9年8月27日
                                                                            


個人信用情報の保護と利用に関する主な論点

                                                                            
  │  当懇談会は、これまで5回にわたり、個人信用情報の保護と利用に関する国│
  │内外の制度的枠組みや法制について現状把握等を行ってきたが、今後の議論に│
  │資するため、今般、事務局において、現段階における主な論点をとりあえずと│
  │りまとめた。                                                          │
  │  以下に掲げる論点は、非常に多岐にわたるとともに、相互に関係しているこ│
  │と、また、このほかにも個人信用情報の保護と利用に関する論点があり得るこ│
  │と等から、当懇談会としては、関係者に対するヒアリングも行いつつ、引き続│
  │き幅広い検討を行う必要があると考えている。その過程において、論点の追加│
  │・修正が随時あり得ることに留意されたい。                              │
                                                                            
  1.懇談会におけるこれまでの議論                                          
                                                                            
   (1)  懇談会においては、以下の基本的な視点について概ね意見が一致している。
    ○  現行の与信システムでは、通達を主体とした規制により、一定の措置は図ら
      れているものの、個人信用情報について、消費者(情報主体)の権利や業者側
      における情報管理等に関するルールが明確でなく、その明確化が望まれること
        また、ルールの遵守を確保するための措置が望まれること。              
    ○  ルールの明確化に当たっては、個人信用情報のより適正な利用を積極的に認
      容しつつ、消費者のプライバシー保護を図る必要があること。              
        また、ルールの明確化に当たっては、グローバルスタンダードとの整合性確
      保に配慮する必要があること。                                          

   (2)  他方、懇談会においては、以下を含む主要な点について、依然意見の相違が
      見られる                                                              
    ○  新たな制度的枠組みの目的について、プライバシーの保護を前提としつつ、
      「多重債務の未然防止を目的とすべき」という意見と、「多重債務の未然防止
      だけでなく、健全な与信システムの確立(健全な債務者が不当に与信を拒否さ
      れたり、信用力に応じた与信供与が受けられない事態の防止)まで視野に入れ
      るべき」との意見がある。                                              
    ○  制度的枠組みの対象者の範囲について、「個人信用情報機関を中心に対象を
      考えるべき」との意見がある一方、「個人信用情報の収集、管理、提供等を行
      う者を広く対象とすべき」との意見がある。                              
    ○  制度的枠組みの対象たる情報の範囲についても、様々な意見がある。      
                                                                            
  2.今後議論すべき主な論点                                                
      これまでの議論を踏まえ、以下のような論点が明らかになった。これらの点に
    ついては、与信業者等関係者へのヒアリングをはじめとする実態分析を踏まえて
    考え方の整理を行った上で、今後更に具体的に議論する必要がある。          

   (1)  基本的事項                                                          
    ○  個人信用情報について、現実の利用実態を踏まえて整理を行い、その範囲を
      明確に定義することが不可欠ではないか。                                
    ○  新たな制度的枠組みにおいて収集・利用が許される個人信用情報は、情報流
      通の実態に応じ、また、制度的枠組みの目的に照らして、必要最小限の範囲と
      する原則を明確にすべきではないか。その場合、保護すべき情報の具体的範囲
      と与信業者、個人信用情報機関等による収集・利用が許される情報の具体的範
      囲をどのように考えるべきか。                                          
                                                                            
   (2)  消費者(情報主体)の権利                                            
    ○  自己の個人信用情報に係る開示請求、訂正・削除請求、異議申立、差止請求
      等消費者(情報主体)の権利について、どこまで認めるべきか、その場合どの
      ような手続きが必要か。                                                
    ○  親族、保証人等本人以外の者からの情報開示請求等をどのように考えるべき
      か。                                                                  
                                                                            
   (3)  規制の対象等                                                        
    ○  個人信用情報の保護と適正な利用を担保する観点から、与信業者及び個人信
      用情報機関の行為を対象にして検討を進める考え方があるが、これで十分か。
        また、与信業者又は個人信用情報機関以外の者が個人信用情報の利用等を行
      うことについて、どのような場合に、どのような要件、手続きのもとに認める
      べきか。                                                              
    ○  消費者(情報主体)との関係、収集・利用される個人信用情報の質・量の違
      い等にかんがみ、規制の対象に応じて、その情報管理に係る義務や規制の在り
      方等は異なると考えられるがどうか。                                    
    ○  規制の具体的な在り方についてどう考えるか。特に消費者(情報主体)から
      の事前同意の具体的な取り方等をどのように考えるか。また、金融機関の有す
      る守秘義務をどう位置づけるか。                                        
                                                                            
   (4)  個人信用情報機関に対する特別の規制                                  
    ○  社会的役割から見て、個人信用情報機関に対する特別の規制は何が必要と考
      えられるか。個人信用情報機関が、その役割と責任を果たすためには、その保
      有する個人信用情報を当該個人に開示する義務、提供する情報の正確性を確保
      する義務、会員たる与信業者に対する適正な利用の監視義務等、個人信用情報
      の媒介者としての役割・責任を明確にすべきと考えられるがどうか。        
    ○  個人信用情報機関の業務内容について、一般公衆に対する積極的かつ十分な
      情報開示が図られることが必要と考えられるがどうか、また、これをどのよう
      に行うべきか。                                                        
                                                                            
   (5)  個人信用情報インフラの充実のための措置                              
    ○  多重債務の未然防止という観点から必要となる残高情報等の交流について、
      どのように与信業者における営業の利益との両立を図るか。                
    ○  適正な与信を受けるためには個人信用情報の提供が不可欠であることについ
      て、どのように消費者に周知徹底させるか。                              
                                                                            
   (6)  担保措置等                                                          
    ○  個人信用情報の適正な取扱いを担保するための措置として、刑罰の適用や行
      政処分等はどこまで必要か。                                            
    ○  消費者(情報主体)の権利を侵害した場合の救済措置はどうあるべきか。  
                                                                            
   (7)  その他                                                              
        電子商取引等における個人信用情報の保護と利用について、どのような制度
      的枠組みが望ましいか。                                                

(参考)個人信用情報の保護・利用の在り方に関する懇談会について

                                                                            
  1.問題の背景                                                          
      消費者金融と販売信用からなる消費者信用取引は、我が国の国民生活に不可欠
    なものとなっているが、その要となっているのが個人信用情報を活用した与信シ
    ステムである。                                                          
      個人信用情報の流通は、最近における個人信用情報機関による情報漏洩問題等
    に見られるように消費者(情報主体)のプライバシーの侵害の可能性を有してい
    る。他方、個人信用情報の適正な利用促進は、与信システムの健全化につながり
    結果として消費者信用取引の健全な発展と消費者利益の増進に大きく貢献するも
    のであり、社会的なインフラとして位置づけられるべきものである。          
      このため、個人信用情報の流通が前提である与信システムの中で個人信用情報
    を如何に保護しつつ、適正な利用を図るかが喫緊の課題となっている。        
                                                                            
  2.これまでの討議内容                                                    
    第1回  平成9年4月17日    問題意識、現状の制度的枠組み等の説明      
    第2回  平成9年5月  8日    諸外国における個人信用情報保護法制の現状  
    第3回  平成9年6月  4日    我が国における個人信用情報保護法制の現状と
                                  問題点                                    
    第4回  平成9年6月24日    主な論点整理ペーパーの討議                
    第5回  平成9年7月31日    主な論点整理ペーパーの討議                
    第6回  平成9年8月19日    与信業者に対するヒアリング                
    第7回  平成9年8月22日    与信業者に対するヒアリング                

個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会メンバー表

                                                                            
                                                                            
            座長  堀部  政男    中央大学法学部教授(情報法)                
                  宇賀  克也    東京大学法学部教授(行政法)                
                  江夏  健一    早稲田大学商学部教授(経営)                
                  京藤  哲久    明治学院大学法学部教授(刑法)              
                  西田  典之    東京大学法学部教授(刑法)                  
                  長谷部恭男    東京大学法学部教授(憲法)                  
                  松本  恒雄    一橋大学法学部教授(消費者保護法)          
                  御船美智子    お茶の水女子大学生活科学部助教授            
                                (消費者問題)                              
                  山下  友信    東京大学法学部教授(商法)                  
                  岩村  充      日本銀行企画局兼信用機構局参事              
                                                                            
                                                          (順不同、敬称略)
                                                                            
                                                                            
                                                                            
      この問題に関するご意見・ご要望がございましたら、下記までお寄せ下さい。
                                                                            
問い合わせ先
大蔵省銀行局中小金融課金融会社室
03-3581-4111(代)    内線5431
通商産業省産業政策局商政課取引信用室 
03-3501-1511(代)    内線2941