渡辺内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成20年2月12日(火)8時52分~9時21分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

おはようございます。

本日の閣議についての報告事項はございませんが、先週金曜日、G7に先立ちましてIMF専務理事のストロス=カーン氏とイギリス財務大臣のダーリング氏にお会いしました。

ストロス=カーン専務理事はダボス会議でもご一緒しましたので、その時の話の続きをいたしました。日本がなぜ公的資金の注入という決断に至ったのか、そういうお話を私の方からいたしました。ストロス=カーン専務理事は、世界経済が減速するリスクが高くなっていることを非常に心配しておられました。ただ、財政金融政策というマクロ政策の発動の余地が日本にはあまりないということもよくご存知でした。公的資金の注入につきましては、今の状況ではアメリカが決断することはなかなか難しいというお話をされておられました。

ダーリング財務大臣との会談では、日本の歴史の教訓として私がお話をしたことに大変興味深く反応をしておられました。日本の法制度では債務超過の銀行に公的資本は注入できないという仕組みになっていたわけでありますが、当時私は政府の人間ではございませんでしたので、「システミックリスクの発生するおそれのある場合には、公的資本注入を債務超過であるのと否とに関わらずできるようにすべきだ」と主張していたことを紹介したところ、大変大きく頷いておられたのが印象的でございました。

私の方からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

幹事社から三点質問をお願いします。まず、週末の東京証券取引所のシステム障害について金融庁としてどのような対策をお考えかということ、二点目は空港問題で何か進展があったか、これから進展を起こされるご予定があるかということ、第三点はG7でFSF(金融安定化フォーラム)の中間報告などもありましたが、それに対して大臣からのご意見、ご感想をお願いします。

答)

まず、システム障害については、プログラムにバグがあったそうでございまして、これについては週末復旧の準備をしていただき本日の取引は通常通り開始されると聞いております。こういうことがあると「トーキョー・ストップ・エクスチェンジ」と言われてしまうわけでございますから、こういうことのないようにお願いをしたいと思います。

それから、空港問題は今、政府部内で精力的に各省間協議が進められていると承知をいたしております。

それからFSFの報告につきましては、日本の主張といいますか、私のところの金融市場戦略チームのいろいろな検討の成果なども取り上げていただいているようでございまして、大変その意味では結構な報告であったと思います。

問)

東京証券取引所の件ですが、特に報告徴求命令を出すとか、そういう対応は考えていらっしゃらないということでしょうか。

答)

金融商品取引法第151条の規定に基づく報告命令を8日付、先週の金曜日で発出をしたところであります。今後、その状況をフォローアップしてまいります。

問)

今週、中国の政府系ファンドCIC(中国投資有限責任公司)のトップが日本に来日して、山本(有二)先生の政府系ファンド議連で講演等をされると伺っていますが、中国の政府系ファンドとは他の国の政府系ファンドと同じような付き合い方をすべきなのでしょうか。日本への投資を視野に入れての来日だと思うのですが。

答)

このCICの高西慶氏の招聘状は私から出しておりますので、詳しく今お尋ねの点などお聞きをしたいと思っております。

問)

金融市場戦略チームの面会、もしくは話合い等の予定はあるのでしょうか。

答)

時間が合えば、直接お会いをしていろいろなお話、例えば今ご指摘の投資戦略とか諸々の話題についてこちらからお聞きをしたいと思っています。

問)

大臣は空港外資規制について反対の立場を先日表明されましたけれども、海外からの政府系ファンドの対日投資というのも、日本として前向きに付き合っていくべきだとお考えですか。

答)

詳しくはまた高西慶氏のお話を聞いてご報告する場面があるかと思いますけれども、今の段階で政府系ファンドには国家意思を反映して会社経営を牛耳るという意図があるという話は聞いたことがございません。そういう心配をする向きがあることは承知をいたしておりますが、今のところ私が理解しておりますのは純投資であると、いわば物言わぬ株主として投資を行っているということでございますから、そういう投資戦略がずっとこれから続くのか、それともやはりこれは国家戦略ファンドなのか、そのあたりの見極めはする必要があろうかと思いますので、金融市場戦略チームでも本格的に議論をいただくことになっておりますが、そのあたりを念頭にこれから調査・分析を進めていきたいと思っております。

問)

関連ですけれども、日本の企業も中国に限らず中東などを歴訪してIR活動などを活発化させていますけれども、そういう意味では日本に対する投資について、国は限らず、今のところ歓迎されるお考えなのでしょうか。

答)

このソブリン・ウェルス・ファンドというのは、国際金融市場において無視できない存在であるということは昨年から言われ続けてきたことだと思います。ベスト・プラクティスを模索していくということで各国とも今その道を歩んでいるものと思います。また、ファンド側の方も不必要な摩擦を起こしたりしないよう、相当抑制的な行動を取っているのではないかという見方もございます。したがって、そういったことを考えれば、徒にソブリン・ウェルス・ファンドだからということで排斥をするということは得策ではなかろうと思います。

問)

明日はどのくらいの時間お話をする予定なのでしょうか。

答)

明日お会いしたいと思っていますが、どのくらいの時間かはわかりません。

問)

G7について改めてなんですけれども、G7声明で資本増強措置について言及されましたけれども、この点について大臣のご所見を伺いたいのですが、これについては欧米金融機関の資本増強が進むというふうに期待できるのか、あるいは公的資金というような言及はなかったのですが、不十分だと考えるのか、この資本増強の件について大臣の受止めをお願いしたいのですが。

答)

誰が見ても銀行部門の資本不足という問題に突き当たることは紛れもない事実でございますし、誰しもが資本増強の必要性を唱えているわけで、改めてG7会合でこの問題がクローズアップされたということは、大変結構なことなのではないでしょうか。額賀大臣から日本の歴史の教訓について言及されたようでございますが、それも非常によい意味において挑発的な話であったと思います。日本も公的資金の正しい投入の仕方を決断するのに、最初の金融危機から6年もかかっているわけです。その間、住専処理の過程で、国民から見てもどうも変だなと思う公的資金の使い方もされてしまった、そのようなことも災いして大蔵省が財金分離という事態にも立ち至ったりしたわけです。

一方、アメリカでは90年代のS&L(貯蓄貸付組合)処理においてRTC(整理信託公社)が作られたわけでありますが、そこで公的資金が使われたと承知しておりますが、確か何千人という単位で牢屋に入れられたということも聞いております。といたしますと、公的資金の投入というのは責任追及という問題と真にセットの話になるわけでありますから、そう簡単な話ではないということは容易に想像がつくわけであります。責任追及をしていくと、日本でもそういう議論が行われましたが、行政の責任は一体どうなのだというところにも当然及んでくるわけでありますから、そう簡単な決断ではないことは明白です。ですから、そういうハードルを乗り越えて日本の教訓はこういうことでございました、という話は、やはりしつこいくらいに繰り返し繰り返しメッセージとして出していく必要があるのではないでしょうか。

問)

空港の外資規制ですが、先週末、町村官房長官が会見で大臣に注意をした理由として、既に各省間の事務的な調整が終わっていたからと説明していますが、これについてご認識をお聞かせください。

答)

町村官房長官が何とおっしゃったのか私は知りませんが、各省間の調整は途上であったと私は理解しております。金融庁に関しては、財務省、外務省と違って何ヶ月も前から協議が行われてきたという事実はございません。1月の下旬に電子メールでその法案が送られてきたようでございますが、こういうものは毎日何本もくるわけでして、それを各省調整というのかどうかわかりませんが、本格的な調整ではないことは事実であります。そういうことから今、本格的な調整を政府の方でやっていただいているということではないのでしょうか。

各省調整が終わった後で、大臣がものを言うのはおかしいというようなことだとすれば、おそらく町村官房長官はそういう意味でおっしゃったのではないのだろうと思います。つまり、公務員制度改革で議論になりました、いわゆる「官僚内閣制」というのは、官僚が真ん中にいて国会と内閣を同時に上手に操っていくという構図なのです。そういう構図からいたしますと、官僚が合意したものを大臣がちょっかいを出すのはけしからんという話になるのでしょうけれども、我々が目指しております公務員制度改革は、間違ってもそういう「官僚内閣制」と言われないような、正しい意味での、真の議院内閣制を実現していこうということなのです。真ん中に内閣が位置して、この内閣は国権の最高機関である国会が作るわけです。この内閣が各省官僚機構を上手にコントロールして、政策立案・法の執行をやっていくということでございますから、そういう観点からいけば、協議が整っていない問題で大臣が発言するのは当然ですし、大臣にその報告のなかったものについて、事務ベースでは合意が行われたのを大臣がひっくり返すというのは、これはあってしかるべきことだと思います。いずれにしても、町村官房長官が、「官僚内閣制」が正しいという意味で先ほど言われたようなご発言をしたのでは全くないと思います。

問)

直接のご担当ではないご質問で申しわけないのですが、先日、沖縄の方で米兵による女子中学生の暴行事件がありました。これについての閣僚としてのお受止めをお聞かせいただけますでしょうか。

答)

たしか、何年か前にも似たような不幸な事件が起きまして、当時、赴任したばかりのベーカー大使が、日本に着いてアメリカ大使館に行く前にその足で外務省に謝りに行った、という話を聞いたことがございます。また、韓国でもこうした不幸な事件が起きて大統領選挙で逆転が起こったというエピソードも聞きました。まさしくこれは、沖縄の皆さんの心を非常に逆なでするような事件であって、許しがたいことだと思います。

問)

G7に戻って恐縮なんですけれども、先ほど、公的資金の方は責任追及するので難しいという一方で、日本の教訓をしつこいくらいにメッセージを出していく必要があるということでありましたけれども、公的資金は、難しいけれども欧米金融機関には必要だ、とお考えということでしょうか。

答)

今の時点、これから先どういう具合になるかという洞察の問題だと思いますが、今の時点で公的資金を言うのは早すぎるという判断が欧米当局の一般的な理解だと思います。日本がなぜ公的資金の投入を決断したのかと言ったら、流動性の危機の背景にはソルベンシー(支払い能力)の問題があるという教訓に気がついたからなのです。実はこのソルベンシーの問題というのは個別の金融機関の問題にとどまらない厄介な問題を含んでいる、つまり、金融システムそれ自体がソルベンシーの問題を抱えるに至ったのではないかということに気がついたが故に公的資金の投入の決断をしたのだと思います。二通りのやり方、正確に言えば三通り、四通りぐらいのやり方があるのですけれども、まずは、破綻処理。これは10年前に当時の米国のサマーズ財務副長官が日本銀行に陣取って、机をたたきながら主張したやり方です。これに対して、私などが主張したのは、キャピタルインジェクション、資本注入型。結果として、破綻処理のために公的資金は日本では18兆円、金銭贈与が行われましたが10兆円の国民負担になっている。資本増強型は12.4兆円投入されて、既に8兆円回収されていますが、1.5兆円ぐらいおつりがきております。未回収の分についても、株の含み益がこんなに株価が下がっても未だに残っているわけです。こういうことであって、いったいどちらが国民にとってはよかったかということも考えたらよいと思います。それから、不良債権の買取りという形での公的資金も使われていますが、これも今時点では、プラスになって、おつりがきているというのが日本の状況であります。日本銀行が持ち合い株式を買い取るというのも一種の公的資金の使い方だったと思いますが、これもたぶん含み益が出てきているのではないでしょうか。そういうことを考えれば、公的資金の使い方のノウハウ、トラックレコード(実績)というのが、日本においては相当に蓄積されているということでございまして、いずれということはミスリードですから言いませんけれども、公的資金の問題を考えるのであれば、日本のこうした教訓は大いに参考になるのではないかということを申し上げているわけでございます。

問)

米国の金融機関の資本増強については既に民間主導で進んでいますけれども、これでは不十分というお考えなのですか。

答)

それは、これからどういう具合に推移するのかということだと思います。これで、十分であれば、何をか言わんや、です。モノラインの格下げがこれからどういう具合に波及をしていくのかということを考えれば、モノラインへの資本増強というのはまずは必要になるのではないでしょうか。これをいきなり公的資金というわけにはいかないのでしょうから、どうやって資本増強をやるかというのは目先の大変厄介かつ重要な課題になるのではないでしょうか。

問)

今回のCICについてもう1点ですが、今回、どうして中国を選ばれたのかということと、クウェートやサウジアラビアなど他にもいろいろありますけれども、他のソブリン・ウェルス・ファンドと会談するなり、こちらから行く、向こうから来てもらうというお考えはあるのでしょうか。

答)

選んだのは、前大臣からの引継ぎといいますか、前大臣のチョイスでございます。機会があれば、他のソブリン・ウェルス・ファンドの方々とも意見交換、あるいはお会いをしていろいろなお話をしてみたいと思っています。

問)

先般来、問題になっている虚偽の大量保有報告書ですが、現行法では削除の規定がないのですが、次の金商法改正にあたって、削除規定を盛り込むべきか検討するかどうかという大臣自身のお考えをお聞かせ願いますでしょうか。

答)

これは、今、検討チームで検討していただいておりまして、3回ぐらい議論をしたと聞いております。したがって、こちらの最終的な結論がそう遠くないうちに出るかと思いますので、おそらくその結論が出る前ぐらいには、私の方に相談があるかと思います。その報告を待って、私の決断はしていきたいと思います。

(以上)

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