金融審議会「第二部会」第16回会合議事録

 日時:平成11年12月7日(火)10時04分〜12時01分
 場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室

○倉澤部会長 ただいまから、第16回金融審議会「第二部会」を開会させていただきます。
御多用のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日は、年内の総会への報告に向け、特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について、当部会としてのとりまとめの議論を開始することとなっております。
議論の際のたたき台といたしまして、これまでの当部会及び「預金保険制度に関するワーキンググループ」での検討の成果を踏まえて作成した「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について(案)」を御用意いたしましたので、このたたき台に沿って御議論いただければと思います。
それでは、討議に先立ちまして、この「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について(案)」を事務局から読み上げていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○谷内補佐 長いものですけれども、それでは読み上げさせていただきます。
1.はじめに
? 金融機関の破綻処理については、金融システムの安定化を図る観点から、平成8年度から12年度までの時限的な特例措置として、「ペイオフコスト(保険金支払に要すると見込まれる費用)を超える資金援助等を行うことにより預金の全額保護が図られている。また、金融機能再生緊急措置法及び金融機能早期健全化緊急措置法において、平成12年度までの時限的な特例措置が設けられており、預金の全額保護が図られている間に、金融機関の不良債権処理を基本的に終了し、更に、その財務内容の健全化を進めることによって、ゆるぎない金融システムを確立することが求められている。このため、預金保険機構に対して、交付国債及び政府保証等による財源措置等が講じられている。
? 預金の全額保護のための特例措置を平成12年度限りで終了することが法律で予定されており、その後は、預金者が金融機関の破綻による損失の一部を負担することがある体制に移行することとされている。その際の金融機関の破綻処理方式としては、現行の預金保険機構法本則において、保険金支払方式(ペイオフ)と一般資金援助方式(譲受金融機関への営業譲渡等に対してペイオフコスト内の資金援助を行う破綻処理方式)の二つの方式が措置されている。
? 金融審議会としては、第2部会及び預金保険制度に関するワーキング・グループを中心に、「安心で活力ある金融システムの構築」を実現するためのテーマの一つとして、「恒久的な」預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について検討を行ってきたところである。
 検討の過程では、マル1平成11年7月6日に「預金保険制度に関する論点・意見の中間的な整理」を第2部会名で公表し、その後、金融界、産業界、労働団体、消費者団体等から「中間的な整理」に関する意見のヒアリングを行ったほか、マル2同年10月19日に「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方」を同じく第2部会名で公表し、この「基本的考え方」に対して各界各層からの意見を広く求めたところである。
 預金保険制度のあり方は、国民生活に密接に関連する問題であり、できるだけ早く国民の前に特例措置終了後の姿を明らかにする必要があることから、金融審議会としても精力的に検討を行ってきたところであり、今回、金融審議会に寄せられた意見等を踏まえた上で、以下のように最終的な考え方をとりまとめた。
2.市場規律を中心とした預金者の保護
? 預金保険制度は、金融機関の経営破綻に際して預金者の保護を図るという、言わば事後的な対応措置であるが、預金者の保護の基本は、健全で収益力の高い金融機関経営を確保することにある。したがって、個々の金融機関において、適正な会計処理や内部管理の向上等による経営の健全性の確保はもとより、新たな金融商品の開発、顧客の信頼の獲得などの点に関し、21世紀を見据えた真摯な努力が求められる。
 なお、そのための環境整備の一環として、金融機関自身の業務再編等の可能性を拡大するためにも、営業所の認可制や代理店制度等に関する制度面での見直しについて検討することが適当である。
? 預金の全額保護という特例措置終了後においては、金融機関の破綻を未然に防止することが預金者を保護する上で最も肝要であり、そのために、問題金融機関を早期に発見し早期に是正することが重要となる。
 問題金融機関の早期発見・早期是正については、金融機関における公認会計士監査機能の充実強化及びディスクロージャーの徹底を図り、市場規律によるモニタリングが有効に機能することが求められるが、それと併せて、監督当局におけるマル1検査・モニタリングの充実・強化、マル2早期是正措置の適時適切な運用などが必要である。
? なお、現在の金融市場における決済慣行・企業行動等は、預金にリスクがないことを前提として成り立っているが、特例措置終了後においては、その前提を変更せざるを得ないため、多様な資金運用・調達・決済手段が提供されることにより、市場規律を自己責任原則に立脚した金融システムにふさわしいものとなることが望まれる。
3.金融機関の破綻処理のあり方
? 基本的考え方
 預金保険制度の本来の目的は、少額預金者を保護し、もって信用秩序の維持を図ることであり、特例措置終了後においては、保険料負担やモラル・ハザードを減少させるためにも、基本的に「小さな預金保険制度」を目指すべきであると考える。
 これまでに破綻した金融機関の例をみると、破綻処理の結果、大幅な債務超過を生じているという問題がある。今後の金融機関の破綻処理においては、これに伴う預金者の損失及び預金保険の負担を最小限に止めることが重要であり、回復の見込みがなくなった金融機関は、債務超過の程度が極力小さい段階で早期に処理していくべきであると考える。
 金融機関が破綻した場合には預金保険制度の発動により処理されることになるが、その場合には、破綻金融機関を存続させないことを前提として、ペイオフコストの範囲内で破綻処理に要するコストがより小さいと見込まれる処理方法を選択するとともに、破綻金融機関の有していた決済や融資等の金融機能を維持するなど破綻に伴う混乱を最小限に止めることが重要となってくる。
 そのために、金融機関の破綻処理方式としては、破綻に伴う損失負担により預金の一部がカットされることは同じであるが、譲受金融機関が破綻金融機関の金融機能を引き継ぐことになる一般資金援助方式の適用を優先し、金融機能まで消滅させることになる保険金支払方式(ペイオフ)の発動はできるだけ回避すべきである。その際、破綻処理を迅速に行うことができるような措置を講じるとともに、破綻の態様に応じ処理方式を多様化しておくことも必要になる。
 これらを踏まえれば、決済機能の保護や借り手の保護は、破綻処理コストの最小化に寄与し、ひいては預金者保護にも資するため、そのような意味で、預金保険制度の役割・機能に追加して考えることができる。
 特例措置終了後の金融機関の破綻処理における必要な流動性の確保、特に破綻金融機関に対する貸付は、基本的に預金保険機構が対応することになるが、日本銀行についても「最後の貸手」としての立場から、一時的な信用供与を行う、いわゆる日銀特融等の発動が必要になる場合もあり、この面において適切な役割を果たしていくことが期待される。
 なお、預金保険の発動に際しては、金融機関を破綻に至らしめた経営者等に対して厳格な責任追及がなされ、株主・出資者等の損失負担が行われることは当然のことであり、また、悪質な借り手への責任追及と債権回収の徹底が重要であることは言うまでもない。
? 一般資金援助を伴う営業譲渡等の迅速化
 現行の一般資金援助の下で営業譲渡が行われる場合、監督当局による業務停止命令や司法手続による保全処分によって預金の払戻しや融資機能が停止されることが想定されるが、それにより、預金者に多大な影響が生じるのみならず、決済機能を含む金融機関の営業体としての価値(フランチャイズ・バリュー)が急激に低下するなど、地域経済や金融システム等に対して大きな影響を与える可能性がある。
 こうした影響を最小限に止めるためには、一般資金援助を伴う営業譲渡を迅速に行うことにより、破綻金融機関が有していた金融機能をできるだけ早く譲受金融機関に引き継ぐことが求められる。
 一般に、預金の一部カットのような私権の一部剥奪を伴う倒産処理は、最終的には司法手続に依らざるを得ない。しかし、金融機関の破綻処理を迅速に進めるためには、司法上の手続に入ることを前提として、その前に司法手続の外で破綻金融機関の営業譲渡を行うという手法が有効であり、このような手法を可能とするためには、マル1事前準備、マル2資金援助が可能になる場合の拡大、マル3営業譲渡手続の迅速化・簡素化、等について特別な手当が必要となる。
マル1 事前準備
 金融機関の破綻処理に当たっては、後述するように、公的な管理人の選任、譲受金融機関との営業譲渡契約の締結(健全資産と付保預金の承継等)、預金等債権の買取り(概算払率の決定)、預金保険法上の適格性の認定、裁判所に対する代替許可の申立、公正取引委員会への届出などの各種手続が必要となる。
 したがって、金融機関の破綻処理を迅速に行うためには、監督当局及び預金保険機構が緊密に連携をとりながら、経営状況が一定程度悪化した金融機関については、その金融機関が破綻に至ることも想定して、預金者の名寄せや資産内容の把握等に関し可能な限りの準備を行っておく必要がある。
 一預金者当たり一定限度額(現行1000万円)まで保護するという預金保険制度の下で、金融機関の破綻処理を行うためには、破綻した金融機関の預金者の名寄せを行うことが不可欠である。
 破綻時に預金保険機構において名寄せ作業を開始することとすると、現状では、名寄せ作業そのものが迅速な破綻処理の障害となる。破綻処理の迅速化という観点からは、少なくとも当面、名寄せと保険金額等の計算に必要な預金者データの整備及びその預金者データを預金保険機構にスムーズに引き継ぐことができるためのシステム対応を平常時から金融機関に求め、更に、預金保険機構が金融機関のシステム等の対応状況を把握できるようにすることにより、預金保険機構において迅速に名寄せ等が行われることを可能とする環境を整備しておく必要がある。
 なお、破綻処理のための名寄せが金融取引全体に過大なコスト負担をもたらすことを回避する観点から、今回の預金保険制度の見直しの中では、金融機関に対してそれぞれが平常時から名寄せを行うことまでは求めないが、預金保険制度は預金者の名寄せが行われていることを前提としており、また、顧客サービスという観点からも、個々の金融機関において自主的に名寄せが行われることが望ましいと考える。
 また、金融機関の資産内容の把握等については、金融機関の健全性の確保等を目的とした検査・モニタリングを通じて監督当局が収集した資料情報等を活用するほか、破綻処理を迅速に行うために必要な情報を、金融機関に対する資料徴求や立入検査などを通じて、監督当局及び預金保険機構が入手できるようにすることが適当である。
マル2 資金援助が可能になる場合の拡大
 現行の預金保険法では、営業譲渡における一般資金援助は、破綻金融機関が譲受金融機関に対して営業の全部を譲渡した際に、営業譲渡時に譲受金融機関に対して行われることとされている。
 しかしながら、上記の場合以外にも資金援助を可能にすれば、破綻の態様に応じた多様な破綻処理を行うことが可能となり、破綻処理の迅速化にも資することになる。このため、営業の一部(例えば、健全資産と付保預金)のみを譲渡する場合の資金援助、営業譲渡後に行う追加的な資金援助、債権者間の衡平を図るための破綻金融機関に対する資金援助など、資金援助が可能になる場合を拡大することが適当である。
 なお、資金援助の一つである資産買取りについては、現在、預金保険機構から委託された協定銀行(整理回収機構)が破綻金融機関等から不良債権等を買い取って集中的に回収を行うというスキームを時限的に措置しているが、特例措置終了後も、そのスキームを継続することが適当である。
マル3 営業譲渡手続の迅速化・簡素化
 迅速かつ円滑に破綻金融機関の営業譲渡を行うため、また、破綻金融機関の経営陣が破綻処理を進めることは適当でないことからも、司法手続に入る前に、監督当局の権限に基づく行政処分として破綻金融機関を公的な管理人の下に置くことが求められる。そのために、現行の金融機能再生緊急措置法における金融整理管財人制度を踏まえ、破綻金融機関の経営権を掌握する管理人制度を導入することが適当である。また、その際、現在の金融整理管財人制度と同様に、破綻処理の実務の蓄積のある預金保険機構が今回導入される管理人の一員となることを可能とすることが望ましい。
 通常の金融機関の営業譲渡においては、株主や債権者等の保護のために、一定の期間を要する厳格な手続を踏むことが要請されている。一方で、金融機関の破綻処理の場合は、このような手続により、営業譲渡が遅れてフランチャイズ・バリューの低下をもたらし、結果的に債権者保護等の要請に応えられない事態になることが想定される。
 したがって、金融機能再生緊急措置法で時限的に措置されている株主総会の特別決議等に代わる裁判所の許可(代替許可)制度、営業譲渡に伴う債権者保 護手続を迅速化する制度等を導入するほか、営業の譲受けに伴う独占禁止法 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)上の届出について営業の譲渡けの禁止期間を短縮すること等により、営業譲渡に要する手続を迅速化・簡素化することが必要となる。
 上記マル1からマル3のような手当がなされれば、事前の準備を行った上で、破綻公表と同時に公的な管理人が選任され、公的な管理人により譲受金融機関に破綻金融機関の営業の一部又は全部の譲渡を行うという一連の処理を速やかに行うことが可能となる。
 この方法は、我が国における特例措置終了後の金融機関の破綻処理の望ましい基本形として位置付けられ、また、米国において多用されているP&A(資産買取・負債承継)と同様の機能を持つことになる。
 なお、金融機能を消滅させることになる保険金支払方式の適用はなるべく回避すべきであるが、仮に保険金支払を実施する場合には、混乱を最小限に止めるために保険金支払を迅速に行うことが必要である。そのためにも、上記マル1の事前準備等が十分になされていることが重要であり、更に、破綻金融機関以外の金融機関に保険金支払事務を委託するなどの運用上の工夫を検討する必要がある。
? 金融機能の維持(営業譲渡までに時間がかかるケース)
 破綻金融機関の金融機能の維持については、破綻処理を迅速に行うことによって対応することが望ましいが、営業譲渡のための準備が十分でないまま破綻に至る場合など、破綻時から営業譲渡までにある程度時間が必要なケースも想定される。その間、破綻金融機関において預金の払戻しや融資等の金融機能を停止すれば、破綻金融機関の利用者である企業や個人の決済が滞ることになるほか、必要な融資を受けられなくなるなど、地域経済や金融システム等に大きな影響をもたらすことになりかねない。
 したがって、営業譲渡までに時間がかかる場合には、原則として公的な管理人を選任した上で民事再生法等の司法手続を利用し、処理手続として整合性がとれる範囲内で、以下のとおり、一定の金融機能を継続することが適当である。
 なお、和議手続に代わる新たな再建型の倒産手続として民事再生手続が導入されることになるが、金融機関の倒産手続の特例を定めた更生特例法(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律)においても、更生手続の特例等と同様の民事再生手続の特例を盛り込むことが適当である。
マル1 預金者の利便性の確保
 預金者の利便性の確保(預金の払戻し、決済サービスの享受等)については、破綻公表から営業譲渡までにある程度時間がかかる場合であっても、その間に、一定の範囲で預金の払戻し等を可能にしておくことが望ましい。したがって、倒産手続に入った場合も含め、預金保険機構による仮払金の支払や破綻金融機関における付保限度までの預金の払戻しを可能とするとともに、預金保険機構が破綻金融機関に対して必要な資金を貸し付けることができるようにすることが適当である。
 なお、付保限度を超える預金については、保険金支払方式の場合に認められている預金等債権の買取制度を適用することが適当である。
マル2 流動性預金の問題
 金融機関が破綻して預金の一部がカットされる場合、迅速な破綻処理による対応で決済の問題をどこまで解決できるかという問題については、当審議会において、以下のように幅広い観点から検討を行った。
 預金保険制度は少額預金者保護を目的とする制度であり、決済の問題は可能な限り破綻処理の迅速化及び民間による多様な決済サービスの提供によって解決すべきであるとの基本的な意見がある一方で、迅速な破綻処理を目指すとしても、営業譲渡までに時間を要する場合には、企業や個人の決済への影響が懸念され、特に中小企業は決済取引のために活用している金融機関を簡単に変えることはできないことからも、当面の営業資金や生活資金が保管されている流動性預金については、全額を保護すべきではないかとの意見もあった。後者に対しては、流動性預金を全額保護対象とすることは負担やモラル・ハザードの増大につながる、流動性預金の範囲をどうするか、他の預金との明確な線引きが技術的に可能か、全額保護が必要ならば他の制度で対応すべきではないかと、等の問題の指摘もあった。
 更に、決済サービスへの影響を緩和しつつモラル・ハザード等の問題を回避するため、付保限度を超える一定額について、予め定められた比率で迅速に払い戻すこととしてはどうかとの意見のほか、流動性預金については、決済されるまでの間は移転の途上にあるものと考えられるので、他の債権に優先して弁済を受けられる優先権を与えてはどうかとの意見があった。
 また、仕掛かり中の決済取引の扱いについては、金融機関の決済機能に対する信頼性を維持するため、また、仕掛かり中の決済取引を通常の債権と同様に処理すれば迅速な営業譲渡の障害となりうるとの観点から、別段預金や借受金に計上されている未決済取引を結了できるよう、仕掛かり中の取引のみを預金保険や優先権の付与によって全額保護すべきではないかとの意見があった。これに対しては、仕掛かり中の決済取引とそうでないものとの線引きか可能か、また、中小企業を中心として翌日以降の決済資金を取扱金融機関に預け入れておくことが少なからず見られ、こうした仕掛かり中の決済取引は当座預金や普通預金に滞留していることが多いという実態を踏まえると、それらの決済性預金が保護されなくなることとの公平性をどう考えるか、等の問題があるとの指摘が行われた。
 以上のような議論に基づき、流動性預金の扱いについて検討を進めた結果、少なくとも、迅速な破綻処理が確実なものとなり、また、民間の決済サービスの多様化が図られるまでの間は、企業や個人の決済が滞ることを通じて地域経済や金融システム等に大きな影響を与える事態とならないよう、流動性預金に関して何らかの特別な措置を講じることも止むを得ないのではないかと考える。但し、その場合においても、保険料負担で賄うことを前提として、できる限りモラル・ハザードの発生を抑えることが必要であり、例えば、全額保護される流動性預金を付利されない預金に限る(その金利に上限を設ける)ほか、それ以外の預金よりも重い保険料負担を課すなどの手法を採ることが考えられる。
マル3 借り手の保護
 金融機関が破綻した場合、現行の司法手続の下では、その金融機関と取引をしていた善良かつ健全な借り手であっても、破綻金融機関からは新たな融資を受けられなくなる。金融機関の破綻処理における善良かつ健全な借り手の保護についても、破綻処理を迅速に行うことによって対応することが望ましいが、司法手続の下での破綻処理費用の最小化を図るために破綻金融機関からの融資を可能としておくことも求められる。しかしながら、預金者の保護が本来の目的である預金保険制度による対応だけでは自ずと限界があり、国における政策的対応が併せてなされることが望ましい。
 また、地域経済に与える影響や住民生活の安定等を勘案して、地方公共団体における自主的な対応が行われることが期待される。
 相殺に関しては、金銭消費貸借契約上、借り手の債務不履行や倒産手続の開始の申立を借入金債務の期限の利益の喪失事由とする旨の約定がなされる慣行が見られる一方で、金融機関の破綻は、金融機関の預金債務の期限の利益の喪失事由にはされていないという問題が指摘されている。この問題については、イ) 例えば、預金取引約款等において、保険事故が発生したときには期限未到来の預金債権と借入金債務との相殺を預金者が行うことを可能とするなど、金融機関が、預金者でもある借り手の立場を考慮した契約関係を築くことが重要である。
ロ) 現状の金銭消費貸借契約に係る慣行を踏まえると、こうした約款等の見直しにより、借り手でもある預金者が相殺によって他の債権者よりも優先して弁済を受けるのと同じ結果となることも容認される、
との指摘がなされた。
 なお、借り手が預金を有している場合、継続的な取引関係を維持する観点からは、営業譲渡において預金と借入金をともに譲渡することが、借り手及び譲受金融機関の双方にとって望ましい扱いになると考える。こうした観点から、破綻処理においても預金が相殺適状となっている場合は、相殺適状となっている預金と借入金を両建てで譲受金融機関に譲渡しても他の債権者を害しないことを考慮して、相殺適状となっている預金を、譲受金融機関に譲渡される借入金の額までともに譲渡する扱いとすることが、預金者保護の観点からも望ましいと考えられる。
 なお、以上の営業譲渡まで時間がかかるケースの問題については、?の金融機関の破綻処理が迅速に行われる場合(望ましい基本形の場合)に共通する問題もあるので、預金等債権の買取制度の適用や借り手の保護のための措置等について同様の措置を講じることが求められる。
? 破綻金融機関の承継先
 現行の一般資金援助方式では譲受金融機関の存在を前提としているが、我が国の過去の破綻事例を勘案すれば、今後、譲受金融機関が即座には現れない場合も想定される。したがって、金融機関の破綻処理を迅速に行うためにも、破綻金融機関の承継先が現れやすい環境を整備するとともに、仮に破綻金融機関の承継先が直ちに現れない場合でも対応できるような破綻処理方式を用意することが求められる。
マル1 破綻金融機関の承継先が現れやすい環境の整備
 譲受金融機関が即座に現れない要因としては、承継する破綻金融機関の資産の内容に対する不安、資産の承継や営業譲受に係る諸費用による自己資本比率の低下等が指摘されている。
 このため、資金援助の一環として、まず、破綻金融機関から引き継いだ資産が営業譲受後に劣化した場合に、譲受金融機関に生じる損害の一部を預金保険機構が一定期間担保するような仕組み(ロス・シェアリング)を導入することが適当である。その際、逆に承継資産に利益が生じたときは、その一部を預金保険機構が取得できるようにすることも併せて求められる(プロフィット・シェアリング)。
 また、資産の承継等により低下する自己資本比率を回復させるため、譲受金融機関に対して資本増強などの措置を講じられるようにすることが適当である。その際、増強した資本の価値が減少することのないよう、少なくとも譲受金融機関から優先株式等の消却等に対応できる財源を確保するための方策等を提出させることが求められる
 現行の預金保険制度の下では、資金援助において破綻金融機関の受皿となることができるのは預金保険の対象となる金融機関及び銀行持株会社等に限定されている。しかし、株式取得方式による資金援助の場合には、破綻金融機関の承継先(株式取得者)をそれらの金融機関及び銀行持株会社等に限定する経済的合理性はなく、その範囲を拡大することが適当である。
マル2 破綻金融機関の承継先が直ちに現れない場合の対応
 破綻金融機関の承継先を探す時間的な余裕を確保するためにも、現行の金融機能再生緊急措置法で措置されている承継銀行(ブリッジ・バンク)制度を踏まえた制度を導入することが適当である。その場合において、ブリッジ・バンクの設立及びブリッジ・バンクへの営業譲渡が速やかに行われることが必要であり、?マル3の通常の営業譲渡手続の迅速化・簡素化の他に、ブリッジ・バンクの事後設立の特例等を措置することが適当である。
 また、預金保険法附則で規定されている協定銀行(整理回収機構)の受皿機能についても、承継先のラスト・リゾートを確保する観点から、継続することが求められる。
4.危機的な事態が予想される場合の対応
? 例外的な措置の必要性
 預金の全額保護のための特例措置が終了した後における金融機関の破綻処理は、これまで述べたように、ペイオフコストの範囲内で行うことになる。しかしながら、金融機関の破綻により信用秩序全体の維持や国民・地域経済の安定に重大な支障が生じることが予想されるような危機的な事態(システミック・リスク)には、通常の破綻処理の枠組みでは対応できないことも想定される。
 米国においては、金融機関の破綻処理において、選択可能なあらゆる破綻処理方法の中でコスト負担が最小の方法を選択することが求められている(「最小コスト原則」)。一方、厳格な手続の下において「コスト基準を遵守した処理方法を選択すれば経済情勢や金融システムの安定性に深刻な影響を及ぼし、他の方法を用いればこれを回避ないし緩和できる」と判断されれば、「最小処理コスト原則」に依拠することなく例外的な処理を行うことが可能とされている。
 我が国でも、現在の特例措置により金融システムが安定化した後においても、危機的な事態が起こる可能性を否定することはできない。このため、万が一に備え、モラル・ハザードの発生を回避しつつ、例外的な措置が可能となるようにしておく必要があり、その場合には、厳格な手続が併せて求められると考える。
? 例外的な措置の内容及び手続
 危機的な事態が予想される場合に採るべき例外的な措置としては、マル1破綻を未然に防止するという観点からの金融機関に対する直接の資本増強、マル2譲受金融機関等に対するペイオフコストを上回る資金援助、マル3金融機能再生緊急措置法に規定されている特別公的管理の枠組み、が挙げられる。なお、特別公的管理は、株式の強制取得という手法を伴うものであるので、例外的な措置の中でも最後に採るべき手段として位置付けることが妥当である。
 例外的な措置を採る場合の厳格な手続としては、システミック・リスクの存在と例外的な措置の必要性が認識された上で、平成13年1月の中央省庁再編と同時に発足する内閣総理大臣を議長とする金融危機対応会議の議を経て、例外的な措置の発動等の決定がなされることが適当と考えられる。更に、例外的な措置が発動された際には、その必要性等について事後的な説明が求められることになると考える。
 上記のような例外的な措置を講じることによって生じる損失(ペイオフコストを超えるもの)を埋めるための財源については、一般保険料で賄いうるものではないと考えられる一方で、納税者に安易に負担を求めるべきではないことから、金融機関に一般保険料とは別に特別な負担を課すことが妥当である。しかしながら、金融・決済システムは経済のインフラストラクチャーであり、その安定性確保は金融機関、預金者のみならず、広く国民経済全般の安定の基礎となるものであることから、危機的な事態が予想される場合に例外的な措置を採った際には、一定限度まで金融機関に特別な負担を求めつつ併せて政府が適切な財政措置を講じることにより、経済全般の安定を確保するためのコストとして、広く間接的な受益者である納税者にも負担を求めざるを得ないこともあると考えられる。なお、例外的な措置を採るために必要となる資金(流動性)については、預金保険機構による政府保証付きの借入れや日本銀行による信用供与で確保することが適当である。
5.預金保険制度の他の論点
? 付保対象
預金保険の対象商品であるか否かについては、従来から、
・ 基本的な貯蓄手段として国民の間に定着していること
・ 元本保証がなされていること
・ 債権者が特定され、転々流通しないこと
が主な基準となっていたところである。
 従来の基準を基本とした上で、預金者の混乱の防止や迅速な破綻処理という観点をも考慮した場合、以下のものを新たに付保対象とすることが妥当である。なお、金融機関において個々の金融商品が付保対象であるか否かを利用者に明確にする必要があることは言うまでもない。
マル1 金融債
 金融債については、転々流通する有価証券であって名寄せにより1人当たり一定限度額まで保護することが技術的に困難であること等から、現行では預金保険の対象になっていない。しかしながら、金融債の中で上記の3つの基準を満たしているものは実質的には定期預金と同じ性格と考えることが可能であり、しかも通常個人向けの貯蓄手段として販売されているものに限定すれば、付保対象とすることが適当である。
マル2 公金預金・特殊法人預金
 公金預金等(国庫金の出納に当たり国の出納機関が行う預金を含む)については、預金者が一般の預金者とは違う上に、1000万円まで保護しても実質的な意味は乏しいこと等から、現行では預金保険の対象となっていない。しかしながら、企業との均衡を勘案すれば預金保険の扱いに差を設ける必要性はないこと、また、流動性預金に関して特別な措置を講じることになれば歳入歳出の管理に実質的なメリットが期待できることから、付保対象とすることが適当である。
マル3 預金利息
 預金利息については、金融機関経営者や預金者のモラル・ハザードを助長する上に、事務手続が煩雑になること等から、現行では預金保険の対象になっていない。しかしながら、預金利息を守ることで少額預金者に安心感を与え無用の資金シフトを防止するという側面や、倒産手続の迅速化及び郵便貯金との均衡等を勘案した場合、付保対象とすることが適当である。なお、モラル・ハザードの問題については、早期是正措置により金融機関の高金利の預金の受入れを禁止又は抑制することで、一定の歯止めをかけることが可能になると考える。
 なお、外貨預金については、為替リスクが存在する上に、国民にとって一般的な貯蓄手段となっているとは言えないこと等から、従来どおり、付保対象としないことが適当である。
? 預金保険の対象金融機関
 現行の預金保険の対象となる金融機関は、都市銀行、長期信用銀行、信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫となっており、資金援助の対象となる金融機関についても、これらの金融機関に限定されている。したがって、譲受金融機関となる候補を拡大するなどの観点から、現在は預金保険の対象となっていない全国信用金庫連合会等の協同組織金融機関の連合会を預金保険の対象とすることが適当である。
 なお、外国銀行在日支店については、管轄権の問題があるため破綻処理に当たって迅速かつ適切な対応をとることが困難であること等から預金保険の対象になっていないが、預金者保護の観点や、主要国の預金保険制度において基本的に強制加入となっていること等を考慮すると、将来的な制度のあり方としては、預金保険の対象とすることが望ましいと考えられる。
 外国銀行在日支店の預金保険制度上の具体的な取扱いについては、引き続き、外国銀行在日支店に対する規制、検査・監督、破綻処理のあり方等につき検討を進めた上で、結論を得ることが適当である。
? 保険金支払限度額等
マル1 保険金支払限度額
 現行の保険金支払限度額は1000万円となっているが、我が国の1人当たりの平均貯蓄残高や諸外国の水準、保険料負担の増加等を勘案すると、この水準を引き上げる必要はないと考える。
マル2 仮払金
 金融機関の破綻処理が迅速に行われれば、仮払金制度の意義は相対的に薄れることとなるが、仮払金制度が必要とされる事態に備えて、預金者の不安の解消を図るために、現行20万円である仮払金の水準を相当程度引き上げることが適当である。
? 預金等債権の買取り
 現行の預金等債権の買取りは、預金保険の対象となっている預金等が対象となっているが、非付保対象預金等の流動性の確保の観点及び債権者の集約による倒産手続の迅速化の観点等から、その対象範囲を拡大すべきであるとの意見がある。それについては、非付保対象預金等の中には権利関係が複雑で定型的な処理にそぐわないものも少なからずあるため、預金保険機構が買取りを行ったとしても倒産手続の迅速化に寄与するとは必ずしも言えないほか、仮に非付保対象預金等の買取りにより預金保険機構に損失が発生した場合には、結果的に保険料を財源とする一般勘定の負担となってしまうとの問題がある。
 これらの点を踏まえると、債権及び債権者が明確に確定できるものに限定するなどの工夫を行った上で、預金等債権の買取りの対象範囲を拡大することが適当であると考える。
? 預金保険料
 預金保険機構の一般勘定における借入金残高は、現在、相当な規模になっている上(平成11年11月末現在 13,321億円)、既に破綻を表明している金融機関の処理が予定されていることを踏まえると、今後、更に兆円単位で借入金が増加することが見込まれる。預金の全額保護という特例措置が終了した後の預金保険料の水準を検討するに当たっては、預金保険制度に対する国民の信頼に応えるためにも、まずもって、一般勘定の借入金を早期に返済し、更に、将来に備えて一定規模の責任準備金を積む必要があることを念頭に置かなければならない。
現行の預金保険料率し、特例業務に要する費用や金融機関の財務の状況等を勘案して、平成7年度以前の水準の7倍(特別保険料を含む)となっているが、特例措置終了後の保険料の水準については、一般勘定の借入金の早期返済等という観点から、現行の水準をベースとして検討することが必要になると考える。
 なお、金融機関の財務状況等に応じた保険料率の導入については、諸外国の預金保険制度においても導入の動きが見られること、また、市場規律を補うという観点から、本来望ましいものと考える。しかしながら、一般勘定の借入金の早期返済が必要な状況の下だ直ちに導入した場合には、経営の悪化した金融機関に対する保険料率は相当高い水準になることが見込まれるため、その金融機関の経営に対する影響は看過できないものとなる。したがって、金融機関の財務状況等に応じた保険料率の枠組みの検討は早く進めるべきであるが、その実施については、当面、慎重に対応すべきであると考える。
? 預金保険機構の資金調達
 預金保険機構の一般勘定の資金調達は、現行法上、まずは日本銀行からの借入れで対応し、その借入れの返済のために借換えを行う際には、日本銀行からの借入れは一時的な流動性の補完にすぎないことから、原則として民間からの資金調達に振り替えていくこととされている。
 預金保険機構のその他の勘定においては当初から民間資金の調達が可能となっており、また、実際の運用において預金保険機構が可能な限り民間からの資金調達に努めている現状等を踏まえると、一般勘定における当初の資金調達についても、制度的に日本銀行からの借入れに限定する必要はなく、可能な範囲内で民間から資金を調達する努力を行うことが適当と考えられる。
なお、今般の恒久的な預金保険制度及び金融機関の破綻処理制度の構築に伴い、農水産業協同組合貯金保険制度についても、その特殊性等に配慮しつつ、基本的には同様の方向で検討を行うことが望まれる。
6.特例措置が終了するまでに整備すべき環境
 平成7年12月22日の金融制度調査会答申では、「現時点においては、ア)ディスクロージャーが充実の過程にあり、預金者に自己責任を問いうる環境が十分に整備されていない、イ)金融機関が不良債権を抱えており、信用不安を醸成しやすい金融環境にあることから、未だペイオフを行うための条件が整っていない」旨が言及されている。
 その後の環境整備の状況は以下のとおりである。
? 金融機関のディスクロージャー
 金融機関がディスクロージャーを充実させることは、金融機関の経営の透明性を高め、市場規律により経営の自己規正を促すとともに、預金者の自己責任原則の確立のための基盤となることから、極めて重要である。
 このような考え方に基づき、金融機関のディスクロージャーについては、平成10年3月期から(協同組織金融機関は11年3月期から)米国証券取引委員会(SEC)の基準と同様の基準による不良債権の情報開示が行われている。また、11年3月期からは金融機関の業務・財産の状況に関し法令に規定された具体的な事項を連結ベースで開示することが罰則付きで義務化されるなど、その拡充が図られてきたところである。
また、金融機能再生緊急措置法に基づく資産査定の開示が、11年3月期から都市銀行、長期信用銀行、信託銀行について行われているが、12年3月期からは預金取扱い金融機関の全てについて行われることとなっている。
 なお、個々の金融機関に対しては、法令で定められた業務・財産の状況に関するディスクロージャー及び付保対象に関する情報等の提供以外にも、預金者に対して、自己の経営・財務状況を分かりやすく示すとともに、預金保険制度等について正確な情報を提供することを望みたい。
? 金融システムの安定
 現在、預金保険法のほか、金融機能再生緊急措置法及び金融機能早期健全化緊急措置法を車の両輪とする法的枠組みの的確な運用が行われているところであり、それにより、一時の金融システムの不安定な状態は解消されつつあると考える。
 平成13年3月末までの間に、上記の枠組み等を活用して、金融システムの安定を一層強固なものとする取組みが引き続き行政当局及び金融界においてなされるとともに、個々の金融機関において、収益性の向上や自己資本の充実等に努めることにより、強い競争力を持った経営基盤の強化を図ることが求められる。
? その他
 保険金支払方式(ペイオフ)になれば、1000万円を超える預金は全額カットされるなどといった誤解があり、そのような正確でない情報のために、国民が特例措置の終了について不安を感じている面があることは否定できない。その不安を取り除くためにも、預金保険制度等に対する国民の理解を深めることが重要であり、政府、預金保険機構、金融界等の関係者において、預金保険制度等に関する広報のための更なる努力を望みたい。
 以上でございます。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。御苦労さまでした。
 本日は、「預金保険制度に関するワーキンググループ」で座長をお願いしております神田秀樹委員にも御出席いただいておりますので、同ワーキンググループでの検討の模様も適宜御紹介いただきながら、この素案についての補足説明をいただきたく存じます。
 神田委員、よろしくお願いいたします。
○神田委員 それでは、ごく手短に若干補足めいたことを申し上げさせていただきたいと思います。
 ワーキンググループは、本年の2月10日から先週の金曜日まで、合計18回にわたって会合を持ちました。この場をお借りしまして、ワーキンググループに参加いただきました委員、オブザーバーの方々に厚く御礼申し上げます。
補足を4点させていただきたいと思いますが、これはあくまで補足でございまして、ただいま読み上げていただきました本文の方がもちろん大事だということを前置きにさせていただきまして、ワーキンググループでいろいろ議論が出たり、御指摘があった中で、重要と考えながらも、この文面には必ずしもいろいろな事情で現れてない点を4点補足させていただきます。
 第1点から第3点までは7ページから8ページ、特に8ページあたりの決済性の預金の「流動性預金の問題」という題名に書いてあるところであります。8ページの真ん中あたり、マル3のちょっと上に、「以上のような議論に基づき、」という段落がありまして、そこにいろいろ書いてありますけれども、ワーキンググループでは、個人の決済性預金の場合には、郵便貯金とのバランスということもあるのではないかと、そういう御指摘がありまして、それはもっともな御指摘なんですけれども、ちょっとなかなかここに書きにくい。これ以外の場所で郵便貯金に触れているところはございますけれども、それは利息を対象にするかどうかというところなんですけれども、ちょっとここではうまく書けないものですから、書いてありませんけれども、そういう御指摘がありました。
 それから、第2点ですが、やはり同じ段落なんですけれども、マル3のちょっと上に、「但し、その場合においても、保険料負担で賄うことを前提として、できる限りモラル・ハザードの発生を抑えることが必要であり、」というふうに書いてありますけれども、ここの記述は、いわゆる納税者に負担を求める場合があるということは適切でないという考え方に立っています。この点が11ページの方にシステミック・エクセプションについて、10ページから「危機的な事態が予想される場合の対応」ということで、もちろんこちらも安易に納税者に負担を求めるのはよくないわけですけれども、11ページの最後、四、五行のところに、「広く間接的な受益者である納税者にも負担を求めざるを得ないこともある」と、こういう認識であるのに対して、8ページの方はそういうことはあってはならないという考え方に立って文章を書いております。これが第2点です。
 それから、第3点ですが、やはり8ページの今の同じ段落なんですけれども、「以上のような議論に基づき、」の次なんですけれども、「少なくとも、迅速な破綻処理が確実なものとなり、また、民間の決済サービスの多様化が図られるまでの間は、」と書いてあるんですが、この「間」というのは一体どのぐらいなんだというのがかなり議論になりまして、ワーキンググループ全員の意見の一致を見ているわけではありませんので、ワーキンググループとして、この第二部会にこの場で私から御報告ができるような状況でありませんが、私自身を含めて圧倒的多数の委員の感触としては、せいぜい2年ぐらいではないか。ごく一部、もう少し柔軟に2〜3年ぐらいでいいのではないかという御意見もありましたけれども、せいぜい2年。もっと短ければ、短い方がいいという、そういう気持ちが込められているということをここで補足させていただきます。
 最後第4点は、12ページの「付保対象」であります。そのうちの「金融債」の部分でございます。金融債を付保対象に加えるべきかどうか。また、加えるとしても、その範囲、どういう条件の下で、どういうものについて加えるべきかについては、いろいろ御議論はございましたけれども、ワーキンググループとしては、こういうようなことで、この部会に御提案、御報告をさせていただくことになりました。ただ、ワーキンググループで次のような重要な御指摘がございましたので、ここで補足的に御紹介しておきたいと思います。
それは、そもそも金融債という制度の将来をどういうふうに考えるかという問題があるということであります。この問題は、より大きく言えば、長期信用銀行制度そのものの将来をどういうふうに考えていくべきかという問題がございます。また、一般の銀行の普通社債というんでしょうか、そういうものとこの金融債との関係を整理していく必要もあるわけでして、普通の銀行社債というものの発行が認められるようになっても、もちろんそれは預金保険の付保対象になっているわけではございませんので、そういう問題を将来整理していく必要があるという御指摘がございまして、これは誠にもっともな御指摘であると思います。
ただ、今回のこの報告の中にそれを盛り込むのは、ちょっと管轄を超えるような話だと思いますので、ここにはその点は書いてはございません。ただ、背景には、そういう問題意識があって、そういう問題意識も勘案しながら議論が進められたということをここで補足させていただきたいと思います。
以上です。
○倉澤部会長 どうもありがとうございました。
それでは、「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について(案)」につきまして、御意見、御質問等ございましたら、御自由にお出しいただきたいと思います。
 では、深尾委員から。堀内委員、その次にお願いいたします。
○深尾委員 質問と意見両方ありますが、まず、3ページ目のところですけれども、?のすぐ上のパラグラフの「なお、預金保険の発動に際しては、」ということですが、「株主・出資者等の損失負担」とありますけれども、ここにはやはり劣後債権者を含めるべきだろう。ただ、どういう劣後債券を含めるのかという点が問題になりますので、株主・出資者等の自己資本の提供者といいますか、「金融機関への自己資本の提供者」というふうに書き込むことで、自己資本として表示しているもの、例えばBIS自己資本として表示しているものはちゃんと負担をしてもらうということを明確にすべきではないかと、1点目です。
 2点目は4ページの下から二つ目のパラグラフの名寄せの問題ですけれども、「なお、破綻処理のための名寄せが」ということですが、「今回の預金保険制度の見直しの中では、金融機関に対してそれぞれが平常時から名寄せを行うことまでは求めないが、」ということで、わざわざこれを断っておりますけれども、これをマル1で書いておきながら、それを受けて6ページの第2パラグラフで、「マル1からマル3のような手当が成されれば、……速やかに行うことが可能となる。」というのは、これは矛盾しているのではないかと思います。つまり、平常時からある程度の名寄せできる体制にしていない限り、手当てをしても、速やかに行えないのではないかと、これは質問点、疑問点です。
 それをコンシステントにといいますか、文意を通させるためには、「なお、」以下を削除するか、「なお、」から「名寄せを行うことまでは求めないが、」を削除すべきではないかというふうに思います。
 三つ目としては、8ページの今の流動性預金のところですけれども、流動性預金の定義がもうひとつちょっと明確でないという感じがしております。特にどうしてもこの文章を読んでわからなかったところは、このパラグラフの最後のところで、「例えば、全額保護される流動性預金を付利されない預金に限る」と書いてあって、これはゼロ金利ということですから、当座預金あるいは実質上ゼロ金利の普通預金ということかと思いますが、その後に、「その金利に上限を設ける」と書いてありまして、これはどういうことなのか。ゼロというふうに設けるのか、それとも、例えば 0.2%とか、1%とか設けて、しかし、ゼロにするのか。ここだけは読んでもどうしてもわからなくて、一体何を意味しているのか。ゼロであるんであれば、それは一つの考え方で、ゼロ金利のものは全部保護しますというのは一つの考え方と思いますが、このあたり、文意が通じるように、わかるように書いていただかないと、例えば実際上、定期預金の代替に使われている貯蓄預金をどうするだとか、こういったところにも問題になってくるかと思います。
 次の点は10ページ目のところの第2パラグラフですが、破綻金融機関の受皿となることができるのは金融機関と銀行持株会社に限定されているとあるんですが、その後、株式取得による場合は一般企業を念頭に置いているのかなと思いますけれども、こういったところについて資金援助ができるというふうに読めるんですけれども、この場合、従来、銀行持株会社については業務範囲の制限を行って、ただ、銀行持株会社で、かつ、その銀行持株会社に対しては監督を行う。そのグループ、持株会社グループに対して大口融資規制とか、こういった点についての監督を行うことになっていたかと思いますが、これを例えば、破綻銀行を買い入れた企業について、その企業も銀行持株会社として監督対象にするのか否かという点が明らかでなくて、そうでない場合は、それこそ、機関銀行化する懸念とか、大口融資規制がかからないのではないかと。このあたりどういうふうにその制度設計を考えておられるのか。相当重要な部分ですので、説明をしていただければと思います。
 次に、12ページの先ほどの金融債についてなんですけれども、私の理解では、金融債と、それから、銀行が出している社債、もう既に売っておりますが、これの違いというのは、募集期間に、そのディスクロ期間だけ売れない。社債の場合はディスクロージャーの関係で一時的に売れない時期があるというだけだと理解していまして、そうなりますと、例えば、保護預りで本券の払出しをしないというタイプの社債を一般銀行が発行した場合は、それも預金保険の対象にするのかどうか。つまり、対象にしてほしいといって、長信行以外の銀行が保護預りにして、それを保護してほしいといってきた場合は、これですと、実質的に何の差もないのに預金保険法上の差が出てくるのかなという気がしますが、これについてどうお考えなのか、教えていただければと思います。
それから、あと、12ページの最後の「預金利息」についてなんですけれども、「モラル・ハザードの問題については、早期是正措置により金融機関の高金利の預金の受入れを禁止又は抑制することで、一定の歯止めをかける」とあるんですが、8ページに戻っていただきますと、全額保護される流動性預金については金利に上限を設けるというふうに読めるわけです。そうしますと、この上限というのがはっきり表に出ていないと、仮に高金利の預金を受け入れているような金融機関が破綻した場合に、それが保護されるのか否かというのがはっきりしないのかなという。私の読み方が悪いのかもしれませんが、高金利の預金の受入れを禁止ないしは抑制すると。そうすると、早期是正措置をかけて抑制した場合に、この早期是正対象になるような預金は保護措置の対象にならないのか。このあたりどういう関係にあるのか。つまり、早期是正措置と金利、それから、流動性預金の保護というのがどういう関係にあるのか、それをちょっと説明していただければと思います。
 以上でございます。
○倉澤部会長 林室長、よろしくお願いいたします。
○林信用機構室長 一番初めの3ページの、劣後債権者を含めるべきということでございますけれども、考え方としては、劣後債権者のような自己資本を提供した者にも責任をとらせる、あるいは損失負担をさせるということは重要な御指摘であると思っておりますが、営業譲渡の形態によって、それぞれの形態によって、それをどういうふうに確保していくかという問題があるものですから、書き方については考えさせていただければというふうに思っております。
 それから、名寄せについての部分でございますけれども、今回の整理では、平時から名寄せをするというのは求めない。むしろ預金保険機構において、この預金者データを預金保険機構に引き継ぐことができるようなシステムを既に開発しておりますので、金融機関に対して求めるべきは、預金保険機構にスムーズに引き継げるようなソフトウエアをきちんとしておくことと、それから、預金者のデータがそもそもきちんと入っていなければならないということでございます。これがきちんと確保していていただければ、あるいはこれの確保の状況をきちんと見ておけば、破綻に至る直前の過程において、さらにそのソフトウエアがきちんと動き、かつ、預金者のデータの保存されている状況がきちんと確認できれば、それで事前準備が可能となって、迅速な営業譲渡が可能になると、そういうことでまとめているという意味で整合性がとれていると考えているところでございます。
 次に、流動性預金の問題でございますけれども、一度この第二部会の場でも、流動性預金を仮に一定期間保護する場合に、どのようなことをすべきかということは御説明させていただいて、確か深尾委員はいらっしゃらなかったんじゃないかと思いますけれども、そのときは具体的にどういう方策をすべきかというところまで議論に至りませんでしたので、こういう余り明確でない書き方をしております。
 そのときにも申し上げたところでございますけれども、一定の流動性預金を全額保護する場合には、やはりまず当座預金や、あるいは別段預金のような金利がゼロの預金、これは専ら決済のために使われている預金でございますので、これについて保護する。さらには、普通預金の一部も決済のために、事業活動を行っていらっしゃる方が使われているということでございますので、新たに普通預金でもゼロ金利と申しますか、手形を切れない当座預金と申しますか、そういったものも新たに設定して、こういった金利ゼロの流動性預金に限って全額保護するという考え方があり得るでしょう。
 それから、もう一つは、そういうことをしないで、現在の普通預金を全部含めて、当座預金、別段預金、普通預金まで含めて全部保護していくという考え方があり得るのではないか。ただ、その場合にはモラル・ハザードの問題がありますので、金利に上限を設ける。例えば、臨時金利調整法なりで金利に上限を設けるとか、そういった考え方があり得るのではないか。
 さらに、神田座長がおっしゃったように、2年というような非常に短い期間ということであれば、むしろ現在の流動性預金をそのまま。貯蓄預金とか通知預金を入れるかどうかという議論はあるかと思いますけれども、そういったことまで含めて保護していくということもあり得るのではないかということで、具体的なやり方としては幾つかあるのではないか。
 そういった場合の例示としてここでは、「例えば、」ということで書いているわけですけれども、これが出たときにちょっとわかりにくいということであれば、その辺はもう少し整理して、書かせていただいた方がいいのかなというふうに思っております。
 それから、10ページのところの銀行持株会社に対する機関銀行の問題等ですけれども、ワーキングでもそこまでの議論はございませんでしたので、そういうところまではこの報告の視野には入っておらなかったということでございます。
 それから、12ページの金融債の議論ですけれども、少なくとも私の考えでは、発行が始まった銀行の普通社債については預金保険の対象というふうに、預金者にとっても、あるいは発行側にとっても、考えていないんじゃないかというふうに思っております。ここであえて金融債を取り上げたのは、金融債の中で個人向けで、かつ、保護預りになっているものなどについては、定期預金と同じ性格として預金者として捉えられているのではないか。したがって、こういった形で通常の個人向けの貯蓄手段として販売され、転々流通しないようなものに限っては、預金者の受け止め方ということを考えて、限定的に定期預金と同じ性格として預金保険の対象にしてはどうかということでございます。
それから、預金利息の点でございますけれども、ここで書いておりますのは、早期是正措置によって高金利の預金の受入れを禁止又は抑制するということにより、モラル・ハザードの問題に歯止めをかけるということでございまして、これはやはり金融機関が高金利の預金を受入れて、事後的に早期是正措置で禁止あるいは抑制ができるかどうかということでございますので、やはり預金者にとっては、予めこういった高金利の預金が保護されないということがはっきりしていない以上は、保護してやらなければならない。事後的にこういった預金の受入れを是正することができると、そういう関係にあるのではないかと考えております。
 以上。
○倉澤部会長 どうか、ちょっと関連のことがありますので。
○畑中信用課長 持株会社についての御指摘だけお答えさせていただきますが、先生も御案内のように、システム改革法のときの議論で、事業会社が持株会社になったときには規制が及ばないという仕切りになっておりますので、基本的にはそのシステム改革法のときの議論の土俵で考えていかざるを得ないということが一つ。
 それから、株式取得をするときには当然金融再生委員会なり、将来的には金融庁が適格性の認定というところで、そこできちっと見る。
 それから、もう一つは、大口融資規制とか、あるいはアームズ・レングス・ルール、そういうものはきちっとかかっているということでございます。
○倉澤部会長 関連の問題ですが、ちょっと堀内委員お待ちいただいて、野田オブザーバー、どうぞ。
○野田オブザーバー 私は大手銀行の立場でこれまで意見を申し上げてまいりました。本日、先ほど神田委員の方から補足ということで集中的に御説明のございました8ページの流動性預金の扱いに関しまして御意見申し上げたいと思います。
○倉澤部会長 ちょっとお待ちください。今の深尾委員の関連じゃないんですか。
○野田オブザーバー 違います。直接的な関連はありません。
○倉澤部会長 恐縮ですが、後ほど必ず御指名いたしますので。
○野田オブザーバー かしこまりました。失礼いたしました。
○倉澤部会長 監督庁の河野課長お願いいたします。
○河野金融監督庁企画課長 申し訳ありません、関連でございますので。
 今の事業会社の問題につきまして、今、畑中課長からも御説明のあったとおりでございますので、もちろん私どもこの事業会社について、監督権限を及ぼそうということは想定は全くしておりませんけれども、むしろ10ページのこの部分の問題につきましては、預金保険制度の中で株式取得方式に基づきまして、資金援助がそういう場合に行われたときには、その資金が事業会社のために使われるようなことのないように、何らかの担保が必要であると考えますし、その担保の方法がどういうものであるべきかという点については、実は問題としてはワーキングの場でも御指摘を申し上げたんですが、そこまでちょっと検討が至りませんでしたので、法制化の場面でいろいろまた協議をさせていただきたいと思っております。
○倉澤部会長 では、簡単に。
○深尾委員 1点だけお伺いしたいんですが、今、畑中さんから説明がありました金融システム改革法の中の銀行持株会社の理解なんですけれども、銀行の直接の持株会社は規制がかかる。ただし、その親会社については規制が及ばないというふうに理解しておりましたが、それでよろしいでしょうか。
○畑中信用課長 独禁法での定義を利用しておりまして、御案内のように独禁法上の事業持株会社には銀行法上も規制がかからないと、そういう仕切りでございます。
○倉澤部会長 では、お待たせしました。堀内委員、どうか。
○堀内委員 私、全体の大枠については、よく書けているように思いまして、それほど異論のない部分が多いと思うんですけれども、ちょっと書き方で二、三注文つけたいというふうに思いまして、一つは、やはりこれを皆さんがお読みになるわけなんで、できるだけ我々の見方がクリアに出ていくことが望ましいと思うんですね。それで、そういう意味で言いますと、1ページは非常に良く書いてあると思いますが、2ページから、つまり基本的な考え方としてどういうものになっているかというところについて、ちょっと順番を入れ替えていただいた方がいいんじゃないか。
 つまり我々の考え方としては、「基本的考え方」が2ページの下の方にありまして、「基本的に「小さな預金保険制度」を目指すべきである」と、これが私は非常に重要なポイントだと思うんですが、その「小さな預金保険制度」の内容は何かというと、それは市場規律を中心とした面と、それから、早期是正あるいは早期処理という体制の二つ。二つだけに限らないかもしれませんが、その二つが大きな柱になるんだと。そして、それぞれについて説明していくと、そういう形に順番を入れ替えていただくということが少し議論をわかりやすくするんではないかというふうに思いました。
 それから、全体として報告書は、恒久的な制度設計についての議論しておりますが、先ほど神田先生の方からも補足ありましたように、例えばしばらくの間については当面の限時的な措置といいますか、そういうものがとられるという部分があるわけですね。それをここに書いてありますが、ぱっと読んだ限りでは、恒久的な制度設計の問題と、それから、当面の措置というのが、注意深く読めばわかるんですが、ちょっとわかりにくくなっているんじゃないか。
 したがって、恒久的な制度設計についての議論して、しかしながら、当面の措置としてこういうことをやるべきではないかという形にしていただく。そのときにちょっと私として理解をクリアにしておきたいんですが、当面の措置として、しばらくの間、このしばらくの間をいつまでにとるかは別にして、どういう措置をとるかについて言うと、流動性預金の保護の部分だけと考えていいですか。預金保険料か、そういう点でしょうか。その点を少し明確に。
○倉澤部会長 8ページでございますか。
○堀内委員 ええ、そうですね。しばらくの間の、つまり恒久的制度がきちんとワークするようになるまでの間という理解でしょうか。そういう措置としてとられるべきと我々が考えている、ここで提案しているその措置というのは、流動性預金の何らかの保護というのと、それから、預金保険料率の問題ということだけですか。それ後で確認していただきたい。そういうことが明確になった方がいいように思います。
 それから、先ほど深尾さんがおっしゃいましたように8ページの流動性預金の議論のところで、やはり定義が明確になっていないということを私も感じまして、ここは特に真ん中のパラグラフの「以上のような議論に基づき、」という、前の議論はかなりいろいろなものが入っていましたので、ここのところのパラグラフで、「流動性預金に関して何らかの特別な措置を講じることも止むを得ないのではないかと考える。」という場合の流動性預金というのは、一体どういう範囲なのかということをもう少し明確にしないといけないんじゃないかと思いました。
 それから、この論文は全体としては、預金保険制度、あるいは、強いて言えば金融システムの安定化を図るべくセーフティネットといいますか、そういうもののあり方を預金保険制度の観点から見るというふうになっておりますので、そういう観点から見ると、ちょっと議論が立ち入り過ぎた議論をしているんじゃないかと思う点が2点ほどありまして、それは私の趣味の問題かもしれませんが、一つは、3ページに日本銀行の役割についての言及があります。確かに日本銀行というのは、レンダー・オブ・ラストリゾートとして機能すべきだというのは全く異論の余地がないと思いますが、ただ、こういう破綻処理の枠組みの中で日本銀行が果たすべき役割について、私はかなり制約的に考えておりまして、レンダー・オブ・ラストリゾートとしての機能はもちろんあるんだけれども、この点については余り書かなくてもいいんじゃないかというような気がいたしました。これは趣味の問題。
 それから、もう一つは同じような問題なんですが、8ページに、これは借り手保護という観点から、破綻金融機関の融資の途絶というのが、善良かつ健全な借り手に大きなダメージを与える可能性があるという指摘で、その後、「しかしながら、預金者の保護が本来の目的である預金保険制度による対応だけでは自ずと限界がある」これもそうだと思いますが、「国における政策的対応が併せてなされることが望ましい。」と書くべきかどうか。
 それから、さらには、「地方公共団体における自主的な対応が行われることが期待される。」と書かなくても、この辺はもちろん我々としては、この預金保険制度でやれることの範囲というのは、限界があるということははっきりしているんですが、それ以上のことを言うべきかどうか。これも趣味の問題かもしれませんけど、少し慎重であった方がいいんじゃないかという気がします。
 大体以上です。
○倉澤部会長 御意見として承っておけばいいですか。
○林信用機構室長 御質問の中で、当面の措置というふうに書かれているものは流動性預金のところと可変保険料率の部分だと思っております。その二つは、それぞれの箇所に続けて書いた方が流れとしてはわかりやすいのかなということで、我々としてはそういうふうに書かせたいただいたところではございます。
 それから、最後にありました融資の話ですけれども、預金保険制度のあり方という観点からは、おっしゃいますように限界があるということだけ書いておけばいいのだとは思いますけれども、世の中に説明するときには、パブリック・コメントなんかでも、きちんと政策的な政策金融が併せて講じられるようにすべきだというようなコメントも中小企業の方などからいただいておることでもあり、ここまでは書かせていただいた方がいいのかなということで御提案させていただいているところでございます。
○倉澤部会長 ちょっとお待ちください。
○稲葉日本銀行企画室参事 よろしいですか。
○倉澤部会長 はい、お願いいたします。
○稲葉日本銀行企画室参事 日本銀行のお話が出ましたので、一言だけ。
 堀内委員がおっしゃいましたとおり、破綻金融機関の処理に係る日本銀行の役割というのは、極めて限定的なものにならざるを得ないと私ども思っております。そういう意味で、ここに書いてある記述がそういうことであるというふうな認識であれば、私どもはこれでよろしいと思いますが、限定的にであるということを申し上げておきます。
○倉澤部会長 野田オブザーバー、田中委員の次に御指名いたしますので、大変恐縮ですが、田中委員、どうか。
○田中委員 神田さんはじめとして、ワーキンググループの方がいろいろ御努力されたこともわかりますし、事務局の方がいろいろなパブリック・コメントを受けた後、それを拾うようにして、いろんな設計に配慮されたことはよくわかります。
 しかし、我々は今の経済がスタグネーションを深める中で、金融という最も日本経済にとって重要な分野での新たな革新がなければ、新しい時代を向かい入れられない、迎えられないという時代にあるということも考えるべきだと思います。
 そして、金融再生委員会、金融監督庁が新たなマンデイトの下に金融システムを健全化させるための御努力をずっと続けてきておられるわけです。そのことについての評価も定まってきているわけですから、いろんな要望があるからといって、それを預金保険制度の有り様に関して、片っ端から拾い上げるということになりますと、金融の革新そのものを遅らせる、ぶら下がることによって動きがとれないということが現実に懸念されるわけです。
 臨時緊急事態対応の名の下に旧来の、あるいは現状どおりと言ってもいいんですが、現状どおりの金融システムを持続させたいという気持ちが入り込んできている可能性がある。要するに、システミック・リスクを避けるという名の下に別のゲームが展開されている可能性があるわけでして、我々は本来、「小さな預金保険制度」の下において金融革新が起きることを望んでいたわけであります。96年のビッグバン宣言もそうでありましたし、それから、その後の対応も、本来それを狙ってきたはずなわけです。
しかし、私は、今回、例えば決済性預金について、このような形で保護するということになりますと、実際に金融資産をどう使うか、あるいはリスクの切り分けに新しい手法をどのように入れるのかという視点がなおざりにされる可能性というのは非常に高くなってきているというふうに思います。
 先ほど神田さんからは、2年あるいは3年という暫定期間が必要だという議論がワーキンググループで出たというお話でしたけれども、もし金融システムが旧来のものを救うということになりますと、リスクを取って新しい事態に対応しようとする人たちの背中をぽんと押してやるという役割は放棄されることになりますから、スタグネーションは恐らく金融システムが動かない、旧来のままだということだと、スタグネーションが残念ながら続く可能性がある。その場合には不良債権処理の問題はさらに長引くという可能性さえあるわけでありまして、2年たって取れるという保証は何もないわけであります。
 そういう意味では、我々が今狙わなければいけないことは、既存の金融機関にたとえ辛いことがあったとしても、我々はそれを超える視点を持つために制度作りをやってきたのではないかということを改めて確認すべきだというふうに思います。
 日本に現在、システミック・リスクの可能性がどの程度あるかについては、もちろんいろんな評価がありましょうが、昨年の10月以降、円は 138円から今日の 102円程度までに上がってきております。円建ての金融資産に対して、これだけの14カ月の間、持続的なシフトが起きているということは、日本にいろんな政策手当てがあり、新しい仕組みが動いているということを背景としてでありますが、金融システム不安は基本的には消えていったということが、この円高の背景、非常に多くの投資家の連続的な判定の下にこれが起きているわけですから、我々は緊急事態対応の名の下に別の件がもし展開されているということだったら、それは私は阻止すべきだと。改めて、「小さな預金保険制度」の下において、金融革新が起きる。その下でもどの程度起きるか、これはわかりません。わかりませんが、でも、対応しようとしている金融機関、あるいはその担い手も生まれているときに、いろいろボイスがあるからといって、片っ端から拾い上げるという手法はいかがなものかというふうに思います。
 ちょっと紙を用意させていただきましたし、2カ月前に発表したものもございますので、もし御関心があれば、読んでいただければと思いますが、私は、新しいシステムが新しいマンデイトの下に金融再生委員会や金融監督庁がお仕事をされていることに対しての評価が、これでは余りにも低過ぎるというふうに思います。いろんなボイスを拾い上げることは確かに親切というものでしょう。しかし、小さな親切を積み重ねれば、大きな迷惑を国民が受けるという可能性もあるわけでして、私は余り小さな親切運動にコミットすべきではないと。むしろ因果関係からいって、大きな迷惑を国民全体が被る可能性について議論を新たにすべきではないかというふうに思っております。
 ありがとうございました。
○倉澤部会長 たびたび失礼いたしました。野田オブザーバー、どうか。
○野田オブザーバー 恐れ入ります。野田でございます。私どもの方からは、大手銀行の立場で先ほど議論の中心になっております流動性預金に関しまして、意見を一、二申し上げたいと思います。
 以前から申し上げておりますけれども、私どもは流動性預金を全額保護するということについては、様々な観点から重大な問題があり、反対であると、引き続き現在も変わっておりません。
 ただ、この答申の案文にございますように、営業譲渡に時間がかかる場合などに、流動性預金を全額保護するということが政策上、万やむを得ないという判断がなされるといたしましても、これは先ほど言われていますように、あくまでもやはり例外的措置でありますことを明確にすべきでございまして、ここでやはり時限ということを付すことがぜひとも必要であると考えております。
 また、仮にこうした例外措置が時限的に実施されるといたしましても、ここにも書いてありますようにモラル・ハザードの増大を抑制するための対応策も不可欠でございます。
 そもそも流動性預金を全額保護すべきとの主張の出発点が、破綻時における円滑な決済を確保しようとするものであったことを考え合わせますと、例外措置の対象は、当座預金、別段預金など、金利ゼロの預金種目に限定することが適当ではないかと考える次第でございます。
 次に、その例外的措置を終了させる条件をどういうふうに考えるかということでございますが、現時点で客観的な基準を定めることはなかなか難しかろうと存じます。私としても、2年なのか、3年なのかということは判然といたしませんけれども、これをやはりきちっと定め、それまでの間に、迅速な破綻処理を含め、暫定的であれ、新しい制度の実際の運用状況をも踏まえながら、改めて議論することにしてはどうかというふうに考えている次第でございます。
 また、甚だ申し上げにくいんですけれども、例外的措置の財源については、この措置が先ほど申し上げましたように、万やむを得ないという判断に基づいてとられる以上、預金保険料のみにこの負担を求めるということについては、なおなお疑問の残るところでございます。
 それから、この特別の措置を終了させる条件として、この答申の文案では、民間の決済サービスの多様化が図られることというのがあたかも要件となっているかのように読み取れます。私ども民間金融機関として、このような各種サービスの充実を図り、お客様のニーズにお応えしていくということは、ごく当然でありますし、そのための努力を怠るつもりは毛頭ございません。
 しかしながら、民間の決済サービスの多様化を条件とすることには反対でございます。ここで言う決済サービスと言われている具体的な一つとして、例えばアメリカにおけるスイープサービスというようなものを想定されておられるのかもしれませんが、私が承知しております限り、スイープサービス、スイープアカウントなるものは、いわば企業サイドの資金効率化ニーズに応えるためのものでありまして、そもそも銀行の破綻リスクから企業の資金を遮断しようという手段でできているものではないというふうに理解しております。
 スイープアカウントの実態は、要求払預金から債券やMMF、あるいはオフショア預金等へ資金を毎日連続的にシフトされているものでございまして、これは決済サービスと言えなくもないんですが、私どもとしてはむしろ運用サービスの一つというふうに考えておるところでございます。銀行がこのようなサービスを提供するインセンティブは、預金をより有効に効率的に運用しようとするお客様サイドのニーズでございまして、繰り返しになりますけれども、銀行自らの信用リスク遮断商品として提供するというインセンティブはないということでございます。
 もちろんお客様の運用ニーズに応えていくという結果として、あるいはその副次的効果としてこうしたサービスが生まれ、リスクが遮断されるということはあると思います。ただ、こうした商品がどの程度今後浸透していくかにつきましては、預金者のニーズのみならず、直接金融市場の成熟度合などとも関係している問題でございます。
 したがいまして、この場合、何をもってサービスの多様化が図られたと判断するのかという難しい課題を新たに提起することになるのではないかというふうに懸念するところでございます。
 以上の点を踏まえますと、私といたしましては、例外的措置には時限を付することはぜひとも必要であると考えておりますけれども、少なくとも「決済サービスの多様化」という言葉が例外的措置の終了の条件として読み取れるような表現は、何とぞ避けていただきたいというふうに考える次第でございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
○倉澤部会長 松崎オブザーバー、どうか。
○松崎オブザーバー 横浜銀行の松崎でございます。今、全銀協の野田さんからお話がありましたが、若干重なるところがありますが、私ども地銀界として、これまでも繰り返し申し上げてきておりますが、もう一度ここで御意見を言わせていただきたいと、こういうふうに思っております。
 まず、流動性預金の全額保護につきましては、従来から申し上げておりますとおり、預金保険制度の本来の目的は預金者の保護でありまして、特例措置終了後においては、社会的コストである保険料負担をできるだけ減少させ、また、金融機関、預金者双方のモラル・ハザードを防止するためにも、基本的に「小さな預金保険制度」を目指すべきであるというふうに考えております。
 したがいまして、全銀協の野田常務の先ほどの御意見と同じでございますが、流動性預金の全額保護は、こうした基本理念に反するものではないかということで、全額保護すべきではないかというふうに考えております。
 それから、もう一つ、公金預金についてでありますが、12ページの中段に書き込んでございますが、「しかしながら、企業との均衡を勘案すれば預金保険の扱いに差を設ける必要はないこと、また、流動性預金に関して特別な措置を講じることになれば歳入歳出の管理に実質的なメリットが期待できることから、付保対象とすることが適当である。」というようなことで記載がしてございますが、私ども地銀界といたしましては、そもそも付保対象となる預金者は、社会的コストである保険料を負担してでも保護するだけのいわばコスト・ベネフィットであるものに限定されるべきものというふうに認識しておりまして、この上段に記載してありますように、保険金支払限度額 1,000万円まで保護しても実質的な意味が極めて薄い。例えば公金預金や大企業預金などにつきましては、付保対象とする必要はないというふうに考えております。
また、付保対象の拡大は、社会的コストの増大や銀行経営者、預金者のモラル・ハザードの助長につながることからも適当ではないというふうに考えています。
まして、公金預金は地方自治法において指定金融機関制度の下に運営・管理されておりまして、指定金融機関については議会の議決を経て指定され、また、当該地域の公共の利益を目的として使われる預金であることから、預金者の規律が厳しく求められる預金であるというふうに考えております。
したがいまして、こうした点から、他の預金とは性格を異にする公金預金を預金保険制度の対象とすることは適当ではなく、仮に保護するといたしましても、新たに公金預金保護のための専用の保証スキームを構築するなどいたしまして、別の制度的工夫によるべきものであるというふうに考えています。これは再度申し上げさせていただきたいというふうに思っています。
それから、最後に、名寄せについてでございますが、先ほど預金者データについての整備というお話がございましたが、これも何回か申し上げておりますが、名寄せにつきましては、たとえ金融機関が平常時から名寄せができるシステムを構築したといたしましても、預金者には氏名や住所の変更等に係る強制的な報告や義務がないことなどから、銀行サイドの努力のみによる完璧なデータの整備は、名寄せの正確性に自ずと限界があるということは御理解をいただきたいというふうに思います。
以上でございます。
○倉澤部会長 坪井委員、どうかお願いいたします。
○坪井委員 私どもがいろんな点で心配があったということで申し上げてまいりましたのは、大変多く手厚く含まれておりまして、その点については、こういうとりまとめについては私ども非常に歓迎したい、借り手の立場から言えば歓迎したいというふうに実は思っております。
ただ、問題は、これらの問題について世間がどういうふうにこれを理解するかということは、いわゆる金融ビッグバンがあったことと同時に、その前と後のことをきちっと分けて考えられるかどうかだと思うんですよ。
 例えば、北拓の言うなら、ああいう倒産現象があったことによって北海道のあのエリアの経済環境というのは誠に劣悪になりまして、大変な疲弊が現在起きております。こういうことがまた起きるんじゃないかというふうに思っていることで物を受け取っていくのか。もしくは、先ほど来話があったように、もう既に監督庁並びに再生委員会が大変立派にお仕事されて、これからもしていって、そういうことは起きませんよということで、しかし、手厚く、万が一のときにはこういう手当てをいたしますよという安心感を与えるように受け取らせてもらえるのか。この点が私はこの審議会の答申としては非常に大事なところではないかと思っているわけです。
 そこで、先ほど来いろんな御意見がありましたけれども、言うなら、護送船団方式ということはけしからんと、モラル・ハザードが起きる。だから、そういうことは大蔵省も含めてやるべきではないという、いわゆる先生方の御意見がたくさんありまして、真意かもしれませんけれども、しかし、現状との関係で見ますと、私はもう変わっていると思うんですよ。要するに前のようにつぶさないことを前提にした護送船団方式と、今は悪いものはつぶしますよということを現実に行っているいわゆるこれからの行政ですから、その中における監督ですから、そういう意味では、もう完全に変わっている。ですから、モラル・ハザードの問題も、私は、監督はしていただかなければなりませんが、そう大きなテーマにはならないんじゃないかと私は思っているんですよ。
 一つの例ですけれども、大変地元の話で申し訳ありませんが、私は福島県ですので、福島県の第二地銀は2行ありまして、これがやはりペイオフに備えということで、今月当初に、50億くらいずつの増資を発表しまして、それに備えていわゆる体質強化をするんだと、自己資本比率の向上を目指すんだということでやるわけですね。こういうことを既にみんな、今後は、つぶれるところはつぶされますよという前提があるから、そこに非常にみんな緊張感を持って既にもう行動に入っているわけですね。
そういうのは逆に預金者もしくは一般の我々借り手からすると、非常に安心する過程なんです。したがって、そういうことをやはり認めながら、言うならば今後の金融行政はこうなりますよということを手厚く、要するにつぶすものはつぶしますけれども、万が一は守りますよという姿勢を出していただくことが、今も何遍も申し上げていますけれども、経済再生国会というようなことで今行っているものに私は合致してくると思うんですね。
いわゆるそういう安心感を作らなければ、一概に不安をもし残したような今後の検討等がなされるとしたら、それはもう一遍景気の足を引っ張るということを含めて、大きな問題になるんじゃないか。
そこで、実は申し上げたいのは、今まで新聞等において発表されているペイオフの定義は、ここに書いてありますけれども、 1,000万まできり保証しないという、こういう誤った宣伝がなされていまして、そういうふうにほとんどの人は思っています。だから、預金は 1,000万まできり保証されないんだと思っていますから、後で清算して、その何割か、もしくはその減らされた分は返るんだということをどこにも書いてないです。どの新聞にも書いてないですよ、説明の中に。そういうことについて、やはりきちっと説明しなくちゃならないということですね。それを併せて、言うなら預金のシフトが起きないようにしてもらうということも、地域における金融不安を拡大しないということで大事ですから、その中に公金の問題も実は入っているわけです。
 問題は、郵便貯金との関係も書いてありますけれども、言うならば、今のように 1,000 万まできり保証されないんだという形でもし預金シフトが起きるとすれば、私はここに風評的なものが出まして、地方において必ず取付けが起きると思います。したがって、それを防ぐための手厚い保護というものをきちっとPRしていかないと、何のために安定化をしてきたかということと合致しない問題が生じるというふうに実は考えております。
だから、郵便貯金との問題もここに書いてありますから、そういう点も言うならば、預金はそのままにしておいても大丈夫ですよということを前提にし、しかし、経営が非常にだめな銀行はつぶしますよと。だけれども、あなたの預金は、こういう形で迅速なる、言うならP&A方式のような形をとって安定させますよということでの理解を持たせるように、まさに周知徹底させるPRが必要だというふうに思うんですね。
そういうことを言うならば、手厚い保護策を示してもいいと思うんですよ。ただし、つぶすところはつぶしていくわけですし、本当の万が一のときのテーマになりますから、そういう意味では私はある程度保護的な感覚を盛り込んだ方が、今の経済情勢に合致して、国民が安心して銀行に金を預けておける。
 免許制度のことを何遍も申し上げておりますが、やはり大蔵省が、国が免許を与えて、命から2番目の大事なお金を預かっておいて、ディスクロージャー問題なんかもありますけれども、自己責任なんていうことを言っているようでは、私はこれからの金融政策は安定しないと思うんです。やっぱり預けたものについては、「必ず大丈夫ですよ」と言ってくれる方が、私は今後とも言うならば国民としてはありがたい。そういうことを踏まえて、今の現況における問題と、将来ともにこれを盛っていかなくちゃならんテーマというふうにきちっと考えて、ひとつ案を作っていただきたい。
 したがって、万が一、この現況、いわゆる金融不安がまだ去っていないという概念を国民も持っていますから、したがって、そういう環境が続いたときには延期もあり得るということさえも考えて、私は最終的な答申を作っていただきたい。こういうふうに希望するわけです。
 ただし、今の延期を前提としての話でございません。ただ、そういう環境があったときにはという全くの仮定的なことでの延期でございます。
○倉澤部会長 杉田委員、どうかお願いいたします。
○杉田委員 基本的には今日のこの案文で、大筋大体よろしいんじゃないかという感じがいたします。
 いろんな意見がありましたけど、一番ポイントの流動性資金の問題については、どういうふうに捉えたらいいか。確かに公平の原則から言いますと、例外というような形になろうかと思うんですけれども、私はこれに対して、国民に対してきちっと説明をする必要があるというふうに思います。
 これは決済性の資金を持っている決済機能維持、あるいは決済資金に対する保護というふうに一応第一義的にはうたっておりますけど、私の捉え方は、ただそれだけではないんではないか。つまり、金融システムについては、もう大丈夫なんじゃないかという田中さんの御意見もありましたけれども、国民は必ずしもそう思ってないんですね。企業のビジネスマンも、一般の国民も我々の答申をじっと見ていまして、それによっては、来年、預金口座をどうしようというようなことをかなり息を詰めて見ているというのが実態なんじゃないかというふうに思います。
 ですから、決済性資金の保護というのは、一見、何か中小企業に対する手厚い保護のように見えますけれども、私自身の捉え方は、要するに今ようやく大銀行の不安は去った。大銀行は今新しい展開をどんどんされていますように、ここは確かに去った。しかしながら、やっぱり中小−−中小と言っていいかどうかわかりませんが、地域金融機関あるいは中小金融機関の合理化というところは、率直に言って遅れていると思うんですね。ですから、そこを知っている国民は、まだ金融不安が去ったと思ってない。
 したがって、流動性資金の保護というのは、不安心理によるやはり地域金融不安とか、あるいはそれが全体に波及して経済が停滞するとか、そういうものをある一定期間、こういう措置によって未然に防止するということで、私は預金保険の流出が大きくなるように思うんですけど、最終的には国民経済の視点から見ると、そういうパニック的な不安心理による地域パニックを未然に防止するという意味では、全体のコストをむしろ最小限にする方策なんではないかというふうに私自身は捉えているということです。
 その期間をじゃどれくらい必要かということは、結局、金融監督庁の皆さんも、来年1年間で、問題銀行を洗っておられると思うんですが、それを全部整理淘汰あるいは改善できると思っておられないと思うんですよ。そうすると、そこにどれくらいの余裕をつけるかということなんだと思うんですね。ですから、それが2年で適切なのか、3年が適切なのか。私は3年ないし5年と前の部会で発言いたしました。5年は長いとしても、本当に2年延ばすだけで、金融当局が、あるいは金融機関の自律的な機能で全部破綻がないというような状況に持っていけるのかどうか、その辺の判断だろうと思うんです。ですから、それが2年なのか、3年なのか。私は2年ではちょっと難しいかなという感じもしているんですが、その辺の選択は、そういう視点から選ぶべきなんではないかというふうに私自身は思っているということでございます。
 それについては、これを発表される会長、それから大蔵省当局は、国民に対してきちっと説明をすべきだろうというふうに思います。
 それから、先ほど確か深尾先生から御指摘のあった名寄せのところの表現。確かに私も先ほど林さんの説明を聞いてよくわかったんですが、4ページですね。ちょっとわかりにくかったですね。御説明聞いてわかりましたが、結局、名寄せを平常時からは求めないというふうにあって、なおかつ、上の方にデータの整備が必要だと、この関係がぱっと読んだだけでなかなかわかりにくいですね。ですから、預金保険機構にちゃんとシステムがあるんだから、そこに持っていく前段階として、そのデータ整備をちゃんとやっておきなさいということですよね。ですから、この文章でいかれるとすれば、そこをきちっとプレスの発表のときには解説をして、納得させる。これは新聞記者も多分ぱっと読んでわからないと思いますよ。ですから、その辺のところをよろしくお願いをしたい。
 以上でございます。
○倉澤部会長 八木委員、お願いいたします。
○八木委員 この件につきましては、一番最初に、危険な金融機関をこの期間の間になくすということが大前提にあると思うのでありまして、その文はこの文章の中の最初のところにしっかり書き込んであるから、非常に結構だと思います。とにかく、自己責任強化の時代を迎えて、その背景にはやっぱり正しいディスクロージャーと早期の対策が大前提であるわけでありますが、そういう意味で、経団連も一貫して、提言の冒頭に金融機関の早期健全化、これをとにかく2001年3月までしっかりやってくださいと。併せて金融監督当局による検査・監督の体制の強化、これと相まって、その辺が実現できるんじゃないかということで、やはり問題を早期に把握して、早期に対策する、これをとにかく我々の提言の冒頭に置いておいたわけです。
 そういう意味では、それに加えて承継の問題とか、いろいろ提言しているんですが、ここにおいて一つ。ちょうど先週始まった企業会計審議会でも、ゴーイング・コンサーン問題を中心とした会計士監査の問題が取り上げられていて、この辺と今のこういう問題の企業、銀行をつかみ出してしっかり対策するということは本当に時期を一にして、同じ方向に踏み出したなと思って見ているんでございますが、そういうものがうまく機能して、我々に許されたあと2回の決算もチャンスがあるわけですね。来年の3月とその次の3月と。そこまでに少なくとも問題になっている部分についてはしっかりと決算上も反映していく。健全な金融機関を中心として我々が仕事ができるというふうな状態に早く持っていくというのはまず一つ必要ではないかと思っております。
 併せて、ここにもちゃんと書いてありますが、やっぱりいいかげんな経営をしていると社会的に厳しい制裁を受けるぞと、ここのところはしっかり書いてあるのは非常に結構なことで、これが前提としてあると思います。
 我々もゴーイング・コンサーンで会計士さんと対決するときに、発行体と会計士との間に非常に緊張感があるわけでありまして、我々の出しているデータは確認書付きの正しいデータを出しているということで、代表取締役が出すと、そういう責任を持った処理が前提で毎期の決算をやっているわけですね。これがやっぱり全部に徹底していけば、いわゆる国民の皆さん、あるいは企業が安心して金融機関を使える状態が現出できるんじゃないかと、こういうふうに思うわけです。それが一つでございます。
 それから、もう一つ、決済のシステムで、流動性預金の問題が出ているわけで、私もここでそういう発言をしたわけでございますが、結局ここにおいては、これから1年半ぐらいの間に、仕掛かり中のお金というものをどういうふうに定義づけていくのかというようなことをもっと詰めたい。必ずしも流動性預金の全額保護とか、とてもそこまで経団連も言っているわけではない。やはり昨今、流通大手の決済専門銀行の申請みたいなものもありまして、我々一般事業会社としてみると、ああいうバラエティーが広がるというのは、ある意味ではウエルカムなわけで、非常に健全な企業がああいう形で進んでもらうというのは、多分個人もウエルカムだと思うんですね。
 そういう意味からして、既存の銀行自身も経営を変えていかなきゃいけない時期に来ているんじゃないか。たまたま収益なんかを見ますと、今運用収益が利益の過半を占めておられますが、サービス関係というのは1桁か、もしくはせいぜい1割ちょっとぐらいしかサービス収益が全体で入っておりません。私はやっぱりこれは2割と3割とそっちを増やしていくような銀行の体質に持っていかないといけない時代にもう来ているんじゃないかというふうに思うので、その辺一緒に、まだ残された期間で知恵を出していくということが非常に必要なんじゃないか。それが先回、林さんあたりから御提案のあったゼロ金利預金のバラエティーのような問題なのかなと思っていまして、まだ流動性預金の全額保護と言うと、私、経団連に戻って叱られるんですけれども、決してそういうふうに言っているつもりはないんですが、その検討がまだこれから必要だろうと、こういうふうに思っております。
 最後になりますが、ここで借り手保護の中の一環として、古い古い残っている契約について、双務的な立場から書き直すということをしっかり書き込んでいただいて、これは非常に結構だと思います。ありがとうございます。
 以上でございます。
○倉澤部会長 森本委員、どうぞ。
○森本委員 3点ほど意見というか、若干質問になるかと思いますが、申させていただきます。
 最初の第1点は、先ほど堀内委員がおっしゃったことと同様なんですが、2ページ目の2.の「市場規律を中心とした預金者の保護」と、「3.金融機関の破綻処理のあり方」の「基本的考え方」の2ページの数行目の関係ですが、さらっとした方がいいのかもわかりませんが、率直な感想を申し上げますと、それ?はいわば、それいけばんばんというか、うまく経営すれば預金者の保護になりますよと。今この話を必ずしもしているんじゃないように思うんですが、むしろ大事なのは?と3.の?の話で、「小さな預金保険制度」は維持する。しかしながら、いろいろな問題は早期是正措置をきちっとする。もちろん日常的にきちっとした効率的な経営していただくことが必要ですけれども、早期是正・早期退出ですか、そういうスキームをセットにした「小さな預金保険制度」を我々は考えているということが基本的な考え方でなかったか。先ほど堀内委員もそういう趣旨のことをおっしゃったんじゃないかと思いますが、その観点から?があってもいいけれども、これが最初に出てくるのがどうなのかな。とりわけ、?のなお書きはあってもいいけれども、なくてもいいんじゃないかというような気もいたします。
 それから、?の方でも、金融機関の破綻を未然に防止するとともに、やはり経営の自己責任を考えますと、破綻することはやむを得ないわけですね。破綻をやめようと思うと無理やりのいろいろなことをしなきゃいけませんが、破綻した場合に、その破綻過程で早期に退出していただくようなスキームが必要なので、その観点から、監督当局によるモニタリングがあるのは重要だと言いますと、市場規律にそれがそぐわないということで、やはり破綻を考える場合には、純然たる市場規律でいいのかなという気もいたしますし、今の御時世から市場規律を中心とした預金者の保護は重要であることは確かですけど、破綻をベースにしたときには、やはり監督当局が適時適切にいろいろなことをすることも必要じゃないかと思いますと、何かそこら辺のことをもう少しこの2ページ、書いてあるそれぞれのことは別に異論はありませんけれども、整理される必要があるのではないか。強弱を少しお考えになる必要があるのではないかという感じかいたします。
 そして、細かなことですけれども、?のところに、「多様な資金運用・調達・決済手段が提供されることにより、」とありますけれども、こういう将来志向の問題とともに、その前部にありますように、預金にリスクがないことを前提に、ややアバウトな制度が温存されてきた面があると思うんですね。新しいというんじゃなくて、合理的な制度に変える具体的な、前回、江頭委員の質問に対していろいろ御議論をお聞きして感じたんですが、仕掛かり中の取扱いも新しい制度というほどでない。むしろ少し変えれば、相当程度合理化できる。あるいは相殺の問題についてもそういうことですので、「多様な資金運用・調達・決済手段が提供されるとともに、従来の慣行を見直す」というような言葉も入れておく方が現実的な、地に足のついた議論なのかなという感想を持ちました。これが第1点でございます。
 第2点は、いろいろ議論された8ページになるんですが、これは質問なんですが、8ページの中ほどの、「以上のような議論に基づき、」というときに、3行目ですが、「企業や個人の決済が滞ることを通じて地域経済や金融システム等に大きな影響を」云々という表現がございます。
 これに対しまして、危機的な事態の10ページの4.の?の3行目には、「信用秩序全体の維持や国民・地域経済」、これは国民経済及び地域経済ということだと思うんですが、この8ページに国民経済というのを意識的に外しておられるというふうに理解していいかというのが質問であります。
 そして、それとともにやはりこういう場合には、納税者が拒否するということを神田委員が言われましたけれども、やはり個人や企業の決済が滞ることについて、預金者も困るというのは当たり前のことなのかなと思いますが、そのことが入らなくていいのかなという感じがしたというのが、要するに最初が質問で、後半は少し感想ですが。
 そして、ついでに、このページの最後の方、マル3の「借り手の保護」の第1段落から第2段落で、「また、」から、「地方公共団体における自主的な対応」というのを改行いたしますと非常にぎらつくように思うんですが、これはそういう趣旨なのか、あるいはたまたまそうなったのか、そこも質問させていただきたいと思います。これが第2点です。
 それから、ついでに、12ページに公的預金のことが入っていますが、公的預金のことの最後に、流動性預金に関して特別な措置を講じることになれば相当なメリットがあるぞと、確かにそうなんでしょうけれども、こういうことを強調することが、時限的・例外的なそういう制度設計との関係で、もちろんこういう制度設計がなされたら、時限的でも公的預金にこれを組み入れることが合理化かと思いますけれども、これをこういうところで強調されると、ここだけ読みますと、何となく間はというだけで、2年とか何かがなかったら、これは相当続くのかなという誤解が生ずるんじゃないかと思いますので、これ自体は結構なんですが、誤解のないようなちょっと御配慮いただければありがたいなという感じがいたしました。
 最後は、14ページ目の「預金保険料」についてでありますけれども、これも質問でありますが、最後に、検討は進めるべきだけれども、当面、慎重に対応すべきだと、先ほど堀内委員がこれからの課題として、8ページの時限的なことと、それから、預金保険料かと言いましたその8ページの話とこの話とは、相当書き方が違いますので、理念的には正しいけれども、当面は考えないと読まれてもいいのかどうなのか、そこら辺ちょっと御感触をお教えいただければ幸いです。
 以上です。
○倉澤部会長 室長、何かございますか。
○林信用機構室長 それでは、質問等の部分についてですけれども、まず、流動性預金の問題ですけれども、「個人や企業の決済が滞ることを通じて地域経済や金融システム等に大きな影響を与える事態とならないよう、」というふうに書いてありますが、これは後でシステミック・リスクのところで書いているのとは、私の意識の中では相当落差があるというか、いう気持ちでは書いておったんですけれども、もう一度文章をよく見ておきたいと思います。
 それから、「借り手の保護」のところで、国と地域経済というのはやや出方が異なるのかなというところと、あくまでこの審議会なり事務局も、国の機関としてやっているものですから、やや地方公共団体はある意味でよそ様ということもあって、一応段落は書き換えたというところもあるわけでございます。
 それから、可変保険料率のところですけれども、当面、慎重にと申しましたのは、書いております私の気持ちの中では、やはり制度としては、本来、直ちに導入すべきものとして皆さん御議論いただいているのであろうと。ただ、今ですと保険料率が非常に高止まりせざるを得ないものですから、直ちにということについては、経営の悪化した金融機関にとって非常に厳しいものになるということでございますので、直ちにというのは難しいということで、状況を見ながら考えるべき問題というふうに捉えています。
○倉澤部会長 何か関連ですか。違いますか。
○神田委員 今まで幾つか出た点について、私なりの感想を申し上げたいと思うんですけれども、後でも結構です。
○倉澤部会長 森田委員。
○森田委員 法律的な観点から、2点について意見ないし質問を述べさせていただきます。第1点は、先ほどから出ています流動性預金の扱いについての8ページのところでありますけれども、仮にそれを保護するために、何らかの特別な措置を講ずるという前提に立った場合の法制度設計の問題についてであります。この点については、ゼロ金利にするというほかにも、別の問題があります。前回、松下委員から御指摘があったことにも関連すると思いますが、例えば、破綻に近接した時期に、ゼロ金利の当座預金に他の預金債権を組み入れるというようなことがなされたときには、これは実質的には駆け込み的な優先権の獲得ということになります。
 したがって、保護される決済性預金はゼロ金利だとしても、普段は利息が付される別の預金として運用しておいて、破綻に近接した時期にゼロ金利の決済性預金口座に組み入れて、この決済性預金の全額保護というのを最大限に活用するような方法がもし可能になるとしますと、いろんな問題が出てくるかと思います。法技術的な手当てをどうするかというのは非常に難しいところがあるかと思いますが、実際に決済性預金の全額保護を制度化する際には、そのあたりを十分御留意いただきたいというふうに思います。
 それから、2点目ですけれども、8ページから9ページにかけて相殺の問題が述べられております。これは金融機関の借り手の側からの逆相殺をどのように保障するかという約款の手当て等の問題とも関わってくる問題でありますが、9ページの「なお、」以下の段落のところで、「相殺適状」という言葉が3カ所で出てきております。しかし、法律家の目から見ますと、相殺適状になっているんだったら、破綻した金融機関の債権が他に譲渡されても、借り手はその後から預金債権と相殺することできますし、また、相殺適状になってなくても、最高裁の判例によれば、相殺の担保的機能が認められていますので、相殺適状に達した後に相殺することができます。そうだとしますと、この部分の記述は、破綻時に相殺適状になっていない預金債権については相殺は認められないとしているように読めてしまいますので、やや問題があります。したがって、「相殺適状」と3カ所出てくる言葉は、むしろ取った方がよいのではないか、そのあたりもう少しぼやっとした書き方にした方がよいのではないかと思います。法律家がこの部分を読みますと、よくわからない文章になっていますので、その点、何らかの形で修正していただければと思います。
 以上です。
○倉澤部会長 江頭委員、どうか。
○江頭委員 私も細かいところでございまして、一つは8ページ、先ほど来問題になっております流動性預金に関するところでありますけれども、「以上のような議論に基づき、」からの文章でありますけれども、現在の制度では、必ずしも迅速な破綻処理が確実なものでないということは金融監督庁等の御説明でわかりましたので、神田委員の御説明のように、2〜3年の間は仕方ないのかなと私も思っております。
 それで、内容は賛成なんですが、そこの「但し、」からの文章で、「その場合においても、保険料負担で賄うことを前提として、」という文章がありますけれども、これは神田委員の先ほどの御説明ですと、納税者に負担を求めないということだという御説明なんですが、ずっと前の方から読んでいきますと、保険料負担か、納税者負担か、あるいは他の預金者負担かというものがあるわけで、この「保険料負担で賄うことを前提として、」と言うと、これは先取り特権をあきらめたのかというふうに読めますので、そこのところは誤解がないように表現をきちんとした方がよいのではないかという点が一つであります。
 それから、先ほど森田委員が御指摘になった相殺適状は、私は全く同じ感想を持っておりまして、多分これは両建てとか、何かそういう預金と貸付の両建てというような漠然とした意味なんだろうと思いますので、表現は直していただいた方がよろしいかと思います。
 以上です。
○倉澤部会長 大変恐縮ですが、今日、このあり方についてについては、第1読会ということで、この問題自体については今日第16読会をやっているんですけれども、このあり方については第1読会ということで、第2読会も予定されておりまして、あとお一人ということで、先ほど神田委員が、今までの議論について、座長として感想を述べたいということですので、お許しいただけますか。
 蝋山委員。
○蝋山委員 全体として、「小さな預金保険制度」というのがキャッチフレーズになっているわけですが、皆さん読まれて、本当にそういうふうに理解されましたでしょうか。その点、私は非常に大事だと思うんですね。皆さんに理解していただく。国民の一般の方々に理解していただかなきゃいけないわけで、そういう点で私は、そうは読めません、残念ながら。当面の間にせよ、それから、恒久的な制度にせよ、私はそうは読めないという印象を持っているということだけを。
 具体的には、「流動性預金」という言葉をやめた方がいい。「決済性預金」とすべきだというふうに思います。限定的に当面の間も、できるだけ限定性というものを強調すべきだ。金融債の付保対象はやめるべきだというふうに思います。
 それから、もう一つは、平時から名寄せを求めない、こういうことは私はやめた方がいい。やっぱりサウンドバンキングは、ちゃんと名寄せをきちんとやっている。韓国でもやっている。それをやっぱり考えなくちゃいけない。
 こんなことを考えますと、いろんな意味でステータス効を大事にして、「小さな預金保険制度」は理念として掲げながら、実際は大きくしているなと、こういうふうに私は読まざるを得ないから、残念だというふうに思います。
○倉澤部会長 神田委員、ごく手短にお願いいたします。
○神田委員 私、第二部会の委員でございませんので、あるいは発言が不適切かもしれませんけれども、進行役を務めさせていただきました観点から、ごく手短に幾つか、やはり黙っては帰れないという感じがいたしますので、申し上げたい。もっとも私、どちらかというと個人の感想ということだと思います。細かい、大きい点ありますが、時間の関係ございますので、非常に早口になるかもしれません。
 深尾先生が最初に幾つかおっしゃった、例えば劣後債は現在は、表現上は「等」で読めているんですけれども、先ほど御指摘で、BIS規制上認めているものをというのは、私はロジックは逆だと思いまして、劣後債というのは、劣後条件というその契約の条件に劣後状態が発生することになっていまして、むしろ損失を負担するようなものをBIS上は自己資本として認めるべきであって、というふうに思います。ロジックは。
 それから、名寄せの点なんですが、前から第二部会で、今、蝋山先生も御指摘ございましたけれども、確かに、まず表現の問題としては、深尾委員も御指摘のとおり、ここをもしカットすると、「平常時から求めない」でなく、「義務づけない」とか、何かそこを明確にした方がいいと思うんですね。
 ただ、ワーキングではいろんなヒアリング等も通じてしましたけれども、第二部会の中では、むしろ義務づけるべきだという御意見もかなりあったように私は伺っていますが、私個人は、平時から義務づけるというのはどうかと思っています。これは言い出しますと長くなりまして、そんなに実質に気持ちは変わらない。求めてもいいんですけれどもという感じなんですが、法人とか団体とか、いろんなものがある中で、具体的な名前を挙げてどうかと思いますが、平常時から東京三菱銀行に義務づけるんですかと、何か悪いことしたときに現行犯逮捕しますから、国民全体に平時から手錠の携帯を義務づけているようなもので、私にはどうも理解できません。ただ、ちょっとこれは言い過ぎでありまして、実質の気持ちは同じなんですけれども、法律上義務づけるという点は、ちょっとおかしいのではないかということです。ただ、実質のところはそんなに違いません。
 流動性預金の定義、おっしゃるとおりで、括弧書きの中に「又は」を付けなければいけなかったと思います。
 あとは余り大きな点はございませんが、やはり蝋山先生、それから、田中委員御指摘の点なんですが、もしそう読まれるとしますと、やはりちょっと表現の工夫が要るかなと思います。
 ワーキングのメンバーは今日もいらっしゃっていると思いますが、池尾委員、翁委員はじめとして、旧来のシステムを維持させたいという気持ちは全くありません。小さな親切をするつもりも全くありません。ただ、その気持ちは出てないというか、少なくとも読めないという御指摘あるとすれば、それはワーキングのメンバー、それから、第二部会これまであったと思いますが、やっぱり長くやっていますと、細かいところにこだわりまして、ぱっと読んだ印象というのがわからなくなるというのでは、確かに反省しなければいけない点があると思います。今後、表現上、その点は工夫していただければと思います。
 金融機関そのものを救うつもりも全くありません。システムの動揺とか、そういったものをやむを得ない範囲で、2年なら2年の間という、そこがあるだけでありまして、そこのところは、ワーキングとして、むしろ田中委員のお気持ちと全く同じだというふうに言っていいと思います。少なくともワーキングの委員のメンバーも、かなりの部分はそうだと思います。
 あとは可変保険料の点につきまして森本先生の御指摘があったと思いますけれども、理念的には正しいが、当面は考えないのかという御指摘は、答はイエスだと思います。今上限まで来ていますので、これも前に御意見あったかもしれませんが、預金保険というのは完全な保険の制度になっているわけではありません。収支相償うという原則が適用されませんで、収支相償わなくなってきても、負担には限界があるという仕組みでできています。ほかにもちょっと経済理論との関係もありますけれども、その点は省略いたしますけれども、森本先生の御指摘のとおりであります。
 あと、森田先生、江頭先生から御指摘の相殺適状は、おっしゃるとおりだと思います。これは表現をちょっと工夫していただければと思います。
 それから、そのほかの点の御指摘も、江頭先生の第1点の御指摘もそのとおりだと思いますし、それから、森田先生の第1点、乱用防止のための法技術的な手当てということも、当然それは念頭にはありますけれども、ここには表れてないということです。
 手短にと言いながら長くなってすみません。以上です。
○倉澤部会長 私の会議の運営の不手際で、大勢の先生に何か腹膨るるわざで、今日は会を一旦閉じるということにさせていただかざるを得なくなったことをお詫びいたします。
先ほど申し上げましたように、この「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について(案)」につきましては、本日の御議論を踏まえ、適宜修文を加えた上で、次回会合におきましてもう一度御議論いただくことといたしたいと思います。
なお、この「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理のあり方について(案)」は、ただいま申し上げましたとおり、現時点で内容的に固まったものではございませんので、一旦回収させていただくことといたします。本日お帰りの際に、席上に残してくださいますようお願いいたします。
それでは、最後に、次回の日程等につきまして、事務局から連絡させていただきます。
○玉川調査室長 次回の日程は、12月14日(火曜日)の午前10時からとなっております。議事といたしましては、今回の議論の引き続きと、保険会社の倒産法制に関する報告書について御審議いただくことを予定しております。
○倉澤部会長 次回の進め方等は、以上のような予定でよろしゅうございましょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。
                                (以 上)