アクセスFSA 第66号(2008年5月)

中小企業金融に関するアンケート調査結果の概要について

中小企業金融の実態把握の一環として、平成21年2月から3月上旬にかけて、全国の財務局等を通じて、商工会議所及び経営指導員等を対象に聴き取り調査を実施したところ、その調査結果の概要は以下のとおりとなりました。

  • 1.商工会議所に対するアンケート調査(2月実施)

    • 各都道府県の商工会議所47先に対し、会員企業の業況や資金繰りの現状と先行き等について聴き取り調査を実施しました。

      • (1)中小企業の業況感は、一段と厳しいものとなっています。要因としては、「売上げの低迷」の割合が最も大きく、その割合は前回よりも上昇しています。次いで、「販売価格の下落」が続いています。

        中小企業の業況
      • (2)中小企業の資金繰りも、一段と厳しいものとなっています。要因としては、「販売不振・在庫の長期化等の営業要因」が最も大きく、その割合は前回よりも上昇しています。次いで、「金融機関の融資態度・融資条件」が続いています。

        中小企業の資金繰り
  • 2.金融機関の融資動向等に関するアンケート調査(2月~3月上旬実施)

    • 各地域の商工会議所の経営指導員等537名を対象に、金融機関(業態別)の融資姿勢に対する評価等について聴き取り調査を実施しました。

      • (1)金融機関の融資姿勢に対する「消極的評価」は、主要行が最も大きく、次いで地域銀行、協同組織金融機関、政府系金融機関の順となっています。「積極的評価」は、政府系金融機関が最も大きく、次いで協同組織金融機関、地域銀行、主要行の順となっています。

        融資姿勢に対する評価(業態別)
      • (2)経営指導員等における認知状況は以下のとおりです。

        「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」 95.1%

        「貸出条件緩和債権に該当しない場合の取扱いの拡充」 84.2%

        「金融円滑化ホットライン」 81.9%

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「中小企業金融に関するアンケート調査結果の概要」(平成21年3月27日)にアクセスしてください。


地域密着型金融に関する取組み事例集の公表について

地域金融機関における地域密着型金融については、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」において、「特に先進的な取組みや、広く実践されることが望ましい取組みについては、年1回、全国に対する事例紹介や顕彰等を実施する」こととしています。

金融庁では、今般、平成20年度中に全国の財務局等が「地域密着型金融に関する会議」(シンポジウム)を開催するなかで、「特に先進的な取組みや、広く実践されることが望ましい取組み」として顕彰した事例を中心に、「地域密着型金融に関する取組み事例集」をとりまとめ、公表しました。

当局としては、本事例集の公表が地域密着型金融に関する知見やノウハウの共有の一助となり、各地域金融機関において、地域の金融ニーズを的確に捉えた取組みが積極的に行われていくことを期待しています。

なお、本事例集は、各金融機関から提出を受けた資料により作成しており、文中等における取組みに対する評価等については、当該資料を作成した各金融機関における見解であり、当庁の見解を表したものではありません。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「地域密着型金融に関する取組み事例集の公表について」(平成21年3月31日)にアクセスしてください。


金融機関のCSR事例集等の公表について

金融庁は、今般、金融機関のCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)(注)を重視した取組みの状況や具体的事例について調査を行い、その結果を公表しました。

なお平成18年3月にも同様の調査結果を公表しており、今回の調査は、前回調査以後の取組みをフォローアップすることを主な目的として実施したものです。

  • (注) 本調査においてCSRとは、「企業が持続可能な発展を目的として、多様なステークホルダー(利害関係者)との関係の中で認識する責任と、それに基づく経済・環境・社会的取組みのことを指し、その具体的な内容としては、企業による法令遵守、納税、消費者保護、環境保護、人権尊重、地域貢献等の自主的取組みと広範にわたるものを指す」と定義しています(下線部は監督方針上の定義と同じ。)。

今回の調査のポイントをあげると以下のとおりです。

  • (1)今回から新たに貸金業者(日本貸金業協会)を対象。

  • (2)前回も調査対象であった預金取扱金融機関、保険会社及び証券会社等については、回答機関のうちCSRを重視した取組みを行っているものの割合は72.0%で、前回調査から5.4%ポイントの増加。なお貸金業者も含めた全体の割合は46.3%。

  • (3)各業態において特に先進的であり、普及が望ましいと考える事例として、金融機関から456事例の回答があった(うち環境分野が219事例、経済・社会分野が237事例)。

もとよりCSRについては、私企業である金融機関が自己責任原則に則った経営判断に基づき行うものであり、その評価も市場規律の下、利用者を含む多様なステークホルダーに委ねられているものです。

金融庁としては、各金融機関が他の機関の具体的取組み等を参照し、今後の取組みに活かすことで、利用者の利便性向上等に資することを期待しています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から『「金融機関のCSR事例集」等の公表について』(平成21年3月31日)にアクセスしてください。


平成21年度の審査基本計画及び検査基本計画の策定について

公認会計士・監査審査会(以下、「審査会」といいます。)では、3月31日、「平成21年度の審査基本計画及び検査基本計画」を策定・公表しました。概要は以下のとおりです。

審査会は、公認会計士監査制度の充実・強化を目的として平成16年4月に設置され、日本公認会計士協会から「品質管理レビュー」に関する報告を受けてその内容を審査し、必要に応じて日本公認会計士協会や監査事務所等に立入検査を実施しています。

審査会では、平成19事務年度から平成21事務年度までにおける審査・検査の基本方針を「監査の品質の一層の向上のために―審査基本方針等―(平成19年6月策定)」において定めており、当該方針の見直しを年度ごとに行うとともに、年度ごとに「審査基本計画」及び「検査基本計画」を策定することとしています(※審査会では、4月~翌年3月の会計年度で計画策定を行います。)。

平成21年度は、審査基本方針等に記載の外国監査法人等に対する対応について、外国監査法人等の届出の状況や届出内容を踏まえ、当該方針等の所要の改正を行うとともに、当該方針等で示した基本的な考え方等を踏まえ、「平成21年度の審査基本計画及び検査基本計画」を策定・公表したものです。

  • 1.審査基本計画

    監査事務所における品質管理のシステムの整備状況について、特に個人事務所における整備状況を重点的に検証し、業務の品質管理の監視についても、引き続き、重点的に検証します。また、日本公認会計士協会の上場会社監査事務所登録制度等の運営状況についても検証します。

  • 2.検査基本計画

    日本公認会計士協会の品質管理レビューの審査結果等を踏まえ、必要に応じて、大規模監査法人及び中小規模監査事務所に対する検査を実施します。

  • 3.外国監査法人等に対する対応

    外国監査法人等については、金融庁への届出の状況や届出内容を踏まえ、関係部局との連携や外国監督当局との協力関係の充実を図るとともに、当該外国監査法人等の品質管理に関する情報等の収集及び分析に努め、検査方法等について具体的に検討を行い、必要に応じて、検査を実施します。

※ 詳しくは、公認会計士・監査審査会ウェブサイトの「基本方針・基本計画等」から「平成21年度の審査基本計画及び検査基本計画」(平成21年3月31日)にアクセスしてください。


【国際関連】

金融安定化フォーラムによる「金融システム強化のための提言及び基本原則」の公表について

金融安定化フォーラム(FSF)は、英国ロンドンで開催された第2回金融・世界経済に関する首脳会合(ロンドン・サミット)に合わせ、4月2日、金融システム強化に向け、「金融システムにおける景気循環増幅効果への対応」、「健全な報酬慣行に関する原則」、「危機管理における国際的連携に関する原則」の3つの報告書を公表しました。以下では、3つの報告書の概要について解説します。

  • (1)「金融システムにおける景気循環増幅効果への対応」PDF(原文)PDF(日本語概要)

    金融システムには、景気の良いときにそれを過熱させ、景気の悪いときにそれを一層悪化させる要素(景気循環増幅効果、プロシクリカリティ)が内在するのではないかとの問題意識から、FSFでは、(1)銀行の自己資本、(2)引当て、(3)価格評価及びレバレッジ、の3つの分野について、プロシクリカリティを抑制するための方策について検討を行ってきました。この報告書では、そうした検討を踏まえ、以下のような対応策が提言されています。

    • (1)自己資本

      好況時における所要自己資本の低下が貸出しの増加等を通じて景気を過熱させ、不況時における所要自己資本の上昇が貸出しの引締め等を通じて景気を一層悪化させる問題に対処するため、バーゼル銀行監督委員会は、自己資本の質及び水準を好況時に引き上げ、経済及び金融のストレス時にそれが取崩し可能であるようにすべき。

    • (2)引当て

      好況時における引当水準の低下が貸出しの増加等を通じて景気を過熱させ、不況時における引当水準の上昇が貸出しの引締め等を通じて景気を一層悪化させる問題に対処するため、景気循環を通じた引当水準の平準化を図るべく、会計基準設定主体は、貸倒損失の認識・測定について、利用可能な信用情報を従来よりも広範囲に取り込めるようなアプローチを分析する。

    • (3)価格評価及びレバレッジ

      好況時における金融資産の時価の上昇がバランスシートの改善や投融資の増加等を通じて景気を過熱させ、不況時における金融資産の時価の下落がバランスシートの毀損や投融資の減少等を通じて景気を一層悪化させる問題に対処するため、会計基準設定主体及び金融監督当局は、会計モデルの強化等により金融商品に関する時価会計の利用を注意深く検討する等、関連する基準を変更する可能性について検証すべき。

  • (2)「健全な報酬慣行に関する原則」PDF(原文)PDF (日本語概要)

    金融機関における短期的な収益に偏重した報酬体系が、金融機関による過度なリスクテイクを招いたとの認識を踏まえ、FSFは、大手金融機関における健全な報酬慣行を確保するための基本原則を策定しました。原則には、(1)報酬体系に関する実効的なガバナンスを確保する観点から、取締役会が報酬体系を主体的に監督すること、(2)報酬体系が健全なリスクテイクと整合的であることを確保する観点から、報酬額はリスクと整合的に、また、リスクの発生する時間軸に合わせて支払われること、(3)報酬に対する実効的な監督と関係者の関与を確保する観点から、報酬慣行の問題に対しては迅速に監督上の措置で対応すること、及び金融機関が自社の報酬慣行について、包括的で適時の情報開示を行うこと、等が盛り込まれています。

  • (3)「危機管理における国際的連携に関する原則」PDF(原文)PDF(日本語概要)

    個別の金融機関の問題が国際的な金融危機に発展する際に各国当局が連携して対応するため、FSFは、(1)危機に備え、当局が平時に対応しておくべきこと、(2)危機発生時に当局がとるべき行動について基本原則を策定しました。原則では、(1)に関し、危機対応の際に問題となりうる障害につき検討するため、関連する各国当局が年に一回は会合すること、当該金融機関のグループ構造や緊急時の資金調達の仕組み等について情報を共有すること、(2)に関し、システミックな影響に関する評価を共有すること、自国の措置につき他の関係当局と早期に議論すること、対外発表に関する計画を共有すること、等が盛り込まれています。

これらの報告書の提言及び基本原則は、ロンドン・サミットにおいて支持され、その迅速な実施が求められています。金融庁としては、各国当局において実施すべき取組みを着実に実施していくほか、提言・原則を踏まえた国際的な議論に引き続き積極的に参加していきます。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「国際関連情報」から「金融安定化フォーラムによる「金融システム強化のための提言及び基本原則」の公表について」(平成21年4月3日)にアクセスしてください。


モニタリング・ボードと国際会計基準委員会財団(IASCF)評議員会との第一回会合について

平成21年4月1日、金融庁を含む証券規制当局から構成されるモニタリング・ボードは英国ロンドンにて国際会計基準委員会財団(IASCF)評議員会との第一回会合を行いました。また、モニタリング・ボードのメンバーは、議長としてハンス・フーガーホースト氏(証券監督者国際機構(IOSCO)専門委員会代表(同委員会副議長)・オランダ金融市場庁長官)を選出しました。

PDF(資料1) モニタリング・ボード第一回会合 プレスリリース(仮訳)

PDF(資料2) モニタリング・ボード第一回会合 プレスリリース(英文)

モニタリング・ボードの設立の背景と経緯

<設立の背景>

国際会計基準委員会財団(IASCF)は国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)の母体となる財団であり、民間の独立した組織です。IASCFは2000年にIASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)により設立されました。IASCFの評議員会(Trustees)は、IASB理事会の戦略の策定、メンバー選任、予算や資金調達を行っており、我が国からも、島崎憲明氏(住友商事株式会社副社長)、藤沼亜起氏(前日本公認会計士協会会長)がIASCF評議員会のメンバーとして参加しています。

IASBが策定するIFRSは世界の資本市場の主要なインフラのひとつであり、財務諸表の作成者、監査人や投資家といった幅広いグループに影響あるものです。したがって、会計基準は全ての利害関係者の意見をバランスよく考慮したものである必要があり、また、IASCFやIASBが一部の特定グループからの影響を受け、会計基準を変更することは避けなければなりません。特に、欧州連合(EU)による2005年からのIFRSの採用以降、IFRSは急速に世界に広がり始め、現在では100か国を超える国により採用もしくは容認されている状況から、IFRSの信頼性確保が緊急の課題とされていました。

<当局による提案>

2007年11月7日、金融庁は、IOSCO、欧州委員会(EC)、米国証券取引委員会(SEC)と共同で、IASCFの組織の枠組みを強化するための改革に関する提案を行い、モニタリング・ボード(当時の呼称はモニタリング・ボディ)の設置に対する提案を行いました。

(参考1) 国際会計基準委員会(IASC)財団のガバナンス向上に向けた市場規制当局による取組みについて

さらに、2008年6月18日には、IASCFの円卓会議に先立ち、金融庁、IOSCO、EC、米国SECは共同で、モニタリング・ボード(当時の呼称はモニタリング・グループ)の設立に関する次のステップを発表し、IASCFに対して勧告を行いました。

(参考2) 公開企業の規制当局による国際会計基準委員会財団(IASCF)のモニタリング・グループ設立に関する次のステップの発表について

<G20サミットの勧告>

2008年11月、「金融・世界経済に関する首脳会合」いわゆるG20ワシントン・サミットが開催されました。このサミットの共同宣言として、「国際金融機関の権限、ガバナンス及び資金需要の検討」が閣僚への指示として盛り込まれるとともに、同時に公表された行動計画にも、2009年3月31日までの措置として「金融の安定を促進する観点から、特に透明性、説明責任、及びこの独立主体と関係当局との適切な関係を確保するために、その構成員の見直しを含め、国際会計基準設定主体のガバナンスを更に強化する。」との一文が盛り込まれました。このことは、世界の首脳により、国際会計基準設定主体のガバナンス改革が、金融危機の克服のための緊急課題であることが認識されたことを意味しています。

金融・世界経済に関する首脳会合(外務省)へのリンク

http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_aso/fwe_08/index.html

<IASCFによる定款の改訂と第一回会合>

2009年1月、IASCFは定款を改訂し、モニタリング・ボードと公式な組織的関係を築くことを公表しました。これにより、モニタリング・ボードは公式な組織としてIASCFに対する監視のための活動を開始することが可能となりました。第一回の会合は2009年4月1日ロンドンにおいて開催され、議長としてハンス・フーガーホースト氏(IOSCO専門委員会代表(同委員会副議長)・オランダ金融市場庁長官)を選出しました。また、モニタリング・ボードは評議員会と合同会合を行い、基準勧告委員会(SAC)の再構成、IASBによる金融危機への対応、及び新興国経済における国際会計基準の役割について議論を行いました。

モニタリング・ボードのメンバーとミッション

<モニタリング・ボードのメンバー>

モニタリング・ボードの当初メンバーは、金融庁、米国SEC、IOSCO 新興市場委員会および専門委員会の四者の代表で構成され、我が国からは金融庁長官がメンバーとして参加しています。また、オブザーバーとしてバーゼル銀行監督委員会(BCBS)が参加しています。

<モニタリング・ボードのミッション>

モニタリング・ボードのミッションは定款に以下のように記載されています。

  • 高品質の国際基準として、IFRSの継続的な発展のための協力
  • IASBの独立性を確保しつつ、IASCFの公益監視機能のモニタリングと補強
    • 評議員選任プロセスへの参加と承認
    • IASCF評議員会に対し、IASBを監視する上での重要事項や、財政状況に関する勧告
    • IFRSの問題点に関する議論や意見交換
  • (※) 金融庁としては、公益監視の観点からIASCFとIASBがその責務を果たすことが出来るよう、モニタリング・ボードに積極的に参加することとしています。

モニタリング・ボード定款等へのリンク(英文)

http://www.iasb.org/News/Press+Releases/Press+release+from+IASC+Foundation+Monitoring+Board.htm

モニタリング・ボードの意義

IASCF定款改訂によるモニタリング・ボードとの関係構築により、IASCFの国際的な基準設定主体としてのガバナンス改革は一定の進展を見ました(モニタリング・ボードの次回会合は2009年7月に予定されています。)。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「国際関連情報」から「モニタリング・ボードと国際会計基準委員会財団(IASCF)評議員会との第一回会合について」(平成21年4月3日)にアクセスしてください。


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