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五味前長官・佐藤新長官記者会見の概要

(平成19年7月10日(火)17時00分~17時42分 場所:金融庁会見室)

【前・新長官より発言】

  • 五味前長官) 本日付で、金融庁長官を退任いたしました。後任は佐藤監督局長が昇格しております。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

  • 佐藤新長官) 本日、金融庁長官を拝命いたしました佐藤でございます。浅学菲才ですが、全力で頑張るつもりですので、どうぞ宜しくお願いいたします。

【質疑応答】

  • 問)まず、五味前長官からお尋ねしたいのですが、10年前の97年夏から前身の金融監督庁、最後の3年間を長官として勤められたわけですが、監督庁時代の10年間を踏まえて、長官時代の評価と長官退任にあたっての感想、印象に残ったエピソードなど、もしあればお聞かせ願います。

  • 五味前長官) 金融監督庁発足の時点というのは、金融不安というような時期で、大変な時期でございました。そして、その不安を解消する様々な施策がとられた後も、不良債権問題の解決ということに多大の精力を割く必要があったというような時期でございましたが、長官を拝命いたしました時期からの3年間といいますのは、不良債権問題の正常化を受けて、行政の軸足が、金融の安定に全力を注ぐといったような状況から、むしろ望ましい将来の金融のあり方といったものを目指す、金融の活力を目指す局面に転換をしたと、こういう時期が、長官をさせていただいた3年間でございました。この時期に金融機関の利用者というものを軸に、行政を組み立てていくという、得がたい体験をさせていただいたことを、大変ありがたく思っております。印象に残ったエピソードということはございません。ただ、この機会ですからお尋ねに答えて、ぜひ申し上げておきたいのは、この3年間に4人の卓越した大臣にお仕えできたこと、これは大変に貴重な経験でございました。長官になりました時は、竹中大臣にお仕えしたわけですが、非常に困難な状況にあった不良債権問題の解決に道筋をつけられた、そうした大臣にお仕えできたこと、そして、また、これを受けまして将来の望ましい金融の姿といったものを描く「金融改革プログラム」を策定なさいました伊藤大臣にお仕えできた、そして、このプログラムの実現に向けての様々な布石を、ご指導いただきながら、打つことができたということも、また、貴重な経験でございました。そして、これを受けまして、与謝野大臣にお仕えしたわけですが、ご承知のように「金融商品取引法」、そして「貸金業法」といった、二つの大きな、いわば、金融行政のパラダイムを変えていくような法律を主導なさって、成立に導いてくださり、また、同時に東京証券取引所で発生しました事象を踏まえまして、東京証券取引所改革を中心に、市場の機能が正常に働くための方策といったものに、大胆なご提言をいただいた、こうした与謝野大臣にお仕えできたこと。そして、このような一連の経過を踏まえまして、国内の金融という話だけではなくて、日本の資本市場、証券市場、金融市場、こういったものを国際的に一流のものに仕上げていきたいということで、大胆なご発想とご提言を大きな視点からなさる山本大臣に、現在、昨日までお仕えできたということ。この4人の大臣にお仕えでき、様々な勉強をさせていただいたというのが、長官在任3年間における最大の思い出であります。ご質問に対してはその程度の答えになるかと思います。

  • 問)次に佐藤新長官にご質問させていただきたいと思います。五味前長官とともに、過去10年、金融監督庁時代から二人三脚でやってこられたわけですけれども、今回、長官就任に当たって、今後の金融行政の課題を改めてお聞きしたいということと、今後の抱負とか就任についての感想等お聞きできればと思います。

  • 佐藤新長官) ただ今、五味前長官からもありましたように、この10年振り返りますと、丁度10年前というのは、大型の金融破綻が起きて、日本の金融システムそのものがどうなるのかといった不安が起きた時代でありました。その危機を何とか乗り越えた後、なお、不良債権問題という、バブルの負の遺産が重く伸し掛かるといった事態が残り、これに重点的に取り込まなければならないという時期もあったわけであります。また、しばらくいたしまして、金融機関の業務執行の中で、利用者保護に悖るようなケースが多々生じたといったこともあり、これらの問題についても対応をしてきたということであります。また、さらに証券市場における業務執行、或いは市場の公正性、透明性を損なうような事例が多々出てきたということで、これについても法制面、或いは実施面での対応をしてきたということであります。こういった局面を経て、現在の状況というのは、制度面、或いは実施面において、取組み・枠組みの整備が進み、ある程度の実態の改善というのが進んできていると、こういう局面であろうかと思います。この10年間、五味前長官におかれては、様々な枢要な役割を担ってこられたということであろうかと思います。

    私自身、長官を命ぜられまして、今、現在、一つの大きな課題として意識しておりますのは、金融規制の質的な向上ということでございます。英語で申しますと、「ベター・レギュレーション」という風に言われておるようでございますけれども、このテーマは、山本大臣とも相談させていただいており、取りあえず、私の当面の大きな課題として位置づけようと、こういう風に考えております。このテーマは大きく二つの文脈から、その必要性が強く意識されるということでございます。一つはもちろんでございますけれども、今、我が国の大きな優先的な政策課題となっております我が国金融資本市場の活性化、或いは国際競争力の強化とこういったテーマに則しての必要ということでございます。金融規制の質というものが、当該規制を受けるマーケットの競争力を大きく左右する主要因であるということが、当然、意識されているということでございます。また、もう一つの大きな文脈というのは、先程もちょっと申しましたけれども、我が国の金融セクターを巡る局面がシフトしていると、それにあわせて金融行政の局面もシフトしてきているということであろうかと思います。先程申し上げましたように、過去10年の間に、金融行政の大きな目的である金融システムの安定、或いは利用者の保護、或いは公正透明な市場の確立と維持といった、こういう三つの大きな分野、それぞれに様々な事例が生じ、それに対する対応をしてきたわけですけれども、その結果として枠組み整備が一定程度進み、また、実態面でも一定の改善を見る状況になってきたと。この後、何が必要かと言うと、一つはこれまでの経験で教訓として学んだもの、これをしっかりと定着をさせる、そして、更にそれを深化させるということであろうかと思います。この局面で、決定的に重要なのは、各金融機関の自助努力と自己責任ということでございますので、それに合わせて、金融規制のあり方も、それにマッチするような形に変わっていかなければならないと、自助努力を尊重するような枠組みになっていくということが重要であるということでございます。また、金融を巡る環境としても、様々な変化が起きている。金融取引全体がグローバル化している。或いは金融商品や販売チャネルが多様化している。更には、経営形態も多様化している。更にコングロマリット化といったことも一般化してきているということでございますし、最近話題になっております非常に巨大なファンドの存在といったものが、マーケットで大きな役割を担うようになってきている。こういった新しい状況に対応していくためにも、この「ベター・レギュレーション」というものが必要であろうというふうに思っております。

    それで、「ベター・レギュレーション」の大きな柱となるものはどういうものがあるかと申しますと、大きく4点、意識をしております。これは、私どもの心構えと言ってもいいでしょうし、或いは監督手法の進化していく方向性と捉えていただいても結構かと思いますが、第一点は、ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最善のコンビネーションを模索していくということでございます。ご案内のとおり、プリンシプル・ベースの監督というのは、主要ないくつかの原則というものを明示したうえで、金融機関の自主的な取組みを促すという枠組みでございまして、経営の自由度が確保されるというメリットがございます。他方、ルール・ベースの監督というのは、かなり詳細なルールを定めて、これを個別事例に適用していくという、こういうアプローチでございますが、これは、金融機関にとっての予測可能性を確保するというメリットがございますし、また、行政の恣意性を排除するというメリットも意識されているわけであります。それで、この二つの関係でございますけれども、私は、このルール・ベースの監督と、プリンシプル・ベースの監督というのは、二者択一のものではなくて、むしろ相互補完的なのではないかというふうに思っております。ルール・べースの監督が有効な分野としては、行政権限に基づいて、不利益処分を行うといったケース、或いは不特定多数の市場参加者に共通のルールが適用されることが必要な分野、こういった分野には、ルール・ベースが必要であるということであると思います。他方、プリンシプル・ベースの監督が有効な分野といたしましては、金融機関の経営管理、リスク管理、法令等遵守の態勢の整備、こういった態勢整備を促す場合、プリンシプル・ベースの監督が有効ではないかと思いますし、また、例えば、新しい金融商品が次から次へと出ると、或いは新しい販売方法が出てくるといった場合に、全てをルールでカバーするというのは不可能でございますので、そのルールの隙間というものをプリンシプルによって補うと、こういう役割も期待されるということでございます。いずれにいたしましても、このルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督を最善な形で組み合わせることによって、全体としての金融規制の実効性というものを確保していくということが一つ目でございます。

    二つ目は優先課題への効果的な対応ということでございます。私どもの行政資源というのは、非常に限られておりますので、これをいかに有効に配分をし、重要性の高い、優先順位の高いテーマに投入していくかと、こういう問題意識でございます。イギリスのFSA(金融サービス機構)ではこの点をリスク・フォーカス、また、フォワード・ルッキングのアプローチというふうに呼んでおりますけれども、先を読む、そして高度なリスクが存在しているところ、将来、大きなリスクが顕在化する可能性があるという分野、そういうものを出来るだけ早く認識することによって、重要度の高い分野に行政資源を投入していくというアプローチでございます。

    三つ目は、金融機関のインセンティブの重視、或いは自助努力の尊重ということでございます。これは、既に、例えば検査であれば、検査評定制度といったものが導入されておりますし、銀行に対する自己資本比率規制、バーゼルIIも、非常に強く、インセンティブの付与が織り込まれているということでありますし、また、リレーションシップ・バンキングも、今年度から新しい恒久的な枠組みに変更されまして、その中で、各金融機関の自主性を尊重するという枠組みになってきているということでございまして、既にこのインセンティブ重視、自助努力尊重という方向性というのは、かなり織り込まれているわけですけれども、先程申しあげましたような局面のシフトを踏まえて、更にこれをより中身の濃いものにしていけないかという問題意識でございます。

    最後、第四点目は行政対応の透明性、ないし予測可能性の向上ということでございます。最近では、ノーアクションレター制度の改正といったこと、或いはQ&Aといった形で、当局の考え方を、監督を受ける金融機関との間のダイヤログを通じて、お示しをしていくといった形の対応も行っておりますし、各事務年度ごとに、当該年度の検査方針、監督方針といったものを明らかにしていくといったことでも、既に対応はしているわけですけれども、更に改善すべき点がないかどうか、意識をしていきたいというふうに思っております。

    以上、四つの大きな心構えの下で、当面どんなことに取り組んでいこうかということでございますけれども、一つは金融機関との対話の充実ということでございます。これは、金融機関と当局との間で先程も申し上げましたプリンシプルを共有するという観点からも、非常に重要ですし、金融機関の側から見ると、当局の対応についての予測可能性が向上するという効果を持ちますし、当局からいたしますと、市場動向を把握をすると、リアルタイムで把握するという上で、非常に重要なチャネルでもあると思います。二つ目に情報発信の強化ということでありまして、先程来、申し上げております趣旨からしても、当局が様々なプラットホームを使って、より多くの情報発信ができないかという問題意識でございます。三つ目は、海外当局との連携強化ということでありまして、これだけ金融取引がグローバル化しておりますので、各国の規制当局間での整合性を常にチェックするということは不可欠でありますし、また、個別の話でもクロスボーダーの取引への対応という上で、海外当局との連携といったことは不可欠であると思います。四つ目は、今も少し申し上げましたけれども、マーケットの動向をタイムリーに、かつできるだけ正確に把握できるような調査能力、調査機能を強化したいということでございます。先程申し上げた優先課題への効果的対応というのを行うに際しましても、何が優先課題であるのかといったことを、マーケットの実態を踏まえて、きちんと常時把握する能力がないと、的はずれになりかねないので、こういった機能も強化していく必要があるというふうに思っております。最後、五つ目に金融庁の職員の資質の向上、或いはスキルアップということでございます。金融は、ご案内のとおり、非常に高い専門性を求められる分野でありますし、職員の専門能力の向上といったことも含めて、様々な工夫ができないかどうかということを認識をしていくということでございます。以上、金融規制の質的な向上というテーマに臨んでいく心構えを紹介をさせていただきました。

  • 問)新旧両長官に、それぞれお聞きしたいのですが、退任、就任にあたって大臣からどのようなお言葉があったのでしょうか。

  • 五味前長官) 発令行為自体は儀式のようなもので、その場では特段のお言葉はございませんでしたが、退官をするというようなお話を、大臣としておりました時に、大臣からは、退官をしても、金融庁で様々な経験をしてこられたその経験を踏まえて、金融行政、そして日本の金融資本市場の、両方の国際化ということについて、その時々のお立場で力を貸して欲しいと、こういったお話がございました。以上です。

  • 佐藤新長官) 私の場合も、先週、大臣から内示をいただいた時以降、何度か意見交換をさせていただいておりますけれども、その中で、やはり何よりも、我が国の金融資本市場の活力、そして、国際競争力を高めるという課題に、一生懸命取り組んで欲しい、というご指示をいただきました。そういった文脈の中で、今申し上げましたような金融規制全体の質的向上、そのための、例えば、金融機関との対話の向上、海外当局との連携の強化といったことについても、具体的なご指示をいただいたということでございます。

  • 問)五味前長官にお伺いしますが、先程、佐藤新長官から、今後の課題である金融機関の自助努力を尊重する監督行政ということについてお話がありましたが、これまで、自助努力を尊重したがやはりできなかったということを、お感じになられたことはあったでしょうか。

  • 五味前長官) 様々なインセンティブを、行政として付与することで、自助努力を促すというのは、金融改革プログラムを策定した時点、すなわち、平時の金融行政に移行していく過程で浮かび上がってきた、そういう課題なわけでございますね。この金融改革プログラムで想定をいたしました、インセンティブ付与のための仕組み作り、これは、アウトプットとして、プログラムの予定した二年間のうちに出て来ておりますが、これがアウトカムとして実際に機能して、このインセンティブが金融機関の自助努力の向上、質の良い内部管理の達成ということに、どれだけの力を発揮するかというのが、これからの課題であると、そういうふうに私は整理をしております。

  • 問)五味前長官にお伺いしますが、不良債権問題や保険の不払いに代表されるような問題の発生によって、金融庁と金融機関との間が疎遠になったのではないかという見方もありますが、その辺りについて、3年間を振り返られてどうお考えでしょうか。

  • 五味前長官) この3年間ということで申し上げれば、金融機関との意見交換というのは、それぞれの場面で勿論行われていた訳ですが、トラブルに陥った金融機関が当局とコミュニケーションを取るというケースと、それから、そうではなくて、当局と意思疎通をすることでより良い内部管理を確立していきたい、そのために当局と設定しているハードルですとか、当局が今何に重点を置いているか、どこにリスクがあると考えているのかということを、不断に意見交換しながら確認をしていくという対話とは、ちょっと質が違いますね。この3年間も、トラブルに陥った金融機関との対話は、嫌という程行っている訳でございますが、そうではない状態での対話というものができるような環境というのが、もっとあれば良かったなと、これからはそういうことになるのではないか、というふうに私は思っております。

  • 問)佐藤新長官にお伺いしますが、民間金融機関との対話ということについて、先程、五味前長官のお話の中にもありましたが、このような仕掛けがあれば、とのイメージをお持ちでしたら、お聞きしたいのですが。

  • 佐藤新長官) 一つは、金融庁の職員全員がそういう心構えを持つ、それから、対話することについての目的意識をきちんと持つ、それによって、それぞれの場面場面、局面局面で、より中身の濃い、かつ必要なコミュニケーションが図られる、ということであろうかと思います。もう一つは、形の方ですけれども、どういった頻度で、どういった形で、また、どういったレベルで、どういったことをテーマにコミュニケーションをやっていくのかということについて、今現在、足りないところがないかどうか、こういったことを検討して、その上で、もし、それをある程度、慣行にするといったような部分、そういったことが望ましい部分が出てくれば、そういうことも考えていきたい、ということでございます。

  • 問)佐藤長官にお伺いしたいのですけれど、ルール・ベースとプリンシプル・ベースの監督手法のお話をしていただいたのですが、民間の方とお話をしていると、ルール・ベースは分かるのですが、プリンシプル・ベースの方については、日本でしっかりしたプリンシプルは、果たしてあるのだろうかという声がありまして、そういった中で、佐藤長官の考えとして、プリンシプルとして、例えばこういうものとこういうものというものを掲げてということをお考えなのか、ある程度金融機関の方とお話をしながらプリンシプルを作っていこうという姿勢でおられるのか、プリンシプル・ベースの行政手法を確立する方法について、どのようにお考えでしょうか。

  • 佐藤新長官) 基本的には、まさに今おっしゃいましたように、金融機関との対話の中で、お互いが納得できるプリンシプル、もちろん当局として譲れない点というのは当然ありますから、そういった点は、私どもでイニシアティブを発揮するということになろうかと思いますけれども、できるだけ、対話をしていく中で、どういうプリンシプルが重要であって、どういうプリンシプルが実効性が高いかといったことを議論をしていくということが大事であると思います。

  • 我が国におけるプリンシプルですが、現行の法令、或いは監督指針や検査マニュアル等々、あちこちに散りばめられているというのが、現状で、あるかなと思います。こういったあちこちに散りばめられているものを、もう少し厳選をして、より体系的なものにしていくということが必要かどうか、必要であるとすれば、どういった観点から整理をするか、こういった点も含めて、これからの検討課題だと思っております。例示としては、イギリスのFSAが11くらいのプリンシプルを示しておりますけれども、そんなところも念頭に置きながら、我が国のあちこちに散りばめられているプリンシプルとして、最も代表的なものを申し上げれば、これは全く例示でありますので、予断を持っての話ではございませんけれども、例えば、各金融機関が、実効性のある経営管理を行っていただいて、質の高い業務執行をしていただくといったことがあるでしょうし、また、リスク管理をきちんとやっていただいて、財務の健全性を維持するということは当然求められますし、コンプライアンス態勢を確保して、法令等遵守の実を上げていただくということもあるかと思います。また、利用者保護、顧客との関係で行けば、顧客への情報提供をきちんと行う。これは、適合性の原則等も含めての話ですけれども、そういったこともあるでしょうし、顧客への忠実義務であるとか、顧客の間での公平な取り扱いといったことも不可欠であろうと思います。また、利益相反の取引を防止するとか、或いは優越地位濫用を防ぐといったようなことも重要な原則に入ってくるのではないかと思います。もちろん、市場における取引において、公正さを自ら確保していくということも重要なプリンシプルになっていくかなと思います。こういったことが、我が国の法令や監督指針、検査マニュアル等には散りばめられているというのが私の認識ですけれども、先程申しましたように、今後どういった形のものを作るか、或いは作る、まとめることの必要性がどの程度あるか、その点も含めて検討していきたいと思います。

  • 問)佐藤長官にお伺いしたいのですけれども、ルール・ベースとプリンシプル・ベースのバランスというのは、アメリカやイギリスなど、色んなバランスがありますけれども、その相互間のバランスといいますか、日本型というか、日本の特質というか、日本のマーケットの特徴というか、その辺りどんなイメージ、目指す方向として持っていらっしゃいますでしょうか。

  • 佐藤新長官) そこは、予め確たる方向性というものを現在は意識しておりません。議論をしていく中で、日本の現状に一番マッチした、かつ実効性の上がる枠組みを検討していくということであろうかと思います。一つ参考になりますのは、ロンドンの金融資本市場というのは、大変な繁栄を実現しているわけですけれども、ここでのプリンシプル・ベースの監督の有効性というものは、いわばホールセールの分野を中心にしている、プロ同士の世界を中心としている、それぞれの金融の専門分野に対応した、専門家集団の間でのピア・プレッシャーといったものの存在も前提としている、といった特徴があろうかと思います。我が国の場合には、先程も申しましたけれども、ホールセールの分野、プロの分野だけではなくて、リテールの分野、情報保有という意味では、相対的に不利な地位にある小口の消費者、投資家等々も含めた全体としての我が国にマッチした枠組みを模索していく必要があると思っております。

  • 問)マーケットのタイムリーでアキュレイトな調査機能の強化という部分ですけれども、色んなマーケットがあると思いますけれども、一番強化が必要とされているのは、どんなマーケットでしょうか。例えば、ヘッジファンドの動向など、どの辺を意識されているのでしょうか。

  • 佐藤新長官) そこは、あらゆる分野において、マーケットの現場でどういった取引が現在行われているのか、どういったトレンドになっているのかということを探っていくということでございますので、今の時点で、特にこの分野といったことを限定的に考えているわけではありません。株式や債券といった伝統的なマーケットは、もちろんですけれども、オルタナティブなど新しい分野も排除せずに考えいかなければということだろうと思います。先程もちょっと申しましたけれども、そういった中で、ファンドの動きというものは、近年、非常にマーケットで存在感を高めておりますし、その動きがマーケット全体に大きな影響を及ぼすようになってきておりますので、こういったものについても、出来るだけ実態をタイムリーに把握するような努力をする必要があると思っております。

  • 問)先程、色々と過去数年間の金融庁の歩みのようなものを解説していただいたのですけれども、五味長官になってから利用者保護を結構進めて、その際に、経営管理の質というのを、佐藤さんは、確かおっしゃっていたと思うのですが、今ようやく金融規制の質という方にパラダイムがシフトしてきたと。これは、利用者保護をまず徹底しなければ、取り組めなかった課題なのかどうなのかという点について、新旧長官どのようなご意見をお持ちなのかお聞かせ下さい。

  • 佐藤新長官) 利用者保護の実を取るということのためには、大前提として経営管理の質というものがありますので、経営管理の質を高めていただくということは、今のこの局面であれ、もう少し前の局面であれ、同じであろうかと思います。やはり、経営トップを含む経営陣が、当該企業の営業の現場で、どういったサービスの提供がなされ、どういった営業の仕方が採られているか、これを実態としてきちんと把握していただき、問題がある場合には、その問題をきちんと事実として認識をし、なぜそういう問題が出てきたかの原因を究明をし、その原因究明に基づいた、きちんとした再発防止策を策定をし、それを改めて現場に浸透させ、かつ、それが、対応を取った以降も持続的に動いていくような枠組みを構築していただくということが、重要であろうかと思います。利用者保護の分野に関して言いますと、金融商品取引法も9月頃から全面施行されるということでもありますし、様々な利用者保護の法令上の枠組み、或いはルールの整備というものは、なされてきていて、また実態としても、特に問題が表面化して、行政処分を受けたところの多くは、業務改善命令を踏まえた業務改善計画を作っていただいて、その業務改善計画を実行していく段階で、相当程度、この経営管理の質というものは高まってきているというのを実感しているところでございます。こういった変化に勇気付けられている部分というのも当然あるわけでございまして、そういう意味で、行政上の対応があったから直していただくという枠組みではなくて、そういった行政からのシグナルを踏まえて、まさに、経営陣が自助努力、自己責任に基づいてそういった取組みを持続的、継続的にやっていただく、こういうところにパラダイムはシフトしてきているということかと思います。

  • 問)佐藤新長官に対しては、特に金融機関から、どういう方であるか関心が高まっていると思うのですが、金融機関と対話を進めるに当たって、ご自身で、こういうことをしてみようというようなアイディアはございますか。

  • 佐藤新長官) 出来るだけ多様な形で、金融機関の皆さんとの意見交換というものを持つように、工夫をしていきたいということであります。これまで、監督局におりました時も、特に後半、あるいは、最後の一年はですね、先程、五味前長官の方からもありましたけれども、何か行政処分の必要があるという時、あるいは、行政処分を打った時に対話をする、ということではなくて、それぞれの金融グループ、あるいは、金融機関が、現在どういう自己認識をしていて、将来どういうビジネス分野に戦略的な経営資源の投入といったことをやっているか、こういったことをテーマとした意見交換をさせていただいてきている訳であります。典型的には、何か差し迫った問題への対処が必要である場合、そういう局面ではなくて、日常的なところで出来るだけ、そういった本音ベースの、ざっくばらんなコミュニケーションといったものが出来ないかな、というふうに思っております。これは、勿論、相手のある話でございますので、相手の金融機関の皆様のご意向ということもあろうかと思いますが、そういった点も含めて相談をしていく、ということでございます。

(以上)

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