【特集:「金融分野における個人情報保護」について】
 
 
.はじめに
 「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号。以下、「保護法」という)が4月1日より全面施行となります。金融分野における個人情報の保護のあり方については、金融審議会金融分科会特別部会(以下、「特別部会」という)において計18回審議され、同部会における審議等を踏まえ、PDF「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成16年12月6日金融庁告示第67号。以下、「ガイドライン」という。)及びPDF「金融分野における個人情報保護の安全管理措置等に関する実務指針」(平成17年1月6日金融庁告示第1号。以下、「実務指針」という。)が策定、公表されました。
 また、平成16年12月20日に開催された特別部会第18回会合において、「個人情報の保護に関する法律の全面施行に向けて」のとりまとめが行われ、金融分野の個人情報取扱事業者におけるガイドライン及び実務指針の遵守が求められたことに加えて、(1)安全管理措置の適切な実施(2)個人信用情報機関から得た信用情報の目的外利用の禁止、及び(3)いわゆる機微(センシティブ)情報の目的外利用の禁止について、各業法の体系上も個人顧客情報の保護の実効性・透明性を確保することが求められたことに基づき、各業法施行規則の改正を図ることとしています。


.ガイドラインの概要
 本ガイドラインは、金融分野における個人情報取扱事業者が、個人情報の適正な取扱いの確保に関して行う活動を支援するため、(1)事業者が講ずべき措置の有効かつ適切な実施を図るための個人情報保護法の解釈指針を示す(保護法第8条に基づく措置)とともに、(2)金融分野における個人情報の特性及び利用方法にかんがみ、基本方針に基づく「格別の措置」として、個人情報の取扱いにおいて特に厳格な実施が求められる事項(保護法第6条に基づく措置)を盛り込んだものとなっています。
 「格別の措置」として本ガイドラインで規定されている主な措置としては、
 
 ・  門地、病歴等の機微(センシティブ)情報の取得等を原則禁止
 ・  生体認証情報の取得等は、本人同意に基づく本人確認目的の場合に限定
 ・  漏えい等事故発生時における監督当局及び被害者への通報等
 ・  個人信用情報機関への情報提供にあたっての本人同意の取得
 ・  第三者提供にあたっての本人同意は原則書面
 ・  保有個人データの保存期間の設定、期間経過後の消去
 ・  本人からの訂正等の申し出に応じない場合の根拠の明示 等
が挙げられます。
 紙面の都合もあることから、個別の規定に関する具体的な説明は省略しますが、本ガイドラインについては、昨年10月に実施したパブリックコメントに対して約400件の意見・質問等が寄せられました。それらに対する回答については、金融庁ホームページの「金融分野における個人情報保護」からPDF「「金融分野における個人情報の保護に関するガイドライン」(案)への意見一覧」に公表していますのでそちらを参照にしてください。
 


用語解説】
「機微(センシティブ)情報」とは・・・ガイドライン第6条において、「政治的見解、信教(宗教、思想及び信条をいう。)、労働組合への加盟、人種及び民族、門地及び本籍地、保健医療及び性生活、並びに犯罪歴に関する情報)」を機微(センシティブ)情報として限定列挙し、これらについては、金融分野における個人情報取扱事業者の取得・利用・第三者提供を原則として禁止しています。
 なお、特にプライバシー性の高い情報をセンシティブ情報として保護することが同条の趣旨であり、新聞又は官報に掲載された公知の情報、外見上明らかな顔写真などはセンシティブ情報に該当しません。


.安全管理措置等に関する「実務指針」の概要
 実務指針は、ガイドラインの第10条から第12条に定められた安全管理措置等の基本的事項等について、事業者の講じるべき措置を明示しているものです。実務指針に定められた規定のうち、保護法第20条から第22条の解釈に係る義務的規定に加えて、
 
 ・  センシティブ情報の取扱いに関する特別の措置
 ・  センシティブ情報に該当する生体認証情報の取扱いに関する特別の措置
 ・  個人信用情報機関の会員管理に関する特別の措置
等の「格別の措置」として求められる内容を定めています。
 なお、金融分野における個人情報取扱事業者は規模及び保有個人情報の数等も様々であることから、各事業者は、当該事業者の実状に照らして、「個人データの安全管理のために必要かつ適切な」措置として合理的に説明できる限りにおいて、実務指針に定められた措置を実施することが求められるものです。
 実務指針の解釈についても、パブリックコメントで寄せられた質問等に対する回答を金融庁ホームページ上にて公開しています。詳細な内容については、金融庁ホームページの「金融分野における個人情報保護について」からPDF「「金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針(案)」への意見一覧」に公開していますので、詳細な内容についてはそちらを参照してください。


.業法の施行規則等の改正について
 金融審議会特別部会におけるとりまとめを踏まえ、ガイドライン及び実務指針の格別の措置等のうち、特に業法上も実効性を確保することが求められる3点(前述のとおり)について、各業法施行規則及び監督指針等において、個人顧客情報の適切な取扱いを確保するための所要の規定整備を進めました。先般、広く意見を求めるためその案をパブリックコメントに付しましたが、これらを踏まえて、各業法施行規則及び監督指針等が改正・公布され、4月1日より施行されます。
 今後、違反に対しては、各業法上の法的根拠に基づく、実効性かつ透明性のある行政措置がとられることとなります。


<参考資料等>
.議論の経過等については、金融審議会特別部会の議事録・議事概要・配布資料等も金融庁ホームページの「審議会など」から「金融審議会」にて公開していますので、参考にしてください。
.金融審議会特別部会のとりまとめ(平成16年12月20日)については、金融庁ホームページから「審議会など」「金融審議会」「資料等」から<特別部会>平成16年12月20日資料に掲載されています。

【ピックアップ:中小企業金融】
 
リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ地方懇談会の開催について(福岡・大阪)

リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ地方懇談会 昨年12月24日に公表した「金融改革プログラム」では、地域金融に関して、「現行の(リレーションシップバンキングの機能強化に関する)アクションプログラムについて実績等の評価を行った上で、これを継承する新たなアクションプログラムを(中略)策定する」こととされました。
 これを踏まえ、本年2月2日に開催された金融審議会金融分科会第二部会において、「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」を再開し、現行のアクションプログラムについて実績等の評価等の議論を行うこととされ、2月7日の再開以降、ワーキンググループにおいて精力的な議論が行われているところです。
 こうしたワーキンググループにおける議論の一環として、これに地域金融等の実態を踏まえたより広範な意見を反映させるため、地域の中小企業経営者等と直接意見交換を行うことが有用であるとの観点から、先般、福岡財務支局及び近畿財務局の協力を得て、福岡(2月28日)及び大阪(3月2日)の2箇所において地方懇談会が開催されました。
 当日は、地域の中小企業経営者、消費者、金融機関等のパネリスト及びワーキンググループのメンバーが参加し、現行のアクションプログラムの評価、新たなアクションプログラムへの要望等について、それぞれの立場から意見を発表した後、活発な意見交換が行なわれました。

 パネリストからの主な意見は以下のとおりです。
 中小企業経営者のパネリストからは、現行のアクションプログラムには一定の評価ができるのではないかという意見がありました。他方、企業を評価するための経営者に対する人間洞察力が必要である、決算書以外の事業内容や商品力、経営者の資質も評価して欲しい、現場ではまだまだ担保や信用保証に依存する融資が依然として続いている、といった意見もありました。
 消費者のパネリストからは、金融機関による利用者に対する十分な情報開示や地域の消費者との交流を積極的に進めて欲しい、といった意見がありました。
 金融機関のパネリストからは、地域や業態或いは個別企業の事情によって、必要とする金融サービスの質・量なども違っており、新たなアクションプログラムの下では、各金融機関の計画が画一的ではなく「選択と集中」という考え方により策定・実施されるよう配慮して欲しい、といった意見がありました。


地方懇談会の概要】
 
福岡
日 時:平成17年2月28日(月)14時〜16時
場 所:ハイアット・リージェンシー・福岡
傍聴者:177名
参加者:
<パネリスト>
 石村 善悟   (株)石村萬盛堂 代表取締役社長
 中村 智ェ   (株)サンコー・テクノ 代表取締役社長
 野口 博子   (有)ビスネット 取締役
         (日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
          九州支部長)
 眞ア 建次   (株)マサキ・エンヴェック 代表取締役社長
 溝上 泰弘   (株)ミズ 代表取締役社長
 橋本 洸    福岡県商工部 部長
 寺本 清    (株)福岡銀行 頭取
 山本 孝之   (株)佐賀共栄銀行 頭取
 古川 育史   福岡ひびき信用金庫 理事長
 床嶋 保彦   福岡県中央信用組合 理事長
<ワーキンググループ委員>
 堀内 昭義   中央大学総合政策学部 教授
 金丸 恭文   フューチャーシステムコンサルティング(株)
         代表取締役社長
 多胡 秀人   アビーム・コンサルティング(株) 顧問
 淵田 康之   (株)野村資本市場研究所 執行役


大阪
日 時:平成17年3月2日(水)15時〜17時
場 所:都ホテル大阪
傍聴者:226名
参加者:
<パネリスト>
 木村 皓一   (株)ミキハウス 代表取締役社長
 更家 悠介   サラヤ(株) 代表取締役社長
 地引  啓   (株)ロブテックス 代表取締役会長
 武内  勇   (株)ミレニアムゲートテクノロジー 代表取締役
 稲岡真理子   ライフマネジメント研究所 所長
 林   郁   (財)関西消費者協会 理事長
 柳  正憲   日本政策投資銀行 関西支店長
 柏原 康夫   (株)京都銀行 頭取
 伊藤 忠彦   (株)関西アーバン銀行 頭取
 布垣  豊   京都中央信用金庫 理事長
 松本 精二   大阪協栄信用組合 理事長
<ワーキンググループ委員>
 堀内 昭義   中央大学総合政策学部 教授
 村本  孜   成城大学経済学部 教授
 今野 由梨   ダイヤルサービス(株) 社長
 多比羅 誠   ひいらぎ総合法律事務所 弁護士
 淵田 康之   (株)野村資本市場研究所 執行役
 三井 逸友   横浜国立大学大学院環境情報研究院 教授
 吉田 和男   京都大学大学院経済学研究科 教授

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