近年、金融派生商品(デリバティブ)取引の拡大を背景として、証券会社の業務が複 雑化・多様化し、取引のグローバル化も進展してきている。こうした状況下において、 我が国証券会社の業務の健全性を維持しつつ、我が国金融・資本市場を国際的により魅 力のあるものにしていくことが重要であり、そのためにもデリバティブ取引等の業務を 円滑に行うための基盤整備が喫緊の課題となっている。 このような中で、証券会社は、トレーディング業務を本来的業務として相当規模で行 ってきており、これにより現物・デリバティブ両市場に厚みをもたらし効率的な価格形 成を促進するという重要な役割を担っているが、現在、証券会社の行うトレーディング 業務について、商法の規定を前提として、原価法/低価法による会計処理が行われてお り、時価法が認められていないため、 1. トレーディング業務の成果を財務諸表に正確に反映できない、 2. トレーディング業務の実態損益を財務諸表に反映するために不必要な取引を行うこ ととなる、 3. 内部のリスク管理実態と会計処理が乖離することになる、 等の問題を招来している。
1. 証券会社の行うトレーディング業務について、時価法を導入するため、証券取引法 に商法の会計処理の規定に対する特別規定を設けるべきである。 2. 時価法導入に当たっての留意点 1. 恣意的な利益操作が行われることを防止するため、トレーディング目的の取引と その他の取引とは厳格に区分管理されることが必要である。 2. 主観的な見積もりによる利益操作等を防止するため、証券会社において、客観的 な時価を把握・管理する体制が整備されることが必要である。 3. 時価法を導入すべき証券会社は、当面は必要とされる内部管理体制の整った社に 限定されるべきである。 4. 会計処理の継続性の観点から、一旦時価法を導入した証券会社はこれを継続すべ きである。 5. 資本充実の見地から、評価損を超える評価益(ネット評価益)を配当可能利益と することに制限を設ける必要がある。 6. 会計上未実現評価損益を認識することにあわせて、課税所得の計算上もこれを算 入することが望ましいとの立場から、税制上の取扱いについて税務当局との検討が 進められるべきである。