渡辺内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成19年12月7日(金)9時30分~9時55分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

おはようございます。本日の閣議についての報告事項はございません。

【質疑応答】

問)

幹事社から二問お願いします。一つ目ですが、証券優遇税制について本日、自民党税調の方に金融庁案を提出されると思います。一部報道によると、3,000万円までの譲渡益も軽減というような報道もありますけれども、なお財務省案との差は大きいと見られます。金融庁案の内容と今後の調整の見通しについてお聞かせ下さい。

答)

我々は、あくまでもフラットな税率がよいと申し上げて来たわけでございますが、いつまでもフラット税率を主張していたのでは、現実的な妥協が図れないという段階に至りまして、キャピタルゲインについては、大口3,000万を超える方々に20%の譲渡益課税の税率とし、それらの方には申告義務が出てまいります。申告のチェックのために、証券会社などが支払調書を、年間取引報告書を提出します。特定口座における源泉徴収は一律10%、つまり一般の方は今までと同じ、大口3,000万を超えるキャピタルゲインの方に20%の税率で申告義務が出てくるという仕切りでございます。配当課税については、税率10%維持ということになります。損益通算につきましては平成21年1月から開始をします。特定口座を活用する損益通算は早ければ平成22年の1月、これはシステム開発などの準備が整った段階から、実施をするということでございます。なお、先ほどのキャピタルゲインの新税率の実施時期でございますが、平成21年からとしております。損益通算の限度額は設けないというのが大体の概要でございます。

問)

次に、サブプライム問題ですが、昨日アメリカがサブプライム対策を出しまして、一方で英国も2年4ヶ月ぶりの利下げと各国の対策も加速しておりますが、米国の対策に対するご所見と、これにより市場が落ち着きを取り戻すかどうかという見方を教えてください。

答)

今日、発表されたものは、一つ目が、FHA(連邦住宅局)が小売の住宅ローンからFHAの保証付き住宅ローンに借り換えを可能とするプログラムを立ち上げたということです。これは従来から言われていた話でございます。二つ目として、ポールソン財務長官とジャクソンHUD(住宅都市開発省)長官が民間セクターの関係者を集めてホープ・ナウを立ち上げました。ホープ・ナウのメンバーは次の三つの方法のどれかにより借り手を救済するため、住宅産業全体のスタンダードに同意をしたということでございます。三つの方法とは第一に新たな民間ローンへの借換え、第二にFHAセキュアーローンへの移行、第三に返済金利の5年凍結です。ホープ・ナウは最大120万人の住宅所有者が救済対象となり得るとしています。そして、国民全体の意識を喚起することも重要であるところから、ホープ・ナウは最近返済延滞者に対して、カウンセリングの案内に関する何十万通ものレターを出したということのようでございます。その他、議会の方でやってもらうようなこととか、いくつかの対策が講じられて、マーケットには非常に好感されたということであろうかと思います。

いずれにしても、こうした対策が功を奏してくればそれはそれで大変結構なことでございます。日本の経験からいたしまして、とにかく対策が後手に回る“too little too late”(小さすぎ、遅すぎ)は望ましくないというのが日本の失敗の教訓でございますから、是非、早め早め、先手先手で対策を講じていただくことが大事なことではないでしょうか。

問)

証券税制ですけれども、財務省案はほんの一部の少額について、金額ははっきりしていませんけれども、年間数万円とか十万円程度ということについては、配当についても認めるとのことですが、それに対して今回示された金融庁案というのは基本的には大口のみの3,000万円以上ということで、かなりの隔たりがあると思うのですが、これはどうやって両者の溝を埋めていくのか、これは何が焦点になると思われますか。

答)

我々は、財務省案よりも我々の案の方が優れているし、また構造改革の方向性に適っていると考えております。是非我々の案で決着をしていただきたいと考えています。財務省案についてコメントはいたしませんが、やはり貯蓄から投資への流れというものを確実にするには、あまりにも煩雑すぎて事細かな規制のある税制ではこの流れが非常に阻害される恐れがあると思います。我々の案は非常に分かりやすいし、また一般の投資家は今までと同じということでありますから、この貯蓄から投資への流れは確実に進んでいく案ではないかと思っております。

問)

民主党の案ですけれども、これも自民党の中からは非常に分かりやすいという意見もありますけれども、この民主党の案についてはいかがお考えでしょう。

答)

キャピタルゲインと配当を峻別するというのはいかがなものかと思います。つまり、どちらも企業価値から出てくる話であります。配当をせずに内部留保で蓄積をしていくという経営方針もあると思います。特に、ベンチャーの立上りのところなどは、そういう必要性に迫られるわけです。ですから、そういった配当ではなく内部留保の蓄積をまず重視するという会社は、一般的に言えば株価が上昇する傾向があるわけでございますから、これは投資家に対してキャピタルゲインで報いるということになります。しかし、配当のみを軽減税率としますと、とにかく配当しないといけないというインセンティブが働くことになるのではないでしょうか。そういたしますと、立ち上がりのベンチャー企業などが配当しなければいけないというところに流れて、長期の技術開発などが疎かになってくるのではないかという心配も出てくるわけでございますから、配当とキャピタルゲインの税率はできるだけ同じにしておくことが大事なことではないでしょうか。その点、今回の金融庁案においては、大口3,000万を超えるキャピタルゲインの方々にのみ20%の税率が適用されるわけでございますから、私が申し上げたような心配はそれほど起きないと思います。民主党案との違いはそういうところではないでしょうか。

問)

(自民党税調の)インナー(幹部)の中では、やはり去年の与党の大綱で廃止するということをきちんと謡っているということで、そういう意味では廃止した上での見直しでないと、昨年の大綱の存在意義といいますか、重みがなくなるという意見があると思います。そういう意味で今回の金融庁案というのはインナーの多くの方が言っているのとは少し違うと思うのですが、このあたりどう思われますか。

答)

税調の美学というのはあるのでしょうけれども、我々は金融行政を預かるものとして、世の中というのは絶えず移り変わるものであって、金融も、経済もまさしく生き物です。ですから去年と今年は違います。去年の今頃では、サブプライム・ローン問題についてはどれほど認識があったか、どれほど問題が起こっていたかということを考えれば、やはり現実的に政策を立案し、それを実現しようという立場からいたしますと、あまり美学にこだわっていても埒が明かないのではないかと思うのでございます。

問)

独法に関して、今日の閣議などで総理から何か指示、若しくは話などありましたか。

答)

ございませんでした。

問)

第一生命が株式会社化すると昨日報道がありましたが、相互会社と株式会社の意味合い、今後の金融行政に何か影響を与えるのかについてお聞かせ下さい。

答)

個別の会社の経営方針について、いちいち口は差し挟みませんが、一般的に相互会社よりも株式会社の方が資金調達が便利であったり、ディスクロ態勢がより良い環境におかれたりと、株式会社化は決して悪いことではないのだろうと思います。相互会社から株式会社への転換というのは、随分前から議論はされてきた問題でございまして、そのような動きが出てくるというのは、資金調達やガバナンス向上といった効果を通じて保険契約者保護にも資するものになっていくのではないでしょうか。一般論としては大変結構なことだと思います。

問)

独法改革の件なのですが、第1ラウンドを今やっているところなのでしょうけれども、再折衝の際に、最初の提案した内容から歩み寄るなど、何らかの腹案をこれからの協議で持っていかれるというお考えはおありなのでしょうか。

答)

こちらからは既に提案は投げてありますので、逆に提案を返していただく段階ではないでしょうか。内々、提案を返したいと言っているところもないわけではございません。しかし、それで満足できるものかどうかはさらに精査しなければならないと思っております。そう簡単に妥協するつもりはございませんので、引き続き精力的に交渉はやっていきたいと思います。

問)

政府系投資ファンドについてですが、自民党の山本前金融担当大臣が議員連盟を立ち上げまして、政府系ファンドの創設を訴えていますけれども、前の会見で政府として創設を決めたものではないとのお話がありましたけれども、大臣として、政府保有資産や外貨準備、年金などを、政府系ファンドを立ち上げて運用するということについてどのように思われるのでしょうか。

答)

ソブリン・ウェルス・ファンドの問題については、金融市場戦略チームの次のテーマの一つとして議論をいただきたいと思っています。特に産油国のソブリン・ウェルス・ファンドの存在というのは、シティの資本増強にも見られるように、無視できない存在になってきているわけでありますから、こうしたソブリン・ウェルス・ファンドの存在について調査・分析をまずする必要があろうかと思います。その上で、日本の国富、特にパブリックセクターが抱えている資産をどうするかという問題は、行革大臣のミッションとしても非常に大事な問題がございますので、こうしたことに対しては、クロスオーバーで研究をしていきたいと思っています。今の段階で創設する、創設しないという方向性は持っておりません。

問)

ここにきて、永田町で「霞が関埋蔵金」の議論がおきていますけれども、改めて大臣のご認識と、そうしたものがあるとすれば、今後どう活用すべきかというお考えをお聞かせ下さい。

答)

先ほどの山本議連においても私が指摘をしておりますが、財融特会(財政融資資金特別会計)などの金利変動準備金は、財融特会そのものが相当スリム化・縮小されてきている中で、これほど貯めておかなくてもいいのではないか、という水準にあったのだろうと思います。したがって、そのようなものを埋蔵金と呼ぶかどうかは別として、過剰に積んであるのであれば、これは何らかの形で国家財政に貢献してもらうあり方を考えるということは当然のことだと思います。

この類の話がなぜ埋蔵金と言われるかというと、この前の行革推進法の時もそうだったのですが、あの時は20兆円、特会の剰余金を一般会計に戻すということを決めたわけでございます。財融特会12兆円、外為特会8兆円を5年間で返すという方針だったのです。では、その20兆円が上限なのかと言ったら、そういう仕切りでは全くないわけであって、このようなものは今の時代に合わせたあり方に変えていくということは、当然やっていかなければならない問題だと考えております。

問)

先ほどの政府系ファンドの件ですが、金融市場戦略チームで話し合うのは、あくまで産油国、中国など今活躍しつつあるファンドの問題点などを話し合うものなのか、または、今後日本でも導入することも踏まえた上で導入の検討もしていくのか、さらに、この件についてはいつ頃から始まって、いつ頃くらいに第二次レポートというのかわかりませんが出していく予定でしょうか。

答)

第二次レポートをいつ出すかということは、今の段階ではまだ固まっていませんけれども、金融市場戦略チームを立ち上げる時に、大体のスケジュール感として、第一次レポートは11月中、第二次レポートは今年度中というイメージで考えておりました。サブプライム・ローンが一息という状況であるかと思いますが、注意を怠らずにウォッチをしていく必要があるわけでございますから、そのような問題とセットで議論をしていきたいと思います。まずは調査・分析から始めるということだろうと思います。

問)

その上で導入についての検討も金融市場戦略チームでやるということでしょうか。

答)

まず調査・分析を始め、国際的な議論も当然その間に行われるわけであります。G7や金融安定化フォーラム等々で議論が行われるわけですから、それを横目で睨みながら考えていく問題だと思います。

問)

証券税制ですけれども、譲渡益と配当(の税率)を分ける必要がない、合わせた方が良いということでした。一方、財務省からすれば20%に合わせた方が良いという考え方もあるわけです。例えば、譲渡益(に係る軽減税率)を残さなければいけない、売り急ぎということがあるのかどうか、または先ほどおっしゃったように数字を合わせた方がいいということなのかはわかりませんけれども、譲渡益を残す意味合い、残さなければならない理由をもう少しお聞かせいただけますでしょうか。

答)

配当も譲渡益も企業価値から出てくるものなのです。ですから、これを区別する必要はそもそもないではないかということを申し上げてきたわけです。一方、どうしてもこの二つを区別したいという方向性を持った意見もあって、財務省案なり民主党なりは、おそらくそのあたりから出てきているのだろうと思います。したがって、ここでがっぷり四つに組んで膠着状態となっても、政策立案・実現の現場にある者としては、こうした膠着状況は回避しなければならない、何らかの形で建設的な妥協をしなければならないという必要性から今回の金融庁案は出したわけでございます。ご指摘のマーケットに与える影響を考えてのことかという点については、そういうことがないとは言いませんけれども、基本的には現行の税率により近い形での決着を図るべきであるという観点からこうした案を出したところでございます。

(以上)

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