12月11日、証券取引審議会デリバティブ特別部会より、証券取引所における個別株式オ プション取引の導入について以下に掲げる部会としての考え方が発表されました。 (以下発表文) 平成8年12月11日
当デリバティブ特別部会は、本年10月以降、デリバティブ商品の多様化について審議 を行ってきている。本日の部会では、証券取引所において個別株式オプション取引を導入 することの意義及び導入に当たっての留意点につき討議し、以下のような共通の認識を得 るにいたった。 1.個別株式オプション取引導入の意義 (1) 個別株式オプション取引の導入は、仲介業者が投資家に対し多様なヘッジ手段や運 用パフォーマンスを向上させる新たな商品を提供することを可能とし、投資家の利便 に資すると考えられる。 また、個別株式オプション取引は、世界各国の取引所において既に導入が図られて おり、我が国証券取引所において導入されていないことは、今後、我が国市場の国際 競争力を損なう結果となりかねない。 (2) 従来、個別株式オプション取引については、市場参加者の多くがデリバティブ取引 に習熟しておらず、このような取引が原株の価格形成に影響を与えることは望ましく ないという考え方が強かったことを反映して、その導入に対し慎重な対応がとられて きた。 しかしながら、諸外国におけるその後の状況等を踏まえると、個別株式オプション 取引の導入は、価格操作等を排除するための市場管理について十分配慮することがで きれば、現物・デリバティブ市場間での裁定機能をより有効に発揮させるとともに、 現物市場の流動性を増大させ、価格形成の一層の効率化をもたらすものといえよう。 (3) したがって、証券取引所において個別株式オプション取引を導入することについて は、肯定的に評価すべきものと考えられる。 2.個別株式オプション取引導入に当たっての留意点 我が国証券取引所において個別株式オプション取引を導入するに当たって、関係者は 以下の諸点につき留意する必要がある。 (1) 商品性・取引システム 市場関係者の意見を反映させつつ、投資家の利便性やニーズを踏まえて、個別株式 オプション取引を行う証券取引所において適切に設計・構築されるべきである。 (2) 市場管理 個別株式オプション市場が適切に機能するためには、同市場と原株市場双方を視野 にいれた市場管理手法が確立されることが不可欠である。具体的には、フロント・ラ ンニング、相場操縦的行為やインサイダー取引の規制など公正取引ルールが実効性を もって行われるよう、個別株式オプション市場と原株市場との間で整合性をもった市 場管理体制が整備される必要がある。 (3) ディスクロージャーの充実 証券取引所において、取引の透明性に配慮し、株価指数先物取引等と同様、売買高 や建玉残高等に係るディスクロージャーを充実すべきである。 (4) 個別株式オプション取引の仕組みの周知等 個別株式オプション取引を我が国市場に定着させるためには、自己責任原則を貫徹 させる必要がある。そのためには、仲介業者は投資家に対して個別株式オプション取 引の利用方法やリスクについて周知徹底し、投資家への適合性原則を踏まえた投資勧 誘を行う必要がある。 3.今後の取扱い 個別株式オプション取引については、当部会において以上のような共通の認識を得た ところであり、これを出来る限り速やかに、証券取引審議会総会及び総合部会にも伝え ることとする。 なお、当部会においては、デリバティブ取引の多様化について引き続き審議を行い、 報告書をとりまとめる予定である。