1.日時:平成8年12月18日(水) 15時30分〜17時30分
2.場所:合同庁舎第4号館 共用第一特別会議室
3.議題:特別メンバー(事業者金融業界)からのヒアリング
4.議事概要:
まず、事務局より、海外(米国、英国、フランス)のノンバンクの概要について説明した
後、特別メンバーである内田正孝氏(三和ビジネスクレジット(株)企画部長)及び藤木保
彦氏(オリックス(株)取締役総務部長)の2名から、事業者金融の現状等についてそれぞ
れ報告があった。主な内容は以下のとおり。
・ バブル崩壊に伴い、事業者向貸付けが伸び悩み、業容は全体として縮小している。銀行
等の企業向け貸出が伸び悩んでいる昨今、業容を拡大していくのは厳しい環境にある。
信用リスクの管理としては、債務者の財務状況、担保物件の現状把握に努めるとともに、
不芳先の回収にも努めている。
・ 貸付業務の縮小する中、長年の実績のあるファクタリング業務や、リース業務を主体に
今後の事業拡大を図っていきたいと考えている。
・ ディスクロージャーについては、一般論としては、調達構造の違い(借入主体か、市場
での調達主体か)により、ディスクロージャーすべき内容には違いがあると考える。
・ 大口融資規制、自己資本比率規制等については、健全性の確保、一般投資家の保護の観
点等から、各企業での自己規制は必要。その基準については個社の経営判断に委ねるべき。
・ 資金調達に関しては、非公開会社であること等から、銀行調達が中心であり、CPや社
債での調達は念頭にないが、今後のリース・ファクタリング事業の拡大にあたっては、債
権流動化は検討課題であると認識している。
・ 要望事項として、貸金業規制法上の届出事項の緩和や登録更新期間の延長、また、競売
の迅速化等を含めた債権処理の円滑化のための整備をお願いしたい。
・ リース産業については、中小企業から大企業に至るまで、企業の設備投資の有力な手段
として広く産業界に浸透しており、民間設備投資にとって欠くことのできない存在である。
・ 貸金業規制法は、消費者保護のための行為規制が行われているが、法人間取引をどのよ
うに考え、何を目的に規制しているのか疑問である。法人間取引における貸付けは通常の
商取引の一部であり、貸付けを特殊視すべきではない。
・ 出資法2条3項については、戦後の闇金融を封じ込めるための条項が42年間、何の改
正も行われずに今日に至っている。同項違反の犯罪が近年において存在しないのは、社債
の発行ルールが確立されており、社債を悪用した犯罪がほとんどできないことを物語って
いる。直接金融市場への参加は企業自身の方針に基づいて自由に選択されるべき。
・ 出資法2条3項にCPは記載されておらず、出資法は刑罰法規であることから、これを
拡張解釈することは罪刑法定主義に反するものである。
・ 出資法2条3項の撤廃により、貸金業者が「社債による受信」と「貸付金という与信」
を併せ行うことは、銀行業務的性格を帯び、当局による規制・監督の強化が必要との意見
がある。しかし、銀行規制の根拠は、「決済システムの維持」と「預金者保護」であって
受信と与信を併せ行うことにあるのではない。
・ 決済システムや預金の担い手でない貸金業者に、大口融資規制や自己資本比率規制等の
健全性規制を課すのは不適当である。
・ 業界による自主規制は、「民・民規制」(=事実上の行政指導)となる可能性が高い。
また、貸金業者は、貸金業以外の業務を兼営しているものが多く、他業との関係で統一基
準を作ることは困難である。
・ 米国の金融制度の基本政策は、金融システムの安定性及び健全性の保護、消費者に対す
る必要・十分かつ正確な情報の開示を促進することによる消費者の保護である。貸金業者
に対する規制も、個人向け業者に対する行為規制のみが原則である。
・ その他の要望事項としては、貸金業規制法を「消費者保護法」的なものとして位置付け
ること、出資法の全面改正、資金運用サービスを促進するための総合的な法整備が必要で
あると考えている。
以上の報告を受け、自由討議が行われた。主な意見等は以下のとおり
(与信面)
・ 与信面(リスク管理面)で金融機関と異なるのは、自己資本等の規模の関係からリスク
を負える限度が異なる。また金融機関は主として比較的短期の資金、ノンバンクは長期の
資金ニーズに応えている点でも異なる。
・ 顧客には、ROEの観点からも様々なサービスを附加して提供したいが、中には調達し
た資金をそのまま貸してほしいというニーズもある。そこにおいては、全く金融機関と同
様であり、実際、様々なところで競合している。借り手からみれば金融機関もノンバンク
も同じである。
(資金調達)
・ CPの引受先と借入金の調達先は、概ね半数ぐらいの先が重複している。
・ CPについて、安全策としてのバックアップラインの設定は必要であると考えるが、あ
くまでも個社の判断の問題ではないか。
・ 社債については発行限度が撤廃されたが、長信銀の金融債については発行限度がある。
社債で調達した資金を貸付金に充てる場合には、発行限度等を設けるという考えもある。
(消費者保護)
・ 消費者保護法については、貸金業務のみならず、銀行融資等を含めた消費者(資金需要
者)全体を保護する包括的な法律が必要。
・ 消費者保護は横断的にみていくべき。貸金業規制法の制定当時とは、世の中の考え方が
変わってきており、消費者市場の整備法(ルール)といったようなものが必要ではないか。
(健全性の確保)
・ 健全性の確保は、預金者等の債権者保護と、金融システムの保護等秩序の維持の2つの
観点から議論されるもの。資金需要者等の債務者保護の観点とは別である。
・ 預金には安心感があるが、一般大衆が社債に投資した場合、発行者の破綻による影響を
考慮すべき。その担保措置として、健全性確保が必要なのではないか。
・ 預金ですら数年後にはペイオフとなる過渡期である。自己責任原則の周知が必要。社債
発行会社については格付機関のヒアリングや、アンダーライター、公認会計士等の厳しい
チェックがあり、事実上破綻する事態はないのではないか。ただし、ディスクロージャー
が機能することが重要。
(その他)
・ ノンバンクも総合サービスを提供するようになっているが、ファクタリング等様々な業
務の拡大を図っているのは、顧客ニーズの多様化によるところが大きい。最近では、債権
流動化による資産のオフバランス化のニーズも高い。
・ 海外のノンバンクとの競争については、海外では比較的自由に業務が行えるため対等に
競争ができるが、我が国では競争にならないのが実態。
以 上
| 問い合わせ先 大蔵省 3581-4111(代) 銀行局中小金融課金融会社室 (内線)5164 本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。 |