金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    令和6年3月26日(火曜日)12時30分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

    【神作座長】 
     ただいまより、金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ第1回会合を開催いたします。
     皆様、御多忙のところ、また足元のお悪い中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
     申し遅れましたけれども、このたび、当ワーキング・グループの座長を務めさせていただくこととなりました学習院大学の神作でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
     本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。
     また、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
     会議を始める前に、事務局から留意事項と当委員の御紹介をお願いいたします。よろしくお願いします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     事務局を務めさせていただきます金融庁の野崎と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。
     本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催となっておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を記入いただければと思います。そちらを確認の上、座長から指名いただければというふうに考えております。また発言される際には冒頭にお名前をお願いいたします。なお、対面での御参加の委員におかれましては、挙手または札を立てていただければ、座長から指名いただきたいと思います。
     それでは、サステナビリティ情報と開示の保証のあり方に関するワーキング・グループの委員の皆様を御紹介させていただければと思います。
     資料2の名簿の記載の順に、浅川健一様でございます。
     
    【浅川委員】 
     浅川でございます。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     井口譲二様です。
     
    【井口委員】 
     井口です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     上田亮子様です。
     
    【上田委員】 
     上田です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     近江静子様です。
     
    【近江委員】 
     近江です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     柿原アツ子様でございます。本日は途中から御参加いただく予定でございます。
     それから、清原健様でございます。
     
    【清原委員】 
     清原です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     阪智香様です。
     
    【阪委員】 
     阪です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     三瓶裕喜様です。
     
    【三瓶委員】 
     三瓶です。よろしくお願いします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     関口智和様です。
     
    【関口委員】 
     関口です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     芹口尚子様です。
     
    【芹口委員】 
     芹口でございます。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     高村ゆかり様です。
     
    【高村委員】 
     高村でございます。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     田代桂子様です。
     
    【田代委員】 
     よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     永沢裕美子様です。
     
    【永沢委員】 
     永沢でございます。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     藤本貴子様です。
     
    【藤本委員】 
     藤本でございます。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     堀江正之様です。
     
    【堀江委員】 
     堀江です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     松井智予様。オンラインで御参加いただいているかと思います。よろしくお願いします。
     森内譲様でございます。
     
    【森内委員】 
     森内でございます。よろしくお願いします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     弥永真生様です。
     
    【弥永委員】 
     弥永でございます。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     吉元洋志様です。
     
    【吉元委員】 
     吉元です。よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     本日御欠席でございますけれども、小林いずみ様にもメンバーをお引き受けいただいております。
     次に、オブザーバーとしまして、サステナビリティ基準委員会様、東京証券取引所様、日本監査役協会様、日本経済団体連合会様、関西経済連合会様、日本公認会計士協会様、日本労働組合総連合会様に御参加いただいております。
     また、官公庁等のオブザーバーとしまして、日本銀行、法務省、財務省、経済産業省、環境省に御参加いただいております。
     また、事務局につきましては、時間の都合もございますので、御手元の配席図をもって代えさせていただければと思います。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     次に、私が、万が一会議に参加できない場合に備えまして、座長代理を弥永委員にお願いしたいと存じますけれども、いかがでございますか。よろしゅうございますか。
     どうもありがとうございます。それでは、弥永委員、どうかよろしくお願いいたします。
     それでは、まず、会議の公開についてお諮りいたします。金融審議会議事規則第4条にのっとり、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループの審議について公開することとしたいと存じますけれども、よろしゅうございますか。
    (「異議なし」の声あり)
     
    【神作座長】 
     御了解をいただきましたので、本日の会議の模様は、ウェブ上のライブ中継をさせていただきます。
     それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より資料の説明をいただいた後、質疑応答・討議を行いたいと存じます。
     それでは、事務局の金融庁から資料についての御説明をお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     では、資料3に基づきまして御説明させていただければと思います。
     次のページの目次ですけれども、4項目ございます。WG設置の背景、諮問事項、それから、サステナビリティ開示をめぐる内外の状況、それから、サステナビリティ開示の論点、最後に、御議論いただきたい事項について御説明させていただければと思います。
     次のページをお願いします。まず、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループの設置の背景です。こちら2023年の3月から、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示を開始しています。ただ、個別具体的な基準がないという状況でして、今後、この開示が具体的な基準に準拠して行われることで比較可能性を高め、投資家に有用な情報が提供されることが重要というふうに考えています。
     SSBJ様におかれては、昨年6月に最終化した国際基準(ISSB基準)を踏まえて、日本における具体的なサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)を開発いただいておりまして、今月中に公開草案を公表予定というふうに伺っております。
     このSSBJ基準の適用対象につきましては、グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業、すなわち、プライム上場企業ないしはその一部から始めるということが考えられる中、公開草案の公表に際しまして、具体的な適用対象ですとか適用時期を検討することで公開草案に関する適切な議論が行われる、あと、企業においても基準適用に向けた準備が進むというふうに考えております。
     サステナビリティ情報の信頼性を望むという声もございまして、国際的にもサステナビリティ情報に対する保証の在り方についての議論が進んでいるところです。我が国におきましても、サステナビリティ開示基準ですとか保証制度を導入するに際しては法改正を視野に入れた検討が必要ということで、こういった議論を進めていく必要があります。
     そういった事情も踏まえまして、金融審議会において、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループを新規に設置するということが決められております。諮問文は4ページですけれども、2月19日に大臣からの諮問が出ております。
     次に、内外の状況です。まず、6ページに行っていただきまして、先ほど申し上げた2023年3月期から有報におけるサステナビリティ情報の開示がスタートしております。「サステナビリティに関する考え方及び取組」という欄を新設しまして、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」及び「指標及び目標」の開示を求めるというところが始まっております。
     今後は、右側にありますように、我が国におけるサステナビリティ開示基準、すなわちSSBJ基準を円滑に導入していくというところを検討していきたいというふうに考えております。
     次のページですけれども、まず、そのベースとなる国際基準、ISSB基準との関係ですけれども、ちょうど先月、2月22日にIFRS財団が、各国が制度導入際の指針、法令ガイドというものを公表しております。その中でIFRS財団は、今後、法域ごとに、各法域における適用状況(Jurisdictional Profiles)というものを作成予定であるというふうな説明がありました。
     各法域における適用状況につきましては、下の四角ですが、ISSB基準との整合性ですとか適用対象企業、それから経過措置等について、法域別の特徴から作成されるということです。
     まず、ISSB基準との適合性・整合性ですけれども、ISSB基準が完全な形で制度に組み込まれているか、完全な形で組み込まれていない場合は、自国基準とISSB基準の整合性の程度及びISSB基準と機能的に整合性が確保された結果をもたらす、deliver functionally aligned outcomesというキーワードが使われていますけれども、そのような形で自国基準が設定されているかというところが見られるということです。
     適用対象企業につきましては、各法域における適用状況の記載というところで、サステナビリティ開示がどの範囲の企業に強制されているかというところです。特に我が国で関係あるのが(b)と考えておりまして、流通株式数・株主数が多く、売上高が大きい大規模上場企業のうち、全てまたは大半の企業。all or most PAEということで、考え方としては、企業数ではなくて法域の経済や活動における重要な企業の範囲をカバーすることを意図しておりまして、法域におけるGDPとか主要な株式指数銘柄の時価総額全体に対して強制されている企業の相対的な割合を見ていくということが示されいます。
     次のページお願いします。8ページ目です。これはISSB基準で認められている経過措置です。
     まず、①として気候関連のみの報告も初年度のみ認めるという話がございます。あと、報告のタイミングでございますけれども、本来的には、財務諸表とサステナビリティ開示の同時報告というところが原則とされてございます。ただし、報告書年度には、財務諸表報告後、半期報告書に合わせてサステナビリティ報告を行うことも許容しているということが出ております。
     ⑤のScope3でございますけれども、こちらも本来Scope3のGHG排出量の開示を行うことが必要とされていますけれども、報告初年度においては、Scope3のGHG排出量を開示しないことも許容しているというところでございます。
     次のページでございますけれども、こうしたISSB基準ですが、2023年6月に最終化されまして、これを受けて、下の参考ですけれども、SSBJにおかれては、先ほど申し上げたように、今月末に公開草案を公表されて、確定につきましては、遅くとも来年の3月末というふうなことが予定されているところです。
     次のページをお願いします。次からは諸外国の状況ということで、まず、アメリカです。アメリカは、今年の3月6日にSECが気候関連開示を義務化する最終規則を公表しています。企業規模に応じて2025年開始会計年度から段階的に適用することになっています。対象企業は全てのSEC登録企業、開示媒体は年次報告書及び証券登録届出書でございます。
     開示内容につきましてはTCFDにおける4つの柱に類似した概念を採用されているというところですけれども、温室効果ガスについて、一番下のポツですが、Scope1・2は開示要請されていますけれども、Scope3は不要という形になっています。
     適用のタイミングにつきましては、次の11ページを御覧いただければと思いますけれども、大規模、早期提出会社につきましては、Scope1・2の開示が始まるのが2026開始会計年度です。保証については、3年遅れまして2029開始会計年度からスタートするというところで、だんだん規模の小さいところに適用が進んでいくということです。
     アメリカでもカリフォルニア州は状況が異なっていまして、12ページです。こちらは去年の10月7日に3つの法案が成立しています。適用対象規模としましては、米国法に基づいて設立されているとか、年間総売上高10億ドル超で、カリフォルニア州で事業を行っていると、こういった要件を満たす企業につきましては、特にSB253のところですけれども、Scope1・2は2026年以降、それから、2027年以降はScope3の排出量も求めているというところです。
     Scope3につきましては、後ほど御議論があるかと思いますけれども、正確性の担保が難しいことに鑑みまして、合理的な根拠に基づき誠実に開示された情報については行政処分の対象とならないという、ある意味セーフハーバーのようなルールが出されているというところも御留意いただければと思います。
     13ページは適用のタイミングを表にしたものです。次に、14ページ、カナダですが、こちらもつい最近の動きでございまして、カナダも自国におけるサステナビリティ開示基準の設定主体、CSSBというものを新設し、ちょうど3月13日に公開草案を出しています。こちらの案では、2025年1月1日以降開始する会計年度より任意適用を開始する。適用の義務づけをどうするかというのは、これから議論していくというような状況です。
     こちら開示のところの③ですけれども、Scope3は原則求められるというところですが、初年度及び最初の2年間は開示免除が提案されているという状況です。
     次の15ページから、EUの動向でございます。こちらは2023年1月にCSRDが発効しまして、もう既に2024会計年度から、段階的にサステナビリティ報告が要求されてくるというところです。日本企業におきましては、2025会計年度から大会社に該当する欧州子会社に対してCSRDに基づく開示が求められる。さらに、2028会計年度からは、EU域外企業に対する要件を満たす場合、一定の純売上高があるとか、EU域内において純売上高があるなどの要件を満たす場合には、連結ベースでのCSRDに基づく開示が求められるという状況です。
     保証につきましては、これはアメリカとは異なりまして、開示の適用開始と同時に限定的保証から開始して、その後、合理的保証へと移行するということが記載されています。法定監査人及び監査法人に加えて、監査法人以外の独立保証業務提供者による保証意見の表明を各加盟国で許可できるというところです。これをprofession-agnosticと呼んでいます。
     次のページに行っていただきまして、EUにおきましては様々なガイドライン等が出ていますけれども、着目していただきたいのは2つ目の四角、2024年の2月に、もともと域外企業向け基準、先ほど2028年から始まるというふうに申し上げたんですけれども、そこの基準の採択期限が当初今年の6月となっていたんですけれども、2年延期されて、2026年6月まで延期されているという状況です。
     以上がEU、諸外国の状況でございます。
     次に、保証に関する話につきまして、17ページをお願いします。これは去年3月28日に、証券監督者国際機構(IOSCO)というところがサステナビリティ報告の保証に関する報告書というものを出しています。こちらでサステナビリティ報告保証に関するIOSCOのビジョンが示されていまして、IAASBですとかIESBAにおけるサステナビリティ報告保証に関する基準開発をIOSCOがサポートしていくという旨が表明されているところです。
     報告書の概要は以下ですけれども、特に注目すべきは、職業にとらわれない基準、profession-agnostic standardsというところをベースにしているというところです。
     次の18ページ目でございます。こちらは保証基準でございます。保証基準は、昨年の8月2日に公開草案が出されて、市中協議がなされている。本年の9月に最終化される予定です。
     2つ目の黒丸ですけれども、こちら職業にとらわれない(profession-agnostic)基準として、全ての保証業務提供者が適用可能な基準とする方針で、気候変動、人的資本も含むあらゆるサステナビリティトピックに対応可能、あらゆるサステナビリティ報告の枠組みに適用可能というふうな形になっています。それから、一番下ですけれども、保証水準についても、限定的保証及び合理的保証の双方の保証業務に適用可能という形で、かなりジェネラルな形でつくられているということです。
     次のページの倫理基準です。IESBAによるサステナビリティ関連倫理基準、こちらの公開草案は今年の1月末に出てございまして、現在、市中協議中です。こちらも最終化が本年12月までに最終化されるという予定です。コンセプトは似ておりまして、職業にとらわれない(profession-agnostic)基準として、全ての保証業務提供者が適用可能な基準で、あらゆる開示基準、あらゆる保証基準に適用可能。一番下にありますように、限定的保証及び合理的保証の双方の保証業務に同様の規定を設定しているというような枠組みになっています。
     以上が国際的な動き等々の御紹介でした。
     これから、本題のサステナビリティ開示の論点に移りたいと思います。
     まず、21ページでございます。サステナビリティ開示基準のあり方でございます。こちらは先ほども申し上げましたように、2023年6月に、サステナビリティ情報の開示に関する国際的な基準としてISSB基準が設定されまして、今後、各国で同基準の適用に向けた動きが進展していくという状況です。先ほど代表的な国々を見ていただきまして、そういう状況が今進んでいるというところです。
     このように各国で開示基準を制度化する動きが進展する中で、グローバルに展開する我が国企業によるサステナビリティ情報の開示について、国際的な比較可能性を確保することで投資家から評価され、企業と投資家との建設的な対話を促進して、中長期的な企業価値の向上につなげるということが重要というふうに考えています。企業の皆様にとっても、我が国独自の基準ではなくて、国際的に比較可能性が確保された基準に基づいて情報開示を行うほうが実務負担の観点から望ましいという声も伺っているところです。
     このような点を踏まえますと、我が国においてグローバルに展開する企業に適用されるサステナビリティ情報の開示基準は、国際的なベースラインの基準となるISSB基準と同等であるということが求められるのではないかというふうに考えています。
     次に、適用対象を考えていくに当たりまして、我が国の資本市場の状況を御覧いただければと思います。我が国の資本市場には、グローバルな投資家と建設的な対話を行う企業を対象としたプライム市場があり、投資場の時価総額は圧倒的に大きくて、下の図にございます96.2%ということになっています。
     プライム上場企業は既にTCFDの枠組みによる気候関連開示を行っているということですとか、あと、グローバルの投資家との対話では、サステナビリティ情報の重要なテーマの1つになるということを踏まえますと、プライム上場企業を対象として制度の在り方を検討していくということがまず考えられるのではないかというふうに思っております。
     さらに、次のページに行っていただいて、プライム市場においても上場する企業間の規模の差が大きいという状況がありまして、時価総額3兆円以上で全体の55.4%、時価総額1兆円以上のプライム上場企業で全体の73.2%ということで、ほぼ4分の3近くを占めているというような状況が見てとれます。
     次のページですけれども、時価総額1兆円以上の企業の半数、このブルーのラインですが、半数以上において外国人株主が3割以上いるという状況です。
     次のページです。諸外国の動向を見ていますと、EUにおきましては、大企業について、上場・非上場に限らず、総資産とか売上高、従業員によって対象企業を規定している。規模によって段階的に適用するということは変わらないですけれども、規模の切り方として、EUはこのような考え方を取っている。その背景にはダブルマテリアリティの思想があるのではないかというふうに考えています。一方で、米国では、時価総額によって対象企業を規定しているということで、米国は明確にシングルマテリアリティの方針が示されているというところです。
     次に、先ほどちょっとTCFDに触れましたけれども、2022年4月から、プライム上場企業に対してはTCFD提言に沿った開示がcomply or explainベースで求められているというところです。ただ、開示の状況につきましては、JPX400に限って見ても、11項目全てを開示している企業は102社のみという状況です。
     次の27ページですけれども、実際に細かく見ていきますと、時価総額1兆円以上の企業につきましては、開示が相当に進んでいるというところですけれども、時価総額が低くなると、特にScope3の開示ですと、一番低い3,000億円未満のカテゴリーですと24%しか開示できてないということで、企業ごとに開示状況にかなり差があるというところが見てとれる状況です。
     次のページです。今回、開示と保証を併せて考えていく必要があろうかと思いますけれども、サステナビリティ開示基準の導入時期を考えるには、保証制度の導入も考慮に入れるということが重要です。サステナビリティ開示基準と保証制度の導入を同時に行うのか保証制度を遅らせて導入するかについては、保証制度のあり方とか実務面も踏まえた検討が必要というふうに考えています。
     同時期に導入する利点としましては、最初から情報の信頼性が確保できるということがございます。一方で、考慮事項として、準備される企業さんも含めて過度な負担にならないかというところですとか、あと、保証提供者側も十分にリソースを確保できるのかというところが考慮事項になろうかと思います。
     保証制度を遅らせて導入する場合には、逆に企業、保証提供者ともに対応がよりしやすくなる。一方で、最初に保証が入ってない年の情報について、後から保証人から問題点を指摘されるという可能性がございます。
     上の同時期に導入というのは欧州でございまして、下の遅らせて導入というのは米国SECという状況です。
     こういった状況を踏まえまして、29ページです。気候変動関連の情報開示につきましては、先ほど見ていただきましたように、プライム上場企業の中でも対応状況に差があるという状況です。他方で、欧米では、企業規模ですとか市場規模に応じた段階的な導入というのが既に決定されている状況です。適用時期につきましても、特に意識しなければいけないのが、日本企業への域外適用が始まる2028年12月というものがあります。
     こういった状況を踏まえますと、我が国では、例えば、この以下の図にお示ししたような、プライム市場上場企業のうち、時価総額の大きい企業から順次適用対象企業を拡大するということが考えられます。その際、最初の点線でございますけれども、一定の任意適用期間も設けてはどうかと考えています。
     さらに下ですけれども、最終的には全プライムの上場企業の適用拡大を考えていくということですが、そちらにつきましては、先行適用した時価総額1兆円、こちらの表では1兆円と書いていますけれども、1兆円以上による適用状況を踏まえて最終判断するということが考えられるのではないかと思っております。
     このほか、こちらの絵はプライムだけですけれども、プライム上場以外もサステナビリティ情報の開示は広くバリューチェーンが対象となりますので、負担に配慮しながら開示を進めていくということが重要かなというふうに考えています。
     これらの企業につきましては、中長期的に好事例を通じた開示の促進ですとかTCFD提言の利用など、様々なツールを使って開示の底上げを図っていくというアプローチがあるのではないかというふうに考えております。
     次の30ページは、今申し上げたのを図にまとめたものです。
     31ページ目、論点です。まず、有報においてサステナビリティ情報の開示を行う場合には、1つ問題となりますのは、提出期限である「事業年度後3か月以内」に作成とか保証を終えられるのかというところが1つ論点です。実務が定着するまでの間の経過措置として、例えば、2段階の開示ですとか、保証の強制適用の時期を遅らせるなどの方策というものも検討されるのかなというふうに考えています。あと、仮に有報の提出期限を延長する場合には、株主総会に有用な情報が提供されることをどのように確保するのかという点についても併せて検討が必要かなというふうに考えています。
     適用初年度の経過措置、先ほどISSB基準のほうを見ていただきましたけれども、こちらをさらに延長するということも考えられるのではないかというのが2つ目です。
     3つ目ですけれども、特にScope3、バリューチェーンからの情報や将来情報というところで、やはり現状では確度、精度の低い情報というものがありますので、これらの情報については、先ほどカリフォルニア州のセーフハーバー・ルールも見ていただきましたけれども、こういったものについてセーフハーバー・ルールを設けることが考えられないかというところも論点としてはございます。
     それから、全体的にバリューチェーンに関するデータ収集の課題にどう向き合っていくのか、さらには、実務的な対応について、より細かいところについても、どのように対応していくのかというようなところがございます。
     あとは、こういった新たなサステナビリティ開示基準に準拠して開示を行う企業に対しては、何らかのメリットとか負担軽減、開示の意義を実感できる仕組みというような形も、そういう枠組みを含めて議論する必要があるかどうかということがございます。
     次の2ページは資料ですので飛ばさせていただきまして、最後の御議論いただきたいところに飛んでいただきます。最後、御議論いただきたい事項①として、まず、本日の大きなテーマ、適用対象企業と適用時期でございます。
     1つ目の黒ポチですけれども、我が国における具体的な適用対象と適用時期についてどのように考えるのかというところについて御議論いただきたいというのがまず1点目です。
     さらに、開示基準の任意適用を促進して、我が国市場はサステナビリティ開示に積極的に取り組む市場としてグローバルに認知されるということが重要であるというふうに考えていますけれども、そういった考え方についてどうかということと、あと、任意適用を促進するための方策として何が考えられるのかというところについても御議論いただければというふうに思います。
     それから、プライム上場企業のうち、時価総額の大きい企業から先行して適用を始め、その後、対象を拡大するという図でお示しした考え方についての御意見もいただければというふうに思っています。
     次に、サステナビリティ情報の開示は広くバリューチェーンが対象となりますので、プライム上場企業以外のところについてもどう考えるのかというところも御議論いただければと思います。
     最後でございますけれども、次のページです。企業が有価証券報告書においてサステナビリティ開示基準に準拠した情報開示を行っていくためには、全体としてどういった環境整備が必要となるかというところも含めて御議論いただければというふうに考えています。
     私からは以上でございます。
     
    【神作座長】 
     御説明どうもありがとうございました。
     それでは、これより委員の皆様方から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。本日は初回でございますので、限られた時間ではございますけれども、全ての委員の皆様から4分から5分以内で御意見等を頂戴できれば大変ありがたいと存じます。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。
     それでは、井口委員、お願いいたします。
     
    【井口委員】 
     御説明ありがとうございました。最初にご意見させていただき、ありがとうございます。私のほうは、サステナビリティ開示基準と、あと、後段にあります御議論していただきたい事項についてコメント、意見させていただければと思っております。
     サステナビリティ開示基準につきましては、御提案いただいている制度設計の議論の前提には、21ページの下のほうに書いていただいていますように、SSBJ基準とISSB基準の同等性が確保されているということがあると理解しております。これが、全ての議論の前提と理解しております。資料7ページ、野崎課長から御説明がありましたが、ISSBの言い方を使いますと、SSBJ基準においてISSB基準と機能的に整合性が確保された結果がもたらされている状況にあるということが大前提であるというふうに理解しております。
     こういったことが確保されていれば、企業さんはSSBJ基準に準拠することによって、自動的にISSB基準にも準拠できることになりますし、日本の投資家を含めたグローバル投資家にとっても、法域を超えて同じサステナビリティ情報を見ることができるようになると思いますので、日本の資本市場の発展にとっても大きなプラスではないかと思っております。
     一方、私はSSBJの委員で、議論にも参加させていただいておりますが、今度、公開草案が出るSSBJ基準では、この状況は確保されているものと思っております。ただ、ここにいらっしゃる他のワーキングの委員の方は、この状況についてまだ確信というか、確認されていない、確認できない方もいらっしゃると思います。私はSSBJの委員でやや内部者に近いような形になっておりますので、皆さんの信頼性もないと思いますので、例えば、個人的な意見となりますが、サステナビリティの保証の方とかあるいはISSBの方にSSBJ基準とISSB基準の同等性について御確認いただくことをやっていただくのも1つかと思っております。
     続きまして、御議論いただきたい事項のところに入ります。最初のところの黒丸の具体的な適用対象と適用時期につきましては、29ページと30ページにありますが、野崎課長が御説明いただいた中で、案1のほうに賛同いたします。
     理想的には、グローバル投資家の投資対象と位置付けられておりますプライム市場全般において、ISSB基準と同等のSSBJ基準の導入が望ましいということになると思っておりますが、その中でも投資家ニーズの高いところ、対応可能な企業から段階的に導入していくということが妥当ではないかと思っております。
     まずは、適用を開始するということが大事と思っておりまして、そうすれば、会計の世界でも国際会計基準が順次採用されているという状況があると思いますが、同じように、時価総額3兆円や1兆円以上の企業以外のプライム市場上場企業、あるいは、時にはグロース市場上場企業の中からもISSB基準と同等性があるSSBJ基準を採用する企業も増えていくものというふうに期待しております。そして、このような状況の先に、資料では「203X年3月期」と書いていただいておりますが、プライム市場全体に適用可能な状況ができてくるのではないかと思っております。
     その意味では、案1では、義務化は時価総額3兆円以上あるいは1兆円以上というふうに御記載いただいていますが、それ以外の企業もSSBJ基準に準拠することが可能であるということを強調していただくということも重要ではないかと思います。
     黒丸の3つ目にございます先行適用についてです。欧州などでサステナビリティ開示基準が先行する中で、日本の資本市場においても義務化するかどうかの以前に、グローバル投資家からの株主総会を含めてこういった事項の開示要求が増してくるというふうに思っております。日本の企業の方の中にもこれに早期に対応したいという企業もあると思いますので、先行適用も認める方向が妥当というふうに考えております。
     最後ですが、サステナビリティの保証についてです。御説明いただいたグローバルな状況あるいはサステナビリティ情報の信頼度向上の観点から、導入が必要と考えます。ただ、まずは、サステナビリティ開示に対応するということが、あるいは、SSBJ基準に対応するということが重要だと思いますので、案1にお示ししていただいているとおり、開示から1年遅れの保証の導入でいいのではないかと思っております。
     また、財務情報とサステナビリティ情報のつながりを重視しますISSB基準の在り方、あるいは、ISSA5000やIESBAなどのサステナビリティ保証基準案からしますと、profession-agnosticということが認められているとしても、多くの部分を監査法人の方が担われる必要があると思いますので、監査法人の保証体制の状況も考慮に入れ、導入範囲などについても検討していく必要があるのではないかというふうに思っております。
     少し長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、弥永委員、御発言ください。
     
    【弥永委員】 
     ありがとうございました。
     まず、適用対象企業と適用時期については、御説明いただいた資料29、30ページのような方向性で基本的によろしいのではないかと思います。案1がいいのか案2がいいのかということについては、私は確固たる意見を持っていないのですけれども、しかし、EUにおける域外適用が行われるタイミングでは、やはり我が国でも保証がついているということが必要だろうと思っております。
     さらに、基本的にはこのような時価総額に着目されることは適切だと考えるのです。しかしながら、EUにおいて域外適用を受けて開示していらっしゃる企業が日本においては開示しないというのは、我が国における例えばフェア・ディスクロージャー・ルールとか内部者取引についての規制というものとの整合性を考えると、適当ではないのではないか。
     すなわち、EUにおいて開示する以上は、日本においても、有価証券報告書でなくても、例えば半期報告書でも結構ですし、もう少し言えば臨時報告書でもよいと思うのですけれども、何らかの形で日本の投資家に日本語で、日本の企業、日本の金融商品取引法の適用を受け上場している企業としては、情報を提供しなければバランスが取れないのではないかという印象を受けております。
     それとの関連で、この点は非常にいろいろな意見があり、多分、私のような意見を持っていらっしゃる方は少ないかもしれませんけれども。任意に既にこのサステナビリティ情報を開示されている企業さんがある。これは非常に結構なことだと思うのですが、法定でこのような情報を入れていくということになりますと、任意で開示されている情報という位置づけで十分だということはだんだん妥当しなくなってきていて、任意に仮にここで強制的に開示させようと思う情報と同じような情報を開示されるような場合には、せめて臨時報告書なり何なりで開示していただくという、つまり、わざわざ情報をつくる必要はないけれども、情報を仮につくられるのであれば、法定開示というところに取り込むという考え方があってもよいのではないかと思っております。
     次に、今回の野崎様のご説明を聞いて非常にここは重要だと思いましたのは、会社法との関係で、これは必ずしも明文で要求されているわけではありませんけれども、金融商品取引法上、既にサステナビリティ情報の開示を要求しているということは、事業報告に記載することが一定の範囲で、どの程度の内容を含めるかは別として、要求されていると解釈すべきだろうし、さらに、株主総会で質問されれば説明義務の対象にもなるということを考えますと、有報がせめて株主総会の前に提出されていて、投資者にとって、株主にとってアクセス可能であるという、こういう状況を確保するということが望ましいのではないか。
     そういう意味において、例えば、事業年度の末日から4か月という期間を、有報を株主総会より前に提出する会社には認めるという、つまり、株主総会でその情報を使えるようにするために、それを望んでいる企業に対しては有報の提出期限を延ばすというような、こんな方策はないのかということを考えてもいいのではないかと思います。
     実際に、金融商品取引法の下でも、ちょっと文脈は違いますけれども、会計監査人設置会社で連結財務諸表を作成している会社については、有報における個別財務諸表はかなり簡略化できるというルールを置いているわけで、つまり、会社法上の会計監査人設置会社であるかどうかということに着目して規制を分けているという前例もございますので、そういう意味において、会社法上の定時株主総会、こことの関係で延ばしてあげる。そういうこともあるのかなと思いました。
     最後に、普及させるためには、セーフハーバー・ルール、これはやはり開示される企業にとって、あるいは、開示される企業の役員の方にとって安心感を与えることができるのではないかと思うので、合理的にそのようなルールを定めることができるのであれば、ぜひ導入していただきたいと思います。
     ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     ほかに御意見、御質問等ございましたらどうぞ。それでは、近江委員、お願いいたします。続いて、三瓶委員、お願いいたします。
     
    【近江委員】 
     御指名ありがとうございます。近江です。よろしくお願いいたします。
     運用機関における投資の意思決定プロセスにおきまして、サステナビリティ情報はますます不可欠なものとなってきておりまして、信頼性のあるサステナビリティ情報が提供されることが非常に重要であると考えております。
     運用機関の立場から見ますと、プライム上場企業は、グローバルの投資家を含む幅広い投資家の投資対象であるということを踏まえまして、全プライム上場企業にSSBJ基準の義務化が要請されるべきであるというふうに考えますし、また、タイムラインが明確化されることは望ましいとそのように考えてございます。2030年は、多くの企業にとっても気候変動に関するネットゼロの中間目標設定のタイムラインでもありますので、2030年といったところを一つのタイムラインとして考えるということは、一つの考え方かなというふうに思います。
     その上で、国内外の開示基準の動向を踏まえまして、市場規模に応じた段階的な対応を促すということを肯定的に考えますけれども、やはりスピード感というものは大事であって、SSBJ基準の最終化後に速やかに適用を推進していくということが望ましいと考えます。
     初期段階の適用対象について時価総額1兆円までをめどとすることについては、23ページにも示されておりますけれども、対象企業の時価総額7割以上を占めるとしても、企業数では限定的であって、投資ユニバースという観点からはやや不十分であると考えますので、5,000億以上の義務化というところを早期に求めていくということが望ましいのではないかと考えます。
     24ページを見ましても、時価総額5,000億円以上の企業では、グローバルの投資家層が4割から5割というところになりますので、既にサステナビリティ開示の要請を投資家側から受けている対象であると、そのように認識しております。
     TCFD提言への対応状況を踏まえましたときに、日本企業のうちでTCFDの賛同企業数は1,000社を超える状況となっているということは、グローバルでも大変高く評価をされている一方で、資料の26ページにあるとおりで、各要請事項へのコンプライの度合いが低いという状況というところは課題だというふうに考えておりますので、信頼性の観点からも、日本の企業がこのサステナビリティ開示に積極的に取り組む市場としてグローバル認知されるためにも、早期にこうした状況が改善されて、質・量ともに評価される状況となるというところを政策的に後押ししていくということが必要であると考えます。
     運用機関の実務において、TCFDに賛同しているか否かにとどまらず、企業における気候変動に関するリスク機会の評価に関する情報が十分開示されているかというところが評価されておりますので、開示情報の質の向上というところを早急に促していくということも重要かと思います。
     企業とのエンゲージメントに携わる立場からしますと、35ページに示されているとおり、バリューチェーンにおけるサステナビリティ情報の入手が課題になっておりますので、開示の裾野を広げていくというところは、市場全体のサステナビリティの向上につながると、そのように考えてございます。
     私からは以上になります。ありがとうございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     続いて、三瓶委員、お願いいたします。
     
    【三瓶委員】 
     三瓶です。御指名いただきありがとうございます。
     まず、「ご議論いただきたい事項」に沿ってお話をしますが、私は案1、案2の2択からどちらという答えは今のところありませんが、考え方を共有させていただきたいと思います。
     ここは有報開示の話をしている場であって、金商法の考え方の中でやっているので、そこからすると、結論的には、プライム上場企業の一部から早期に適用するというのがいいんだろうというふうに思っています。
     ただ、より広いコンテクストを考えたときに、この課題というのは、今まで経済活動をしてきた中でのいわゆる負の外部性について、どういう対応を企業はするのか。それを踏まえ投資家は判断するが、今では投資判断として非常に重要な要素になってきているんだということですよね。そういう意味で、経済活動規模が大きい企業は先行してそういった開示していくべきだと思っています。
     そうなると、時価総額だけかということがあります。具体的には、諸外国で見ているように売上高とか従業員数というのがあると思います。実際に、7ページのほうでも、「法域の経済や活動における重要な企業の範囲をカバーすることを意図している」というふうになっていますから、そういう考え方があります。
     特に日本では、今、低PBR問題というのがよく挙げられて、その対応をしているわけですけれども、ある時価総額6,000億円の日本企業と同業他社である米国の企業を比較したときに、時価総額は米国の同業他社に比べて8分の1なんだけれども、連結売上高は1.6倍なんですね。ですから、経済規模ということで考えるのが意図なんだけれども、それを時価総額で切ったときに、こういう会社は時価総額1兆円以上の先行適用対象に入ってこないんですよね。そういうことでいいのかということもあります。
     ですから、プライマリーの基準は時価総額というのでいいと思うんですが、それとセカンダリーの基準として売上高と従業員数というのは併せ持っておくということが非常に有用なんじゃないかなと思います。そのときに、これは時期と関連するんですが、私はできるだけ早期にというふうに思っています。ですから、案1か2かと言えば案1のほうなんですけれども。
     例えば、時価総額1兆円以上の先行適用173社が開示をするわけですけれども、その企業の売上高を全部足して見たときにどのぐらいになっているのか。これが海外の一定の先行適用の会社の合計と比べてあまりにも見劣りするようだと、日本の姿勢が疑われるわけですよね。ですから、そういった観点も、段階的にやる場合に区切りをつけるときの一つの目安として考えておくべきではないかなというふうに思います。
     今、資本市場では、上場企業が例えば化石資産を売却する、売却先が非上場の会社であるとかどこかの国営企業である場合に、もうこれはそんなばば抜きのようなことしているのでは駄目だということで、厳しく見られています。ですから、上場・非上場という垣根もだんだんなくなっているわけです。ですから、そんなことを考えても、今後、国内での段階的な適用の中で、非上場でも経済活動規模が非常に大きい場合には、対象にならざるを得ないというようなこともあり得ると思います。
     そうすると、時価総額1本というのはやはり不都合があって、連続的にそういったことを考えていくと、セカンダリーの条件というのがあったほうがいいのではないかなというふうに思います。
     そして、全般のところに関連するんですけれども、先ほど31ページの御説明の中で、「実務が定着するまで」という表現があったんですけれども、これは定着するまで待っているというよりは、期限をあらかじめ決めて、それで、ある種の期待のマネジメントをしていくということが必要なのではないかなと思います。
     現状を前提にするのではなくて、いずれ将来的には財務と非財務のシンクロしたデータ開示というのが必要になってきますから、そういったことを踏まえると、そういったデータ収集を、財務とシンクロして社内で収集するとか把握して取締役会にかけるとか、そんな体制づくりをもう準備していかなきゃいけないんですよというような期待のマネジメントというのが重要になってくるというふうに思います。
     以上です。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     続きまして、オンラインで御発言を求めておられます柿原先生、それから松井先生、順番にお願いいたします。まず、柿原委員から御発言をお願いいたします。
     
    【柿原委員】 
     川崎重工業の柿原と申します。よろしくお願いいたします。私からは企業の立場で、サステナビリティ担当の経験を踏まえて意見を述べさせていただきたいと思います。
     まず初めに、議論に当たりまして、企業が真に投資家の投資判断に役立つ情報開示に集中できるように、言い換えますと、投資家のニーズに配慮し、量より質を重視しました企業・投資家双方の実態に沿った議論が必要となると考えております。その観点から申しますと、我が国におけるサステナビリティ情報の開示と保証のルールの策定に当たりましては、国際的な調和を図るとともに、開示の有用性と企業の負担のバランスを考慮することがまず必要と考えております。
     続きまして、御議論いただきたい事項の各論点について述べさせていただきます。
     1つ目は、適用対象企業と適用時期についてです。こちらにつきましては、プライム上場企業の一部から段階的に導入するということが適切であるというふうに考えております。ただし、導入時期につきましては、時価総額で分けられておりますが、企業の準備期間を考慮いたしまして、期末より前のどの時点の時価総額をベースにするかを明確にする必要があると考えております。
     2つ目は、開示基準の任意適用の促進についてです。任意適用を認めることについては賛成であります。また、統合報告書で積極的に開示している先進的な企業を中心に、有価証券報告書でも開示を推奨することは現実的であるというふうに考えます。
     ただし、任意適用をして有価証券報告書でサステナビリティ情報を開示した場合、金商法の虚偽記載のエンフォースメントの対象になると企業が萎縮する懸念がございますので、こちらは慎重な議論が必要だと思っております。
     3つ目は、開示基準適用の義務化についてです。資料30ページの案2を支持いたします。EUのCSRDに基づく開示が日本企業に連結ベースで求められるのは2028年となりますが、日本では3月決算企業が多いので、実質的には2029年3月期から開示対象年と認識をしており、この点をきちんと明示するべきだと思います。また、ロードマップの保証につきましては、限定的保証ときちんと明記する必要があるというふうに考えます。
     一方で、米国SECのサステナビリティ開示基準は2024年3月に公表されましたが、Scope3の開示適用免除、保証の範囲がScope1・2に限定されたこと、また、適用時期の後ろ倒しと、かなり現実路線に変更されております。この米国基準につきましては国際的な影響力が大きいので、我が国のロードマップを策定する際は、米国SECの動向や経緯も考慮すべきと考えます。
     4つ目は、サステナビリティ情報の開示は幅広いバリューチェーンが対象となり、35ページのように、データ収集の困難さや、各国の法規制や慣行が異なるためのデータ定義の難しさ等の課題があるという点です。
     特にScope3の情報収集には課題が山積しており、連結子会社やバリューチェーンからのデータ収集に関する具体的な解決策について、作成者側の意見や上場企業以外の企業の声も含めながら、Scope3の開示を求めるかどうかも含めて、丁寧で慎重な議論をよろしくお願いいたします。
     5つ目は、サステナビリティ情報の年度の報告タイミングの緩和です。ISSB基準が求めていますが、サステナビリティ情報を有価証券報告書と同時に開示するのは、データ収集の問題があり、高いハードルがございます。米国SECは、年次報告書の提出後、Scope1・2の開示には追加期間を与え、翌年、第2四半期報告書の期限までに提出を求めています。Scope3の開示を求める場合は、さらに負荷が高くなります。米国の事例も参考にして、報告タイミングの緩和の検討が必要になります。
     6つ目、最後になります。サステナビリティの監査につきまして、今後議論が深まっていくものと思いますけれども、限定的保証・合理的保証について、財務情報の監査と比較してコストや対応工数はどの程度かかるのか、そして、米国のようにScope1・2に限定した場合と欧州のようにサステナビリティ全体を対象にした場合のコスト等も比較しながら提示し、それも踏まえて検討すべきと考えております。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     続きまして、松井委員、御発言ください。
     
    【松井委員】 
     よろしくお願いいたします。オンラインから失礼いたします。
     もう既に様々ほかの委員からのご意見もありましたけれども、まず、導入される会社の企業の規模、導入時期、それから早期適用等の可否につきまして意見を述べさせていただきます。具体的な時期等ということについては実際にどのような形になるのが実務的に望ましいかということについての感覚はないのですが、先ほど三瓶委員がおっしゃっていたマテリアリティの考え方、それに沿って考えた場合に売上や従業員、あるいは、それに類する規模基準で適用を考える必要があるのではないかという点について発言をいたします。
     これについては、ドメスティックな性格の投資家が多いけれども国内での事業規模が大きく、インパクトが大きい企業は一定数あるかと思います。現在のご提案ではこうした企業は開示の対象となるタイミングが遅く、あるいは対象外となることもあるわけですが、こういった企業に対して金商法の側からどういうふうに網をかけるのかという問題は発生するかと思います。現在のご提案では、時価総額の大きな企業からまず適用等を促し、またプライムをターゲットに順次法制化していくということだと思いますけれども、追加的に金商法上の規制の対象となるべき企業があるとなった場合には、早期に注意を喚起して、どういったタイプの企業についてはどういうサステナ開示を求める余地があるのかということをアナウンスしていくという形で、早めに対応への意識を喚起するということが重要ではないかというふうに思っております。
     それから、報告のタイミングや保証を入れる時期については、これは実務上非常にいろいろと問題があるだろうと思っております。たとえば、担い手の候補である公認会計士の方々も現状で決して余裕があるわけではないなかで、保証が実際どのぐらいの作業量になるのか。具体的な保証をする方々という者がアベイラブルなのかどうかということについて、取り組みながら、走りながらやっていくしかないということではあるかと思いますが、手当をしなければなりません。ただ、このワーキングで導入時期を決めますと、企業としては、年次報告のタイミングと合わせて保証を依頼する時期や相手をどうするかを考え、合わせて株主総会を開催する時期といったようなことも含めて計画しなければならず早めに考えをまとめなければいけないということがあるかと思いますので、まず、こういったものを導入する際に猶予を設けるという考え方は現実的であると考えております。
     それから、第1点の注意喚起に限らず、そのほかの企業に任意の開示の拡大をするという場合の方策という話もありましたけれども、この点については、もう既に金融庁さんが行っておられるような好事例の例示のような形で、どういった開示の仕方というのがよいのかについて、まずイメージを持ってもらうのが第一だろうと思います。ただ、ボイラープレートのような開示や保証になってしまうと意味がありませんので、こういった取組というのが、全部似たような形になっていくというようなことを推奨するような開示や例示にならないように気をつける必要があるだろうと思っています。
     以上です。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     続きまして、会場で御発言の希望を寄せていただいております森内委員、藤本委員、高村委員、関口委員、阪委員、浅川委員の順番で御発言をお願いしたいと思います。初めに、森内委員から発言をお願いいたします。
     
    【森内委員】 
     森内でございます。公益財団法人日本適合性認定協会でございますが、金融界の皆様にとってはほとんどなじみのない組織だと思いますので、最初に少しだけ自己紹介をさせていただき、その後、2つ意見を述べさせていただきたいと思います。
     日本適合性認定協会は、1993年に経団連主導の下、鉄鋼連盟、自公会、電事連を含む35の産業団体から基本財産の出捐を受けて設立された認定機関でございます。2010年からは内閣府が主管の公益法人となっております。
     私どもは、ISO基準に基づいた保証業務を提供している機関を認定するという立場にございます。認定を受けた機関は、サステナビリティ開示情報の1つであります温室効果ガスの排出量を現在任意で開示されておられる企業に対して保証業務、これは監査法人の皆様と同様に提供させていただいております。
     本協会の認定及び審査ですけれども、これは民間の制度ではございますが、日本独自の制度ではございませんで、現在97の国・地域の認定機関が加盟しております国際機関、国際認定フォーラム、IAFと申しますが、このIAFに加盟をし、ISO規格による国際的な認定審査の整合性を確保する枠組みに参加することで、グローバル水準の認定審査を実施しております。
     IAFは、国際監査保証基準審議会(IAASB)及び国際会計士倫理基準審査会(IESBA)といった国際基準設定主体と連携を模索しております。
     当協会を含めたIAF加盟認定機関、及び当該認定機関に認定されている機関は適用しているISO規格に加えまして、ISSA5000、並びにIESSAを適用する方向で、対話と検討が進んでおります。
     本日は、御説明はございませんでしたが、参考資料の3ページ目にございますフランスのサステナビリティ保証制度の概要、これは先行して、もう既に制度導入されていると聞いておりますが、この中で独立した保証業務提供者の審査を受け持つ機関として、フランス認定委員会、COFRAC、通称コフラックと称しておりますが、このCOFRACに紹介されておりますが、COFRACは、当協会と同じく民間の認定機関でありまして、IAFに加盟をしております。
     意見を2つ、述べさせていきます。
     まず1点目、profession-agnosticについてでございます。
     今日の資料の15ページから17、19とありますIOSCO、それからCSRD、それからISSA5000、IESSAのいずれにおいても、profession-agnostic基準による保証制度が望ましいということが示されていることからも、こうした国際的なベースラインの基準と同等の考え方を取るというのが望ましいことではないかと考えております。
     2点目でございます。
     28ページにございますサステナビリティ開示基準と保証基準の導入タイミングについてでございます。
     仮に、開示基準と同時期に保証基準が導入されたとしましても、例えば温室効果ガス妥当性確認・検証など、限られた範囲のサステナビリティ保証については、現在の保証業務提供者が対応可能かとも考えられますが、今後求められるサステナビリティ開示情報の範囲や保証の範囲が拡大していくということが確実な状況であることを考えれば、品質の高い保証の枠組みと保証業務提供者の確保、教育の研修、それから保証業務実施者への検査監督の在り方など、36ページで図式されておられる、恐らく2回目以降の論点になろうかと存じますが、こういった論点についての十分な議論のための時間が必要かと思われます。したがって、開示の議論と並行して保証についても議論を進めるということであったとしても、やはり保証制度については多少遅れるというのが現実的なことではないかというふうに考えます。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、藤本委員、お願いいたします。
     
    【藤本委員】 
     公認会計士の藤本でございます。御指名いただき、ありがとうございます。
     資料の御議論いただきたい事項に沿って、数点、コメントさせていただきたいと思います。
     なお、今日、私のコメントは私が所属する団体のコンセンサスを得たものではないということをあらかじめお断りしておきます。
     まず、適用対象企業、適用時期、事務局のほうでまとめていただいたとおりだと思いますけれども、目的としましては、プライム市場がどういう企業が存在するべきか、これは、グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業の市場であるということを踏まえますと、有価証券報告書におけるサステナビリティ開示基準の適用、すなわち、全てのプライム上場企業が最終的には適用すべきであると考えております。
     一方で、実務的な対応として一定の準備期間が必要だということも重々承知をしていることから、一部から段階的に始めるということについては賛同いたします。
     一方で、段階適用のロードマップを示していただいているところではございますけれども、最終的に全てのプライム上場企業が、今の案ですと203X年ということで、あまり最後のところを明確にされていないということと思います。この点については、ターゲットをしっかりと決めていかないと、任意適用、さらに、強制適用に向けた企業様、それから保証人の準備が具体的に進められないのではないかということと考えております。いわゆるリソース確保、そして企業様の内部統制の構築、ガバナンスの構築といったものも必要ですし、保証人のリソース確保も必要になります。明確なターゲットをいただけると非常にありがたいと思いますし、また、明確なターゲットを設けないと、グローバルの投資家から見たときに、日本の市場が開示に対してどういう姿勢を取っているのかということについて懸念を持たれないかという、そういう心配もございますので、この点はぜひ御検討いただきたいと思います。
     それから、先行適用企業数ですけれども、案1、案2、いずれもタイミングは少し違いますけれども、最初の先行適用企業が時価総額3兆円69社ということで、時価総額としては過半を占めているということでは、それはいいことだと思いますが、先ほど来コメントが出ていますように、プライム市場の企業数から見ますと約4%ということで、これでプライム市場の代表的な企業が適用されたと国際的に発信できるのかどうかということについても懸念をしております。ほかのどういう指標がいいのかというのは非常に難しいところでございますけれども、売上高ですとか、あと企業数のカバレッジですね、これも他の主要国の適用状況を見ますと、もう少しカバレッジは大きいのではないかなと思いますので、この点も踏まえて、ぜひグローバルの投資家からの御意見も踏まえて御確認いただきたいと思っております。
     あと、併せて、先ほど弥永先生からも御指摘ありましたCSRD対応です。こちらも大変懸念をしております。先行適用企業数が少ない中で、CSRDの適用企業が多くなってそちらが先行してしまいますと、ESRSのほうがデファクトスタンダード化してしまうおそれというものもあると思います。このような点も踏まえて御検討いただきたいということでございます。
     それから、保証の時期でございますが、私としましては、開示と同時期に適用すべきと考えています。これは、開示情報の信頼性確保の観点から重要な論点だと思いますし、また保証の適用時期も、今2028年3月期としておりますけれども、環境整備をできるだけ早く整えて、保証ができるタイミングを早期に構築していくということが重要ではないかと考えております。
     それから、最後、あと2点ほど申し上げたいと思いますが、まず、プライム上場企業以外の開示要請ということでございます。先行適用企業におきましても、バリューチェーン情報が必要になってくるという観点からしますと、こうした企業に対してどのような開示をしていただくのがよいかということもあると思います。コーポレートガバナンスコードの中でもTCFDの開示が推奨されていると思いますけれども、TCFDも、今ISSBに参加され、取り込まれたという状況にあるかと思いますので、そういったことも踏まえつつ、こうした企業様に個別の簡易的な開示基準を検討するというアプローチもあるのではないかと考えております。
     それから、最後になりますけれども、企業の開示体制の整備支援という観点からは、ロードマップを早めに示していただくということが1つだと思いますけれども、あとは企業様のデータ収集をしやすくするようなデータプラットフォーム、共通基盤の整備であるとか、あとは、複数のいろんな要請のために開示をしていかなければならない、こうした負担を軽減するために、関係する法令などをできるだけ整備いただき共通化して、1つの書類や開示をすれば、様々な法令に基づく開示が満たされるような、そういう対応をぜひ御検討いただきたいと思います。
     私からは以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、高村委員、御発言をお願いします。
     
    【高村委員】 
     ありがとうございます。
     今回、サステナビリティ情報の開示、保証の在り方について、こうした形で議論するワーキングを設置していただいたことは、大変ありがたいことと思っております。私自身も、井口委員、阪委員、藤本委員とともにSSBJの基準策定の委員となっておりますけれども、やはり基準を作成する段階でも、その想定する適用対象、それから法定義務化のタイミング、経過措置が必要かどうかも含めて経過措置をどういうふうに入れていくか、そして保証の在り方などに照らして、基準をどうつくっていくかということを随分皆が頭を悩ましたところでもあります。そういう意味で、基準作成の観点からも非常に重要な議論をするワーキングだと思っております。
     その上で、スライド38、39の御議論いただきたい事項を含めて4点申し上げたいと思います。
     1点目は、具体的な義務化の適用対象、適用時期についてであります。
     今、スライド29以下でしょうか、具体的なシミュレーションといいましょうか、案も出していただいていますが、まずやはり基本的な考え方を明確にしておくことが必要かと思っています。これは、既に事務局の資料の中に盛り込まれておりますけれども、開示をする企業、あるいは保証業務を担う者などの体制準備がどうかということはもちろん重要な側面でありますけれども、同時に、グローバル投資家との建設的な対話を可能にする、そうした情報の量と信頼性をいかに確保するかということ、そしてもう一つは、日本の資本市場の対応が、少なくとも主要な資本市場と比して大きな遅れを伴わないという点かと思っております。こうした基本的な考え方をワーキングで確認をしていくことが必要ではないかと思っております。
     関連して、案の1、案の2をスライド29以下に示していただいておりますけれども、今の段階で、どちらかと問われれば案の1かなと思っております。これは、事務局から示していただいているように、時価総額でいくと1兆円以上の企業については一定の開示が既に進んでいるということ、そういう意味では、先ほどの主要な資本市場と比較して大きな遅れを伴わないという意味で、できるだけ早期の導入を実現するという観点からです。ただ、この適用対象については、今問われればと申し上げましたが、どういう形で、どういうタイミングで導入していくかというのは、今後の重要な論点、検討課題であり続けると思っております。といいますのは、1つは、三瓶委員ほかからも御指摘のあった、適用対象の閾値がこれでいいのかという点は1つの論点だと思います。そしてもう一つは、やはり保証との関係であります。案の1と案の2の違いというのは、主として保証のタイミングであると思っておりますけれども、保証の在り方が、どういう情報に対して、どういうタイミングで、どの水準の保証を求めるのか。これは、おそらく保証を担うものの体制や人材の確保といった、まさに実際のフィージビリティーの問題とも関わってくるところと思います。当面、問われれば案の1かと申しましたけれども、案の1においても、例えば2027年3月期の保証については、全く任意ではなく推奨といったような形で、保証について経験を積んでいただくというようなやり方もあるのではないかというふうに思います。おそらく、そうした段階を置くことが、開示主体と同時に保証を行う主体の取組にとっても意味があり、その後の保証のスムーズな導入につながっていくのではないかと思っております。
     大きな2点目でありますけれども、これはもう既にほかの委員からも御指摘のあるように、ここで保証についてかなり踏み込んで議論をしていく必要があると思っております。今回、今の段階での論点を出していただいておりますが、先ほど言いました保証の在り方が基準の在り方、導入のタイミング、適用のタイミングにも影響を与えると思いますので、保証についてどういう情報について、どういう時期に、どの水準の保証をするのか。それを、どの主体が、どういう主体が適格としてこれを担うのか。その上で、サステナビリティ情報の特質、これはセーフハーバー・ルール等のところで言及がございましたけど、Scope3のみならず、将来情報ですとか見通しといった情報がかなり多く含まれる側面もあり、どういう形で情報の質の担保をしていくのか。こうした点について、このワーキングで議論をしていく必要があるのではないかと思っております。
     3番目でありますけれども、有価証券報告書と統合報告書などのスケジュールについて、スライドの32にお示しいただいております。事務局から御指摘あるように、サステナビリティの情報は財務諸表と同時報告を原則とするというのがISSBの基準であり、今回のSSBJの基準案でもこれを原則としていると理解しています。特に、当面、気候変動の開示が企業の取組、開示の中でも中心になっていくと思いますが、事務局資料にありますように、温室効果ガス排出量に関していうと、温対法の算定報告制度の下では4月から7月末までというのが情報の提出期限となっております。間もなく公表されるであろうSSBJの基準案では、Scope2に関して、マーケット基準ないしはマーケット基準に相当する契約上の情報の開示も求めています。その意味では、企業が購入する電力などの購入先の発電事業者、小売事業者の排出係数の確定が必要になると思います。温室効果ガスの算定報告制度については、環境省、経産省、それから今申し上げました排出係数という点で、資源エネルギー庁等々とも調整が必要となりえます。サステナビリティ情報、特に気候変動関連情報の同時報告の促進のためにどういう調整ができるのか。サステナビリティ情報の提出期限、さらに言うと、有価証券報告書の提出期限をどうするのかという論点があると思っております。
     最後に、バリューチェーンに対するデータ収集についてです。御指摘のように、企業がサプライヤー、取引先に関して質問票を送ったり、データベースの提供やサービスの提供も始まっていると思います。全銀協さんがサステナビリティデータ標準化機構をつくられて、特に中小企業に対して開示していただく最低限の情報項目を整理していらっしゃると思います。こうした取組を踏まえた上で、当面、とりわけ気候変動だと思いますが、サステナビリティ情報は、国に報告されている情報も多々ございますので、それをどういうふうに活用し、国と民間で連携してデータ収集の負担をできるだけ低減していくかという点についてもぜひ議論していきたいところであります。
     以上です。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、関口委員、御発言ください。
     
    【関口委員】 
     ありがとうございます。あずさ監査法人、関口でございます。よろしくお願いいたします。
     私も、御議論いただきたい事項に沿ってお話をさせていただきます。
     まず1点目の、この適用対象と時期の考え方のところなんですけれども、今回の事務局の御提案、特徴的なところとしては、まずはプライム市場の中で絞り込んでスタートしていって、その上で全部に対して広げていくという、言わばロードマップみたいなのを書いているところ。そして、小さいところからスタートしていくので、その分、任意適用が非常に重要になってくるということで、こういった論点を提示いただいているんだろうなというふうに認識しています。この開示の話は、多分初めから全部適用するのが一番望ましいんですけれども、他方で、開示の品質を確保する必要があるということで、そういった観点から考えると、まずスタートは狭く、それから、徐々に徐々に広げていって、将来的にプライム市場全部に対して適用していくという、この考え方については、私は支持しています。
     2点目で、この任意適用の在り方ですけれども、今回の事務局の提案、案の1にしても案の2にしても、絞り込んで小さなところからスタートしていこうということで、先ほど開示情報の信頼性を、品質をどう確保していくかという観点からは、説得力があるんだろうなというふうに思っています。
     他方で、グローバルに見ると、例えばヨーロッパですとかアメリカですとか、そのほかの国から見ても、やや少ないという印象は多分拭えないんだろうと思います。そうした意味で、開示が強制されていないところについても、任意適用を積極的に進めていただくための取組というのは非常に重要なんだろうなと思っています。その意味で、まず、任意適用を進めていく上では、まずは1点目、見える化というのをしっかり進めて、見える化をした上で、対応しているところを積極的に高く評価していく仕組み、これはもしかしたら東証さんなのかもしれないんですけれども、そういった見える化と評価をする仕組みというのが重要なんじゃないかなというふうに考えています。
     それから、今回の枠組みは投資家への情報提供ということを強く念頭に置かれた制度だと思いますので、そうした観点からいうと、今回かなり絞り込んだこともありサステナビリティに関するリスクと機会が、財務において重要な影響を与えると考えられる会社全ての企業が対象になっている訳ではないと思います。また、恐らくこうした企業群というのは、業種によってかなり左右されるんじゃないかなと思います。その意味で、特定の業種に対して、より積極的に任意適用を働きかけていく、こうしたことが重要なんじゃないかなというふうに思っています。
     3点目は、今度は案の1、案の2のところなんですけれども、我々、監査法人、それから保証業務の提供主体からしますと、やはり案の2のようなアプローチのほうがいいんじゃないかなというふうに考えています。案の2の場合、後ろに下がってしまうので、先ほど私が申し上げた懸念とやや対立するところはあるんですけれども、また、もしかしたら、案の2にした上でこれを1年前倒しするともっといいのかなとも思うんですけれども、そこは多分、企業様の側の受入れ体制ということとも関係しますので、これは慎重に判断したほうがいいんだろうと考えています。
     ただ、保証業務の提供者の観点からしますと、やはり一旦、金商法で開示されてしまった情報、これが罰則もかかってくる情報、これについて、翌年度以降、この保証業務の提供の過程で誤りが発見されたからといって全部修正いただくのは、実務的に非常に困難だというのは肌感覚としてあります。そういった観点から、案の2のメッセージ、開示情報の提供と保証業務の提供というのをセットで進めていくアプローチというほうがいいんじゃないかなというふうに思っています。
     ただ、ここでやっぱり重要なのが、先ほど冒頭にちょっと申し上げたんですけれども、どういうロードマップを書いているのかというのを明確にする。要は、案の2になると、かなり絞り込んでやや遅いという印象もありますので、そこを、まずゴールはプライム市場上場企業全部なんだというメッセージを発信していく。それから、海外の方に対しても、もしこのアプローチを取るんであれば、我々は強制適用と任意適用の推進をセットにして考えているんだというアプローチを、説明をしっかりしていくことが非常に重要なんじゃないかなというふうに考えています。
     次に、バリューチェーンの関係なんですけれども、バリューチェーンの関係については非常に御懸念が多く、これはもっともだなと思っています。他方でEUの今のCSRD、ESRSの適用なんかの話を見ていましても、私は思っているほどはバリューチェーンの情報が開示対象にはなることはないのではないかというのを思っていまして、その意味で、やや、もしかしたら誤解というのもあるんじゃないかなというふうに考えています。
     その意味で、まず、開示企業に対して、どういったバリューチェーンの情報がどういった場合に求められるのか。それから、バリューチェーンの先の企業、サプライヤー、それからディストリビューター等も含めて、それらの企業に対してどんな情報が求められるのかという点について、EUのケースも参考にしながら検討して、そしてこれをとりまとめて公表していくといいんじゃないかなというふうに考えています。
     最後に、どういった環境整備が必要かという点なんですけれども、まずは保証業務の提供者の側からしますと、保証業務の提供がどういうものか、とりわけ今回限定的な保証業務ということが恐らく念頭に置かれるとすれば、限定的保証業務はどういったものかについてしっかり説明していく必要があるんだろうと考えています。それによって、一部にある誤解も解けてくるのかなというふうに考えています。
     それから、このSSBJ基準の適用については、今回、特にSSBJ基準とIFRSサステナビリティ開示基準のデュアルコンプライアンスみたいなところがかなり意識されているのかなと理解しています。このため、もしこういった適用上の課題が出てきましたら、私もメンバーになっているTransition Implementation Groupに対して論点をサブミットしていくような仕組み、議論をして論点をサブミットしていく仕組みがあると、そうするとデュアルコンプライアンスを維持しながらも、どうやって解決できるんだというのが明らかになっていくのかなというふうに考えています。
     今回、かなり長いアプローチを想定しているということで、恐らく先行事例の共有と誤解の解消というのが非常に重要なんじゃないかなというふうに思っています。そういう意味で、先行事例を適切に共有するとともに、誤解を上手く解いていく、そういったことが必要になるのではないかと思っています。
     以上です。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、阪委員、御発言をお願いいたします。
     
    【阪委員】 
     ありがとうございます。阪と申します。
     他の委員がおっしゃったことと重なるところもありますけれども、まず、適用対象と適用時期について、サステナビリティ開示基準の適用について、最終的にはプライム全企業が適用するということを目指して、当初は範囲を絞ってプライム上場企業のうち時価総額の大きい企業から順次適用対象を拡大するということと、一定の任意適用期間を設けるということに賛同いたします。
     サステナビリティ開示基準作成における選択肢の決定に当たっても、プライム企業を念頭に置いて意思決定がなされてきたと理解しています。時期については、投資家との対話を早期に実現させるために、経過措置を活用しながらできるだけ早期からの適用が望ましいと考えています。また、サステナビリティ開示が財務諸表と異なり、将来情報により焦点が当てられているということから、セーフハーバーを設けることも重要と思います。
     時価総額で分けるということに関連して、ほかの委員から既に御意見もございました。御参考までですが、手元のデータで確認しましたところ、時価総額で切ったときに、その上の企業の時価総額合計が全体の時価総額に占める割合というのは、同じ企業群の総資産合計が全体の総資産額に占める割合とほぼ同じになります。純利益とか配当で見ても、その割合は余り変わりません。純資産で見た場合には少し割合が低く、8%ほど低くなります。売上で見た場合にはさらに低く、20%ほど低くなります。これは、1兆円、3兆円、5兆円で切ったいずれの場合も同じような結果になりました。なお、財務データの分布構造は時系列でもあまり変わらないということを確認しています。時価総額と総資産と利益配当で占める割合がほぼ同じということですので、グローバルな資本市場を念頭に置いた場合には、株式時価総額の区分に、ある程度合理性はあるかと思っています。同時に、私は他国との比較はできていないんですけれども、御意見ございました売上とか従業員などの視点からもインパクトを確認していくということも必要かと思います。
     次に、課題がサステナビリティであるということを考えると、サステナブルな経済の構築に向けて、任意適用企業の拡大やバリューチェーンの企業の促進方策が非常に重要な点だと思います。既に取り組まれているところですが、好事例集の作成、またはより規模の小さい企業が取り組みやすいような、基準とはいかなくてもサステナビリティ開示基準を適用しやすい何らかの配慮があってもよいかと思います。また、サステナビリティ基準自体、会計基準と随分異なるところもありますので、分かりやすく丁寧に説明していくということも大事かと思います。
     最後に、公表されるサステナビリティと財務諸表にも関連して、データを共有し利活用する社会が望ましいと考えます。研究においては、そのような拠点の整備も始まっています。サステナビリティ情報がデータ共有社会において社会的により共有利活用しやすい仕組みを構築していくことも、将来的には期待しているところです。
     ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、浅川委員、御発言をお願いいたします。
     
    【浅川委員】 
     ありがとうございます。日本品質保証機構の浅川と申します。
     多分こういう場に私どもも出席することはあまりございませんので、少し御紹介をさせていただきたいと思いますが、先ほどお話ありました適合性認定協会様からISOの認定をいただいておりますISOの審査機関、認証機関でございます。私ども、経産省様の外郭としてISO14001や9001の審査を中心に、ISOに関わる審査をずっと進めてまいりまして、サステビリティ情報関連につきましては、温室効果ガス排出量の国連スキームであるCDMの指定運営機関として、世界で初めて認定されてCDMのクレジットの認証、それから国内では、東京都、埼玉県制度等の認証審査業務をしております。いわゆる独立した保証業務提供者という立ち位置でございます。
     今回、サステナビリティ開示情報の論点というところで、2点、私どものほうからコメントさせていただきたいと思います。
     1つ目が、論点の3つ目にありますScope3情報に関する部分でございます。
     こちら、現状、私ども実務でScope3の検証審査にまいりますけれども、この算定というのは基本的には金額ベースに2次データを活用した集計開示が広く行われているところかと思います。いわゆる国立研究開発法人産業総合研究所様が策定されておりますIDEAというようなデータセット、こういうのを金額ベースで活用して、まずは排出量の外観を把握するというところから始めているというところかと思います。一方で、削減を進めるという企業様の御意見の中では、この2次データの活用ですと、なかなか自身の削減努力、いわゆる環境配慮調達というものが反映されないというような御意見もありますので、論点にございますようなバリューチェーンのデータ収集、いわゆる1次データの活用ということもぜひ進めていきたいというような御意見をいただきました。ただ、この1次データも、既にいろいろお話出ていますけれども、なかなか業界によって算定の状況も異なっているという状況でございます。ですので、現状、まずこの2次データの活用というところからScope3算定開示を始めていって、並行して1次データの収集するような仕組みをつくっていく、ガイダンスを整備する、ですとか、事例を共有するとか、プラットフォームをつくるというようなことが考えられるかと思います。
     それからもう1点、開示基準の具体的な適用時期、対象ということでございますけれども、御説明いただきました資料26ページあるいは27ページを見ても、やはり上場企業の間でも情報開示レベルに大きな差があるといことは、実際に審査検証の現場でも感じられるところかと思います。
     したがいまして、開示基準の具体的な適用につきましては、まずは現状の進捗に応じて体制が整っている対応可能な企業さんから進めていくというのが現実的かと思います。また、開示の項目につきましては、資料7ページにもございますとおり、いろいろな指標というのがありますけれども、横串的に重要な指標ということになりますと、やはり気候変動ではないかと思いますので、まずは気候変動に関する開示を中心にして進めていき、順次拡大をするという形がよろしいかと思いました。また、開示を進めていくためには、社内のいろいろな情報の収集や取りまとめ、あるいはその信頼性の確保というのが必要になってきますけれども、現状開示の情報収集のレベルに非常に大きな差がありますので、体制が整ってない企業様もございますので、早急な体制整備が必要になるかと思います。私どもにも、実際、ISOの審査等を通じまして、どのようにデータの集計、算定をすればいいのか、あるいはどのような知識が必要なのかというようなお問合せをいただくこともございますが、私どもはISOの審査機関でございますから、ISOを活用したいろいろなマネジメントシステムの構築を通じて、体制整備、人材育成といった視点を御案内させていただいているところです。
     一方、3ページにもございますように、海外の動向を踏まえますと、こういった整備は待ったなしかというふうに思いますので、やはり海外の動向を踏まえて、できるだけ平仄を合わせるように、例えば案1を想定して企業様のほうに準備を進めるような流れを起こしていくということが必要ではないかと思います。そのためにも、やはりスケジュールの中で明確に、いつまでにこういうことをしなければいけませんよということを、なるべく早めに提示されるということが肝要かなと思います。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、清原委員、上田委員、芹口委員、田代委員、吉元委員、永沢委員の順で御発言いただければと存じます。まず、清原委員から御発言をお願いいたします。
     
    【清原委員】 
     ありがとうございます。御発言の機会をいただき、ありがとうございます。清原と申します。
     まず、SSBJの基準がグローバルな基準との整合性を保ったものとするうえで対象企業を絞るということついて賛成いたします。他方、グローバル投資家との対話を中心にするということを考えると、英文開示という問題も同時に出てくるわけですが、そういったことをも含めていくと、プライム上場企業全部が最終的に対象になるというふうにするのがいいのかどうか。先行企業としては絞っていくという方向、案1、案2についてはもちろん賛成でございますが、その先の落としどころのところをどうするかというところは、プライム上場企業においてもその規模にかなり差異があるというところは踏まえる必要があるのかなと思います。
     また同時に、他の委員から御指摘がありましたように、上場してなくてもインパクトの大きい重要な企業がある、すなわち有価証券報告書を提出している未上場、非上場の企業で、社債市場その他に取り組んでいる企業の方のことをも踏まえると、SSBJの基準だけで本当にいいのかというところも少しございます。最終的には、財務諸表に関して会計基準とともに財規があるように、サステナビリティに関しても恐らく内閣府令での規則というものが必要になってきて、SSBJ基準そのものはあまり緩める形にはしないで、しっかりと国際的な整合性を持ったものとしながらも、例えばスタンダードですとか、ほかの企業も、ある種、準拠しやすいような、少しプリンシプル、各論のところに柔軟性を残したような、そういったものもフレームワークとしてあることが最終的には望ましいのではないかということを考えており、そういった観点からは、SSBJの基準だけでとらえるのではなく、ほかの余地というものもあるのであれば、それを踏まえて皆様の御意見がここで協議されるとよいのではないかと考えるところです。
     次に、適用時期の関係でいえば、同時とそれから1年ずらすという考え方と、2つあるところですが、大企業の方の行動様式を見ていると、非常に慎重に対応しておられるので、仮に1年ずらすとしても、最初の年度も保証を正式には出さないまでも保証を取れるぐらいまで準備を進められる企業の方が多いだろうと思われます。そうした点を考えますと、義務として同時でなければいけないというふうにするよりは、むしろフレキシビリティー、企業の側に柔軟に対応する余地というものも認めていくこと、1年ずらして進めることが、無理のない進め方ということになるのではないかと考えるところです。
     他方、重要なのは、保証が入るという前提としては、企業側において、情報に対する、もしくは開示に対する内部の体制、またリスク管理、そういったことを整備することも重要であり、そこの情報が、すなわちどういう体制を整備し、運用をしているかということを含めた企業側の取組の透明性を確保するというものを含めて、ここの議論を進めると同時に、有価証券報告書において、今までにすでにある内部統制をどういうふうに取り扱っていくかということは併せて議論が必要になるだろうと思われます。
     議論が前後するのはよくないですが、今回のこの議論は、かなり開示の負担が大きくなるのは間違いないところであって、負担が大きくなる、開示が増えるということだけではなく、スクラップ・アンド・ビルドじゃないですけれども、減らすものというものがあって然るべきであり、充実した、メリハリのある開示、本当に重要なものについてフォーカスできるような制度の議論に進んでいくことが、各論に入る前ですけれども、大変重要ではないかと考えています。
     その1つの最たるものとしては、ディスクロージャーワーキングで議論され、この4月から始まる四半期開示の見直しのところで議論があったように、重複するものについては、そこでは開示の負担を緩めるということも含めて合理的に一本化するという話がありましたが、今、日本でも起こっているもので1番大きなものは、恐らく会社法上の開示と金商法の開示の問題であって、事業報告と有報の一体化ということ、それから会社法上の計算書類と金商法上の財務諸表というものが2つあること自体は、グローバル投資家から見て、何でそんなものがあるんだと、必ずこれは問題になるんだろうと思います。そういった点を含め、これまで議論はされてきたもののなかなか前に進まなかったですが、こういう問題をも今回は正面から取り組んでいって、負担を軽減しつつもリソースをきちっと重点配分できるようにする、そういった方向に議論が進むことが望ましいのではないかと思います。
     そうしたことを志向しつつも、さらに述べれば、株主総会が3月期決算会社ですと6月総会、ここの時期に合わせて、全てを、かつ総会前に情報を開示するということは非常に厳しいのはもう間違いなくて、その意味でいうと、有報の提出期限が3か月でいいのかという点も、もちろん1点ありますけれども、株主総会を3か月以内に、決算期から3か月以内に開催するという実務についても、これは基準日を決算期の翌月末にする実例も実はありますので、そういった事例がある、そういうことができるということをも踏まえて、企業の方が自主的に総会の開催時期についても検討できることにつながるような、そういった議論に進んでいくことによって、有報の作成時間を確保し、重要なものに集中し、データもしっかりそろえ、そのプロセスなどの開示も透明性を持って示した上で株主総会を迎えていくということは、企業にとってもプラスが多く、また、投資家にとっても望ましいのではないか。株主総会の集中日そのものは解消しつつありますが、さらにもう一歩進めることができればよいのではないかと考えるところです。
     その基準日のところは、議決権行使の基準日と合わせて配当の基準日というのもありますが、これも、国内や海外の投資家の中でもあまりよろしく動きをされる方を考えますと、あの部分は悪用される余地があるのではないかと気になるところもあり、配当の予想で権利落ちをするという実務がありますけれども、実際に株主総会のところで増配などの株主提案が仮に可決成立すると、想定外の棚ぼたの配当議案の成立というようなことが起きてしまいます。これは、会社からしてもリスクでしょうし、配当額がはっきりと確定して、その後、配当を受領する株主が決まるという基準日の在り方のほうが、本来であれば筋ではないかと思われます。経済合理性で考えるグローバルな投資家からすると、日本はどうしてそんな実務が続いているのか、という問題になりかねないところでもありますので、これは先送りすることもなく、基準日の議論をする中であわせて取り組んでいくことも重要ではないかというふうに考えるところです。
     長くなって恐縮ですが、今日の議論は、現状あるS1、S2を基本的に想定されておられると思われますが、サステナビリティ開示のテーマですとか保証の対象は、今後広がっていくものですし、今回議論している適用時期が到来した頃には、既にISSBではS3、S4というふうにどんどん進んでくる。こういった状況になるということを動態的に踏まえた上で、フレームワーク、枠組みをどうするかという議論を、そして、負担が非常に大きくなることをも見越してその準備をどうするかという観点で検討を進めていくことがよいのではないか、と思います。特に気にしていますのが、SASBのところを「shall consider」ということもありますけど、SASBでのトピックは非常に広い中で、現状、S1で全般的な要求事項というふうになっているということは、重要なテーマは個別には上がってなくても、各論のS3、S4がまだなくても、本来は記述しなきゃいけないという意味で、実はもうハードルの水準は上がってきつつあるということも考える必要があると思います。
     では、どのようにしていくかということを考えていくと、保証の対象も、今の気候変動を前提として監査人が入る、入らないというレベルでの議論のみならず、もしかすると、複数の保証業務提供者を入れるほうがよい場合もあるかもしれませんし、また、保証業務提供者の法的責任を金商法上規定するということはもちろん出てくるわけです。そうした中で、やはりセーフハーバーにつながるような考え方の整理も同時に併せて行っていくことがよいと思われます。企業の側がしっかりと内部の体制を整えて、それをベースに第三者による保証業務が提供されるということになると、法的リスクは現実にはかなり下がってくるとは思うのですが、そういったことや、またガバナンスのところまで議論が広がっていくところもあるかと思いますが、こうしたこと全てを議論するのが難しいとしても、例えば今後はガイダンス、ガイドラインなどのようなもの、もしくは情報の提供というものがあって、それらを参照しつつ、関係者にとって有用なもの提供がある中で制度導入に向けて議論を進めていくことができるような、そういったところも、このワーキング・グループの中でトピックとして取り上げていくことができればよいのではないか、などと考えているところであります。
     初回なので、ちょっと広くなってしまいましたが、意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、上田委員、御発言ください。
     
    【上田委員】 
     ありがとうございます。
     私も、初回ですので、少し幅広に方向性についてコメントさせてください。
     サステナビリティ情報は、投資家だけではなくて、企業経営者にとっても大変重要な経営の課題となっています。特に、我が国の企業に多いグローバルのサプライチェーンに組み込まれている企業については、欧米を中心とする海外の顧客からの要請、さらには拠点がある場合などの海外の当局への対応等含めて、資本市場への対応以上に、経営そのものの課題として取り組んでいる会社が多いのではないかと思っています。
     そういう意味では、今回の制度整備は、大前提として、日本企業、そして日本市場がグローバルな競争力を維持するために必要なレベルということは絶対に守らなければいけないところだと思っております。そのため、具体的に今回の御提案されていた内容を踏まえると、SSBJ基準を採用すれば、これがグローバル水準を踏まえていると、ISSBだとかCSRDとファンクショナルに、イクイバレットというんでしょうか、同等性が認められる状況であるということを前提とした議論、制度づくりを目指すことが必要だと思います。
     以上の前提を踏まえて、ご提議いただいた事項について2点申し上げます。
     まず第1点として、サステナビリティ情報の開示、特に対象と開始時期でございます。グロース市場としてのプライム市場という位置づけを考えますと、やはり対象は将来的にはプライム市場の全上場会社にするべきと考えます。これは明確に置いておく必要があるのではと思います。他方、ISSBが出されている法域ガイド、本日御紹介されたものによりますと、制度導入のタイミングでは市場のall or mostをカバーしているとの定義もあるということですので、制度のスタート時点ではこれに該当する範囲からの先行適用を検討することがあってもよいのではないかと思います。
     その観点で、案1と2を御提示されておられますけれども、その中では案1の時価総額3兆円以上は27年3月から、1兆円以上は28年3月期からの先行適用というのは、最低限というと言い過ぎですが、対応していただきたいところです。私も幾つかお伺いしているところでは、恐らく多くの会社は、そこを想定して御準備進められておられると思いますので、スタートの時期を明確にして、準備を急いでいただくということも必要なのではないかと思います。
     ただし、時価総額が多くても、企業数では少ないというコメントもほかの委員から多くございました。しかも、投資家の委員からは、それではユニバースのほんの一部しかカバーできませんとのお話しでした。これも投資家から見ると本当に大きな問題であろうかと思います。そのため、上場会社については早期にプライム全部に広げるという道筋をつけて、203X年とありますけど、30年代後半ではなくて、できるだけ早い時期に向けて準備を進めてもらえるよう、背中を押してあげる、そういう環境をつくる、空気をつくるということも必要であろうと思います。
     また、これとともに、大規模な非公開会社もあろうかと思います。社債等の関係で有価証券報告書を出されている会社もあろうかと思います。こういう会社は、ファイナンス面では上場会社と同じような規律に置かれるということが望ましいと思います。特に、投融資する金融機関も幅広く、そもそも事業自体がグローバルにされておられる会社が多いと思いますので、これは対象に含めてもよろしいのかと思います。恐らくこのような会社群もお悩みになると思うので、ぜひこの辺り、実態を御調査されたらよろしいのではないかと思いました。
     併せて、こういう早期の適用対象企業以外についても、グローバルなサプライチェーン上の格付等を求めるために、時価総額がそれほど大きくなくても対応しなければいけない、開示をしなければいけないという問題意識を持っておられる企業もたくさんあられます。そういう会社が早期に対応できるよう、いろいろな環境づくり、例えば好事例とか、あるいは工夫の共有とか、そういった環境整備、これは金融庁含め関係機関でサポートされるのがいいのかなということを期待しております。
     第2点は、保証についてです。保証は、今申し上げた、サステナビリティ情報の信頼性を確保するための表裏一体の仕組みだと思っています。グローバルにもIAASBやIESBAにおいて、今、制度設計進んでいて、これが各国においても対応が進んでいくという状況であろうかと思います。
     他方、企業について見ると、保証が負担かというと負担ではあるものの、逆に保証の仕組みが決まってないと、開示の準備を進めてもそれが保証を受けて大丈夫なのかという心配があるわけです。当然、企業側において二重の負担を回避することは強く要請されます。とすれば、サステナビリティの情報の作成は、保証を想定して行うという仕組みであるということが必要だと思います。したがって、開示と保証は一連の流れとして整備が進められるということが大変重要で、できるだけ近いタイミングで開始するということが必要なのかなと思います。
     併せて、この保証制度については、基準作成や保証機関をどうするかといった点について、特に公認会計士あるいは監査法人以外の保証提供者というものが想定されているかと思います。公認会計士や監査法人は、既にこの辺り、そもそも訓練された職業的な専門家であられますので、ここに財務に加えて非財務情報についても監査から保証いただくといったところのベースはできておられると思います。ところが、それ以外の保証提供者については、その信頼性をどう確保するかというところが重要だと思いますので、認定制度なのか、あるいは組織づくり、モニタリングの仕組みをどうするのか、訓練をどうするのか、こういったところもしっかりと検討していくということが必要であろうかと思います。どうしても、公認会計士や監査法人の御負担というか期待が大きくなるとは思いますが、それ以外の専門家に間口を広げるというのがグローバルな動きであれば、ここはしっかりと検討する必要もあろうかと思います。
     ということも踏まえますと、私は開示とほぼ同じぐらいのタイミングで保証というのが始まることが望ましいという気持ちはあるんですが、現実的には多少実務対応に時差ができるのかなとは思っております。ですから、この会議でもし今後議論があるとすれば、しっかりと早期にまとめられるように御議論を進めていただきたいと思います。
     以上です。ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、芹口委員、お願いいたします。
     
    【芹口委員】 
     野村證券の芹口でございます。日本証券アナリスト協会のサステナビリティ報告研究会から参加させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
     まず、議論の大前提として、本日井口委員、上田委員からお話がありましたが、ISSB基準とSSBJ基準が同等であることが必要だと思っておりまして、それを大前提として、資料の38ページ、特に1点目、3点目の適用対象企業と時期について意見を述べさせていただきたいと思います。
     まず、適用対象企業につきましては、利用者として、時価総額の大きい企業から先行して、プライム全上場企業を目標に段階的な適用を行う案に賛成いたします。
     基準につきまして、時価総額は企業価値を構成する要素ですので、投資家の意思決定に有用な情報を提供するISSB基準、SSBJ基準の目的とも通じ、合理的だと思っております。
     水準につきましては、市場全体の何割をカバーすべきかは設定が難しいところではございますが、資料の29ページの通り、まず市場全体の70%あるいは50%、3兆円、1兆円を基準に適用を開始すること自体に大きな違和感はございません。ですが、SECは時価総額1,000億程度、またCSRDのEU域内企業ですと規制市場の全上場企業を対象とされていることと比較しますと、水準観が大きく異なる印象も持っております。
     したがいまして、資本市場の競争力、また今後の基準開発における意見発信のプレゼンスの観点で国際的に見劣りしないためには、第一に、将来的には東証プライム全上場企業への適用拡大を目標に任意適用を推奨するというメッセージを強く発信いただく必要があると思っておりますし、第二に、任意適用を促進するための施策を進めることが必要だと思っております。この点につきましては、本ワーキング・グループの報告書にも明記いただく必要があろうかと思っております。
     補足でございますが、プライム全上場企業への適用拡大につきましては、これまでガバナンスコードでTCFDまたは同等の国際的枠組みに基づく開示の質と量の充実を求めてきたこととも整合すると思っておりまして、この要請をさらに発展させていく道筋をつくることが必要だと思っております。
     また、任意適用の促進につきましては、31ページに、論点として、企業にとってハードルの高い事項などをまとめていただいていると思います。次回以降、詳細を議論すると伺っておりますので、本日は省略をさせていただきますが、このワーキング・グループでもしっかり議論して対応することが必要だと思っております。
     続きまして、開示基準の適用時期につきましては、資料の29ページの案1、利用者といたしましては適用時期が早い案1に賛成いたします。グローバルで統一された基準を活用することで比較可能性が増しますので、利用者としましては早期に活用したいという思いがございます。また、保証につきましては、制度導入の初期段階にございますので、利用者として保証がないと受入れられないということはないと考えております。保証の内容の議論自体がこれからでございますが、企業の負担や保証提供者のキャパシティの問題などが非常に大きいと思っております。したがいまして、利用者としましては、実務の状況を踏まえながら、できるだけ早期の導入を期待するということをお伝えさせていただきたいと思います。制度が早期に完成すれば、任意適用の検討余地もあるのではないかと思っております。
     最後になりますが、この開示のロードマップを実現していく上で、1点気になっていることがございます。CSRDの域外適用の対応を要する企業が少なからず存在することです。CSRDはダブルマテリアリティでボリュームも多いため、企業が開示対応に追われることで、利用者の関心の高い財務マテリアリティに関する情報の開示がしっかりなされるのか、手薄になることがないのか、そういった点を利用者としても気になっております。これについては、インターオペラビリティを高める取組が不可欠だと思っておりまして、取組自体はもう既に始まっていると認識しております。日本証券アナリスト協会とIFRS財団の方との会話では、インターオペラビリティに関する文書を教育文書とともに公表するご予定があると伺っておりましたが、まだ公表されていない認識を持っております。本来であれば、ISSB、もしくはEFRAGなどが取り組むべき課題と思っておりますが、もし早期に教育文書などが公表されないという場合には、日本企業の開示全般の支援として、金融庁でご対応をご検討いただく余地もあるのではないかと思っております。インターオペラビリティに関する現在の協議の状況や今後の見通しについて、もし金融庁でご存じのことがあればご教示をお願いしたいと思っております。
     私のコメントは以上でございます。
     
    【神作座長】 
     ありがとうございました。最後に御質問があったかと思いますけども、いかがでしょうか。ご回答いただいて、よろしいですか。
     
    【倉持国際会計調整室長】 
     御質問ありがとうございます。国際会計調整室長の倉持です。
     今御質問いただきましたインターオペラビリティの状況です。欧州のEFRAGとISSBの間で、EFRAG基準とISSB基準のインターオペラビリティを確保する作業の進捗状況に関してです。
     もともと、若干の差異がありましたが、EFRAG基準とISSBの基準で、できる限りEFRAG基準の中にISSB基準で求めているものが入っていくよう調整を加える作業を、かなり時間をかけて丁寧に進めているという状況だと理解をしています。
     現時点においてもまだ作業は続いていると伺っておりまして、そういった意味では、まだ作業は進行中で、今後ある程度作業が進んだ段階で、何らかの形で公表されるのではないかと考えております。
     一旦私からは以上です。 
     
    【芹口委員】 
     ありがとうございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。続きまして、田代委員、御発言をお願いいたします。
     
    【田代委員】 
     御指名ありがとうございます。
     かなり皆様から御意見があるので、重複するところもあると思うんですけども、主に3つお話しさせていただきたいと思います。
     29ページ、30ページにありますロードマップにつきましては、最終形がプライム全企業というのは、段階的にそちらに向かっていくというのは賛成でございます。ただし、多くの委員もおっしゃっておりました、3兆円、1兆円につきまして、企業数が69社で延べで173社、時価総額は最終的には73%になるとはいえ、2つの理由において、もう少し枠組みを広げたほうがいいのではないかと思います。
     1つが、今もお話がありましたCSRDにつきましては、対象企業を私は自分で数えたわけではないんですけども、昨年のウォールストリート・ジャーナルの記事によりますと、日本企業で800社ぐらいが対象になるのではないかとありました。それであるのであれば、それに企業としては取り組む準備をしているということを鑑みますと、現段階においてもう少し早いペースで進めるのではないかと思います。それが、時価総額でするかというのは非常に難しいことなので、ちょっと分析も含めて考える必要があるのかと思います。
     さらにもう一つ、もっと私は大切だと思いますのは、こちらの173社につきましては、海外投資家を見て開示をしますと国が言っているようなものでして、残りの企業は海外投資家に見てもらわなくてもいいというような意味合いも感じてしまうところがあるのではないかと思います。173社をカバーする多くの海外投資家は、実際173社でかなりカバーできていることも事実だとは思うのですが、それ以外の企業についても、海外投資家に見てもらいたいということであれば、もちろん、任意適用でやればいいということではあるとは思うんですけども、メッセージ性の観点からしても、やはりCSRDを考えている企業さんにとっては、それが入るような、同じような枠組みを考えてもいいのではないかと思います。
     2つ目なんですが、ロードマップにつきまして、今、全プライムまでは2030何年という形をしているんですが、現状、企業において、私どももそうなんですけども、任意開示のみをやっている状況で、社内の体制の整備がなかなか、当然進む方向で準備はしているんですが、まだまだできていない課題も多いと思っております。そこに向けて、もちろん人材育成、人数を増やすとかシステム投資とかありますので、やはりエンドデートが決まって、それに向かってお金をかけてやっていくというめどがないと、なかなか、社内の中での説得とか予算を取るというのが簡単ではないと思いますので、ロードマップにつきましては、開示も含めて、保証についても早い段階で示す必要があるのではないかと思います。
     最後のところでございますが、やはり企業は皆様からの御発言もありましたように、温対法とか、あとTCFD、これからはCSRD、GRIも一部あると思うんですけども、どうやってこれからの開示を進めていくかという、もうコストばっかりかかってと、さらには、環境含めて、人的資本、生物多様性も増えるかもしれないという中で、どうやって、今回の開示をやるべきかというのを悩んでいると思います。
     すみません、私、IFRSの理事をやっているので、先ほどIFRSもお話ありましたようにインターオペラビリティについて非常に多くのコメントを世界中の皆様からいただいて、かなり時間と人員を割いてやっている状況なので、同じような形で、難しいとは思いますけども、企業の皆様の心の安全・安心のためにも、次のページの開示のタイミングも含めまして、できるだけ重複がないような形で一緒にやっていけると、企業さんからの抵抗というのか、負担が大きいというのは、少しでも一緒に歩んでいる姿が映るのではないかと思いますので、このワーキング・グループで考えていければと思います。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     続きまして、吉元委員、御発言ください。
     
    【吉元委員】 
     ありがとうございます。ソニーグループの吉元です。
     私からは、サステナビリティ含めた各種情報の開示実務を含めた発行体の立場、観点から意見を述べさせていただければと思っております。御議論いただきたい事項に沿って、少し意見させていただきます。
     まず、開示基準の適用対象と時期についてですが、他の委員からも御指摘あったとおり、各企業においては各種準備、とりわけ開示の前提となる内部統制の整備に時間とコストを要し、十分な準備時間を必要とするというところから、この資料の29ページ、30ページでいうと案2のほうが望ましいのではないかと考えているところです。
     また、Scope3の開示については各種課題も多いところでございますので、29年度から日本企業の連結ベースの開示が始まるCSRDですとか、Scope3を開示要件から除外した米国SECルールなど、他の基準の日本企業への適用の状況等も踏まえつつ、強制の有無、適用時期等について、企業実務に配慮した慎重かつ柔軟な制度設計をお願いしたいと思っております。
     なお、保証については論点が多数あり、今後改めて御議論されると理解していますので、今回はあえて触れません。
     続いて、任意適用促進のための方策に関してですけれども、発行体の観点では3つのポイントがあると思っています。1つは、任意適用して開示する以上、開示内容が投資家サイドに確実に活用、評価されるということです。それから2つ目ですけども、任意適用に取り組むことによるデメリットが生じないこと。3つ目は、任意適用に取り組むことで競争力強化につながること。これらのポイントを踏まえた上で、任意適用に取り組む企業側のメリットやインセンティブづけといったことについても、諸外国の例を事務局サイドでも調査していただきつつ、御検討いただければと思っている次第です。
     なお、インセンティブとしては環境税制の優遇などが一案としてあり得るのではないかなと思っているところです。
     続いて、開示基準の適用順序に関してですけれども、どの範囲の企業にいつ適用されるのかと明示されるのが発行体サイドからは重要ですので、御議論あったところですけれども、時価総額の判断基準の明確化ということはお願いして、実務上、混乱が起きないように手当てされることが重要だと思っています。
     それから、先行企業以降の適用範囲の拡大をどうしていくかというところですけれども、時価総額が大きいプライム企業での実務運用を確認しつつ、段階的に拡大していくという対応が望ましいのではないかと思っています。先ほど清原委員からも御示唆あったかと思いますが、現状、先行企業への義務化を議論している段階で、この29ページ、30ページの一番右にあるような形で、2030何年までのところでプライム上場企業全てに強制適用の範囲を拡大するということを示すのは、発行体としては少し時期尚早なのではないかと考えているところでございます。
     最後に、環境整備に関して、既に他の委員の御指摘もあったところですが、私からは4つの点に触れたいと思います。セーフハーバーの設定、基準間のインターオペラビリティの確保、開示媒体のすみ分け、サステナビリティ情報の開示時期に関する部分です。
     1つ目ですが、不確定要素を多く含みますサステナビリティ情報の開示を促進するためには、セーフハーバーですとかノーアクションレターといったルール、制度の整備が必須と考えています。法定開示責任との関係で企業が萎縮しない仕組みづくりが重要だと思っております。
     それから、SSBJ基準についてのインターオペラビリティの確保も重要なテーマだと考えています。ソニーはCSRD、SEC、日本基準と、全てのルールの適用を受ける会社でもありますので、それら諸外国の関連基準だけではなく、国内の温対法ですとか、経産省さんが取り組んでおられるGXリーグ等とのインターオペラビリティの確保ということの検討もお願いできればと思っております。
     3つ目、開示媒体の整理に関しては、法定開示と任意開示のすみ分けというのを整理していって、それぞれの相互参照をどういう要件の下で認めていくかということも議論していただきたいなと思っています。
     最後、有価証券報告書のサステナビリティ情報の同時開示の点ですけれども、企業の観点からすると、現状では大変ハードルが高いと思っています。保証が要求されない統合報告書の実務においても、同時開示は実務的には極めて困難というのが実態ですので、保証まで要求されるということになりますと、これはもう企業の自助努力だけでは解決不可能というのが現状ではないかと思っております。
     そういうことを踏まえますと、環境が整うまでの期間は、サステナビリティ情報の開示時期の恒常的な後ろ倒しですとか、場合によっては、御議論ありましたけれども、有報自体の提出時期の後ろ倒し等も、前広に御検討いただきたいと考えている次第です。
     以上です。ありがとうございます。 
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     続きまして、永沢委員、発言をお願いいたします。
     
    【永沢委員】 
     ありがとうございます。私は、良質な金融商品を育てる会という市民グループを2004年から主宰しており、投資信託を中心に意見を提出してきましたが、株式こそ投資の基本であるということで、最近では、株式会社のガバナンスや情報開示について少しずつ意見を出し始めているところでございます。
     本日ご出席の多くの委員は、投資家側でも機関投資家の方だと思いますが、私は個人投資家という立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
     多くの皆様から、日本市場がグローバルな情報開示の流れから取り残されてはいけないというご意見であり、私も賛成いたします。近年、自分が手にする利益が社会を害することで生まれるようなものであってはいけないという考え方が急速に個人株主の間にも浸透してきております。社会と共生ができる会社であって欲しい、そういう会社の株主でありたいという人が増えてきていると思います。サステナビリティ開示の流れは、そうした個人株主にも歓迎されるべきものだと思います。
     ただ、1つ懸念を感じておりますのは、最近、非公開を決める会社が増えているように感じております。情報開示の面での要請が重くなり過ぎて、そんなことは本当はあってはいけないことなんですが、情報開示の負担が重すぎるという理由で非公開を決定するようなところが出てきてはいけないと思います。
     そのような観点から、プライム企業で時価総額の大きい企業から段階的に進めていただくのが望ましいと思うと同時に、将来的に、スタンダード企業もこうした流れに乗れるように、清原委員からご提案があったように、プリンシプル的なものを用意して自発的に対応いただくということもあっていいのではないかと思いました。
     個人投資家の立場から言わせていただきますと、せっかく選んで応援しようと思った会社が非公開になって、あなたは出ていきなさいということになってしまうことは残念であり、そういう状況は市場としてもよろしくないのではないでしょうか。
     そのようなことが起こらないようにするためにも、適用対象については、上場企業に限定するのではなく、上場していない企業であっても、社会的インパクトの大きい企業については、サステナビリティ開示を求めていくべきと思います。その意味で、金商法だけの問題ではないのではないかとも感じているところです。
     環境整備に関しましては、私からは3点意見を申し上げます。
     1つは、東証の方がオブザーバー参加いただいておりますが、上場企業にもいろいろございます。このような金融審議会のような有識者が集まる場以外に、現場のご意見、企業の意識調査をしていただき、サステナビリティ開示がどの程度受け入れてもらえるのか等、証券取引所や証券会社などに、実施していただければと思います。すでに実施されているかもしれませんが。
     2点目として、先ほど上田委員から、グローバルな競争を勝ち抜いていくためには、気候変動や人権、その他もろもろのサステナビリティの課題に対応していかなくてはいけないというご意見があり、その通りだと思うのですが、サステナビリティ開示の要求に取締役会がついていけているのかどうか、やや懐疑的に思っており、取締役の啓発も重要だろうと思います。取締役の意識改革が重要であろうと思いますので、環境整備として取締役の啓発も追加しておくべきだと思います。
     最後に、やはり個人投資家からもこうしたサステナビリティ情報の開示が支持いただけるように、個人投資家にも分かりやすいものであることが必要です。見える化という表現をされた委員がおられましたが、一般の投資家にも見えて、使えるもの、分かるものであってほしいとは思っております。
     私からは、以上でございます。ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     それでは、堀江委員、御発言をお願いいたします。
     
    【堀江委員】 
       御指名ありがとうございました。環境整備について、ごく簡単に意見を述べさせていただければと思っています。
     企業において相応の手間とコストをかけてサステナビリティ情報を作成、開示する以上、法令等で縛られているから渋々開示を行うという後ろ向きの姿勢ではなくて、国内はもとより、海外からも投資先として選ばれるための前向きの姿勢を持った、そういう開示の姿勢、戦略的な開示といったことについての啓蒙をぜひしていただきたい。法令等で強制されているから、これは開示しないと駄目、あれは開示しないと駄目と、ちょっと表現はよくないんですけども、開示地獄なんて、このようなことにもなりかねない。ですから、これを機会に、うまく企業価値の向上等とも絡めて、開示が適切に行われるような仕組みづくりというものをお考えいただけるとよろしいのではないかと思います。
     もう既に意見としても出ましたが、こういう戦略的な開示の前提として、やはり情報の作成と開示を効果的かつ効率的に行うためには、適切な内部統制の整備とか、ガバナンス体制の整備はもう恐らく不可欠ではないかと思います。
     また、この開示基準の任意適用の期間で、資料の30、31ページ目に出ているところに関してでございますけれども、任意適用の期間の取扱いでございますが、強制適用の準備期間としての位置づけだけではなくて、ほかの委員からも意見が出ておりましたとおり、当面、強制適用から外れる企業に対する適用の促進という視点もとても重要ではないかと思います。
     なお、サステナビリティ情報は、言うまでもなく財務情報と関連づけて利用されるものでありまして、かつ、我が国のサステナビリティの情報の開示基準が国際基準と整合的なものになるということであれば、今後、国際財務報告基準の任意適用の対象拡大にもつながってくるのではないかと考えております。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     それでは、一通り御発言をいただいた後ですけれども、まだ少々時間がございますので、委員の方々の御意見等を聞いて、追加の御発言がありましたら、ぜひお願いしたいと思います。
     それでは、井口委員、どうぞ。
     
    【井口委員】 
     2回目の発言の機会をいただきありがとうございます。
     Scope3やバリューチェーンの開示のところが話題になりましたので、利用者の立場で意見させていただければと思います。あと、どこで区切るかという話の2つの意見をさせていただければと思っております。
     1つ目のScope3の話ですが、やっぱり非常に重要で、気候関連リスクを一番表すものであるということと思っています。ただ、今、企業サイドからおっしゃったように、非常に技術的難易度があるということも理解しております。これはもう既に御案内のことかと思いますが、ISSB基準でも、この部分に、プロモーショナリティが入っていて、企業の能力、キャパシティに応じて最大限開示して欲しいとされています。これはまさに浅川さんから御指摘いただいたように、企業の中で体制整備に差があり、そういったことを考慮した上で、入っているということと理解しています。アナリスト協会で、気候関連リスクや機会が高い企業、業種を担当している3人のアナリストの方に集まっていただきまして、パネルというか議論交換する機会がありました。この3人の運用会社のアナリストさんは、Scope3の開示は非常に重要であるということ、ただ、完璧な開示は求めていない、それはできないことは分かっているからということ、そして、開示があることによって、企業との対話でその開示精度を上げていきたいということ、こういったことを3人異口同音に、パネルの前打合せの段階だったんですけど、おっしゃっていました。
     ですので、Scope3の開示をやめるとか、バリューチェーンの開示をやめるとなりますと、ISSB基準や世界のルールと著しく乖離してしまいますので、日本の資本市場にとって大きな問題になると思います。一方、関口委員がまさにおっしゃったように、日本の企業さん、すごく真摯にいつもやっていただくんですけど、この点について、完璧を求めるものではないということを、しっかり啓蒙活動をやっていただくということが大事ですし、あるいは浅川委員がおっしゃったように、制度としてデータなどの体制整備も引き続きやっていくということも大事じゃないかと思っております。
     もう一つの、どこで区切るかというところですが、私も利用者ですので、なるべく多くの企業にやっていただくのが基本的にはありがたいと思っています。ただ、この事務局資料の7ページにありますところは非常に重要なことを指し示していると思っています。ISSBのPreview of adoption guidanceということで、どのような資本市場をISSB基準に沿っていると認めるかどうかというところで、先ほど野崎課長からも御説明ありましたが、その中でも、やはり一番重要なのは、適用対象企業の所の下に記載がありますが、株式時価総額、これが一番重要であると記載されております。従って、この上に上乗せするということはできると思うんですが、まず、株式時価総額をベースに話をしていくというのが基本的な考え方ではないかと思っています。
     確かに、CSRDに対応される日本企業もいらっしゃると思いますが、そういう会社さんには、先行適用を推進するように、投資家の役割でもあるかもしれませんが、働きかけていくというやり方もあるのではないかと思っております。
     以上でございます。ありがとうございました。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     ほかに御発言ございますでしょうか。
     今、オブザーバーの方から御発言の希望を寄せていただいておりますので、御発言いただければと思います。オンラインで御参加の関経連の中島さん、御発言をお願いいたします。
     
    【関西経済連合会】 
     関西経済連合会の中島です。よろしくお願いいたします。
     まず、関経連では、従来より中長期的な企業価値向上には多様なステークホルダーとの対話が重要であり、そのためには、積極的な情報開示が前提であると考えております。とりわけ、近年、重要性を増しております非財務情報の開示には工夫を凝らしつつ、前向きな姿勢を持って取り組む必要があると思っております。
     そのような観点から、資料39ページの御議論いただきたい事項の「全般」にあるサステナビリティ開示基準に準拠した情報開示を行っていくための環境整備について、資料31ページ、サステナビリティ開示制度導入において検討が必要となり得る論点(案)の内容も考慮に入れながら、3点申し上げたいと思います。
     1つ目は、サステナビリティ開示の導入に当たっては、それぞれの企業の業種や規模により、対応内容、業務負担はまちまちであり、柔軟な対応が必要となると考えます。その観点から言えば、実務が定着するまでの経過措置として、サステナビリティ情報の開示を遅らせることを認める有価証券報告書の2段階開示及び保証の強制適用時期を遅らせる等の措置等の対応は必要と考えます。また、ISSB基準において適用初年度のみ認められたScope3の開示免除等の経過措置を延長すること等により、企業の準備に配慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
     2つ目は、バリューチェーンからの情報等について、有価証券報告書へ記載を求める場合、企業のコントロールが及ばないような情報に関する虚偽記載に対しては、何らかのセーフハーバー・ルールを設ける必要があると考えております。
     3つ目は、米国SECについては、2024年3月に公表されたばかりであることから、Scope1・Scope2に限定した開示や保証の在り方について検討が必要であると考えます。特に、最終版でScope3の開示が削除された点やScope1・Scope2の適用時期が2年から3年程度後ろ倒しになった点、及び合理的保証の範囲が大幅に縮小してScope1・Scope2に限定された点については、その経緯や背景について分析する必要があると考えます。
     また、資料13ページにございますとおり、カリフォルニア気候変動開示法が紹介されております。これは今まであまり話題になっていない内容ですが、カリフォルニア州で事業を行っている日本企業の子会社のみに影響があるのか、あるいは、その際どの程度の影響があるのか等をきちんと示す必要があるのではないかと考えています。
     私からは以上です。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     オブザーバーの方で御発言を希望されている方、いらっしゃいますでしょうか。
     まず、日本公認会計士協会の太田さん、どうぞ御発言ください。
     
    【日本公認会計士協会】 
     ありがとうございます。公認会計士協会の太田でございます。
     まず、ご議論いただきたい事項①にあります対象企業、適用時期でございます。やはり皆さんおっしゃっていますように、プライム市場の目的を考えますと、プライム全企業にSSBJ基準を導入するということが適当だと考えておりますけれども、準備期間等考えられますので、段階的に行うという提案に賛成でございます。ただ、円滑に拡大を図っていくためにも、全プライム上場企業の導入時期までのロードマップについては具体的に定めておくことが必要かと考えております。
     2点目、適用時期ですけれども、SSBJ基準の最終化が来年3月に予定されているということを考えますと、スピード感であったり、適用準備期間等を考えまして、この基準の義務化については、案1にある27年3月期というのが望ましいのではないかと考えてございます。
     また、対象企業について、毎年少しずつ増やしていくというよりは、市場の予見可能性ですとか対象企業の明確化等も踏まえまして、2、3年といった一定の期間は、一定の企業数を維持して、例えば2段階ぐらいで、全プライム企業まで持っていくということも検討されることが考えられると思っております。対象企業の線引きについて、時価総額は常に変動するものでございますので、安定的な制度運用のために、基準日含めて検討が必要になると考えてございます。
     保証の導入時期でございますけれども、やはり開示情報の信頼性を担保するためには、保証制度の導入は開示と同時期であるべきと考えてございます。仮に27年3月期から開示義務化という場合には、保証も同時期というのが望ましいと考えてございます。保証の開始については28年3月期からという提案がされてございますけれども、こちらは法令の改正ですとか、そういったものも含めたタイミングと理解してございます。この辺り、スピード感を持った対応ができないかというところはもう少し検討があってもいいのかもしれません。
     あと、業界として開示基準と同時期の保証制度の導入というのは進めてございまして、少なくとも現在提案されているような先行適用企業をカバーするリソースというものは確保可能と考えてございます。また、保証の制度導入を遅らせる場合には、やはり任意保証というものもニーズが生じるということが考えられますけれども、この任意保証をどのように促していくのか、その際に適用される保証基準についてはISAE3000を使うのかどうかとか、そういったところの整理も必要であると考えてございます。
     ご議論いただきたい事項の②の環境整備に関して、開示スケジュールについて有価証券報告書の2段階開示が論点案には示されていましたけれども、やはりサステナビリティ情報は財務情報を補完するということが考えられますし、また、ISSB基準では同時開示ということもうたわれておりますので、例外を認めるということは国際的に見ても望ましくない面があると考えてございます。一方で、現状の実務では、サステナビリティ報告書や統合報告等は、決算日から4か月、5か月、半年というふうに遅れて開示されてございますので、やはりこういったところを踏まえて、また、同時開示を実現しつつ、企業と投資家、対話を実効的なものになるように、皆さんおっしゃられますように、有報の提出時期については検討されるということが望ましいと考えてございます。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして経団連の小畑さん、その後、オンラインで御参加の日本監査役協会の佐藤さんに御発言をいただければと思います。
     まず、経団連の小畑さん、お願いします。
     
    【日本経済団体連合会】 
     御指名ありがとうございます。私からは3つほど述べさせていただければと思います。
     まず、最初の論点であります適用対象、適用時期のところでありますけれども、最初のスタートとして、兆円オーバーの時価総額の大きいところからという考え方には賛同するところでありまして、基本的にはこういった会社がヨーロッパ等での開示の対象にもなっている、かなりの部分オーバーラップするところではないかと思っております。その点については賛同するところでございまして、実務の安全性の観点からすれば、強制は2028年の案2のほうが安全なのではないかと考えております。
     一方、将来的にプライム市場全社適用対象を見込むとこういうこと、それ自体は理想形としてはあり得るというふうに思っておりますけれども、この時点で、いついつまでに全社適用しますということを宣言してしまうのは非常に危ういのではないかと感じておりまして、例えば、かつてIFRSの適用について、2015年に全社強制適用するという方針を打ち出したときの世の中の大混乱、こちらを思い浮かべますと、同様のことが起こりはしないかと非常に危機感を持っておりまして、その点については、まずは兆円オーバーの適用状況、実務のこなれ具合、それから保証提供側の体制、人員の確保も含めて、こういった状況を踏まえて、もう少し将来的にある時点で、もう1回状況をよく踏まえた上で判断しましょうという慎重なプロセスが必要なのではないかというところを考えております。
     それから、2点目でありますけれども、いずれにしても、任意適用を含めて適用を拡大していくということは大いにやるべきだと思っておりまして、円滑な導入に向けた環境整備としましては、1つ目はセーフハーバーです。特にサプライチェーン情報をストックするのはなかなか難しいところがありますので、こちらについては、先ほど来御議論ありましたけれども、セーフハーバーをしっかり設けていただくとともに、やはり同時開示、こちらのところは、極めて実務的には難しいというのが現状でございまして、こちらの提出時期については、よく実務を踏まえて御検討いただきたいと。場合によっては、有価証券報告書の提出時期、こちらそのものについても御検討いただく必要があるのではないかと考えております。
     3点目が、先ほど来出ておりますように、国際的な意味でのアメリカ、あるいはヨーロッパとの制度のインターオペラビリティ、こちらの確保は当局間でぜひよく調整していただきたいということとともに、また、日本の諸制度、こちらとのインターオペラビリティも確保していただきたい。同じような情報が違う手法でそれぞれ計算してくださいということになると、企業としては非常に困るということでありまして、特にCOの排出量、こちらについては既に温暖化対策法による報告制度もある中での話となります。ということで、こういった国内諸制度とのすり合わせ、こちらもぜひ図っていただければと思っております。
     以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きましてオンラインで御参加の日本監査役協会の佐藤さん、よろしくお願いいたします。
     
    【日本監査役協会】 
       発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。日本監査役協会の佐藤と申します。
     繰り返しになってしまいますが、1点だけ、先ほど御議論ありましたセーフハーバー・ルールのところ、そちらはぜひ明確にしていただければと思っております。経営でいうところの経営判断原則のようなルール、こういったものが明確化されることで、積極的で幅の広い多くのステークホルダーの皆様の活動に資するような、そういった情報開示が行われるための環境整備が行われることを期待しております。
     以上です。よろしくお願いいたします。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     もし御意見等があればご発言をいただきたいと思いますけども、東証の青さん、お願いいたします。
     
    【東京証券取引所】 
     はい、ありがとうございます。東京証券取引所の青でございます。
     まず、サステナビリティの開示に関しましては、サステナビリティが企業に求められるという社会の変化がベースにあって、その上での開示ということを考えていただくことが一番重要かと思います。開示負担は確かに増大するかもしれませんけれども、企業がサステナビリティをしっかりと確保すること、そしてそれを対外的に示していくことの重要性が増しているということを念頭に、御議論を進めていただければと思ってございます。
     また、適用対象と時期に関してですけれども、プライム全社というフレームワークのところにつきましては、プライム市場はグローバルな投資家を念頭に置いた企業群という形で定義をしてございますので、そこと親和性があると考えてございます。適用するタイミングについては別途検討が必要かもしれませんが、最終的にプライム全社に向かっていくところで、進めていただければと考えているところでございます。
     適用の時期と段階の組み方に関しましては、なかなか難しいところがございますけれども、現実感のところを踏まえるということは当然必要かと思います。日本の姿勢や、グローバルな中での日本の動き方というところは注目されているところかと思いますので、日本としてサステナビリティをどう捉えるのかということを前提におきながら、できる限り現実的な視点の中で、速やかな対応が重要になってくるかなと感じておるところでございます。
     そうした意味で、開示の時期をしっかりと見据えながら、その保証が最初からどこまで必要なのかという点で御議論いただければ幸いに存じます。
     それから、上場と非上場というところに関しましては、ここの場では、上場企業を前提とした投資情報の提供というところになるかと思いますけれども、やはり政府全体としては、非上場企業も含めた議論というのを適切な場所で御検討いただければ幸いに存じます。
     それから、開示のタイミングとか2段階の開示にするかどうかという点でございますけれども、ここに関しましては、国際的には同時の開示というのが求められているという状況にあるという点と、提出時期が現実的かどうかと、株主総会の時期がどうか、という3点について、今後の開示の量が気候以外にも広がり得ることも踏まえて、海外と比較をしながら、少し長い目線での議論を、早めにスタートしたほうがいいのかなという感じがするところでございます。
     私からは以上でございます。 
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     意見も尽きないようではございますけれども、定刻を過ぎてしまいましたので、本日の討議はこれにて終了とさせていただきたいと存じます。本日の議論を踏まえて、次回以降、さらに議論を進めてまいりたいと存じます。
     最後に事務局の方から御連絡等がございましたら、よろしくお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】 
     次回のワーキング・グループの日程でございますけども、また皆様の御都合を踏まえた上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。
     事務局からは以上でございます。
     
    【神作座長】 
     どうもありがとうございました。
     それでは、これをもちまして本日の会議を終了させていただきます。
     お忙しいところ誠にありがとうございました。

    ―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

企画市場局企業開示課(内線:3688、3846)

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