渡辺内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成20年2月1日(金)9時38分~9時59分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

おはようございます。

本日の閣議についての報告事項はございませんが、先般の虚偽の大量保有報告書の事件がございました。いわゆる、テラメント株式会社の虚偽事案でございます。EDINETを含む開示制度の運用にとって、極めて重大な問題であります。こうした問題への対応はスピード感が大事であります。本日、「EDINET運用改善検討チーム」の第一回会合を開催いたします。今後、速やかに再発防止策、危機管理策を取りまとめる予定になっています。

私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

昨日の開示でメガバンクのサブプライムの損失がさらに拡大しましたが、今後の見通しと市場に与える影響について大臣のご見解をお願いします。

答)

これから、ヨーロッパ系のLCFI(巨大複合金融機関)の決算発表が行われてくると思います。そういったことも踏まえて見通しを持っておく必要があろうかと思います。サブプライム・ローン問題がその他の金融商品、住宅ローンだけではなく消費者クレジットやオート(自動車)ローン、LBO(レバレッジド・バイアウト:買収先の資産などを担保に資金を借り入れ、その資金で企業買収すること)などに広がっている、また、モノライン(金融保証専門保険会社)の格下げによって、モノラインが保証していた金融商品にまで累が及んでいるということがございますので、警戒水準はさらに高くしていく必要があろうかと思います。金融庁としては、早め早めの情報収集に努めているところであります。

問)

来週G7がございますが、格付機関の規制など関心が高まっています。G7で日本政府として、大臣としてどのような点を発信されていきたいかということをお願いします。

答)

私は残念ながらG7(財務大臣・中央銀行総裁会議)のメンバーではございませんが、日銀あるいは財務省、それぞれ私の「金融市場戦略チーム」のメンバーとして参加をいただいておりますので、そうしたルートを通じて日本の教訓についてのメッセージを強く発信していただくようにお願いをしているところであります。ダボス会議でも私が申し上げてまいりましたように、我々の経験からいたしますとこれは一種の「デジャヴュ(かつて見たこと)」です。日本では90年代を通して、宮澤内閣から森内閣のまでの間に約137兆円の景気対策を行ってまいりました。結局、不良債権の損失処理というところに思いが至らずに、公的資本注入の決断をするまでに、最初の金融危機からなんと6年を費やしてしまったという経緯がございました。損失処理の方は約100兆円に及んだわけでございますが、約70兆円は銀行の業務純益、約14兆円は株の含み益の掃き出し、そして、12.4兆円は公的資本注入ということになったわけであります。

一方、破綻処理というのも行いました。金銭贈与は約19兆円行いました。そのうち、預金保険料で賄えたのは約7兆円、国民負担が約10兆円発生をしたわけであります。

やはり、一番効果があったのが公的資本の注入であったということであります。なぜ我々が公的資本の注入を決断したのか、それは個別の金融機関のソルベンシー(支払い能力)の問題を超えた、金融システム全体のソルベンシーの問題になっていたが故に、公的資金の投入を決断したわけであります。おそらく、そういう決断を迫られる場面がこないとは言えないのではないでしょうか。そうしたことを考えれば、早め早めのブレインストーミングをやっておく必要があろうかと思います。

問)

早め早めのブレインストーミングとおっしゃいますのは日本についてですか、それとも欧米についてですか。

答)

日本については、いつも申し上げますように、業務純益が、これは昨年の数字でございますけれども、昨年の3月末で6.7兆円あります。ティア I 資本(基本的項目)が49兆円以上ございます。したがって、こうした観点から見れば、十分に対応可能であるというのが日本の状況であります。ただ、先ほど申し上げたように、いろいろなルートを通じて、累が広がっているわけでありますから、警戒の水準は高くしていかなければならないというのが日本の今の状況だと思います。

一方、LCFIが置かれている状況はさらに深刻であると思います。そういう観点から申し上げたつもりであります。

問)

三井住友の奥頭取、全国銀行協会の会長も、広がりと深さがまだ見えないということをこの間の会見で言っていましたけれども、例えば広がりという意味では、先ほどおっしゃったように、日本の中ですけれども、他のCDOの商品への影響というのがこれからどのくらい考えられるのか、現時点でどのくらい広がっているのかという点と、今後の見通しについてご見解をお願いします。

答)

昨年9月末に比べれば、広がりは大きくなっていると思います。具体的な数字としてまだ私の手元には来ておりませんけれども、明らかに拡大をしています。これは日本発ではないところに厄介な問題がございまして、海外関係のこういった金融商品のエクスポージャーがどれくらいあるかというところをまず、把握をしておく必要があろうかと思います。そうした金融商品の中で、値段がついているものについては、マーク・トゥ・マーケット(市場価格準拠)の計算ができるわけでありますが、レベル2などは類似商品価格でありますし、レベル3に至ってはマーク・トゥ・モデル(モデル準拠)で計算をしなければならないという厄介な問題がございますので、まさに監査法人の監査という観点とは別のブレインストーミングもやっておく必要があろうかと思います。

問)

テラメントの件ですが、本日は(検討チームの)第1回の会合を開いて、スピード感を持ってとのことですが、今考えられる対策として、事前にチェックをするという点で言うと、どういったことができるのかという点と、スピード感というのはどれくらいの目処で結論を出したいというお考えなのでしょうか。

答)

EDINETというのは、事前の検閲をしないというところに良さがあるのです。まさに、それぞれの投資家が自らの規律において情報開示をしていただくということでございまして、この基本線は崩したくないと思っております。一方、このようなケースが今後とも出てくるという点に何らかの予防策を取っておく必要があるわけでして、事前の検閲をしないのであれば、いかに早く事後チェックを施し、その訂正をさせるかというところがポイントになるわけでして、そうした観点から具体的に、ではどうやったらよいかというのをこの検討チームで議論をいただきたいと思っています。検討チームには、それぞれの分野の専門家に集まっていただいていますので、まさに速やかに再発防止策・危機管理策をまとめていただくということでございます。

問)

先だっておっしゃっていたように、ソフトの活用などで明らかに怪しいというものをはじくようなシステムというのはいかがでしょうか。

答)

それは、方法の選択肢の一つだと思います。どういうことが可能なのかそれぞれの専門家のご提案を聞きたいと思います。

問)

昨日、公務員制度改革の懇談会が最終報告書をまとめました。これに関連して、昨日、町村官房長官が関係閣僚の間で話し合うというような発言をされました。これについて、今日何か町村官房長官から指示があったか、若しくは大臣のお考えを聞かせてください。

答)

特に指示はいただいておりません。いずれにしても、懇談会の報告書の基本にありますのは、真の議院内閣制を支える公務員制度を作っていこうということであります。構造改革のメインテーマの大きな一つの柱が、「官僚主導から政治主導へ」という流れであることは疑いをいれません。今回の報告書はそうした問題意識に裏打ちをされていると思います。

提言の中で特に重要な点としては、いわゆるキャリア制度が身分制になっている、そして、この身分制度が官の内部での人材の活用・流動性を阻害してしまっている、また、官民の垣根を非常に高くしてしまっているという問題点があります。このキャリア制度が各省の採用・人材育成・退職管理、そしてその先の天下りに至るまで各省で行われているがゆえに、各省割拠主義の弊害が指摘されて久しいわけであります。そこで、幹部人事の内閣一元化、内閣人事庁の創設ということが打ち出されたわけであります。官僚主導を打破していくためには、やはり今の実態的な観点からもメスを入れる必要があるということで、政官の接触については集中管理を行い、国家戦略スタッフを導入していくという提案がなされたと理解をしております。

後は、政府と政治家がこれをどう受け止め、法制度の形でどのようなポイントから実現をしていかなければならないのかを考えなければなりません。とするならば、これは政官一体改革という切り口が必要になるわけでございまして、まさに国家戦略的な議論が必要になるかと思います。

問)

懇談会の報告の肝となる、政官の接触集中管理のための仕組みを作ろうということについては、自民党内や官邸の中にも慎重な見方があるようですけれども、官房長官の発言にもあったように、閣僚間で議論をしようというお考えは大臣にはおありでしょうか。

答)

これは、政官の接触の集中管理のみならず、現行の制度を大幅に、あるいは抜本的に変える中身を持っておりますので、現状維持を図ろうとする人達から反対論が噴出するのは想定内の話でございます。したがって、これから大変な大激論になっていくのは明らかでございまして、いろいろなレベルを通じて、是非議論を深めていってほしいと思っております。

問)

別件で、国土交通省が今準備している空港会社に対する外資規制を盛り込んだ空港整備法の改正案が自民党内で審議されているのですが、外資規制という考え方は、対日投資を促進して成長していこうという国家の戦略と反するのではないかと言う見方もありますが、この国土交通省が今準備している法案について、大臣の所見をお願いします。

答)

空港整備法といったでしょうか、正式名称はもう少し長い名称かもしれませんが、国土交通省の準備している法案の外資規制には反対です。ダボスまで赴いて、総理自らが対日投資促進を訴えてきたわけであります。帰ってきて1週間ぐらいしか経っていないのに、いきなり外資規制をやると、これでは、日本の政府がどちらの方向に向いてやっているのか疑われてしまいます。やはり、こういった規制というのは、その規制の目的、例えば国の安全保障とかそういった観点から、その目的を達成するためのほかのとり得る手段というものもいくつも考える必要があります。いきなり資本規制という観点でこれをやろうというのは、あまりにも無謀でありますし、今我々が目指している、この国の資本市場を強化し、世界中から対日投資をしてもらおうという国家戦略には真っ向から反するものであると言わざるを得ません。安全保障という観点からはより適切な手段があるかと思います。例えば、空港会社に対して緊急時に国への協力を義務づける行為規制といった、内外無差別の手段があり得るのではないでしょうか。

問)

今、自民党の調査会の方でそういった議論をやっていますが、大臣としてそうした反対のご意向をどこかで示されるお考えというのはありますでしょうか。

答)

既に国土交通省に対しては、金融庁としては反対という意見を申し上げてあります。

(以上)

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