アクセスFSA 第88号(2010年10月)

アクセスFSA 第88号(2010年10月)

写真1

「金融資本市場及び金融産業の活性化等のため
のアクションプラン」の策定について会見する
東副大臣(10月8日)

写真2

「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を
巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」の
会合で挨拶をする和田大臣政務官(10月21日)

目次


【特集】

中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループによるプレス・リリース「中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループがより高い国際的な最低自己資本基準を発表」の公表について

バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(総裁・長官グループ)は本年9月12日、国際的な最低自己資本基準について具体的な水準と移行期間・経過措置を発表しました。

【1. 背景・経緯】

昨年12月17日、バーゼル委は国際的に活動する銀行に関する一連の規制改革案を市中協議に付しました。これは、昨年4月のG20ロンドン・サミットにて合意され、その後9月のピッツバーグ・サミットにてあらためて確認された、銀行資本の質と量の双方を改善し、過度なレバレッジを抑制するとともに、流動性の基準を定める国際的なルールの原案と位置づけられるものです。

この原案では、最低所要水準について、(1)普通株等Tier1比率、(2)Tier1比率、(3)総資本比率のそれぞれにつき最低基準を設定することが示されていました。また、新規制への円滑な移行を確保する観点から、段階的実施に向けた措置やグランドファザリング(新規制実施後も、既存の取り扱いを一定期間認めること)を十分に長期にわたり設定するものとされていました。その上で、具体的な水準調整や移行措置は、各国の銀行から収集するデータをもとにした定量的影響度調査(QIS)やマクロ経済への影響評価などを踏まえて検討を行うとされていたところです。

今回のプレス・リリースは、こうした検討を踏まえ、国際的な自己資本比率規制の水準及び移行期間・経過措置についての合意内容を発表したものです。

【2. 総裁・長官グループによる合意(9月12日)のポイント】

最低所要水準については、従来、総資本比率で8%、うちTier1比率で4%という規制であったのに対し、総資本比率8%、うちTier1比率全体で6%、うち普通株等Tier1比率で4.5%となりました(図表1参照)。また、新規制の下では、普通株等Tier1により厳格な規制上の調整(控除項目等)が適用されること、Tier1やTier2の算入要件が強化されることにも留意が必要です。

また、銀行は将来のストレス期において損失の吸収に使用できるよう、2.5%の資本保全バッファーを保有することが求められ、これを合わせると普通株等Tier1の所要水準は7%となります。銀行は、ストレス期には資本保全バッファーを取り崩すことが許されますが、規制自己資本比率が最低所要比率に近づくほど、社外流出に対する制限が厳格になります。この他、過度に信用が拡大した結果リスクがシステム全体に広く積み上がっている時には、各国の状況に応じて0%-2.5%の範囲でカウンターシクリカルな資本バッファーが実施されます。

普通株等Tier1比率、Tier1比率の最低所要水準の引上げについては、2013年1月から2015年1月まで2年をかけて段階的に実施されます。具体的には、普通株等Tier1の最低基準は、3.5%(2013年)、4.0%(2014年)、4.5%(2015年)と0.5%ずつ引き上げられます。また、Tier1比率については、4.5%(2013年)、5.5%(2014年)、6.0%(2015年)と段階的に引き上げられます(図表2参照)。なお、総資本比率の最低基準は、現行の8%の水準にとどまっており、段階的実施の形はとられません。

一方、資本保全バッファーについては2016年から段階的に導入され、2019年に完全実施されることとなります。具体的には、2016年に0.625%として始まり、以後毎年0.625%ずつ引き上げられ2019年に2.5%という最終水準に到達します。

新たな規制上の調整(控除項目等)の段階的実施は、2018年1月に普通株等Tier1からの全額控除が実施されるまで、2013年の新規制開始時点から数え5年かけて行われます。具体的には、普通株等Tier1からの所要控除額について、新規制開始初年となる2013年に控除の必要はなく、それ以降、2014年に所要控除額の20%、2015年に40%、2016年に60%、2017年に80%、2018年に100%という形で完全実施に至ることになります。

グランドファザリングについては、まず公的セクターから注入された既存の資本は、2018年1月まで、新たな算入要件に照らした規制上の資本の分類(普通株等Tier1、その他Tier1、Tier2)に服することなく従前の分類を維持できます。また、新たな規制の下で、その他Tier1やTier2資本としての要件を満たさなくなる資本商品は、新規制の開始初年となる2013年から10年間は定められた上限の範囲内で従前の分類どおり算入することが認められます。

【3. 今後の予定】

今後は、こうした規制改革の内容が本年11月のG20ソウル・サミットに報告されます。また、バーゼル委では引続き規制改革案の詳細について議論を行い、本年末までには最終的な規制改革パッケージが公表される予定です。

図表1 自己資本枠組みの水準調整 図表2 狭義の中核的自己資本比率(普通株等Tier1比率)導入のイメージ

【トピックス】

「金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う金融庁関係内閣府令の整備等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(説明事項に係るグループ指定制度)について

平成21年6月24日に公布された「金融商品取引法等の一部を改正する法律」および同年12月28日に公布された「金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う金融庁関係内閣府令の整備等に関する内閣府令」により、格付会社に関する規制の整備が図られました。

この規制の枠組みの下では、登録を受けた格付会社(信用格付業者)に対する規制とともに、金融商品取引業者等が、信用格付業者以外の信用格付業を行う者(無登録業者)の付与した信用格付(無登録格付)を利用する場合の説明義務が定められています(平成22年10月1日施行)。この説明義務の説明事項としては、(1)無登録である旨、(2)登録の意義、(3)無登録業者の名称・代表者・所在地、(4)格付付与の方針・方法の概要、(5)格付の前提・意義・限界を規定(金融商品取引法第38条第3号、金融商品取引業等に関する内閣府令第116条の3)が定められています。

信用格付業においては、複数の法人が「グループ」を構成し、グループ共通の格付方法を用いて格付を付与する例がみられます。「同一グループ」のうちに金融商品取引法第66条の27に基づく登録を行った信用格付業者があったとしても、当該「同一グループ」に属する信用格付業者以外の法人は無登録業者となります。

こうした中、投資者保護を図るとともに金融商品取引業者等の実務の円滑化のための措置を講じるため、今般、金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う金融庁関係内閣府令の整備等に関する内閣府令の一部を改正し、「説明事項に係るグループ指定制度」を創設することとしました。具体的には、同一グループ内に登録業者が存在する場合、当該グループに属する無登録業者のうち、

  • (i)情報の公表状況等が登録業者と同じ水準であること
  • (ii)「グループ共通の格付方法等」を採用していること
  • (iii)登録業者を通じて「グループ共通の格付方法等」を公表していること

等を満たす法人を金融庁長官が指定した場合には、当該法人の付与する格付に係る上記説明事項のうち、(3)を「グループ名称・グループ内登録業者の名称/登録番号」、(4)を「格付付与の方針・方法の概要」又は「格付付与の方針・方法の概要を登録業者から入手する方法」としました。本制度は、平成23年1月1日より開始する予定です。

また、本制度を実施するまでの経過措置として、平成22年12月末までの間、無登録格付に係る説明事項のうち、(3)を「グループ名称」、(4)を「格付付与の方針・方法の概要」又は「格付付与の方針・方法の概要を無登録業者グループから入手する方法」とします。

現行制度「同一グループ」との枠組みなし 改正案(「同一グループ」の枠組みを設ける)

欧州委員会による我が国格付会社規制の同等性評価について

格付会社に関する欧州議会及び理事会規則(2009年11月公布)では、格付会社は、規制目的で利用される格付を発行するためには、登録を受けなければならないとされ、欧州連合(EU)域内で設立された法人であること等が登録の要件とされています。

EU域外の格付会社の格付については、(1)EU域内のグループ会社(本規則により登録された格付会社)により承認を受けた場合、(2)EU加盟国より個別に格付利用を認めるための証明を受けた場合のいずれかの場合に限り、EU域内における規制目的での利用が可能とされています。

従って、EU域内に拠点のない我が国の格付会社の格付について、引き続きEU域内における規制目的での利用が可能となるためには、上記(2)の証明が必要となります。

上記(2)の証明の要件として、(i)EU域外の格付会社が母国当局において登録・監督され、欧州委員会(EC)により当該母国の法律・監督上の枠組みが本規則と同等と評価されていること(同等性評価)、(ii)欧州監督当局と第三国当局との間で協力の取極めが存在すること等が定められています。

上記(i)については、ECによる同等性評価に先立ち、ECが欧州証券規制当局委員会(CESR)に対して技術的助言を求め、これを受け、2010年6月9日、CESRより格付会社に対する我が国の規制・監督の枠組みは、概ね欧州規制の枠組みと同等であるとECへ提言する、我が国の格付会社規制の同等性に関する技術的助言に係る報告書が公表されました。

これを受け、ECは、2010年9月28日、格付会社に対する我が国の規制・監督の枠組みを欧州規制と同等とする決定を行いました。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から欧州委員会による我が国格付会社規制の同等性評価の決定について(9月30日)にアクセスしてください。


信用格付業の登録について

金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成21年法律第58号)の施行(平成22年4月1日)により、信用格付業者制度が創設されました。同法の施行後、信用格付業の登録の申請を受け付けておりましたが、9月30日付けで下記5法人に対して、信用格付業について登録を行いました。

今後、登録を受けた信用格付業者について、登録を行った都度、「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」に掲載することとします。

  • 株式会社日本格付研究所(金融庁長官(格付)第1号)
  • ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
  • ムーディーズSFジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第3号)
  • スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)
  • 株式会社格付投資情報センター(金融庁長官(格付)第6号)

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から「信用格付業の登録について」(9月30日)にアクセスしてください。


「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」について

振り込め詐欺救済法に定める預保納付金の取扱い等について検討するため、平成22年9月9日、「振り込め詐欺救済法に定める預保納付金を巡る諸課題に関するプロジェクトチーム」を設置しました。同PTにおいては、「預保納付金の具体的使途」や「金融機関における被害者に対する返金率の向上」を主な検討課題として掲げています。検討に当たっては、有識者、犯罪被害者支援団体、金融機関等からヒアリングを行うこととしており、10月21日、第1回ヒアリングを実施しました。

振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺やヤミ金融等の被害者への返金手続等について規定している法律です。金融機関は、犯罪に利用された口座を失権させ、その残高から被害者に対して返金を行いますが、被害者への返金手続が終了してもなお残金がある場合は、金融機関から預金保険機構に納付されることとなっています。この預保納付金は、法律上「犯罪被害者等の支援の充実のため」に支出すると規定されているため、その具体的使途について検討する必要があります。

また、20年6月の本法施行以降、本年8月末の時点で、金融機関が失権させた預金等債権額の累計は約73億円であり、このうち、被害者に対する返金額の累計は約35億円となっています。したがって、被害者への返金率は約47%にとどまっています。返金に当たっては、被害者が返金申請を行うことが必要ですが、そのためには、金融機関から被害者と思われる方々への連絡が重要であるほか、本法の対象が振り込め詐欺に加え、ヤミ金融や未公開株詐欺等の振込みを伴う財産犯も含まれることなど、返金制度の周知も重要です。

金融庁といたしましては、今後、預保納付金の取扱いや返金率の向上について検討していかなければならないと考えております。皆様におかれましても、プロジェクトチームで議論となったことなどについてご意見がございましたら、ぜひ我々にお寄せください。

振り込め詐欺救済法の制度概要

ファンドに関するモニタリング調査の集計結果について

金融庁では、ファンド(集団投資スキーム、投資信託及び投資法人をいう。)に関する販売(新規の募集、私募、募集の取扱い及び私募の取扱いをいう。)・運用の実態を把握するため、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針に基づき、本年より調査を実施しています。

今般、調査結果の概要を取りまとめ、公表しました。

【調査結果のポイント】

○ 調査対象ファンドの販売(新規募集)状況(平成21年4月~同22年3月)
販売本数
(本)
販売金額
(億円)
うちヘッジファンド
販売本数
(本)
販売金額
(億円)
集団投資スキーム 2,285 12,244 65 253
国内投資信託 16,177 656,761 10 41
国内投資法人 9 350
外国投資信託・
外国投資法人
912 44,142 69 2,651
合計 19,383 713,497 144 2,945

※販売本数については、複数の販売業者が一のファンドを販売している場合があるため、実際の本数とは異なります。

○ 調査対象ファンドの運用状況(平成22年3月末時点)
運用本数
(本)
運用財産額
(億円)
うちヘッジファンド
運用本数
(本)
運用財産額
(億円)
集団投資スキーム 5,189 235,713 91 362
国内投資信託 8,253 1,522,882 193 8,774
国内投資法人 50 84,279
外国投資信託・
外国投資法人
599 244,053 73 23,935
合計 14,091 2,086,927 357 33,071

※外国投資信託・外国投資法人の運用状況については、当該ファンドの代行協会員(設置されていない場合は販売業者)が回答しています。

※ファンドの商品分類については、自己申告としているため、販売業者及び運用業者によって認識が異なり、同一ファンドであっても異なる分類を回答している場合があります。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」からファンドモニタリング調査の集計結果について(9月30日)にアクセスしてください。


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