アクセスFSA 第126号(2013年12月)

アクセスFSA 第126号(2013年12月)

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金融・資本市場活性化有識者会合にて、
伊藤幹事から麻生大臣への報告書手交(12月13日)
写真3 写真3
金融・資本市場活性化有識者会合にて
挨拶する麻生大臣(12月13日)
国際コンファレンス「アジアの取引所の未来」
(11月26日)

トピックス

(1)「金融・資本市場活性化に向けての提言」の公表について

「金融・資本市場活性化有識者会合」(「成長戦略の当面の実行方針」(平成25年10月1日日本経済再生本部決定)において、「家計の金融資産を成長マネーに振り向けるための施策をはじめとする日本の金融・資本市場の総合的な魅力の向上策や、アジアの潜在力の発揮とその取り込みを支援する施策について、年内に取りまとめを行う」と示されたこと等を踏まえ、11月11日より開催)においては、これまで数回にわたる議論が行われてきました。

これまでの議論を踏まえ、12月13日に開催された同有識者会合において、「金融・資本市場活性化に向けての提言」が取りまとめられ、幹事の伊藤隆敏東京大学大学院経済学研究科教授より、麻生副総理に提出されました。

この提言の主な内容は、以下のとおりです。

  • ○本提言は、現在、アベノミクスによりデフレ下の縮小均衡から、持続可能な成長に基づく経済成長過程への回帰・跳躍が進む中、「金融・資本市場の成長戦略」の実行が喫緊の課題、との認識のもと、

    • 1.アジア経済が急速に発展する中で、人口減少、高齢化など我が国の構造的な課題に対応する意味からも、日本の有する資産の有効活用、海外との一体的成長、個人・企業の生産性向上、を進めることが必要

    • 2.特にアベノミクスによるインフレ期待の醸成や、2020年の東京オリンピック・パラリンピック招致決定等により、内外の日本経済に対する期待と注目が集まる現在は好機、

    • 3.その際、金融・資本市場の活性化策については、「ものづくり」をはじめとした実体経済と金融部門が「車の両輪」として相互に付加価値を生む好循環を実現することが重要

    という観点に立っています。

  • ○そして、四本柱として、

    • 1.豊富な家計資産と公的年金等が成長マネーに向かう循環の確立

    • 2.アジアの潜在力の発揮・地域全体としての市場機能の向上、我が国との一体的な成長

    • 3.企業の競争力の強化、起業の促進

    • 4.人材支援・ビジネス環境の整備

    を掲げ、2020年の姿を想定した上で、それまでの7年間で取り組むべき施策を取りまとめました。そして、2020年までの7年間を大きく2段階に分け、直ちに着手すべき施策、及び2020年に国際金融センターとしての地位を確立するために達成しておく必要のある事項について、具体的な提案を行っています。

    本有識者会合は、今後も引き続き開催され、必要な具体的施策の検討が継続される予定です。

「金融・資本市場活性化に向けての提言」の概要
(クリックすると拡大されます)

※ 詳しくは、和文は、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「「金融・資本市場活性化に向けての提言」の公表について」(平成25年12月13日)、英文は、金融庁ウェブサイト(英語版)の「Topics」から「The Panel for Vitalizing Financial and Capital Markets Releases its Recommendations新しいウィンドウで開きます」にアクセスして下さい。


(2)中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会の開催について

年末の資金需要期を迎えることを踏まえ、金融庁は、平成25年11月26日に、金融機関等の代表者を招き、「中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会」を開催しました。

その際、麻生金融担当大臣から金融機関等の代表者に対して、デフレ脱却に向けた金融面からの取組みや、年末、更には、年明け以降の資金繰り等について、万全の対応に努めるよう要請するとともに融資動向等について意見交換を行いました。

併せて、同日付で、関係金融機関団体に対し、年末における中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について、書面で要請を行うとともに、当該要請文を公表し、要請内容の周知徹底を図りました。

<意見交換会参加機関等>

全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、信託協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会、農林中央金庫、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、日本政策投資銀行、全国信用保証協会連合会、住宅金融支援機構

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「年末における中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について(要請)」(平成25年11月26日)にアクセスしてください。


(3)「経営者保証に関するガイドライン」の利用促進について

平成25年12月5日に「経営者保証に関するガイドライン研究会」から「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、平成26年2月1日から適用(準備態勢が整った金融機関は先行適用)されます。

本ガイドラインの積極的な活用により、中小企業・小規模事業者等(以下、「中小企業」という。)、経営者及び金融機関の継続的かつ良好な信頼関係の構築・強化とともに、各ライフステージにおける中小企業や創業を志す者(以下、「中小企業等」という。)の取組意欲の増進が図られ、ひいては中小企業金融の実務の円滑化を通じて中小企業等の活力が一層引き出され、日本経済の活性化に資することが期待されます。

また、本ガイドラインの公表と同日に閣議決定された「好循環実現のための経済対策」においても、地域経済の屋台骨である中小企業・小規模事業者の革新を推進するための施策として、「経営者保証に関するガイドラインの利用促進」が盛り込まれたところです。

金融庁としては、金融機関等による積極的な活用を通じて、本ガイドラインが融資慣行として浸透・定着していくことが重要であると考えており、本ガイドラインの利用促進を図る観点から、12月11日付で、関係金融機関団体等に対し、以下の点について、書面で要請を行うとともに、当該要請文を公表し、要請内容の周知徹底を図りました。

  • 【要請先】

    全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、信託協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、商工組合中央金庫、農林中央金庫、日本貸金業協会

  • 【要請内容】

    • (1)営業現場の第一線まで本ガイドラインの趣旨や内容の周知徹底を図るとともに、顧客に対する幅広い周知・広報の実施、社内規程や契約書の整備等、所要の態勢整備に早急に取り組むこと。

    • (2)本ガイドラインの適用に関する準備が整った場合は、適用開始日を待たず、先行してガイドラインに即した対応を開始すること。

    • (3)中小企業等からの相談には、その実情に応じてきめ細かく対応し、必要に応じ外部機関や外部専門家とも連携しつつ、本ガイドラインの積極的な活用に努めること。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「「経営者保証に関するガイドライン」の積極的な活用について(要請)」(平成25年12月11日)にアクセスしてください。


(4)中小企業・小規模事業者支援事業におけるつなぎ融資の円滑化について)

金融機関による中小企業・小規模事業者や創業予定者(以下、「中小企業・小規模事業者等」という。)向け金融の円滑化への取組みは着実に行われてきているところですが、中小企業庁長官から中小企業・小規模事業者支援事業におけるつなぎ融資の円滑化について要請があったことを受け、金融庁は、11月6日に、以下の点について、関係金融機関団体に対し、書面で要請を行いました。

また、その際に、当該要請文を公表し、要請内容の周知徹底を図りました。

  • 【要請先】

    全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会

  • 【要請内容】

    • (1)パンフレットを店頭に置く、顧客にパンフレットを交付する等により、中小企業・小規模事業者支援事業への申請を予定している中小企業・小規模事業者等からのつなぎ融資に関する相談に対して適切に対応する旨の周知に努めること

    • (2)中小企業・小規模事業者等からのつなぎ融資に関する相談には適切に応じるよう努めること

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「中小企業・小規模事業者支援事業におけるつなぎ融資の円滑化について(要請)」(平成25年11月7日)にアクセスしてください。


(5)国際コンファレンス「アジアの取引所の未来」について

金融庁金融研究センターでは、アジア、欧米、国際機関から研究者、当局者、実務家などを招き、望ましい金融規制・監督のあり方等について、産官学を中心とした国際コンファレンスを年度中に2回程度開催しています。

平成25年11月26日には、日本取引所グループと共催し、国際コンファレンス「アジアの取引所の未来」を開催いたしました。本コンファレンスでは、世界の中で存在感を増しているアジアの取引所の課題や役割、更にはアジアにおける東京市場の位置づけについて、国際金融市場に携わる公的・民間部門の代表者や学者等を招聘し、パネル・ディスカッション等を行いました。本コンファレンスには、国内外の研究者、政府関係者、金融機関、在京各国大使館関係者など、300名強の参加者を得ました。

冒頭の開会挨拶で、畑中龍太郎金融庁長官は、内外からの参加者を歓迎した上で、アジアの経済成長を持続可能にするためには、日本の経済を再生しアジアの経済成長に積極的に貢献していくことが必要であると述べ、金融庁として金融面からもしっかり支えていきたいと述べました。また、アジア各国に、金融制度の整備、金融インフラの構築、金融監督の具体的な運営手法といったソフト面での知見・教訓等を伝えること等を通じて、連携を強化して参りたいと述べました。

引き続き、日本取引所グループの斉藤惇日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEOから、アジアの取引所の役割についての基調講演が行われました。

その後、セッション1、2に分かれて、「アジアの取引所の課題」、「アジアにおける東京市場」について、報告や議論が行われました。セッション1と2の総合司会は、吉野直行金融庁金融研究センター長(慶應義塾大学経済学部教授)が務めました。各セッションの主な内容は、下記の通りです。

セッション1:アジアの取引所の課題

まず、アジアを代表して香港とタイの取引所幹部から、各取引所の最近の取組みについての紹介がありました。香港取引所からは、中国経済の鈍化に対応した積極的な資産運用やデリバティブ金融商品の拡大といった取組みが発表される一方、ASEAN市場統合の進むタイ取引所からは、ASEAN地域の手続共通化や相互アクセスへの取組みが発表されました。これに対して、アジア通貨危機以降を教訓として、アジアの経済安定のためには金融市場を発展させて効率的な資本配分を実現することが重要であるとの指摘がありました。さらに、アジアが世界最大のコモディティ市場である一方で、主要なコモディティ取引所がない点が指摘され、アジアの取引所の発展と取引所間の関係強化の必要性が述べられました。

セッション2:アジアにおける東京市場

アジアにおいて東京市場がどのような役割を担っているかについて発表があり、日本の特徴は市場操作やインサイダー取引という点で他市場より高評価である一方、ボラティリティーが高い点が指摘されました。また、各国の各市場は独自の歴史・文化などの背景によって成り立つため差異があるが、グローバル化が共存する現代では、相互の差異を尊重した市場間協力が求められるのではとの指摘もありました。この他にコメントとして、東京市場は長期的な安定性や高い流動性、技術水準の高さが評価されましたが、デリバティブ取引所としてのさらなる規模拡大が課題との指摘がありました。この他、東京市場について、NISA導入による、巨額な家計資産の活用への期待等も示されました。

※ 詳しくは、金融研究センター新しいウィンドウで開きますウェブ上に近日掲載予定の発表資料及び「コンファレンス結果概要」等をご参照ください。


(6)「金融リテラシー(知識・判断力)を身に付けるためのシンポジウム」の開催(沖縄・大阪)について

平成25年12月12日(沖縄)および12月17日(大阪)に、「金融リテラシー(知識・判断力)を身に付けるためのシンポジウム」を開催し、沖縄は84名、大阪は134名の方に参加していただきました。

平成26年1月からスタートするNISA(少額投資非課税制度)について、ファイナンシャル・プランナーを講師に招き、NISAの仕組み・活用法について、わかりやすく説明していただきました。

また、国民一人一人が社会人として経済的に自立し、より良い暮らしを送っていくためには、「家計管理」や「生活設計」の習慣化が重要であり、金融商品を適切に利用選択する知識・判断力を身に付けることが大切です。そのため、金融庁に設置された「金融経済教育研究会」のメンバーを講師に招き、金融経済教育の重要性について、基調講演を実施いただきました。

最後に、投資詐欺等の被害が引き続き発生していることから、沖縄総合事務局・近畿財務局より、注意喚起のための説明をさせていただきました。


(7)公認会計士等を巡る諸問題に関する意見交換会 当面のアクションプランの改訂について

平成14年の金融審議会答申における「公認会計士が一般企業を含む経済社会の幅広い分野で活躍することが求められている」旨の指摘を受けて、平成15年に公認会計士法が改正され、平成18年より新試験制度が導入されています。これにより、当初、公認会計士試験の合格者数は増加したものの、平成20年頃は、経済情勢の悪化等を背景として、監査業界の採用数が大きく減少するとともに、企業等への就職も思うように進まなかったため、試験に合格しても就職できず、公認会計士になるために必要な実務経験を経ることができない者が多数生じていました。

<参考1>公認会計士試験(新試験)の合格者数の推移
平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
1,372人 2,695人 3,024人 1,916人 1,923人 1,447人 1,301人 1,149人

こうした状況を受けて、平成21年4月以降、金融庁、公認会計士・監査審査会、日本公認会計士協会、経団連、金融4団体等で意見交換会を開催し、試験合格者等の活動領域拡大に向けた運用面での対応として、関係者が取り組むべき施策をアクションプランとして策定しました。その後も当意見交換会を毎年開催し、都度アクションプランに新たな施策を追加して、実行してきたところです。

<参考2>アクションプランの主な項目

  • 実務経験の対象を拡充し、試験合格者が資格を取得しやすい環境を整備
  • 試験合格者等の活動領域について受験生へ周知(受験生へのパンフレット配布)
  • 経済界向け就職説明会の開催
  • 求人、求職サイト(キャリアナビ)の開設
  • 実務補習のカリキュラムの見直し(休日開催やe-ラーニング等) 他

アクションプランに基づく各メンバーの取組みもあり、活動領域の拡大はある程度進んでいると考えられますが、今後も、試験合格者にとどまらず、公認会計士も含めた会計専門家が経済社会において幅広く活用されるため、更なる環境整備を図っていく余地があるものと考えられます。

加えて、近年、公認会計士及び監査業界を巡っては、公認会計士試験の願書提出者数が減少傾向にある、また、監査報酬が全体として低減傾向にある、といった新たな課題が生じてきており、こうした課題についても、幅広い関係者が認識を共有し、対応を検討するための対話を行っていくことが必要と考えられます。

このため、今回の意見交換会では、関係者によるアクションプランの取組状況や、金融庁が実施したアンケート(上場会社における公認会計士及び試験合格者の募集・採用実態に関して実施したもの)の結果を共有するとともに、上記の課題について議論を行いました。その上で、当面のアクションプランを改訂し、今後、各メンバーが具体的な取組みを進めていくことが合意されました。

なお、当面のアクションプランの改訂のポイント(主な追加施策)は、以下のとおりです。

  • (1)活動領域の拡大

    公認会計士及び試験合格者が在籍している企業にヒアリングを行い、公認会計士等の採用に係るメリット・デメリットについて実態把握を行います。調査の結果は、公認会計士等の活用に関する企業向け広報資料を改訂する際に活かすとともに、日本公認会計士協会が作成する経済界向けの広報マテリアルや、同協会及び当局が主催する企業向け説明会等においても活用されるよう、同協会とも連携していきます。

  • (2)組織内会計士協議会の活性化

    日本公認会計士協会の組織内会計士協議会において、組織内会計士の属性別、業種毎の組織化及びそれに応じた施策を検討します。

  • (3)公認会計士の魅力の向上策の検討

    日本公認会計士協会等と連携しつつ、制度改正に限定されない幅広い観点から、公認会計士の魅力の向上策について検討します。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「公認会計士等を巡る諸問題に関する意見交換会 当面のアクションプランの改訂について」(平成25年11月14日)にアクセスしてください。


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