第14回証券取引審議会総合部会議事要旨


1.日時:平成9年2月28日(金)                                              

2.場所:合同庁舎四号館  共用第一特別会議室                                    

3.議題:株式の魅力の向上について                                              

          ・第1セッション:株式の投資価値を高め、                              

                                公正価格の確保を図るための方策                  

          ・第2セッション:個人投資家に株式投資を                              

                                より身近なものとするための方策                  

4.議事内容                                                                    

  ・第1セッション                                                              

    (1) まず、参考人として、井手正介氏(野村マネジメント・スクール研究理事)及びキャシー・ 

      松井氏(ゴールドマン・サックス証券会社東京支店チーフ・ストラテジスト)より、株式の魅力の向上に関

      連して、ROEの向上、株主重視の配当政策、持合いの解消等について意見陳述が

      行われた。                                                                

    (2) その後、参考人及び委員による質疑応答・討議が行われた。                  

                                                                                

  ・第2セッション                                                              

    (1) 長谷川慶太郎参考人(個人投資家協会理事長)より、個人投資家を証券市場へ呼

      び戻すための方策として、個人投資家の証券業者に対する信頼の回復、情報の開示

      の徹底、投資クラブの結成・育成・助力、等についての意見陳述が行われた。    

    (2) 続いて、参考人及び委員による質疑応答・討議が行われた。                  

                                                                              

  <参考人による意見陳述での主な意見>                                        

                                                                              

・第1セッション                                                              

  ○日本企業のROEは、欧米と比べると非常に低い。                              

  ○日本企業の配当政策は70年代も今もあまり変わらず、いわば「5円配当」に集中して

    いる。                                                                      

  ○ROE重視の経営のためには、株主のほうから配当についての要求をすべきであるが

    それについて社会のコンセンサスができるかどうかが問題。                      

  ○日本でROEを向上しても投資家に還元されるか疑問。                          

  ○米国では、成熟産業では新しい投資先がないから利益は投資家に還元し、成長率が高

    い産業では内部留保に回し配当は低い。しかし、日本はどこも同じような配当政策で

    あり、横並び。                                                              

  ○株式投資の目的は、米国は配当・キャピタルゲインの最大化だが、日本は戦術的な関

    係作りである。                                                              

  ○効率的な株価形成のためには、持合いは解消に向かうことが望ましく、そのための具

    体策として、自社株買いの促進、持合いの受皿としての年金基金の活用等が考えられ

    るのではないか。                                                            

                                                                                

・第2セッション                                                                

  ○個人投資家が証券市場から離反してしまっているのは、証券業者が個人投資家を軽視

    してきたため、投資家の証券会社に対する信頼がなくなってしまったこともその一因

  ○個人投資家がリスクを取る前提条件として情報開示の徹底が重要。本当に知りたい情

    報が不十分。また、証券会社についても情報開示すべき。                        

  ○個人投資家の市場参加促進策の1つとして、投資クラブの結成、育成とその活動の助

    力を行ってほしい。                                                          

                                                                                

  <一般討議での主な意見>                                                      

                                                                              

・第1セッション                                                                

  ○大量の時価発行により、現状は資本過剰の状況になっており、自社株買い等により、

    この状況を正す必要がある。                                                  

  ○機関投資家の投資行動を考える際でも、ROEは無視しえないものとなっている。  

  ○外人投資家が日本株を買う場合は、グローバル・スタンダードにおいて優良な株式を

    選別して投資しており、そのポートフォリオも日本の代表的な指数と異なる。相場の

    2極化はますます進んでくると思われる。                                      

  ○日本の経営者も、会社をグローバル・スタンダードに合わせるべく経営上はROEを

    意識しているが、米国と違って企業が労働に対し多大な責任を負っている日本ではR

    OEのみを高めることは難しい。                                              

  ○株式供給サイドについて規制を設けるべき。資金過剰という現状においては、目的が

    はっきりしない資金調達は規制すべきだと思う。                                

  ○ROEが低い場合でも、内部留保資金が有効に活用されていれば投資家として問題な

    いが、日本の場合は内部留保が上手く使われているかどうか疑問があり、ROEを高

    めてもそれが本当に個人投資家にとって利益になるかどうか疑問。                

  ○ROEの国際的な違いをマーケットが調整するメカニズムとして、国際的な企業買収

    が考えられるが、日本の場合は持合い構造が強固のため、これができない。持合い解

    消が必要である。                                                            

  ○株式投資における金融収益最大化を狙う投資家のほかに、金融収益以外のリターンを

    求める投資家がいても良いのではないか。                                      

  ○持合いは解消の方向にあるが、市場に任せるだけでは不十分。また、広く保有・売買

    構造のあり方まで含めた議論が必要。                                          

  ○持合いは解消すべきとしても、倫理観や政策論から強制的に解消させるべきものでは

    ないのではないか。持合いを解消しやすくする環境を整備し、あとは市場メカニズム

    に任せておけばいい。                                                        

                                                                                

・第2セッション                                                                

                                                                                

  ○ビッグ・バンは、市場活性化を通じて個人投資家の選択の幅を広げ、大きいプラスの

    影響を与える。                                                              

  ○個人投資家への情報不足を補う必要があるが、その際情報入手のコストを安くするこ

    とがポイントである。                                                        

  ○投資クラブについては、その外形的仕組みが過去の悪しき投資顧問に類似するという

    点があり、健全な投資クラブを根づかせるためにも何らかの配慮が必要。          

  ○株式投資に関する正しい理解が得られるよう、学校教育に証券教育を入れればどうか

  ○個人投資家の市場への参入の問題として、投資単位の引下げが必要。また、税制の手

    当ても必要。有取税はコスト的観点から廃止すべき。                            

  ○具体的に何を情報開示すべきか更に議論が必要。                                

                                                                                

                                                                                

                                                                                

                        +-------問い合わせ先------------+  

                        |大蔵省証券局総務課調査室    亀水、小桐間          |  

                        |TEL 3581-4111   (内線  5434)                     |  

                        |本議事要旨は暫定版であるため今後修正がありえます。|  

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