佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年3月31日(月)17時04分~17時40分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

今日、年度末を向かえまして、振り返ってみますと、この間株価は大きく下げていますし、欧米ではサブプライム問題が深刻化しまして、一部の金融機関では業績修正を余儀なくされるという所も出てきましたけれども、改めて、この年度末を向かえて、メガバンクから地銀、信金・信組、証券、生損保などを見渡して、日本の金融機関の健全性についてどのように認識されているのか、その辺からお願いします。

答)

ご質問の件は、これまでも何回かお答えしておりますので、多少繰り返しになることはご容赦いただきたいのですが、まず現在の状況としては、アメリカのサブプライム・ローン問題を契機としたグローバルな金融市場の混乱というものがなお続いているということで、その中でサブプライム・ローンに直接関連した商品だけではなくて、幅広い証券化商品の市場であるとか、あるいは株式市場であるとかといった他の市場にもその影響が拡大しているということだと思います。そういった中で、我が国の一部の金融機関において、今度の3月期決算の業績の予想について下方修正するという所がいくつかあったというふうに承知をいたしております。

株式相場の下落による影響とサブプライム関連商品による影響というふうに大きく二つに分けてみますと、まず、株式相場の下落による我が国金融機関への影響でございますけれども、これはご案内のように、各金融機関ごとに保有するポートフォリオ、株式等の状況が異なりますから一概に申し上げることはできないわけですけれども、全体として見ますと我が国の金融機関は近年株式の保有を減らしてきているということがございまして、全体として見たときに株価下落で財務の健全性が損なわれるというような状況にはないというふうに承知をしております。全体としての平均的な姿ということでございます。本日、3月末の日経平均株価の終値は12,575円ということで、昨年9月末、半年前の16,785円というのと比較してみますと、約25%下落しているということでございます。このことの金融機関の財務に与える影響として、この株価下落率、正確には25.4%の下落ですけれども、これを当てはめて、かつ一定の仮定をおいて機械的に試算するということを業態別にやってみますと、まず、主要行等については、昨年9月末の自己資本比率13.1%から約0.5%ポイントの下落。また、地域銀行については9月末の10.5%から約0.2%ポイントの下落。信用金庫・信用組合については昨年9月末の11.5%から約0.2%ポイントの下落でございます。生損保につきましても、ある程度の損失を計上するところが大手を中心として散見されるということでございますけれども、全体として見た時に、昨年9月末のソルベンシーマージン比率等々で確認できるそれぞれの保険会社の健全性ということを前提に考えますと、今般のこの株価下落に対応できるような自己資本の厚みではないかというふうに全体としては見ております。

もう一つは、サブプライム関連商品の保有が財務の健全性に与える影響ということでございますけれども、ご案内のとおりこの影響は更に拡大を続けているという状況でございますので、あまり断定的なことを申し上げるべきではないと思いますけれども、これは先般、金融庁において我が国の預金取扱金融機関全体のサブプライム関連商品の保有額として、昨年12月末のデータとして合計で約1.5兆円という数字をご紹介し、また、12月までに約6,000億円の損失を計上している、これは実現損と評価損を合わせてでありますけれども、そういう状況をご報告したところであります。この数字をどう見るかということでございますけれども、一つには欧米の状況と比べても、また、もう一つには我が国金融機関の体力、すなわち期間利益であるとか自己資本の厚みといったことに比べても、いずれにおいても相対的に限定をされているというふうに思っております。これまでには、預金取扱金融機関以外でも我が国の一部の大手証券会社、あるいは一部の大手損害保険会社においてサブプライム関連損失が計上されているわけですが、基本的に各金融機関において十分対応可能な範囲内のものであると認識をしております。

こんなことで、これまで金融庁において、金融機関のこれまでの決算の状況であるとか、あるいはヒアリングで確認した状況等からいたしますと、こうした金融市場の混乱等が直接我が国の金融システムに深刻な影響を与えるような状況にあるとは考えておりません。しかしながら、このグローバルな金融市場の混乱はなお続いていて、正常化のためにはなお相当の時間を要するものであるというふうに認識をしておりまして、金融庁としては引き続き警戒水準を維持しながら、各金融機関の今後の決算の状況やリスク管理の状況、また、株式、クレジット、為替といった様々な市場の動向等について、内外の当局とも連携をしながら早め早めの情勢認識に努めていき、全体の状況を十分注視していきたいと思っております。

問)

新銀行東京ですが、先週金曜日に東京都による400億円の追加出資が都議会で可決されました。金融庁も渡辺大臣は「まず、都議会の推移を見守る」というようなお話もされていたと思いますけれども、改めて、可決ということになったことで、検査を含めて今後の対応について、どのように考えていらっしゃるのかお聞かせください。

答)

この点につきましては先週もお答えしたとおりですけれども、監督当局の銀行行政上の対応として、一般論でございますけれども、自己責任原則と市場規律を基本とした枠組みの中で対応をしてきているということでございます。すなわち、一方で各銀行の経営上の問題、経営判断に属する事項について、当局が過剰介入とならないように留意する、箸の上げ下ろしまで指図するような対応は避けつつ、同時に金融システムの安定、預金者・利用者の保護という観点から、各銀行によるリスク管理、財務の健全性維持への自助努力を促していくと、こういう対応をするということでございます。

新銀行東京に対する行政上の具体的な対応については、個別行の話でありますので詳細は差し控えたいと思いますけれども、同行についても今申し上げたような基本的な心構えで対応しているということでございます。従来から、この銀行については、認識し得た課題を適時に示し、改善に向けた取組みを促してきたということでございます。今回の追加出資案の都議会における可決を受けて、同行が経営改善努力を進めていく中で、金融庁としては今後ともこうした自助努力による取組みを注視しつつ、適切に対応してまいりたいと思っております。

検査につきましては、これも繰り返しになって恐縮でございますけれども、個別の金融機関の検査実施時期等について、言及することは差し控えさせていただきたいと思います。一般論として申し上げますと、検査の実施にあたっては、当局の組織・人員に制約のある中で検査業務全体を効率的・効果的に行う観点から、各金融機関の経営状況や金融機関自身が自主的に取り組んでいる業務改善の実施状況等、様々な要因を総合的に勘案した上で、検査の実施先および実施時期を決めているというところでございます。

問)

無認可共済の件ですが、今日までに3つの選択肢の中からある程度方向性を決めなければいけないということだったと思いますが、現時点でどのような傾向が出ているのかという点について、改めてお聞きしたいのですが。

答)

本日が期限ということで、まだ、本日終わっておりませんので確定的なデータは手元にまだないわけですけれども、全体の傾向として申し上げますと、保険会社に移行する者は、今のところ見通しですけれども5業者ぐらい、少額短期保険業者に移行する者が、今後4月以降に登録申請をする意向を有しているというところも含めましてカウントしますと60業者ということでございます。それ以外の者については、現段階での、各財務局における聞き取り結果によれば、以下のような感じになっております。一つは、保険業法の適用除外となって、共済事業を継続する見込みのもの、これが179業者。適用除外になるというのは、例えば、規模を小さくするとか、取扱い保険商品を小規模のものにするといったような対応でございます。それから、事業者としては廃業となりますけれども、同時に保険会社等の団体保険契約を締結して、契約者への保証を継続するもの、あるいは他の保険会社等へ共済契約を包括移転するといった形で契約者への保証が継続される見通しのもの、これが135業者ぐらいあるということでございます。

今申し上げた179業者と135業者、それと先ほど申し上げた少額短期保険業者あるいは保険会社に移行する者が合わせて65業者、これらを合計しますと379業者になるのですが、これは全体の業者の中の88%ぐらいになります。したがって、88%の業者との間で契約をなさっている利用者・契約者については、今後も何らかの形で契約者への保証が継続される見込みとなっているということでございます。他方で、残りの部分、すなわち今後保険金支払い等の管理業務だけは行いつつ、原則、来年の3月末までに廃業していく業者が51業者、全体でいうと12%ぐらいですが、そのような状況になっているということでございます。

先般の保険業法の改正、この平成17年5月に成立した改正の目的は、根拠法のない共済の状況に鑑みて、構成員が真に限定されその運営を私的自治に委ねることが適当なものを除いて、これらに一定の規制をかけることによって保険契約者等を保護するということにございました。先ほど申しましたように、約88%の業者と契約をしていた契約者の皆さんについては何らかの形で保証が継続されるということでございますので、この改正の目的に概ね沿った結果に近づいているのではないかというふうに思っております。

明日以降、4月以降においても、金融庁としてはこの特定保険業者の円滑な移行、そして保険契約者等の保護に万全を期するよう対応をしていきたいというふうに思っております。

問)

今の点で確認ですけれど、一部報道では(無認可共済の)8割が縮小、廃業するというふうな分析をしている報道もありますけれども、それは間違いということでしょうか。

答)

先ほど申し上げた数字のうち135業者、これが全体の中で31%くらいになりますか、それと、文字通り廃業というのが51社で12%というのを申し上げました。したがって、その12%と31%足しますと、43%くらいになりますか、それが、現に共済事業を行っている業者そのものに着目すると、形態としては廃業というカテゴリーに当たるのかもしれません。ただ、そのうちの大部分は、契約者から見れば契約が継続されるということかと思います。それから、それとは別に先ほど申し上げた、少額の商品にするとか、あるいは規模を小さくするとかで、保険業法の適用除外になって共済事業を続けるというのが179社ありましたけれども、これは廃業というのには当たらないのではないかと思います。

問)

金融機能強化法ですけれども、年度末で期限が切れるということで、明日以降は公的資金の枠組みは預金保険法(上)のシステミック・リスク(のおそれがある場合)と、あるいは破綻の際はペイオフだけという形になるのですけれども、この金融機能強化法のない世界で、一部、協同組織金融機関の業界内で調達する動きもありますけれども、地域銀行あるは協同組織金融機関の経営のあり方と監督のあり方について、どのようなお考えなのかお聞かせいただきたいのですが。

答)

本日をもって、この金融機能強化法の申請の期限が到来するということでございますが、平成16年にこの金融機能強化法が成立した時の状況、あるいはそれに先立つ国会審議等をお願いした時点の状況というのは、ひとつには金融機関が自助努力で自己資本を自力調達する、マーケットから調達する、というのが必ずしも容易ではないという状況にありました。そういうことが、地域金融機関をはじめとして金融仲介機能、貸出機能等の低下につながっているのではないか、という指摘もあったところでございます。そういう状況にあったということでございますが、当時の状況と現在とを比較してみますと、ひとつには、地域金融機関においては地域密着型金融、リレーションシップ・バンキングの取組みを進める中で、総じて、自己資本比率や不良債権比率といった指標は改善を見せておりまして、健全性は着実に向上しているということが言えようかと思います。例えば、地域銀行の自己資本比率は、平成16年3月期で9.0%だったものが、平成19年9月期、昨年の9月には10.5%に上昇している。また、不良債権比率は、同じ平成16年3月期に6.9%だったものが、平成19年9月期には3.9%まで低下しているといった変化があったと思います。それからもうひとつ、自己資本の自力調達をめぐる環境につきましても、内外のファンドによるエクイティ性資金の提供といったことが広がってきていて、資本を供給する側の多様化といったこともあって、地域銀行をはじめとした各地域金融機関の自助努力によって資本調達を行うということが、当時よりは大分容易になってきたということがあろうかと思います。数字で申し上げますと、平成17年度には地域銀行において約6,000億円の資本調達が、マーケットベースというか民間ベースで行われています。これが、18年度には7,000億円ということでございますし、また、今年度、今日が最後ですけれども、19年度も第3四半期まで、12月末までで約3,000億円強、というような数字になってきているということでございます。

先ほど申し上げたような自己資本比率にも反映されているということだろうと思いますけれども、各金融機関の収益力の強化による利益の積上げによっても、自己資本比率を引き上げることが可能なわけであります。今後、各金融機関が収益力の強化であるとか、必要な場合には自力調達での資本増強といったことを行うことによって、自己資本の充実に努めていかれるものと考えていますけれども、先ほどのご質問の後段部分にお答えするとすれば、新しい法的な枠組みの下で、いずれにせよ、各金融機関が自らの経営判断で早め早めの対応を行っていく、その前提として、自らの財務状況、あるいは1年後、2年後、3年後の見通しについてフォワード・ルッキングな財務の見通しを立てて、早め早めの対応について検討するということが、各金融機関においては非常に重要なことになっていくということだろうと思います。

また、監督上の対応としても、今申し上げたような早めの問題認識、早めの対応ということを基本的な心構えとしつつ、適切な検査、監督を通じて、各金融機関の財務の健全性の確保というのを促していきたいというふうに思っております。

問)

本日、一部の報道によると、金融庁があおぞら銀行とその銀行の筆頭株主であるサーベラスというファンドの関係について調査しているという報道がありますが、個別の件についてはコメントできないということは承知しておりますが、背景として、外国人投資家あるいは外国メディアによると、金融庁が外資に対して相当厳しいという批判をよく聞きます。これについて長官のお考えはいかがでしょうか。

答)

金融庁の行政の非常に重要な大原則のひとつとして、「内外無差別」というのがございます。その考え方に則って、行政対応をしてきております。したがって、監督対象である金融機関の株主構成等に着目して、外資であるからということで差別的な取扱いをするというようなことはない、ということであります。一部、例えば銀行法などでも法令上の整理として、外国銀行の在日支店の場合は、日本に本店がある銀行の在日支店とはちょっと違う取扱い、すなわち、主要な支店については監督をきちんと及ぼすという観点から、本店、本部に準じた監督をするという仕組みがございますけれども、これは当然、監督上の要請から導かれるものであって、差別的な性格のものではないというふうに思います。いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、「内外無差別」の基本的な考え方で対応しているということであります。

問)

その関連でフィナンシャル・タイムズに載っていましたが、「主要株主のサーベラスがアメリカのGM系の金融子会社に投資していて、その関連であおぞら銀行も一定の投資をしている、それが機関銀行等の問題に関わってくるのではないかいう問題認識の下に、金融庁が調査をしている」という報道だったかと思うのですけれども、その関連の事実確認をお願いできますか。

答)

個別銀行についての個別の事案でありますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。ご案内のとおり、制度的には一般論として、銀行とその主要株主との取引についてはアームズ・レングス・ルールが課されているということでありまして、事業会社であるとか投資ファンドが主要株主となる場合については、銀行の経営の独立性の確保といった観点からの着眼点が監督指針に盛り込まれているというのは、一般的な制度としてそういうものがあるということは事実であります。個別のケースについてはコメントを申し上げません。

問)

リーマン・ブラザーズの投資資金が回収不能になったということで、丸紅を提訴していますが、この件について金融庁が取られる対応は何かあるのでしょうか。

答)

ご質問のような報道があることは承知をしておりますし、金融庁としても、監督対象となっている業者を通じた実態把握を行ってはおりますけれども、個別の事案に係る具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。全くの一般論として申し上げれば、金融商品取引法上の問題となる行為が認められた場合には、その行為の悪質性や重大性等を踏まえた上で、法令に基づいて厳正な対応を行うということになろうかと思います。

(以上)

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