1.日時:平成10年1月29日(木)  10時00分~12時30分                       
                                                                          
2.場所:合同庁舎4号館  大蔵省第一特別会議室                            
                                                                          
3.議題:オブザーバーによる意見発表及び関連トピック                      
                                                                          
4.議事概要:                                                            
    本日は、三菱信託銀行業務部・円谷次長、住友海上火災保険社長室総合企画チー
  ム・瀧下次長、興銀NWアセットマネジメント業務本部・柿沼副本部長、抵当証券
  業協会・鈴木専務理事、日立製作所財務部運用グループ・丸田課長から意見発表が
  あり、また、経済企画庁国民生活局消費者行政第一課・藤岡課長から国民生活審議
  会消費者政策部会中間報告「消費者契約法(仮称)の具体的内容について」の概要
  の説明があった。その後、質疑応答及び自由討議を行った。                  
                                                                          
    質疑応答及び自由討議における主な意見等は次のとおり。                  
                                                                          
  ○  証券取引法上の有価証券概念については、SPCや会社型証券投資ファンドと
    いった仕組みの整備により、実質的に拡大していくことになるのではないか。  
                                                                          
  ○  金融商品や取引参加者の多様化等に伴い「受託者責任」概念の確立が必要であ
    るのは理解できるが、我が国では十分に定着していない概念であり、法的な検討
    を行うためにはより具体的な議論が必要となるのではないか。              
                                                                          
  ○  受託者責任の具体的な内容について、全て法律で列挙するというのは現実的で
    はないのではないか。                                                  
                                                                          
  ○  信託は委託者・受益者からの信頼関係により成立するものであり、受託者には
    幾多の義務を踏まえた専門性の高い業務運営が求められるが、受託者の重い責任
    を強調しすぎると規制緩和いう流れに逆行するという議論に繋がる可能性がある
    のではないか。信託法的な発想と契約法的な発想の線引きをどうバランスさせて
    いくのか。                                                            
                                                                          
  ○  刑事法的な視点からは、受託者責任といった信頼関係については、背任罪と関
    連付けることができよう。通常は、取締役が会社に被害を与えるケースが想定さ
    れるが、場合によっては受託者が委託者に被害を与えるケースについて、刑罰規
    定を導入することも考えうるのではないか。                              
                                                                          
  ○  受託者責任を含む当事者の責任の明確化のあり方がここでの重要な論点だと思
    うが、これを法律で規定する際には具体的に細かく規定するという方法と、責任
    を明確化せよということのみを規定するという方法とが考えられる。特に、プロ
    の世界では後者で十分ではないか。                                      
                                                                          
  ○  責任の範囲を具体的に示すことは、個々の商品の特性に応じてやらざるを得な
    い部分があり、全てを一般ルールに取り込むことは難しいのではないか。ベース
    となる共通のルールに加えて、個別ルールが規定されるのではないか。なお、共
    通化のメリットとしては、新しい金融商品に柔軟に対応できるということではな
    いか。                                                                
                                                                          
  ○  資産運用の分野については、開示等のインフラ整備を前提として、原則自由と
    自己責任とすべきであり、例外としていわゆる消費者については、適合性原則等
    で保護するのではないか。                                              
                                                                          
  ○  新しい金融商品は、リスクの所在が不分明であったり、不確実性によるリスク
    が存在する等、どこにどのようなリスクが存在するのかを判明させることが難し
    く、説明義務がより重い意味合いを持つのではないか。                    
                                                                          
  ○  「受託者責任」とは、簡単に言えば、自分のお金を専門家の知恵を借りて運用
    するにあたって預ている側の当然の責任を言っているに過ぎないのではないか。  
                                                                          
  ○  「受託者責任」においては、「専門家」というのがキーワードになるが、わが
    国でも裁判等を通じて徐々に「専門家責任」の概念が確立しつつある。「受託者
    責任」は専門家責任にプラスαの責任が付加されたより狭い概念であると考えら
    れるが、何がそのプラスαであるかをさらに検討していくことが必要ではないか。
                                                                          
  ○  共通ルールを法律として作ろうとしても、具体化、明確化のプロセスが必要と
    されるため、罪刑法定主義や司法審査の限界という問題が残る。こうした観点か
    ら、行政手続きの明確化と機動的な対応の確保を図る必要があるのではないか。
                                                                          
  ○  歴史的な経緯、社会的な理由から、イギリスの金融サービス法の下での自主規
    制機関は、契約に基づく強い捜査権及び制裁権を持ち、違反者に対しては自主規
    制機関内で第三者的な審判を行う制度となっているが、わが国の法制度の下で公
    的機関以外にこのような権能を委ねるのは馴染みづらいとの見方もあるのではな
    いか。                                                                
                                                                          
  ○  最終的な判断は司法に委ねられることには異論のないところだが、それには多
    大な時間とコストがかかる。自主規制機関にはそのようなコストを回避しつつ公
    正なルールを確立するという役割があるが、わが国では自主ルールの内容や実効
    性において十分であるとは言えないのではないか。                        
                                                                          
  ○  どのような法概念を作っていくのかという議論と、そうした法概念を実行して
    いくための手順との議論を区別しておく必要がある。まず、前者に関していえば、
    fiduciary dutyの概念については、金融という特性を加味して具体的な中身を検
    討していく必要がある。特に、金融については、情報の非対称性とこれに併存す
    るマーケットの存在ということに着目して取引の公正性等を検討していく必要が
    ある。                                                                
                                                                          
  ○  一方、手順の議論も重要であり、自主規制を含めて広義の行政手続きの透明化
    が問題となる。最終的な判断は司法に委ねるということにコンセンサスがあるの
    は、裁判の手続きと役割分担が確立されていると思われているからこそであり、
    行政についてもその手続きが信頼されることが重要となるのではないか。    
                                                                          
  ○  消費者契約法(仮称)について、外国法を準拠法とする契約や、海外に拠点を  
    持つ業者がインターネット等で国内の消費者にアクセスする場合については、ど
    のように考えるのか。                                                  
                                                                          
  ○  消費者契約法(仮称)の想定しているような一般的な契約と投資サービス契約
    の相違点を考えてみると、後者は大量・頻繁に取引が行われ、現状回復ができな
    いという特性がある。したがって、投資サービスの場合には、情報の非対称性を
    解消するための情報開示ルールがまずは重要となるのではないか。          
                                                                          
  ○  様々な投資商品が登場するなかで、出資法第1条、第2条はその運用が益々難
    しくなっている。むしろ、出資法第1条、第2条を改廃し抽象的な集合投資スキ
    ーム等の定義を設け、行政手続きによる差止命令や課徴金といった手続き規定を
    整備していくべきではないか。                                          
                                                                          
                                                                  (以  上) 
| 問い合わせ 大蔵省 3581-4111(代) 銀行局総務課金融サービス室(内線5408、5952) 本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。  |