金融審議会「第二部会」第13回会合議事録
日時:平成11年10月13日(水)10時00分〜11時57分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○倉澤部会長 定刻になりました。ただいまから、第13回金融審議会「第二部会」を開催いたします。
皆様、御多忙の中をお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
本日は前回に引き続きまして、預金保険制度に関する討議を行い、最終答申の前に公表を予定しております「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方」についてとりまとめを行いますとともに、8月に設置され、これまで4回の検討を重ねております保険基本問題ワーキンググループから活動状況の御報告をいただくこととなっております。
では、まず、預金保険制度に関する検討から始めたいと存じます。皆様のお手元には、当部会におけるこれまでの御審議等に基づき、当部会として、19日に開催予定の総会に報告・公表することを前提に作成してまいりました「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方(案)」を御用意しております。
初めに、事務局からこの「基本的な考え方(案)」の内容について御説明をいただいた後に、これについて適宜御意見を賜ることができればと存じます。
それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
○林信用機構室長 信用機構室長の林でございます。この「基本的な考え方(案)」でございますけれども、先般の第二部会でお配りいたしました「討議用メモ」、そしてそれに基づきました御議論を踏まえまして、事務局の方で「基本的な考え方(案)」という形でまとめさせていただきました。
それでは、まず、読み上げさせていただきます。
〔政務次官着席〕
○倉澤部会長 室長、ちょっとお待ちください。大変恐縮ですが、ちょっとお待ちくださいませ。
林
芳正大蔵政務次官がお見えになりましたので、御紹介申し上げます。どうぞ、政務次官、お願いいたします。
○林政務次官
遅れて参りまして、大変恐縮でございますが、一言御挨拶申し上げます。
先の内閣改造で政務次官を拝命いたしました林
芳正でございます。
当第二部会では、大変に重要な預金保険制度、それから、保険会社の法整備、いずれも、私も地元を回っておりまして、大変皆様方の御関心が強いところでございまして、一方、今回の改革で政務次官も国会の審議で答弁に立てということもございますし、また、党内で金問調、財政部会といろいろございますので、私も自分の頭の中にこの重要事項を入れておかなければいかぬと思いまして、御無理をお願いいたしまして、部会長にお許しをいただきまして、御出席を許可願いました。
皆様方におかれましては、精力的な審議をお願いいたしまして、私からの御挨拶にさせていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、林室長、お続けください。
○林信用機構室長 では、読み上げさせていただきます。
○谷内補佐
特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方(案)
1.はじめに
? 金融機関の破綻処理については、金融システムの安定化を図る観点から、平成8年度から12年度までの時限的な特例措置として、ペイオフコスト(保険金支払に要すると見込まれる費用)を超える資金援助等を行うことにより預金等の全額保護が図られている。また、金融機能再生緊急措置法及び金融機能早期健全化緊急措置法において、平成12年度までの時限的な特例措置が設けられており、預金等の全額保護が図られている間に、金融機関の不良債権処理を基本的に終了し、更に、その財務内容の健全化を進めることによって、ゆるぎない金融システムを確立することが求められている。このため、預金保険機構に対して、交付国債及び政府保証等による財源措置等が講じられてい。
? 預金等の全額保護のための特例措置は平成12年度限りで終了することが法律で予定されており、その後は、預金者等が金融機関の破綻による損失の一部を負担することがある体制に移行することとされている。その際の金融機関の破綻処理方式としては、現行の預金保険法本則において、保険金支払方式(ペイオフ)と一般資金援助方式(譲受金融機関への営業譲渡等に対してペイオフコスト内の資金援助を行う破綻処理方式)の二つの方式が措置されている。
? 金融審議会第2部会としては、「安心で活力ある金融システムの構築」を実現するためのテーマの一つとして、「恒久的な」金融機関の破綻処理及び預金保険制度のあり方について検討を行っている。
今回、第2部会として、特例措置終了後の預金保険制度等の骨格となる部分についての基本的な考え方を、以下のようにとりまとめたところである。今後、各界各層からの意見等を踏まえた上で、細則となる部分や特例措置が終了するまでに整備すべき環境等を含めた最終的な考え方をとりまとめることとしたい。
2.金融機関の破綻の未然防止
? 預金保険制度は、金融機関の経営破綻に際して預金者等の保護を図るという、言わば事後的な対応措置であるが、預金者等の保護の基本は、健全で収益力の高い金融機関経営を確保することにある。したがって、個々の金融機関において、適正な会計処理や内部管理の向上等による経営の健全性の確保はもとより、新たな金融商品の開発、顧客の信頼の獲得などの点に関し、21世紀を見据えた真摯な努力が求められる。
? 預金等の全額保護という特例措置終了後においては、金融機関の破綻を未然に防止することが最も肝要であり、そのために、問題金融機関を早期に発見し早期に是正することが重要となる。
問題金融機関の早期発見・早期是正については、市場規律による金融機関のモニタリングが有効に機能することが求められるが、それと併せて、監督当局における、検査・モニタリングの充実・強化、
早期是正措置の適時適切な運用などが必要である。
3.金融機関の破綻処理のあり方
? 基本的考え方
特例措置終了後の金融機関の破綻処理においては、回復の見込みがなくなった金融機関を、問題を先送りすることなく早期に処理することにより、破綻に伴う預金者等の負担を最小限に止めることが重要となる。
預金保険制度の本来の目的は少額預金者の保護であり、上記の対応を採ることによって、特例措置終了後においては、基本的に「小さな預金保険制度」を目指すべきである。一方、金融機関や監督当局の適時適切な対応により保険負担の増大やモラル・ハザード発生のおそれが少なくなること、また、?以下に述べる措置を講ずることによって金融機関の破綻処理が迅速に行われれば決済機能の保護や借り手の保護にも資することを踏まえれば、預金保険制度の役割・機能については、ある程度弾力的に考える余地もある。
なお、現在の金融市場における決済慣行・企業行動等は、預金にリスクがないことを前提として成り立っているが、特例措置終了後においては、その前提を変更せざるを得ないため、多様な資金運用・調達・決済手段が提供されることにより、市場規律と自己責任原則に立脚した金融システムにふさわしいものとなることが望まれる。
金融機関が破綻した場合には預金保険制度の発動により処理されることになるが、その場合には、破綻金融機関を存続させないことを前提として、ペイオフコストの範囲内で破綻処理に要するコストがより小さいと見込まれる処理方法を選択するとともに、破綻金融機関の有していた金融機能を維持するなど破綻に伴う混乱を最小限に止めることが重要となってくる。
そのために、金融機関の破綻処理方式としては、破綻に伴う損失負担により預金等の一部がカットされることは同じであるが、譲受金融機関が破綻金融機関の金融機能を引き継ぐことになる一般資金援助方式の適用を優先し、金融機能まで消滅させることになる保険金支払方式(ペイオフ)の発動はできるだけ回避すべきである。その際、破綻処理を迅速に行うことができるような措置を講ずるとともに、破綻の態様に応じ処理方式を多様化しておくことも必要になる。
なお、預金保険の発動に際しては、金融機関を破綻に至らしめた経営者等に対して厳格な責任追及がなされ、株主・出資者等の損失負担が行われることは当然のことであり、また、悪質な借り手への責任追及と債権回収の徹底が重要であることは言うまでもない。
? 一般資金援助を伴う営業譲渡等の迅速化
現行の一般資金援助方式の下で営業譲渡が行われる場合、監督当局による業務停止命令や司法手続による保全処分によって預金等の払戻しや融資機能が停止されることが想定されるが、それにより、預金者等に多大な影響が生ずるのみならず、決済機能を含む金融機関の営業体としての価値(フランチャイズ・バリュー)が急激に低下するなど、地域経済や金融システム等に対して大きな影響を与える可能性がある。
したがって、金融機関の破綻に伴う混乱を最小限に止めるために、一般資金援助を伴う営業譲渡を迅速に行うことにより、破綻金融機関が有していた金融機能をできるだけ早く譲受金融機関に引き継ぐことが極めて重要となってくる。
一般に、預金等の一部カットのような私権の一部剥奪を伴う倒産処理は、最終的には司法手続に依らざるを得ない。しかし、金融機関の破綻処理を迅速に進めるためには、司法上の手続に入ることを前提として、その前に司法手続の外で破綻金融機関の営業譲渡を行うという手法が有効であり、このような手法を可能とするためには、事前準備、
資金援助が可能になる場合の拡大、
営業譲渡手続の迅速化・簡素化、等について特別な手当が必要となる。
事前準備
金融機関の破綻処理を迅速に行うためには、名寄せや資産内容の把握等が事前に行われていることが求められる。したがって、預金保険機構及び監督当局が密接に連携をとりながら、実際に破綻が起こる前に、破綻処理に備えて可能な限りの準備を行っておく必要がある。
また、一預金者当たり一定限度額(現行1000万円)まで保護するという預金保険制度の下で、金融機関の破綻処理を行うためには、破綻した金融機関の預金者等の名寄せを行うことが不可欠である。
破綻時に預金保険機構において名寄せ作業を開始することとすると、名寄せ作業そのものが迅速な破綻処理の障害となる。破綻処理の迅速化という観点からは、金融機関に対し、少なくとも当面、平時から預金者データを預金保険機構にスムーズに引き継ぐことができるためのシステム対応を求め、更に、預金保険機構が金融機関の対応状況を把握できるようにすることが必要となる。
資金援助が可能になる場合の拡大
現行の預金保険法本則の営業譲渡における一般資金援助は、破綻金融機関が譲受金融機関に対して営業の全部を譲渡した際に、営業譲渡時に譲受金融機関に対して行われることを前提としている。
しかしながら、上記の場合以外にも資金援助を可能にすれば、破綻の態様に応じた多様な破綻処理を行うことが可能となり、破綻処理の迅速化にも資することになることから、営業の一部(例えば、健全資産と付保預金)のみを譲渡した場合の資金援助、営業譲渡後の追加的な資金援助を含め、資金援助が可能になる場合を拡大することが必要となる。
営業譲渡手続の迅速化・簡素化
迅速かつ円滑に破綻金融機関の営業譲渡を行うために、また、破綻金融機関の経営陣が破綻処理を進めることは適当でないことからも、司法手続に入る前に、監督当局の権限に基づく行政処分として破綻金融機関を公的な管理人の下に置くことが適当である。そのために、現行の金融機能再生緊急措置法における金融整理管財人制度を踏まえた管理人制度を導入すべきである。
通常の金融機関の営業譲渡においては、株主や債権者等の保護のために、一定の期間を要する厳格な手続を踏むことが要請されているが、一方で、金融機関の破綻の場合は、このような手続により、営業譲渡が遅れてフランチャイズ・バリューの低下をもたらし、結果的に債権者保護等の要請に応えられない事態になることが想定される。
したがって、例えば、金融機能再生緊急措置法で時限的に措置されている株主総会の特別決議等に代わる裁判所の許可(代替許可)制度等を導入することにより、営業譲渡に要する手続を迅速化・簡素化することが必要となる。
上記〜
のような手当がなされることを前提とすれば、我が国における特例措置終了後の金融機関の破綻処理の基本形としては、十分な事前準備が行われた上で、破綻公表と同時に公的な管理人が選任され、公的な管理人により譲受金融機関に破綻金融機関の営業の一部又は全部の譲渡を行うという方法が考えられる。この方法は米国において多用されているP&A(資産買取・負債承継)と同様の機能を持つことになる。
なお、金融機能を消滅させることになる保険金支払方式の適用はなるべく回避すべきであるが、仮に保険金支払を実施した場合には、混乱を最小限に止めるために保険金支払を迅速に行うことが必要である。そのためにも、上記の事前準備等が十分になされていることが重要となる。
? 金融機能の維持(営業譲渡までに時間がかかるケース)
破綻金融機関の金融機能の維持については、破綻処理を迅速に行うことによって対応すべきであるが、営業譲渡のための事前準備が十分でない場合など、破綻時から営業譲渡までにある程度時間が必要なケースも想定される。
その間、破綻金融機関において預金等の払戻しや融資の継続等の金融機能を停止すれば、破綻金融機関の利用者である法人や個人の決済が滞ることになるほか、必要な融資を受けられなくなるなど、地域経済や金融システム等に大きな影響をもたらすことになりかねない。このため、営業譲渡までの間であっても、公的な管理人の下又は司法手続の下にある破綻金融機関において、処理手続として整合性がとれる範囲内で、以下のとおり、一定の金融機能を継続することが望ましい。
預金者等の利便性の確保
預金者等の利便性の確保(預金の払戻し、決済サービスの享受等)については、破綻公表から営業譲渡までにある程度時間がかかる場合であっても、その間に、一定限度まで預金の払戻し等を可能にしておくことが望ましい。そのために、一定の場合の付保限度までの預金等の払戻しが許容され(その資金を預金保険機構が貸し付ける)、また、付保限度を超える預金等については、保険金支払方式の場合に認められている預金等債権の買取制度を適用すること等が求められる。
(注)預金等債権の買取りは、預金者の流動性を確保するとともに裁判手続の円滑化を図るために、付保対象となる預金等のうち預金保険によって保護されない部分(現行、1000万円超の部分)を一定の割合(概算払率)で預金保険機構が買い取る制度である。
流動性預金の問題
金融機関が破綻して預金等の一部がカットされる場合、迅速な破綻処理による対応で決済の問題をどこまで解決できるかが問題となるが、仮に営業譲渡までに時間を要する場合には、企業や個人の決済への大きな影響が懸念される。このような問題を生じないようにするために、当面の営業資金や生活資金が保管されている流動性預金については、全額を保護すべきではないかとの議論がある。
他方、預金保険制度は少額預金者保護を目的とする制度であり、決済の問題は基本的に破綻処理の迅速化とともに民間による多様な決済サービスの提供によって解決すべきであるとの意見がある。また、流動性預金を全額保護対象とすることは負担やモラル・ハザードの増大につながる。流動性預金の範囲、他の預金との明確な線引きが技術的に可能か、等の問題が指摘されている。
更に、流動性預金の問題については、流動性預金に優先権を与え、他の債権に優先して弁済を受けられるようにしてはどうかとの意見もある。
このほか、破綻金融機関に滞留する仕掛かり中の決済取引の扱いをどうするか、など実務的に詰めるべき点も残されており、今後、更に検討を進めることとする。
借り手の保護
金融機関が破綻した場合、その金融機関と取引をしていた善良かつ健全な借り手は、破綻金融機関からは新たな融資を受けられなくなる。金融機関の破綻処理における善良かつ健全な借り手の保護についても、破綻処理を迅速に行うことによって対応すべきであるが、預金者等の保護が本来の目的で預金保険制度による対応だけでは自ずと限界があり、国や地方公共団体における政策的対応が併せてなされることが必要である。
? 譲受金融機関の問題
現行の一般資金援助方式では譲受金融機関の存在を前提としているが、我が国の過去の破綻事例を勘案すれば、今後、譲受金融機関が即座に現れない場合もありうる。したがって、金融機関の破綻処理を迅速に行うためにも、破綻金融機関の金融機能を引き継ぐ譲受金融機関が現れやすい環境を整備するとともに、仮に譲受金融機関が直ちに現れない場合でも対応できるような破綻処理方式を用意することが求められる。
譲受金融機関が現れやすい環境の整備
資金援助の一環として、破綻金融機関から引き継いだ資産が劣化した場合に譲受金融機関に生じる損害の一部を担保するような仕組み(ロス・シェアリング)や、資産の引継等により低下する自己資本比率を回復させるための譲受金融機関に対する資本増強などについて検討することが必要となる。
譲受金融機関が直ちに現れない場合の対応
譲受金融機関を探す時間的な余裕を確保するためにも、現行の金融機能再生緊急措置法で措置されている承継銀行(ブリッジ・バンク)制度を踏まえた制度を導入すべきである。また、預金保険法附則で規定されている協定銀行(整理回収機構)の受皿機能を継続することも必要と考える。
4.危機的な事態が予想される場合の対応
預金等の全額保護のための特例措置が終了した後における金融機関の破綻処理は、ペイオフコストの範囲内で行うことになるが、金融機関の破綻により信用秩序全体の維持や国民・地域経済の安定に重大な支障が生じることが予想されるような危機的な事態(システミック・リスク)には、通常の破綻処理の枠組みでは対応できないことも想定される。
米国においては、金融機関の破綻処理において、選択可能なあらゆる破綻処理方法の中でコスト負担が最小の方法を選択することが求められているが(「最小コスト原則」)、一方、厳格な手続の下において「コスト基準を遵守した処理方法を選択すれば経済情勢や金融システムの安定性に深刻な影響を及ぼし、他の方法を用いればこれを回避ないし緩和できる」と判断されれば、「最小コスト原則」に依拠することなく例外的な処理を行うことが可能とされている。
我が国でも、現在の金融再生のための特別措置により金融システムの安定化した後においても、危機的な事態が起こる可能性を否定するすることはできない。このため、万が一に備え、例外的な措置が可能となるようにしておく必要があるが、その場合には、厳格な手続が併せて求められると考える。
5.預金保険制度の他の論点
? 付保対象
預金保険の対象商品であるか否かについては、従来から、
・ 基本的な貯蓄手段として国民の間に定着していること
・ 元本保証がなされていること
・ 債権者が特定され、転々流通しないこと
が主な基準となっていたところである。
今後、預金利子の扱いを含めた付保対象の見直しに関する検討を進めていくが、その検討に当たっては、上記の基準を基本として、預金者の混乱の防止や迅速な破綻処理という観点を考慮することが必要になる。
? 保険金支払限度額等
保険金支払限度額
現行の保険金支払限度額は1000万円となっているが、我が国の1人当たりの平均貯蓄残高や諸外国の水準、保険料負担の増加等を勘案すると、この水準を引き上げる必要性は乏しいと考える。
仮払金
金融機関の破綻処理が迅速に行われれば、仮払金制度の意義は相対的に薄れることとなるが、仮払金制度が必要とされる事態に備えて、預金者等の不安の解消を図るために仮払金の水準(現行20万円)の引上げを検討することが考えられる。
? 預金保険料
預金保険機構の一般勘定における借入金残高は、現在、相当な規模になっているが(平成11年9月末現在 13,025億円)、既に破綻を表明している金融機関の処理が予定されていることを踏まえると、今後、更に借入金が増加することが見込まれる。
預金等の全額保護という特例措置が終了した後の預金保険料の水準を検討するに当たっては、預金保険制度に対する国民の信頼に応えるためにも、まずもって、一般勘定の借入金を早期に返済し、更に、将来に備えて一定規模の責任準備金を積む必要があることを念頭に置かなければならない。
なお、可変保険料率の導入については、市場規律の強化につながることから望ましいと考えるが、一方で、一般勘定の借入金の早期返済が必要な状況の下で直ちに導入した場合には、経営の悪化した金融機関に与える影響は看過できない。したがって、当面、可変保険料率の導入は慎重に検討すべき課題であると考える。
○林信用機構室長 この「基本的な考え方(案)」でございますけれども、10月5日にワーキングを開催いたしまして、この考え方の(案)のさらにもとになったものを議論いただきまして、そのときの議論を踏まえて修正した上で、本日お出ししているものでございます。本日、ワーキングの神田座長が御欠席ということもございまして、ワーキングのときの委員の方々からの御意見を私の方からちょっと御紹介させていただきたいと思います。
まず、1ページの2.の前の?の一番最後の部分ですけれども、最後に、「今後、各界各層からの意見等を踏まえた上で、細則となる部分や特例措置が終了するまでに整備すべき環境等を含めた最終的な考え方をとりまとめることとしたい。」と書いてございますが、各界各層からの意見というのは、パブリックコメントに付すようなことを考えて書いておるわけでございます。
それから、先般、部会にお出しした「討議用メモ」のところからは、2001年3月までに整備すべき環境というようなことが書いてございましたけれども、その部分はさらに御議論いただいた方がよろしいのかと考えまして、この今回の基本的な考え方からは落としておるわけですけれども、ワーキングの議論でも、この整備すべき環境として、金融機関の情報開示などが重要ではないかと、今後その点を議論すべきではないかというお話があったところでございます。
それから、2ページを御覧いただきまして、2ページの一番下のところで、「ペイオフコストの範囲内で破綻処理に要するコストがより小さいと見込まれる処理方法を選択する」ということが書いてございますが、これに関連いたしまして、今後、破綻処理の手順といったものを考えていくときに、コスト・テスト、最小のコストとなるような方法を選んでいくというようなコスト・テストを盛り込んでいくことが重要ではないかという御指摘がございました。
それから、3ページ目以下で一般資金援助に関しまして、「譲受金融機関」という言葉が幾つか出てまいります。これまでのペーパーでは「救済金融機関」。これは預金保険法上の文言でもございますので、「救済金融機関」と書いてございましたが、「譲受金融機関」と書くのがよりニュートラルではないかということで、今回は「譲受金融機関」というワーディングを用いているところでございます。
それから、飛びまして6ページの「流動性預金の問題」でございますけれども、この問題については、ワーキングでも若干時間を取っていただいて議論いただいております。ワーキングでは、この二つ目のパラグラフの全額保護はすべきではないという考え方から、破綻処理の迅速化というものが、納税者番号が将来導入されれば図れるのではないか。それから、民間の多様な商品開発によって解決し得るのではないか。あるいは民間の商品開発がどの程度進む、あるいは今後進むと考えているのかというような問い掛けもございました。
さらにこの点については、現在全額保護であるから、民間に商品開発のインセンティブが働かないのであって、本来は民間の市場参加者によりこういったことは当然ケアされるべき問題であり、こういうことを議論していること自体はどうなんだろうかという問い掛けもございました。
それから、流動性預金の一番最後に、決済取引の扱いをどうするかということが書いてございますけれども、決済取引の扱い、決済取引についてだけを保護するという考え方もあり得るけれども、これだけを保護しても、やはりそれはそれなりに不公平感があり、これだけ保護するという理屈がないと、なかなか法律には書けないのではないかという御意見もございました。
それから、7ページを御覧いただきますと、7ページの下の「付保対象」のところでは、いわば総論といったようなところだけ書いておりまして、各論についてはワーキングでも利子の問題、それから、この間の第二部会でも金融債について議論になっておりますけれども、この部分はさらに御議論いただいた方がよろしいのかということで各論させていただきまして、いわば総論だけを書いているところでございます。
それから、同じように8ページを御覧いただきまして、前回の「討議用メモ」では?のに預金等債権の買取りということが書いてあったんですけれども、この部分もワーキングでやや議論になりまして、ここはさらに議論していただいた方がいいのかということで、基本的な考え方からは落としているところでございます。
それから、8ページの一番最後のパラグラフですが、「当面、可変保険料率の導入は慎重に検討すべき課題」と書いてございますけれども、この基本的な考え方自体は全体として恒久的な制度のあり方についての検討でございますので、こういった経過的な表現はいかがなものかという議論もありましたが、ここは方向としては望ましいけれども、当面、慎重というようなことで、こういう書き方もやむを得ないのかなということになったところでございます。
私の方からは、以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま説明及び読み上げのありました「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方(案)」につきまして、御質問、御意見等ございましたら、御自由にお出しいただきたいと思います。
深尾委員、どうか。
○深尾委員 今の説明を聞いておりまして、1点、関係がよくわからないところがありまして、これは決済性預金、流動性預金の保護について
100%するかどうかというのが6ページにあって、これに対して、8ページのところに支払限度額は
1,000万円とするというわけで、これは明らかに矛盾しているように読めるわけです。
私は、これについては、8ページのところの「保険金支払限度額は1000万円」というのは、例えば「
100%保護する限度は1000万円」というような書き方をしておいて、それを超える部分については例えば2割なり3割なりのヘアカットを行うことでモラル・ハザードを防ぐというような考え方はあり得るのではないかなと。
そうしますと、ここの書き方と6ページの書き方の整合性をとる上では、
1,000万円を超える部分は限定的に保護すると、あるいは仮払いの形で、例えばみなしの仮払いで基本的に7割するとか8割するといったような形ですぐお金を使えるようにしておいて、しかし、カットは行うということでモラル・ハザードを防ぐという考え方があり得るのではないかなと思います。
それから、もう一つの点は、3ページのところですけれども、預金保険の発動について、「株主・出資者等の損失負担が行われることは当然である」というふうに書いてあるんですが、ここについては、本来は早期是正措置と見合いにするべきではないか。つまり早期是正措置で自己資本をはかった場合に、多分4%残っている、あるいは2%残っているという、その部分は必ずリスクをかぶってもらうということで、早期是正措置の上で資本とみなされる部分は保護しない。
逆に破綻処理のときにクッションにならないようなものは、そもそも自己資本に入れないという監督上の扱いと預金保険の場合の保護の部分をリンクさせるべきだと思います。
以上です。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
何か事務局の方からございますか。どうかお願いいたします。
○林信用機構室長 この流動性預金のところと 1,000万円の関係につきましては、流動性預金のところが両論併記といいますか、3論併記と申しますか、幾つかの考え方があることを並べているものですから、それはそれとして、
1,000万円の話を別に書いたわけでございます。
全額保護という立場からは、当然この 1,000万円の限度額が、流動性預金に限っては
1,000万円というような支払限度を設けないで、いわば青天井でこれを認めるという考え方になろうかと思います。
深尾先生がおっしゃったのは、さらにもう一つの考え方として、モラル・ハザードを防ぐものとして
1,000万円を超えた部分について、2割なり3割なりヘアカットということでございますので、さらにまた別の新しい御提案なのかなと思っております。
○倉澤部会長 よろしゅうございますか、深尾委員。
○深尾委員 もともとこの問題については、第二部会に大分前に、5月頃ですか、出したペーパーの中で提案を具体的にしておりまして、それについて議論がされなかったという感じを持っておりまして、決済性預金といいますか、中小企業の持っている決済性の預金の保護というのは大事な問題ですけれども、これと、それから、小さな預金保険、あるいは
1,000万という限度をどうやって両立させるかという観点からは、例えば
1,000万までは 100%保護、それを超した場合はカットする。しかし、すぐ使えるようにするという考え方はあり得るのではないか。それをむしろ明記した方が、実際に世間で議論されるときも、わかりやすい提案になり得るのではないかなというふうに思います。
○倉澤部会長 どうかお願いいたします。
○河野金融監督庁企画課長 恐れ入ります。監督庁でございます。
今、深尾委員おっしゃいました2点目の問題につきましては、行政上の命令と株主・出資者等の損失負担という、いわば民事上の責任との関係を付けるというのは、法制度上、非常に検討すべき点が多いと思いますので、できましたならば、ここの表現はこのままにお願いをしまして、さらに私どもの方でもいろいろ御相談させていただきながら、検討させていただきたいと思います。それが1点目でございます。
あと、もしよろしければ、2点ほど申し上げたいんですが……
○倉澤部会長 どうかお願いいたします。
○河野金融監督庁企画課長
折角でございますので、1ページ目の2.の表題「金融機関の破綻の未然防止」でございますけれども、実は、これを拝見いたしますと、その後、??とある意味では預金者等の保護の基本ですとか、あるいは金融機関の21世紀を見据えた真摯な努力といったような点について書いていらっしゃいますので、この表題、もしそうであれば、むしろ、例えば「市場規律に立脚した預金保険制度」であるとか、あるいは「市場規律に立脚した預金者保護」であるとか、もうちょっと広い表題の方がふさわしいのではないかという点を申し上げたいと思います。
もう一点、2ページ目で3.の「? 基本的考え方」の2段目でございますが、現在ではここは、「上記の対応を採ることによって、特例措置終了後においては、基本的な「小さな預金保険制度」を目指すべきであると。」とされた上で、「一方、金融機関や監督当局の適時適切な対応により保険負担の増大やモラル・ハザード発生のおそれが少なくなる」というように書いていただいていますけれども、むしろ論理的にはここはまず、保険負担を小さくする、あるいはモラル・ハザード発生のおそれを小さくするために基本的に小さな預金保険制度を目指すべきであると、いわば制度の理念なのではないか。その上で、そうした中で金融機関や監督当局が適時適切に対応し、あるいは破綻処理を迅速に行えば、預金保険制度の役割・機能が十全に発揮されると、そんな論理ではないかという気がいたしますので、あえてこの機会に申し上げたいと思います。
ありがとうございます。
○倉澤部会長 深尾委員が冒頭に申されましたのは、この前の第二部会で議論が出ました決済性預金の流動性の問題というのは、保険保護の対象の問題なのか、預金債権として保護されることよりは、決済が続いていくかどうかという話なんじゃないかということで問題がこの6ページの方では二つに分かれ得るというような構成になっているかとも思いますけれども。
どうか。
○深尾委員 今の点ですけれども、やはり普通にこれを読んだ場合には、この関係、つまり6ページの決済性預金の全額保護というものと
1,000万円という上限、それから、小さな預金保険というフレーズですね、この関係がわかりにくいと思うんですね。
小さな預金保険というのは、必ずしも上限金額が大きいから、あるいは小さいから預金保険が小さくなるというものではないと思うんです。やはりインセンティブを歪めないかどうかということです。あるいは納税者の負担がどれくらい大きくなるか、小さくなるか、こちらがポイントであって、そうであれば、決済性預金なり、預金の全額保護するよりは、例えば預金保険の上限を
5,000万まで上げるけれども、8割はすぐ払う。そのかわりちゃんとカットする。これによって負担を求めていって、納税者の負担もある程度抑えるといったことが両立する問題ではないか。
ですから、小さな預金保険といえば、 1,000万という上限を変えられないというものではないでしょうし、その場合に、歪めないような形での設計は十分あり得るんだと思います。ですから、このあたりが小さな預金保険、あるいは
1,000万というキャッチフレーズのものと、それから、決済性預金というところでぶつかってしまうので、これをちゃんと整理することは可能であって、それはヘアカットと迅速な支払いといいますか、一定限度内での支払いといったことは両立できるものではないか。それをはっきりオプションとして示さないと、じゃアイデアはないんですねと、じゃ全部カバーしてくださいという、結局、大きな預金保険につながってしまうリスクが高くなるんじゃないかと、そういう懸念で今申し上げたわけです。
○倉澤部会長 私はこのペーパーの構成の読み方だけの問題として、6ページのの第2文節のところで、預金保険制度の目的と決済の問題というのを切り離すという意見というものも成り立ち得るかというような構成になっているということだけを申し上げたのでございます。
ほかに御質問、御意見等。
坪井委員、お願いいたします。
○坪井委員
原則的に一番最初に、ペイオフはなるべく行わないと、この時期においてはですね。ですから、ペイオフを行わないということで、これだけの手立てをしますよということで安心してもらうわけですね。その方法として、ペイオフを行わないということは、それに代替する一つの安全弁がどこかにあるんだということを国民に知らしめていただかないと、まさにペイオフとか、それを凍結とか、解除とかいう話だけではわからないですね。
そこで、ある程度親切に話を作っていっていただく必要性があるんじゃないか。したがって、会長がいずれ御発表になるときにおいても、文章的には、やはりもう少し柔らかい形で、パブリックコメントをいただくにしても、必要性があるんじゃないかと。第1点ですね。
そのペイオフを行わないためにいろんな形がある中で、ブリッジ・バンクの方法も考えられておりますし、特にP&Aの話が相当前面に出てくると思うんです。そのP&Aというのは、今までのアメリカの例等をお聞きしましたときに、果たして日本のいわゆる国情、社会情勢に合うかというような問題がありましたですね。その中で一番P&Aを成功させるためには、司法指揮権をどこに持たせるのかということがやっぱり大きなテーマだと思うんです。これは株主総会やその他のいろんな手続を経ずに、破綻を宣告して、直ちに破綻処理に入るわけですから、ということになれば、誰が司法指揮をするのかとなったときに、これは金融監督庁であるということが一つわかるわけです。
しかし、その後、管財人を置いてやると書いてありますが、当然管財人がなければできないわけです。管財人は今度、実際には資金運用等の問題が入ってきますから、預金保険機構になると思うんですね。そのときに、その管財人と、今言った両方の監督庁との関係でこれを処理していくというふうになるときに、どれだけ管財人に指揮権を持たせ得るのか。その辺のテーマはここに入ってないんですね。その辺をある程度きちっと整理して、日本版P&Aというものを出していただかないと、各金融機関等もなかなか理解しがたくなるんじゃないか。言うならば、最高権力者になりますから、アメリカの今の預金保険機構のようになるとすれば、望ましいわけですよ。それのためには、これとこれとこれだけが必要ですということはきちっと明記すべきじゃないのかと思うんですね。
それから、もう一点は、ブリッジ・バンクの必要性というのがここに出ていて、これは安心できるんですが、そのブリッジ・バンクの相手が預金保険機構なのか、それとも、今やってきました長銀のような形の国有化方式では、国がブリッジ・バンクの相手方として一応引き受けるのか、その辺の説明が少ない。結局は預金保険機構がブリッジ・バンクとして引き受けるとなったときに、今度、管財人を置いて、いろんな整理をしていくわけですから、相当強権をそこで発動していかなきゃいけない。それをブリッジ・バンクで預金保険機構が受け取ってそれができるかどうか。これも日本的な社会通念からいきますと、言うなら小さいところの話になると、まさにフェース・ツー・フェースで皆やっていますから、日常業務が。果たしてそういうときに可能なのか。ディスクロージャーが完全に可能なのかということは、私ども地方におっては、これは非常に心配するところなんですよ。
したがって、そういう部分を管財人にどういう力を持たせて、どういう形を決めて、どれだけの役目を持たせますということをきちっと発表しておかないと、そこはなかなか難しく、コミュニケーションできないということが出てくると思うんですね。これが第1点です。
それから、第2点は、流動性預金ということになっていますが、決済性預金の場合に、私どもの中小企業の立場でいきますと、年中当座にやっぱりある程度の金入れています。要するに大きな企業と大銀行での決済のやり方というのは、例えば、午前10時に
3,000億入って、10時10分にはもう 3,000億全部なくなっちゃうというやり方でいっているようですから、全く心配ないと思うんですよ。それほど問題にしなくていい。
中小企業の場合はそうじゃなくて、ある程度常に当座に金が入っているんです。それはなぜかというと、支払いの形とか、また、手形決済の期日等は、孫請け、曾孫請けのような形になっている場合は、非常に様々あるわけですね。したがって、30日にきちっとお金が入って、30日に全部決済されるという形にならない。したがって、そういう場合の決済性預金をどう見るかということは、やはり流動性のある部分をどう見るかというのは大事だと。
だから、先ほど深尾先生がこの前からおっしゃっておられたように、その分については
5,000万までは認めて、その概算払い8割やっちゃうと、そういう形のものが出れば、大体その範疇に入りますから、そういう意味で非常に安心できるものでもある。
ですから、流動性預金というのの範囲を、何千億、何百億まで認めなくとも、何千万以下は8割くらい概算払いをしてでもやりますよというような形の安全弁を設けていただければ、ある程度今の中小企業から決済性預金という部分は解除されるのではないかなというふうに思います。
それから、もう一点、これは公金の話が入ってないんですよね。公金は、この前も申し上げましたように、
1,000万まで保証しても何にもならんというのは、そのとおりです。要するにその保証額の問題はそうです。しかし、公金を置いてある各県、各都市とすれば、大体は一番信用のあるところに置いています。しかし、議会がありますから、政務次官も御存知でしょうけれども、議会で質問されたときに、「今、知事さん、あんたがこの県が預けている銀行、絶対安全ですか」と言われたときに、いや、安全だと思いますということで預けているんですけれども、「絶対安全です」と言えない立場ですね。首長の場合。それは市町村も同じです。そのとき、じゃ一番日本で安全なところに持っていきますというふうにならざるを得ないですね。変な形で予算の審議の話の中でも、野球の出資した金がどこから出たかなんていうことで問題になるくらいの話ですから、当然出ます。
そうなったときに、日本で一番今安全なのは、格付で言うならば、東京三菱だとなれば、各市町村を含めた地方自治体のお金が全部公金としては、運用部分を含めてくる。財団法人も、特殊法人もくる。こうなったときには地方の金融収縮というのは大変大きなものになりまして、まさに貸し渋りが起こるということもあります。
したがって、 1,000万まで保証する問題は別にしまして、公金をある程度の流動性の部分だというふうに認めた形でこの公金のものを取り上げて、ある程度含みを持たせないと非常に不安が起きるということで、そういう資金の移動が起きることによって地方における金融不安が起きてくるということであって、これは問題にしていただくべきだというふうに思いますので、この点についてお伺いしたいと思います。
○倉澤部会長 坪井委員が冒頭に申されましたパブリックコメントを求めるために、できるだけわかりやすい修文ということについては、可能な限り努力させていただくということで、その他の点につきまして、事務局、何かございますか。
○林信用機構室長 今、坪井委員の方から法的な手続の話がございましたので、私の方から、こういうふうにこれを書いていくに当たって、どういう手続を考えているかということを申し上げたいと思います。
3ページ目を御覧いただきますと、?の「一般資金援助を伴う営業譲渡等の迅速化」のところの二つ目のパラグラフですけれども、ここに書いてありますように、私権の一部剥奪を伴う処理というのは司法手続だと。ただ、迅速にするためには、司法手続の外で破綻金融機関の営業譲渡を行うという手法が有効であるということで、ここで考えておりますのは、破綻の公表と同時に、金融整理管財人というのが後で出てきますけれども、金融整理管財人の下に破綻した金融機関を置くと。司法手続に入る前にこの金融整理管財人の下で営業譲渡を譲受金融機関に対して行う。その場合に、営業の一部の譲り渡しでも可能なような手当てをしておく。例えば、健全資産と付保預金のみのような営業譲渡をした上で、破綻金融機関に残った部分について司法手続、例えば破産処理などが考えられるわけですけれども、この場合は残った分ですから、ある程度時間をかけることも許されるということで、破産処理をしていく。
他方、既に健全な部分については譲受金融機関の方で金融機能が維持されるということがこの?のところでは考えているところでございます。
それから、もう一つ、?の「金融機能の維持」と、5ページにございますけれども、?が迅速に処理ができたケースですけれども、?の方は、営業譲渡までに時間がかかるケースということでございます。
これはここにございますように、営業譲渡のための事前準備が十分にできなかった場合など、ある程度時間がかかるケースでございますけれども、この場合については、一定の司法手続の下に破綻金融機関を置かざるを得ないのではないか。
そのときに一つ、民事再生手続という手続が次の臨時国会において、法務省の方から提案されるべく今準備がされておるんですけれども、民事再生手続というのがこれまでの会社更生法よりは軽くて、かつ、和議手続よりも法人に見合った非常に使いやすい手続になっているものですから、こういった司法手続を使って、司法手続と金融整理管財人という、いわば行政手続が競合する形で営業譲渡までの準備を進めたいということが考えられるのではないかと考えております。
この場合は司法手続の下にありますので、司法手続と整合性がとれる範囲内での金融機能ということで、一定の制約がかかる。一定の制約がかかるけれども、の「預金者等の利便性の確保」にございますように、付保限度内の預金の払戻しを一定の場合について許容するとか、付保限度額を超える部分については買取りを行うとか、そういった対応はこの司法手続の範囲内でも可能ではないかということが書いてあるわけでございます。
ただ、さはさりながら、それでは、一定限度額内の預金の払戻しということになりますので、次の流動性預金の問題について、ここに両論書いてあるような問題が出てくる。
それから、借り手の保護についても、この司法手続の下で、金融整理管財人の下では、融資のロールオーバーについても後で否認されないか、裁判所が許可してくれるかという一定の制約がございますので、これについてはかなり限界があるのではないかというようなことが書いてあるわけでございます。
それから、もう一つ、ブリッジ・バンクについても御質問がございましたけれども、ここで書いておりますブリッジ・バンクは、現行の金融再生法でございますブリッジ・バンクでございますので、長銀や日債銀の処理をしております特別公的管理銀行では全くなく、別のものとしてブリッジ・バンクの導入を提案しているわけでございます。
それから、一番最後に公金預金についてもお話がございましたけれども、これは付保対象の各論のところで議論していただくべきことかなと思っておりまして、この点はほかの各論等も含めて、さらに御議論いただかなければならないのかと思って、ここではお聞きしているところでございます。
以上です。
○坪井委員 もうちょっとよろしいですか。
○倉澤部会長 どうか、坪井委員。
○坪井委員
今のP&Aのやり方については大分煮詰まってきたと思うので、ただ、問題は、今までの日本の金融機関同士の、特に地方の場合ですけれども、例えば第二地銀の場合は、それぞれがものすごい形で競争してきているわけです。無尽から始まって相互銀行、そして今の第二地銀。その中身は相当どろどろした関係がお互いにあります。したがって、今のディスクロージャーという部分になると、なかなか難しい部分があるんですよ。要するに先先代からの付き合いの中で、あんたのじいさんがこう言ったとか、こうだからやってきたとか、だから、担保取らないできたと、いろんな問題あるわけですよ。それを全部さらけ出してやるわけですから、そのときに、事前に相当な準備をしていって、さあぱたっとやりますというときには、管財権というのがものすごく強い意識を持つわけです。したがって、預金保険機構に管財人を選定する権限を持たせておいても、事前にずっと調整してきて、いざ、はい、ここでだめですよというところまでいくのに2〜3カ月かかりますね、少なくとも。これはおかしいなと思ってから準備していって。そのときのいわゆる管財権というものがないと、調査もできないでしょう。
ですから、預金保険機構に、したがって、預金保険機構というのは既に管財権を持った団体であるというふうにしないと、事前の調査もそう簡単にうまくいかない。それを要するに最終的にはどこでも出しなさいということをきちっと言える形でない。ところが、これはずっといってから最後に管財人をそこで選定して、実際にそれに当たるということですけれども、預金保険機構が管財権を持たなければ、私は日本版のP&Aというのは、まず無理なんじゃないか。最終的に誰が管財人になるかという問題とはまた別に、そのくらいの強い権限がないと、今言ったような、いわゆる迅速かつ公平な形での処理というものは私はできないというふうに思いますので、その辺を少し掘り下げていただきたいと思うわけです。
それから、もう一つ、今のブリッジ・バンクの場合、「承継銀行制度を踏まえた制度を導入すべきである。」ということですから、その承継銀行というのは、したがって、次の買取り銀行になりますね。それがなかなか見つからないから大変だという前段あるわけですから、その承継銀行を、初めからこんなの付けておくわけにいきません。そのときに、コンペをやるような形で出せる部分があれば一番いいんですが、そうはなかなか地方では、少ない銀行の数の中でできません。そうなったときに、承継銀行に相当な公的資金の援助ですね。言うなら預金保険機構からでもいいんでしょうが、資本の増強等を含めた援助を示して、そういう案が、こういう形でやる方法もあるよということを示しておかないと、この問題はそう簡単にはブリッジもできないんじゃないかと思うんですね。この辺はいかがでしょうか。
○倉澤部会長 今の点、何かお答えになりますか。
○窪野審議官 ちょっと文章上、ここで譲受機関と承継銀行と使い分けておりまして、最終的な民間の受皿の方を「譲受金融機関」と呼んでおりまして、ここでの承継銀行というのは、既に再生法で措置をされています。まさにそういう最終的な受け手が見つからない場合に仮に受けて、整理をし、受皿を探すためのブリッジ・バンクを現行法では「承継銀行」と呼んでいるものでございますので、そういう使い分けをしております。
それから、受皿が出やすいようにという資本増強のところは、その前、6ページの最後から、譲受金融機関に対する資本増強策。これは当然ブリッジ・バンクで1回受けたものをさらに最終的に受けていただくところにも適用になるものでございます。
なお、併せて、先ほど来、深尾委員と坪井委員からも御議論がございました一定の限度まで一定の割合で保護するという形で流動性保護を図ったらどうかという御提案、これを流動性預金の問題のところで、一つの御提案として書き込む方向で工夫をさせていただきたいと思います。
○倉澤部会長 池尾委員、どうか。
○池尾委員 ちょっと別の論点になりますが、私、ワーキングのメンバーなんですが、そのときにちょっと見落としてしまったということになると思いますが、一番最後のところで預金保険料についての記述があるんですが、この書きぶりがどうも適切でないような気がいたしまして、私自身は金融機関の倒産リスクに応じた可変的預金保険料の導入というのは実務的に無理だというふうに思っておりますし、可変預金保険料の導入の方向に力点を置くよりは、早期是正措置の厳格化とかの方にむしろ重点を置くべきだといふうに個人的には考えているんですけれども、そういう今申し上げました金融機関、倒産リスクに応じた厳格な意味での可変預金保険料率というのは無理だという話と、現行の固定預金保険料で1本というのとどちらかしかないという議論はちょっとやっぱりおかしいはずで、これは最初の段階のときにちょっと申し上げたことがあると思うんですが、固定預金保険料率の弾力化というのはむしろ恒久措置ということであれば、積極的に考えるべき事柄だと思います。
それから、ここの書きぶりで気になったのは、可変保険料率の導入が市場規律の強化につながるという記述なんですが、これは認識として、ちょっと細かいことになってしまうかもしれませんが、違いますよね、これは。
預金保険の対象というか、セーフティネットを張ると市場規律が働かなくなるから、要するにセーフティネットがなければ、金融機関のリスクに応じて当然資金調達コストは変わるはずである。
ところが、預金保険を適用してしまうと一律の資金調達コスト、安全利子率で資金を調達できることになってしまうということで市場規律が働かなくなるわけですね。だから、働かなくなる市場規律のいわば代わりをするものとして可変預金保険料をという考え方があるわけで、市場規律の強化になるからいいというのは、これを書かれると、経済学者としてのこだわりかもしれませんが、これは明らかに間違っていますから、こういう間違ったことを堂々と書かれると非常に気にかかるということです。
だから、ちょっとくどくなって申し訳ありませんが、繰り返しになりますが、厳密な可変預金保険料率の導入というのは実務的に困難だと思いますが、保険料率の弾力化、例えば先ほど出た保護範囲を拡大するとか、そういうことがあれば、その部分については別途保険料率を適用するということは当然考えなければいけないはずなので、保険料率の弾力化については、むしろ考えるという方向で主張する立場をとる方が望ましいのではないかというふうに思います。
○倉澤部会長 市場規律の強化につながるというのが、代替性まで含むかどうかですけれども。
○松崎オブザーバー ちょっとよろしいですか。
○倉澤部会長 はい、どうか。
○松崎オブザーバー 横浜銀行の松崎でございます。
この基本的考え方については、特に意見はございませんが、今後、各界各層からの意見等を踏まえた上で最終的な考え方をまとめていくということでありまして、ちょっとこの場で申し上げるのはなにかと思いますが、実は昨日、地銀協で頭取方の会合がございましたので、その中で預金保険制度について議論がされておりますので、その内容について御紹介をさせていただきたいと思います。
特に関心の高かったのは名寄せの問題と決済性預金の全額保護ということでございます。
名寄せにつきましては、預金者には、氏名や住所の変更等に係る強制的な報告義務はないということや、それから、ソーシャル・セキュリティナンバーのような絶対的な識別器がないということで、過去に開設された口座のメンテナンスを含めまして、名寄せの正確性については技術的に限界があるということについては、ぜひ御配慮いただきたいという意見がございました。
それから、もう一点の決済性預金の全額保護につきましては、本日、基本的考え方の一つの考え方にあるわけでございますが、破綻懸念のある金融機関が普通預金に他の金融機関よりも高い金利を付して全額保護を殊更に宣伝して預金を集めるとか、あるいは預金者が高金利を期待して破綻懸念のある金融機関にあえて預金するといった流動性預金に対する金融機関経営者、それから、預金者のモラル・ハザードを助長するおそれがあるということで、決済機能の保護につきましては、あくまで預金保険制度とを別の制度的工夫によるべきであるのではないかというような意見がございましたので、この2点について御紹介をさせていただきたいと思います。
以上でございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
どうかお願いいたします。
○森脇オブザーバー 朝日信用金庫の森脇でございます。
最後の「預金保険料」の項目についてです。ここで「可変保険料の導入は望ましいと考える」となっておりまして、先ほどの御説明でも基本的な方向ではこうだということでお話がありましたが、私どもの業界としては、この第二部会の場において既に申し上げましたように、預金保険料は金融システム維持のための共通の費用であって、平等、公平、一律に負担すべきであり、可変保険料は採用すべきでないという基本的な考え方に立っておりますので、御留意いただきたく、一言申し上げます。
○倉澤部会長 ほかに御意見、御質問等ございましょうか。
どうかお願いいたします。
○野田オブザーバー 1点だけ。前回のこの部会でも何人かの委員の方から御指摘あった点で、いわゆる金融監督行政の議論がございまして、早期発見・早期是正、それから、早期処理というようなことで前回議論があったと思うんですけれども、今日のこれを拝見いたしておりまして、2ページ目の「基本的考え方」3.の?の冒頭の3行で早期に処理するということで触れられています。さらにその前の項では、「早期是正措置の適時適切な運用などが必要である。」というようなことで触れられておるわけですけれども、前回の議論で私の記憶では、現行の早期是正措置をそのままでいいのか、あるいはさらに何らかの発動基準の見直しが必要なのではないかというような議論もあったやに記憶しておるんですけれども、ここの書きぶりの中で、そこのところが若干読み取れないんです。今後さらなる議論あるいは検討を加えるのかどうかという点について、どういうふうに理解をしておけばいいのかという点についての質問でございます。
○倉澤部会長 どうか。
○河野金融監督庁企画課長
それでは、監督行政でございますので、一言申し上げますと、確かに私どもが御報告をさせていただきました範囲では、執行機関でもございますので、早期是正措置の適時適切な運用と、特にこの制度が発足しましてから日も浅いものですから、今すぐこれを本当に抜本的に見直すのがいいのか、悪いのか。やはりその制度の定着といった面も考えないといけないというのが私どもの気持ちではございますけれども、他方、もし当審議会で今後の御議論の中で、こういうふうに見直すべきであるとか、あるいはこういう点についてはぜひ検討せよというような一致した御意見を頂戴しました場合には、もちろんこれは真摯に検討させていただきたいと思います。
○倉澤部会長 どうか田島委員、お願いいたします。
○田島委員
ただいまの早期是正措置の件との関連で申し上げたいんですけれども、これは要するに早期に発見して、早期に治療しようという制度であるにもかかわらず、実際にこの早期是正措置が発動されたということが公表された途端に、預金の流出につながったりということで、余計に破綻へ転がり落ちていくというような実態があるのではないかということが見受けられますので、やはりこの早期是正措置の発動については、いろいろまた議論を深めて、そういう状況につながらないように適切な対応をしていく必要があるのではないかと考えております。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。
杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 一つは質問と、一つは、当部会になじまない質問じゃないかなと思っているんですが、一つは、先ほどの日本版P&A、坪井委員からも幾つか御質問出ましたけど、今準備されている、先ほど林室長からの法務省が準備している民事再生に関する新しい法制度を活用して、一体どれくらいの迅速性が期待できるのか。アメリカのような本当に数日というのはなかなか難しいんじゃないかと言われていますけれども、1週間単位なのか、月単位なのか、どんな感じの最小限の期待ができるのかということが一つ。
それから、もう一つは、私この議論に参加していて、多少いろいろ自己矛盾みたいな感じを持つことがあるんですが、それは金融監督庁の監督行政に係ることだと思うんですが、今日御出席いただいていますので、感想をお伺いしたいんですが、こういうふうに早期発見・早期是正ということでぎりぎりやっていきますと、どうしても監督行政がマニュアル化していくといいますか、やはり融資について1本1本担保があるかないかとか、そういうことを多分ぎりぎりやって、現にもうだんだんそういうふうになっていると言われているんですが、そういうふうになってまいりますと、日本の経済の再生という点から見ると、担保のないいわゆるソフト屋とか、それからベンチャーとか、そういうものを日本経済の再生のためにこれからどんどん育成していかなきゃいけないんだけど、我々がこういう精緻な議論をすればするほどお金が現実に出しにくい監督行政にどんどん追い込んでいくんではないかという懸念も一方で持つわけですね。これを実際に監督行政に携わっている方がどういう感じを持ってやっておられるのか。当部会に直接関係ない問題なんですが、ぜひお伺いしたいということで二つ。
○倉澤部会長 まず林室長。その後河野課長。
○林信用機構室長 初めの迅速な処理という点に関しましては、3ページの?のところで営業譲渡の迅速化ということでいろんな措置を述べていますけれども、法律的な枠組みとしては、迅速処理の障害となるような部分を1個1個つぶしていこうというようなことで、例えば資金援助の可能になる場合を拡大するとか、事前に名寄せについても準備をしていくとか、それから、債務超過の場合について、裁判所の代替許可によって株主総会を飛ばせるとか、そういったことについて法律的な障害は一つ一つつぶしていって、制度としては近月の処理も可能にするという努力をしているということでございます。
ただ、その場合でも、実際にそういった近月の処理は、ここでは基本形と書いてございますけれども、目指すべきというか、望むべき処理の仕方ではあるけれども、実際の処理に当たっては、名寄せも含めた事前準備が常に完全にできるかというと、そうではなくて、実際に当局が破綻の時期をコントロールするというのはなかなか難しいのではないかという、その事前準備の制約と、それから、もう一つ、受皿となる金融機関が実際にどれだけ現れるであろうかという問題があるわけでございます。
それに応える第一線の準備として、この?の「金融機能の維持」のところで営業譲渡までに時間がかかるケースについても、どのような処理が可能なのかということを書いておりますし、後者の譲受金融機関の問題については、?のところで「譲受金融機関が現れやすい環境の整備」、「譲受金融機関か直ちに現れない場合の対応」というふうなことを書いて、その点についても備えているという構成になっているところでございます。
○倉澤部会長 私からも一言。最終答申の前の基本的な考え方ということで、4ページの一番最後のところから基本形という一つの骨格ないしは基本的な構造みたいなことがあって、その後詰めるべき問題は多々あるということは、御指摘のとおりだと思います。
それでは、金融監督庁の河野課長、お願いいたします。
○河野金融監督庁企画課長
恐れ入ります。手短にですが、2点目につきまして、確かにおっしゃるとおりのいろいろ御懸念の表明というものは、実は国会におきましても、与野党の議員の皆様から日々私ども受けておりますし、そういう意味では、私ども検査マニュアルにつきましても、これの一律的・画一的な適用・運用にはならないようにするといった点を末端の検査官にも周知徹底をしております。
そういう意味で、いろいろ早期是正措置の議論もございますけれども、やはりこういったものを画一的に強化していくことが果たして適当であるのかどうか。また、こういった点についてもぜひ当審議会でも御議論いただければ、大変幸いに存じます。
○倉澤部会長 翁委員の方からお願いいたします。
○翁委員 先ほどの早期処理の件ですけれども、私はやはりこのペイオフ解禁後というのは、早期是正措置も含めて、早期処理に向けた条件を整えていくことが非常に重要なのではないかというように思います。
先ほどの預金の保護のあり方のところでも深尾委員がおっしゃっておられましたけれども、例えば1〜2割のヘアカットで済ませるためにも、その早期処理をすることによって株主の範囲程度に損失を止められれば、そういったヘアカットで済んで、システミック・リスクも防げるということになりますし、また、ペイオフ解禁というのは、まさに大口預金者も市場規律の主体として加わるということで、ますます市場規律が働く世界に移行していくわけですから、その意味で、ますます自己資本が例えば2%とか、そういう状態に金融機関がなっていけば、市場が退出を促すというプレッシャーはますます強くなると、そういう世界に入っていくんだと思います。
そういうふうに考えますと、監督当局もそういった世界に整合的な形で早期に処理できるような体制にしておくということが非常に重要で、決して市場規律と早期処理というのは矛盾するものではなくて、むしろ平仄を合わせるためにも非常に重要なのではないかというように思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
深尾委員、簡潔にお願いいたします。
○深尾委員 先ほど田島委員から早期是正措置を発動すると破綻に向かっていくという話なんですが、一つは、これまでの処理が遅過ぎたので、債務超過だということが疑われる。だから、転がっていくという問題が一つですね。
それから、もう一つは、付保対象か否かというのがどうもよくわからないという預金者がまだ多いんだろうと思います。この意味では、名寄せをした上で、この部分はしっかり付保対象ですよということを通帳に明示するなり、シールを張るなりして、誰が見てもわかるようにする。このあたりはここにもやはり書いておくべきではないかな。つまり付保対象で名寄せ済みのものについては、シールを張って、直ちに出せるようにする。あるいは住民基本台帳でもいいですし、何らかの番号制を設けるなりして、すぐ張られるようにしておけば、そもそも出ていかないといいますか、金曜日にクローズして、月曜日からすぐ払ってくれるということがもうわかっていて、しかも
1,000万まで保護されているということがわかっていれば、そもそも出ていかない。だから、その両面で対応すれば、そもそも早期是正でコアになる小口の預金が逃げていくということはないというふうに思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
なお、お手元に、八木委員から私宛のペーパーが届いておりますものをコピーして配付してあると思いますけれども、八木委員、所用のため御欠席ということで書面で私宛に御意見が出されております。ただいま皆様方から出た意見にこれを付け加えさせていただきたいと思いますので、どうぞお読みくださいませ。
ほかに。
坪井委員。
○坪井委員
もう大体まとめていただいて、多分会長からの発表ということになると思うんですけど、私ども中小企業者を抱えている特に地方の立場で言いますと、今まで日本にはペイオフの制度はあっても、ペイオフはなかったわけです。それで、今回、大きなバブルの後遺症があって、破綻銀行が出てくるということで、ここで凍結されて、これを解除するときは、結局は、その後にペイオフ凍結を解除するということになったときに、ペイオフがあるというふうに誰でも認識しますね。そのことによっての混乱をセーフティネットである程度これも防がなくちゃならないと思うんですよ。
結局、北拓が北洋にいくまでの間のいろんな問題で北海道がどれだけ疲弊したか、この現状は多分皆様御承知だと思うので、そういうことを、今の特に長銀も日債銀もこういう形でいますね。新潟中央銀行はようやくこうなって、これ以上もうないと言われておりますけれども、しかし、それにしても、問題はやっぱり、現実にこういう形を見せられていて、しかも処理にこれだけ長くかかって、いわゆる負債が超過しているということになりまして、ここへきて公的資金の云々になって、この現実は国民は見ていますから。
したがって、ペイオフということになって、今まではやらないから混乱しなかったのであって、ペイオフをやると言ったときに大混乱になりますから、その大混乱を起こさないセーフティネットというのは意識的な部分、いわゆる日本の経済再生のためのビッグバンに対しての一つの措置なんだということで、競争力つけるために必要だけれども、それによって直ちに個人的に、もしくは企業的に影響するものではないということを相当強く私はPRしていただきたい。そうでないと一般の方は、これは大変だとすぐ思います。銀行の頭取さんたちもやっぱり考えているようです。
と同時に、今日、政務次官おいてですけれども、自民党の政調会長がこの間、ペイオフなんかやるべきでない。こんなやったらとんでもないと言われているわけです。そうすると、現実に国民はやっぱりペイオフはないんだと思いますよ。そのときにペイオフやると言ったら、これはやっぱり大きな問題になりますよ。
そういう部分を含めて、実はこういう形をとって、再来年の3月いっぱいでこれだけの措置した結果は、ほとんど金融機関の安定は図られるんだということを大前提にして、そしてペイオフの話をするということが必要だと思いますので、一つ意見として申し上げておきます。よろしくお願いいたします。
○倉澤部会長 わかりました。ありがとうございました。
ほかにございますか。
どうか。
○鈴木オブザーバー オブザーバーということで僣越でございますけれども、委員からはいろいろ話がありましたけれども、銀行業界の方から決済資金については非対象というような意見が多いんですが、私ども第二地方銀行協会のメンバーは、決済資金の全額保護を願っております。私どもの対象の中小企業、特に零細企業では、その人の貯蓄と決済資金とが非常に混在していまして、それをすっきり分けることができないという面がございますけれども、零細企業では銀行の営業が一時ストップする、あるいは、そのストップした銀行と取引をしているということだけで非常に信用不安が起きまして、中小企業には大きな打撃を与えるということが予想されますので、決済資金につきましては、ぜひ保護の対象としてほしいというふうに思います。
以上です。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
池尾委員、どうか。
○池尾委員 今の御意見に対して質問ですが、その際、コスト負担についてはどういう形を想定されているんでしょうか。預金保険料をその分について金融機関自身が負担していただけるということで御主張なんでしょうか。
○倉澤部会長 ここで討議を始めるのも適切ではないと思いますので、池尾委員の御意見として承るということで、池尾委員、よろしゅうございますか。はい、ありがとうございます。
それでは、議事を進めさせていただいてよろしゅうございますか。
それでは、ここで確認させていただきます。
冒頭にも申し上げましたように、ただいま議論いただきました「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方(案)」につきましては、来週19日に第二部会として総会に御報告申し上げた上で、対外公表し、さらにパブリックコメントを求めることを予定しております。
本日、委員及びオブザーバーの皆様からいただきました御指摘を踏まえての最終的な修文につきましては、部会長の私に御一任いただけますなら、あとは適宜、個別に御意見をお持ちの委員の方々と御相談させていただいて修文を完了するということにさせていただきたいと存じますけれども、よろしゅうございましょうか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉澤部会長 ありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきました上で、19日の総会に報告いたしたいと思います。
○林政務次官 ちょっとよろしいですか。
○倉澤部会長 政務次官、どうか。
○林政務次官
御熱心な討議を聞かせていただきまして、ありがとうございました。ちょっと都合がございまして、途中で退席させていただきますが、保険の方はどうでもいいと思っているわけじゃなくて、大変いろんな用事があるものですから、そちらの方も大変聞きたいのですが、途中で失礼させていただきます。
坪井委員ほか、政治に対する御指摘も多々賜りましたので、よく挙挙服膺して、我々がこの間に立っていろんなことをやる。発言がまたメディアに乗りますから、政調会長がおっしゃったのも、坪井委員のお考えみたいなことが頭にあって、新聞でございますから、そこだけが拡大されたのではないかと、こう思っておりますが、いずれにいたしましても、党の方の議論にまた反映させていただきたいと、こういうふうに思います。
どうもありがとうございました。
○倉澤部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
○林政務次官 それでは、失礼させていただきます。
〔政務次官退席〕
○倉澤部会長 なお、この「基本的な考え方(案)」につきましては、今御承認をいただきましたようなこの後の修文等をした上で、総会に御報告申し上げた上、対外公表させていただくという予定でございますので、席上配付いたしました案文につきましては、会議後回収させていただきます。お帰りの際、席上に残していただきますようお願いいたします。
引き続きまして、第2の議題に入ります。
「保険の基本問題に関するワーキンググループ」における検討状況についての討議に移りたいと思います。
初めに、事務局からワーキンググループでの検討状況について報告をいただいた後、ワーキンググループ座長をお願いしております山下委員に補足説明をいただきまして、引き続き自由討議を行うことといたします。
では、事務局から報告をお願いいたします。
○菅野保険企画室長 保険企画室長をしております菅野でございます。どうかよろしくお願いいたします。
それでは、お手元の資料、右肩に「第二部会13−1」と書いてある資料でございます。「保険基本問題WGにおける検討状況の報告・事務局資料」この資料に沿いまして御説明を申し上げます。
まず、1ページでございますけれども、「保険の基本問題に関するワーキンググループ」の設置についてでございます。
これにつきましては、8月24日の第二部会で御報告したとおりでございまして、当面のテーマといたしまして、リスク管理の在り方、倒産法制の整備について御検討いただくこととなっております。
これまでの審議状況といたしまして、1ページ飛ばしていただきまして、3ページでございますが、4回の会合を持ちまして、御覧いただくような事項を中心といたしまして検討が重ねられてきております。
今後は、倒産法制につきましては、年内にとりまとめを行い、一方、リスク管理につきましては、年明け以降も引き続き御検討いただくということでお願いしているところでございます。
続きまして、検討内容の御報告をいたします前に、現行の保険分野における健全性規制や破綻処理制度などにつきまして、その概要の簡単な御紹介を申し上げたいと思います。
4ページ目には、大きく見た場合に、これらの制度がどうなっているのかということが説明されてございます。個々の項目については後ほど改めて御説明いたしますけれども、「1.健全性確保のための規制」といたしまして、ここでは責任準備金確保のための規制とソルベンシー・マージン基準を挙げております。さらに保険会社の早期是正措置といたしまして、ソルベンシー・マージン基準に応じた措置などがあるわけございます。
「2.破綻処理制度の概要」でございますが、現行制度における主な流れといたしまして、保険管理人による業務、財産の管理、保険契約の移転計画等の作成と移転の実施ということがあります。
なお、ここで資金援助をしたり、必要に応じて自ら保険契約を引き受ける、そういった機能を持つ制度といたしまして、保険契約者保護機構が設立されているところでございます。
5ページ以降9ページまでは、今御説明いたしました健全性確保の関係について、若干敷衍的に御説明しているものでございます。
5ページは、生命保険会社における健全性確保がどのようになっているかを概念的にお示ししているものです。資産運用が左側にございまして、これに対応する負債サイドとしては責任準備金があるわけでございます。この適正な積立てということがまず求められるところなわけですけれども、生保に特有な事情といたしまして、この責任準備金の多くが超長期の債務で、また、金利については予定利率の保証があるというので固定的なものとなっているということがあります。
また、ソルベンシー・マージン比率については、この右下のところに掲げてございますけれども、資産・負債のリスクとして、通常の予測を超えるリスクについてはソルベンシー・マージンで対応すると、こういった考え方になっているところでございます。
6ページにつきましては、これを若干整理したものでございまして、責任準備金につきましては、制度として標準責任準備金の制度があります。保険計理人により、必要な場合には、追加責任準備金の積立てが求められると、こういったこととなっております。
また、ソルベンシー・マージンに関しましては、これのリスクに対する比率をとりまして、先ほど申し上げたようにこの状況により早期是正措置につながると、こういった仕組みとなっております。
7ページでございますけれども、責任準備金とソルベンシー・マージンのカバーする範囲を、これまた概念的なものでございますが、御説明しようとするものでございます。
この図は死亡保障の例をとりまして、横軸に保険金支払、縦軸に発生確率を表したものでございます。ここにありますように、保険金支払がいわば確率的に変動するわけでありますけれども、その大半は責任準備金によってカバーされるところとなっております。このカバーを超える部分につきましては、ソルベンシー・マージンがカバーをすると、こういった構造になっているわけでございます。
8ページを御覧いただきたいと思います。8ページは、標準責任準備金制度と保険計理人の関係につきまして御説明するものでございます。
責任準備金につきましては左側、特に上半分にございますように、積立方式ですとか、あるいは標準基礎率が定められているところの標準責任準備金の制度がございます。
一方、保険計理人でございますけれども、右側にありますように確認業務を行います。特に責任準備金の積立水準が適正であるかどうかを実務基準に基づき確認するということになっております。この実務基準というのは、日本アクチュアリー会が定めておりますところの実務基準となっています。
ここで責任準備金に不足があるということとなりますと、これを意見書に記載して、左下にありますように追加責任準備金の積立てを求めるということになります。この具体的な方法は、先ほど申し上げました実務基準によるところとなっておりまして、この中で将来収支分析と呼ばれる一種のキャッシュフロー・テストが行われることとなっております。
9ページを御覧いただきたいと思います。こちらは、ソルベンシー・マージン基準と早期是正措置の関係につきまして、先ほど申し上げたところをまとめたものとなっております。
ソルベンシー・マージン基準の確保といたしまして、通常の予測を超えるリスク、これに対応するということでございます。
右が、早期是正措置に関しましては、ソルベンシー・マージン比率に応じまして3段階の措置。
200%未満〜 100%以上、 100%未満〜0%以上、0%未満、この三つの区分に応じまして、それぞれの措置がとられる。なお、純資産の状況に応じた措置も併せ講じられるということになっております。
10ページ以降は、現行の破綻処理制度に関する事項を簡単に御説明するものでございます。
10ページは、破綻処理の主な流れについて記載してございます。
すなわち、業務停止から保険管理人による管理の命令を経まして、保険契約の移転計画の作成とその承認へと流れてまいります。保険会社の破綻処理におきましては、保険契約の継続が大切であるというふうに考えられておりまして、このため、保険会社の保険契約を救済会社に移転するということが処理の中心に置かれております。途中から二股に別れておりますのは、左が救済会社が現れた場合、右は救済会社が現れなかった場合で、保護機構が自ら引受けを行うケースを示したものでございます。
次のページ、11ーページでございますが、ここで保険契約者保護機構の業務のイメージについて若干御説明をしておきたいと思います。
中央にあります保険契約者保護機構に対しまして、右手にあります機構に加入する保険会社、これは強制加入となっております。負担金は事前拠出制となっております。
さて、左手でありますけれども、破綻保険会社が生じた場合、まずは下に点線で囲ってあります救済保険会社を探すこととなります。これが現れた場合には、下に向かう点線でありますけれども、この救済保険会社に保険契約を移転することとなりますけれども、このとき保護機構は、救済保険会社に対しまして、破綻保険会社の責任準備金の90%までを補償するように資金援助が行われるところとなります。
なお、破綻保険会社の保険契約につきましては、契約条件の変更が行われることがございます。
一方、救済保険会社が現れなかった場合でありますけれども、保護機構が自ら保険契約を受けることとなります。破綻保険会社から保護機構に向かうこの実線になるわけでございます。補償内容の考え方は、救済保険会社が現れる場合と同じになっております。
なお、一番下の※でございますけれども、平成13年3月までの特例措置。この期間は、先ほど申し上げました補償内容よりも一層手厚い補償がなされることとなっていることを御紹介しているものでございます。
次に、12ページでございますが、これは御参考でございます。更生特例法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律でございますけれども、これにあります会社更生手続の流れを金融機関について図示したものでございます。
右側に特に更生特例法特有の流れがございます。監督庁による開始申立ですとか、預金者表の作成、手続代理などがあるところでございます。
次に、13ページ、14ページにつきまして御説明申し上げます。検討項目でございます。
まず、リスク管理のあり方でございますが、背景的な事情といたしまして、先ほど御説明いたしましたように標準責任準備金制度及びソルベンシー・マージン基準による早期警戒・早期是正により健全性を確保するということとなっております。一方、金利・株価の変動等の市場リスクに対応いたしました内部管理手法のより一層の充実が必要ということが考えられます。保険会社自身によるリスク管理の充実により、経営破綻に対するより早期の対応が可能となりまして、処理に伴う社会的コストの増大を防止することにつながるというふうに考えられます。
具体的な検討項目といたしましては、金利・株価の変動等に対するリスク管理のあり方について、先ほど来申し上げてまいりました現行の仕組みに見直しが必要かどうか、こういった点。保険会社会計を巡る今日的課題につきまして、例えば資産・負債の時価評価といった面につきましても、保険会社に特有の事情ですとか問題がございます。国際的にも議論が行われつつある段階にあるというふうに承知してございますけれども、こういった点について検討していこうということでございます。
2.保険会社の倒産法整備でございます。
背景といたしまして、保険契約については保障の継続が重要であるが、保険相互会社には、再建型倒産手続である会社更生法が適用できないといった問題がございます。
14ページでございますが、会社更生法が適用できたとしても、そのままでは極めて多数の保険契約者、数百万人というようなオーダーでございますけれども、これが手続に参加することとなることから、円滑な処理が不可能である。破産手続についても同様の問題があるということがございます。
なお、先ほど御紹介いたしましたように、金融機関、証券会社につきましては、更生特例法が既に整備されているところでございます。
検討項目でございますが、保険会社の更生手続に関する問題点につきまして、ただいま申し上げましたように、協同組織金融機関を含むところの金融機関等につきましては更生特例法が整備されているということでございますけれども、保険相互会社への更生手続の適用につきまして手当てをする必要があるのではないか、こういった点。手続上の特例措置といたしまして、監督庁による申立てですとか、保護機構による手続代理等が必要ではないか、こういった論点がございます。
保険契約者の保護につきましても、保険契約者に対する優先権の付与ですとか、あるいは管財人の解除権。これにつきましては、倒産法制上の双務契約の取扱いに係るところの問題があるのではないかとされてございます。この点についての検討。保険契約者間の公正・衡平、これをどのように図っていくか。こういった点が論点としてあるところかと思います。
保険業法上の行政手続との関係につきまして、保険管理人による管理を命ずる処分。現行制度においてこういった処分があるわけでございますが、これと更生手続との関係をどのように整理していくかといった問題。それから、セーフティネットとの連携。先ほど申し上げました手続代理をどうするかという問題以外に、手続の中でカットされる保険契約者の権利を、例えば資金援助といった形で一定限度まで回付させると、こういった機能が必要ではないかといった問題がございます。
その他の問題といたしまして、損害保険会社固有の問題ですとか、民事再生手続、破産手続の適用上の問題等があると考えられるところでございます。
次に、15ページ、これは「保険会社の健全性確保及び破綻処理制度の見直しの方向性」につきまして、イメージ図でございます。
左側、健全な状態におきましては、リスク管理の充実を図ることによりまして、健全な状態の維持を図ると、こういったことがございます。
また、右側、これは再建型倒産手続(保障を継続)を整備していくという中で、事業継続困難な状態につきまして、現行の対応では、破綻に伴います社会経済コストが相対的に大きいことになりがちでございますけれども、社会経済コストが大きくならない時点での対応を図ることができるのではないかということでございます。真ん中の網の掛かっているところでございますけれども。
また、右下の四角のところで、現行の業法上の手続の問題点があるわけでございますけれども、保険相互会社へ更生手続の適用する。さらに保険契約者保護機構との連携を図るというようなことで、こういった点が解決できるのではないかということでございます。
次に、あと参考資料が幾つかございます。御参考までに御覧いただければと思います。
まず、「保険加入の状況」でございますけれども、例えば民間保険でございますと、8割の世帯が加入している。簡保、農協を含めたところの全生保ですと9割を超えるといったレベルとなっているところでございます。
年代別加入状況ですが、これは、例えば終身保険で御覧いただきますと、20代、30代といった比較的若い時代に加入して、したがいまして、その加入している期間は相当長いということが窺われるところでございます。
次のページで、加入保険金額でございますけれども、例えば、普通死亡保険金額を見ますと、世帯で
4,566万円、世帯主として 2,732万円とありまして、かなりの金額の保障が求められているということが窺われるところでございます。
次のページ、「生活保障に占める生命保険の役割」といたしまして、アンケート調査でございますが、万一の場合に対する準備手段ですとか、夫婦の老後生活に対する準備手段としまして、生命保険がかなりのウェイトを占めているという結果になってございます。
一番最後、19ページでございますけれども、「個人金融資産に占める保険の割合」としまして、ここにおきましても保険がかなりのウェイトを占めております。約4分の1、25.1%が保険。個人金融資産残高
1,200兆円余り。その中で4分の1が保険といった結果になっているということでございます。
以上、簡単でございますけれども、御説明させていただきました。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
それでは、山下委員、お願いいたします。
○山下委員 ワーキンググループの座長を務めさせていただいております山下でございます。今、事務的より資料に基づきまして、ワーキンググループの設置目的及び現在までにどういう課題を考えていって、ある程度解決の方向としてどういうことがあるかというようなことの御報告をいただきましたので、私の方から若干の補足をさせていただきます。
平成7年の保険業法の改正によりまして、我が国の保険監督法制というのも大分現代化されたわけでございますが、今回いただいた二つの課題でありますリスク管理、それから破綻処理制度と、この二つの課題について言えば、リスク管理についてはおおよその制度的枠組みは既に整理してある。これに対して破綻処理制度の方は、やや制度の欠落があると、こういう位置づけではないかと思っております。
リスク管理につきましては、資料で御説明がございましたように、責任準備金という、最も生命保険会社のリスク管理で重要な側面について、標準責任準備金制度等を整備いたしております。それを担保するための人的な仕組みとして保険計理人制度というようなものを設けているわけでございます。ただ、これが従来、十分機能してきたんだろうかというあたりは、実際の破綻事例など見ると反省すべき点があるのではなかろうかということで、今回いろんな面から見直しをしてみようということでございます。
特にこの側面では、会社内部におけるモニタリングをどうすれば実効的なものとできるか。これは保険の分野では、こうすればいいという決め手は諸外国でもまだなかなかなくて、各国ともいろんな方策を模索しているということでございますが、そういうものを参考にしながら、将来のシナリオを設定して、どういうリスクがあって、あるいはそのリスクが発現するとどういう結果になるかと、その予測を十分精密に行って現状を把握する。そして、もし、先行き困難な状況であるということになると、これをもう一つの課題である破綻処理制度へ迅速につなげていくというふうな仕組みを考えているわけでございます。
この破綻処理制度については、保険業法に基づく行政的な制度が現在既にございまして、これは実際の破綻事例でも用いられているわけでございますが、どうしてもやはりそれだけでは済まないというふうな認識が一般的でございまして、特に一番欠落の甚だしいのは、相互会社につきましては、会社更生法の適用がないというあたりでございます。
それから、株式会社、相互会社を問わず、破産法、会社更生法、いずれを適用するにしても、保険特有の破綻処理手続を進めていく上での問題があるわけでございまして、金融機関については、更生特例法等で金融機関に即した破綻処理制度が既に設けられているわけですが、保険会社の方はそれもまだないですし、仮にそういうものを参考にしながら作ったとしても、なお保険特有の諸問題が残ります。これは非常に専門的な話になりますが、先ほどの資料の14ページにあったような諸問題について、今回こそは最終的に詰めて、十分な破綻処理制度を作っていこうと、こういうふうなことでワーキンググループのメンバーの皆様方には、相当の頻度で会議にお付き合いいただいております。何とか皆様方のお知恵を借りて、良い案を作りたいというふうに考えている次第でございます。
以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
ワーキンググループの検討の状況について御報告いただきましたが、時間は限られておりますが、自由討議の時間を取りたいと思います。
ただいまの御報告及び御説明につきまして、御意見あるいは御感想等がございましたら、どうぞ御自由にお出しいただきたいと思います。
斎藤オブザーバー、何か御感想等ございますか。
○斎藤オブザーバー 生命保険協会の斎藤でございます。
特段の感想はないのでございますが、大変な大仕事、特に会社更生法の適用等につきましては、大変な大仕事で、大きなエネルギーを要するものと思いますが、ぜひ御審議のほどよろしくお願いできればというふうに思います。
以上でございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
あるいは損保関係で、田山オブザーバー、何かございますか。
○田山オブザーバー
特にございませんけれども、相当頻度高くやっていただいているようですので、今後も精力的に御検討をお願いしたいと思います。
○倉澤部会長 外国保険会社の森崎オブザーバーも何かこの際。
○森崎オブザーバー
私の方の理解といたしましては、現在ございます保護機構の再検討も含まれるというふうに理解しておりますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
○倉澤部会長 何かございましょうか。ワーキンググループのメンバーであります池尾委員、深尾委員も何か御感想ございましたら、どうぞ。
○池尾委員 その前に、今の点、御質問だったので確認をして。
○倉澤部会長 どうも大変失礼しました。
室長、どうぞ。
○菅野保険企画室長 先ほど申し上げましたように、倒産法制の中で、その保護機構といろいろな連携が行われるというシーンがございます。その点につきましては、保護機構の役割がどういうものになるべきかといった議論は当然に行われるということであろうと思います。
あと、実際のワーキンググループの中での御議論で、保護機構に関しまして、どういう問題が提起されるかということによりまして、どこの範囲まで議論が及ぶのかということは、また別途出てくるのかなという感じがいたしております。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。大変失礼いたしました。
高橋委員、お願いいたします。
○高橋委員 ただいまの保護機構に関連した質問なんですけれども、資料を見せていただきますと、リスク管理において責任準備金の確保ということが非常に大きなウェイトを占めているようです。また、破綻処理においても、保護機構の中では責任準備金の定率保証ということが契約者にとっての拠り所といいますか、裏返せば、定率の自己責任、自己負担を求められているという形になっています。私は、この保護機構の発足時に保険審議会の委員だったものですから、そのときからの経緯で明らかになってない部分をちょっと教えていただきたいと思うんです。
責任準備金というのが個人に帰属しないものであって、個人のチェックが不可能なものであるけれども、公平性を図るためには、責任準備金を補償の数字にするしかないでしょうということで、発足時に合意を見ました。けれども、その責任準備金というものが、例えば、現在、リスク管理においてとられている責任準備金、非常にクリアに積立方式も明らかになっているわけなんですが、過去においてはそうでなくて、保護機構ができたときにも、どういう積立方式によるものかとか、諸々の細部というのは決められなかったわけなんですね。保護機構が発足してから細部を決めていくと。それを透明性を図りつつやっていくということだったんですけれども、最近耳にしたところによりますと、現在、例えば、東邦の破綻処理で検討している現在の保護機構の責任準備金というのは非常に甘い基準といいますか、チルメルになっているのではないかということです。監督庁との連携というのは非常に大切だと思うんですけれども、現在定めている基準と、今行われつつある破綻処理の責任準備金の定義なり基準にきちんと整合性が図られているのかどうか伺いたい。もし現在図られていないとすれば、今新しい見直しがスタートするにあたり、その破綻処理制度の中で、資料の中に適切な水準まで補償ということがあるんですけれども、その適切な水準という議論の中に標準責任準備金なり責任準備金をどういうふうに検討していくのかということが問題点として上がっているのかどうか、お聞きしたいと思います。
以上でございます。
○倉澤部会長 ございますか。では、室長、どうぞ。
○菅野保険企画室長 現行の保護機構からの資金援助等の仕組みにつきまして、いろいろな御議論がこれまであったということは伺っております。
まず、今お話の一番最後の点から申しますと、適準の水準までというイメージは、一つには現行業法による資金援助の水準というのがございまして、基本的には更生手続というような形で倒産法制が整備された場合にも、それと言ってみれば同等のレベルの資金援助等が行われるということが、まず一つイメージとして考えられるのではないかというふうに思うわけでございます。
別途、その責任準備金を基準としたこういった補償のあり方が、どういったものがいいのかというような御議論につきましては、これは一つあり得るところかなというふうには思っておりまして、この点につきましては、また皆様方の御意見を伺いながら、制度として考えていく点があるかどうか、考えていきたいというふうに思っております。
○倉澤部会長 どうか、高橋委員。
○高橋委員 今後の検討の方向はわかりましたが、現在の契約者保護機構の中での責任準備金というものの捉え方について確認をさせていただきたいのですが、どなたかお答えいただけないでしょうか。
○倉澤部会長 深尾委員、何か御意見ありますか。
○深尾委員 何かちゃんと答えてないようですので、私の知る限り答えますと、私の知っている範囲では、全期チルメル方式であって、法定の標準責任準備金ではない。法定は純保険料式で積み立てる。一番厳しい方式ですけれども、保険会社によっては、それまで積まれていないところもある。かつ、90%まで保護するというのは全期チルメルですけれども、さらにそこから早期解約控除を引く場合があって、実際上は90%にならない場合があり得るということです。
○菅野保険企画室長 ちょっとよろしいでしょうか。
○倉澤部会長 どうか、室長。
○菅野保険企画室長 補足させていただきますと、標準責任準備金の制度がございまして、これは法定されているわけでございますけれども、一方、特段の事情がある場合には、監督庁の認可を受けてということで、それによらない積立て方もできるということが制度上、今規定されているわけでございます。
御指摘の東邦生命につきまして、これは処理の途中でございまして、どういう経過になっているのか承知しているわけではないんですけれども、東邦生命につきましては、いわゆる平準純保険料式の積立てではなくて、チルメル式の、何年チルメルでしたか、手元に資料がございませんが、そういった積立て方になっていたというふうには聞いてございます。
補償に関しましては、それをベースにした補償の考え方ということで行われることになるのではないか。ちょっと正確なところを把握してございませんけれども、そういうふうに思っております。
○高橋委員 そうしますと、例えば、今10年チルメルだったとすると、補償の水準は10年チルメルに従うということですか。私がちょっと聞いた話では、それは全期チルメルの方ではないかというような話だったんですけれども、協会の方あるいは深尾先生、おわかりでしたら教えていただけますか。
○斎藤オブザーバー よろしゅうございますか。
○倉澤部会長 どうか。
○斎藤オブザーバー
現在、生命保険協会で保険計理人というものが、弁護士さん、それから会計士さん、その三つのグループの一員として御指名をいただいているわけでございますが、管理人がどういう形で進めているかということについては、私、一般委員という形で今日は出させていただいておりますので、私の方から申し上げるのはちょっと適当ではないというふうに理解しております。
○倉澤部会長 この問題は、あるべきリスク管理と倒産法制との関連で、あるいは今後また適宜このワーキンググループの経過については御報告いただくこともあろうと思いますので、またその御報告いただく機会ということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
それでは、予定の時間も参りましたので、これで第2議題を本日は終了させていただきたいと存じます。
なお、前回と全く同じことを申し上げて恐縮ですけれども、本日も部会終了後、記者会見を行います。殊に預金保険制度に関する議論については、関心の高まりもあって、委員の皆様方にも個別に熱心な取材等があるかと推察されますが、「基本的な考え方」の公表に向けての議論の過程にありますので、本日の内容の対外的な対応につきましては私どもに御一任いただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最後に、次回の日程等につきまして、事務局より御連絡させていただきます。
○玉川調査室長 次回の日程は、11月10日(水曜日)の午後2時からを予定しております。議事といたしましては、本日御審議いたしました「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方」の公表後、寄せられるであろうパブリックコメント及び新聞論調等の御紹介を行い、自由討議を行うことを予定しております。
○倉澤部会長 ただいま御説明のありました次回の進め方等につきまして、質問、意見等ございますか。
それでは、そのようにさせていただきます。
以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。
(以 上)