アクセスFSA 第68号(2008年7月)

【法令解説等】

「主要行等向けの総合的な監督指針」、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」及び「信託会社等に関する総合的な監督指針」の一部改正の公表 について

  • 金融庁は、平成20年8月6日、「主要行等向けの総合的な監督指針」、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」及び「信託会社等に関する総合的な監督指針」を改正しました。改正の概要は、以下のとおりです。

    1. 主要行等向けの総合的な監督指針と中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針について

    今回のサブプライムローン問題により金融機関が大きな損失を被ったことから、欧米監督当局や国際機関等は金融機関のリスク管理のあり方を検証し、ここで抽出された教訓については、金融安定化フォーラム(FSF)の報告書等の形で公表されたところです。我が国でも、金融庁が各金融機関へのヒアリングを通してリスク管理上の留意点の把握に努めているほか、日本銀行が証券化商品への投資に係るリスク管理上の留意点を公表するなど、当局による金融機関のリスク管理のあり方についての検証が進められてきました。

    これらの検証と教訓を踏まえ、「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の市場リスク管理・信用リスク管理に関する留意点等について改正を行いました。具体的には以下のとおりです。。

    • (1)リスク管理体制

      • 経営陣は、幅広い視点から能動的かつ迅速に業務運営やリスク管理等の方針を決定しているか。

      • 内外の経済動向等を含め、保有資産の価格等に影響を与える情報を広く収集・分析するとともに、経営陣が適切かつ迅速に業務運営やリスク管理等の方針を決定できる態勢が整備されているか。

      • 保有資産の種類等別に業務部門が相互の連携なく投資運用を行う場合、全体としてリスクの集中を招く等効果的なリスク管理に支障が生じうることを認識し、ポートフォリオ全体の観点から適切かつ迅速な投資判断を行える態勢が整備されているか。

      • 海外拠点を含めたグループレベルで、リスク管理は実施されているか。

    • (2)リスク管理の内容・手法

      • VaR値をリスク管理に用いる際は、商品の特性を踏まえて、観測期間、保有期間、信頼区間、計測手法及び投入するデータ等の適切な選択に努めるとともに、計測結果を検証し、妥当性の確保に努めているか。

      • 統計的なリスク計測手法には一定の限界があることを踏まえ、多様なリスク計測手法の活用、ストレステストを含むリスク管理手法の充実を図っているか。

      • ストレステストについては、ヒストリカルシナリオのみならず、仮想のストレスシナリオによる分析を行うなど、内容の充実を図っているか。

      • ストレステストの設定内容・結果につき、取締役会等において、リスク管理に関する具体的な判断に活用される態勢が整備されているか。等

    • (3)証券化商品等のクレジット投資のリスク管理

        ○  価格評価

      • 価格評価にあたっては、可能な限り客観的な価格評価を行っているか。

      • 価格評価モデルを用いる場合にその適切性を検証しているか。

      • 第三者から価格評価を取得する場合は、情報を求めた上でその妥当性の検証に努めているか。等

        ○  商品内容の把握

      • 証券化商品等への投資・期中管理にあたり、外部格付に過度に依存しないための態勢が整備されているか。

      • 商品ストラクチャーの分析等、内容把握に努めているか。

      • オリジネーター、マネージャー等の関係者の能力・資質、体制等の把握・監視に努めているか。等

        ○  市場流動性リスクの管理

      • 証券化商品等への投資や期中管理において、市場流動性を適切に検証しているか。

      • 証券化商品等の市場流動性につき、懸念が認められた場合、適時に対応を検討する態勢となっているか。

        ○  証券化商品の組成等に係るリスク管理

      • 証券化商品等の組成・販売業務において、パイプラインリスク(市場の変化により、原資産のリスクを投資家に移転することが困難になる)について、あらかじめ検討が行われているか。

      • 非連結の特別目的会社等を用いて証券化商品等の組成・販売等を行う際に留意すべきリスク(レピュテーショナルリスク等)について検討が行われているか。

    • (4)カウンターパーティリスクの管理

      デリバティブ取引等における主なカウンターパーティについて、適切なリスク管理(カウンターパーティ別・類型別のエクスポージャー管理、市場流動性が低下する状況等も勘案した適切なストレステストの実施等)を行っているか。等

    • (5)情報開示の適切性・十分性

      市場の関心の強い分野に係るエクスポージャー等については、国際的なベストプラクティスを踏まえつつ、自行のリスク特性に即した有用な情報を積極的に開示しているか。

    • そのほか、銀行代理業や免許の手続き等に係る改正を行いました。

  • 2.  信託会社等に関する総合的な監督指針について

    信託業法が全面改正されてから3年を経過したところであり、効率的・効果的な監督事務の実施を確保する観点から改正を行うとともに、テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されることを防止するための態勢整備等に係る監督上の主な着眼点等を明確化するために所要の改正を行いました。


「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案・内閣府案等」に対するパブリックコメントの結果等について

  • I. 経緯

    平成16年6月9日に公布された株式等の振替に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律(決済合理化法)は、社債等の振替に関する法律を改正し、これまで社債や国債を対象としていた振替制度の対象に、株式・投資口等の有価証券を加えること等を内容とするものです。この決済合理化法の施行により、上場会社の株式等に係る券面は全て廃止され、券面の存在を前提として行われてきた株主権の管理は、証券会社等に開設された口座において電子的に行われることになります(株券電子化)。

    決済合理化法の施行に伴う政省令の改正作業においては、昨年12月14日に「社債等の振替に関する法律施行令の一部を改正する政令」および「社債等の振替に関する命令の一部を改正する命令」を公布し、今般、これらの政省令以外の関係する政省令の改正を行ったところです。

  • II. 改正の概要

    改正の主な内容は次のとおりです。

    • (1) 決済合理化法の施行に伴い、振替制度の根拠法令の名称が「社債等の振替に関する法律」(関係政省令を含む。)から「社債、株式等の振替に関する法律」(関係政省令を含む。)に変更されるため、これらの法令を引用している政省令において法令名を改正する。

    • (2) 決済合理化法の施行に伴い、「株券等の保管及び振替に関する法律」(関係政省令を含む。)が廃止されるため、これらの法令を引用している政省令において不要となる規定を削除する。

    • (3) 関係政省令において振替機関等の振替口座簿に超過記録が発生した場合における議決権についての調整の定めを規定する。

    • (4) 株主等が振替口座簿の記録事項について情報提供請求をする際に、電磁的方法によることを可能とする旨を規定する。(一般振替機関の監督に関する命令等)

    • (5) 特別口座の開設について本人確認の対象から除外する旨を規定する。(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則)

    • (6) 放送会社等の外国人保有制限がある会社について、電子化移行時の株主名簿の名義書換手続における取扱いを規定する。

    • (7) その他所要の整備を行う。

  • III. その他

    決済合理化法および関係政省令は、決済合理化法の公布の日から5年を超えない範囲で政令で定める日に施行されることとされています。現在、平成21年1月5日を実施(施行)予定として準備が進められています。


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