金融審議会「第二部会」第15回会合議事録

 日時:平成11年11月22日(月)10時00分〜12時06分
 場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室

○倉澤部会長 定刻になりました。ただいまから、第15回金融審議会「第二部会」を開催いたします。
 皆様、御多用のところ御参集いただきまして、本当にありがとうございます。
 本日はまず初めに、前回に引き続き、預金保険制度に関する残された論点につきまして、「論点メモ」及び資料に基づき討議を行いたいと思います。次に、「保険の基本問題に関するワーキンググループ」における検討状況についての報告を受けた討議を行い、最後に、有価証券報告書等のディスクロージャー制度の電子化、いわゆるEDI−NETについての事務局からの報告を聞くことを予定しております。
 それでは、預金保険制度に関する討議に入りたいと思います。まず、林信用機構室長より、残された論点に関する「論点メモ」及び資料につきまして説明をお願いいたします。
○林信用機構室長  それでは、信用機構室長の林でございますけれども、お手元の 「第二部会15−1」と書きました(預金保険制度に関する論点メモ)という資料と、それから、15−2という、これはいろんな資料をとりまとめたものでございますけれども、これを併せて御覧いただきながら、先般の「基本的な考え方」で残された部分、あるいはもう少しこの点を議論していただきたい部分をとりまとめておりますので、御説明させていただきたいと思います。
 まず、「論点メモ」の方の1ページ目を御覧いただきますと、「1.流動性預金の問題」と書いてございます。「基本的な考え方」では御承知のとおり幾つかの御議論をまとめたところでございますけれども、ここでも幾つかの議論をまとめさせていただいております。
 一番上の方の○のところから読みますと、一番上の○ですけれども、預金保険制度は少額預金者保護を目的とする制度であり、決済の問題は可能な限り、破綻処理の迅速化と民間による多様な決済サービスの提供によって解決すべきではないかという基本的な考え方がございます。
 これに対しまして、もう一つの考え方として、金融機関が破綻して営業譲渡までにある程度時間がかかったとしても、決済機能を止めることなく企業や個人等の決済が円滑に行われるようにするために、当面の営業資金等が保管されている流動性預金については、全額保護することにより速やかな払戻しを認めるべきではないか。
 このような議論に対しては、次の・にございますように、流動性預金を全額保護とすることは負担やモラル・ハザードの増大につながるとともに、新たな金融商品を開発するイノベーションを阻害するのではないかという反論がございますし、この点については、モラル・ハザードが生じる、あるいはイノベーションを阻害するといった問題に対しては、例えば、全額保護する流動性預金を付利されない預金に限ることや、金利に上限を設けることで、ある程度緩和できるとも考えられないか。
 ここは何を申しているかと申しますと、資料の15−2の2ページの方を御覧いただきますと、ここでは「流動性預金の状況」ということで、当座預金や別段預金のように、専ら決済の用に使用されている預金を上の方に書きまして、貯蓄預金や通知預金のようにかなり資金運用の色彩の強い預金を下の方に書いているわけでございます。
 こういうふうに流動性預金はいろいろあるわけですけれども、特に一番上の当座預金、これは専ら企業の決済用に使用されている預金で、臨時金利調整法におきまして、現在でも付利が禁止されている金利ゼロの預金でございます。それから、別段預金は、例えば、内国為替の送金資金の保管とか、歳入金の受入れといった形で、取引の過程にある資金を一時的に保管するための預金科目ということでございまして、これも通常、無利息になっております。
 決済の保護というときには、こういった当座預金や別段預金のような金利も付かない、決済用に専ら使用されている預金を保護していくというのが一つの考え方ではないかということで、ワーキンググループの方では事務局から、仮に流動性預金について全額保護をするというような考え方に立つとどのような預金種目に限って保護すべきということが考えられるかということで申し上げましたのが、一つの考え方としては、当座預金や別段預金のような金利が付かない預金を保護するという考え方があります。
 ただ、その場合には、普通預金についても、現在は当座預金を開けない事業者、あるいは個人的な事業者によっては、普通預金を事業の決済のために使っているという実態があるものですから、この当座預金や別段預金に限って保護するという考え方に立つと、普通預金の中の一部について新たな預金科目を作って、例えば金利ゼロの普通預金というようなものを作って、その分を取り込んで保護していかないといけない。ただ、その場合には、そういった新たな科目を作るということについて相当国民的なコストもかかるし、それなりの資金シフトも生じるのではないかということが考えられます。
 これが流動性預金を保護する場合の一つの考え方なわけですけれども、もう一つの考え方としては、より現在の普通預金まで取り込んで、普通預金はここにも書いてありますように、事業の方が使っていると同時に、個人にとって給与振込とか、各種料金とか、我々個人にとっても、いわば自動振替といった決済のために使っておるわけで、普通預金まで取り込んで流動性預金を保護するということが考えられる。ただ、その場合には、普通預金に高い金利を付して、破綻しそうな金融機関が預金を集めるといってモラル・ハザードが非常に生じやすいものですから、その場合には普通預金について金利規制を復活させると申しますか、金利規制を一定置いて、こういったモラル・ハザードが生じないようにしなければならないという問題があります。
 これが第2の考え方であり、さらに第3の考え方としては、こういった普通預金あるいは当座預金に区切ることなく、流動性預金について全て保護していく。ただ、それは非常に過渡期的な措置と申しますか、二、三と申しますか、預金全額保護の措置がなくなる状態で預金の一部カットが起こり得る状態に移行するために、限定された期間、流動性預金全てについて保護していくということも第3の案として考えられるというようなことも事務局では問題提起して、ワーキングでは議論いただきました。
 ただ、それに対しましては、ワーキングでもいろいろ御意見がございまして、一つには、やはりこの第1案のように迅速処理とか、早期処理といった二つの条件によって決済の問題というのは対応すべきであって、なるべく「小さな預金保険制度」という方向性を見失うべきではないんではないか。何かするにしても、その流動性預金の保護というのを一定のことをやるとしても、時限的なものにするべきであって、例えば、スイープ勘定のような新たなビジネスの開発を促進するような環境整備を併せて考えるべきではないかという御意見。
 あるいはどの案をするかということについては、まさにどれぐらい棄損した状態で金融機関が破綻するのか。例えば、早期是正措置が非常にうまく行われて、棄損率が1%とか2%とか、そういう状態であれば、どの案であっても、安心してとれるのではないか。まさにどういった形で金融機関が破綻するのかということが重要じゃないかという御意見。
 あるいはまた、決済というのはお金のフローであって、このフローを保護するために預金というストップまで保護するというのはいかがなものであるか。その場合には必ずモラル・ハザードが生じるのではないかという御意見。
 それから、さらには、なかなか現在の我が国の環境では早期是正措置がきちっとできる環境まではいっておらないのではないか。その場合には一定の流動性預金保護というのは必要であって、その場合には、私が先ほど申し上げました金利がゼロの預金に限って保護していくというのが一番いいのではないかといった意見もワーキングではいろいろいただいているところでございます。
 「論点メモ」に戻っていただきますと、今申し上げましたのがこの二つ目の○の 流動性預金を全額保護することについてということでございます。
 三つ目の○でございますけれども、決済サービスへの影響を緩和しつつモラル・ハザード等の問題を回避するため、付保限度額を超える一定額について、予め定められた比率で迅速に払い戻すこととしてはどうか。
 この決済性預金に限らず、あらゆる預金について、例えば 5,000万円までという、1,000 万円までは 100%保護するけれども、それを超えて 5,000万円までは例えば80%という予め定められた比率で払い戻すという考え方でございますけれども、これについては、事前準備が十分でなくて、名寄せができていませんと、やはり迅速な払戻しができないのではないか。
あるいはその 5,000万円という金額、どこかで一定の線引きをしなければならないわけですけれども、それが決済の保護として十分であるのだろうか。あるいは中小企業にとっては、例えば80%ということになると常に2割余裕資金が必要とされるわけで、それがどうなのかという問題があるかと考えております。
 これが代表的な1案、2案、3案と三つの考え方があるわけですけれども、流動性預金に係るもう一つの側面として、四つ目の○にございますように、金融機関の破綻に当たって、仕掛かり中の取引の問題が法制上の紛争を生じさせるとの指摘もある。これに関しては、別段預金等についての預金保険での扱いを明確にしていくことで解決できるのではないか。
 それから、別段預金、仮受金に計上される仕掛かり中の決済取引については、金融機関の決済機能に対する信頼性を維持するため、未決済取引を結了できるよう全額保護すべきではないか。
 上記に関しては、仕掛かり中の決済取引をどのように定めるのか、当座預金等に残されている決済性預金との公平性をどう考えるか、また、どのような手段で(誰の負担で)保護するのか、などの問題があるのではないかと書いてございますけれども、これは資料の5ページを御覧いただきますと、「決済に影響が生じると想定される取引の態様」ということで、決済がどのように行われているのか、あるいはその決済のどの部分は少なくとも保護してやらないといけないのかという観点からまとめたものでございます。
 全ての決済がその日のビジネスデーが終わるまでにきちんと行われていれば、日中破綻ということがなくて、営業時間が終了してからの破綻ということでやれば、きちんと整理することができるわけですけれども、ここに書いてありますのは、翌日にまたがってこういった取引が行われているということでございます。
 1.内国為替と2.手形交換に分けて書いておりますけれども、1.の内国為替の場合、?で予約扱いの振込ということですけれども、金融機関に振込を依頼する場合に、例えば2時頃までですと、その日のうちに取引が結了されるわけですけれども、そういった2時とか受付締切り時刻以降に窓口で自分の預金、あるいはATMなんかでもそうですけれども、現金を持ち込んで振込を依頼しますと、翌日付けの取引になり得るということであります。
 流れ図で書いてございますように、振込指定日の前日に振込依頼に基づき現金を入金する、あるいは依頼者の口座から引落しまして、これが別段預金という形で入金される、あるいは滞留するということになります。この時点で振込者からの手元からこのお金の支配が離れてしまうわけであります。
 次の日、振込指定日に電信の送信がなされて、振込先の口座に入金があり、他方、日銀の当座預金では金融機関の収支尻が決済されることになるわけですけれども、この二重線のところで日をまたぐわけですが、二重線の前の振込指定日前日というところで金融機関が破綻した場合に、どうしてやるかということになるわけであります。
 別段預金というのもその人の預金であるということからしますと、預金保険法の立場では、この別段預金も預金者の預金に含めて、 1,000万円までの預金かどうかということを考えていくわけですけれども、こういった預金者の支配を離れていった預金についての取扱いについては、この振込が流れていくようにしてやらないと、決済に支障が生じるのではないかということが言われているわけであります。
 例えば、こういったものと類似の取引が次の以降に書いてありまして、?の先日付振込あるいは給与振込でございますけれども、これはかなり前の振込の前日以前の段階で振込依頼があって、振込指定日の前日に支払人の当座預金にお金が入金される。振込依頼人は翌日の振込を見込んで融資を受けるなどして資金を確保し、これが別段預金に移転し、滞留する。振込指定日が来ますと、振込先の口座には朝一番で入金がきちんとされる。夕方には日銀の当座預金で決済されるわけですけれども、下の括弧に書いてありますように、これは中規模以下の金融機関で見られる取引ということでございまして、大手の金融機関では前日から資金を確保せず、振込指定日に当座預金又は普通預金から資金を引き落とす。この際、一時的に当座預金の残高がマイナスになるということもあり得るわけですけれども、その日のうちに入金がなされることを前提に、事前に了承している。あるいは了承できないような取引先に対しては、こういった先日付の取引は受け付けない。
 他方、中規模以下の金融機関あるいは中規模以下の相手先ということになりますと、むしろ前日から別段預金に資金が移転され、滞留されているということでございますので、この時点で金融機関が破綻したときの取扱いは問題になるということでございます。
 以上が内国為替の場合でございますけれども、もう一つ、手形交換の場合ですけれども、手形を持ち帰った支払人の方の口座がある銀行の資金の動きでございますけれども、これは、交換日の前日になりますと、手形の振出人は翌日以降の決済を見込んで融資を受けるなどして、資金を確保して、当座預金、支払人の口座にお金を入れておくわけであります。交換日に9時頃手形を持ち帰りますと、持ち帰った手形の金額に応じて随時当座預金からその当該金額が引き落とされるということになります。
 したがいまして、支払人にとっては、前日のうちに当座預金にお金を入金しておいて、滞留しておかなければならない。ただ、この前日が終わったところで金融機関が破綻いたしますと、この当座預金についても当然一部カットということが起こり得るわけですので、これで決済が滞ってしまうということになるわけであります。
 この支払人にとっては、当座預金に滞留しているものも、あるいは上の方の別段預金に滞留しているものも、同じように融資を受けるなどして資金を確保しておるわけでありまして、こういったものがカットされる、あるいはブロックされることについて、どう考えるかということになるわけでございます。
 「論点メモ」に戻っていただきますと、先ほど申し上げましたのはパブリック・コメントでもいろいろ出てきておるのは、こういった別段預金について取扱いを明確にまずすべきである。ただ、その場合に、○の下の一つ目の・にありますように、未決済の取引を結了てきるように少なくともしてやるべきではないかという御意見があるわけですけれども、ただ、三つ目の・にありますように、仕掛かり中の決済取引というのはどの範囲とするのか。範囲がきちんと確定されないと預金保険法上、保護するにしても、あるいはほかの方法で保護するにしても、いけないわけですけれども、こういった仕掛かり中の取引というのをどういった形で定義できるのかというのが、なかなか難しい問題かなと思っているところでございます。
 2ページ目にいっていただきますと、こういった流動性預金を仮に保護するということになったときに、誰に負担を求めて保護するのかということが書いてあります。
 上の方の○は、流動性預金については、現金という物の保管・運送サービスの途中段階であるとみなして、他の預金債権あるいは一般債権よりも弁済が優先する先取り特権が付せないかということでございます。
 こういう考え方に立ちますと、流動性預金については先取り特権を付して、金融機関の破綻の度合が余り大きくない、通常の場合であれば 100%保護される。それから、預金債権のうちで、 1,000万円までの少額預金者については預金保険で保護されるということになりますので、結局、割を食うのは 1,000万円を超える大口の預金者であったり、あるいは一般債権者、預金保険以外の預金ということになりますから、大口のCDでございますとか、銀行社債とか、そういったものがより割を食う形にして、そういった方に犠牲を求めて流動性預金を保護していくということになるわけであります。
 それから、二つ目の○でございますけれども、これは、仮に一部の流動性預金について全額保護した場合、全額保護される流動性預金については、それ以外の預金よりも重い保険料負担を課すべきではないかということでございまして、例えば、流動性預金に対する保険料を高率のものにする、あるいは保険料の算定母数−−税の世界ではタックスベースみたいなものを保証される限度額に合わせて、一般の預金は 1,000万円までの預金に保険料率を掛けるけれども、全額保護される流動性預金については全額に保険料率を変えるということによって、この部分がより重い保険料負担とするということが考えられるわけであります。
 以上が流動性預金についての議論の部分でございますけれども、次に、「個別の付保対象」というところでございます。
 ざっと読み上げさせていただきますと、まず、金融債については、転々流通する有価証券であって名寄せにより一人当たり一定限度までを保護することが技術的に困難であること等から、預金保険の対象になっていない。しかしながら、転々流通することのない保護預り専用であって、付保対象であることを明確にして個人向けの貯蓄手段として販売されているものに限れば、付保対象とすることが考えられるか。
 どの部分がそうであるかということは、前回もちょっと資料を御覧いただきました。付保対象の資料は幾つか前回と同様のものを付けているところでございますので、ここでは御説明は省略させていただきます。
 外貨預金については、為替リスクが存在する等もともとリスク性の高い商品であり、国民にとって一般的な貯蓄・決済の手段となっていないこと等から、預金保険の対象となっていない。付保対象とするためには、少なくとも、貯蓄や決済の手段としての利用が国民にとって一般的なものとなっている必要があると考えられるが、外貨預金の利用の現状から見て、そう言えるか。
 公金預金・特殊法人預金については、預金者が一般大衆でない上に、1000万円まで保護しても実質的な意味は乏しいこと等から、預金保険の対象となっていない。しかしながら、企業との横並びを勘案すれば預金保険の扱いに差を設ける必要性はないこと、流動性預金について仮に何らかの対応を行う場合には歳入の管理、自治体の歳計現金などの管理に実質的なメリットが期待できることから、付保対象とすることが考えられるか。
 預金利子については、預金者や金融機関経営者のモラル・ハザードを助長する上に事務手続が煩雑になること等から、預金保険の対象となっていない。しかしながら、預金利子を守ることで少額預金者に安心感を与え無用の資金シフトを防止するという側面や、倒産手続の迅速化及び郵便貯金との均衡等を勘案した場合、付保対象とすることが考えられるか。
 外国銀行在日支店の預金については、管轄権の問題から破綻処理に当たって迅速かつ適切な対応をとることが困難であること等から、預金保険の対象となっていない。預金者保護の観点や諸外国の預金保険制度とのイコール・フッティング等を考慮すれば、付保対象とすることも考えられるかということでございます。
 それから、3ページにいっていただきますと、「預金等債権の買取り」という項目がございます。この部分も「基本的な考え方」では触れていただいていないところでございますけれども、現行の預金等債権の買取りの対象というのは、預金保険の対象である預金に限られております。これを預金保険の対象でない預金、あるいは債券にまで拡大するかどうかという議論がございます。これについては、非付保対象預金等の流動性の確保、債権者の集約による倒産手続の迅速化の観点などから、買取りの対象を一定の条件を満たした非付保対象預金等に拡大することは考えられないかという議論でございます。
 この点もワーキンググループでは議論いただいておりますけれども、これに積極的な立場としては、預金保険のカバレッジは小さくても、その破綻処理に当たっては、預金保険の機能が非常に強力である方が処理が迅速に行われるのではないか。その観点から、買取り範囲を広げるということを考えるべきではないかという御意見。
 それに対しまして、預金保険というのはそもそも小さい預金保険を目指すべきであって、例えば、預金保険機構が具体的にはリスクを取ってまで非付保対象預金の買取りというものを行いますと、これから保険料を財源として預金保険がやっていくときに、預金保険機構が買い取りますと、買い取った後にそれが確保できなかった場合のリスクを預金保険が負うのかという問題が出てくるわけでございますが、預金等債権買取りの場合は、一定額で概算払い率で買い取ってやる。それからさらに回収が出てきた場合は清算払いを行うわけですけれども、他方で、清算した場合に、不足した場合に取り返すという仕組みにはなっておらないものですから、そういったリスクを預金保険機構が負うことについてどう考えるかということでございます。
 それから、「4.対象となる金融機関の範囲等」でございます。これは資料の15ページを見ていただきます。
資料の15ページを見ていただきますと、預金保険法におきます金融機関の定義が書いてございまして、第2条の第1項で、預金保険法上の「金融機関」というものについて、銀行、信用金庫あるいは信用組合、労働金庫ということで限っておるわけであります。第5項に「銀行持株会社等」の定義がありまして、念頭にありますのは、下に第59条と書いてありますけれども、(資金援助の申込み)ですが、合併なり営業の譲渡なりを行う金融機関で破綻金融機関でないもの、又は、合併等を行う銀行持株会社は資金援助を申し込むことができるということで、資金援助申込みをする者を金融機関なり、合併の場合の銀行持株会社等に限っているわけであります。
さらに16ページを御覧いただきますと、これは預金保険法上の対象金融機関と金融再生法、金融機能早期健全化法という時限立法の下での金融機関を合わせて書いてあるわけですけれども、金融再生法の下の方の【資産の買取り】とか、金融機能早期健全化法の金融機関の定義を見ていただきますと、預金保険法上の金融機関以外に、信用金庫連合会、信用組合連合会、労働金庫連合会という連合組織と、それから、系統の金融機関が書いてあるわけであります。
 「論点メモ」に戻っていただきますと、「対象となる金融機関の範囲等」ということで、何を問題にしたいかと申しますと、一つ目の・ですが、現行の預金保険法と金融機能早期健全化法等では、対象となる金融機関の範囲が異なっております。受皿となる候補を拡大する観点から言いますと、預金保険の対象となる金融機関の範囲を拡大して、先ほど見ていただいた信用金庫連合会といったような連合組織も受皿となるようにすればいいんじゃないかという議論。
 それから、二つ目の・ですけれども、破綻金融機関の承継先が登場しやすくするために、承継先になれる者の範囲を拡大することはできないか。一般に営業を譲り受ける、あるいは合併する場合であれば、当然金融機関が対象になるわけですけれども、例えば、株式取得の場合の資金援助でございますけれども、これは持株会社に限られているわけですけれども、これ以外の者、金融機関や銀行持株会社でない者、例えば証券会社とか保険会社とか一般の事業会社とか、そういった方にも株式取得を認めることにより、より承継先の範囲が拡大できないかということでございます。
 それから、「5.危機的な事態が予想される場合の対応」、システミック・リスクの場合でございますけれども、「基本的な考え方」では、システミック・リスクが予想されるような場合にも対応すべきであるという原則論だけを書いていただいておるわけですけれども、さらに具体的な論点としてここに掲げてございますように、危機的な事態が予想される場合に整備すべきセーフティネットとして、どのような措置が考えられるか。例えば、時限措置となっているペイオフコスト超の資金援助、資本増強、特別公的管理といった枠組みについて、どのように考えるか。
 危機的な事態が予想される場合の日銀特融のあり方について、どう考えるか。
 例外的な措置を行うためには厳格な手続が併せて求められる。その場合、中央省庁再編時に発足する「金融危機対応会議」が判断の主体となることが考えられるか。
資料の20ページを御覧いただきますと、「金融危機対応会議」でございますけれども、これは2001年1月に中央省庁の再編が予定されておりますが、その際に発足する機関でございまして、第4項にございますように、総理大臣、金融庁の担当大臣、金融庁長官、財務大臣、日銀総裁を議員として内閣総理大臣が議長となって、金融機関の大規模かつ連鎖的な破綻等の金融危機への対応に関する方針を定めるということとして予定されている機関でございますが、具体的に何をやるかというのは、今の段階では明らかにされておらないところでございます。こういった会議が判断主体となることが考えられるかということでございます。
 「論点メモ」に戻っていただきますと、こういった形で例外的な措置を行った場合に、まず、行う場合の資金調達をどうするのか。それから、事後的にロスが出た場合の負担をどうするのかということについて考える必要があるわけですけれども、この資金調達及び負担について、預金保険に係る一般保険料以外に、金融機関に特別な負担を求める必要があるか。また、システミック・リスクの場合でございますので一般保険料、あるいは金融機関の負担以外に公的な関与、公的な資金調達、あるいは公的な負担ということについてどう考えるかということでございます。
 一番最後に、「事前準備・早期処理」ということについてもこれまでいろいろ議論いただいておりますけれども、金融機関の業務又は破産の状況が一定程度悪化した場合に、関係当局が破綻処理を睨んだ準備に入ることについてどう考えるか。睨んだ準備に入るための権限規定を整備する必要があるのではないかということが一つございます。
 今後の破綻処理においては、破綻に伴う損失による預金者の負担(預金の一部カット)、あるいは預金保険の負担を少なくするために、債務超過の程度が極力小さい段階で回復の見込みがなくなった金融機関を早期に処理することが重要ではないかということでございます。
 資料の21ページ以降を御覧いただきますと、早期処理についてのパブリック・コメントでございますけれども、早期処理体制の確立が不可欠であり、その前提は早期是正措置の改革である。問題金融機関の自己資本比率がある程度まで低下した場合に、金融関係当局が、当該問題金融機関の資本再建を促す一方で、破綻処理の事前準備にも入れるよう、早期是正措置を見直すことが不可欠。
破綻の未然防止を図るための早期発見・早期是正の措置を講じてもなお自主的な再建が困難であると監督当局が判断するに至った場合には、当該金融機関を早期に処理することが必要であるといったようなコメントをいただいております。
現在の破綻処理がどう行われているかということについての法的な枠組みは、以下に、金融機能再生緊急措置法にございますように、下線の部分でございますが、金融機関がその財産をもって債務を完済することができない。すなわち債務超過の場合その他預金等の払戻しを停止するおそれがあると認める場合又は預金等の払戻しを停止した場合、この場合には金融整理管財人による業務を管理する処分をすることができるということで、破綻処理の引金が引かれるということでございます。
それから、併せて第68条では(金融機関の申出)ということで、第1項では、預金等の払戻しを停止するおそれがあるとき。第2項では、払戻しを停止するおそれが生ずると認められるときには、金融機関が当局に申し出るということになっております。
 それから、22ページ、23ページは、倒産処理手続の開始の要件が書いております。それから、24ページは、我が国の早期是正措置。それから、25ページは、米国の早期是正措置の概要ということで付けております。それから、26、27、28ページ、これは預金保険機構の借入金が相当な額に及んでいて、かつ、これから破綻処理をして実際に資金援助をしなければならない金融機関が結構ございますので、これにも金がかかっていくということを示している資料でございます。
 最後に、29ページ以降で、金融機関のディスクロージャーに関する資料をお付けしております。なぜ付けておるかと申しますと、まさに平成7年12月に、当面、預金の全額保護ということがうたわれた金融システム安定化のための金制答申におきまして、「ディスクロージャーの推進」ということで、ディスクロージャーというのが金融機関経営の透明性を高め、市場規律によって経営の自己規正を促すものである。預金者の自己責任原則確立のための基盤としても重要であるということがうたわれ、今後、大手行だけではなくて、あらゆる業態において、原則として98年3月期までに不良債権のディスクロージャーを完了すべきであるということが書かれておるわけであります。
 これに基づきまして、30ページを御覧いただきますと、「不良債権情報開示の推移」ということでございまして、 I 、 II 、 III 、 IV 、 V は何かというのは(注1)で示しておりますけれども、 I 、 II 、 III 、 IV 、 V ということで、どんどん開示対象金融機関を広げていって、 V になりますと、あらゆる業態が開示するということになるわけですけれども、10年3月期までの段階で破綻先債権、延滞債権について全ての業態で情報開示が行われることになり、11年3月期には、さらに3カ月以上延滞債権、貸出条件緩和債権についても情報開示が行われることになったわけであります。
 その後31ページ以降では、検査マニュアル等の自己査定の基準と再生法の基準、リスク管理債権の基準、こういったことについての資料をお付けしておりまして、それから、一番最後の34ページでは、銀行法の施行規則にございます、34ページの中段の線を引いた部分でございますけれども、(預金者等に対する情報の提供)の第13条の3の第3号ですけれども、「取り扱う預金等のうち預金保険法第53条に規定する保険金の支払の対象であるものの明示」、預金保険の対象となっているものをきちんと明示しなければならないということが書いてあるわけでございます。
ディスクロージャーについてもいろいろパブリック・コメントをいただいておりますので、併せて御紹介させていただきました。
 以上、若干急ぎ足になった部分もございますけれども、私から御説明させていただきました。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 論点が6項目にわたっておりますけれども、順序に関わりなく、どうか、御意見、御質問等ございましたら、自由にお出しいただきたいと思います。
翁委員、どうか。
○翁委員 流動性預金の問題なんですが、「論点メモ」に書いてございます、私は基本的な考え方というのは、この一番上の○の少額預金者保護を目的とする制度が預金保険制度ですので、破綻処理の迅速化と民間による多様な決済サービスの提供で解決すべき問題だという考えに立っております。
 ただ、今日、決済性預金を守ることについて三つの案をおっしゃっておられまして、金利をゼロとして新商品を作るということも含めて、それに限って入れたらどうかということと、それから、金利規制をするという案と全額保護をするという案をお示しになったんですが、これは2ページ目の「論点メモ」に書いてある、誰が、どの程度のコスト負担をするかということによって相当影響が異なってくるのではないかと思います。
 今日お示しになられたのは、金融機関が預金保険料として負担するという考え方と、それから、いわば決済システムに余り関わりのない主に大口の定期預金者、個人を中心に、企業があると思いますけれども、そういった人に負担を、割を食うという御説明をされたんですが、そういう負担をそういう人たちに押しつけてしまうのかという問題がありますが、それから、ほかにも原理的には二つの可能性があって、この預金保険料を明示的に受益者で普通預金とかに預金をしている企業を中心とする利用者に転嫁することを認め得るのかどうかという点があるかなと。
 それから、全くこれは原理的な問題ですけれども、あとは国民全体が税金として負担するのかということがあると思います。ただ、2001年4月にそういった公的資金の投入が終わりますから、こういった国民全体が税金として負担するということを排除して考えるとすると、保険料か、それとも先取り特権かということであると思います。
 仮に全て金融機関が預金保険料を負担するとすると、それは決済性預金の範囲を広げれば広げるほど非常に大きなコストになって、これは金融機関の収益力とか健全性を弱めるという可能性があると思いますし、それから、先取り特権についても、直接の受益者が一切負担をしないということについて理解が得られるのかという問題があると思います。
 それで、もし金融機関が預金保険料を負担するということで保護の範囲を広げてしまうと、これは受益者にもある程度負担してもらう必要が出てくるという議論があるのではないかというように思います。
 今日お示しになられた金利をゼロとするとか、金利規制をするというような案は恐らくモラル・ハザード対策としては必要条件だと思いますが、コストがどの程度になるのかということによっては、受益者のコスト負担が十分でなくなる可能性もあるのではないかというような感じを持っております。
 そういった観点から、今日お示しになられた三つの案を考えてみますと、もし金利ゼロのところに保護範囲を限るとすると、相当預金のシフトが起こると思います。もし口座手数料のような形で受益者に負担を求めるとすれば、多くの企業は優良な銀行の金利が付利されていて、手数料の少ない普通預金にシフトしてしまうという可能性がありますから、それを容認できるかどうかということがあると思いますし、もし金利規制のみということになると受益負担が不十分であるということがあり得て、現在のような低金利の情勢では明らかに定期性預金から決済性預金へのシフトがあるということで、恐らく金融機関のコストが非常に大きくなるということになりますので、金融機関にとっては大きなマイナスになると思います。
 全額保護ということになると、これは金融機関の負担はさらに大きくなって、利用者に対して手数料を取る形で預金保険料を転嫁することが明示的に認められるかどうかということが重要になると思います。
 いずれにせよ、この保護をどの程度にするのかということは、コストをどういうふうに負担するのかによって、預金のシフトや金融機関への影響が相当変わってくると思います。
 そもそも預金保険制度というのは、ここにも書いてありますように、小口預金者保護のシステムですから、決済性預金の保護というのは本来の理念には反すると思いますので、もし仮に時限的にこういったものを預金保険制度で対応するのであれば、今までの制度とは別の勘定でやるべきだと思いますし、時限的にやるというのは当然のことだと思います。
 いずれにせよ、この今日お示しになられた幾つかの案については、誰がどの程度のコストを負担するのかということをある程度明確にして議論することが必要になってくるのではないかと思います。
 それから、もう一つだけ申し上げると、その時限性ということに関してですけれども、今日も御説明で時限的なものとするということが考えられるというふうにおっしゃっておられましたが、そうしますと、一体いつになればその措置はなくなるのか。なぜそうした措置をとるのか。その間にどういった環境整備を進めるのか。そういったことを当局が発表する必要があると思います。
 私自身は、スイープ勘定みたいな民間のサービスが導入しやすい法的な環境とか、また、証券決済システムの改善を図るといったことも一つの具体的な提案になると思うんですけれども、いずれにせよ、そういったことをきちんと発表する必要があるんじゃないかというように思います。
○倉澤部会長 御意見として伺っておけばよろしいですか。
 どうぞ、坪井委員、お願いいたします。
○坪井委員 いろいろ今まで論議されてきまして、大体まとまってきたような感じをしております。そこで、問題は、現段階で考えられる措置と、13年の3月末日までにできるなら、だめなところはもう全部整理しちゃんだという形で、その後は、言うならば、迅速なる措置をとって、ほとんど要するに破綻させないんだと、破綻しない方向でいくんだというような考え方を強く出していくということになれば、相当大きな負担を考えたものであっても、現実には発生しない。ですから、大きなある程度の安心感を持たせる形で、法的な措置をしておくということでを対応するというふうに考えられるかどうかですね。しかし、その後も再来年の4月以降も、現状のような形が、例えば金融不安を起こすような金融機関の破綻がしょっちゅう起きるというような考え方を持って作るのか、ここは一つは整理の原点じゃないのかなと思うんです。
 先ほどの御説明の中でも、例えば再生法の話で、早期処理についての中であるわけですけれども、金融再生措置法というのは13年の3月31日までですよね。でも、これをその後もこの再生法は残すということになるのかどうか。そういう法律を残すということにするのかどうですか。そういうことを含めていくとすれば、言うならば、今後は余り破綻はさせまんよ。破綻はしないようになりますよ。破綻するのは、もうしましたよというふうに説明をすることができるかどうかですね。これは実は金融不安を今後も、13年の3月31日以降も引きずっていくことになるのかどうかという国民的な認識の問題も含めて、必要なんじゃないのかと思うんですよ。
ですから、コストの問題、今、翁さんから話がありましたように、いろんな形で詰めていきますと、誰がこれを負担するのかとなると、結局は小さいコストでなくちゃいかぬわけですから、そうなると、私ども借りる立場から言わせると、要するに不安が残る形の法令にならざるを得ないんじゃないか。
しかし、逆に、もう破綻はさせないんですと。言うならば、ほとんどしないんですという形で、今は保険料が足りないからまだ率は高くしていくんでしょうけれども、いずれ相当な保険料もこれは蓄積されるということになると、破綻させない方でいくんだという考え方になったときは、相当大きな補償枠を取っても現実には起きない。起こさせないということになるんでしょうか。そういう論点で考えていくべきなのか。私はそっちの方で考えていった方が、国民的には非常に安心できる後の金融環境というものを想定できるわけでして、そういう論議も必要なんじゃないのかなというふうに実は思っております。意見でございます。
○倉澤部会長 江頭委員、お願いいたします。
○江頭委員 流動性預金の関係で先取り特権の件でありますが、もし先取り特権ということで処理しますと、先ほど林室長の方からも御紹介ありましたように、もともと財務状況の悪い金融機関であるほど、割を食う人間のカット率が高くなるわけでありまして、ですから、これを本当に採用するのであれば、 1,000万円を超えて定期預金を持っている人というのは恐らく高齢者が多いでしょうから、憲法訴訟は覚悟しなきゃいけないということになると思います。
ですから、先取り特権を与えるのであれば、その理念、つまりなぜ必要なのか。既存の先取り特権は、責任財産の拡大に貢献したとか、あるいは社会政策的考慮とか、いろんな理由があるわけですが、なぜ必要なのか、それから、ほかに方法はないということを、憲法訴訟を覚悟しつつ詰める必要があると思っております。
それから、仕掛かり中の取引ですけれども、私は5ページの記述で、2番の手形交換なんか、迅速な支払ができるかどうかの話だとばかり思っておりました。仕掛かり中というのは、別段預金に入っちゃって、預金者としては全部自分は済ましたと思っているのに、いや、済んでおりませんでしたというから保護する必要があるんだと思っていたんですが、最後のものが出てきたので、あれあれという感じがいたしました。
 以上です。
○窪野審議官 最後の点、ちょっと御説明をいたしますと、結局、企業にとって相手方とか決済、支払の性格で、先日付の振込をとっている場合と、あるいは伝統的に手形交換をしている場合があるんだろうと思います。かつ、まさに別段と当座の区別が、これは企業側の事情というよりも、むしろ金融機関サイドの事情で、どちらに置いておくかがかなり恣意的に行われているという印象を持ちました。
 どういうことかといいますと、手形の場合には、まさに最後のリスクが企業にくるものでありますので、当座の方に置いている。それから、まさに先日付の場合には、そういう事情もないので、別段の方に移すということがあろうかと思います。
 いずれにしろ、この別段預金を守ろうとしますと、先生御指摘の先取り特権の仕組みを使うしか取引を決了する方法がございませんで、そうすると、まさに別段預金だけに先取り特権を付与するのか。同じような性格を持っている当座預金にも先取り特権を付与するのか。それがちょうどここにございますように、先日付の振込でも金融機関によってその取扱いが区々になっているとか、あるいは日銀ネットを使う自動振替と手形交換というのは1日の決済量だと、ほぼ同じような数兆円から10兆円のオーダーだと思いますが、拮抗しているようなものをすぱっと切れるのかどうか、なかなか悩ましいというのが、先ほど林室長がちょっと説明した補足でございます。
○倉澤部会長 松下委員、お願いいたします。
○松下委員 今、江頭委員が御指摘になりました2点について、私も補足したいと思います。
 まず第1点、流動性預金の特に2ページの一番上にございます先取り特権。もう少し一般的に申しますと、破綻したときの優先権の付与という点でございますが、先ほどモラル・ハザードというのが御紹介ありましたけど、もう少し敷衍しますと、一番私が懸念しますのは、こうことが実際にあるかどうかわかりませんが、もしあるとすれば懸念しますのは、経営者が特定の取引先に破綻直前に通報いたしまして、もうすぐ手を上げるんだということを特定の取引先のみ伝え、その特定の取引先は、持っている預金は全部、全額保護される預金種別に移すと、そのようなことを一番懸念するわけでございます。そのような資金シフトはぜひ避けるべきではないかということでございます。
 それから、先取り特権を付与することの二つ目の問題点ですけれども、事前のディスクロージャーはかなり意味がなくなってしまうのではないかということでございます。つまり通常のディスクロージャーの数字を見てもわからない隠れ担保が潜んでいて、破綻直前になりますと、第1点で申し上げました資金シフトの面なんかも含めまして、突然、優先権のあるものが出てくる。いわば登記のない抵当権がごっそり隠れているかもしれないというような状態でございますので、そういうのをどう考えるかということでございます。
 第1点、第2点とも、そのようなことが実際に起きるのかがどうかということ。どのくらいそういうことを覚悟しなきゃいけないかということだと思います。実際に余り起きないとか、金額が大して大きくないということであれば、さほど心配することはないのかもしれません。
 それから、仕掛かりの話でございますが、これはなぜ仕掛かり中の決済取引を特別扱いしなければならないかというところから物事を考えるべきではないかと思います。
 私の理解では、この資料の5ページにございました1.と2.のうち、1.のみを仕掛かりと考えるべきではないかなと考えておりまして、仕掛かりをなぜ特別扱いしなきゃいけないか、特別なことを考えなきゃいけないかと申しますと、別段預金に入っている預金というのは、預金者の預金でありながら、当座なり、普通預金から離れてしまいまして、もう一度組み戻すのに手間がかかる。したがって、例えばいわゆる近月処理をしようという場合に、もう一回組み戻して、名寄せしている最中か、名寄せを終わってからかわかりませんが、別段預金に入っているものをもともとの預金に組み直して、 1,000万円の方が範囲内かどうかということをするのが大変なので、別段預金として別に分けられちゃったものは、それはそれで別途保護しようというものでありまして、一言で申しますと、特別扱いの理由は、迅速な処理のために余計なことを考えないで済む、手間を減らすためでございまして、結果としてこれは決済の保護になるかもしれませんが、決済の保護のためにこういうことをしなきゃいけないということでないのではないかと思います。
 したがいまして、手形交換の場合には、まだ名寄せの十分可能な預金者の特定の容易な当座預金に入っておりますので、結果としてこれは決済の保護という観点で1.と2.は統一されているかもしれませんが、そもそもなぜ別段保護しなきゃいけないかという観点から考えますと、やや性質の違う問題じゃないかという気がいたします。
 一応意見でございます。以上でございます。
○八木委員 よろしゅうございますか。
○倉澤部会長 八木委員、お願いいたします。
○八木委員 別の話題になるのでございますが、前回のここの会議で発表されましたパブリック・コメントの中にございましたのですが、銀行取引約定書というものについて、ちょっと一言申し上げたいと思うんです。
 非常に古いルールが今でも現状の実務を律しているという一つの例として申し上げたいし、また、ぜひ改めていただきたいなと思うのでありますが、御存知のようにただいま我々一般の企業が銀行と結んでいる銀行取引約定書というのは、大体昭和40年代頃に結ばれているのが多いのでございまして、これはもう押しなべてそうだと思います。どちらかというと、銀行サイドで作られたひな型に基づいておりまして、我々一般企業の資金が非常に逼迫しており、かつまた、直接金融の市場などが未発達な時代が背景にございますので、まさに一方的なルールである。一言で言えば、銀行サイドに有利な契約になっているということなんでございます。
 我々借り手から銀行への差し入れ形式になっておりますので、債務者、我々の期限の利益喪失、つまり何か起こったときはすぐ借金返せというような、こういったものは非常に微に入り細に入り書いてございまして、例えば、我々が住所変更の届けをちょっと遅れたら、期限の利益を喪失するぞというようなことまでいろいろ書いてあるような、そういうものでございます。
一方において、銀行の期限の利益の喪失などは何も書いてないわけなんで、そういう意味で、こういう一方通行の片務契約というのですか、これを双務契約、お互い平等の立場での契約にこれは改めなきゃいけないということで、そう手数のかかることでもないので、検討していただきたいなと思っておりまして、結局、預金取引というものが一切これに触れられてないんですね。我々の借入れに関することだけが書いてある、そういう契約になっているので、これはぜひ見直していただきたいなと思っております。
結局、企業企業で立場がございますので、強弱ございますので、私はひな型のようなものが二、三世の中で作られるべきだと思うんです。それに従ってそれぞれの企業が合ったものを選んで契約を結ぶべきだと私は思うのでありますが、いずれにしても、今の契約は期限とか、見直しの1項も入ってないんですね。いついつまでになったら見直して、例えば後は自動契約とか、そういう文言ももちろんないので、一切我々も見直さずに今日まで来ているのでございますが、この辺はぜひまとまった立場でこういうものにも取り組む必要があるのかなと。1社1社やりますと、銀行サイドも大変だと思うので、企業サイドでもとてもそこまで言えないという立場の企業もおりますので、ぜひこの銀行取引約定のようなものも、比較的取り組みやすい項目だと思うので、ぜひ検討の中に入れていただきたいと、こういうふうに思っております。
 以上でございます。
○倉澤部会長 野田オブザーバー、お願いいたします。
○野田オブザーバー ただいまの八木委員からの御指摘、銀行取引約定書に関してでございますけれども、全国銀行協会、御指摘のとおり昭和40年代からそういうひな型というものを作ってまいりました。これは、当時まだいわゆる銀行取引の法回りの整備が世の中で確立してない時期に、銀行界全体として一つの予見可能性というような観点から、ひな型を作った方がいいだろうと、こういう国民的と言うとちょっとオーバーですけれども、世論の声もあって、そういうものを踏まえて作った。これが何回かの改訂を経て今日に至っておるわけですけれども、委員御指摘のとおり、既に私どもの方にも各方面からそういう御意見を頂戴しております。
さらには、いわゆる公正取引の観点からも、ひな型というものがいかがかというような、そちらの御当局の方からの御意見もありまして、私ども全銀協としては、現在、検討部会を設置いたしまして、いろいろいただいている御意見を踏まえて、ひな型そのものをどうするかというようなことから検討を開始しておりまして、極力早い時期に結論を得たいというふうに努力している最中でございます。
ただいまの委員の御意見に対しての私どもの取組みということで申し上げました。以上でございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
○花野預金保険機構理事 よろしいですか。
○倉澤部会長 どうぞ、お願いいたします。
○花野預金保険機構理事 預金保険機構の花野でございますが、本日の「論点メモ」の3ページの「預金等債権の買取り」について一言申し上げたいと思います。
これについては先ほど林室長の方から、ワーキングで二つの考え方があるということが示されました。私ども預金保険の事務を担当する者として、これについては基本的には現行の付保対象預金に限定すべきではなかろうかというふうに考えております。
 その理由は、一般債権までに拡大した場合には、例えば未払い勘定等のように債権の特定等にかなりの労力がかかるものが含まれると思われます。こういうものについては権利関係が不明瞭であったり、あるいは定型的な処理がそぐわないというものが多いのではなかろうかと思います。
 付保対象預金でございますれば、機構指定のフォーマットの義務づけにより、その詳細を迅速に把握することができますが、そうでないものについては迅速に把握することが困難でございまして、これを拡大しても、必ずしも破綻処理の迅速化に寄与しないのではないかというふうに考えます。
 それから、そういうことをやるとすれば、それに備えて、相応の体制を用意しなきゃならないということで、大きな預金保険機構という形にならざるを得なく、社会経済的コストを考えた場合、いかがかと、こういう感じがいたします。
 それから、先ほどまた林室長が言われましたけれども、概算払いの後にロス発生のリスクというのがあるわけでございまして、これにロス発生が生じた場合は、保険料を原資とする一般勘定で負担するということにならざるを得ないわけですが、こういうものについて保険料負担をしていないものについて、保険料で負担するというのはいかがかと、こういうふうに考えまして、先ほど言いましたように付保対象預金に限定すべきではなかろうかと、このように考えている次第でございます。
 以上です。
○山崎再生委危機管理課長 全く別のことでございますが……
○倉澤部会長 どうぞ、お願いいたします。
○山崎再生委危機管理課長 金融再生委員会の事務局の山崎でございます。
 先ほどの坪井委員の御指摘にやや時間が遅れましたが、お答えになるかどうかわかりませんが、金融再生委員会は、金融再生法と早期健全化法を運用してございます。再生委員会ができまして間もなく、平成11年1月20日に「金融再生委員会の運営の基本方針」というものを発表してございます。それで、この中に、「破綻処理において預金者が完全に保護される2001年3月末までに、揺らぐことのない強い競争力を持った金融システムを再構築しようとするものである」ということを御決議いただいておりまして、再生委員会といたしましては、なお1年強の期間が残されておりますので、この運営の基本方針に従いまして、日々努力しているということをちょっと付言させていただきたいと存じます。
 以上でございます。
○倉澤部会長 坪井委員、どうか。
○坪井委員 そういう論点でいかれるのは正しいと思うんですね。それで、そのときに、ただそれではまたやはり破綻する金融機関が出るといったときの早期処理の問題ですね。このワーキンググループでの一番最初にありますように、要するにセーフティネットを考えるんだということになります。そのときに、今の再生法との関係でいきますと、この資料の21ページにあります金融機能再生緊急措置法、これは13年の3月31までですけれども、これをいわゆる日本版P&Aに置き換えて、今後、これをもって再生の核とするのかどうかですね。その場合は、再生法と健全化法にはそれに対応するお金が付いているわけですね。それは、要するにそういう場合にもできるものなのかどうなのか。そういう形になると、先ほど私が言った大きな保証ということになるわけで、つぶれないということが前提になると同時に、万が一あっても、今の健全化法と再生法の形がP&Aのようなものに代わって、しかもそれに対応するお金が付いていることになれば、全く心配ないという形になるので、そうなったときはまさに早期に次の金融機関に譲渡していければ、まさに全ての預金も保護されるし、全ての決済性の問題もなくなるし、そこを目指すべきではないのかなというふうに実は思っておりますので、関連してこれはお伺いしたいと思うんです。日本版P&Aというのを今考えておられるようですけど、それとこの再生法との関係ですね。
○倉澤部会長 では、林室長、お願いいたします。
○林信用機構室長 資料の28ページを御覧いただきますと、預金保険法の本則の世界と時限措置の世界がどういう関係にあって、どういう財政措置が行われているかという一覧表がございますので、これに則して御説明したいと思います。
まず、一番左の一般勘定、これがもともとペイオフコスト内の金銭贈与を行うために、預金保険料を財源として回している部分でございます。これが預金保険法の本則に付されているわけですけれども、その右の三つの勘定は、2001年3月までの時限措置として付されている勘定とその役割でございます。
まず、特例業務勘定では、ペイオフコストを超える金銭贈与を行うために交付国債7兆円が財源措置として付されておりまして、これによってペイオフコストを超えた部分についてもロスの穴埋めができるようになっているわけであります。
 これ以外に金融再生法では公的ブリッジ・バンクや特別公的管理銀行を行うための勘定があり、財源措置が付されて、金融機能早期健全化勘定では、これは健全な、破綻に至らない金融機関に対する資本増強というのが行われ、政府保証が付されております。
 こういった特例業務勘定から金融機能早期健全化勘定までの勘定で行う業務及びこれに対する財源というのは、あくまで2001年3月までの措置であり、かつ、財源として措置されているところでございますので、2001年4月以降、ペイオフコスト内の金銭贈与、あるいは保険金支払もあり得るわけですけれども、基本的に、「基本的な考え方」に示されたようにP&Aを用いてペイオフコスト内の金銭贈与を行うためのものは、預金保険の本則に戻って、こういった政府資金という形に頼らないで、専ら保険料を財源として破綻処理が行われるというふうに考えているわけでございます。
 ただ、現在、金融再生法にありますブリッジ・バンクの機能ですとか、そういった破綻処理のための仕組みについては、一般勘定と申しますか、預金保険法の本則に入れ込んで、破綻処理の処理方式としては、この預金保険の本則を強化したいと考えているわけですけれども、他方、財源については、あくまで2001年3月までの措置としてこういった財政関与が行われるものと考えているわけであります。
 ただ、一般勘定でペイオフコスト内の処理では超える部分、すなわちシステミック・リスクが予想されて、ペイオフコスト内の処理ではなかなかうまくいかない、あるいはそれでは金融秩序全体に問題が生じるというような場合には保険料以外の財源、先ほど示しましたように金融機関に特別の負担を求めると同時に、公的な関与というのが必要になるのではないかというのが私どもの頭の整理でございます。
○倉澤部会長 どうかお願いいたします。
○稲葉日本銀行企画室参事 ちょっと論点は異なりますけれども、関連するということで、日銀から、3ページの真ん中辺に「危機的な事態が予想される場合の日銀特融のあり方について、どう考えるか。」こういうふうな論点提示がございましたので、若干御説明したいというふうに思います。
 まず、明らかにしておきたいと思う点は、新しいセーフティネットの下でも日銀は、個別の信用悪化が生じたときに短期の流動性を供給する、そういう最後の貸し手としての機能があるわけで、この辺の役割を担っていく必要があるだろうなというふうに思います。
 一方で、もともと明白に回収不能な破綻金融機関に対する損失処理みたいな、そのような資金供与はやはり行えないということで、この点は新しい日銀法ができるときに金融制度調査会でもそういう答申になっているということでございます。
 したがって、今後、全債務が保護されないというような事態になりますと、未処理の段階での破綻金融機関への資金供与は預金保険機構が担うと、こういうことになるわけですが、問題は、危機的な状況、つまりシステミック・リスク・エクセプションのような場合はどうかということだろうと思います。
 この辺はまだ明確でないので、断定的なことは申し上げられないわけでございますけれども、仮に金融機関が破綻に瀕したとしても、今ちょっとお話がありましたような、例えば再建に必要なロス埋め、あるいは資本注入といったようなことが預金保険機構で行われるということであれば、日銀としては、例えば日銀法38条、いわゆる特融といったような形で資金の支援を行う用意があるということでございます。
もちろんその場合でも、政府から要請を受けた後に、個々の事例に則して、いわゆる特融の4条件といったものを私ども持っておりますが、それに照らして適当と政策委員会が判断すると、認めるということが条件になるわけでございます。当然のことですが、そういった危機的な状況の措置の是非といった判断にも日銀は関与していきたいと、こういうふうに思うわけでございます。
 それに関連してでございますが、ここに必ずしも明確に出てないんですけれども、大事な論点として、預金保険機構の資金調達のあり方というのが実はあるのではないかというふうに思います。基本的には保険料で事業を行っていくとしても、一旦事が起こったときに必要な資金をどう調達するかということでございます。
 原則を申し上げれば、預金保険は、ますます公的な色彩を強めてくるわけで、そうであればあるほど、その必要資金は自らの民間調達で担うべきで、日銀資金をはなから当てにするということは好ましくないのではないかというふうに考えております。
 世界の預金保険もこういった中央銀行の資金を当てにするという例は皆無でございまして、やはり形を変えた財政に対する中央銀行信用にならないようにといったような配慮があるのではないかと思います。財政であっても、FBの公募入札化によって必要な資金は民間調達するという原則になっているわけでございます。もちろん日銀としてもこのようなこれまでの経緯とか、資金調達の緊要性ということを考えれば、預金保険に対する貸出自体を否定するというわけでございませんけれども、あくまでやっぱりその場合には、一時的なつなぎ資金といったような性格で、中央銀行の資金の範囲内ということであるべきではないかというふうに考えております。
 そこで、お願いめいた話なんですけれども、今回の預金保険法を改正するということとなれば、こうした考え方を明記するように、機構の資金調達は原則民間でやる。そして、困難な場合に限って日銀が必要な資金を供給するといったようなことが盛り込まれればよろしいのではないかというふうに考えていますし、また、日銀からの資金供与が一時的なつなぎ資金だという性格が維持されるような何らかの制度的な枠組みというものを埋め込む必要があるのではないかというふうに思います。もちろんその際、預金保険の民間資金調達といったような自由度も併せて確保するような考え方が盛り込まれるべきではないかというふうに考えます。
 以上でございます。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 ほかによろしゅうございますか。
 どうぞ。
○窪野審議官 一つ、流動性預金の点で、翁委員が御指摘いただいた費用負担の点は大変重要だと思います。事務局でも正直いろんな議論をもうちょっと伺いたいと思うんですが、今日は折角オブザーバーなり委員の方で、まさにその負担に直接関係される金融機関の方、あるいは仮に先取り特権という形で処理すれば割を食い兼ねない企業関係の方、あるいはそうでなく預金保険料で負担いただくならば、金利がゼロなり低くなる、あるいは場合によって口座手数料を取られる企業の方、いずれかに帰着する可能性がありますので、ちょっとその辺の方々、どちらでもよいのか、その負担についてどう考えているか、ぜひ御意見を伺っておきたいと思います。
○林信用機構室長 併せて民間の商品開発とか、そういった形で将来的にそういう問題が解決する方向を考えられておるのかということを教えていただければと思っております。
○倉澤部会長 野田オブザーバー、お願いいたします。
○野田オブザーバー 私ども全銀協というわけでなくて、いつもお断りしていますように大手行という立場で申し上げますけれども、かねて申し上げているとおり、恒久的に流動性預金を預金保険制度の中で保護するということは、そもそも「小さな預金保険制度」を目指すという基本理念に反するということ。既にここでも挙げられているような論点から、大手行としては全額保護というのには基本的に反対をしておるわけでございます。
 費用負担ということにつきましても、明らかに銀行の保険料負担というものは増加いたします。先ほども説明が少しありましたけれども、現在、預金保険機構の一般勘定というのは既に大幅な赤字を抱えておりまして、これの解消にもかなりの年数を要する。今後、保険料率をどうするかという議論は別途なされなければならないわけでしょうけれども、それにしても、常識的には相当な年月を要するだろうと。ここに加えて、流動性預金の全額保護ということになりますと、その分が一般的にはオンされるわけですから、さらに預金保険機構の財務の健全化というものに時間を要するということになりかねないということであります。
 そういうことから、基本的にはそのように考えておるわけですけれども、一方、それをどうするのか。その場合に銀行負担をどういうふうに受け止めるのかということになるわけですけれども、先ほど翁委員の方から、お客様の方に転嫁するということはありますけれども、かねて私どもは、これまでの預金保険というのは銀行が保険料を負担するという基本的な考え方でやっておりましたし、世の中、お客様一般もそういうふうに受け止めていただいております。
 したがいまして、仮にそのような転嫁がストレートに行われるというのは、非常にお客様の理解も得にくいでしょうし、そうなると、では、誰がどう負担するのかということになると、銀行がいろんな経営努力、これには一部各行の独自の判断でいろんなサービスに対する対価をいただくというようなことは、これは預金保険の問題にかかわらず生じてくるわけでしょうけれども、個別にひも付きでお客様に限界的な増加保険料を転嫁するというのは、なかなかお客様の納得、御理解が得られにくいのではないかというふうに考えている次第でございます。
 そういうことからも、先ほど御異存もあります優先権あるいは先取り特権というような考え方も議論の俎上に乗ってくるわけですけれども、これも大口定期預金者との公平感の問題ないしは一般債権者との問題というのは御指摘のとおりでございまして、これも極めて悩ましいということで苦慮している次第でございます。
 余り本審議会のお答えにならないようなことだったかもしれませんけれども、とりあえず私どもの考え方として述べさせていただきました。ありがとうございました。
○倉澤部会長 堀内委員。恐れ入ります。ちょっと手短にお願いいたします。
○堀内委員 今の野田さんの御意見とちょっと共通する部分があるんですけれども、まず、保険の社会的な費用を誰が負担するかということについて言えば、できるだけ長期的な仕組みとしては、最終的に便益を得ている主体に負担させるのがいいんだろうと思うんですね。
 銀行の企業努力とおっしゃいましたが、それはいろんな形で、与えられた枠組みの中で、利便性の高い、しかも比較的安定性のある貯蓄手段を銀行側が提供して競争するということが努力だと思います。そういう意味では、私はできるだけ預金保険のカバーを受けている人たちが最終的には負担されるような形にしていくことが望ましいと考えています。
 それから、もう一つは、それと関連ですけれども、先取り特権について憲法上の問題があるというようなことを伺いまして、実はアメリカでも私の理解では、同じような問題を議論されたんだろうと思うんですね。
 そこで、ちょっとお願いしたいのは、法律上は確かに問題があるんだけれども、果たしてこの先取り特権は法的に言って、法律の専門家から見て、どう考えるか。つまり賛成か反対かということをもう少し考えていただきたい。つまり我々経済学の立場の人間は、比較的多くの人は、この先取り特権があれば、破綻処理のかなりの部分について迅速にできる面があるんじゃないかというような期待を持っているわけですね。それはかなり幻想なのか。それとも法的にとても許されないようないろんな問題が絡んでいて、現実的には反対だということが法律的に言えるのかどうか。その点についてもう少し議論を深めていただければありがたいと思うんです。この場でですね。
○倉澤部会長 どうか。
○千頭和オブザーバー 一番小さい業界の労金でございますが、私どももかねてから預金保険制度というのは小さな制度にすべきだということをこの場でも申し上げました。先ほど翁委員もお話がございまして、全く同感でございまして、ただ、技術的な 面を考えても、このメモの2ページの上から二つ目の○なんですけれども、確かに 1,000 万円を超える決済資金を確保するということは、それはそれでわからんでもないんですが、そうであれば、それは預金保険制度とは別の制度にすべきだということを私ども申し上げてきたわけですが、仮に○の2のようにした場合、つまり 1,000万円を超える流動性預金、仮にそれを普通預金と仮定したときに、その保険料というのは 1,000万円の範囲内と、あるいは 1,000万円を超えるものとで差をつけるのか、あるいは 1,000万円を超えるものについては全額一定の保証料率にするのかということだと思うんですが、もともと普通預金というのは、絶えず残高は変動するわけでございまして、そして、例えばある日時をもって保険料率を算定するにしたって、それはそれで普通預金そのものは1日でも、場合によっては午前と午後でも十分残高の変動ができるわけでして、こういうものを仮に考えたとしても、保険料の算定に当たって文字どおり金融機関のモラル・ハザードみたいなものはないのかどうなのか。
 技術的にこういったことが可能なのかどうかを考えますと、やはり 1,000万円を超える決済資金というものは、ある預金科目だけで判断するにしても、非常に技術的な問題を含めて、また別の問題が起こりはしないかという感じがするんですが、その辺について御当局はどうお考えになっているのかも併せてお考えあれば教えていただきたいと思うんです。いずれにしても基本的には、この決済資金をこういう形で制度として導入するについては、いろんな問題があるのではないかという意味で、私どもとしては、くどいようですが、預金保険制度のシステムとは別の形で別途の方法が考えられないかということを申し上げたいと思います。
○倉澤部会長 私、部会長として困っているんですけれども、今何か討論の問題点が出てきているような状況でもありますが、残された二つのテーマが、一つは、ワーキンググループをさらにこの後12月に続けていくために、ここで一応中間報告をしなければならないということです。第3点目は、すぐこの後に数日後に開かれます第一部会との共通の問題で、第二部会でも報告済みという形にして進めないといけないということがございますので、どうでしょう。次のテーマに進めてよろしゅうございましょうか。それとも、少し時間を超過してもいいものかどうか。
 お願いいたします。
○窪野審議官 手短に、まず、今の技術的な問題ですが、これはタックスベースを、今、年末の残高になっているのを流動性についてはありますので、日々の平残にすれば、流動性預金の負担の公平化がカバーできると思います。
 それから、やり方としては、料率で変えるか、タックスベースを変えるか、二通りあると思います。
 それから、先取り特権の法律的な問題は、なおワーキング関係の法律の専門家の先生とちょっと御相談をして、また御報告をしたいと思います。
○倉澤部会長 そうさせてください。お願いいたします。
 それでは、2番目のテーマであります「保険の基本問題に関するワーキンググループ」における審議状況についての報告に移らせていただきたいと思います。
 初めに、事務局からワーキンググループにおける検討状況の報告をいただいた後、座長をお願いしております山下委員に補足をしていただき、引き続き自由討議を行うことといたします。
それでは、菅野企画室長、お願いいたします。
○菅野保険企画室長 保険企画室長の菅野でございます。
 それでは、お手元の資料「第二部会15−3」に基づきまして、事務局より、「保険の基本問題に関するワーキンググループ」における検討状況につきまして、御報告を申し上げます。
お手元の1ページ目をめくっていただきますと目次でございまして、さらにもう1ページをめくっていただきます。下にページが打ってございますけれども、その1ページ。こちらから、「保険の基本問題に関するワーキンググループ」の主な論点について、表の形で御紹介をしているものでございます。
  I が「リスク管理の充実」に係るものでございます。まず、「基本的考え方」といたしまして、「リスク管理のあり方」。
 保険会社自身による内部管理を充実させる方向で考えるべきではないか、こういった基本的な考え方。
 これに基づきまして、「監督行政のあり方」といたしましては、保険会社の自己責任に基づくリスク管理の状況をきめ細かくモニターすることによりまして、会社の自主的な取り組みを促進することに主眼を置くべきではないか。
 さらに、「問題保険会社の早期発見」につきまして、下の(参考)のところでございますが、「健全性確保のための規制」といたしましては、標準責任準備金とそれに関係する制度、それから、ソルベンシー・マージンに係る制度があるわけでありますけれども、特にこの前者につきまして、保険計理人による将来収支分析に基づく責任準備金の十分性の確認と、監督当局による保険会社の経営計画の実施状況のきめ細かなモニタリング、こういったことによりまして、事業継続困難な状況に陥ることが見込まれるような保険会社をより早期に捉えることができるのではないかというようなこと。
 これによりまして、破綻処理に伴います社会経済的コストも小さい段階で手当てができるのではないか、こういった考え方でございます。
 「2.現行制度の見直しの方向性」でありますが、責任準備金制度につきまして、標準責任準備金の対象契約の範囲の拡大、標準を下回る積立てについての認可基準の明確化、監督当局のモニタリング、こういった責任準備金に係るところの現行制度の見直しや運用の改善を行うべきではないかということ。
 ?が「保険計理人による責任準備金の積立の確認の見直し」でございますけれども、現行の下でも将来収支分析と言われる一種のキャッシュフローテストによる責任準備金の十分性のテストが行われるわけでありますけれども、これを改良いたしまして、保険会社の内部管理手法の実効性を高めていくべきではないか。具体的には、こちらにありますように確認基準の明確化等、保険計理人の独立性の確保と責任の強化、あるいは取締役会側の責任の明確化、監督当局の継続的モニタリング、こういったことを行うべきではないかということでございます。
 「? ソルベンシー・マージン基準及び早期是正措置の見直し」でありますけれども、ソルベンシー・マージン基準の算定方法については、常にその見直しを行い、改善を図る、こういった方向性でございます。
 「3.事業継続困難である旨の申出義務の基準」でございます。これは後に御説明いたします倒産法制の方とも関連してくることでございますが、将来収支分析により、将来、責任準備金が積み立てられなくなると判断される場合であって、追加責任準備金の積立てをしない場合に、合理的な経営改善計画が策定できない、あるいはその策定された経営改善計画が達成できない場合は、事態がそのまま推移すれば債務超過になることが客観的に予想されるというふうに考えまして、保険会社に事業継続困難である旨の申出を義務づけることとしてはどうかということでございます。
 会社が自主的な更生手続開始の申立を行わない場合には、保険管理人が派遣される、あるいは当局による更生手続開始の申立が行われる、こういったこととすべきではないかということでございます。
  II が「倒産法制の整備」について御説明申し上げます。
 「1.更生特例法関係」でありますけれども、保険相互会社への更生手続の適用でございます。
 現在、相互会社に対しては更生手続の適用がないわけでございますけれども、会社更生法の規定を準用することでこれに対処するというようなこと。
 それから、2番目の○でございますけれども、相互会社から株式会社への組織変更制度の整備を踏まえまして、更生計画においては、相互会社から株式会社への組織変更、組織変更における株式交換、株式移転などを行うことができるようにしてはどうかというようなこと。
 ?が「保険会社(相互会社・株式会社共通)の更生手続」につきまして申し上げます。
 マル1が「開始原因」でございますけれども、会社更生法と同様に、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき、マル2破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるときを開始原因とする。
 マル2が「開始障害事由」でございまして、更生の見込みに関することでございますが、保険契約の一部を移転し、残部につき清算を行うような場合、これも更生の見込みがある場合というふうに考えられないだろうかということ。また、既に営業権を譲渡し、既存の保険契約の管理のみ行っている会社も、やはり更生の見込みありというふうに言えるのではないかというようなことでございます。
 「マル3 手続の特例」でございますけれども、こちらにつきましては、基本的には更生特例法第4章(金融機関等の更生手続の特例)と同様の規定を設けることでよいのではないかというふうに考えられるところで、監督庁の申立権限、送達の特例、保護機構による手続代理、機構の公平誠実義務等々でございます。
 ?が「保険固有の特例・問題点など」でございます。
 「マル1 保険契約の解約権」につきまして、まず、管財人側の解約権でございますけれども、保険契約が未履行の双務契約であると、会社の維持更生を図る立場の管財人としては、保険事故発生リスクの高い保険契約もいわば選択的に解除することになるというようなことが指摘されているところでございます。これは立場の弱い保険契約者にとっては酷な結果となるというわけでございまして、こういうようなことを防ぐために、保険会社を保険者とする保険契約については会社更生法 103条の適用除外とすることとしてはどうかということでございます。
一方、「保険契約者の解約権」でございますけれども、破綻保険会社への保険料支払の継続を強いるというのは実際的でないということで、保険契約者に解約権を与えるということとしてはどうだろうかということでございます。
なお、そうした解約あるいは失効した者の権利については、更生計画において、他の保険契約者との間で差を設けることとしてはどうかということでございます。
マル2が「保険契約者等の権利の議決権」でございますけれども、積立金払戻請求権又は未経過保険料返還請求権を権利と議決権の基準とすることとしてはどうかということでございます。
マル3 保険契約者等の組分け」につきましては、保険契約者をその他の債権者と別の組とすることとしてはどうかということ。
マル4の「更生手続中における保険金の支払い」につきましては、更生手続開始決定時、あるいは保全処分による支払停止時でありますけれども、それ以降は、保険金の支払いも停止されることになるわけでございますけれども、これは一方で、またここにありますような弊害もございます。そこで、更生計画認可前でも、補償対象契約について、補償限度額の範囲内で保険金の支払いができることとする必要があるということで、実際には、機構による保険金請求権の買取り、あるいは破綻保険会社による支払い+保護機構による資金援助が考えられるということでございます。
 マル5が「保険会社の更生計画の作成・決定」につきまして、「保険契約者の間の条件の格差」。これも保険契約の種類に応じて、条件に差を設けることができるようにする。
あるいは「早期解約控除」につきましては、保険契約を解約した保険契約者の権利について、継続する者に比して不利な条件を設けることができるようにすべきではないか。
「( iii )更生手続開始後に納付された保険料の取扱い」につきましては、下の3行でございますけれども、更生手続開始後の保険料を更生計画において、いわば別枠として取扱い、更生手続開始後に納付された保険料に見合う責任準備金は、更生計画によっても削減できないこととすべきではないか。
 「マル6 保険契約者等の優先権」につきまして、保険契約者保護という社会政策的な観点あるいは諸外国の動向、こういった点に鑑みまして、生命保険契約者については優先権を与えることが適当ではないか。
 ?は「破産手続の特例」でございますけれども、これは基本的に更生特例法第5章(金融機関等の破産手続の特例)と同様の規定を設けるということが考えられます。
 「2.保険業法関係(行政手続による破綻処理)」との関係の検討。
 「? 行政手続による破綻処理と更生手続との使い分け」でございます。実際には一般債権者のために責任財産を移転会社に留保しなければならない、こういった行政手続上の条件がございます。したがいまして、行政手続による破綻処理を利用するに適する場合といたしましては、この i )、 ii )にありますように、一般債権者がその債権を全て放棄するというような場合ですとか、債権の縮減につき一般債権者全員の同意が得られることが見込まれる場合というような、こういった場合にある意味では止まるのではないかということでございます。
 「? 行政手続による破綻処理の充実」でございます。現行法の枠組みを基本的に維持するが、次の点においてこれを改善するための手当てをすることとしてはどうかということでございます。
 保険管理人による管理処分中の裁判所による保全命令。保険管理人の権限の強化。保険管理人が作成する計画の内容の充実。破綻処理の円滑化のための方策。「特定契約」の見直しといった諸点が考えられます。
 「? 保護機構の業務の拡大・強化」につきまして、まず、「業務の拡大」でございますけれども、保護機構の業務を以下の点に拡大していく必要があるということでございまして、保険金請求権の買取りですとか、破綻保険会社の保険金支払のための資金援助・貸付。次の・がいわゆる手続代理等でございます。3番目の・が保険管理人への就任。4番目が保護機構の出資による子会社の設立、こういったもの。
 マル2が「資金援助対象の拡大」でございます。保険持株会社による破綻保険会社の株式取得の場合、保険契約の一部移転の場合、これについても資金援助ができるようにすべきではないかといった方向性でございます。
 あと、8ページの資料、これが「保険会社の更生手続の基本的イメージ(案)」でございます。
 一番上のところに破綻保険会社の流れがございますけれども、2番目の四角のところで、弁済期にある債務弁済困難、破産原因の生ずるおそれ、こういった開始の条件の下で実際の手続がスタートしていく、こういった形になっております。
 なお、それに続きますところで、いわゆる保全処分の下で保険金等支払を除く弁済の禁止、こういったことが行われるといった意味でございます。
 更生手続の流れは、基本的には更生特例法の流れと同じというようなイメージでございます。
 9ページを御覧いただきます。
 一番左がリスク管理の充実でございます。健全な状態で責任準備金とソルベンシー・マージンによる健全性確保が図られているわけでございますけれども、これをさらに会社自身によるリスク管理の充実、あるいは監督の強化というようなことで健全な状態を維持させるという方向がございますけれども、一方右が、事業継続困難な状態になった場合に、先ほど論点の中で御説明申しましたように、破綻に伴う社会経済的なコストが大きくならない時点でこれに対応できるようにするというようなこと。
 それから、下の四角でございますけれども、現行の業法上の手続の問題点につきまして、保険相互会社への更生手続の適用によりまして、これをさらに対処していくといったこと。これが全体の見直しの方向性であるということをポンチ絵のような形で御説明しているものでございます。
 以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 引き続き、山下委員、補足する点をお願いいたします。
○山下委員 時間が押しているようでございます。ごく簡単に申し上げますと、前半のリスク管理に関する部分は、年明け以降もなお審議するということでございまして、大きな方向を現在のところ、この資料にございますようにまとめつつあるところでございます。
 破綻法制との関係で現在までのところでは、資料2ページの「事業継続困難である旨の申出義務の基準」として、要するにとことんいかないで、早期にいかにコストを安く破綻処理を進めるかと、そういう視点に立ってこういう一応の基準を設けてはどうか。ここが今のところのポイントではないかと思います。
 それから、3ページ以降の「倒産法制の整備」につきましては、これは従来から立法論をすれば、こういうことであろうというふうなことを概ね取り入れているわけでございまして、これも例えば、契約はなるべく継続させた方がいい。そうすると、会社更生法 103条の適用はないようにするとか、あるいは早期解約控除を可能にするとか、それから、更生開始後に保険料を払い込んでくれる人には、その部分に関してはカットをしない、そういうふうな措置を取り入れたりする。
他方、破綻処理手続を円滑に進める、あるいは契約者の利益を保護するという意味では、契約者に法定の解約権を認めるとか、先ほど来議論が出ております先取特権を認める、あるいは更生手続中の保険金の買取り等の支払いをするというふうなことも考えておりまして、必ずしも一つの方向だけ見て、みんなすぐ制度ができるものではなくて、いろんな多方面の利益を考慮しながら作らなくてはいけないということで、なお細かいところにつきましては議論がございますが、一番最後のページにございますように、倒産法制については、年内にとりまとめる方向で現在鋭意作業しているところでございます。
以上、簡単でございますが、御報告いたします。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
ここで私、司会役として、議事進行についての勝手なお願いを申し上げますので、ぜひお認めいただきたいと思いますが、今たくさんの論点が出ましたけれども、引き続き、EDI−NETについての御説明をいただいて、そして、最後に今日の最初の預金保険制度も含めて、今日の問題自体について御発言をいただくということに進行させていただきたいと思います。
 それでは、大藤参事官、お願いいたします。
○大藤参事官 市場課で開示担当の参事官をしております大藤でございます。
 それでは、お手元の資料、15−4に基づきまして、ディスクロージャー制度の電子化についての検討状況等について報告させていただきます。
 まず、1ページの1.に「意義」が書いてございますけれども、金融システム改革が実施されつつある中で、公正で透明性のある市場の整備の一環といたしまして、会計、ディスクロージャー制度の整備を進めてきているところでございますけれども、証券市場の効率化・活性化及び市場メカニズムの一層の発揮を図るためには、企業が開示する情報の充実に加えまして、投資家等の企業情報への容易かつ迅速なアクセスを可能とすることが必要となると考えております。
 このような観点から、現在、紙媒体で行われております有価証券報告書等の開示書類の提出・受理・審査及び縦覧といった一連のディスクロージャー制度の電子化について検討を進めてきたところでございます。
 これまでの検討の経緯につきまして敷衍させていただきますと、有価証券報告書等の開示書類の電子化につきましては、証券取引審議会の報告書(平成9年6月13日)におきまして、これは資料の3ページにございますけれども、ディスクロージャーの電子化、インターネットによる情報の提供などを実施すべきであり、早期実現に向けて対応を進めるべきである旨、既に提言をいただいているところでございます。
 また、これと相前後いたしまして、本部会の委員でございます江頭教授を座長といたしまして、投資家でありますとかアナリスト、情報ベンダー、企業等をメンバーといたしました「電子開示研究会」を当時の証券局企業財務課長の勉強会として開催いたしまして、平成9年4月に立ち上げましたところでございますけれども、そこで鋭意検討を行いまして、平成9年7月には「電子開示システムのあり方について」という中間報告をとりまとめたところでございます。
 その後、本とりまとめを基に、EDI−NETの実現に向けまして、制度面、技術面で検討を行ってきたところでございまして、本年10月、当研究会において一定の方向性を打ち出していただいたことから、今日、本部会でその報告をさせていただいているところでございます。
 そして、その中間報告におきまして、こういう電子化されたディスクロージャー制度というものをEDI−NETと呼んではどうかということを提言いただいております。Electronic Disclosure for Investors' NETworkでEDI−NETということでございまして、こういう呼称を用いさせていただきたいというふうに考えております。
なお、ディスクロージャー制度の電子化に関しましては、各方面から強い御要請をいただいているところでございまして、資料の3ページ、中ほどにございます「規制緩和推進3か年計画」、これでは具体化に向けた検討を行い、平成11年度に結論を得る旨、提言いただいているところでございます。
 また、今回の「経済新生対策」、資料の3ページの下段でございますが、ここにおきましても、平成13年度からの導入を目指す旨、言及されているところでございます。
なお、敷衍させていただきますと、米国ではエドガー・システムというものが1984年から段階的に開発、導入されておりまして、既に1996年5月以降、全ての内国会社に対して、電子媒体での開示書類の提出を義務づけているところでございます。
 電子化された開示制度の概要でございます。これにつきましては、2ページに「EDI−NETの概要」ということでポンチ絵を付けさせていただいておりますので、これを併せて御覧いただきながら説明させていただきたいと思っております。
 まず、対象範囲でございます。EDI−NETにおきましては、現在紙媒体で行われている有価証券報告書等の開示書類の提出、受理、審査及び縦覧といった一連のディスクロージャー制度につきまして、インターネット等を活用して電子的に行っていくことにしたいと考えております。
 開示書類の電子媒体による提出につきましては、利用者等の便宜を考えまして、有価証券報告書等の開示書類を電子的に作成し、オンラインによる提出を原則義務化したいというふうに考えております。
 ただし、電子化への円滑な移行のために、紙媒体による提出も認める一定の経過期間を認めるとともに、段階的に対象書類を拡大していくことを検討しているところでございます。
 具体的には、いわゆる継続開示書類と言われます有価証券報告書、臨時報告書等から具体的には13年度から適用いたしまして、制度を導入していきたいというふうに考えております。
 義務化等の関係で言いますと、一部書類、例えば個人も提出者となり得る大量保有報告書等といったものについてどう考えていくかといったようなことについては、さらに検討していきたいというふうに考えております。
 その他災害等のため、EDI−NETで提出できない場合には、紙媒体で提出するということになろうかと考えております。
次に、当局におきます受理・審査業務でございますが、これも当然電子化された開示情報で行っていくということになるわけでございますが、これによりまして受理・審査業務の効率化が図られるとともに、開示書類のデータベースを様々な角度から分析・加工いたしまして、特定の勘定科目の異常値を発見するなどといったような活用も考えられるところでございまして、審査事務の効率化、高度化が可能になるというふうに考えております。
それから、EDI−NETの中心的な部分でございます情報の提供に係る部分でございますが、当局の閲覧室にモニター画面を設置いたしまして開示情報を提供することとしたいと考えております。加えて開示情報につきましては、インターネットを通じて広く提供していくことになるわけでございまして、これにより、投資家等の企業情報への迅速かつ容易にアクセスが可能となりまして、証券市場の活性化、効率化及び市場メカニズムの一層の発揮に資するものと考えております。
 なお、現在、開示書類の公衆縦覧というのは財務局の閲覧室、証券取引所、証券業協会及び提出企業において書類を備えて行われておりまして、これを公衆縦覧というふうに位置づけているわけでございますが、電子化された後は、その情報を見るということでございますとインターネットで全てのものがアクセスできるということになるわけでございまして、電子化された後におきます公衆縦覧の法律的な位置づけ、どこを公衆縦覧と整理するかということにつきましては、インターネットを通じた場合の情報の正確性に関する問題でありますとか、公衆縦覧場所としての必要性等の観点からさらに検討していきたいというふうに考えております。
適用時期等でございますけれども、ディスクロージャー制度の電子化につきましては、現在、証券取引法が紙媒体を提出するということで規定されておりますので、次期通常国会におきまして、一連のディスクロージャー制度を電子的に行うために、証券取引法につきまして所要の改正をお諮りしたいというふうに考えておりまして、現在作業を進めているところでございます。
次期通常国会において認めていただくということになりますと、1年程度の周知期間を経まして、13年3月期決算に係る有価証券報告書等から導入したいというふうに現在のところ、考えているところでございます。
 なお、資料にはございませんが、これに関連いたしまして、有価証券の募集等に際しまして、現在証券会社等は、発行体の事業内容等の情報を投資家に提供するため、目論見書を交付しているところでございますけれども、投資家保護の観点から問題のないように、一定の条件を付しまして、これを認めていく方向で検討しているところでございます。
 私からの説明は、以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほど申し上げましたように、本日のテーマであります預金保険制度と保険の基本問題とディスクロージャー制度の電子化について、どの点についてでも結構でございますので、どうぞ御自由に御意見、御質問等をいただけたらと思います。
 森本委員、どうぞ。
○森本委員 個別問題でなくて、預金保険の方ですけれども、今後の審議の状況、一応7日、14日と聞いておりますが、14日に一応結論を出すということで議論するのか、あるいはその後もやるのかによって質問内容も異なるように思うんですが、そこら辺は以前お聞きしましたか。
○倉澤部会長 では、室長、どうぞ。
○林信用機構室長 14日までには預金保険制度のあり方に関わる議論は全て終えていただけるような形にしてほしいなと思っておりまして、7日の段階では、年末に出す形の最終答申の案みたいなものを我々の方でお示しして、14日にさらに議論していただいて、大体そこで方向性を出していきたいと考えております。
○倉澤部会長 そのことで何かございますか。
○森本委員 幾つかの案が出てくるんだろうと、そういう気持ちなんです。
○倉澤部会長 この方向性を持ったたたき台を出さなければいけないタイムリミットだろうと思います、次の部会あたりが。
 どうぞ、森本委員。
○森本委員 先ほど堀内先生がおっしゃった点ですが、法律家の2人が御発言になり、私も法律家ですので一言申しますと、先ほど山下委員もおっしゃいましたように、先取り特権と言おうと、優先弁済権と言おうと、実質は同じなんですが、やはりそのような特別の権利を認める合理的な根拠と、そして、そのことを認めることによって他の劣後する人たちの保護というんですか、納得できる手当て、それがバランスとれれば可能だと思うんです。
 ですから、例えば預金について、一切優先弁済権を与えられないと断定する必要はないと思うんですが、ただ、ここに書かれている表現ですと、揚げ足取りをするようで申し訳ないんですが、物を保管し、運送サービスをするんなら、これを預かっているものだから、そういうサービスするんなら、利子を付けることはとんでもないことはもちろん、サービス料を取るべきじゃないか。あるいは、よそのものなら、少なくとも銀行の資産に付け加えるなというような形にもなりかねないわけですね。そうしないことの問題点を先ほど松下先生が別な意味でおっしゃったと思うんです。
 そして、松下先生は、結託してというような表現をお使いになったというのは、結託しなくたって、危ないぞと思ったら、合理的な人ならそう考える。そういうことも含めて、ややこの先取り特権というのは必要とする根拠がどの程度必然性があるのかという観点と、そして、それに対するモラル・ハザード+これによって劣後する人たちの保護が本当にできるのか、納得できるのかといったようなことがこの2文だけでは説得力がない。
 したがって、江頭委員も一般的に憲法違反になると言われたんじゃなくて、よほど注意しないと憲法違反になりますよとおっしゃったと思いますし、私もなかなかそういう点をクリアするだけの根拠、あるいは他の劣後債権者の保護措置がうまくいくのかなと思いまして、これを必要だと思われる方が積極的にいろいろ御提案いただいたら、そして納得できることなら、法律家も反対しないというより、むしろ支持するかもわかりませんけれども、非常に技術的に難しいんじゃないかなという感じがしております。1点そこだけ申し上げます。
○倉澤部会長 ほかにどの点に関連してでも結構でございますので。
 杉田委員、どうか。
○杉田委員 2点質問したいんです。まず、預金保険なんですが、流動性の問題。コストの負担の問題と併せて非常に難しい問題があるわけですが、しかし、今の金融機関の状態を考えると、2001年の4月1日までに、先ほど坪井委員の方から、絶対その後金融危機が起きないというような制度が担保できるかということ。これは私ども経済記者の常識を超えるようなことを進められれば別ですけれども、本当にそういうことが大丈夫かなと。口では言えても、実際に自信のあるようなものが1年ちょっとで整備されるかどうかということについては、率直に言って、それまで相当これから皆さん努力されると思うけれども、まだ問題はなお何年か残るんではないかというのが現実じゃないかという気がいたしますね。それが一つ。
 それから、2001年3月の終わりまでにそういう環境が整備されても、実際の資金の問題、資金の移動というのは来年が焦点なんだろうと思うんですね。企業の財務担当者というのは、今の我々のペイオフに関する議論もずっと注視しておられるようでありまして、要するに自分たちの資金が大丈夫かどうかということを見極めた上で、来年は財務担当者として何らかの断を下さなきゃいけないという状況にあるんだろうと思うんですね。
 そうしますと、資金を担当される方たちの判断を下す前にそういう状況が整備されるかと、それはとっても難しいというような状況が現実なんだろうと思うんですね。そういう中で我々がどういう結論を出していくかというふうに考えますと、やはり原則論で一番上に書いてあります第1の、これは基本的に私もそうだと思うんだけれど、これを最終的目標にするにせよ、一定期間の暫定措置がやっぱり必要なんではないかというふうに私自身は思いますね。
 そうすると、一定期間の暫定措置の負担をどうするかという問題が、先ほど翁さんから指摘されているわけだけれども、これは非常に難しい問題でありますが、受益者が一部負担するという考え方にプラスして、やはりその期間にある程度公的財源を投入するのも、場合によっては用意しておかなきゃいけないというようなことも何か仕組みとしてできないだろうかというような感じを持ちます。ですから、最終目標はきちっと示した上で、その間の軟着陸させる対応措置が要るんではないか。そこに専門家の皆さんのお知恵をぜひ、残り少ない時間ですけど、結集していただければという感じが一つ。
 それから、もう一点、今ディスクロージャー制度の電子化について御説明がありました。私も、私の担当自体もこの分野に若干関係しているので、非常に関心持って、基本的に賛成です。これで非常に効率化されると思うんですね。ただ、2ページのこの図を御覧になればわかるんですが、提出会社、我々が例えば有価証券報告書を提出する。提出する段階はこれで非常に効率化できるわけです。問題ないと思いますね。ほとんど企業がパソコンあるいはインターネットを使う担当者等を持っているわけでありますから、何の問題もないというふうに思います。
 問題は、一番最後のところなんですね。投資家に対してディスクローズする手段を電子化に限定するということが、いつ実施するのが妥当なんだろうか。つまり、今紙媒体でディスクローズしているわけですけれども、これをインターネットで限定いたしますと、今インターネットの利用率がようやく10%超したところなんですね。国民全体の。やっぱりアメリカの50〜60%とか70%という利用率に比べるとまだ差がございまして、実際にインターネットを使いこなせない投資家、特に高齢者とか女性の皆さんの中で、投資家であるんだけれども、インターネットをまだ使えない。
こういう人たちがだんだん使えるようになってくると思うんだけれども、その間に時間の経過がある程度必要だということで、私は、これをディスクロージャーも全部インターネットに義務づけるまでには、これもある一定期間の経過期間が要る。そうしないと、効率化ができるんだけれども、ディスクロージャーが後退していくという、そういう問題が出てくるだろうというふうに思いますね。ですから、ここのところはぜひ行政の方も御検討をしていただいた方がよろしいんじゃないか。
以上、2点でございます。
○倉澤部会長 どうかお願いいたします。
○高橋オブザーバー 1点申し上げますけど、今の最後の点と関係あるんですけれども、EDI−NET、ディスクロージャー制度の電子化というのは大変重要なことであると思います。その中で大藤参事官が一番最後に言われた目論見書等を投資家に電子的手段で行う、投資家保護が図られることを前提にしてというコメントがあったかと思いますけれども、これも結局は投資家が負担しなければいけないコスト負担その他を考えますと、投資家の便利のためにも、ぜひそういう方向で御検討いただきたいと思います。
 ちょっとはっきりわからなかったんですが、この同じ証取法の改正でその点も認めていくつもりというふうに理解いたしまして、それでいいんでしょうか。
○倉澤部会長 大藤参事官、どうか。
○大藤参事官 現在のところ、同じ証取法の改正でその点についても措置したいというふうに考えております。
 それから、杉田委員からお話がございました紙媒体云々ということでございますが、実は現在もいわゆる公衆縦覧ということで、紙媒体でディスクロージャーされている部分というのは非常に限られた場所で行われているわけでございます。電子化された後も、一定の縦覧、閲覧をするスペースを設けまして、そこにはモニター画面で、お越しいただければ、投資家の方もいわゆるディスクロージャーと申しましょうか、それを見ることができるといったようなことは措置したいというふうに考えております。
 それから、いわゆる紙媒体での各種、印刷局あたり等から印刷物が出ておりますが、これは我々がやっておるディスクロージャーではない部分でございまして、これにつきましては、引き続き需要があれば、そういうものも提供されていくということになろうかと思っております。
 以上、ちょっと付言させていただきました。
○倉澤部会長 ほかにどなたかございませんか。
 保険の基本問題について、何かオブザーバーの方の中に御意見ございますか。
 どうかお願いいたします。
○斎藤オブザーバー ワーキングにおきまして、大変夜遅くまで精力的に御審議いただいておりまして、今、山下委員の方から御紹介ありましたスケジュールで、ぜひ御審議を打ち上げていただければというふうに思います。
○倉澤部会長 ありがとうございました。
 よろしゅうございましょうか。
 それでは、最後に、次回の日程等につきまして、事務局より連絡させていただきます。
○玉川調査室長 次回の日程は、12月7日(火曜日)の午前10時からとなっております。議事といたしましては、年内に総会に対して当部会から提出する予定の特例措置終了後の預金保険制度等のあり方及び保険会社の倒産法制に関する報告書の素案となるものについて御審議いただくことを予定しております。
○倉澤部会長 次回の進め方、それでよろしゅうございましょうか。
ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、やや時間を過ぎてしまいましたが、本日の会議を終了させていただきます。
 ありがとうございました。
                                (以 上)