1.日時:平成9年12月19日(金) 10時00分〜12時00分 2.場所:合同庁舎4号館 大蔵省第一特別会議室 3.議題:ゲストスピーカーからのヒアリング −金融取引をめぐる法的諸問題(主として利用者の観点から)− 4.議事概要: 本日は、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会・桜井弁護士、上柳弁護士、日 経マネー編集部・関口編集長、後藤副編集長、厚生年金基金連合会・島崎運用調査 部長から、主として利用者の観点からみた金融取引をめぐる法的諸問題をテーマと してヒアリングを行い、その後、質疑応答及び自由討議を行った。 質疑応答及び自由討議における主な意見等は次のとおり。 ○ 金融サービス関連被害の実情を見ると、訴訟による被害の回復には相当のコス トと時間を要し、しかも回復されるのは被害のごく一部にすぎず、迅速にかつ低 廉に被害の救済が行われていない。販売側の責任が認められず、被害者の権利が 実現されないことが、一般投資家にリスク商品を敬遠させ、金融市場への投資の 流れを阻害する結果となっているのではないか。 ○ 法令上の規定はあっても、これが守られないまま放置される場合があり、きち んとした機動的な監督が行われていないことも問題である。 ○ ディスクロージャーの充実については、法律で細かく決めても運用上問題があ り、業界の暗黙の了解が障害となっている面がある。パンフレット等による積極 的なディスクロージャーを第三者が評価していくということも必要ではないか。 ○ 競争の促進は重要であるが、その場合、説明が不十分なまま人情に訴えて暴利 を追求するような販売競争をするのではなく、魅力ある商品で顧客を引きつける という競争をすべきである。 ○ 金融取引に係る情報開示には、資金調達者による発行・継続開示、証券市場を 通じた間接金融に関するディスクロージャーおよび市場仲介者と顧客との間の相 対での商品内容の開示があり、一般投資家保護の観点からはいずれも重要である が、相対的に被害の事例が多いのは最後の部分である。 ○ 司法による事後の民事救済が有効であるためには、行為ルールの整備と被害の 立証手段の整備の両者が必要であるが、前者については、説明義務や適合性原則 等のあり方について大まかなルールが定まっていれば、裁判官がfairの観点から 適宜判断可能と思われ、問題となるのは後者の「立証の壁」であろう。訴訟遂行 のための証拠を得る観点からも、英米法におけるディスカバリー制度を整備した り、取引所の情報提供の協力義務を課するなど、情報開示が重要ではないか。 ○ 現状は、行為ルールと立証手段の双方に問題があると思う。行為ルールについ ては、個別の判例の蓄積により整備していくという考え方もあるが、単なる業法 違反において民事救済を認めるためには、わが国では社会的相当性を逸脱した行 為であることを立証せざるをえないが、裁判官の裁量が広くなりすぎる。直ちに 法的効果に結びつくようなルール作り、例えば、不招請の勧誘の禁止等のルール を明定することが望まれるのではないか。 ○ 被害者の救済については、一般法理に基づく裁判官の広い裁量により実現され うると思うが、むしろ、金融実務の側からは、ルールが明確でないと訴訟のリス クが残ることを気にすると思う。こうした観点から、何らかのガイドラインを示 すことが考えられ、そうすれば裁判官もこれを斟酌することになるのではないか。 ○ 判例等の蓄積は金融機関に対する抑止効果を持っていると考えられるが、問題 はルール違反をしても見つからなければよいという風潮があることであり、ルー ル違反がかなりの確率で摘発される体制や立証手段の整備が必要ではないか。 ○ 資産が乏しいなどの一定の範疇の人には高リスク商品の勧誘をしてはならない という英国のようなルールは我が国でも必要ではないか。なお、顧客の側から商 品にアプローチする余地は残すべきだろうが、顧客が自らの意思で高リスク商品 の購入を希望する場合において、業者が顧客に助言を与える義務を課すかについ ては議論のあるところだろう。 ○ インターネット上の株式や投信の募集広告が「勧誘」に当たるかは難しい問題 であるが、電話や訪問での勧誘とは異なる別のルールが必要となるのではないか。 ○ 民事責任の追及と行政等による監督の使い分けについては、まず、民事責任を 追及する方法の使い勝手の改善に重点を置くべきだと思うが、監督についても、 事前予防的にお伺いを立てるという形ではなく、事後的に開示等のルールが守ら れているのかをチェックする形に変えていく必要がある。この観点からは、現在 の監督体制は不十分であり、その強化が重要。 ○ 開示についての事後的チェックのみではなく、参入要件の遵守の有無、コンプ ライアンス体制の整備の有無等についての事後的チェックも重要ではないか。 ○ 勧誘方法についていくら規制を設けても、抜け道は存在するものであり、十分 には消費者被害を防止できないのではないか。 ○ 勧誘の方法のみならず、一定の範囲の者に対しては、勧誘すらしていけないと いう適合性の原則が必要となるのではないか。 ○ 横断的なルールの必要性は否定しないが、どのような商品をどのような人に販 売するかによりルールが決まるという面もあり、十分に議論を整理する必要があ るのではないか。 ○ 年金基金の株主議決権行使によるガバナンス機能の発揮については、重要な論 点だと思うが、米国の年金基金(カルパース)のような議決権行使のあり方がよ いかといったことは日米の風土の違いがあり議論の余地があるのではないか。 ○ 厚生年金基金の資産運用体制や能力については、大きな格差があるのが実態で あり、早急にレベルアップを図っていく必要があるが、その場合に、金融機関と 全く同等の能力が必要とされる訳ではなく、受託運用機関をコントロールする能 力が重要である。 (以 上)
問い合わせ 大蔵省 3581−4111(代) 銀行局総務課金融サービス室(内線5408、5952) 本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。 |