第6回証券取引審議会総合部会議事要旨


                                                                                



1.日時  :平成8年10月9日(水)  10時00分〜12時00分                                 

2.場所  :合同庁舎四号館  第一特別会議室                                      

3.議題  :公正な取引ルールと自由な競争との関連(参考人からの報告及び一般討議)  

4.議事内容                                                                    

    「公正な取引ルールと自由な競争」をテーマに、立教大学教授の上村達也参考人より

  基調報告が行なわれた。具体的には、企業関係法制の変遷についての説明の後、以下の

  点について報告がなされた。                                                    

    証券取引法を取引法(私法)の視点から市場法の視点に重点を移動していく必要が

  ある。投資者保護も、弱者保護というよりは、市場の成立条件の確保であり、自己責

  任原則を発揮できるような公正な土俵を確保することにあると捉えていくべき。市場

  は品質・価値を巡る競争の場であるべきで、公正な価格形成を妨げる行為への規制が

  必要である。組織的流通市場から相対型市場までを包含する総合資本市場法制を展望

  する必要があり、市場性の段階に応じた規制を行なう必要がある。                

    市場集中は、市場性の強度、不正摘発の容易性等の相関関係により規定され、より

  高いレベルの市場に集約される過程では、取引所レベルでの市場集中義務がいったん

  放棄される事は当然。                                                        

    市場機能を守り抜くためには規制の漏れがあってはならず、抽象的な法規範の機動

  的な運用が不可欠である。このため、包括規定をも使いこなせる体制の整備、法の抽

  象化とガイドラインの活用等が必要。                                          

    証券会社は、市場機構の担い手として堅実性・安全性を確保する必要があり、免許

  制が必要。市場規制と免許制は矛盾しない。                                    

    市場の成立条件を整備するための規制は強化し、介入型規制の緩和を進めるべき。

    この他、証券取引法根本改正に向けて法体系整備の考え方や、日本の法体系が国際的

  な資本市場法制の理論モデルたりうる可能性についての説明があった。              

    その後、コメンテーターからの発言、及び一般討議が行なわれた。                

                                                                            

<主な意見>                                                                    

 ○証券市場の機能強化を考えるにあたり、資金調達者・資金運用者の双方にとって使い

  やすい市場にするという視点が必要。                                          

 ○規制緩和を行なう目的は、競争の導入である。競争は国民の選択の幅を増やし、真に

  効率的な国民経済に資する。その前提として、自己責任原則の前提となるディスクロ

  ージャーの充実、公正な取引ルール、等が必要。                                  

 ○行政の恣意性の排除のため、公正な取引ルールは法律に書いて、一般投資家にもわか

  るようにすべき。                                                            

 ○「公正な取引ルール」に向けて、市場のルールを再構築していく上の欠かせないポイ

  ントは以下の3つ。                                                          

  (1) ルール策定の軸になるものは、不公正取引の排除と企業情報開示の促進、各種取

      引情報の迅速な提供。                                                    

  (2) 仲介業者の活動範囲を制限することでリスクを極小化しようとするアプローチで

      はなく、市場参加者の投資活動から仲介機関自身のリスクを遮断する、あるいは

      リスクを事前に明確化することが重要。                                    

  (3) 従来のような商品毎、業態毎のルールではなく、取引のあり方や機能に着目した

      市場を横断的にカバーすることが可能なルールが必要。                      

 ○証券市場の機能は価格メカニズムを通じてリスク・リターンの効率的配分を達成する

  ことにつきる。そのための前提条件は、(1) 市場参加者のそれぞれのニーズにマッチ

  したリスク・リターンを持つ金融商品にできるだけ低いコストで、できるだけ速くア

  クセスできること、(2) 市場参加者が証券取引に伴うリスクやリターンを公正・妥当

  に評価できること、である。                                                  

 ○免許制は予防的な性質を持った業者規制であり、新規参入を制限し、自己責任の芽を

  つんできた。登録制にして競争基盤を整えるべき。                              

 ○免許制・登録制の問題は、法律的側面よりも、むしろ業際問題との関連で考えること

  が重要。                                                                    

 ○免許制は、仲介機能の信頼性を保つために設けられたものであり、新規参入を阻害し

  ているわけではない。また、取引の仲介機能への規制(免許制等)により市場規制を

  代替しており、行政コスト削減を図ってきたと考えられる。                      

 ○免許制が業際問題、兼業問題の根源とよく言われるが、必ずしも免許制が原因とはい

  えない。また、免許制を登録制に変えるなら、公正な取引ルールの確立と司法による

  チェック体制が整う必要がある。                                              

 ○ルール違反に対応すべく、監視委員会のより一層の強化が必要。監視委員会は司法の

  不足部分を補うものである。                                                  

 ○ユニバーサル・バンクは経済の非効率性をもたらすものであり、国民経済的に有効で

  はなく、制度上の着地点にはなりえない。                                      

 ○電子取引の発達やデリバティブ取引の発達等により、従来の業種・業態別の規制監督

  や取引所集中原則について見直しが迫られている。                              

 ○証券取引は、資金仲介者・発行者・投資家の三者で構成されるものであるにも関わら

  ず、発行者・投資家の意向が充分に反映されていないことが問題である。          

 ○サービス産業化の中で金融業は成長産業でありながら、規制により生産性はあがって

  いない。                                                                    

 ○証券市場を「公共財」として把握することについて共通認識を確立したい。        

                                                                              

                                                                              

                                                                              

                                                                              

                                                                            

                                                                            

                                                                            

                      +−−−−−−−−問い合わせ先−−−−−−−−−−−+  

                      |大蔵省証券局総務課調査室    森田、小桐間          |  

                      |TEL 3581-4111   (内線  5434)                     |  

                      |本議事要旨は暫定版であるため今後修正がありえます。|  

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