金融審議会「第二部会」第19回会合議事録 |
日時: |
平成12年6月14日(木)10時00分〜12時11分 |
場所: | 大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室 |
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倉澤部会長 定刻になりました。ただいまから第19回金融審議会「第二部会」を開催いたします。 皆様、御多用のところ御参集くださいまして、ありがとうございます。 議事に先立ちまして、オブザーバーの交代がございますので御紹介申し上げます。よろしくお願いします。 |
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乙部企画課債権等流動化室長 日本銀行から、本日オブザーバーとして御参加の鮫島正大(さめじままさひろ)企画室参事役でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 |
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倉澤部会長 どうぞよろしく。 本日は、3つの議題が用意されております。 第1に、保険の基本問題に関するワーキング・グループにおける保険会社のリスク管理に関する検討の成果を取りまとめた報告書、「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」について御説明をいただいた後、部会報告として取りまとめを行うべく審議を行いたいと思います。 第2に、政府の高度情報通信社会推進本部に設置された「個人情報保護法制化専門委員会より今月2日に公表された、「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」について御説明をいただきます。この議題に関しましては、いずれも後刻の御到着となりますが、説明者といたしまして、個人信用情報の保護・利用の在り方に関する作業部会座長の堀部政男中央大学教授及び政府高度情報通信社会推進本部個人情報保護法制化専門委員会の事務局を務めます、内閣官房内閣内政審議室個人情報保護担当室の松田学副室長をお招きしております。 第3に、先月末に公表されました「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する基本的な考え方」及び「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応〔運用上の指針(案)〕」について御説明をいただきます。この議題に関しましては、説明者として、金融再生委員会事務局の日野康臣総務課長、金融監督庁の藤原隆長官官房審議官、同じく金融監督庁の佐々木豊成監督部銀行監督第一課長をお招きしております。 それでは早速、議事に入ります。 初めに、保険の基本問題に関するワーキング・グループにおける保険会社のリスク管理に関する検討結果を取りまとめた報告書、「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」につきまして、事務局よりその概要を御説明していただくとともに、同ワーキング・グループの山下座長より補足の御説明をいただきます。この内容につきましては、御審議をいただいた後、御了承いただければ、第二部会の報告書として公表させていただきたいと考えているものでございます。 では、菅野室長、よろしくお願いいたします。 |
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菅野保険企画室長 保険企画室長の菅野でございます。よろしくお願いいたします。それでは、座って御説明をさせていただきます。 お手元の報告書、「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」について御説明いたします。資料19−1と番号が振ってあるものでございます。 まず、全体の構成といたしまして、保険基本問題に関するワーキング・グループ委員等名簿と審議状況の後に報告書の要旨、これが7ページございまして、その後に目次、次いで、改めてページを振ってございますが、1ページから19ページまでが本文、最後に資料が4枚ほど付いてございます。 報告書の全体を御覧いただくため、要旨の後に付いております目次をまずお開き願いたいと存じます。報告書は、4章立てとなっております。このうち第・章が、保険会社を巡る会計にかかる問題でありまして、本報告書の中心的なテーマとなっているところであります。この中では、保険にかかる国際会計基準(IAS保険プロジェクト)策定の動きと、「金融商品の時価評価」に関する保険会社会計の問題に関しまして、論点整理がなされております。 また、第II章は、「中間取りまとめ」以降の取り組みといたしまして、昨年12月21日に金融審議会第二部会から公表されました、「保険会社のリスク管理と倒産法制の整理 中間取りまとめ」に指摘されていた事項を中心に、その後の行政当局や関係者による取り組みをフォローする内容となっております。 それでは、本文に則してポイントとなる点を中心に御説明を申し上げます。 本文の1ページをまず御覧ください。検討の背景でございますけれども、中間取りまとめに至る経緯とその後の関係者による取り組みについて触れた後、第3パラグラフでございますが、保険会社のリスク管理と極めて密接な関係を有する会計の分野においては、国際会計基準委員会において保険の国際会計基準策定のための検討が開始されているほか、国内的にも、企業会計の分野において金融資産の時価評価が導入されるなど、保険会社の会計の在り方について改めて検討する局面を迎えているということができると、保険会社会計に関する問題意識を述べてございます。 次に、2ページでございますが、「中間取りまとめ」以降の取り組みでございます。 まず、金融監督庁による監督上の措置の見直しについてですが、第1パラグラフで、「中間取りまとめ」におきまして、標準責任準備金制度及びソルベンシー・マージン基準について見直しの方向が指摘されるとともに、ディスクロージャーの充実や相互会社における配当規制の見直し等についても指摘があったことを述べております。 第2パラグラフ以下では、これらの指摘を踏まえて実施された監督上の措置の見直しが挙げられております。 (1)標準責任準備金制度の見直しにつきましては、標準予定利率の算定方式の適正化、さらに標準責任準備金制度の対象となる商品の拡大、こういった措置がとられてございます。 (2)ソルベンシー・マージン基準の見直しにつきましては、ソルベンシー・マージンへの劣後債務の歳入限度額の厳格化、生保会社と損保会社間の資本調達手段の意図的な保有についてのソルベンシー・マージンへの不参入、デリバティブを用いた意図的なソルベンシー・マージン比率の嵩上げの否認、こういった措置がとられております。 (3)相互会社の社員配当に係る規制の見直しにつきましては、一定の限度内で基金償却準備金積立額を当期見処分剰余金の額から控除すること、下限規制の適用免除に係る認可基準の明確化といった措置がとられ、さらに、(4)のディスクロージャーの充実につきましては、銀行の金融再生法に基づく開示と同様の債務者区分による不良債権の開示が義務付けられたところであります。 次に、2の「保険業法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律について」であります。 金融審議会第二部会の報告書であります「保険相互会社の株式会社化に関するレポート」(平成11年7月)及び「中間取りまとめ」を受けて、法案が取りまとめられ、先の国会で成立したところであることを記述しております。法案の内容につきましては、先の部会でも御説明をしておりますので、ここでの御説明は省略をさせていただきたいと思います。 4ページ、3の日本アクチュアリー会による将来収支分析にかかる実務基準の見直しですが、文章の冒頭にもありますように、将来収支分析による責任準備金の十分性の確認は、責任準備金の積立てを将来のキャッシュフローの下で検証するものであり、保険会社のリスク管理において極めて重要である、こういった認識のもとで、「中間取りまとめ」において、将来シナリオの設定に会社の恣意を排除して行われる仕組みの検討の必要性や、積立不足が認められたにもかかわらず、追加的に不足額を積み立てなくてもよいと判断する場合の根拠と責任の所在の明確化等の指摘を行ったところでございます。これを受けまして、日本アクチュアリー会において検討が行われたところでございます。これについての紹介を行っております。 ポイントとなる点の御説明をいたしますと、まず、 ![]() 5ページの方にまいりまして、不足相当額を積み立てない場合の経営改善計画、これについても厳格化が図られるとともに、iiのところでありますけれども、経営改善計画は、即時実行の上、次年度以降の意見書でフォローアップが行われることとされております。 また、 ![]() なお、日本アクチュアリー会は、実務基準の実行上の問題点の検証のために、平成11年度について試行を行うことが適当というふうにしているところでございます。 次の(2)でありますけれども、将来収支分析についての実効性確保のための措置について記述されてございます。 まず、実務基準の見直しにつきまして、将来シナリオについては、明確化・ルール化が図られており、恣意性は相当程度排除されていると考えられる、他方、任意のシナリオを用いることも可能であることから、そのような場合は、どのようなシナリオ用いているのか、またそれが合理的である根拠等について、保険会社は情報開示をするべきである、との指摘をしておりますほか、金利シナリオの設定の方法についての検討や、標準責任準備金積立計画を提出している保険会社についての判定基準に関して意見があったことについて述べてございます。 また、保険経理人の意見書につきまして、保険経理人自身によるフォロー・アップや監督当局の継続的なモニター、こういったことの重要性についても指摘が行われております。 4.今後の課題でございますけれども、これは今申し上げました「中間取りまとめ」以降の取り組みに関しまして、今後の課題を指摘しているところでございます。 まず、(1)でありますけれども、第1パラグラフの末尾にありますように、監督上の措置については、不断の見直しを行っていくことが重要というふうにされております。 また、第2パラグラフでありますけれども、倒産法制の整備に関連して、より早期の破綻処理のための制度が整備されることを踏まえ、保険会社の破綻に伴う損失が大きくならないうちに必要な対応が取られることについての指摘が行われております。 (2)は、ディスクロージャーに関しまして、一層の情報開示について引き続き検討が行われるべきであるとしております。 (3)でございますけれども、将来収支分析について、明確化・厳格化が図られていると評価した上で、試行により、さらに完成度の高いものが策定されることを期待すること、また、実務基準の法令上の位置づけの明確化が望ましいこと、保険経理人の意見書について、保険経理人によるフォロー・アップと監督当局による継続的なモニタリングの重要性、の指摘であります。 その次のパラグラフ以降でございますけれども、解約返戻金を低く設定している商品の取り扱いについてでありますが、文末にありますように、基礎的なデータの収集・分析、専門家による研究等を踏まえて、必要に応じ、適切に講じられることが望ましいとしてございます。 それでは、8ページでございますけれども、会社を巡る会計にかかる問題について御説明をいたします。 1の「はじめに」では、近年、我が国の会計基準について、急速な改革が進められていること、また、国際会計基準の見直しの動きがあること、こういった中で、保険会社の会計の在り方について検討することが重要な課題となっている、こういった問題定期を行った上で、最後のパラグラフでありますけれども、保険会社の会計の在り方を考える上で、留意すべき特殊性について述べております。すなわち、保険契約の性格に由来する負債、責任準備金の超長期性、不確実性、非市場性、できる限り負債とのマッチングを図ろうとする資産運用行動を取る結果、資産に占める有価証券特に債権のウェイトが高く、かつその期間も相当長いことなどでございます。 2の「我が国保険会計制度の概要」でございますけれども、これは(1)の保険会社会計に求められる役割と、(2)の保険会社会計の法的位置づけにつきまして、概括的にまとめてございます。 簡単に御説明いたしますと、保険会社会計に求められる役割につきましては、一般論として、会計の目的は、債権者と株主等との利益を調整する利害調整機能と、株主・債権者などの利害関係者に対する情報提供機能があること、保険監督上の役割について見れば、保険契約者保護の観点から、保険期間を通じた支払能力の確保が重要であるため、保険会社の計算書類は支払能力を適切に表すものである必要があり、また、監督上必要な情報が盛り込まれていることが望ましいことが述べられてございます。 また、投資者への情報提供についてでありますけれども、その重要性は、増大してきているところでございます。その中で、当事者に必要な情報を提供する上でも、保険業の特性を踏まえる必要があることを述べているわけでございます。 (2)の保険会社会計の法的位置づけでありますけれども、まず、保険業法と商法の関係につきまして、保険業法は、保険会社経理について商法の特則を定めていること、保険業法に特に定めのない事項については、商法の規定が適用されることになるわけであります。 ここで、商法第32条の商業帳簿の作成に関する規定の解釈については、「公正ナル会計慣行」を斟酌すべしと、この条文の解釈が問題になり得るところでございますけれども、これにつきましては、9ページの下2行から始まりますが、「企業会計原則をはじめとする企業会計審議会が公表する企業会計の基準が参酌されることとなろう。」と、こういったことと解されるわけでございます。 一方、保険料の場合、その特殊性を考えますれば、保険会社にとっての「公正ナル会計慣行」が企業会計原則等と必ずしも同じであるとは限らないと考えられると指摘されてございます。 さらに、証券取引法上の取り扱いについて見てみますと、第2パラグラフにありますように、保険業法に基づく計算書類による開示は、証券取引法上も認められる扱いとなっております。このため、仮に保険業法上の経理規定が見直されるような場合には、証券取引法の観点からは、それが受け入れられるものであるかどうか検討される必要があることになるわけでございます。 さて、ここからは国際的、あるいは国内的な会計基準の見直しの動きと、それに対しての保険会社に関する対応、こういったことについての論点整理を行っているわけでございます。 まず、3の保険にかかる国際会見基準(IAS保険プロジェクト)策定の動きにつきましては、国際会計基準委員会の保険プロジェクトについて紹介をしてございます。現在、論点書が公開され、これについてのコメントが募られている段階でありますけれども、今後のスケジュール感、あるいは議論の動向につきましては、まだはっきり見通しが立たない状況にあるわけでございます。 ![]() さて、(2)論点書に対する今後の検討の視点でありますけれども、以下に列記をしているような点など、慎重な検討が必要と思われるところと述べられております。 責任準備金の公正価値による評価について、指標として信頼に足るものとなるかどうか。 ![]() ![]() ![]() こういった諸点が考えられるわけでございます。 一番最後のパラグラフでありますけれども、保険に関する会計基準が、将来、国際会計基準委員会により承認された場合には、保険会社が国際的に業務を展開していくことが展望される中、我が国保険会社の経営のみならず監督等の在り方にも大きな影響を与える可能性がある、このため、我が国保険関係者としても、議論の動向を注視しつつ、必要な意見を適切に表明していくなど、主体的な取り組みを行っていく必要があると考える、という指摘がされてございます。 次に、11ページの一番下でございますが、「金融商品の時価評価」に関する問題でございます。 まず(1)で、昨年1月に、企業会計審議会から意見書が公表され、企業会計の分野に金融商品の時価評価が平成12年4月以降開始する事業年度より導入されることとなった、こういったことが紹介されてございます。 次に、(2)でございますけれども、保険会社に「意見書」に従った時価評価を適用した場合の問題点が指摘されてございます。この部分につきましては、若干文章を読み上げるような形で御紹介をさせていただきたいと思います。 保険会社については、保険契約に由来する超長期の負債(責任準備金)を有する一方、健全性維持の観点からできる限り資産と負債のデュレーション・マッチングを図ろうとする資産運用行動をとる結果、資産面では長期の債券等の占める割合が高くなるという特性が見られる。このような資産負債構造を有する保険会社について「意見書」に従った時価評価を行った場合、以下のような事態が生じ得ると考えられる。 すなわち、これは第2パラグラフになりますが、保険会社は、一般事業会社に比べて債券運用のウェイトが高く、かつその平均回収期間が長い(従って、金利感応度が高い)という特殊な資産構造を有する。このため、「意見書」に従って金融商品の時価評価が行われた場合には、金利の動向によっては、保険会社の資産において大きなウェイトを占める長期の債券に多額の評価差額が生ずることとなり、一般事業会社においては余り意識する必要のない金利の変動による評価差額の発生が、極めて大きなインパクトをもって保険会社の決算に影響を及ぼし得る。すなわち、負債については時価評価が行われない一方、資産については、多量に保有する債券の多くが「その他有価証券」に分類されると見込まれるなかで、「その他有価証券」は時価評価されその評価差額は資本の部に計上されることとなることから、例えば金利上昇は大きな負債の評価差額を生じさせることとなる可能性が大きく、その場合、それが直接的に資本の毀損につながる。実際、評価損の程度によっては資本の部において吸収できずに、資本がマイナスになるという事態も生じ得る。 すなわち、長期の債券を保有することが、金利の変動により貸借対照表に表わされる保険会社の財政状態をより不安定なものとしてしまうこととなり、このことは、本来保険会社が負債の金利リスクを減少させるために長期の債券を取得していることを考えれば、そのような会計処理が保険会社のリスク管理活動を適切に表すものとなっていないのではないか、との問題があることを示していると考えられるということでございます。 その後のパラグラフは、これはデリバティブについても同様の問題があるということを述べておりまして、その次の「更にまた」というところを読ませていただきます。 更にまた、このような会計処理を前提とする場合、保険会社は、金利変動による資本の大きな変動の可能性を回避するため、金利感応度の低い債券への入れ替え等の方針を取らざるを得なくなるおそれがある。この結果、保険会社の資産運用行動が本来健全性を確保するためにするデュレーションの長期化の方向とはずれることとなり、健全性確保の観点から問題が生ずることにつながりかねない。 このような事情を踏まえると、保険会社の資産の時価評価については、保険会社の会計の在り方として慎重に検討すべき問題ではないかと考える、ということでございます。 その下の13ページの最後のパラグラフ、これは責任準備金の時価評価もあわせてすればよいのではないかと、こういった考え方についての記述であります。 3行目から読ませていただきますと、しかし、責任準備金の時価評価あるいは公正価値評価については、そもそも責任準備金は保険契約に基づく将来の債務の履行に備えるためのものと位置付けられている一方、保険契約者の権利を保護する上で、清算や解約などの状況を想定すれば、業法に基づく責任準備金としては時価評価をすることが適切なのかとの問題がある、ということでございます。 また、その下では、仮に開示目的としてその責任準備金の公正価値評価を考えるということでございますけれども、これにつきましては、責任準備金の公正価値とは何であるか、また、その具体的な方法論に関してでありますけれども、割引率をどうするかとか、評価基礎率の変更による責任準備金の変動をどのように取扱うかといった問題があるわけでありまして、これらの諸点については、今後、十分な検討が必要であるということを述べてございます。 (3)は、諸外国の状況についての御紹介でございますが、簡単に申し上げますと、諸外国における取扱い、これはさまざまでございます。14ページの一番最後のパラグラフ、これがいわばまとめになるわけでありますけれども、債券を時価評価しているのは、米国の一般目的の企業会計であるGAAP、英国におきましては、財務会計と監督会計が分離されているわけですが、この英国の監督会計、さらにオーストラリアとなっております。また、その評価差額が資本に計上されるのは、米国のGAAPのみでございます。また、これらの国の保険会社につきましては、それぞれ会計上の取扱いなどが我が国と異なっているところもございます。そういったことのために、先に述べたような問題が生じにくい事情があるということも、指摘してございます。 (4)でございますけれども、ここでは保険会社にかかる「金融商品の時価評価」に関する対応案を示してございます。ここでは、まず第2パラグラフにありますように、いずれにしても、保険会社に係る「金融商品の時価評価」に関する情報については、その有用性は否定されるものではないため、仮に「意見書」に示された基準をそのまま適用しない場合であっても、注記等の形で開示することにより、他業態と比較して、情報量の面でバランスを取ることは必要と考えられるということを、まず述べております。 その上で、対応案として、ここで ![]() ![]() ![]() ![]() その一方で、計算書類の利用者に対して、そこに示される会計情報の利用には保険会社の財務構造に照らして注意すべき点があるということの周知を図るという対応、こういったことでございます。 「しかし、」というその次のパラグラフでございますけれども、ここの点については、こういった対応の問題点ないし留意点について述べられてございます。保険会社の財務構造に照らせば、金利の変動による資本の変動は必ずしも保険会社のリスク管理活動の実態を表すものとならないのではないかと考えられること、監督上の措置も計算書類上のデータと乖離したものとなる場合があると見込まれるが、このようなことについて、実際に計算書類が作成されている場合に、契約者等の計算書類の利用者の十分な理解が得られるか、こういった問題、そもそもそのような留保を要する会計処理が適切なのかという問題があるということが指摘されてございます。更に、ということで、このような会計処理について、その受け止められ方に懸念が残ることから、保険会社の資産運用が、負債とのデュレーション・マッチングの方向とは整合的でない方向へシフトするという影響を生じさせるおそれがあることに留意する必要がある、ということも指摘されてございます。 ![]() その下のパラグラフにありますように、このような考え方をとった場合でも、負債(責任準備金)と異なるリスク特性を有する株式、外貨建債券等については、その価格変動リスクが保険会社経営に与える影響が大きいことに鑑み、時価評価が採用されるべきではないか、との指摘がございます。 次のパラグラフは、これは留意点でございますけれども、このような対応につきましては、他の金融業態も含め、全ての業種に「意見書」による会計基準が適用される中、保険会社には適用しない理由が説明され、理解が得られる必要がある。理由としては、保険会社の財務構造が他業態に例を見ない特殊なものであり、本来保険会社が負債のリスクを減少させるために長期の債券を取得していることを考えれば、金融資産のみの時価評価を行った場合、保険会社の資本を見る際に、かえって適確性を欠く結果になるおそれが大きいことが挙げられる。しかし、いずれにしても、実際上の問題として、バランスシート上他業態でも同じ形での時価評価が行われないということについて諸方面の理解が得られるか見極められる必要がある。このように指摘されてございます。 ![]() すなわちという段落でございますが、保険会社の資産運用においては、一般に、負債の長期性に見合うような資産信用のための金融商品の市場が存在しないなかで、極力資産と負債のデュレーション・マッチングを図ろうとする観点から、負債の長期性に由来するリスクに対するヘッジ効果を有する長期の債券等の資産を保有することとなる。一方、十分なヘッジをするための金融商品の市場が存在しないため、金融商品について「意見書」において認められるヘッジの有効性を担保するような要件を設定することが困難である。このため、保険会社のリスク管理活動の特殊性に直接着目した会計上の取扱いをすることとするということでございます。 具体的には、保険会社のリスク管理活動の特殊性を考慮した、ヘッジ効果を有することを担保する明確な規準を策定した上で、これに該当する資産については、次のいずれかの取扱いとすることが考えられるというようなことでございまして、iの方は、本来価格が下落しても、満期まで保有すれば元本を受取ることが可能な資産である債券であって、ヘッジ効果に関する規準に該当するものについて、その性格に照らし、新たに設ける区分に分類して償却原価法による評価を認める、こういったものでございます。 iiでございまして、ヘッジ効果に関する基準に該当する資産について、時価評価をした上で、ヘッジ会計に準じまして、評価差額を資本の部に計上するのではなく、資産又は負債に計上すると、こういった考え方でございます。 i.及びii.のいずれについても、明確な基準を策定できるかどうかが重要であるということでございます。「なお、」以下でございますけれども、このような取扱いをする上で、どのようなものが対象となると見込まれるかなどの指摘をした記述となってございます。 17ページ、(4)の一番最後の段落につきましては、これはデリバティブについて記述してございまして、ヘッジ会計に準じた取扱いができるという、そういった趣旨の記述でございます。 (5)対応案の検討についてでありますけれども、これらの対応の方策については、今後なお具体化を図りつつ、検討が行われ、適切な対応策が選択される必要があるといたしまして、以下にその際の留意点を ![]() ![]() 保険会社の財務構造を踏まえ、金利変動等の状況下での会計情報として適確に実態を反映するものとなっているか、会計理論と整合的であるか、新たに規準を設定する必要がある場合、具体的で恣意性を排除した基準が策定できるか。また、規準の適用について、事後的に外部から検証できるか、損失の繰延手段として使われることを排除できるか、といったことでございます。 その後につきましては、これは証券取引法上の取扱いについてでありますけれども、二種類の会計情報が提供されることによる無用の混乱を招かないためにも、この検討結果を踏まえてそれと整合的な取扱いとなることが望まれる。このため、必要であれば、企業会計において所要の検討手続きを踏むことを含め、考慮されるべきであるということ。 その後は、これは監督上の措置についてでありますけれども、資産の評価方法が変更される事となった場合には、それに応じて監督上の措置についても適宜見直しが行われる必要があるということについての指摘でございます。 5.のまとめでございますけれども、これは保険会社の会計をめぐる問題につきまして、ポイントをまとめたものでございます。 (1)は総論的な内容でございまして、保険会社は極めて特殊な資産負債構造を有しており、その会計についても、保険業の特性を踏まえ、保険会社の財政状態を適切に表現するためには、どのような会計の在り方が適切かについて検討されなければならない。 (2)は、保険に関する国際会計基準の検討についてでありますけれども、今後の方向性及びスケジュールについて不透明な部分が多いが、我が国保険関係者としても、議論の動向を注視しつつ、必要な意見を適切に表明していくなど、主体的な取り組みを行っていく必要があると考えるということ。 (3)は、「金融商品の時価評価」につきましてでございますが、先ほど御説明をいたしました内容を要約したものとなってございます。 なお、その中段のあたりに、「意見書」の内容が平成12年度から適用されること、及び税務上の取扱いその他の実務上の対応にも留意する必要があること等を踏まえ、早急に具体的な検討を開始し、結論を得る必要があるということを、ここでは付け加えてございます。 (4)の責任準備金についてでありますけれども、これにつきましては、その公正価値の開示が有用であるとしても、公正価値評価に関しては、業法上の責任準備金の評価とは何かといった基本的な視点に立ち返り見直さなければならず、理論面、実務面から検討されるべき問題が多い。今後国際的な議論に主体的に対応していくためにも、我が国保険関係者により検討が進められることが望まれる。また、保険会社を取り巻く環境の変化を踏まえ、責任準備金に係る開示の在り方についても、この中で検討されることが必要である。こういった指摘となってございます。 最後に19ページ、「おわりに」でございますけれども、全体を通じました問題意識とそれへの関係者の対応を求める内容となっております。この論点につきましては、それぞれの箇所で触れられておりますので、繰り返しの御説明は省略させていただきますけれども、最後のパラグラフは、これらを総括した結びとなってございます。保険は、人の生死や社会に発生する様々な危険に備え、万一事故が発生した場合には経済生活の連続性を保障するという重要な役割を担っており、国民生活及び国民経済の基礎となっている。この意味から、保険会社のリスク管理の在り方については、今後とも、幅広い見地から検討が続けられることが必要である。各保険会社には、保険業に期待される役割を踏まえた健全性の確保・維持に向けた不断の取り組みが強く求められるところであり、透明・公正な監督行政と併せて、保険事業の健全な発展と保険契約者等の保護が図られることを強く要望して本報告の結びとする。こういったことでございます。 以上、大変駆け足でございましたけれども、報告書の御説明とさせていただきます。以上でございます。 |
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倉澤部会長 どうもありがとうございました。 ただいまの事務局からの説明について、ワーキング・グループの座長をお務めの山下委員より、補足の御説明をお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 |
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山下委員 山下でございます。ごく簡単にコメントさせていただきます。 保険会社のリスク管理につきましては、従来からのさまざまな問題点の分析、あるいは反省というものと、市場環境の変化というものを踏まえまして、多面的な取り組みが必要であるということでございますが、今回のレポートの第・章にございますように、既に幾つかの点では改善が図られているわけでございます。ただ、なお保険会社、あるいは監督当局、それから日本アクチュアリー会で実務的に詰めをしていく部分がございまして、それぞれのレポートで今後どういうことが必要かということが書いてあるわけでございます。 文章を読んでいただくと、それぞれ望ましいとか、期待するという文章が文の末尾になっておりまして、人ごとのような表現ではございますが、これは非常に強く期待しておるという趣旨でございますので、そのように御理解いただければと思います。 それから、今回はその上で、特に会計に関する問題点を新たに検討いたしまして、これがポイントは二つございまして、第・章の方に出てまいります保険に関する国際会計基準への対応という問題と、それから「金融商品の時価評価」導入への対応という2点でございます。 前者の方の国際会計基準の方の問題ですが、これは先ほど説明ございましたように、IASにおける検討が、まだ方向がもうひとつ見えてこないという状況でございますので、この部分は、どちらかというと現状といいますか、IASの動向等についての勉強的な作業を今回したということになります。 ただ、レポートをごらんになりますとおわかりいただけますように、この保険に関する国際会計基準というのは、今、考えられているフレームワークというものが従来の保険会計と大きく違っているという点があります。それから、投資家重視の会計という色彩が非常に強くなっておりますので、そういう方向自体は、そういうことで避けられないのかなという印象を持っております。 そういう会計基準がつくられてまいりますと、現在の保険監督制度の前提というもの、これは現在の保険会計を前提に組み立てられているわけですけれども、その前提が相当変わってきますので、例えば財務会計とこの監督会計の関係をどういうものとして見るか。違うものとして存在し得るというというように考えるのか、あるいは財務会計をもとに監督の在り方というものをむしろ大きく変えていくのかとか、そういう大問題に発展するわけでございまして、IASの方で今後どういう動きが続いていくかということを注意して見ていきながら、我が国の保険監督の在り方というのも常に考えていかなくてはいけないのかなということでございます。 それから、レポートの11ページのところで、先ほど御説明ございましたように、このIASの論点書についても、我々の目から見て理想的な面ばかりではなく、いろいろ問題もありそうだということで、そのあたりのポイントが11ページのあたりに出ております。こういう点から、日本としてもこういうIASの作業に対して言うべきことは、今後言っていこうというふうなことが結論として書かれております。 それから、「金融商品の時価評価」に関する問題の方は、これは当面の実務上非常に重要な問題でございまして、その詳細は、先ほどかなりレポートを読み上げる形で御説明ございましたので、改めて説明する必要はないかと思いますが、やはり保険事業というか、保険会社の財務の特性というものを考えると、負債の部分は現状のままにしておいて、資産の部についてのみすぐに時価評価を導入すると、いろいろな問題がありそうであるということで、レポートの9ページの一番下から10ページにかけまして、保険業の特性ということから、保険会社にとっての「公正ナル会計慣行」が企業会計原則や企業会計審議会の公表する基準と必ずしも同じであるとは限らない、ということを言っております。このことは、法律解釈論としては言っていいのかなということで、ワーキング・グループでは大方コンセンサスが得られたのではないかと思っております。 ただ、それを踏まえて、それでは具体的にどういう処理をすべきかということにつきまして、これはワーキング・グループだけで何か結論が出せる問題でもないわけでございます。そういう意味で、先ほど説明ございましたように、15ページ以下の ![]() ![]() ![]() 簡単でございますが、以上でございます。 |
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倉澤部会長 どうもありがとうございました。 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問等ございましたら御自由にお出しいただければと思います。 会長、どうぞ。 |
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貝塚会長 質問があんまりありませんので、私がちょっと。保険会社が株式会社化した場合と、それ以前の現行の相互会社の場合では、法律的にはかなり問題に対する考え方が違い得るということは、現在の生保のケースですけれども、その辺のところはどういう感じなんでしょうか。ある程度は書いてあると思うんですが。 |
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倉澤部会長 山下委員、どうかお願いいたします。 |
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山下委員 確かに相互会社の場合は、株主がおりませんので、証券取引法の本来的な適用はないということですか、これも現在、保険会社も法律上は社債を出せるというようなことですし、CPのような有価証券を発行し出すと、これも証券取引法の適用が出てくることになるわけでございまして、全く無縁のものではない。それから、途中に書いてあると思いますけれども、実際は、現在の保険株式会社の証券取引法上のディスクロージャーも、これは保険会社については証券取引法上、財務諸表の様式が別記で、大体業法上のものがそのまま認められるということになっておりましたりして、実際はあんまり相互会社と株式会社でそんなに区別はないし、例えばIASの検討でも、相互会社は別のフレームワークかというと、どうもそういうことはないのではないかと言っています。 |
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倉澤部会長 よろしゅうございますか。 斎藤委員、どうぞ。 |
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斎藤委員 黙っていると、後で貝塚会長に怒られる可能性がありますので、一言コメントをいたしますが、確かにこのペーパーにありますように、金融商品の会計基準では、時価評価される金融資産に比べて時価評価される負債の範囲が狭いんです。それは理由がないわけではなくて、会計上、時価評価する意味があるものはいつでも換金する市場があって、しかも、換金することに事業上の制約がないポジションだけなのです。金融資産であれば、これに該当するものは非常に多いわけでありますけれども、負債ですと、これは金融資産だけではなくて、事業用の資産にも投資されるわけでありますから、それだけ事業上の制約を受ける可能性があるということになると思うのです。一般に、事業用の資産というのは時価評価されませんから、そのときに負債の側だけ時価評価すると、おかしな利益が出るということになると思います。 保険会社の責任準備金、これは保険会社の最大の負債でありますけれども、これを時価評価するかどうかというのは、基本的にはこれがいつでも時価で清算できるポジションかどうかということによると思うのです。それはそもそも保険が事業なのか、トレーディングなのかという、そういう問題なのかもしれないという感じもいたします。長期の保有債券に対して金利変動の影響が大き過ぎるということだけが問題であれば、これは負債側も時価評価すれば、簡単に解決してしまう問題だと思うのです。 ただ、責任準備金というものが、清算されないで、結局、キャッシュフローを待って取り崩されると。そういうものであるというのであれば、そのポジションの性格に合った評価の方法を検討する余地はあるのかもしれない。少なくとも、ないと言い切れる自信は、私にはありません。そういう感じがいたします。 ただ、御承知のように、国際会計基準では、これは何でも画一的に時価評価するという方向に突っ走っているわけです。それは、ある意味で思い込みの激しい議論があることは否定できないんですけれども、その流れがもし固まるようですと、この論点整理の論調も、影響を受けざるを得ないという感じはいたします。そういうことも含めて事態を見てということであれば、その検討を続けていくということについて、私は異論を唱えるつもりはありません。 以上、コメントです。 |
○ |
倉澤部会長 どうもありがとうございました。 高橋委員、どうぞ。 |
○ |
高橋委員 この報告書につきましては、方向性を示して選択肢を出していただいたということで、殊さら意見を申し上げる場ではないようですので、これに関しましては、大変御苦労されてよくまとめていただいたというふうに感想を申し上げたいと思います。 私が御質問したいのは、この報告書の最後の「おわりに」のところで、保険会社会計の在り方や、それに関連する諸問題について、ここに示されている論点を踏まえて、さらに検討が進められることが求められるとあるわけですが、今後の検討課題の中に加えていただく必要があるのではないかと思われる点を申し上げたいと思います。 今回は、有価証券、特に債券のウェイトが高いということで、その時価評価をどうするかということに、議論にたくさんの時間が使われたようでございます。これは企業会計審議会の意見書が出たからということだと思うのですけれども、保険会計の特性を考えたときに、例えば保険会社というのは不動産をかなり所有しておられます。テナントビルとか、適正な時価評価が現在されているのかどうかというのは、大変気になるところでございます。また、株式の時価評価の問題というのも、今までいろいろ変わってきた経緯がありまして、今後どうなるのかということに対しても、若干の不安を持っております。 こうした不動産とか株式の時価評価について、検討課題に今回のせるべきかどうかという議論がなされたのかどうか。あるいは今回されなかった場合には、そうしたものが経営に及ぼす影響というのをどう見ておられるのか、監督庁あたりに御見解をお伺いしたいというふうに思います。 以上でございます。 |
○ |
倉澤部会長 室長、どうかお願いいたします。 |
○ |
菅野保険企画室長 今回のワーキング・グループでのいろいろな御議論というのは、基本的には、やはり責任準備金と同様のリスク特性を持っているというふうに考えられるものについて、長期の債券というイメージがあるわけですけれども、そういうようなものについて、この「金融商品の時価評価」が適用された場合に、保険会社の、まさに財務構造の特殊性に鑑みて問題が生ずるのではないか。この部分に議論が集中したということでございます。そういう意味では、不動産等の扱いについては、必ずしも議論がされていたというわけではないかと思います。 ただ、一方でこの選択肢の中の議論にもありましたように、株式のような、あるいは外貨建資産のような、責任準備金と違う、そういった資産については、やはり経営に与える影響が大きいであろうと。そういったことを考えれば、やはり時価評価をこれについてはするというような方向が考えられるのではないか。そういった指摘といいましょうか、御議論があったというようなことでございます。 また、今後につきましては、当面は、まさに「金融商品の時価評価」に対する対応、これが急がれるテーマだと思いますので、この部分についての議論をまず、議論といいますか、検討をする必要があるのかなというふうに考えてございまして、その他の問題につきましても、やはりそれぞれの問題意識を持って、それはそれで取り組んでいくつもりではございますけれども、基本的には、まずそこの部分を取り扱うということになるのではないかというふうに思っております。 |
○ |
倉澤部会長 よろしゅうございますか。 斉藤オブザーバー、どうぞ。 |
○ |
斉藤オブザーバー 生命保険会社の昨今の状況に鑑みまして、このテーマは大変重たいテーマでございますので、一言感想を申し上げたいと思います。 まず、短期間で大変集中的に御審議していただきましたことを、座長の山下先生を初めとしてワーキング・グループの皆様方に、厚く御礼を申し上げたいと思います。その上で、今も御紹介ございましたとおり、企業会計におけます金融商品の時価評価の動きと、それから国際会計基準委員会の保険プロジェクトの動き、この二つを踏まえて、このテーマにつきまして、今後の検討に向けて大変有益な論点をお示ししていただいたというふうに受けとめております。今後、この報告書にも記載がございますとおり、保険会社の特殊な資産の負債構造というものを踏まえた具体的な検討をお願いできればというふうに思います。 それからもう一つ、国際会計基準委員会の保険プロジェクトの動き、特に負債の公正価値をめぐる議論、これは今後、かなり長期に続くわけでございますけれども、報告書にもございますとおり、私どもも業界として適宜意見表明をしたいと思っておりますし、それから、この動きを踏まえて保険会計の在り方につきまして、継続的に検討の場を設けていただければというふうに思います。 以上でございます。 |
○ |
倉澤部会長 今、高橋委員からのお話と、斉藤オブザーバーのお話とダブることになるかもしれませんけれども、この報告書の19ページの一番最後が、保険会社のこの意味から、保険会社のリスク管理の在り方については今後とも幅広い見地から検討が続けられることが必要であるという形で、これであらゆるリスク管理についての問題点を網羅していった報告という形式はとっておりませんので、御了解いただきたいと思います。 では、この報告書を第二部会として了承の上、第二部会名で公表をすることとしてよろしゅうございましょうか。 |
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○ | 倉澤部会長 どうもありがとうございました。 それでは、部会報告書としての体裁を整えた上で、そのようにさせていただきます。なお、ただいま御了承いただきましたこの報告書については、第二部会の報告書ということでございますけれども、27日に開催が予定されております総会に提示し、報告することとさせていただきます。御了解ください。どうもありがとうございました。 それでは、続きまして、本日の二つ目の議題であります「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」に関する審議に移ります。 御承知のとおり、個人信用情報の保護と利用の在り方につきましては、通産省の産業構造審議会、割賦販売審議会との合同で、当第二部会のもとに設置されました個人信用情報保護利用の在り方に関する作業部会において検討する旨、昨年7月に論点、意見の中間的な整理を公表いたしました。 その後、政府の高度情報通信社会推進本部で、我が国の個人情報保護システムの在り方について検討を行い、昨年7月には、私どもの作業部会の座長でもいらっしゃる、中央大学の堀部教授を座長とする個人情報保護検討部会を設置、昨年の11月に中間報告を公表されたところでございます。 この中間報告を受けまして、個人情報保護に関する基本法の制定に向け、法制的な観点からの専門的な検討を進めるため、今年2月には、高度情報通信社会推進本部のもとに、新たに個人情報保護法制化専門委員会が設置され、今月2日に、個人情報保護基本法制に関する大綱案の中間整理が公表されたところでございます。本日は、まず法制化専門委員会の事務局である内閣官房内閣内政審議室個人情報保護担当室の松田副室長から、個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)について御説明いただきたいと思います。 なお、本日は、個人情報保護検討部会座長として法制化専門委員会にも出席しておられる堀部先生にもお越しいただいておりますので、堀部先生からも適宜補足説明をいただきます。 それでは、まず松田副室長、お願いいたします。 |
○ |
松田副室長 内閣官房の個人情報保護担当室の松田でございます。よろしくお願いします。 まず、基本法制の検討の背景でございますが、簡単に経緯をご説明しますと、今も部会長の方からも御説明ございましたが、直接的な背景としては、今般の基本法制の検討は昨年の住民基本台帳法改正に際しまして、民間部門における個人情報保護の在り方に対する社会的な関心が高まり、こういった中で、直接的には与党合意、これは3年以内に法制化を図るという与党合意がございまして、また、国会審議における総理答弁でも、民間部門をも対象とした法整備を行うという答弁がございまして、こういったことをきっかけに検討が開始されたものでございます。 より大きな背景としては、既に御案内かと思いますが、1980年にOECD理事会が理事会勧告を採択しておりまして、8原則が採択されておりまして、1995年にはEUにおきまして、OECD8原則を踏まえてEUの指令が採択されてございます。この指令では、第三国が十分なレベルの保護措置を確保している場合に限って個人データの移転ができる旨を各国法整備において定めることが求められているということで、日本としてどのように個人情報の保護を図っていくかということは、対外的な観点からも問題になってきたところでございます。 日本政府におきましても、80年のOECD理事会勧告を踏まえまして、随時検討が行われてきたところでございまして、88年には「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律」というのが成立しておりまして、民間部門にも必要だということで、早急に検討するようにということが以前から求められていたところでございます。 昨年の7月に、今、お話がございましたように、高度情報通信社会推進本部のもとに個人情報保護検討部会を、堀部先生を座長としまして開催することが決定されまして、11月19日に中間報告が公表されまして、その中で我が国の個人情報保護システムの中核となる基本原則等を確立するため、全分野を法制化する基本法を制定することが必要であるということが盛り込まれておりまして、政府におきましては、法制的な観点からの専門的な検討を行っていくための法制化専門委員会というものを設けるということになったわけでございます。本年2月に第1回の初会合を行いまして、そのときに、当時の小渕総理の方から、政府としては平成13年の通常国会に法案を提出することを目標に努力するというあいさつをいただいております。 その後、この委員会でございますが、週1回ペースで大変精力的に御議論いただきまして、17回の会合を重ねまして、先般6月2日に大綱案(中間整理)を公表したところでございます。 以下、中間整理の中身について若干御説明いたします。 この中間整理は、個人情報保護の基本法制に関して、現時点において法制化専門委員会として具体的に盛り込むべきではないかと考える事項を整理したという性質のものでございます。 一番わかりやすいのは、19−3の資料の、1枚めくっていただきまして、中間整理の構造というポンチ絵がございますが、これが全体的なこの法制の仕組みをあらわしております。その他まで含めて全部で8項目、目的からその他までございますが、このうち3の基本原則につきましては、個人情報保護のため、個人情報の取扱いに当たって官民を通じて守られるべき目標ないし行動原理を示したものでございます。 そして、この基本原則を実現するために、4から7でございますが、政府、事業者、地方公共団体、国民といったそれぞれの主体が取り込むべき事項を主体別に定めているということでございまして、個人情報保護に関する基本法制として全体が構成されているということでございます。 最後のその他のところでは、今後、なお引き続き検討する事項が挙げられております。 次に、具体的な中身でございますが、資料の19−2について、御説明いたします。 まず、1ページのところ、目的でございますが、目的ということで4行ばかり書いてございますが、この目的につきましては、情報通信技術の発展ということによります大量の個人情報の流通、蓄積及び利用という実態を、今般の立法化の前提といたしまして、個人情報の利用に配慮しつつ、主たる目的を個人の権利利益を保護することとした点に特色がございます。いわゆる利用と保護のバランスと言われておりますけれども、この法制では、個人情報保護ということで、保護の方に重点を置いたということでございます。 それから、定義を飛ばしまして、基本原則でございますが、2ページです。3基本原則ですが、これにつきましては、個人情報は、原則として、以下のように取り扱われるべきものとすることとしておりまして、利用目的による制限、内容の正確性の確保、適正な方法による取得、安全保護措置の実施、透明性の確保の五つの原則を定めております。 (1)の利用目的による制限につきましては、この原則は、OECDの幾つかの原則を整理して、目的制限、あるいは目的拘束という考え方を打ち出したものでございまして、今回の中間整理では、目的による拘束という考え方が個人情報の保護を図る上で最も中心的な基本原則であると、そういう考え方を打ち出しております。 ここで(注)にも触れておりますように、利用目的が変更された場合も含めて、利用目的を明確化することを求めております。 それから、(2)の内容の正確性の確保につきましては、(注)でもございますが、個人情報が利用目的に関連して必要な範囲で取り扱われる上で正確な内容に保たれるということを想定しております。 (3)は省略いたしまして、(4)安全保護措置の実施につきましては、特に最近、個人情報の漏洩が大きな問題になっている現状がございますので、重要な原則であろうと考えられます。 (5)の透明性の確保でございますが、これはOECDの原則の中には、公開の原則とか、あるいは個人参加の原則といったものがございまして、これに対応したものです。特に手続的に個人情報の保護を実効あらしめる上では重要な原則であるということでございます。 以上、五つの基本原則は、この原則に沿って政府、事業者、地方公共団体が具体的に講じる措置の中で実現されていくものでございます。 そこで、政府の措置について簡単に触れますと、4にございますが、政府の措置及び施策、これは大きく分けて、政府が既存法令の見直し等を行うということと、事業者による個人情報の保護に関する、事業者自身の取り組みを政府が支援するということの二つに分けられるところでございます。 まず、前者の政府自身の方につきましては、まず行政機関については、先ほどの経緯でも触れましたが、既に個人情報保護法が存在しているということで、この法律の存在を前提として、基本法制の基本原則に沿った形になるような必要な改正を行うということが盛り込まれております。 また、既存法令の見直しということで、行政機関以外の個人情報に関する既存の法令についての見直しについても触れてございまして、いわゆるセンシティブ情報の取り扱い、あるいは個別法の整備を念頭に置きまして、ここにございますように、特定の個人情報、または特定の利用方法であるため、特に厳重な保護を要する等、別途の措置が必要なものについては、特別な法制上の措置その他の施策等の措置を講ずるものとしたということです。これは、いわゆる信用情報保護に関しましても、個別法による対応ということで、ここに念頭に置かれているわけでございます。 それから一方で、事業者等による取り組みを政府が支援するということにつきましては、(3)、(4)、(5)の三つの項目が定められておりまして、具体的には、各省庁による施策が総合的かつ一体的に講ぜられることを図るために、「個人情報の保護の推進に関する方針」を政府が策定すると、これは(3)にございます。この方針に基づきまして、本基本法制に沿った取り組みが行われるよう必要な支援、周知等に関する施策を実施する、あるいは国民に対する啓発活動の推進等に努める、あるいは政府が事業者による個人情報の処理等に関する個人からの苦情等を受け付け、適切に処理するというようなことを定めております。 この方針をどのような形式で策定するかということが今後の議論でございますが、その内容としては、例えば各省庁による分野ごとのガイドラインの策定などが考えられるところでございまして、このようなスキームを形づくることで、各省庁のガイドライン等に基本法制による間接的な根拠を与えるということにもなりまして、政府全体として個人情報保護の実効性を上げていこうと考えているものでございます。 なお、(5)にございますが、苦情等の処理に当たっては一定の実効性を確保するということで、この中に、政府は必要な調査を行うことができるものとすることという文言が盛り込まれております。 また、勧告を行うという仕組みが必要かどうかについては、引き続き検討ということでございまして、また、苦情等の処理を行うということが書いてございますけれども、政府内部でどのような役割分担とするかも、今後、詰めて考えることとしております。 それから次に、大きな5でございますが、5ページの事業者が遵守すべき事項でございますけれども、現在、我が国ではごく一部の分野を除きまして、民間部門の個人情報保護のための法制は存在しないということでございますので、この事業者が遵守すべき事項に関する規定というのは、非常に大きな意味を持つものでございます。また、基本法制においても民間部門に対する、この部分については一般法的な役割を持っている部分、期待されている部分と言えるかと思います。 この大綱案では、民間部門の個人情報保護につきましては、基本的な考え方として、自己規律と当事者間による実効的な解決というものを重視しまして、その上で基盤となる個人情報の取り扱いにおける透明性の確保、あるいは最低限の規制を盛り込むということを基本的な考え方としております。 すなわち、個人情報の取り扱いを段階ごとに詳細な規制をしていくというような手法をとるよりも、むしろ先ほど申しました目的拘束という考え方のもとでの自己規律による対応に主眼を置きまして、個人情報の取り扱いに関する透明性の確保を重視すると。その結果として、全体としての保護の実効性を上げていこうという考え方でございます。 こうした考え方を踏まえまして、事業者が従事すべき事項におきましては、まずここにございますように、事業者は、基本原則に沿って、自主的に必要な措置を講ずるものとすることとした上で、自主的に必要な措置を講ずる上では、以下の事項が含まれるようにすることとしまして、計11の項目を挙げてございます。 時間の関係もございますので、各事項ごとの詳しい説明は省略させていただきますが、何点か特徴を挙げますと、第1に、現実の実態にも配慮しまして比較的やわらかな規定としているということでございます。ただし、目的拘束の考え方という点では一貫しているということでございます。 第2番目に、安全保護措置の実施に関しまして、個人情報の保護に関する規定の整備、あるいは個人情報安全管理者の配置ということを適切な安全保護措置の例として掲げてございます。 第3に、透明性の確保に関しまして、個人情報の処理等に関する事項の公表ということに関する規定を置いております。また、一定の場合に、本人からの求めがあった場合に開示や訂正を行うこととしていることなどが挙げられるところでございます。 なお、11のうち(10)に他の事業者との協力ということが8ページにございますけれども、これは事業者団体によるガイドラインの策定、あるいは苦情、紛争等の処理などの取り組みを念頭に置いたものでございます。 これらの11項目の事業者が遵守すべき事項に関しまして、重要な点は、一番最初に(注)でも触れてございますが、各事項に関しては義務規定とすること等を含め、その法的強制の程度について規律ごとに引き続き検討するとしていることでございます。この点は、実効性の確保とも大きくかかわる問題でございまして、中間整理に対する各界、各層からの意見を踏まえた上で各規律ごとに検討を行いまして、最終的に規制の濃淡が決められていくものと考えております。 最後に、飛ばしましてその他でございますが、9ページでございますけれども、これは中間整理の段階では結論は出ませんでしたが、事項の重要性等から今後も引き続き検討することが必要であるという論点を挙げたものでございます。 (1)に適用対象範囲ということでございますが、この点につきましては、規律ごとに情報の性格等に即して今後検討していくこととしております。 (2)に事業者による開示、訂正等の法律上の位置づけとございますが、これについては具体的にはこの開示、訂正というのを事業者の行為規範とするか、あるいは個人の権利として認めるかという、いわゆる民事上の請求権となり得るかどうかということを論点として、今後検討していくということでございます。 (3)でございますが、これは個人情報の漏洩等に関する罰則の可否ということで、刑事法制の在り方等を考慮しつつ検討していくとしております。 (4)として、第三者的な苦情・紛争処理機関の設置。これは公的機関にするか、あるいは民間の自律的な機関にするか、そういうことを含めまして実効的な解決を進める観点から検討するということにしております。 (5)は条例についてのことでございます。 以上が内容でございますが、今後の予定を簡単に最後に御説明いたしますと、まず、お手元の資料19−3ですが、ここにありますように、国民からの意見聴取ということで、7月1日まで意見を受け付けているところでございます。また、法制化専門委員会の方では7月いっぱい、関係省庁、関係民間団体等から意見聴取、ヒアリングを行いまして、そういったことを踏まえまして、9月末までには大綱案についての最終報告をまとめるということでございます。その後、政府の方ではそれを受けて法案化の作業を行いまして、次期通常国会への法案提出を目指すということになっております。 簡単ではございますが、以上でございます。どうもありがとうございました。 |
○ |
倉澤部会長 堀部座長、何か補足していただくことがございましたら、よろしくお願いいたします。 |
○ |
堀部座長 中央大学の堀部です。先ほど倉澤部会長からお話がありましたように、当部会のもと、それから通産省の関係の審議会のもとに合同で置かれています個人信用情報保護利用の在り方に関する作業部会は、その中間的なまとめを昨年の7月にいたしまして、それをここでも報告させていただき、またいろいろ御意見をいただきました。 ちょうどその時期に、先ほど松田副室長からお話がありましたようなこともあって、高度情報通信社会推進本部で個人情報保護について検討するということになりまして、作業部会の方は、国全体の動きを見てさらに検討するということで、このところ中断しております。今回、6月2日に御説明いただいたような個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)が出ましたので、これを踏まえてどのように作業を進めるかということを検討したいと思います。 先ほども倉澤部会長からお話しありましたようなことで、この大綱案のもとになります考え方というのは、「我が国における個人情報保護システムの在り方について(中間報告)」というもので、昨年の11月19日に取りまとめました。昨年の12月3日に高度情報通信社会推進本部の会議が開かれまして、そこで小渕前総理にその中間報告をお渡しして、説明もし、高度情報通信社会推進本部としては、基本的な法制の確立に向けて具体的に検討するということが決定されまして、先ほどのような経緯で今年の2月から個人情報保護法法制化専門委員会で法制的な側面についての検討が進められてきたところです。 その中間報告という昨年11月19日にまとめましたものの基本的な考え方を簡単に申し上げますと、個人情報保護をめぐりましては、これも先ほど松田副室長からお話しありましたように、EUの指令などでかなり厳しい要求が出てきたりもしていますので、そういうものも踏まえて、我が国としてどうすべきなのかということになります。一方、アメリカでは、個別の分野で法律をつくって対応するという方法もとっています。世界の動向を踏まえながら我が国としてどうすべきなのかということを考えまして、基本的には利用と保護のバランスをとりながらということになりますので、余り厳しい法的措置を講ずるというよりは、柔軟なシステムといいましょうか、ソフトなシステムを構想していました。 そういう中で、アメリの場合ですと、19世紀末からプライバシーの問題については相当議論がありまして、100年以上にわたって議論の蓄積がありますが、日本の場合には30数年ぐらいでしょうか、1960年代に入ってこのことが議論になってきたこともありますので、全体のレベルアップということを考えますと、基本法的なものでまず一つ仕組みをつくってみる、そのもとで、特別に保護を必要とするような分野、具体的には三つ挙げまして、その一つが個人信用情報、それから次に医療情報、さらに電気通信分野です。この三つについては、先ほどありました政府の措置及び施策の中で今後講じていくということになります。それ以外の金融に関するものでも、非常に多くの個人情報が取り扱われていますが、それにつきましては、それぞれ自主的に対応していただく、こういうふうに考えました。 その法制的な側面は、作業部会としましても、この大綱案を踏まえながらさらに検討を進めていくことになりますので、今日、折角の機会ですので、委員の先生方からいろいろ御意見を出していただけば、それを見ながら検討し、また時期を見て報告させていただきたいと思います。 とりあえず以上であります。 |
○ |
倉澤部会長 ありがとうございました。 ただいまの御説明のありました個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)につきまして、御意見、御質問等ございましたら自由にお出しいただきたいと思います。 |
○ |
森本委員 2点お尋ねしたいと思います。 第1点は、こういう基本法制を整備された後、この基本法制に基づいていろいろな法律がつくられるわけですが、そういう法制の整備、さらにはその実効的な運用をコントロールするというか、促進するための特別の組織が今後考えられるのかどうなのかということが、第1点の質問でございます。 第2点は、やや細かなことかもしれませんが、省略されましたけれども、9ページ7に「国民の役割」とありますが、他人の個人情報の保護に努めることは素直に理解できるんですが、次に、自己に関する個人情報の適切な管理に努めるという、一般的に言われるとそうかなと思うんですが、具体的に何を考えられているかという点で、他人ではなくて自己に関する個人情報の適切な管理というのはどういう意味なのか、お教えいただきたいと思います。 こういう情報をベースとした問題につきましては、これは法制上やむを得ないのかもしれませんが、国民というよりは、むしろ個人の、外国人も含む問題だろうと思うんですが、併せてそれも付言していただければ幸いです。 以上です。 |
○ |
倉澤部会長 どうか、お願いいたします。 |
○ |
松田副室長 まず、政府の方では特別な組織をつくるのかどうかという点でございますが、一応基本法制に関する最終報告が出ました段階で、各省庁それぞれ必要であれば、それぞれの立法措置を講じていただくということになるわけでございますけれども、今、内閣官房という立場で個人情報保護担当室というのが、来年の基本法制が成立するまでの間はそういったことを見るという組織としてございます。 その後、どうなるかについては、まさにこの基本法制の結果、どのような監視機関が設けられるのか、設けられないのかよくわかりませんけれども、そういったことと関係してくる問題でございますので、まだはっきりしておりませんが、来年の夏ぐらいまでは現在の体制でやっていくということでございます。 それから、2番目に、自己の情報に関する適切な管理ということでございますが、これは基本的にこの法制が自己規律というものを基盤に据えているものでございまして、この点は、この法律の精神ということでございまして、開示、訂正とかいろいろな意味で、まず自分自身で十分気を付けなさい、問題が生じた場合には自分自身で対処しなさい、必要な場合にはそれなりの支援をしますという形になっておりますので、そういう基本的な精神を規定しているところでございます。また、これは検討部会の中間報告でも、たしか国民もそれぞれということが盛り込まれておりまして、それを受けたものでございます。 以上でございます。 |
○ |
倉澤部会長 ありがとうございました。ほかに。 よろしゅうございますか。ただいま御説明にありましたように、この個人情報保護基本法制に関する大綱案の最終報告が取りまとめられ、公表されるとのことでございますので、我々の第二部会で取り扱います個人信用情報につきましては、基本法の検討状況を踏まえながら、金融庁発足後の新しい金融審議会においても引き続き検討していただくことになると考えます。どうぞ、今後とも御関心をお持ちいただきたいと思います。 堀部先生、松田副室長、どうもありがとうございました。 それでは、本日最後の議題に移ります。 先月末に公表されました、「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する基本的な考え方」及び「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)(案)」につきまして、金融再生委員会及び金融監督庁から御説明をいただきます。 それでは、よろしくお願いいたします。 |
○ |
藤原監督庁審議官 金融監督庁の審議官の藤原でございます。座らせていただきます。中身の御説明に入ります前に、これまでの経緯についてちょっと御説明させていただきたいと思っております。 御案内のように、昨年の暮れに、具体的にはイトーヨーカ堂さんですが、異業種の方から子銀行をつりたいというような御表明がございまして、それを受けまして金融再生委員会事務局、それから金融監督庁でこの1月に、PT、プロジェクトチームをつくりまして検討を重ねてまいりました。 プロジェクトチームにおきましては、海外調査等も含めまして欧米の制度も調査してまいりました。そういうようなことを踏まえまして、検討を重ねてきたわけでございます。さらには、金融再生委員会で御議論をいただいたわけでございますが、その結果、先月の30日に金融再生委員会としての一応の結論を得られました。これをパブリック・コメントに付して、再度もう一回検討して決議をするというような段取りになっております。 パブリック・コメントは、6月30日までということでございます。現在、いろいろな問い合わせ等ございますが、パブリック・コメント自体につきましては、まだ個人の方々から数件あるというような状況でございまして、関係業界、あるいは関係団体とかはまだ来ておりません。今はそういう状況でございます。 それでは中身につきまして、実際、これをつくりました長谷川補佐の方から御説明させていただきます。 |
○ |
長谷川監督庁銀行一課補佐 金融監督庁の銀行監督第一課の総括課長補佐をさせていただいております、長谷川と申します。座らせて御説明させていただきたいと思います。 お手元の資料の右方に19−4と書いてあります資料に沿いまして、御説明したいと思います。 この資料の構成でございますが、1枚目は、パブリック・コメントを求めている表紙でございます。その後に別紙1と2がございまして、別紙1は、異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対します基本的な考え方を述べたものでございます。別紙2は、この基本的な考え方を踏まえまして、現行法の枠内で免許審査・監督を行っていく際の指針として検討したものでございます。この別紙2について、パブリック・コメントを現在求めているところでございます。 それでは、別紙1をまずお開きいただきまして、これについて簡単に御説明したいと思います。時間もありませんので、かいつまんで御説明させていただきたいと思います。1では、こういった異業種による銀行業参入等の新たな形態の銀行業につきまして、三つの形態に分けて紹介しておりますが、一つは事業会社等の異業種による銀 行業参入、すなわち事業会社が子会社等によって銀行を持つという場合であります。 2番目が、コンビニ等の店舗網にATMを設置し、主に決済サービスの提供を行う業務形態。特に決済サービスの提供を行うというところは、いわゆる決済専門銀行とか、ナローバンクと言われているものでございます。 それから、3番目には店舗網を持たず、インターネット上でのみサービスの提供を行う業務形態、いわゆるインターネット専門銀行と言われているものであります。こういった三つの形態は、従来の伝統的な銀行業にはない、新たな形態の銀行であります。こうした動きについては、金融再生委員会、金融監督庁としては金融技術の革新、競争の促進等を通じて我が国金融の活性化や利用者利便の向上等に寄与する可能性があるということで、前向きにとらえております。 ただ、2.でこうした新たな形態の銀行業につきましては、新たな形態に伴う新たなリスクないし問題があるのではないか、と考えまして、5点の問題に整理しております。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 3.につきましては、こういった考え方で、今回、運用上の指針案というものを決定したということを言っております。3の後段ですが、読み上げますと、「もとより、新規に参入する銀行においても、決済機能や金融仲介機能の担い手として、通常の銀行と同様、十分な財産的基礎、適格な人的構成、内部管理体制等が求められることになる」ということで、現行の銀行法におきましても免許審査基準等が既にございまして、このようなことを求めております。当然、これらは新しい銀行においても求められるわけでありますが、それ以外に、新しい形態に伴うリスクについて、今回は検討したらどうかということであります。今後、この指針が確定された後は、これらの点も含め、本指針を踏まえ、免許審査や免許後の監督において十分なチェックが行われることになるということでございます。 4.は、今回、検討しましたのは、現時点で想定し得る主な問題点に対する基本的な対応方針であるということでありまして、今後、金融技術の革新やイノベーション等が想定されますので、その場合には、別途の検討が必要になるということを述べております。 それから、5.は制度改正の問題について付言しておりまして、少し読み上げさせていただきますと、「現行法令上、免許付与後、銀行の主要株主の変更を事前に把握し、銀行の健全性確保に支障をもらたすような不適格な株主を排除する権限は、監督当局に付与されていない。そこで、いわゆるバーゼル・コア・プリンシプルの要請や主要先進国の制度等を踏まえ、銀行の健全性確保の観点から、銀行の健全性に支障をもたらすような不適格な主要株主を把握し、これを排除し得る権限を監督当局に付与すること等について、今後、金融審議会等において早急に検討を開始するよう関係当局に要請したい」ということで、大蔵省にお願いをしているところでございます。 (注)にバーゼルのコア・プリンシプルを書いておりますが、原則3は、「免許の付与の際に免許付与当局は、あらかじめ免許付与の基準を設定して、一定の基準に満たない企業の申請を却下する権限を有していなければならない。免許付与のプロセスでは、最低限、銀行の株主構造、取締役等に対する評価を行わなければならない。これは現行の銀行法でも免許制をしいておりまして、免許審査基準を設定しておりますので、今回の運用上の指針と併せまして、この原則3についてはほぼ満たしているかと思いますが、原則4につきましては、「銀行監督当局は、現存の銀行に対する主要な所有権や支配力を他の主体に委譲させる提案を点検し、棄却する権限を持っていなければならない」ということで、免許付与後の主要株主の変動につきまして、提案を点検し、棄却する権限を持っていなければならないとしておるわけでありますが、現行の銀行法では、この辺の制度がございませんので、このような制度の整備について検討を開始していただく必要があるのではないかということを、私どもは問題意識として持っております。 それから、5.の後半でございますが、銀行の他業禁止の緩和等、異業種の銀行業参入問題とは裏腹の関係にある規制緩和の問題についても、本年3月末に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(再改定)」に沿って着実に検討を行うこととし、このうち制度改正が必要な事項については、金融審議会等において併せて検討することを要請したいということを述べております。 以上が基本的な考え方でございまして、ページをめくっていただきまして、別紙2の方の運用上の指針でございますが、これも簡単に御説明させていただきたいと思います。 この運用上の指針(案)でございますが、大きく二つの構成に分かれておりまして、ローマ数字のIが新たな形態の銀行業における主な問題点、先ほどの1.から5.までの問題点を、それぞれにつきまして免許審査や監督上の対応について書いたものでございます。 最後のページ、6ページのところでございますが、ローマ数字のIIのところは、既存銀行等への適用ということで、この運用上の指針のうち、免許審査の問題は既存銀行には関係ないわけでありますが、免許後の監督上の対応につきましては、同じ形態を持つ既存銀行、例えば事業会社を親会社に持つような銀行については、監督上の対応については同じように適用していこうと、こういう考え方を示したものであります。 それでは、戻っていただきまして、ローマ数字のIのところですが、最初の問題が、1.の子銀行の事業親会社等からの独立性確保の観点であります。(1)基本的考え方ですが、「銀行の経営の健全性を確保するためには、経営の独立性の確保が前提となるが、銀行の経営方針に重要な影響を及ぼし得ると想定される主要株主に事業会社等が存在する場合には、当該事業会社等(以下「事業親会社等」という)の事業戦略上の要請によって、子銀行の健全性が損なわれることのないよう、銀行経営の独立性の確保について、特に留意する必要がある。」 この主要株主につきましては、銀行の経営方針に重要な影響を及ぼし得るというふうに、企業会計基準の実質影響力基準の考え方を持って来まして、基本的には議決権の20%以上を自己の計算において所有する株主ということで、(注)で定義しております。 (2)以下でございますが、具体的な免許審査、それから免許後の監督において留意すべき事項でありますが、a.が免許審査において確認すべき事項であります。ア)からウ)までございますが、ア)は、「事業親会社等の有無、並びに事業親会社等が存在する場合、その概要及び事業戦略における子銀行の位置付け等」ということで、例えば子銀行を機関銀行のようなことにしないかどうかということをここでチェックしようという趣旨であります。 イ)は、「子銀行の経営陣が常に銀行経営の健全性を最優先として、独立して経営判断を行う経営体制が確保されているかどうか。例えば、子銀行の役員が事業親会社等の役員又は職員を兼任すること等により、子銀行の経営の独立性が損なわれていないか。」 それから、ウ)は、「事業親会社等の店舗を共有する場合等において、銀行業務の一部を事業親会社等に委託したり、事業親会社等の職員が銀行員を兼職すること等により、保安上ないしリスク管理上、銀行業務の健全かつ適切な運営が損なわれていないか。」例えば親会社がコンビニの場合に、コンビニの職員が子銀行の銀行業務の一部を委託を受けて預金の受け付けをする等により、保安ないしリスク管理上の観点から問題が起きるようなことになっていないかという点であります。 ページをめくっていただきまして、括弧にありますように、こういった問題は新銀行に限らず、今、既存の銀行でも行われているコンビニにATMを設置する等のインストアブランチ一般の形態に適用される問題であります。 b.は、免許後の監督において留意すべき事項でございますが、ア)は、「免許付与後、事業親会社等に該当する主要株主に変動がある場合には、子銀行に対し、当局に速やかに報告するよう求める。」これを免許の条件としております。 イ)は、免許付与後の子銀行の経営の独立性や、銀行業務の健全かつ適切な運営の確保の状況等について、子銀行に対する検査ないし報告徴求等により確認するというふうにしております。 次が、2.でございますが、事業親会社等の事業リスクの遮断の観点でございます。(1)基本的考え方は、「銀行経営の独立性が確保されたとしても、事業親会社等の経営悪化等、子銀行の意図しない事業親会社等のリスクが子銀行に及ぶ可能性がある。特に、子銀行と事業親会社等とが営業基盤を共有しているような場合には、事業親会社等の破綻等に伴い、子銀行の営業基盤が一気に失われるおそれ(共倒れリスク)がある。」例えば親会社がコンビニの場合に、コンビニが破綻してしまいますと、コンビニにATMを置いてそれを営業基盤としているような場合には、そのような子銀行の営業基盤についても一気に失われるおそれ、これを共倒れリスクと言っておりますが──があるということでございます。こうしたリスクに対応するためには、現行の大口信用供与規制及びアームズ・レングス・ルールの遵守は当然のことであるが、以下のような諸点について留意する必要がある。 (2)ですが、a.で、免許審査において確認すべき事項。ア)は、これはリスク遮断策が十分講じられているかどうかということで、これは基本的には申請者の方でつくっていただくわけですが、この運用上の指針では、当該方策には、最低限、以下の項目が含まれている必要があるとしております。 三つございまして、 ![]() それから、2番目は、事業親会社等の業況悪化や事業親会社等による子銀行株の売却等、事業親会社等に起因する種々のリスク、シナジー(相乗)効果の消滅ですとかレピュテーショナルリスク等に伴う株価の下落・預金の流出、あるいは取引先の離反等、こういった種々のリスクをあらかじめ想定し、それによって子銀行の経営の健全性が損なわれないための方策、例えば収益源の確保ですとか資本の充実等を講じるということであります。 それから、3番目は、特に、子銀行が事業親会社等の営業基盤を共有しているような場合には、事業親会社等の破綻等に伴い、営業継続が困難とならないような措置を講じること。この三つを最低限のリスク遮断策として考えております。 それから、イ)でございますが、「上記のリスク遮断策によっても、完全に事業親会社等のリスクを遮断することが困難な場合も想定され、事業親会社等の経営リスクに伴う子銀行の経営悪化を早期に把握する観点から、子銀行の経営に影響を及ぼし得る事業親会社等の業況について確認する。」 ページをめくっていただきまして、3ページでありますが、「具体的には」として、免許申請者の収支の見込や社会的信用、これは現行の銀行法の審査基準でございますが、これを審査するに当たって、当該事業親会社等の財務状況や社会的信用等についても十分勘案すること。その際、免許申請者に対し、事業親会社等の直近の決算期の財務諸表及び監査報告書並びに当該監査報告書の内容が適正であることを監査した他の監査法人による報告書等の資料の提出を求めることとするとしております。 (注1)でありますが、監査報告書と併せまして、当該事業親会社等がゴーイング・コンサーン、継続企業としての存続可能性について特段問題がない旨の監査法人等の意見書の提出を求めることにしております。これは監査基準にこういったことを盛り込むべきかどうかにつきましては、企業会計審議会等において検討されているかと思いますけれども、ややこれを前倒しいたしまして、制度として要求することはできませんが、任意のものとして審査の参考となるべき書類として提出していただくということでございます。 それから、監査報告書が適正であることを監査した、他の監査法人による報告書ということで、いわば監査法人にもダブルチェックをお願いしようと考えておるわけでありますが、これについては(注2)にありますように、一定以上の格付、これは基本的にはシングルA以上を想定しておりますが、一定以上の格付を取得している者については、こういったダブルチェックは省略することとしております。 それから、(注3)は省略いたしまして、b.の免許後の監督において留意すべき事項ですが、ア)免許付与後のリスク遮断策の履行状況。この申請者において作成され、また免許付与当局において確認して、これが妥当なものであるというふうに確認したリスク遮断策につきましては、免許付与後に確実に履行していただくことを免許の条件にすることにしております。この免許付与後のリスク遮断策の履行状況については、子銀行に対する検査ないし報告徴求等により確認することにしております。なお、リスク遮断策の履行状況に問題がある場合や、当初予定していたリスク遮断策では不十分である場合には、場合によっては銀行法第26条に基づく業務改善命令を発出することもあり得るということであります。 次に、イ)ですが、免許付与後の事業親会社等の業況等については、定期的に、基本的には半期ごとというふうになりますが、子銀行に対し、事業親会社等の財務諸表、監査報告書等、事業親会社等の経営状況・財務状況を示す資料の提出を求める。これを免許の条件といたします。これによって確認することにしております。仮に、事業親会社等の経営に問題があると判断される場合には、子銀行の経営に対する影響及びその場合の対応策等について子銀行に対し報告を求めるということであります。 以上が2.であります。 3.事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報保護の観点ですが、基本的な考え方は、「顧客の個人情報の保護は、一般に、銀行が適切な業務運営を営む上で必須の事項であるが、事業親会社等と子銀行の関係においては、両者のシナジー(相乗)効果を図る観点から、特に、顧客状況を相互に活用することが予想される。そのため、顧客の個人情報の保護が十分図られているかどうかについて確認する必要がある。」本問題は、この前の御説明にもありましたように、個人情報保護法の法制化に向けた検討がなされております。したがいまして、将来、法制化された場合には、当然、各銀行は、当該法律の規制に服することになりますが、現段階では、当面、以下の点に留意する必要があるということで書いております。 a.の免許審査において確認すべき事項でありますが、具体的には、顧客情報を相互に利用する場合には、最低限、事前に、利用する業者の範囲、利用目的、利用方法等を明確にした上で、顧客本人の明示的な同意を得ることを必要とする運用体制となっているかどうかを確認するとしております。 免許後においては、こういった体制が確実に履行されているかどうかを確認するとしております。 次に、4.の資産構成が国債等の有価証券に偏っている場合のリスク管理や収益性の観点であります。 (1)基本的考え方。「銀行の資産構成が貸出ではなく国債等の有価証券に偏っている場合には、現行の信用リスクを中心とした自己資本比率規制の下では、信用リスクはほとんどないことから所要自己資本額は極めて小さくなるが、伝統的な銀行業とは異なる業務形態に鑑み、金利リスク、事務リスク等のリスク特性に見合った自己資本が必要である。」 また、「伝統的な銀行業に想定される信用リスクを取らない場合には、信用リスクに対応するリターン(収益性)も期待できないことから、将来の収支見通しについては、この点も勘案した審査が必要である。」 現行の自己資本比率規制は、分母はリスクアセットになっておりますので、リスクのない国債を持っている場合には、基本的には分母がゼロに近くなりまして、したがって、分子の方の所要自己資本も限りなく小さくて済むということになりますが、他方で国債を運用する場合には、金利リスク、あるいは価格変動リスク、あるいは事務リスク等の種々のリスクが考えられます。こういったリスクに見合った自己資本が必要ではないかということであります。 この点については、事務リスク、あるいは金利リスクに見合った自己資本比率規制については、現在、バーゼルの銀行監督者委員会でも議論がされているところでありますが、まだ現在、具体的な指針は出ておりませんので、ここでは基本的な考え方を説明しているわけであります。 (2)具体的な免許審査において確認すべき事項でございますが、「ア)銀行の資産構成が貸出ではなく国債等の有価証券に偏っている場合には、伝統的な銀行業とは異なる業務形態に鑑み、金利リスク、事務リスク等のリスク特性に見合った自己資本となっているか、あるいはALM管理(資産負債管理)等のリスク管理が適切に行われるような体制となっているかどうか。」 「イ)将来の収支見通しの審査に当たっては、収益源をどこに求めるのか、その収益源は確実かつ将来にわたり安定的と見込まれるか、収益の前提となる諸条件について見込みを下回った場合の対応策が講じられており、そのような場合でも一定の収益を見込めるか」ということで、リスクをとらない場合にはリターンも考えられないわけですが、その場合には一体どこに収益源を求めるのかといったことも、留意すべき事項として考えております。 ウ)は、「全国的に決済業務となる場合は、確実な決済、ファイナリティの確保が見込まれるかどうか」ということで、具体的には日銀ネットに入るということが考えられるかと思います。 ページをめくっていただきまして、b.の免許後の監督において留意すべき事項。基本的には、これは免許審査時に確認したものが免許後においても履行されているかどうかについて確認しているということが基本でございます。 5.に移らせていただきますが、有人店舗を持たずインターネット・ATM等非対面取引を専門に行う場合の顧客保護等の観点。基本的考え方でありますが、「インターネット等による電子金融取引は、既存銀行において既に取扱いを開始しており、規制のあり方や監督方法を電子取引の特性に対応したものへと見直すことにより、実効性のある利用者保護を図る必要が生じている。 特に有人店舗を持たず、専らインターネットやATM等の非対面取引を専門に行う銀行については、従来有人店舗が果たしてきた機能を、適正なルール及び行内の態勢整備等を行うことにより他の手段で代替する必要がある。また、ITを活用した新たなサービスの提供にあたっては、一般の利用者が特別の訓練を経ずに安全かつ簡便に利用できるような仕組みが整えられている必要がある。」 以上のような観点を踏まえまして、具体的な指針を下に書いてございます。また、これにつきましては、金融監督庁も「金融サービスの電子取引と監督行政に関する研究会」の報告書(12年4月18日)もございまして、こういった指摘も踏まえて見直しを行うことにしております。 (2)の方ですが、a.で免許申請において確認すべき事項。ア)ですが、「以下に掲げる事項について、無店舗営業であっても適切に対応し得るための態勢が整備されているかどうか」ということで、顧客からの苦情・相談の対応やシステムダウン等に伴う顧客対応、法令に基づく顧客への説明義務の履行、ディスクロージャーの履行、マネーローンダリング防止等の観点からの本人確認業務の履行、こういった点が無店舗営業であっても適切に対応できるのかどうかを確認することにしております。 それから、イ)については、収支見通しについては、こうした新しい技術を使う場合には、次々と競合者が参入したり、あるいはあっという間にシステムが陳腐化するということも考えられますが、こうした環境の悪化に伴う対応方策が確立しており、その場合でも一定の収益を見込めるような計画となっているかどうかを確認することとしております。 ページをめくっていただきまして、ウ)ですが、さらにこうしたインターネットバンキング等の顧客層といいますのは、金利等の条件にかなり敏感であろうと。また、こうした取引は、取引の解約や変更がパソコン画面上で容易になされると。こういった特性に鑑み、顧客の一時大量流出ということも考えられるわけですが、それに備えた流動性確保のための方策が確立しているかどうか。 さらには、エ)ですが、システムのセキュリティのレベルが十分な水準に達しているかどうか。システムの安全管理体制(外部委託先の管理を含む)や障害発生時の危機管理体制等が適切に講じられているかどうか。この点については、金融監督当局もそれほど専門的ではございませんので、外部評価機関の評価書類というものを提出させることにしております。 免許後の監督においては、このように免許審査時に確認した対応策の履行状況につついて確認するということにしております。 以上が1.から5.の問題点に対する現行法制下での対応策でございます。 大きなIIは、先ほど申しましたように、既存銀行等の適用ということで、上記I.に掲げた監督上の留意点は、既存の銀行を事業会社等が買収した場合、既存の銀行が顧客の個人情報を活用する場合やインターネットバンキングを行う場合等、同様の形態を持つ既存銀行の監督においても、基本的に適用することにしております。 最後のパラグラフは、上記I.の1.から3.に掲げた、事業会社が銀行を持つ場合の免許審査・監督上の留意点は、事業会社が間に銀行持株会社を保有する場合についても適用することにしております。 簡単ではございますが、以上で説明を終わらせていただきます。 |
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倉澤部会長 どうもありがとうございました。 ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。 翁委員。 |
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翁委員 今回、こうした指針をまとめていただきましたことは、一時は銀行法改正をしてからというような議論もございましたので、その意味では非常にスピーディに対応していただきましたし、おおむねこうした方向ということでよろしいのではないかと思うんですが、幾つか、2点ばかりちょっと申し上げたいんですが、一つは、やはり免許申請の際にどのぐらいこの裁量性を排除して透明な形でやっていくかということが一つの大きなポイントになると思うんですが、例えば収支見通しというところで、4ページの(2)のイ)のところで、収益計画についての審査というのが一つ書いてありますけれども、一定の収益をどの程度見込めるのかといったところに関して、ナローバンクのような決済専門銀行のようなものを想定した場合に、どの程度の収益をもって免許申請でオーケーと考えるのかというようなところについて、今後、透明性を配慮しつつどういった基準を設けていくのかということについて、どんな議論が行われ、どんなお考えを今お持ちになっておられるのかということを一つお伺いしたいのと、あともう一つは、欧米などではよく議論されているものだと思うんですけれども、例えば子銀行がおかしくなったような場合に、親銀行にどんなサポートを求めるのか。またはサポートを求めるのか求めないのか。そういったことは、むしろ財務状況が親会社がオーケーであれば、そういったことについては特に考えていないのか。そういった点について議論が行われたのかどうか。またはその背景とか、その辺のところを教えていただきたいんですけれども。 |
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倉澤部会長 どうかお願いいたします。 |
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長谷川監督庁銀行一課補佐 1番の点にまずお答えいたしますが、一定の収益といいますのは、基本的には経費を賄えるほどの収益ということで、すなわち赤字にならない、赤字が連続して続くというようなことにはならない程度、すなわち黒字がある程度確保できるということを想定しているということでございます。 |
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藤原監督庁審議官 翁委員の2番目の御質問でございますが、確かに欧米等におきましては、子銀行が調子が悪くなったというときに、親会社がそれを支援するというようなことが求めれられているというような状況にあることは、承知いたしております。ただ、必ずしもそれは法律的にそれを必ずきちっと決めているというような状況ではないというのも、また事実でございます。 従いまして、ここにつきましてはいろいろと議論があったわけでございますが、先ほど申し上げましたような親会社と子銀行のリスク遮断策というのをきちっとやり、親会社の状況等もはっきり把握し、かつ子銀行につきましても、先ほどから申し上げておりますようないろいろなリスクにつきまして、十分な対応をあらかじめとっておくということで対応できるのではないかというふうに、今のところは考えております。 いずれにいたしましても、その点も含めましてパブリック・コメントを求めているわけでございますので、また御意見ございましたら、よろしくお願いしたいと思っております。 |
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倉澤部会長 山下委員、どうぞ。 |
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山下委員 ちょっと議題を超えるかもしれませんので、意見ということで結構ですが、銀行についてこういう今回の監督上の対応措置を整備して、かつ必要な点については法改正を行うということになると、保険会社の方も同じようなことが、これは本来必要なのではないかと思います。保険会社の方は既に事業会社を親会社とするものがあって、特に弊害が生じていないではないかということはあるかと思いますけれども、やはり考え方としては同じになるのかなということでございますし、諸外国でも、今回、銀行について法改正を考えているような点については、大体法制度が保険についても整備されているというふうに理解しておりますので、その点、何らかの御検討をいただければというふうに考えております。 |
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倉澤部会長 何かございますか。それと御意見として……。 |
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藤原監督庁審議官 確かに保険についても似たような状況というのは、最近いろいろあると思いますが、ただ、まさしく銀行というのは最終的な決済手段であるということで、位置付けはおのずと若干違うのではないかと私は思っておりますが、いずれにせよ、今、山下委員の御指摘の話は、むしろこれから金融審議会等でその辺の御議論をいただければというふうに思っておるところでございます。 |
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倉澤部会長 森本委員、どうぞ。 |
○ |
森本委員 経営の独立性の確保の関連ですが、主要株主、もしくは事業親会社等という概念でいろいろのチェックをしようということのようですが、それは会計上の関連会社なり何なりの基準をベースにするということで、それは一つの方策なんでしょうが、やはり会計上の関連会社概念とこの独立性確保とは、むしろ逆に──逆とは言いませんが、ちょっと目的が違うので、既にある基準を採用されることは一つの合理的な観点だと思うんですが、原則とありますように、数量基準とともに実質基準を入れておりますと、昨今の流れに反するようなことを言うのかもわかりませんが、相当の、実質的な判断をするという意味では裁量をしなければいけない。むしろこちらの場合にはある程度大胆に、少なくともノーと言うのではなくて、オーケーは出すけれども、きちんとした銀行の経営の独立性を確保するために実質的なチェックをするんだという観点からですので、従来の財務諸表規則の関連会社基準と形は同じでも、やはり運用は異ならざるを得ないのではないかと思うんですが、そこら辺のことを少しお教えいただければと思うんです。 |
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倉澤部会長 どうぞ。 |
○ |
長谷川監督庁銀行一課補佐 この点につきましては、いろいろ御議論がございまして、例えばヨーロッパでは10%以上を基準に見ているということのようでございまして、いろいろな議論があったわけでございますが、一番わかりやすいのは、過去に既に確立している基準を持ってくるのが一番理解が得られるかなと思いまして、企業会計基準の実質影響力基準をとりあえず持ってきたということでございます。 なお、国内会社については企業会計基準がございますが、個人ですとか、あるいは外国法人等が親会社になる場合もございますので、その場合には明確性を重んじて一律20%ということにしてございます。 |
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森本委員 そうすると、原則というのはその趣旨の原則で、20%は別にいろいろな、例えばアメリカなんかでも経費的な持株比率とともに実質的な関係からいろいろと配慮するような定めがあると思いますが、そういうことを余りお考えになっていないということですか。 |
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長谷川監督庁銀行一課補佐 国内会社を株主にする場合には、銀行をまさに企業会計上の子会社、あるいは関連会社としているかどうかというところを基準にするということで、ある意味ではそこはもう一律の基準であるということでございます。 |
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倉澤部会長 ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。 坪井委員、どうかお願いします。 |
○ |
坪井委員 これは持株会社でも許可をするということになりますと、連結決算との関係が出てくると思うんですけれども、これだけの規制をかけられてしまっては、ちょっと実際は決済銀行くらいの仕事きりできないのではないかということになると、規制緩和の、いわゆる考え方の方からいくと、少し私は矛盾するのではないのかなと。もう少しやはり、独立した銀行にしなさいということであれば、かえって素直な形で、言うなれば新しい銀行として運用してもらう。そうすると、さっき言った利益の部分についてもはっきりしてきますし、言うならば、その後の継続運営についてもきちっとした独立会計を持てると思うんですが、そういう部分についてはいかがなものですか。 |
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藤原監督庁審議官 ちょっと質問の趣旨がよくわからないんですが、今回の規制というのは、現行の銀行法上の審査基準で欠けている部分といいますか、新たな事態に対応してちょっと欠落している部分につきまして、それを補足するという意味で整えさせていただいたものでありまして、原則を大幅に変えるとかいうものではございません。したがいまして、多分念頭に置かれているのは、3年後に黒字転換というようなお話かと思いますが、それにつきましては、全体として基本方針を変えない中で、今回はそこについては触れておりません。まさしく新しい資本の形態であるとか、新しい営業の形態であるとか、新しい店舗の形態であるとか、そういうものについて、従来基準がはっきりしていなかったというところについて、今回、補足的にやったという趣旨だというふうに御理解いただければと思っております。 |
○ |
倉澤部会長 奥オブザーバー、どうぞ。 |
○ |
奥オブザーバー 銀行界としましては、目下、この別紙2でございます運用上の指針につきまして、パブリック・コメントをまとめているわけでございまして、1点あえて、ここにも書いてあることなんですが、お願いということで、別紙1の方でございまして、別紙1の5.に「最後に付言すれば」ということで、最後の規制緩和云々というところでございまして、基本的には銀行の他業禁止の緩和等、異業種の銀行業参入問題とは裏腹の関係にある規制緩和の問題についても、本年3月末に閣議決定された云々ということで、着実に検討を行うこととし、このうち制度改正が必要な事項については、金融審議会等において併せて検討することを要請したいと、こういうふうに書いていただいておるわけでございまして、私ども、別にバーターと云々ということではなくて、規制緩和3年計画がきちっとされているということでございますが、銀行法改正というようなことがこの金融審議会で早急に行われるというようなことになったケースにおきましては、ぜひともそういう意味での銀行の業務範囲の拡大ということについても併せ御検討をいただきたいということを、あえて一言だけ申し上げさせていただきます。 |
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倉澤部会長 御意見として伺っておくということでよろしゅうございましょうか。 |
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奥オブザーバー はい。 |
○ |
倉澤部会長 ほかにございましょうか。 時間も経過してしまいましたので、これでこの議題を終わらせていただいてよろしゅうございましょうか。 |
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○ | 倉澤部会長 どうもありがとうございました。 どうも監督庁の方、ありがとうございました。 本日の議事は、これで一通り終了いたしました。今回の会合をもちまして、大蔵省における金融審議会第二部会の活動は終了となり、今後の検討は、金融庁に設置される金融審議会に引き継がれることとなります。 この第二部会が発足してから約1年半が経過いたしましたが、その間、「安心で活力ある金融システムの構築」というテーマにのっとりまして、預金保険制度等の在り方、保険相互会社の株式会社化、保険会社の破綻処理法制及びリスク管理の問題、個人信用情報の保護・利用の在り方、そして規制緩和の問題と、極めて多岐にわたる、そしていずれも極めて重要なテーマに取り組んでまいりました。 1年半の間にこれだけの実績、評価は他に任されなければならないのかもしれませんが、自負していいと思います実績を上げることができましたのは、ひとえに御多用の中、熱心に御討議に参加いただきました委員、オブザーバー及びワーキング・グループメンバーの方々のおかげでございます。さらには、大変献身的に御準備をしていただいた事務局の方々のおかげでもございます。ここで部会長、最後の場で心からお礼を申し上げます。なお、皆様の熱心な御協力にもかかわらず、私の力足りなさのために非礼にわたったことも多々あるかと思いますが、まとめておわびを申し上げさせていただきたいと思います。 それでは、ここで事務局を代表いたしまして、福田金融企画局長より御挨拶をいただきます。お願いいたします。 |
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福田金融企画局長 福田でございます。大蔵省のもとでの金融審議会第二部会が終了いたしましたので、一言御礼の御挨拶をさせていただきます。 第二部会委員の皆様並びにオブザーバーの皆様におかれましては、審議会の活動に御尽力いただきまして、どうもありがとうございました。倉澤部会長がただいまお述べになりましたように、この第二部会では「安心で活力ある金融システムの構築」ということで、さまざまなテーマにつきまして、昨年は夏休みも返上していただきましたが、これまで計19回に及ぶ精力的な御審議をいただいております。また、ワーキング・グループが複数設置されましたが、これにつきまして延52回という大変多くの回数にわたる実務的、専門的な検討を行っていただいたわけでございます。 このような成果がこれまで金融審議会答申として特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理の在り方についてを初めとしまして、保険相互会社の株式会社化に関するレポート、保険会社のリスク管理と倒産法制の整備、それから個人信用情報保護・利用の在り方に関する論点等々、さらに、本日御了承いただきました報告等々、累次の報告書として公表されてまいりまして、その内容につきましては御案内のとおり、先ほどの通常国会におきまして、セーフティネット関係二法として結実いたしました。 申し上げるまでもないんですけれども、これから情報技術革新ということが進んでまいりますと、金融システムの担う役割というのもますます増大してくると存じます。大変経済生活にも重大な影響を及ぼす存在となっておりまして、安心で活力ある金融システムを構築するという意義は、以前にも増して大きなものとなってきていると思っております。 何分、大変スピードが速いものですから、将来の金融システムの姿を探ってできるだけ早目に手を打つという作業は、決して容易ではないと存じますが、これまでこのような難題に積極的に取り組んでいただきまして、21世紀にふさわしい新しい金融システムの構築に向けて揺るぎない一歩を記していただいたと存じております。 これまでの事務局の不手際につきましてお詫び申し上げますとともに、委員の皆様方の御尽力、また、達成されました成果に対しまして、事務局を代表いたしまして厚く御礼を申し上げさせていただきます。 大変簡単でございますが、私の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。 |
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倉澤部会長 どうもありがとうございました。 なお、金融庁移管後の審議会の活動等につきましては、追って事務局より皆様方に御連絡があろうかと思います。 それから、最後に事務連絡を一つ私から申し上げます。 ただいま申し上げましたように、本体制下の金融審議会が今月いっぱいで区切りとなります。2年間に及ぶ皆様の御尽力に感謝し、また、メンバー及び事務局の労をねぎらう意味で、27日の総会終了後午後6時より審議会の総会及び部会参加者と事務局の懇親会が企画されているということでございます。場所等詳細は、追って事務局より御連絡がいくかと思いますけれども、私、別に発起人ではないんですけれども、こういうにぎやかなことが好きな方でございますので、買って出まして、皆様方、奮って御参加いただきますようお誘い申し上げますということを申し上げます。 それでは、本日はこれにて散会といたします。これまで1年半、本当にありがとうございました。 |
(以 上)