1.日時:平成9年1月24日(金) 10時00分〜12時00分 2.場所:合同庁舎第4号館 大蔵省第二特別会議室 3.議題:特別メンバー(金融機関)からのヒアリング 4.議事概要: 前回に引き続き、特別メンバーである石川博一氏((株)さくら銀行取締役総合企画部長)及 び関原健夫氏((株)日本興業銀行総合企画部長)の2名から、ヒアリングを行った。 主な内容は以下のとおり。 ・ 預金等受入金融機関とノンバンクとは、与信制度上の基本的な相違点はないが、ノンバ ンクは貸金業規制法により利息制限法を超えた金利設定が可能であるという相違点はある。 受信現象面からみれば、預金受入れの有無のほか、ノンバンクは事実上借入金に限定され ていることから、金融機関に比べ相対的に調達コストが高い。 ・ ノンバンクを貸出分野別でみると、消費者金融分野では、即日融資や長い営業時間とい った高い利便性を提供しており、それを重視する顧客層を掴んでいる。無担保の事業性金 融では、業種別構成比に差があり金融機関との棲み分けは続く。一方、有担保では銀行が 参入しにくい周辺分野が中心であるが、金融機関との競合も小さくない。 ・ マクロ的な計数(融資残高等)でみれば、金融において重要な役割を果たしているが、 金融システムに占める明確な位置付けが行われておらず、明確化する必要がある。公共性 の観点から一般事業法人とは同列に論じられず、広義の金融機関として位置付けるべきで ある。 ・ 公共性の観点から、効率性等に留意しつつ健全性維持のための最低限のルールを設け、 併せて、証取法の社債制度の整備等に鑑みれば、社債・CPの資金使途制限を撤廃するこ とが適当。但し、CPの資金流動性確保の観点からバックアップラインの設定が必要。 ・ 検討すべき規制として、銀行の開示内容に準じた不良債権の開示・自己資本比率の開示 とそのガイドラインの設定・大口信用供与の開示を、一定規模以上かつCP・社債による 資金調達を行うノンバンクに限定して適用すべき。開示内容が適正かどうかは監査法人が 基本的に対応すべきであり、立入検査の強化は不要。 ・ 金融機関の行う消費者信用は、取引先企業の従業員等属性が十分把握できる顧客を対象 に、実需目的に限定している。したがって、審査も即日与信の形態とは合致しない。バブ ル以降、住宅信用は増加しているが消費者信用は漸減しており、店舗を介しない「ダイレ クトバンキング」手法の活用を考えている。 ・ 債券発行銀行は、都市銀行に比べ店舗数が極めて少ないため、個人・中小企業等向け分 野に関しては、ノンバンクを通じた卸売金融という形で応えてきた。従って、ノンバンク とは補完・協調関係を築いているが、ノンバンクの融資分野の拡大とともに、事業性金融 面で競合する局面が出てきている。 ・ バブル崩壊後の不良債権問題の背景には、ノンバンクの不良債権問題があると指摘され ており、ノンバンクの拡大とともに、その経営状態が金融システムにも極めて重大な影響 を及ぼすようになってきている。我が国金融システムの信認回復が喫緊の課題であり、金 融機関の審査体制の充実や不良債権処理促進とともに、ノンバンク自身の審査体制の整備、 健全性の維持等が必要である。 ・ 金融業は常に信用リスクに晒され、金融情勢に業況が大きく左右される特性がある。ノ ンバンクの社債・CP発行にあたっては、一般投資家は言うまでもなく、機関投資家が正 しい投資判断を可能にする観点から、一般事業会社とは異なる開示基準が必要。 ・ ノンバンクが社債・CP発行による調達手段を持った場合、金融機関に一段と機能が類 似してくる。それぞれの機能に応じた規制のバランスをある程度図っていく必要がある。 債券発行銀行は普通銀行と同様に、貸金業規制法に比べはるかに広範な業務規制が課され ている。債券発行に関わる問題について、ノンバンクと長信銀とのイコール・フッティン グ論には、やや違和感を感じる。 ・ ノンバンクの規制・監督については、まず、これまでの「ノンバンク研究会」、「ノン バンク問題懇談会」の報告にあった、自主的なガイドラインをどのように考えるかが検討 されるべき。 ・ 米国のように、市場の見えざる手によって経営の健全性維持、反社会的行動の防止が図 られると考えるか、欧州のように、信用供与の機能と公共性を重視し金融業を幅広く捉え 同一の規制を課し、業務内容に強弱を付けるという考えをとるか、というアプローチがあ る。我が国においては、ノンバンクは業務・経営実態が千差万別であり、米国流の考えを とることには、やや無理がある。 ・ 出資法の立法趣旨については、古文書的であるとの批判はあるが、昨今の違反事例等に 鑑みても、なお今日的意義は大きいと考える。 以上を受け、自由討議が行われた。主な意見等は以下のとおり ・ ノンバンクに一般事業会社と異なる規制が必要かどうか考慮するのは、一般から資金調 達する場合が前提。金融システムに与える影響の大きさ、社債等の資金調達により機能的 に金融機関に近づくという観点から、金融機関と異なるルールでよいとは思われない。 ・ 資金調達の自由化によって規制強化になると、顧客ニーズに対応できない場面も生じて くる。これは、きれいに棲み分けしようとすることに無理があり、何をやるかは市場法と いうルールを決めて、企業判断に委ねるべき。また、「公共性」というが、公共性とはそ もそも何かを考えるべき。 ・ ノンバンクの公共性とは、金融システムに占めるウェイトが高いということ等の他、ノ ンバンクは経常運転資金等を融資していることもあり、その経営上の問題は融資先へも影 響を与える(直ぐに調達代替先を確保できない)ということもある。このように、資金供 給面の公共性が高くなっているということもある。 ・ 金融機関とノンバンクの大きな違いは、信用創造機能の有無であろう。ノンバンクは信 用創造機能が乏しいにもかかわらず、相当大きな規模になってきている。与信面の公共性 が相当大きくなっており、その意味から、金融機関と全く同じ規制の必要はないが、ある 程度の規制は必要であろう。 ・ 極論ではあるが、ノンバンクを金融機関に近づけるのではなく、金融機関をノンバンク に近づけるという考え方もある(決済機能は別であるが)。また、公共性があるからとい って、必ずしも規制が必要なのか。公共性イコール規制ではないと考える。 ・ 全てのノンバンクを破綻させないというのは現実的でなく、程度問題である。守るべき 金融システムのコアの部分とは何かが重要であり、そうでなければおよそ大企業が破綻し ても何らかの影響はあり、大企業は全部潰さないという話になってくる。また、破産法制 の見直しという問題もあると考える。 ・ ノンバンクを誰が守るべきかというモニタリング、ガバナンスの問題については、一つ は規制によるという考え方があり、他方マーケットのガバナンスがより働く形にするとい う考え方もある。 ・ ガバナンスの問題はいずれにせよ外からどうするのかということであるが、その方法と は別に、今の規制緩和等の流れの中で、自己規律の問題として、自己責任原則の観点や社 会的位置付けは何かといった問題についても考える必要がある。 ・ 金融機関がノンバンクをモニターできたのは、金融機関借入が大きい時代のことであり 直接金融の高まりにより状況が異なってきたと思う。 ・ 社債・CP等の資金調達による貸出金利への影響については、なかなかビビッドに反映 しないというのが現実ではないか。資金配分自体は変わらないと思う。社債・CPによる 資金調達は、資金調達の安定化すなわち経営の安定化に資するということが重要である。
問い合わせ先 大蔵省 3581-4111(代) 銀行局中小金融課金融会社室 (内線)5164 本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。 |