回会合を開きまして、最初のうちは、この前お諮りいたしました特別保険料の問題も議論しましたけれども、預金保険制度全体についていろいろな角度から、金融論的観点、あるいは法律的な観点も含めまして御議論してまいりました。その議論の中で出ました論点とか意見を、いわば並列的に整理いたしましたのがお手元の資料でございます。したがいまして、これを事務局の谷内さんから読み上げていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○倉澤部会長 それでは、お願いいたします。
○谷内補佐 それでは、読み上げさせていただきます。
1.預金保険制度のあり方に関する基本的考え方
? 目的、役割、機能
○ 預金保険制度の目的は信用秩序の維持にあるが、その機能としては預金者の保護のほか、決済機能の保護も含むと考えるべきか。
 また、預金保険制度によって、金融機関の借り手の保護をどこまで考慮すべきか。
○預金保険制度の役割・機能については、保険制度に伴うモラルハザードや負担の増加を勘案すると、できるだけ限定的に考えるべきではないか。
○ 預金保険制度は銀行監督政策と密接に関連しており、預金保険制度のあり方を検討する際には、銀行監督政策と併せて考えるべきではないか。
○ 理論的には、監督当局が銀行の経営状態を常時完全に把握し早期に対応できれば、金融機関の破綻に伴う預金者の負担は最小限に止まるはずであり、破綻処理の積み残しの解消を図る過渡期は別として、基本的にはそうした早期の対応の実施を前提として「小さな預金保険制度」を目指すべきではないか。
○ 預金者保護はまず問題金融機関の「早期発見・早期是正」によって図られるべきであり、金融機関の破綻の未然防止の観点からの対応を進めることが重要ではないか。その際には、銀行監督の費用を含めた社会的なモニタリング・コストと預金保険料が代替的な関係に立つことになるのではないか。
○ 預金保険制度の役割・機能を限定的に考える必要はなく、多様な金融商品の出現や国民の期待に応じて、ある程度弾力的に考えるべきではないか。
○ 預金保険制度の守備範囲を考える際には、金融機関の破綻処理に関するルールが明確化されることにより、それが客観的に予見可能な形になれば、民間の保険や保証に委ね得る分野もあることを考慮すべきではないか。
? 破綻処理のあり方、方式の選択等
○ 「ペイオフ」は、本来預金保険法上の「1000万円までの保険金の支払」を意味するものであるが、その他に、現在の預金の全額保護という特例措置が終了して、預金のうち1000万円を超える部分は一部カットされることもあり得るという意味で使われることも多い。破綻処理方式の一つとしての保険金支払方式という意味と預金全額保護のための特例措置の終了という意味の二つを明確に区別して議論すべきではないか。
○ ペイオフになると、1000万円を超える預金は全額カットされるという誤解がある。現行制度では、1000万円を超える部分についても金融機関の損失の程度に応じてカットされた上で戻ってくるのが通例であることが、正確に理解されていないのではないか。その点を含めて、預金保険制度の周知が必要ではないか。
○ 破綻処理方式の選択に当たっては、ペイオフコストの範囲内で、できるだけ社会経済的コストの小さい処理方式を選ぶことを原則とすべきではないか。
○ 保険金支払方式は、破綻金融機関の規模が大きくなるほど保険金支払に時間を要する上、その金融機関の営業体としての価値が失われるなど、米国の例を見ても適用される場面は限られると考えられるので、実際の処理に当たっては、まずは一般資金援助方式の適用を考えることになるのではないか。
○ 破綻処理方式の決定に当たっては、事前にルールを明確化することにより、アカウンタビリティを高めることが重要ではないか。
○ 仮に複数の救済金融機関の候補が登場した場合には、コストを最小化する観点から価格メカニズムが働くような工夫を行うべきではないか。その場合、手続に要する時間と、情報の管理についてどう考えるか。
○ 特例措置終了後の金融機関の破綻処理方式としては、現行の預金保険法本則において、保険金支払方式と一般資金援助方式(救済金融機関へのペイオフコスト内の資金援助を伴う営業譲渡等による破綻処理方式)の二つの方式が措置されているが、その他の破綻処理方式も整備しておく必要があるのではないか。
2.保険金支払方式
? 保険金支払いの迅速化
○ 保険事故発生後は預金の払戻しを停止せざるを得ないが、預金の払戻し停止に伴う混乱を極力小さくするために、保険金の支払を可能な限り迅速に行うべきではないか。
○ 保険金支払のために必要な名寄せを迅速かつ正確に行うためには、例えば、平時から金融機関における名寄せを求めたり、あるいは、金融機関の預金者データを預金保険機構がスムーズに引き継ぐためのシステム対応を求めるべきではないか。
○ 営業戦略や顧客管理の観点からは、金融機関にも名寄せを行うメリットがあると言えるのではないか。
○ 金融機関に名寄せを求める場合、その負担が相当なものになるのではないか。
○ 保険事故発生前から名寄せ等の準備作業を行うために、預金保険機構等が平時から関与しておく必要があるのではないか。
○ 保険金支払業務を迅速に行うための要員をどのように確保するかについて、検討が必要ではないか。
○ 保険料算定の母数を保険金支払限度額(現行では1000万円)を上限とすることは考えられないか。その結果、金融機関の名寄せを促進することにつながるのではないか。
○ 名寄せを推進したとしても完全な名寄せを実施することは困難であるため、名寄せの正確性をある程度犠牲にしても保険金支払を迅速化することは考えられないか。その場合、過誤払いが生じることが予想されるが、それにどのように対応すべきか。
○ 大規模な金融機関の場合、短期間に大量の預金を他の金融機関に預金設定することは、実務的に困難な場合が多いのではないか。むしろ、破綻金融機関のシステムを利用することは考えられないか。
? 仮払金
○ 仮払金制度の導入趣旨や名寄せを行わないで支払われることを踏まえると、その水準を必要最小限に止めておくべきではないか。
○ 生活水準は上昇しているのだから、仮払金の水準をある程度引き上げることも検討すべきではないか。
? 預金等債権の買取り
○ 預金等の買取りによる概算払いを迅速に行うために、概算払額の算定は預金元本のみを基準に行い、利息分については清算払いの時に支払うことは考えられないか。
○ 非付保対象預金の流動性の確保、債権者の集約による倒産手続の迅速化の観点などから、預金等の買取りの対象を非付保対象預金等にまで拡大することは考えられないか。
○ 預金等の買取りの対象については、買取りの減資が保険料であること、非付保対象預金の扱いは本来の預金保険の業務ではないこと等から、現行制度のように、付保対象預金に限定して考えるべきではないか。
3.一般資金援助方式
(救済金融機関へのペイオフコスト内の資金援助を伴う営業譲渡等による破綻処理方式)
? 営業譲渡の迅速化
 (注)も読み上げさせていただきます。
(注)現行の一般資金援助制度
マル1 救済金融機関が現れた場合のみ可能
→ 資金援助は救済金融機関に対してのみ行われる。破綻した金融機関は存続しないが、その機能は救済金融機関に引き継がれることになる。
マル2 ペイオフコスト内の金銭贈与のみ可能
→ それを上回る損失があった場合、救済金融機関がその損失を負担しない限り、預金が全額保護されることはないため、預金の一部がカットされることになる。その場合、任意の手続で合意される可能性は小さいことから、最終的には司法手続によらざるを得ないと想定される。
○ 救済金融機関に対して資金援助を行う方法は、営業譲渡により救済金融機関に資産・負債を移転させる点において米国のP&A(資産買取・負債承継)方式とほぼ同様の機能を果たしているが、預金者に負担を求めつつ、より迅速に資産・負債を移転させることを可能とするような工夫をすべきではないか。
○ 破綻により預金の払い戻しが停止すると預金者に影響が生ずるのみならず、決済機能を含む金融機関のフランチャイズ・バリューが急激に低下するので、一般資金援助を伴う営業譲渡を如何に迅速に行うかが重要なポイントになるのではないか。
○ 破綻金融機関の資産査定や、引受対象資産の選定や買取価額に関する救済金融機関との交渉等に相当の期間が必要となるため、破綻金融機関の営業譲渡には、やはりある程度の時間がかかることは避けられないのではないか。
イ)司法手続における営業譲渡
○ 金融機関の更生手続を迅速に進めるために、例えば、関係人集会における書面投票による多数決や、更生計画案提出に債権者の一定多数の同意があれば更生計画の決議が成立するなどの手当てをすることができないか。
○ 更生手続における更生計画によって破綻金融機関の営業の全部譲渡を迅速に行うことは、事実上困難であることから、金融機関の迅速な破綻処理を行うためには、更生計画外において営業の一部譲渡を行うことが現実的ではないか。
○ 営業の一部譲渡の一つの類型として、負債サイドについては付保対象となる預金のみを救済金融機関が譲り受けること(米国の付保預金P&Aと同様の破綻処理)を迅速に行うことを検討すべきではないか。そのために、営業の一部譲渡の場合にも資金援助を可能にすべきではないか。
○ 預金保険機構が更生管財人になることはできないか。
ロ)司法手続外における営業譲渡
○ 司法上の倒産手続の外で、破綻金融機関の営業の一部譲渡を行い、その後、破綻金融機関(譲渡されなかった部分)を破産手続で清算するという手法をとることはできないか。
○ 上記の場合、その手続を円滑に進めるために、破綻金融機関の財産及び業務を管理する公的な管理人の制度を設けることができないか。
○ 司法上の倒産手続の外で破綻金融機関の営業の一部譲渡を行った場合、それにより債権者間の平等が害されないようにするために、破綻金融機関(更生会社や破産財団)に対する資金援助を可能とすることが必要ではないか。
○ 司法上の倒産手続の申立前に営業譲渡を円滑に進めるため、債権者からの強制執行を停止する等の措置を手当てする必要があるのではないか。
○ 破綻金融機関の営業譲渡を迅速に行うために、株主総会の特別決議等に代わる裁判所の代替許可制度や、債権者の異議の申述等の手続の特例等の法的な手当てを行う必要があるのではないか。
ハ)その他
○ 営業譲渡の迅速化の観点から、預金保険機構等が事前に関与し、営業譲渡等のための準備を行っておく必要があるのではないか。
○ 監督当局による金融機関の財務内容の適時適確な把握は、営業譲渡等のために重要ではないか。
○ 破綻金融機関の不良資産を管財人が売却する場合、預金保険機構がその資産を買い取る(整理回収機構等に委託)ことができるようにすべきではないか。
? 流動性の問題
(注)現行の一般資金援助制度の下で、預金等の一部がカットされて営業譲渡が行われる場合、司法手続や業務停止命令によって、営業譲渡までの間は、預金の払戻しが停止されることが想定される。
○ 司法手続が開始されると、債権者間の平等を期すため、裁判所の保全処分により預金の払戻しは禁止されるのが通常と考えられるが、更生手続開始前において、決済資金の移動等を円滑に行うために、保険金支払限度額(現行1000万円) までの払戻しを保全処分の弾力的運用で可能とすることはできないか。
また、更生手続開始後においては、裁判所の許可による少額の更生債権の弁済は可能となっているので、その運用である程度の対応ができないか。
○ 上記との関係で、業務停止命令の運用のあり方をどう考えるか。
○ 保険金支払限度額までの払戻しだけでは、企業にとって、手形の不渡りやそれに伴う連鎖倒産の可能性等の決済の問題は解決できない。決済性預金については、投資目的ではなく単に銀行が預かっているにすぎないと見られることから、全額保護対象とすることにより、速やかな払戻しを認めるべきではないか。
○ 預金保険制度は少額預金者保護を目的とする制度であり、決済性預金の問題については別の制度的工夫によるべきではないか。また、決済性預金を全額保護対象とすることについては、負担の増大やモラルハザードの増大、他の預金との明確な線引きが可能か等の問題があるのではないか。
○ 一般資金援助の場合は預金等の買取りが規定されていないが、付保限度を超える預金を破綻金融機関に残して清算するようなときは、清算配当を受ける前に流動性を確保するという観点から、保険金支払の場合と同様に、預金保険機構が預金者から付保限度を超える預金を買い取ることを可能にすべきではないか。
○ 仮に破綻公表から営業譲渡までの間に預金の払戻しを認める場合、破綻金融機関は必要となる資金を、例えば、預金保険機構の貸付や日銀特融でファイナンスする必要が生じるのではないか。
○ 上記との関係で、日銀特融は返済不能の場合には利用できないが、預金の全額保護という特例措置が終了した後の日銀特融のあり方を考える必要があるのではないか。
○ 預金等の債権の一部カットを前提として司法手続が開始されると、破綻金融機関の借り手に対し新規融資を行うのは困難になると想定されるが、何らかの対応が必要になると考えられるか。
4.破綻金融機関の承継先が見つからない場合やシステミックリスクが予想される場合
○ 時限措置として整理回収機構を破綻金融機関の承継先とすることが可能となっているが、特例期間終了後においても、整理回収機構の受皿機能を残すべきではないか。
○ 破綻金融機関の承継先が登場しやすくするために、承継先になれる者の範囲の拡大など要件の緩和や何らかの誘因を与える工夫を行うことはできないか。
○ 地域経済に与える影響や借り手に対する影響等を勘案すると、破綻金融機関の承継先が見つからない場合の対応が必要ではないか。その場合、時限措置となっているブリッジバンク制度のような枠組みを残すべきではないか。
○ 金融機関の破綻によって信用秩序の維持や国民・地域経済の安定に重大な支障が生じるような危機的な場合に、何らかの対応ができるようにしておくべきではないか。
○ 時限措置となっている特別公的管理や資本増強のような枠組みについてどう考えるべきか。
5.付保対象
○ 預金保険の対象か否かを振り分ける際の基本的考え方は何か。
○ 付保対象を拡大するとモラルハザードを招き、保険料負担が増大するとの観点等から、できるだけ限定すべきではないか。
○ ある金融商品の安全性を保証することが利用者から求められているからといって、全て公的な預金保険制度でカバーする必要はないのではないか。
○ 預金保険の目的には少額貯蓄の保護があるので、1000万円の保険限度額の範囲内であれば、国民の基本的な貯蓄手段と考えられるものについては、新たに付保対象にすべきではないか。
○ 金融システム改革等によって、新たに様々な金融商品が登場することが想定されるが、それらの預金保険制度上の取扱いをどう考えるべきか。
○ 付保対象をどのように決めたとしても、それを迂回する商品が出現する可能性は否定できないが、その扱いをどう考えるか。
○ むしろ、付保対象となっている金融商品の範囲を国民に明確にすることを基本として考えるべきではないか。
○ 付保対象の範囲については、預金保険料のあり方と併せて考えるべきではないか。
○ 金融債については、転々流通する有価証券であり名寄せにより一人当たり一定限度まで保護することが技術的に困難であること等から、預金保険の対象になっていないが、例えば、貯蓄手段となっている個人向けの、しかも転々流通しない保護預かりのもので名寄せが可能であれば、付保対象とすることが考えられるか。その場合、今後発行される銀行社債をどう扱うべきか。
○ 外貨預金については、為替リスクが存在する等もともとリスク性の高い商品であること等から、預金保険の対象とされていないが、貯蓄や決済の手段としての利用が拡大している現状を踏まえると、付保対象とすることが考えられるか。
○ 公金預金・特殊法人預金については、預金者が一般大衆でない上に1000万円まで保護しても実質的な意味はないこと等から、預金保険の対象となっていないが、公共目的のために保管されていることを重視すれば、付保対象とすることが考えられるか。
○ 預金利子については、預金者や金融機関経営者のモラルハザードを助長する上に事務手続が煩雑になること等から、預金保険の対象となっていないが、郵便貯金との均衡等を勘案した場合、付保対象とすることが考えられるか。
○ 外国銀行在日支店の預金については、管轄権の問題から破綻処理に当たって迅速かつ適切な対応をとることが困難であること等から、預金保険の対象となっていないが、諸外国の預金保険制度とのイコール・フッティングを考慮すれば、付保対象とすることが考えられるか。
6.保険金支払限度額
○ 現行の保険金支払限度額の水準1000万円について、どのように考えるか。
○ 1人当たりの平均貯蓄残高(平成9年度、 492.3万円)や諸外国の水準(米国は10万ドル、英国・独国は2万ユーロ、仏国は40万フラン)、負担の増加を勘案すると、現行の水準を引き上げる必要はないのではないか。
○保険金支払限度額については、現行の定額方式の他にも、定率方式や、定額と定率の組合せ方式が考えられるのではないか。
7.預金保険料・責任準備金
○ 預金保険制度を純粋な意味での保険と考えれば、期待値でみた受益と見合う保険料を課すことになる一方、保険料の水準を決めるに当たっては負担能力にも配慮する必要があるとも考えられるが、どのように整理するか。
○ 保険金支払は、責任準備金の存在を前提とすべきであり、預金保険制度に対する国民の信頼に応えるためにも、預金保険機構は、将来に備えてある程度の責任準備金を計画的に積み立てていくことが必要になると考えるが、その適正規模について、どのように考えるか。
○ 市場規律の強化を図るため、可変保険料率を導入すべきではないか。
○ 厳密な意味で倒産確率に応じた純粋な可変保険料率を導入することは困難であるが、米国のように固定保険料率を弾力化して、多段階の保険料率を設定することはできないか。
○ 可変保険料率を導入すれば、経営の悪化した金融機関の負担が増加する他、料率が公表されれば市場リスクにさらされることになるので、その導入は慎重に考えるべきではないか。
8.預金者に自己責任を問いうるための環境整備
○ 特例措置が終了する2001年3月末までに、金融機関が業務の再構築・リストラ・自己資本の増強等を進めるとともに、不良債権問題の処理を終了することによって、我が国の金融システムに対する内外の信認を回復することに全力を尽くすことが重要ではないか。
○ 特例措置終了後は預金者にも負担を求めることがありうるが、預金者が的確な情報を基に判断する環境を、市場規律を有効に機能させるためにも整える必要がある。このため、金融機関は預金者に対し、預金保険制度、付保対象商品、財務内容等の点につき、的確な情報提供を行う必要があるのではないか。
○ 監督当局は、早期是正措置等の行政処分の内容を公表すべきではないか。
 以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。それと、どうも御苦労さまでした。
神田座長の方からさらに補足をお願いいたします。
○神田委員 3点ほど補足させていただきたいと思います。
 まず第1点ですが、今お聞きになっておわかりいただけたと思いますが、これはあくまで「論点・意見の中間的な整理」でありまして、したがいまして、非常に抽象度の高い文章から、非常に具体的な項目というか、文章等、ずっと丸で並列に並んでおりまして、若干読みにくい点はあろうかと思いますけれども、これら、ワーキンググループでは非常に抽象度の高い御議論から、非常に細かい具体的な御議論までありましたので、できるだけそれを忠実に並べさせていただいております。
 それから、第2点ですけれども、今回の「預金保険制度に関する論点・意見の中間的な整理」は、言うまでもないことですが、現在のいわゆる特例措置期間、2001年3月までと言われている期間の後の絵をかこうという、その後、それが終わった後の預金保険制度はどうあるべきかということを議論したものであります。
それから、第3点目ですが、これは論点・意見の中に出ていたことですけれども、ワーキンググループではとりわけよく御指摘があった点なので、もう一度言わせていただきますけれども、預金保険制度というのは、この制度だけを取り上げて、独立に論ずることによって、これがいいとか、こういう制度はよくないとか言うのは非常に困難でありまして、他の制度とか仕組みと、代替性とか補完性が非常にあると考えられるわけです。したがいまして、例えば預金受入機関というんでしょうか、銀行に適用がされるこの預金保険制度と考える場合にも、銀行監督のあり方、早期是正措置を含めて、そういったものをどう考えるかによって、預金保険制度に期待される役割というんでしょうか、あるいは預金保険制度が果たすべき役割も、当然ながら、それらと併せて議論しなければ、正当な位置づけはできないというふうに考えられるわけです。
そういう意味では、2001年4月以降の銀行監督のあり方というものも併せて議論して、その中で預金保険制度を位置づけ、その上で預金保険制度の個々の仕組み、内容をどのようにしていったらいいのかという議論をするのが正しい議論のあり方だというふうにワーキンググループでは、そういう御指摘を多数受けましたし、私も個人的にそれに賛成します。
金融システム全体ということで申しますと、これはちょっと話が大きくなりますけれども、預金受入金融機関以外の金融仲介機関も視野に入れなければいけませんし、そうなりますと、保険会社、証券会社等に今ありますセーフティネット、こういうものの、やはり特例措置期間以降のあり方といったような問題等も広く視野に入れた上で、そういう意味では、2001年4月以降の金融システムのあり方全体を見据えた上で、その中でこの預金受入機関のセーフティネットであります預金保険制度がどうあるべきかという形で議論することが非常に大事だと思います。その点、ワーキンググループでもそういう問題意識の中で、しかし、預金保険制度について具体的にどうあるべきかについて議論したということであります。
ちょっと最後長くなって恐縮ですけれども、以上、私から補足させていただきます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 引き続き自由討議に移りたいと思います。
 ただいま御紹介のありました、あるいは御説明のありました「預金保険制度に関する論点・意見の中間的な整理」のたたき台につきまして、御意見、御質問等がございましたら、順序にかかわらず御自由に御発言いただければと思います。どなたからでも結構でございます。どうぞ、どなたからでも、どの点についてでも結構ですが……。
 杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 質問を兼ねてちょっとお伺いしたいんですが、細かくワーキンググループで議論されていて、詳細に理解できない部分もあるんですけど、私はやっぱり基本的には、とにかく、ペイオフコストをやはり最小限にするということで、新しい、つまり2001年以降の制度を考えておくべきじゃないかというふうに思うんですね。そうしますと、預金保険機構の新しい仕組みとしては、一応ペイオフが実行されるとしても、できるだけそのコストを最小限にするというふうになりますと、どういうような方法があるのかなということで、私も具体的にわからないんだけれども、例えばアメリカが今やっているようなペイオフを、制度としてあるけれども、できるだけそれを使わない。現実的に破綻処理をやるというような形のことができないのかどうかというふうに思うんですけれども、多分ワーキンググループでは、いろんな今の司法手続等も含めて議論されたと思うんですが、アメリカのような迅速な処理が行われるには、何が一体障害になるのか。
 あるいは日本の場合にそれができるのか、できないのか。法務省や司法の強力があればできるのか、できないのか。その辺についてはどういう議論がなされたのか、神田先生からでもよろしいし、事務当局でもよろしいのですが、お答えをいただければというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○倉澤部会長 では、神田委員、お願いいたします。
○神田委員 うまくお答えできるかわかりませんが、発言させていただきまして、あと、池尾委員、翁委員もワーキンググループのメンバーでいらっしゃいますので、補足、訂正等をしていただけるかと思いますけれども、今御指摘の点は、ペイオフをする場合と、ペイオフ以外の破綻処理方式ですね。例えば、P&Aと呼ばれている方式がアメリカにありますけれども、をする場合に、日本はいずれについてもアメリカのようにスムーズかどうかわかりませんが、やれるかという問題があると思います。
 ペイオフがアメリカのようにやれるかと。よく言われる言い方で言いますと、アメリカは金曜日に銀行を閉じて、月曜日にはもうオープンしているというか、承継した場合ですけれども、完全にペイオフする場合には、支払いがすぐ行われるということが日本でできるんでしょうかということについては、日本では、いろいろな意味から、なかなかアメリカと同じようにやるのは難しい。
 一つには、どのような場合にペイオフが行われるかにもよりますけれども、日本の場合に預金の口座数が非常に多い。それから、いわゆる名寄せというものを行うことが、何しろ未経験なものですから、これも勘で、推測で考えるしかなくて、どのぐらい日数がかかるかは、いまひとつわからない。
 それから、ワーキンググループで一番言われたことだと私は理解していますけれども、かなりアメリカの場合には、ペイオフなり、資産負債承継をやるのに、事前に準備をするんですね。90日前ですから、45日前とか。ところが、日本は、90日前とか45日前とかに準備をしますと、漏れるというのがどうもあるのではないかという御指摘ありまして、そうしますと、事前の準備ができない。そうだとしますと、アメリカのように2〜3日でとか、週末でというのは非常に難しいのではないかという御指摘ありました。
P&Aにつきましては、それに加えて−−それに加えてと申しますのは、金曜日に閉じて、月曜日に承継先に渡すというようなこととは別に、現在日本には制度がありませんので、これは法律の改正をしていく必要がありますけれども、ワーキンググループでは、P&Aのようなやり方というのは、ぜひ前向きに検討すべきじゃないか。そういうことで言いますと、ペイオフしかないというのでは、それから、今ある制度というのは一般資金援助方式と先ほど説明がありましたけれども、それに加えて、P&Aのような方式を考えていくべきだ。
その際、アメリカと比べて日本で留意すべき点は、司法ですね。裁判所と言ってもいいかと思いますけれども、司法の関与と行政の役割のあり方という。今は、行政一本でやるのか、再生法、健全化法はそういうスタイルでやっていますけれども、これは、ただし、特例措置の話ですけれども。
あるいは破綻処理に入れば司法一本になってしまいまして、もうちょっと司法のメリットと行政のメリットみたいなものを組合せたような何か工夫ができないだろうかというのが、まだこれは抽象的なレベルの話ですけれども、いずれにしても、P&Aの方については、迅速性とか、事前の準備ということに加えて、さらに法律制度を変えて、仕組みを作っていくときに、これもまだ未知数ですけれども、そういう司法手続のメリットと行政手続のメリットを組合せたようなもので、何か具体的に工夫ができないかというような議論がなされたと思います。
○倉澤部会長 今、神田委員から名前が上がりましたけれども、池尾委員あるいは翁委員、何か補足的な御意見ございますか。
では、池尾委員。
○池尾委員 かなり個人的な意見になりますが、論点整理の3ページにもありますように、ペイオフという言葉が、本来の破綻処理の手法としての預金払戻しという意味で使われる場合と、 1,000万円を超えた部分についても保護を与えているという意味の特例措置の廃止を意味するという場合と、二重に使われているところがありまして、そこが議論を混乱させているところが非常に強いと思うんですね。
 私個人の意見になりますけれども、特例措置は、ぜひ2001年4月に廃止すべきだというふうに思っておりますが、それに対しまして、破綻処理手法としてのペイオフというのは、まず、日本の状況においてはやるべきこととは私個人は考えておりませんで、日本の金融機関は、日本で小さいと言われる金融機関でも国際的に見てかなり規模が大きいということで、先ほど神田先生おっしゃいましたように預金口座数が非常に多いということが一つ。
 それから、もう一つの理由は、参入規制が非常に厳しい。免許の付与がかなり厳格に行われてきているということがありますので、ここは最初に神田先生が補足されました論点の3番目とも絡むわけですけれども、要するに参入規制がどうなるかによってそこは変わってくることがあるわけで、今後、より財務条件等さえ満たせば、銀行免許がすぐ下りるというふうになれば、また話が違ってくるところがあると思うんですが、これまでのところは、非常に厳格な形で免許を与えられてきているということを考えますと、破綻処理方法という意味での預金払戻しは、ほとんど現実的な選択肢ではないんじゃないかというのが私個人の意見でありまして、しかしながら、繰り返して恐縮ですが、特例措置を廃止しなければいけない。そうしますと、ペイオフに代わる、より現実的な破綻処理の方式を制度的に十分に整備して準備する必要がある。その有力候補はP&Aであろうというふうな理解ではないかと個人的には考えております。
○倉澤部会長 翁委員、ございますか。どうぞ。
○翁委員 私も個人的には、破綻処理方法の主軸はP&Aという形でやっていくのが望ましいのではないかというように思っておりまして、また、仮にペイオフということを考えましても、P&Aでもペイオフでも、いずれにせよ、やっぱり重要なポイントは二つあって、早期処理ということで、これは先回の池尾先生の御発言にもありましたけれども、早期是正措置との関係になりますが、早期処理というのが非常に重要だということと、あと、もう一つは、やはり迅速性をとにかく確保するということが極めて重要だろうと思います。
 仮にペイオフでやっても、破産配当が8割というようなことを考えましたら、5,000 万円の大口預金者でも 4,000万円以上が、実は返ってくるというようなイメージになりますし、ペイオフというのは確かに金融機能の観点からは、明らかにP&Aよりもいろいろ問題が多いので、それはP&Aを最初に優先的に検討すべきだと思っておりますけれども、やはり迅速性と早期処理ということが大きなポイントではないかと思っております。
先ほど神田先生の御説明でほとんど尽きていると思うんですが、実務面の迅速性の工夫の一つとして、負債サイドの名寄せがポイントだけではなくて、破綻処理コストがどの程度になるのかということをアメリカなどでは、当局がデータをかなり蓄積しておりますので、それぞれ個々の破綻の例に照らして、その不良債権をざっと見て、大体ロスがどの程度なのかということを推計いたしまして、その点でコストテストとかがかなり機敏にできるような工夫も図られているという点も一つのポイントかなというように思っております。
○倉澤部会長 杉田委員、よろしゅうございますか。
○杉田委員 はい、全くそのとおりです。
○倉澤部会長 ほかの方で。
深尾委員、どうぞ。
○深尾委員 今、池尾委員から話があった特例措置はやめるべきだということと、それから、ペイオフはめったに使うべきではないということには全く同感なんですけれども、同時に、ペイオフコストを上回る処理コストが要るような破綻が出る可能性というのはもちろんゼロではないわけでして、その場合に、使えるペイオフの仕組みがないと、またフォーべイランスといいますか、処理の先延ばしが起きてしまうリスクが常にあると思います。
そういう意味では、最後の手段ではありますけれども、ペイオフであっても、ちゃんと使えるというペイオフを整備して、しかも十分な時間的余裕を持って整備して、国民に知らしめる。しかし、これはめったに使うものではありませんと、普通は早期是正措置などを使っているので、破産配当から考えれば、ペイオフコストよりもP&Aなり、ほかの処理方法が安いという状態にするんですが、ただ、そうは言っても、粉飾なんか起こっていますと、ペイオフをやらざるを得ない場合があり得て、そうしますと、特例措置をやめた後で、ペイオフコストを上回るような破綻のケースが出てきた場合に、フォーべイランスをしなくてもいいようにペイオフができるような体制を整える。
そういう意味で、預金保険制度そのものといいますか、ペイオフのやり方そのものについても、バックストップの制度として、やはりきちっと議論しておく必要があるだろうと思います。
その意味では、現在の預金保険制度のままでペイオフを始めることは非常にリスクが高いというふうに感じておりまして、預金保険のペイオフのやり方、あるいは名寄せの有無、あるいはどの預金が付保されていて、どの預金が付保されていないかという点について、細かく制度的な設計を考える必要があるのではないかというふうに考えております。
 この観点から、今日、メインテーブルの最後の短いメモとして、「ペイオフに向けて」ということで、深尾委員メモというのがお配りしてございますけれども、これ自身は細かく説明するつもりはありませんが、今後、ワーキンググループで議論していかれる中で、参考にしていただければと思います。
一番のポイントは、多分、いかに迅速に払うか。これは翁委員からもありましたが、いかに迅速に払えるかというのがポイントで、アメリカでもペイオフが場合によっては使われるという理由は、実際上、週末に閉じて、すぐできるというところがポイントで、これができている国はまだアメリカしかないようでして、この点はまだ、例えばイギリスあたりでも、そこまでの体制は整ってないかに聞いております。
しかし、ペイオフコストを上回る資金援助をしないということを宣言するからには、それがクレディブルなためには、ペイオフができるような状態。そうしますと、2001年3月までに例えば名寄せのコンピュータシステム対応ができるのかとか、1日とは言いませんが、数日にうちにほかの金融機関に移して、すぐ払える態勢にできるのかどうか。もしそれができないのであれば、例えば少し時間を取って、名寄せをやめてでも、1口座当たりという格好で保護した上で、将来名寄せをまた入れるとか、このあたりについては、細かい検討をしていただければというふうに思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございましょうか。
 このペーパーでは、破綻をした場合の裁判上の手続と裁判外の手続について、従来の法制度から見ると、あるいは神田委員御指摘の破綻まで行政で、破綻からどすんと今度裁判にどんでん返しになるようなものについて、裁判制度の受け皿の方をちょっと中間的なものにするというお考えの一つかとも思いますけれども、今までの司法による倒産処理という枠組みに対して、かなり問題点が提起されているわけですけれども、江頭委員とか山下委員、あるいは田島委員、何かお考えなり御意見ございましょうか。
 私今ちょっと思いつきで何か言っただけで、ほかの点でも結構でございます。自由にどうぞ。
 何かございますか、江頭委員。お願いいたします。
○江頭委員 問題があることは間違いないと思いますけれども、これはやっぱり一種の倒産手続を工夫するということなんでしょうね。ここに問題点としても上がっておりますけれども、それは何らかの司法的なことがない限り、強制執行等止められないわけでありますから、何らかの意味で司法制度だと言わざるを得ないんじゃないかと思っておりますので、とにかく難しい問題であることは事実だと思います。
○倉澤部会長 私ちょっと口走って、裁判と行政のミックスの制度と言ったのは実質論で、これは倒産法となれば司法制度であるということには違いないわけですけれども、論点・意見ということで様々な問題点が上がっておりますけれども、論点として何か欠けている点とか、あるいはこういうのは論点としてもちょっと問題にならないのではないかといったようなことでもあればと思ってお聞きしたわけですけど。どうも大変失礼しました。
 山下委員、どうぞ。
○山下委員 単に感想でございますが、この種の破綻処理手続を作るときに倉澤先生、前に保険の支払保証制度の検討会を主催していただきましたときに、やはり一番何が問題かというと、債権者平等というのがなかなか崩せないという、そこを若干何か政策的に優劣をつけるというようなことがあると、いろいろこういう破綻処理も機動的にできる面があると思うんですが、こういう平等の原則というのはあくまでも大前提で、余り動かさないというふうな前提で御審議されているんでしょうか。アメリカあたりでは、多少優先権的な制度があるんじゃないかと思っておりましたけれども。
○倉澤部会長 神田委員。
○神田委員 今のところ、債権者平等を動かすという議論は余り出ておりません。
 ただ、2点ありまして、一つは、今御指摘のようにアメリカは預金債権を先取り特権とでも呼ぶんでしょうか、一般的な優先権を付与するという立法が93年だったと思いますけれども、できていまして、それで、FDICあたりは何十年も前からそういう議論をしてきたようなんですけれども、そういうことも含めて考え得るのかどうかという御意見の指摘だけは出ておりました。ただ、検討を深くしているわけでありません。
 それから、もう一点は、これは実際の日本の倒産手続では、どういうふうに言ったらいいんでしょうか、要するに小口の債権は先に全部払うという実務があって、ある意味で非常に公平と言ってしまえばそれまでなんですけれども、裁判所が裁量をもってそこで公平を図った処理が行われていると、そういう運用の実態がある。これは一般的に言われていることですけれども。
 とにかく、まだ銀行が司法的な意味での倒産手続に入った例はゼロなものですから、全くどうなのかわからないんですけれども、今までの証券会社などの例で言いますと、その辺はやはり裁判所の裁量で預り資産を返していってスムーズにいったというケースは紹介されていまして、そういう中で司法手続の債権者平等を維持しながらも、ある程度はそういう裁量による公平というか、エクイティというか、そういうもので処理することもできるかもしれないという御指摘ありました。
 ただ、おっしゃるように債権者平等原則というものを大きく変えましょうというような方向での議論はほとんどしてないという状況で、多分今後に委ねられていることだと思います。
○倉澤部会長 どうぞ、杉田委員。
○杉田委員 もう一つ、これもちょっとわからないので、質問を兼ねてお伺いしたいんですが、これは神田先生にワーキンググループの中での13ページの検討ポイントの4.の破綻金融機関の承継先が見つからない場合とか、システミックリスクが予想される場合の幾つかの論点ということで幾つかあるんですが、なかなかインプリケーションに富んだ表現なのでよくわからない点もあるんですが、例えば、そういうペイオフ制度を実施、あるいは新しい破産処理の仕組みを作ったとしても、なおかつシステミックなリスクが生じることはあり得る。そういう場合に一体どういうことが考えられるのかということがかなり議論されたんでございますか。
 あるいはもう一つ、アメリカなんかではそういうときにはどういうような最後の手段を持っているのか、その点を含めてちょっと先生に御解説をいただきたいんです。
○倉澤部会長 どうぞ、神田先生。
○神田委員 13ページは大きく言うと二つの話が書いてありまして、一つは、今御指摘のような、制度はきちんと作ったけれども、その中でシステミックリスクが出てくるような場合に、いわば原則の制度の例外みたいなものを置いておく必要があるのではないかという点。
 それから、もう一点は、承継承継ということを考えますので、P&A方式のように、承継先がここの言葉で言うと「見つからない場合や」と書いてありますけれども、そういうところの手当てを今何もありませんで、特例措置期間の間でも、新聞紙上等を見ますと、二次ロス問題などと呼んでいるんですけれども、そういう問題があるんですが、2001年4月以降に、特に誰が承継先になれるかという問題。
 それから、今申しましたような二次ロスだけの問題ではないと思いますけれども、そういった制度的手当てが要るんじゃないかということと二つ議論していまして、そのうち、前者について、もうちょっと敷衍させていただきますと、前者につきましては、どういう場合にシステミックリスクが顕在化するか議論していませんけど、万が一システミックリスクが顕在化した場合の手当てとして、どういう制度的仕組みがいいのかというのは議論しておりまして、お手元の資料の7−2の一番最後の17ページですけれども、アメリカの systemic risk exceptionというのがございます。
これは1991年の法律で入ったんだと思いますけれども、それまではFDICがいわば裁量でシステミックリスクが顕在化すると思った場合には、いろんなことをやっていたという仕組みを、その裁量権をいわば制約するような形で91年にこういう形のものが入ったわけです。
これは手続をもちろん厳格にするということもありますけれども、どういう場合に例外的な、いわば有事的な措置をとるかということを意思決定を含めて、アカウンタビリティというのですか、透明性を高めるというのもこの法律の狙いでして、これができて以来、私が知る限り、この規定が発動されたという例はないと思いますけれども、日本においても例外的に何かできるような場合、何が起きるかわかりませんので、それは多分必要だろう。
ただ、問題は、そのときのあり方として、そういう透明性とアカウンタビリティというのでしょうか、説明責任などと言いますけれども、そういうものを世の中に対して果たし得るような手続なり仕組みを設けるのがいいのではないかというようなことだったと思います。これは翁さんが詳しいことで、そんな感じでよろしゅうございますか。
○木下金融監督庁企画課長 よろしいでしょうか。
○倉澤部会長 どうぞ。
○木下金融監督庁企画課長 アメリカとの対比で、今の点に関連しまして、受け皿の問題がございます。
バランスある御議論をいただくために、ちょっと御参考までに申し上げますと、日本の場合、受け皿が出てくるというのは難しいでしょう。なぜだろうかということで、私ども実務を担当している人間が考えておりますと、一つは、アメリカは州際規制の残存が非常にありますので、ネットワークが広がるということによる誘因があるという点が1番あります。日本の場合はかねてよりそうしたものはございませんから、そこが違う。
 それから、二つ目は、アメリカの場合、銀行取引が割とプロジェクト・ファイナンス・ベースですので、日本の場合、長い継続的取引ですから、二次ロス問題がどうしても心配になる。
 それから、三つ目として、よくROEKと言われますけれども、日本の金融機関は収益のレベルが、いろいろ御努力なさっているんですけれども、なかなか儲かる商売ではない。
 したがいまして、この数年間、先ほどちょっと池尾先生の方から御指摘あった点も修正させていただきますと、数年間どちらかというと、私ども新規参入をお待ちしておるんですが、儲からないし、設備投資が大変なので、参入もいただけない。こんな状態でございまして、以上3点から言って、受け皿が非常に難しいという問題がございます。
○倉澤部会長 堀内委員、どうぞ。
○堀内委員 今の木下さんの点については、参入がなくてもいいんですよね。可能性があればいい。
 17ページですね、ちょっと意外な論点整理があったものですから、これについて、皆さんどう考えるかということなんですが、「可変保険料率を導入すれば、経営の悪化した金融機関の負担が増加する他、料率が公表されれば市場リスクにさらされることになるので、その導入は慎重に考えるべきではないか。」という、ここは私にこの議論は何か納得がいかないというような感じがするんですよね。
つまり、こういう状況になるんだから、銀行は経営者や株主は注意すべきなんだというので、こういうインセンティブ効果が働くんだと思うんですね。だから、こういうものをもし仮に非常に強調するとなると、やや大げさに言えば、かなり旧態依然たる仕組みに戻ることになるんじゃないかという気がするわけで、これは制度の仕組みに関する枠組みとしては、理解の仕方としては随分異質のものが入っているなという気がしました。それはあるいは老婆心なのかもしれませんが、付け加えさせていただき、コメントさせていただきたいと思います。
○倉澤部会長 可変保険料率導入の可否論の根拠としては適切ではないということ。
○堀内委員 非常に広く考えてみれば、早期是正措置なんかで規制当局が銀行の経営に対していろいろ介入して、注文をつけるというのは、広い意味では可変保険料率のようなものであると考えてもいいわけですよね。そういうことは既に仕組まれていて、できるだけそういうことにならないように銀行経営者は注意をするというのが我々にとって非常に重要なポイントなので、そういうことになるんだということは、我々がきちんと理解すべきなんじゃないかという気がするんですけれども。ちょっとわかりにくいような言い方をしました。
○倉澤部会長 で、堀内委員としては、可変保険料率をそういう意味で導入すべきだという御意見なんですか。この論点として、こういう書きぶりではちょっとおかしいんじゃないかということにとどまるわけではないわけですね。
○堀内委員 そうですね。つまり、そういうインセンティブ・システムみたいなものを考えれば、そういう可変保険料率のシステムというのはある程度有効でしょう。あるいは早期是正措置なんかもある意味ではそういうインプリケーションを持っていると思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ほかに。どうか、オブザーバーの方も御意見ございましたら、御自由にどうぞ。
貝塚会長、どうぞ。
○貝塚会長 私、一般的なコメントみたいなことで。
預金保険制度というのは極めてアメリカ的な制度だというのは、元来はヨーロッパ諸国では実質的に発動されたことは極めて少ない。その場合、日本との比較において、制度論として言えば、日本の銀行というのは、アメリカの商業銀行とは、州際規制の問題もありますが、要するに借り手に対するコミットの程度とか、そういうのはやっぱりかなり違うんだと思うんですね。
そういう事態の下でこういうことが起きたときに、どういう処理の仕方があるのかというのは、多少アメリカとは違った面があって、銀行組織がそういうふうに非常にアメリカ的になれば、それはそれでいいんですが、やっぱり違う点があって、その辺のところを多少詰めておいた方が制度としては、その辺のところの視点は最小限どこかでちょっと触れておいた方が、今後の議論するときに、現実的な判断としては重要になるんじゃないか。これは私の全く個人的な意見ですが、多少違った点があって、どういうところが違うのかというのを詰めておいた方が、実際問題としては、割と重要なポイントになるんじゃないかという気がするということだけ申し上げて、それは全く個人的な意見です。
○倉澤部会長 いろんなところに影響がありそうなのは、例えば、倒産の場合における司法と行政の権限のあり方みたいなものも、かなり日本とアメリカの州と違って、あるエクセプショな割には、かなりコミッショナー的な権限を振るう機関みたいなものを州によっては設定しているところもあるわけですけれども、日本の場合には、神田委員のお話のように、裁判官の裁量といったような司法制度の枠内の問題としてしか考えられないという面はある。しかし、裁判官の裁量に期待していたのではアカウンタビリティがなかなかわからないということが問題の難しさかもしれませんけれども。
どうぞ、池尾委員、お願いいたします。
○池尾委員 前回も申し上げましたし、それから、今日も神田先生に補足していただきましたので、何度も同じことを言ってくどくて恐縮なんですが、やはり全体としての規制システムの中に預金保険制度をどう位置づけるかという論点が、今御指摘にありましたように一番最初の基本論点としてあると思うんですね。
だから、すごく平たい言い方しますと、例えば預金保険制度を軸に今後の規制を考えていくというスタンスをとるのか。軸はそこではなくて、別のところに軸を据えて、それを補完する一つの制度装置として預金保険というのも考えておくというふうなスタンスをとるかということでは、随分違う話になるわけでありまして、それで、今御指摘になりましたように、日本の状況を考えた場合に、今後、預金保険制度を軸に規制システムを考えていくというのは必ずしも適切なアプローチではない可能性も高いわけでありまして、そうしますと、では、何を軸に考えていくんだということをどこかできちっと議論しておかないと、問題がどうしても根本のところがしっかりしてないというふうになってしまうおそれがあると若干懸念しております。
○倉澤部会長 ほかにはよろしゅうございますか。
神田座長からの御説明の中にもありましたし、今の池尾委員にもありましたように、日本では銀行が倒産しない神話みたいなところで、倒産について預金保険制度を作って、破綻処理における預金者保護制度イコール預金保険制度といったような形で、その中のワン・オブ・ゼムという扱いじゃなくて生まれてきたということがあるわけですが、この検討になりますと、ほかの制度の中での位置づけといったようなことが当然問題になろうかと思います。
それでは、次の議題に進んでよろしゅうございましょうか。よろしゅうございますか。
ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、「個人信用情報保護・利用の在り方に関する合同作業部会」に関する議論の方に移らせていただきます。
まず、事務局より資料の性格等について説明していただきます。津曲室長、お願いいたします。
○津曲調査室長 それでは、お手元にございます「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会 論点・意見の中間的な整理(案)」の性格及び公表主体について御説明させていただきます。
 まず公表主体でございますが、本作業部会は、御案内のとおり、金融審議会のほか、通産省の産業構造審議会と割賦販売審議会との合同作業部会という位置づけになっております。したがいまして、本来、資料の公表は3審議会の合同で行われるべきものでありますが、通産省関連の審議会の開催時期との関係も考慮いたしまして、あえて作業部会の名前での公表とさせていただきたいと考えております。
 また、この「論点・意見の中間的な整理」は、合同作業部会における現時点での審議状況を中立的に整理・紹介するという位置づけのものでございまして、最終的には本部会での意見のほか、通産省側の審議会の部会での指摘も踏まえて、後日、修正公表されるべきものでございます。したがいまして、本日は部会終了後回収させていただきたいと思っております。こうした事情から、傍聴席の皆様にはお配りしてございませんことを御了承いただきたいと思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。私からも御了承いただきたいと思います。
 それでは、内容の説明に移らせていただきます。
 作業部会の座長をお引受けいただいております中央大学法学部教授の堀部先生から御説明をお願いしたいと思います。
 それでは、堀部先生、よろしくお願いいたします。
○堀部委員 ただいま御紹介のありました「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」の座長を仰せつかっております中央大学の堀部です。
 金融審議会の第二部会におきまして、5月7日に、それまでの検討の状況につきまして報告をさせていただきまして、御意見をいただきました。それを踏まえまして、合同作業部会といたしましては、5月14日に第5回の会議、それから6月14日に第6回の会議を開きまして、お手元にお配りしておりますような「論点・意見の中間的な整理(案)」をまとめました。
 これをもとに今日御説明申し上げまして、御意見を承りまして、さらにまとめに入るということになります。
 今、津曲室長からも御説明ありましたように、通産省の審議会との関係もあります。またそちらでどういう意見が出てくるかということもあろうかと思いますが、そういう三つの審議会にわたっているということもありまして、公表は作業部会で行うと、こういうことにさせていただきたいと思います。
 この「中間的な整理(案)」を御覧いただきますと大きく四つに分けてあります。1ページ目に、上に「1.本作業部会における検討の位置付け」。それから、2ページの下の方に「2.本作業部会での論点」。3ページの上の方に「3.これまでの検討状況」。飛んでいただきまして、13ページの中ほどに「4.今後の検討課題」となっております。この四つのパートからなっております。それぞれにつきまして御説明申し上げたいと思います。
 まず、1ページ目にあります「本作業部会における検討の位置付け」でありますが、この議論は、昨年の6月に大蔵省銀行局長及び通商産業省商務流通審議官合同の私的懇談会として報告をまとめたものがあります。それを懇談会報告というふうに呼んだりしておりますが、その懇談会報告書を踏まえまして、さらに、先ほど来申し上げておりますような三つの審議会の作業部会として検討を行ってまいりました。
 その作業部会設置の経緯ですが、2ページにございますように、懇談会報告書を受けまして具体的な措置に向けて掘り下げた議論を行うということで、消費者、それからサービスを提供する金融機関、貸金業者、クレジット業者等の与信業者、それから、信用情報機関等の実態を十分踏まえることが重要であるということから、本年1月に学識経験者のほか弁護士、具体的にはここにいらっしゃいます田島委員ですが、クレジット業者、消費者団体関係者とかマスコミ関係者の委員に加えまして、銀行、貸金業者、信販業者、クレジット業者等実務者、そういう方をまず専門委員という形でお願いいたしまして、「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」ということで、三つの審議会の下に設置されたものでありまして、法的整備を含めた具体的な制度整備の在り方について検討を行ってまいりました。
 委員、専門委員の名簿は後ろに別添2として付けてございます。15ページです。
次に、「本作業部会での論点」でありますけれども、本作業部会では、検討の開始に当たりまして懇談会報告書を手がかりにしまして、消費者、実務者から、基本的な論点につきまして実態に即した意見を聴取することといたしましたが、施策の具体化に向けて、より掘り下げた議論が必要な論点を、まず以下のとおり整理しました。
保護の措置のためには、まず法制化につきましては個人信用情報を他の個人情報の中でどう位置づけるかを議論する必要があります。その際、法的な保護・規制の対象となります個人信用情報の範囲を定義づけることが必要でありまして、保護の実効性を担保するための罰則の在り方やその適用範囲についても併せて検討する必要があるということにいたしました。
3ページを御覧いただきたいんですが、一方、この作業部会、保護と利用両方のバランスをどうとるかということになりますので、利用のための措置につきましては、多重債務問題を軽減する方策としまして、現在、信用情報機関をまたぐ交流が行われていないポジティブ情報。現在ネガティブ情報については三つの情報機関の間では交流が行われておりますが、そういうポジティブ情報を交流することの当否を検討するとともに、与信業者が適正な与信を実施していく上で、消費者に対して与信業者への正確な情報提供を義務づけることについても検討する必要があるということで、これを意見聴取の主なポイントといたしまして別添3、16ページに付けてあります。
次に、大きな三つ目としまして、「これまでの検討状況」でありますが、「?法制化について」から始まりまして、4ページの下の方に?で「法的な保護・規制の対象 となる個人信用情報の範囲について」、それから、少し飛びまして7ページの上で 「?罰則の在り方とその適用範囲について」、さらに10ページの中ほどで?ですが、「ポジティブ情報の交流について」、それから、12ページに上の方に「?消費者に対する与信業者への正確な情報提供の義務づけについて」、こういうふうに五つの項目に分けましてまとめてみております。
それぞれについて簡単に申し上げますと、まず?の「法制化について」でありますが、ここでは個人情報保護を議論の中でどう位置づけるか。
 この点につきまして、もし後ほど御質問がありましたら、特にこの作業部会で検討を重ねているのとほぼ同じ時期に国会におきまして住民基本台帳法の改正と絡みまして個人情報保護法の必要性が議論になっております。それとの関係などもございますが、それとは別に、この作業部会におきまして個人信用情報保護の法制化を検討するに当たりまして、他の個人情報保護の在り方の中でどう位置づけるのかというようなことが問題となるということで議論をいたしました。懇談会報告書では、個人信用情報といいますのは、例えば与信時に半ば強制的に提供を求められる等、一般の個人情報とは区別されるということで、個人信用情報を対象にして保護措置を講ずるべきではないかと、こういうふうに議論をしてまいりました。
本作業部会では、懇談会報告書の基本認識を踏まえまして、個人信用情報保護の法制化を視野に置いた議論を進めていく必要がある、こういう意見が出されましたが、一方で、民間部門の個人情報全般を規制対象とする個人情報一般を保護する法律を立案することが先決であるとの意見もありました。
法制化を検討する際の留意点といたしまして、幾つか挙げております。
一つは、罰則や行政的な規制を極力拡大しないこととしまして、民事的なところで広く規制をかけていくべきであるとか、二つ目には、現状固定的になりやすい法規制への依存を必要最小限とした上で、与信業者に個人信用情報保護を手厚くするインセンティブが生じるような制度的フレームワークを構築すべきであるとか、三つ目には、保護のための法的措置は過度のものとならないようにすべきであるとか、四つ目としまして、法制化に当たっては、個人信用情報の収集、管理、提供及び利用等の取扱いに関する実務の現状を考慮すべきであるとか、五つ目としまして、刑罰により保護されるべき個人信用情報はかなり絞り込んでよいが、刑罰により保護されるもののみを規制の対象とするのでは範囲が狭過ぎるといったような意見が出されております。
次に、「?法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲について」であります
対象範囲につきましては、個人信用情報の保護に当たりましては、まず個人信用情報の範囲を明確にすることが必要であると考えられるのではないかとの視点を踏まえて議論を行いました。
懇談会報告書では、保護の対象となる個人信用情報を「与信との関連で収集・保有・利用される情報で返済能力・支払能力を判断するための情報」とすることが考えられるとされています。これは5ページのところに図を掲げておりますけれども、御覧いただければと思います。
 本作業部会におきましては、法的な保護・規制の対象となります個人信用情報の範囲が、法的な整備を図っていく上での基本となる重要事項でありますので、意見聴取を精力的に行いまして、議論を重ねたところでありますが、本論点については、幾つかの異なる考え方が示されております。
 それは、一つは、信用情報機関への登録情報等に限定すべきとの意見であります。それに対しまして、与信判断に利用する情報以外も対象とすべきとの意見であります。現段階では、このように範囲もどちらにすべきだという形ではまとめておりません。
 もう一つ出てまいりますのは、マニュアル情報の取扱いであります。大部分はコンピュータ化されておりますが、与信判断に当たりまして、手作業処理のものもありますので、そういうものの扱いをどうするのかということであります。
 法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲を定める際の切り口としまして、マニュアル情報の扱いをどうするかということでありまして、懇談会報告書では、マニュアル情報についても、与信業者の過重な負担とならないよう配慮しつつ保護の対象とすべきとしておりますが、本作業部会では、実務的な観点からマニュアル情報を法的保護の対象外とすべきというような意見があるのに対しまして、マニュアル情報も法的保護の対象とすべきと、また別の意見も出されております。
 次に、「罰則の在り方とその範囲について」でありますが、罰則の在り方につきましては、個人信用情報の漏洩事件や外部者からの不正取得が発生していることを考えますと、罰則によって保護の実効性を担保していくことも考えられるのでないかとの視点を踏まえて議論を行いました。
 懇談会報告書では、刑罰の適用により個人信用情報の漏洩、不正取得等の抑止を図ることが必要であるが、現状では個人情報一般について、その侵害行為が刑罰の対象とされていないこととのバランスや補充性の原則を考慮する必要があり、刑罰適用による保護の対象も、個人の機微に深く関わるハイリーセンシティブ情報や信用判断に直結する情報等重要な情報に限定すべきであるとも考えられるとされております。
 本作業部会におきましては、悪意を持った者による情報漏洩、不正入手等に対しましては社会的影響から見ても自主ルールでは不十分であることから、情報を保有する主体からの漏洩や不正利用のほか、外部からの不正アクセスには刑罰で対応すべきであるというふうに考えられております。ただし、その場合でも、他の個人情報に先駆けまして個人信用情報保護のための刑罰を新設するのであれば、罰則の構成要件については厳密にすべきでありまして、罰則適用の必要性・公平性、明確な適用条件、量刑等について慎重かつ十分な検討が必要であるという意見が出されております。
 次に、行為規制の対象者につきましては、懇談会報告書では、業務として個人信用情報を組織的に取り扱うものを一般的に取り込むべきであるとの考え方が大勢であるとされまして、具体的には、信用情報機関、銀行・保険会社等の金融機関、貸金業者、クレジットカード会社、割賦販売業者等、業として与信を行う与信業者、それと、これに関わる与信業者に準ずるものとして保証会社、債権回収代行組合等が挙げられております。また、漏洩の防止の観点から、信用情報機関等から情報提供を受ける業務委託先、その他債権譲渡先、グループ企業等に対しまして、また、情報の正確性の確保を図る観点から、信用情報機関に情報提供を行う、不払い情報を提供する電話会社、通信販売業者等に対しても一定の行為規制の対象にする必要があろうとされています。
 本作業部会では、行為規制の対象者として具体的な業態名を挙げるまで議論は及んでおりません。しかしながら、業務として個人信用情報を組織的に取り扱う者全てとすべきでありまして、電算処理等の業務委託先についても含めるべきであるとの意見が出されております。
 次は、罰則の対象となる情報・行為等でありますが、罰則を適用していくに当たりまして、その対象となる情報・行為について明確にしておく必要があるという視点から議論を行っております。これはかなり細部にわたる議論になりますので、そういうことで議論をしているという紹介に止めさせていただきます。
 次に、「両罰規定について」でありますが、情報保有者による不正行為を抑止するためには、両罰規定が必要な場合があると考えられるのではないかとの視点を踏まえて議論を行いました。
 本作業部会では、両罰規定を「組織的な犯罪」や「重大な管理・監督を怠った場合」等に限定すべきであるとの意見がありましたが、一方で、「組織的な犯罪」や「重大な管理・監督を怠った場合」等にのみ企業、組織が両罰規定により刑事責任を負うというという考え方は狭過ぎるのではないかというような意見も出されております。
 このような法的規制と自主ルールとの関係ということで、重層的に対応するということでこれまで議論をしているところであります。
 次に、利用のための措置につきましても検討を行ってきております。それはポジティブ情報の交流についてでありまして、今まではネガティブ情報で、三つの情報機関の間でクレジット・インフォメーション・ネットワーク、CRINという交流システムで行っておりますが、ポジティブ情報についても、利用者本人から正確な情報を入手して、それを交流することも考えられるのではないかというような議論をしているところであります。
 それとの関係でいきますと、これは?になりますが、消費者に対しまして、与信業者への正確な情報提供を義務づけるべきではないか。つまり、与信判断を受けるといいましょうか、お金を借りたいという人が虚偽の情報を提供することを防止するために正確な情報提供の義務づけを行うべきでないか。ここでも以前その問題をお出ししましたが、この点について議論をしているところであります。
 最後に、「今後の検討課題」でありますけれども、本作業部会では、これまで懇談会報告書を手がかりに、消費者や実務家から基本的な論点について実態に即した意見を聴取しまして、それをもとに議論を進めてきたところでありますが、十分に意見が集約されていない部分が残されております。
 今後は、こうした論点のほか、これまで十分議論が及んでいない点につきまして検討を深めていく必要があると考えております。
 それらは、まず第1に、法的措置の対象となるのが適当な個人信用情報の範囲と自主ルールの対象とするのが適当な範囲の整理、それから、第2に、誤った情報、誤情報を訂正する権利等情報主体の権利、第3に、情報漏洩等の早期発見のための施策、第4に、民事訴訟手続による救済の在り方、第5に、行政機関の監督の在り方、第6に、信用情報機関への加盟与信業者による個人信用情報の登録・照会の在り方、第7に、信用情報機関の定義や在り方であります。
 なお、今後議論すべき論点につきましては、「今後の論点」として別添4にまとめてあります。
 以上が、作業部会においてまとめました「論点・意見の中間的な整理(案)」であります。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、今御報告のありました「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」の「論点・意見の中間的な整理(案)」について、御意見、御質問がございましたら、御自由に御討議いただければと存じます。
 この作業部会のメンバーでもあられます田島委員、山下委員、何か特別お話しになることございましょうか。
 では、田島委員、どうかお願いいたします。
○田島委員 今座長の方から懇切に御説明いただきましたので、特別付け加えなければならないことはないわけでございますけれども、初めに出ました一般的な個人情報の保護と、この我々が討議しております個人信用情報の保護の関係ということで申しますと、もちろん一般的な個人情報の保護の法整備も早急に行われるべきであるとは考えますけれども、やはりそれが迅速に対応されます場合でも、この個人信用情報といいますのは、個人情報の中でも特段に個人にとって重要な秘匿性の高い情報だというふうに考えますし、また、我々の検討対象の中には保護というもののみではなく、利用という観点も加えて検討してまいりましたので、この個人信用情報保護法というのは、一般の個人情報保護法とは別に、特別法として制定されるべきではないかという考えを持っております。
 それから、いろいろ討議をしてまいりまして、なかなかすっきりと意見がまとまりません最大の原因が何かということを考えますと、これは個人情報を提供する側の消費者の立場に立てば、自分の情報がなるべく表に出ないように十分な保護を広範にしてほしいという思いがある一方、その保護を義務づけられる業者側の立場に立てば、保護のためにコストと負担が大きくなるということでは、また困ったことが生じるので、自主ルールの枠内で法律で義務づけられる分野はなるべく狭めて、自主ルールの枠内できちんと対応するようにさせてほしいというような御要望があり、その両方の間で、どこに落とし所を見つければ一番的確に個人情報保護をできて、それで、法律による義務づけも少なくできるかというところの見極めがつかないところにあるのかなというふうに思いますので、今後そこら辺も十分に検討して、まとめる方向に努力していきたいと思っています。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 確かに個人情報の問題で権威者である堀部先生の前で失礼ですが、今までは割と保護ばかりを問題にしてきたのが、ここでは個人信用情報の保護と利用ということに問題点が拡大しているわけで、この点について、例えばオブザーバーの側の方で、保護と利用との関係といったことについてお考え等ございましょうか。
 私から非常に抽象的な質問で恐縮でございますけれども、この場合、保護と利用というのは、そもそも秤の反対側にあるもので、その調整の問題なのか、あるいは健全な個人金融システムというところでは、個人信用情報の保護と利用というものは必ずしもアンビバレントなものではないという性格のものなのでございましょうか。
 といいますのが、今日ペーパーを伺いますと、例えば、逆に消費者の方に正確な情報は出す義務というものが話題になっているようでございますので、ちょっと抽象的な質問で恐縮ですけれども。
○堀部委員 保護・利用といいますのは、多くの点でそういう議論が行われていまして、例えば、1980年のOECD経済協力開発機構のプライバシー・ガイドラインの場合なども、一方では個人データの国際流通が盛んに行われてきている。それを促進するというのが一方にありまして、他方におきまして、しかし、保護も必要であるということで、いわば利用と保護のバランスをいかにとっていくかということがあります。その後、1995年の10月に採択されました欧州連合の個人情報保護指令も同じような考え方をとっているというところがあります。
一般的には、何となく保護の面が強調されがちなんですが、一方で保護しながら、その保護された範囲内で利用も促進していくべきだというのがこの分野で重要な視点ではないか。
特にこの個人信用情報の場合には、多重債務ですとか過剰貸付とか、そういうことを防止するということも大きな重要な目的になりますので、その側面も十分に踏まえながらいくべきではないかということで、対立するといいますか、その辺の見方はいろいろあるかと思いますが、全体として総合的に捉えてみる。こういうことで議論しております。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
野田オブザーバー、どうぞ。
○野田オブザーバー 野田でございます。今の利用という観点からの見方なんですけれども、私ずっとこの議論をお聞きしておりまして、個人信用情報を、業界いろいろな意見が分かれておりますけれども、全体として方向性としては、お互いに利用し合っていこうということについては、方向性としてですけれども、一応一致を見ているんじゃないかという理解をしておるんですけれども、ただ、その辺の各論において、方法論といいますか、そういうところでそれぞれ業界の立場で意見が違うということではないと思います。その方向性のところだけどうなのか、もう一度御確認させていただきたいんです。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか。
○堀部委員 先ほど申し上げていますように、信用情報機関が幾つかありますが、そのうち三つの信用情報機関の間で現在交流をしています。これをもっと拡大できるといいということで言っておりますが、現在、今度は三つの情報機関の間の交流は、銀行系のところに照会をしますと、他の二つの情報機関にも照会をしまして、ネガティブ情報がありますと、ネガティブ情報があるという回答が返ってきます。
 ネガティブ情報といっても、どの程度のネガティブ情報なのかということが今のところ、明確でないわけですが、そのあたりもどうするのかとありますが、さらに、どこでどの程度借りているかというところまでわかれば、与信判断において、より的確な判断ができるのではないかということになります。
 しかし、一方で、特定の業態の業者からいつも借りているという情報は、他でそれを参照した場合に、決して有利な判断にはならないのではないかというようなこともありまして、その場合、今度ポジティブ情報として、どこでどう借りているかという、そこまでいかなくとも、実際に現在どの程度借りているのかということが、どこの関係の情報機関かということを明確にしないで出てくるような方法はないかとか、いろんな議論をしてみております。
 業界の実態を見ますと、事業者によっていろいろ情報の取り方も違うということもあります。それがまた情報機関に反映しまして、その情報機関の間でも情報の精度が違いがある。信用情報機関の関係者も、総論としては交流は必要だと言うのですが、各論として、では、具体的に始めるということになりますと、なかなかそこが積極性に欠けるところがありまして、そのあたりをどうするのか。
 ここで仮に法律でそういう交流を義務づけるということがどこまでできるかというようなことも、法制化を念頭に置きますと問題になってくるところであります。
 さらに、今度、そのほかに交流に参加してない信用情報機関もありまして、そこを一体どう扱うのか。この参加してない信用情報機関関係者からしますと、ほかの信用情報機関はそれぞれの業態ごとにできているので、それだから全体の情報がわからないけれども、そういう別の情報機関、これは業界横断的になりますので、そこですと、一つの情報機関を見れば全てわかるではないか。だから、今までそれぞれの必要に応じてできてきた信用情報機関でありますが、そういうやり方ではなくて、むしろそういうもの自体を崩すべきではないかという御意見などもありまして、ここは実際の利用を法的にというふうに考えますと、なかなか難しいところがあろうかと思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 ほかにございましょうか。
 よろしゅうございますか。
 それでは、以上で本日の論点は一通り終了したということにさせていただいてよろしゅうございましょうか。
 ありがとうございました。
 堀部先生、どうもありがとうございました。
 次回は、いよいよ当金融審議会第二部会の審議状況を中間的に公表する段階に移ることになります。本日の二つのワーキンググループの「論点・意見の中間的な整理」に加えまして、前回御審議いただきました「保険相互会社の株式会社化に関するレポート」を中間的に公表するための最終的な形で御報告させていただきます。
 そこで、前回及び本日の皆様の御指摘も踏まえての修正ですが、とりあえず私方に御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。その過程におきまして、御意見をお持ちの委員とは適宜個別に御相談させていただくことにつきましても、併せて御了承いただければと思いますが、いかがでございましょうか。
            〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 なお、御意見お持ちの委員は、本日は、深尾委員、一大労作をありがとうございました。ほかの委員の方で、事務局の方からお伺いに行くこともございますけれども、お気づきの御意見がございましたら、事務局に御連絡いただければ、事務局の方からも参上するという形もとらせていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。
            〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
                                      ○倉澤部会長 それでは、そういうことにさせていただきます。
 それでは、最後に、次の日程等につきまして、事務局から御連絡をお願いいたします。室長、どうぞ。
○津曲調査室長 次回の日程につきましては、現在調整中でございますが、今のところ、来月上旬を念頭に準備を進めております。総会、第一部会などとの関係も踏まえまして、日程が固まり次第、また御連絡申し上げます。
 なお、先ほどお伝えいたしましたとおり、お手元に配付されております二つのワーキンググループのたたき台につきましては、恐縮でございますが、部会終了後回収させていただきたいと思います。恐れ入りますが、その場に残したまま御退席をお願いいたしたいと思います。
 また、レポートの文面の審議の段階ということに今入っておりますので、本日のこの会議の終了後は日頃行っております部会長の記者会見は今回は行わないということで、記者対応は事務局でいたしたいと考えておりますので、お含みおきいただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○倉澤部会長 今室長からお話がありましたように、資料の返却をお願いいたしますが、先ほど申し上げましたように、個別に御意見をお持ちの方が事務局と相対で意見を言いたいときにちょっと見せろというようなことでしたら、それはその相対の場面でお見せするということは可能でございます。
 次回の進め方等について御質問等はございませんか。
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。
                                (以 上)