少額公募に係る開示制度の整備について
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│ 考 え 方 │ 参 考 │
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│一.現状及び経緯等 │ │
│ │ │
│ 1.制度の枠組み │○ 継続開示義務(証取法24条 1) │
│ │ │
│ (1) 証券取引法は第2条において、原則として、多数の者(政令で50│ (1) 有価証券が上場されている場合(一号) │
│ 人以上)を相手方として行う有価証券の取得の申込みの勧誘等を募│ (2) 有価証券が登録されている場合(二号) │
│ 集(新発の場合)又は売出し(既発の場合)としている。 │ (3) 有価証券の募集又は売出しにつき有価証券届出書等を提出│
│ │ した場合(三号) │
│ (2) 募集又は売出しのうち、原則として、5億円以上のものについて│ (注)発行開示が継続開示につながる。 │
│ 届出(公衆縦覧)及び投資者に対する目論見書の交付等を義務づけ│ (4) 当該事業年度又は当該事業年度開始の日前4年以内に開始│
│ ている(発行開示)。 │ した事業年度のいずれかの末日における株主数が 500名以上│
│ │ である場合(外形基準、四号) │
│ (3) 証券取引法第24条において、発行開示を行った会社は有価証券報│ │
│ 告書の提出を義務づけている(継続開示)。 │ │
│ │ │
│ (4) 5億円未満の少額公募にはこれまで発行開示義務を課してこなか│ │
│ ったが、一方で、未上場・未登録会社の株式については、相対的に│ │
│ リスクが高いにもかかわらず十分なディスクロージャーが行われて│ │
│ いないものが多い等の事情により、証券会社の投資勧誘や公募の取│ │
│ 扱いが日証協規則によって禁止されてきた。 │ │
│ │ │
│ 2.状況の変化 │ │
│ (1) 平成9年の証取審総合部会市場WP報告書において未上場・未登│ │
│ 録会社の株式の少額公募については、相対でなく公衆縦覧を前提と│ │
│ したディスクロージャー制度を行政において検討すべき旨の提言が│ │
│ なされた。 │ │
│ │ │
│ (2) 少額公募は、 │ │
│ ○ インターネットの活用により容易に広範囲にわたる勧誘が可能│ │
│ になっている。 │ │
│ ○ また、ベンチャー企業の資金ニーズ等に対応するため、日証協│○ 日本証券業協会が定める一定の要件(概要) │
│ において、平成9年7月から一定の条件の下に証券会社による未│ 1.店頭取扱有価証券の範囲 │
│ 上場・未登録会社の株式等の勧誘や公募の取扱いが解禁されてい│ 次の会社が発行する未上場・未登録の株券、転換社債、新│
│ る。 │ 株引受権付社債等。 │
│ (3) このような状況に対応し、投資者保護の観点から、少額公募につ│ (1) 証券取引法等に基づき有価証券報告書を提出している会│
│ いても、公的な開示制度の検討が必要になってきている。 │ 社 │
│ │ (2) 公認会計士又は監査法人による監査報告書が添付されて│
│ │ いる財務諸表等の開示資料等を利用できる会社 │
│ │ 2.会社内容の開示等 │
│ │ (1) 投資勧誘時の「会社内容説明書」(直近の有価証券報告│
│ │ 書でも可。)を用いた説明を義務付けた。 │
│ │ (2) 「会社内容説明書」の内容 │
│ │ ○ 有価証券届出書の「事業の概況等に関する特別記載事│
│ │ 項」及び「企業情報」の記載事項に準じた記載。 │
│ │ ○ 財務諸表は商法によるものも可。 │
│ │ ○ 財務諸表に公認会計士又は監査法人による監査報告 │
│ │ を添付。 │
│ │ ○ 「会社内容説明書」等の証券会社における縦覧。 │
│ 3.要検討事項 │ (注)これらの条件は勧誘対象人数、金額にかかわらず適用│
│ (1) 発行開示と継続開示について │ │
│ (2) 開示の内容 │ │
│ (3) 対象範囲 │ │
│ (4) 未上場・未登録会社の有価証券一般の取扱い │ │
│ (5) 上場・登録会社の取扱い │ │
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│二.発行開示と継続開示 │ │
│ │ │
│ 1.発行開示 │ │
│ │ │
│ (1) 発行開示については、物価の動向等を勘案し、届出義務基準を引│○ 届出義務基準の推移 │
│ き上げてきた経緯がある。 │ ┌─────┬────────────────────┐│
│ │ │ 改正年 │ 基 準 ││
│ (2) 届出基準未満のものについては、届出義務が免除される代わりに│ ├─────┼────────────────────┤│
│ 市場としての十分な機能を発揮しにくいという状況にあった。 │ │昭和23年│・ 券面額が500万円超の募集又は売出し││
│ │ │ (制定) │ ││
│ (3) 今般の制度見直しは、少額公募市場の育成という従来の基準の引│ ├─────┼────────────────────┤│
│ き上げとは違った観点から行うものであり、基準を引き下げる方向│ │昭和28年│・ 券面額が5,000万円以上の募集 ││
│ での検討を行うものである。 │ │ │・ 券面額が1,000万円以上の売出し ││
│ │ ├─────┼────────────────────┤│
│ │ │昭和46年│・ 発行価額又は売出価額の総額が1億円以││
│ │ │ │ 上の募集又は売出し ││
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│ │ │昭和63年│・ 発行価額又は売出価額の総額が5億円以││
│ │ │ │ 上の募集又は売出し ││
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│ │ │
│ 2.継続開示 │ │
│ │ │
│ (1) 開示については、一方で投資者保護に資する反面、他方で、発行│ │
│ 体のコスト負担を伴うものであることから、発行開示のみならず、│ │
│ 継続開示についてどのように考えるかという問題がある。 │ │
│ │ │
│ (2) この問題については、次の観点に立つことが必要ではないか。 │ │
│ │ │
│ ○ 流通過程における投資者保護が図られてこそ、発行市場の健全│○ 現行の証券取引法では、発行開示を行った会社には、基本的│
│ な発展も可能となる。 │ に継続開示も求める仕組みになっている。 │
│ ○ 実際問題として、投資者保護が切実な課題となるのは、むしろ│○ アメリカの場合は、必ずしも継続開示は連動していない。 │
│ 企業業績の変動等が生じてきた場合であり、流通取引の場といえ│ │
│ るのではないか。 │ │
│ ○ 発行体にとっても、証券市場において、多数の者から公募で資│ │
│ 金調達を行う以上、それなりの責任を果たすことが必要ではない│ │
│ か。 │ │
│ │ │
│ (3) これらの点を考えれば、基本的には、発行開示とともに継続開示│ │
│ も行わせることが必要ではないか。 │ │
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│三.開示内容 │ │
│ │ │
│ 1.次に、開示内容については、投資者の立場を考慮する一方で、少額│ │
│ の公募であることに鑑み、発行体の実態をも考慮し、何らかの配慮を│ │
│ すべきではないかという考えもあり得るところ。 │ │
│ │ │
│ 2.この問題については、中間的な措置を講ずることは、理念の上でも│ │
│ また、実務の面を考慮しても、実際問題としてなかなか困難なところ│ │
│ がある。 │ │
│ │ │
│ 3.従って、この問題については、基本的には、次の「四.対象範囲」│ │
│ の問題として、考えることとしたい。 │ │
│ │ │
│ 4.しかし、これから少額公募を行う会社の中には、これらに対して一│ │
│ 足飛びに正規の開示を求めることは事務負担等の面で問題が生じる場│ │
│ 合もあり得ると考えられる。従って、会社によっては、例えば、証取│ │
│ 法に基づく連結への移行過程にある会社と位置づけ、連結に代えて子│ │
│ 会社等の財務諸表等を別途何らかの形で報告することもできることと│ │
│ する代替案を許容することも考えられないかどうか。 │ │
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│四.対象範囲 │ │
│ │ │
│ 1.証券市場の担い手は投資者であり、公的開示を義務づける以上、募│ │
│ 集額の多寡によって投資者に提供する情報に差異を設けるべきでない│ │
│ とする考え方もある。 │ │
│ │ │
│ 2 しかし、発行体のコストを考慮すれば、公的開示の適用対象範囲は│○ 米国では100万ドル以下を免除 │
│ 億単位のものとし、1億円未満のものに対しては、公的な開示義務を│○ 有価証券の取引等に関する規制 │
│ 課さないこととしてはどうか。 │ 証取法157条第二号 │
│ │ 有価証券の売買その他の取引又は有価証券指数等先物取引│
│ 3.なお、1億円未満のものについては、 │ 等、有価証券オプション取引等若しくは外国市場証券先物取│
│ │ 引等について、重要な事項について虚偽の表示があり、又は│
│ (1) 投資者自身のリスク認識とともに、 │ 誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示が欠けて│
│ (2) 企業の自発的IR活動が期待されることになる。 │ いる文書その他の表示を使用して金銭その他の財産を取得す│
│ │ ること。 │
│ │○ 不実文書行使罪 │
│ │ 商法490条 │
│ │ ○ 第486条第1項に掲ぐる者(取締役等)、外国会社の│
│ │ 代表者又は株式若しくは社債の募集の委託を受けたる者株│
│ │ 式又は社債の募集に当たり重要なる事項に付不実の記載あ│
│ │ る株式申込証、社債申込証、目論見書、株式又は社債の募│
│ │ 集の広告其の他株式又は社債の募集に関する文書を行使し│
│ │ たるときは5年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処│
│ │ す │
│ │ ○ 株式又は社債の売出しを為す者其の売出に関する文書に│
│ │ して重要なる事項に付不実の記載あるものを行使したると│
│ │ き亦前項に同じ │
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│五.未上場・未登録会社の有価証券一般の取扱い │ │
│ │ │
│ 未上場・未登録会社の社債等についても、株式等と区分する特に積極│ │
│ 的な理由がないので、株式等の場合と同じ取扱いとしてはどうか。 │ │
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│六.上場・登録会社 │○ 有価証券通知書受理件数 │
│ │ ┌─────┬─────────┬─────────┐ │
│ 1.継続開示 │ │ │ 平成7年度 │ 平成8年度 │ │
│ 上場・登録会社は、既に正規の継続開示を求められているので、継│ │ 項 目 ├───┬──┬──┼───┬──┬──┤ │
│ 続開示に係る問題はない。 │ │┌開示省┐│上場・│それ│ │上場・│それ│ │ │
│ │ │└令4条┘│ 登録│以外│合計│ 登録│以外│合計│ │
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│ 2.発行開示 │ │5億円未満│ │ │ │ │ │ │ │
│ 上場・登録会社の少額公募に係る発行開示についても、少額公募市│ │1億円以上│ 6│ 74│ 80│ 27│ 102│ 129│ │
│ 場を制度的に確立し、投資者保護を図る観点から、未上場・未登録会│ ├─────┼───┼──┼──┼───┼──┼──┤ │
│ 社の場合と同様に、発行開示(届出書の提出及び公衆縦覧並びに目論│ │1億円未満│ │ │ │ │ │ │ │
│ 見書の投資者への交付)を行わせることとしてはどうか。 │ │1000万円超│ ──│ 79│ 79│ 2│ 110│ 112│ │
│ │ └─────┴───┴──┴──┴───┴──┴──┘ │
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[続きがあります]