五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年11月13日(月)17時01分~17時29分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

政府税調の議論が本格的に動き出しました。証券税制について言うと、10%の軽減税率を廃止して金融一体課税の導入を目指すというのが税調の意見の大勢と見られています。この点金融庁の意向とはやや異なるような印象を受けているのですが、長官はどのようにお考えでしょうか。

もう1点は、りそなについてなのですけれども、今、経営健全化計画の策定が大詰めを迎えておりまして、公的資金の返済については、一部資金を機関投資家などから調達していち早く返したいという動きが出ていると聞いております。りそなの健全化のあり方についてですね、当局として望むべきものがあるのか、ご所見をお聞かせ下さい。

答)

まず1点目ですが、お話のように政府税調で証券税制の現行軽減税率を見直して金融所得課税の一体化を目指すべきではないかというような議論があるというのは伺っております。そこで金融庁の要望なのですけれども、まず先進諸国を見ますと、税制による資本市場の歪み、これを是正して経済成長を促すという観点などから株式譲渡益課税、あるいは配当課税、ともに利子課税に比べて何らかの優遇措置を講じているというのが現状です。なぜそうしないと資本市場が歪むのか、ご承知かもしれませんが、せっかくの機会ですから簡単に申し上げておきますと、税という点だけに絞ってある程度純化した極端な例で申し上げますと、投資家はあるリターンを期待して資産運用のために一定の金額を金融商品に投下するわけです。投資家から見た場合、ある金額を運用した場合に、それによって利益が上がった、運用先で利益が上がると、いくらが自分の元に利益として手元に届くかという点に関心があるわけです。そこに税金というもの、色んな要素が介在しますけれども、税という要素が介在するわけです。ということは、投資家の側から見るとこれは利益が上がってから自分の手元に最後、手元で精算されるまでにどういう税金がかかるかというのを全部合計しないといけなくなるわけです。そこで、これを株式という形で企業側の資本調達に投下をしていった場合に、そこからある利益が上がります。そうすると、その上がった利益には、まずその利益を上げた法人自体に対して法人税がかかります。現状の日本でしたら40%です。そして、その残りが投資家の元に届いてくるわけですが、その過程で今度は投資家個人として課税をされることになります。配当課税ですね。現状、軽減税率で10%。こういう税金がかかったその残余が手元に残るわけです。それに対して、同じ金額を投資家が社債という形、資本性ではなく負債性の資金調達、負債性の資金調達手段を使って運用をした場合、その社債を原資に会社が同じ利益を上げて、これが社債に対する利払いの原資となります。今度は配当の原資ではなく、利払いの原資となります。利払いの原資と法人税の関係ですが、利払いを現にするのであれば、損金算入されますから法人税はかかりません。従って、上がった利益がまるごと投資家の元へ利払いとして届いていくわけですが、その過程で利子課税が個人に対して発生します。現状ですと20%です。これを比べてご覧になるとわかりますが、同じ金額を投下した場合、他の色んな条件を捨象して税の部分だけで考えますと、負債性の資金調達手段に投資をした場合の方が株式という資本性の投資手段に投資をしたよりも手元に届く金額が他の条件にして一定であれば多いということになるわけでありまして、これが要するに負債を株式よりも有利にする、そういう税制になっている。そこで、世界各国、先進国はどこでもこの配当課税というものに対する軽減税率を適用する、優遇をすることによってこの歪みを是正して、税制の中立性、資本家がどういう投資行動を選ぶかということについて税制が原因で歪められないように手を打ってあると、こういうことになるわけです。譲渡益課税についてはちょっと複雑な説明になりますが、似たようなことが起こります。

そこで我々は、これを要望しているわけです。この軽減税率を延長する必要がある。なぜなら、延長しないと税制の中立性というものが現状以上に損なわれていくということになる。それは、企業の資金調達手段の歪みというものにもなりますし、投資家の投資行動が、税が理由で歪むということにもなるから、かつ諸外国でも同じことを同じ理由でしているということです。レベル・プレイング・フィールドでできるだけフェアな競争をしてもらう、そのことによって投資家や金融機関の利用者に最大限の利便が発生する、これが金融庁において目指すところでありその責務でもあるわけでして、その一環としてこういう税制をご要望しているということになるわけです。貯蓄から投資へという流れ、これを加速、定着させようという観点から、こうした税制の歪みを是正するということは不可欠であります。同時に他国と比べても、現在日本の例えば株式や投資信託に投下される個人金融資産というのは全体の10%程度であるわけですが、ドイツでは20%弱、アメリカではこれが30%弱という構成になっているわけで、こうした点から見て、貯蓄から投資へという政策の方向性が間違っているとは思いませんし、また、あの深刻化した不良債権問題の経験から言っても、銀行のバランスシートにリスクが集中するような脆弱な金融システムから脱却をすること、そして個人のライフサイクルに応じた資産運用手段の多様化、利用者本位の行政を進める、こういった観点から言っても、貯蓄から投資へという政策目標は不可欠であろうと思います。もちろん企業側から言っても借入れというものに過度に依存した資金調達行動というのは必ずしも望ましいものではございませんし、最近の政策課題になっております再チャレンジという観点から言っても、借入れというものにあまり重くウェイトを置かれた資金調達というのは、再チャレンジの機会を狭くするということがございます。

まあ、沢山申しましたけれど、そうした様々なことがございまして諸外国と比べて日本だけが投資環境が不利であるといったような状態にしないために、そして我が国特有の現在の政策の方向性である貯蓄から投資へという方向性を確かなものにするために、こうした要求をしているということでございます。宣伝みたいなお話になってしまいましたけれども、確かに政府税調のおっしゃっていることと、我々の主張とにニュアンスの違い、どころかもう少し大きい違いがあるようですので、どこが違うかをちょっとご解説を申し上げました。

それから、りそなホールディングスの経営健全化計画ですが、この経営健全化計画、ルールに則りまして今年がローリング、見直しの年限に当たっておりまして、この見直しのための作業を現在りそなホールディングスにおいて実施中でございます。従って、当の資本注入行において計画を検討中という段階ですので、その計画の内容についてのコメントは控えさせていただかざるを得ません。ただ、いずれにしても、このりそなホールディングスにおいては収益基盤を確立していただき、さらには拡大していっていただく。そして、収益力の強化ですとか、あるいは企業価値の増大ですとか、そう言ったことが確実な形で実現されるように取組みをお願いしたい。当局として最低限望むべきものは何だと言われれば、非常に抽象的で申し訳ありませんが、抽象的と言いますか、はっきりしてはいますけれども数字が挙がっているわけではないという意味で具体性に欠けますが、今申し上げたような点が我々として是非、りそなホールディングスに望みたいということでございます。そうした方向で見直し計画が検討されていることを期待したいと思います。公的資金の返済につきましては、これは当行の、この会社の資本政策の問題でもございますし、こうした計画の見直しの中でよく検討をしていっていただきたいと思います。

なお、この健全化計画というものは、いわゆるパブリックプレッシャーです。こういう計画で利益を上げていって、国民の皆さんに損をさせないように資本の回収ができますということを示していただく、あるいは、国民の皆さんの信用の下に投下された資本というのは、このように有用に活用されていきますということを国民の皆さんに示していただいて、そのパブリックプレッシャーの下で経営していただくというのが目的でございますので、計画そのものを当局が許可するとか、認可するとかそういう性格のものではございません。もちろん計画作成過程で様々な意見交換、これは通常の銀行監督と同じでございますし、プラス株主としての立場もございますから、それはさせていただいております。

問)

金融庁の元金融会社室長の著書について、貸金業の業界団体が1万冊購入していたという件ですけれども、この件について、長官のご所感をお聞かせください。

答)

非常に広いご質問ですので、二つに分けてお答えします。一つは、貸金業協会連合会、全金連といわれるこの社団法人ですが、公益法人として当庁の監督下にありますので、その業務運営としての適切性の観点、もう一つは、かつて金融庁の職員であった方の著書ということですので、著者における金融庁の服務規程なり、公務員倫理法上の問題というのがあるのかないのかという点でございます。

まず、貸金業協会連合会に関連しましては、そちらから伺いましたところでは、当時の会員業者が約9,000社強いらっしゃって、この方達に平成15年7月成立の貸金業規制法改正内容というものについて周知徹底させる必要があると、こういうことで購入なさり、現実に配布なさったということだそうでございます。事実関係はそういうことでございまして、伺っている限りではいらない物や無駄な物を買ったという話ではないようでございます。いずれにしましても、当局としては監督者でもございますので、引き続き全金連における適切な業務を確保するとの観点から、適切な監督をしていきたいと思っております。

それからもう一つ、著者の話でございますが、公務員倫理法とか倫理規定では、職員というのは利害関係者からの依頼に応じて報酬を受けて、講演・著述を行なう場合には承認が必要だと、こういうことになっているわけでございます。それから金融庁は、さらにそれに加えて、金融庁職員用のガイドラインがありまして、出版物への寄稿は公務として行なうものであった場合、勤務時間内外を問わず、報酬受領は禁止されるということがございます。それで事実関係ですが、この方は業者から依頼を受けて著述をしたのではなくて、大学の教員ということで身分が変わって時間もできたので、こうした物を書いたというお話のようでございますので、そういう意味で、依頼を受けて書いたということではないとご本人はおっしゃっておるようでございます。それから金融庁のガイドラインなのですが、これは金融庁職員が、金融庁職員の立場で行ったことについてのものですが、この方の場合は、既に金融庁職員ではなくなって、その後著述を始められ、出版に至られたということのようでございます。これも、ご本人がおっしゃるにはそういうことだそうでございます。

今、金融庁の職員ではないし、著述の時点でも金融庁にはおられなかったということなので、あまり詳細なコメントについてはしにくい状況ですが、いずれにしても、一般論でございますけれども、公務員と業界との関係といいますのは、国民の皆様から疑惑を招くことがないように適切な関係を保持する必要があると思っております。基本はそういうことだということでご理解をいただきたいと思いますが、事実関係は今申し上げましたように、まだ詳細までは把握しておりませんが、申し上げた状況であると、制度との関係ではそういう状況であるということでございます。

問)

おっしゃるとおり、法令に明白に違反しているかというと、そうではないと思うのですけれども、ただ、同種の著作物について見たときに、1万冊という冊数がはたしてどうなのかと。正直申し上げて、同種の法令解説本の中でも飛びぬけて多い冊数だと思うのですけれども、この点について、今おっしゃったような業界との関係という意味で、全く疑念を持たれないようなものなのかどうか、これについて長官は、どうお考えになりますか。

答)

平成15年改正というのも、今回の改正案の前の改正をずっと並べてみると、相当な改正でした。ですから、業界の皆さんがその改正内容について詳細を知りたいということは、あったのかもしれません。それ以外の物でも、金融関係、特に環境が激変する中で、色々な法律ができてきていますが、コンメンタールが欲しいというお話は、特定の業界に非常に関係の深いものであれば、その業界の皆さんから、もう少し広がりのあるものですと、一般投資家も含めてご要望のあることもあって、そういう意味で関心をもつ層が広く、かつ改正内容も相当抜本的なものだという時に、その解説書に対する需要が相当程度あるということ自体は、そう珍しいことではないと思います。これは、唯一1万冊という数字がどうだと言って、自分が関わったわけではないので、申し上げることとしては、全金連の会員が、当時9,000社余り現にあったということで、全金連として、その業者すべてに改正内容を周知徹底させるというのが、会員の法令遵守を任務とする全金連の仕事だというご判断であったということのようですので、それを現時点では、そういうご説明であるということをそのとおり受け止めておくしかないのかなと思います。

問)

著者が金融庁の元幹部で、さらに今、財務省の幹部です。発行元にしても、旧大蔵省のOBがたくさんいる大蔵財務協会。そういうことですと、業界に対しては、何となく圧力というかそういうものがあったのではないかという想像もできるのですけれども、それについてはいかがですか。

答)

全金連には、報道があった後、当方のしかるべき立場の者が、何か購入依頼とかそういったものが当局側からなかったかということを問い合わせておりますが、そのお答えは、全金連の事務局としては、そうしたことはなかったという理解であるとのことでした。それから著者は、出版された時は、金融会社室長を終わった後でございますので、出版時点の金融会社室の者に、やはり購入の依頼、あるいはそれに類することを全金連なりにしていないかどうかということを聞いてみましたが、これもそうした記憶はないという答えでございました。現時点でわかっているのは、そういうことでございます。現時点でわかっているのは、そこまででございます。

問)

そうすると、大蔵財務協会を通じた販売とかには、特に問題はないとお考えですか。

答)

どこの出版社から出版するかというのは、当局が関与する話ではございませんので、特段感想はございません。

問)

ただ問題は、OBがたくさん行っているところということで、一般の出版社とは立場が違うと思うのですが。

答)

どうしてそこから出版することになったかについては、私は存じません。すみません。

問)

証券税制の関係で、お答えの内容を伺っていると、暫定措置というより恒久化ということが望ましいということになるのか、それともう一つ、りそなについてですけれども、国が持っている普通株が極めて値上がりしていて、通常剰余金を上げながら返していくのは、一般の人から見てもかなり難しい感じはあるのですけれども、そういった点、普通株の取扱いについて、現時点でのお考えがあれば、伺えればと思います。

答)

税制に関しては、私、解説申し上げましたのは、平成19年度の税制改正要望というものの解説について、バックグラウンドを含めて申し上げたわけでございます。これは暫定措置の延長、あるいは他に拡大要求も出しておりますけれども、という主旨でのご説明でございます。これがどういう形で、税制の中立といいますか、投資家の投資行動の歪みを生じさせないような税制を作るかというのは、勿論、中長期に色々ご検討をなさらなくてはいけないこともあると思います。私どもの感じで言えば、この軽減税率の拡充継続というのは最優先ということでございますけれども、そうした仕組みを組み込みつつ、その金融の一体課税ということで議論が進んでいくと、こういう順序を辿るのであれば、それはまた一つの考え方であろうと思います。当面の要求として、措置の継続ということを要求しておるわけでございます。恒久化するかどうかというのは、また別の視点からのご議論が必要であろうと思います。

りそなホールディングの普通株について、個社の経営でどうなるかという話と資本政策の話ですから、私からのコメントというのは、やっぱり差し控えるしかないと思います。この経営健全化計画を作っていく中で、公的資金の返済というものをどういうふうに位置付けるかというのは、まずはりそなホールディングスの皆さんにお考えいただくお話であろうと思います。既に、公的資金を多額のプレミアム付きで完済いただいた三つのメガバンクグループも、投入の当初は本当に返せるのかと言われていました。上手に経営をしていただいて、ふさわしい方法で資本政策を実行していただきたいと思います。

問)

その兼ね合いで、例えば足利銀行について、この9月から次の受皿探しに着手されましたけれども、もう1年ぐらい待てば債務超過額がもっと減るのではないかとの兼ね合いで、なるべく国の関与を早くなくすということで、現時点での判断に至られたと思うのですけれども、その兼ね合いで、今度経営健全化計画が出ることで、また公的資金の返済の道筋が出てくるかと思いますけれど、急がなければとか、正常化になるべく早く国としても何らかの形で持っていきたいとか、スピード感について、足銀との兼ね合いについてご所見があれば伺えればと思います。

答)

足利銀行とりそな銀行は、置かれている立場が、国との関係について全く違います。足利銀行は破綻をした銀行であって、国有化をされているわけです。郵政を民営化しようと言っている時に、国有化されている銀行があるという、こういう状況です。法律の規定に従えば、目処が立つのであれば、できるだけ早く異常な状況を脱却させるというのが、法律の要請でもあるわけです。勿論、このところ順調に利益を上げておりますから、債務超過額は時間が経つごとに減っていくであろうということは見通せますけれども、だからといって、この状況を受皿に渡す目処が立っているのに引き伸ばすというのは、法律の主旨に反する話であります。

りそな銀行は、破綻をしたわけではございませんので、預金保険法102条の規定を使いましたけれども、第1号措置による資本増強ということでありますから、いつまでにこの公的資金を国に返済していくかというのは、優先株であれば定款で定められました期限、そういったようなものも勘定に入れながら、国民の皆さんに返せますという計画を示していくということでやっていく話でございます。従って、これはまさに、きちんと経営していただいて、そしてこの国が、国民が投下した資本が傷付くことなく、回収される道筋を経営者として示していただく、それが大事なことであるということだと思います。

(以上)

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