1.日時:平成9年2月24日(月) 10時00分〜12時00分
2.場所:合同庁舎第4号館 大蔵省第二特別会議室
3.議題:外部有識者等からのヒアリング
4.議事概要:
本懇談会の最終ヒアリングとして、外部有識者3名及び特別メンバー2名からヒアリング
を行った。
今回は、外部有識者として、宇都宮 健児氏(東京市民法律事務所 弁護士)、若山 昇
氏(S&P ディレクター)及び三次 啓之氏(S&P アソシエート ディレクター)の
3名、特別メンバーとして、古村 昌人氏(明治生命保険相互会社 財務業務部長)及び鈴
木 正悟氏(山一證券(株) 企画室部長)の2名からヒアリングを受け、自由討議を行った。
主な内容は次のとおり。
・ 自己破産の申請件数が、昨年1年間で5万件を超えており、個人破産・多重債務者が急増
している。多重債務者は約150万人いるとも言われている。中には、借入先が20社、負
債額が1千万円を超えている例もある。
・ 自己破産、多重債務の実態を統計でみると、(1)破産理由は生活苦型の借入が最も多く、年
代は30歳代から40歳代が多い、(2)負債額は10社乃至20社からの借入で、総額1千万
円以上の階層が最も多い。自転車操業により雪だるま式に債務が増加しているのが現状。
・ 個人破産や多重債務者が急増している経済構造的背景には、クレジット・カード発行枚数
が約2億3千万枚、消費者信用供与残高は約75兆円にも上っており、いまや個人負債比率
(消費者信用残高/家計可処分所得)が米国を抜いて世界一であることや、経済不況が長期
化していること等であると考える。業界の問題としては、過剰与信や高金利・高手数料、ま
た悪質業者の存在が挙げられる。
・ これらに対する対策として、過剰与信・カード発行の是正、金利等の引下げのほか、与信
チェックシステムの改善が必要。また、行政による消費者信用業界の統一的監督や、個人信
用情報保護法・消費者信用規制法等の制定、多重債務者の社会的更生システムの創設、消費
者教育の強化が必要。
・ ノンバンクの格付けは、分析ファクターとして事業リスク・財務リスクに大別される。
事業リスクとは、産業リスク、市場地位、事業の多様性等であり、財務リスクとは資産の質、
収益性、自己資本・資金調達力、ALM・流動性である。
・ ノンバンクの格付け方法について、銀行と比較した主な相違点は、(1)当局による規制監督
の度合いや業界等グループのサポートの違い、(2)資金調達手段、資本市場へのアクセスの度
合いの違い、(3)信用供与先の信用リスクや資産保全(担保等)の違い、であろう。
・ キーとなるディスクロージャーは、保有資産の質(不良債権・引当金の状況、リスク分散、
ポートフォリオ、含み損の状況等)、オフ・バランスシートリスクの情報、偶発債務の情報
や資金調達の柔軟性の状況である。
・ 出資法改正等による社債・CPに関する規制緩和には基本的に歓迎している。規制緩和後
はディスクロージャーを充実することが一番の課題。それにより、一般投資家を保護し、消
費者保護については、業界団体の自主ルールによる規制等で対応すべき。
・ 資本市場での行動原則として「投資者保護」が規定され、証券会社の行動原則として「投
資者保護」が規定されている。その前提として、投資者の自己責任原則と十分なディスクロ
ージャー(投資の危険度に関する情報等)が必要。
以上の報告を受け、自由討議を行った。主な意見等は次のとおり。
・ 消費者金融等の顧客は、金利をみて借入先を選択するのではなく、要は借入し易いかどう
かで選択しているのが多い。最近は、包括契約型の利用から無人契約機の利用へと移ってき
ている。
・ 自由競争が働かない分野であることから、調達コストは下がっているのに貸出金利は下が
っていない。従来と比べると下がってはいるが、これは刑罰金利を下げた効果が大きい。
また、利息制限法、出資法の金利規制は一元化すべき。個人消費者に限定して適用する金利
規制に強化すべきである。
・ 顧客が多重債務者であるかどうかは、業界は一番よく分かっているはず。これら多重債務
者に対する貸付が、現在は不良債権として表れていないだけである。また、社会的問題とし
て、破産(者)に対する悪いイメージを払拭すべきである。
・ 多重債務者が、一節には100万人とか150万人とか言われているが、収入や保有資産
の格差は日米で異なり、例えば、米国が破産者100万人だから日本は半分の50万人とは
ならないと考える。勿論、信用情報の交流促進やカウンセリング体制の充実等、インフラの
整備は必要である。
・ 我が国の消費者教育は理念的なものであり、実践的教育がなされていない。学校における
消費者教育の改善・強化を図るべき。
| 問い合わせ先 大蔵省 3581-4111(代) 銀行局中小金融課金融会社室 (内線)5164 本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。 |