五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年11月27日(月)17時00分~17時10分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

株式譲渡益等にかかる税率を10%に軽減する措置について、財務省が07年末の期限切れ後も一部継続することを検討しているとの報道が出ています。軽減措置を撤廃して一気に20%に戻すと株価の急変等の副作用が起きるための激変緩和措置と位置づけているようです。軽減措置を恒久化する必要があるかどうかも含め、今の動きをどう評価されているのか、長官の考えをお伺いします。

答)

ご指摘の報道があったことは承知していますが、金融庁といたしましては、緒についたばかりである「貯蓄から投資へ」の流れを加速・定着させていく観点から、現行軽減税率を拡充・継続することが是非必要であると考えています。報道にあります激変緩和措置の具体的な内容については承知をしておりませんけれども、いずれにせよ税率が平成19年末に直ちに20%に戻ることには変わりが無いようでございます。そうなりますと、市場に対し優遇措置の即時打ち切りというメッセージを発することになりまして、貯蓄から投資への流れに逆行するものであると考えています。また、報道されております措置は、お話にもありましたが、平成19年末の駆け込み売却を抑えるための措置であろうと推測もされますが、その効果の程は定かではございません。また、かえって税額計算などが複雑な税制になりまして、投資家の理解が得られないのではないかという点もございますし、また、特定口座を選択した者に限り軽減措置を適用するということですと、確定申告を行っている者との間で公平性に欠けるのではないかといった点にも留意する必要がございます。今後19年度税制改正の議論が煮詰められていく中で、金融庁としては引き続き現行証券税制の拡充・継続を最重点課題として、政府与党の関係者に働きかけて行きたいと考えています。

また、制度の恒久化に関するお尋ねがありましたが、この点については資本市場の効率性の向上等の観点も踏まえまして、中・長期的な議論が必要だと考えておりますけれども、当面の要求としては、直接金融が欧米並みに確実に根付くまでの措置の継続ということでお願いしたいと考えております。

問)

先週開かれた企業会計審議会で、2008年度から全上場企業に義務付ける内部統制報告制度の実施基準案がまとまりました。今回の実施基準案では、企業側に配慮して数値基準を盛り込むなどの工夫を凝らしているようですが、その一方で西武鉄道やカネボウ事件の再発防止という制度導入の目的が形骸化しないかとの懸念も出ております。今後、お目付け役となる監査法人の役割が大きくなるとは思いますが、どのように期待されているのか、長官のご所見をお願いします。

答)

制度導入の目的というお話がございましたので、その点ちょっとコメントを申し上げておきますと、ディスクロージャーを巡る昨今の不適切な事例について、これは開示企業における内部統制が有効に機能していなかったのではないかという指摘がなされているところでございまして、その意味で財務報告に係る内部統制の強化を図ることは重要だという認識でおるわけです。こうした観点から、金融商品取引法において上場会社に対して内部統制報告制度を導入することにした訳でございます。そうした目的で導入をいたしました上で、ご指摘のように、先週、企業会計審議会内部統制部会におきまして実施基準の公開草案を取りまとめまして、12月20日までの期限で広く一般のご意見を求めているのが現状です。

ご質問の中に、数値基準を盛り込むなどの工夫がかえって制度導入の目的を形骸化させないかという懸念があるとのお話がございましたが、この公開草案におきましては、先行して類似の制度が導入されました米国の状況も検証いたしました上で、コスト負担が過大とならずに、且つ制度の実効性は確保されるようにということに留意をしたものでございます。例えば評価範囲の絞込みについては、お話のありました数値基準を例示いたしまして、ただ最終的には各企業におけるリスクの状況等を踏まえて判断するといった工夫を盛り込んだところです。もう少し具体的に言いますと、例えば全ての事業拠点ということではなくて、売上高の概ね3分の2程度をカバーする事業拠点について、且つその売上・売掛金、棚卸資産、この3つの勘定科目を基本とする。ただし、個々の企業の実情に応じて重要な業務プロセスを個別に追加をしていくという仕組みを採ったわけです。当然のことですが、製造業と金融業ではリスクの有り所が違いますから、全く同じことをすればいいという訳にはいかないわけでございます。そんなことで、実効性が確保されるような留意をした仕組みを作ったつもりでございます。監査法人の役割、これは当然大事でございます。この個々の企業の実情に則した内部統制というところがポイントになりますので、監査法人等においては経営者との適切な意思疎通を図りながら、財務諸表監査と併せまして全体として適切な監査を実施していただきたい、それを期待したいと考えております。

いずれにいたしましても、この内部統制報告の実施基準を踏まえながら行っていただく訳ではございますが、決まりが出来たから対応せざるを得ないという態度でこれに臨むのであれば、せっかく制度を作りましても、もちろんやらないよりはずっと効果はありますが、本来の制度導入の趣旨から言っての万全の効果がなかなか期待しにくいと思います。この内部統制報告作成にあたっては、手間が掛かるとか掛からないとか、そういう視点ではなくて、投資家の皆さんが本当にディスクロージャーが信用できるかどうかを判断する際のポイントになるのは、うちの企業ではここだという所をきちんと把握をしていただいて、それを実施基準と照らし合わせながら内部統制報告に取り組んでいただくことが重要であろうと思います。いわば、これは投資家の皆さんからの信任を得るための一種の競争になるということでございまして、そうした発想に立って、経営者の皆さんは投資家から経営を委ねられているという責任感を持って、また、監査法人の皆さんは、ディスクロージャーの番人であるという自覚を持って、この内部統制報告の評価・監査に取り組んでいただきたいとお願いしたいと思います。そうしたことが、万全の内部統制の効果をもたらすと考えております。

(以上)

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