1.日時:平成10年4月24日(金) 10時00分〜12時30分 2.場所:合同庁舎4号館4階共用第1特別会議室 3.議題:各省庁等メンバーからの意見発表 4.議事概要: 本日は、当懇談会の各省庁等メンバーである栗田誠・公正取引委員会事務総局経済取 引局調整課長、柴田健・警察庁生活安全局生活環境課生活経済対策室長、藤岡文七・経 済企画庁国民生活局消費者行政第一課長、斎藤浩・通商産業省産業政策局産業資金課長 雨宮正佳・日本銀行企画室企画第二課長から意見発表があり、その後、質疑応答及び自 由討議を行ったが、そこでの主な発言は以下のとおり。 ○ 横断的・機能的な規制への移行に当たっては、既存の縦割りの規制を残したままの 追加的な過重規制とならないよう、競争制限的な規制を改めて見直していくことが必 要である。 ○ 自主規制団体の活動と独占禁止法との関係については、理論面・実態面の双方を踏 まえた議論が必要であり、弊害の防止を図りつつ、実効的な自主規制を行う方策を探 るべき。 ○ 出資法第2条(預り金の禁止規定)の役割としては、経済秩序維持という機能より も、大衆投資家保護という機能が重要となっており、和牛オーナー商法等の実例に照 らして、悪徳利殖業者の抑止効果や被害拡大の防止といった面で、同法の機能は過小 評価すべきでない。 ○ 一般的な消費者取引と同様、金融分野においても、消費者取引の適正化確保に向け ての対応は後追い的となり易い。また、金融の自由化は金融商品の多様化と同時に各 種の悪徳事業者の出現を助長することになりかねないため、消費者取引に関する包括 的・横断的ルールの整備が必要である。 ○ 金融関連の消費者被害は被害が高額・広範囲に及びうること、自己責任原則の下で の消費者の金融サービス利用に向けての意識が十分に醸成されていないこと、消費者 への情報提供が未だ不十分であること等を考慮すれば、国民生活審議会で検討されて いる「消費者契約法(仮称)」の特別法として、新種の金融商品にも対応可能な横断 的な金融サービスに関する法規制が必要となるのではないか。 ○ 新たな金融サービス法制の整備にあたっては、(1)事業法人の円滑かつ効率的な資金 調達に資するものであり、新規事業を含めて多様な事業リスクに対応した資金の供給 が可能となる、(2)事業法人の円滑かつ効率的な資産運用に資する、(3)金融サービス業 務への参入が活発に行われ、多様かつ効率的なサービスの提供を可能にする、といっ た視点が満たされる必要がある。 ○ 規制の中立性、ルールの明確性、税制の中立性を確保するとともに、決済システム の整備、活発な競争の促進、厚みのあるプロの投資家による市場と情報の不均衡が是 正されたアマの投資家による市場の整備を進めていくことが必要であり、これらの目 的達成に資するような法制および制度インフラの整備が求められている。 ○ 金融法制の「新しい流れ」として、(1)縦割り的な法制・行政から横断的な法制・行 政へ、(2)事前的な規制から事後的なチェックへ、といった視点とともに、規制・法制 の具体的なルールの策定およびエンフォースンメントに際して、Command and con‐ trol approach(当局の定めるルールを市場参加者に遵守させる)から Incentive com‐ patible approach(市場参加者の合理的な行動が規制目的に合致するような仕組みと する)への転換により市場メカニズムを最大限活用するといった視点も考えられるの ではないか。 ○ 具体的なルールの策定とエンフォースメントについて、市場メカニズムを利用する ことのメリットとしては、(1)ルールの内容を市場の要請に即応して弾力的に変更する ことが容易であること、(2)ルールの実効性確保に関し、競争を通じた向上が規定でき ることが挙げられる。こうした基本的な方向性のなかで、技術的諸条件や国民の意識 の現状を踏まえ、金融法制と市場メカニズムのバランスをどう図っていくかが課題で はないか。 ○ Incentive compatible approachが主張されてきた背景としては、金融活動の高度化 複雑化に伴い、規制する側と規制される側の情報の非対称性が拡大し、情報劣位にあ る規制当局が市場や業者をコントロールすることが困難かつ非効率となったため、市 場メカニズムを利用せざるをえなくなったということがいえるのではないか。 ○ 完全な自己責任を求めることが困難な主体については、特別な法制による配慮が必 要となる場合があると思うが、そうした主体の線引きについては、商品の普及の程度 や商品の説明手法の進歩等によって変化するものであり、個別の判断については事業 者等の行動準則に委ね、柔軟に対応していくことになるのではないか。 ○ 金融の担い手が多様化し、また、投資信託のように様々な主体が関与する金融商品 ・サービスが拡大すると、どの主体の合理的な行動に合致したルールを考えるかが問 題となるのではないか。大量の資金が、誰のものかはっきりしない形で、国境を越え て動いているという現実も念頭に置く必要があるのではないか。 ○ 「消費者契約法(仮称)」といわゆる「金融サービス法」との関係については、前 者が情報提供や不実告知等に関する民事ルールであるが、後者はこれに加えて幅広い 金融商品・サービスについて民事ルールのほか、刑事ルール、行政ルールおよび紛争 処理機関等に関する必要なルールを設けていくことになるのではないか。 ○ 新しい金融サービス法制のイメージとしては、様々な見方があるように思うが、基 本的な考え方としては、機能面に応じて様々な行為規制を横断的に規定していくこと になるのか。 ○ 業法を中心とする規制体系では、いわゆるワンセット規制によって金融サービスの 担い手が制限されるおそれがあり、業者に対する行為規制を横断的に拡大する形では イノベーションが阻害されるおそれがある。金融取引がリスクのやり取りであること に照らせば、私法的なルールによって規律するのが先決ではないか。その上で、業者 に対する行為規制や消費者保護に関する法制を考えていくのではないか。 ○ 金融取引に係る民事ルール等を横断的に考える際、どうしても抽象的な性格とせざ るを得ない面があるが、それでは事業者にリーガルリスクが残ることになり、これを 軽減するため、事業者が共同してより具体的な考え方を整理することがあると思う。 こうした対応について、競争政策上はどのように評価すべきか。 ○ 行政が法令等で具体的なルールの詳細を規定することには限界があり、新商品等の イノベーションを妨げるおそれもある。また、業界団体等による自主規制については 特に法令上の根拠のないものについては、競争制限的なものになり易いとして警戒的 ないし慎重な見方がある一方で、柔軟かつ迅速な対応が可能であるとして肯定的な見 方もある。自主規制の評価については、合理的な必要性や内容に応じて、具体的に判 断せざるをえないのではないか。 ○ 和牛商法等の取締りにおいて、詐欺ないし詐欺的な商法ではないものの、破綻の蓋 然性が高いというケースにまで出資法を適用することは、ややパターナリスティック に過ぎるのではないかという見方もあると思われる。こうした事例について、どこま で行政が介入すべきかについては、金融サービス法制を考える上でも大きな論点とな るのではないか。 ○ 我が国の場合、行政に対する国民の要望水準は高いように思うが、行政が過剰な範 囲まで責任を負おうとするべきではない。 ○ 業者法では、例えば商品の説明について、「業者は説明しなければならない」とい う定め方になる一方、取引法では「説明すればリスクは移転する」といった要件・効 果ルールとしての定め方になると思う。こうした関係について整理する必要があるの ではないか。 (以 上)
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