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渡辺内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成20年7月1日(火)10時39分~10時59分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

おはようございます。

本日、足利銀行の全株式が預金保険機構から足利ホールディングスに譲渡され、これにより足利銀行に係る預金保険法に基づく特別危機管理が終了し、同行は通常の地域銀行としてスタートすることになります。

野村・ネクストグループ及び足利ホールディングスにおいては、足利銀行が栃木県を中心とする地域において金融仲介機能を持続的、継続的に発揮できるよう、株主として適切なガバナンスを確保されることを期待いたします。

金融庁としては、足利銀行が今後とも地域における金融仲介機能を十分に発揮するとともに、健全な業務運営が行われるよう、事業計画の実施状況のフォローアップや足利ホールディングス及び足利銀行に対する適切な監督を行ってまいります。

次に地域密着型金融の取組み状況について申し上げます。

金融庁においては、平成15年度より地域密着型金融の取組みを推進してきているところであります。本日、平成19年度における取組み状況について公表いたします。具体的内容は事務方にお問い合わせいただきたいのですが、私より2点申し上げます。

まず、19年度の特徴として、昨今の原材料価格の高騰や建築基準法の改正等を背景に中小企業を取り巻く環境が大変厳しくなっております。一時的に資金繰りが悪化した中小企業を対象に専用の融資商品を開発して資金供給を行う等、時宜を得た積極的な取組みが見られるところであります。各金融機関におかれては、本日公表する地域密着型金融の取組みの中で掲載された事例も参考に、中小企業金融の円滑化に対する一層の取組みに努めていただきたいと考えております。

他方、こうした短期の資金供給に加えて、資本性の資金供給という長期のお金も考えられると思います。負債に対して資本の規模が相対的に小さいというのは、日本の法人企業の構造的な特徴であります。中小企業においては、この構造問題が一層顕著に出ております。こうした過剰債務構造、過小資本構造というのは、インフレ時代には良かったのでありますが、デフレ時代の売上げが伸びない、さらには最近のようにコストアップ要因が目白押しという中では、非常に良くない結果をもたらすわけであります。このような過剰債務構造に対応して、金融機関が資本性の資金を供給するという形でリスクをとり、これに応じたリターンが得られることになれば、中小企業だけでなく金融機関にとっても収益性の向上に資するわけであります。

社会・経済情勢が大きく変化する中にあって、金融機関も大胆に発想を転換し、創意工夫を凝らし、利用者ニーズを的確にくみとった質の高い金融サービスの提供をしていただきたいと思います。こういう大激動のときにあっては、攻めの姿勢に転換することが大事であります。

私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

最初に、既に発表になっておりますが、金融庁の幹部人事についてお伺いします。大臣はかねがね、「私には人事権限がない」ということをおっしゃっておりますので、大臣のお立場から、今回の幹部人事についての評価と、改めて新事務年度についての金融庁としての課題についてお聞かせ願いますか。

答)

金融担当大臣と同時に公務員制度改革担当大臣を仰せつかっております。新しい公務のあり方について先の国会で国家公務員制度改革基本法を成立させていただきました。この基本法のいくつかの柱の中の一つに、日本型回転ドアの人材流動化、並びに定年まで仕事のできる公務員制度を作っていく、去年の改正でございますが、能力実績主義に基づいて年功序列を止める、こうした新しい公務員制度改革の方向性をよく考えて人事をやるべきである、と佐藤長官には申し上げてまいりました。年功序列の成れの果てである肩たたき、勧奨退職というのはできるだけ避けるべきである、とも申し上げたところでございます。一方、年功序列が続いておりますと、どうしても勧奨をやりませんと人事が停滞してしまうという問題もございます。こうした過渡期の中にあっての人事を行ったわけでございます。

また、金融庁がスタートして10年の中で反省すべき点もいくつかございます。その一つは、調査の機能が非常に弱いということであります。これは、企画・立案に当たってのアキレス腱のようなものでございまして、こうした調査機能を強化すると同時に企画・立案に調査部門の成果を反映させる、あるいは現場のいろいろな状況を企画・立案に反映させることも考えるべきである、ということを申し上げたわけでございます。そうしたことを考えて佐藤長官の方が官邸と相談し固めた人事だと心得ております。

問)

恐縮ですが、改めて今事務年度、金融庁として注力すべき点も併せてお願いします。

答)

前回も申し上げたところでございますが、「市場強化プラン」を実行段階において着実に実現していくことが大事であります。また、サブプライム問題以降、世界の資本市場の動揺が終息しているとは到底言えない状況にございますので、さらに警戒水準を高くしてこの問題に取り組んでいく必要がございます。

先ほども申し上げましたように、世界的に非常にピンチな状況の中で、日本は唯一攻めの姿勢に転換できるポテンシャル(潜在能力)を持った国でありますから、金融機関にはリスクをとって前向きなビジネス展開をしていただきたいと考えます。金融庁としても、こうした攻めの姿勢は大いに応援していきたいと考えております。

問)

昨日まとまりました日本年金機構についての最終報告についてですけれども、改めてになりますけれども、評価と、今後どのような形で活かしていくのかをお聞かせ願いますか。

答)

我々としてはいろいろな角度からこの問題を考えてまいりました。社会保険庁という組織が国民の大不信をかってしまいました。この組織の不信が年金制度に対する不信につながっていってしまったという現実を考えれば、この組織を解体し、日本年金機構として再生をしていくことが喫緊の課題であると考えました。日本年金機構に求められることは、例えば組織ガバナンスの確立であり、内部統制や監査体制(コンプライアンス体制)の確立であります。また、そうしたことはITガバナンス、ITシステムのバージョンアップとも密接な関わりがございます。こうしたことを新組織において適格に確実に行っていただくことが大事であります。また、「三層構造」といわれる、公務員制度の最も悪い見本となってしまった組織を一掃することによって、新しい民間流のガバナンスの効いた新体制を作ることが必要であります。職員のモチベーションを高める人事や給与体系、健全な労使関係の構築が必要であります。こうしたことを通じて国民のサービスの向上を図っていくことが大事であります。外部委託についても相当突っ込んだ議論をしていただきました。また、職員採用についての基本的な考え方も大激論の末にまとめていただきました。外部人材の積極採用ということも冒頭申し上げた組織ガバナンスの強化にとってはなくてはならないことでございます。一方において、年金記録の問題が出てまいりまして、この問題と日本年金機構のあり方について相当注意を払わなければいけないということで、二ヶ月間この「年金業務・組織再生会議」の結論を出していただくのを延ばした経緯がございます。そういった苦心の作としておまとめをいただいたものと思います。

問)

新銀行東京ですけれども、昨日の株主総会で大塚元副知事が新設される会長に就任することをはじめ、事実上、都による経営の監視・監督体制が一層強まることになることが承認されましたけれども、改めまして新銀行東京について、今回の人事も含め評価と金融庁としての今後の対応についてお聞かせ下さい。

答)

個別の金融機関の経営についてはいちいちコメントはいたしませんが、一般的に大株主が株主として適切な経営に対するガバナンスを発揮していただくことは極めて大事なことであります。新銀行東京の大株主として東京都があるわけでございますから、まさにそういった立場からの適切なガバナンスを期待するところでございます。

問)

長い間、足利銀行問題に取り組んでこられたわけですけれども、民営化という節目の日を迎えて、改めて率直な感想をお聞かせ下さい。

答)

4年半かかったわけでありますが、この間は言ってみれば、国有化銀行として手足を縛られて泳いでいるような状態だったと思います。新しく今日からスタートし縛られた手足が解き放たれるわけでありますから、これからはまさに、地域金融機関として最先端のビジネスモデルを発揮していただくことも可能になったわけであります。足利銀行は再生をしたわけでありますから、国有化銀行時代の不自由さから脱却し積極果敢にリスクをとる経営を是非やっていただきたいと思います。当然のことながら、旧足利銀行時代のリスク管理の大失敗ということはいやというほど経験をしているでありましょうから、今の時代にあった新しい金融サービス、先ほど私が申し上げたことも一つの例でございますが、そういった取組みをぜひ行っていただきたいと思います。

問)

今の足利銀行の件ですが、先ほど地域金融に関して、原油価格や原材料の高騰で中小企業はかなり疲弊しているという状況があるとご指摘されたわけですけれども、そういう中で各銀行いろいろ苦労されて経営されていると思うのですけれども、ここで足利銀行が非常にきれいな体になって財務態勢も強化されて再スタートを切るということですけれども、地域金融機関に与える影響という視点でどのように見ていらっしゃるのでしょうか。

答)

足利銀行が北関東、就中、栃木県においては大変なシェアを持って金融仲介を行ってきたわけであります。そのシェアがこの4年半の間に極端に変動するということもなかったと思います。一方、金融の大競争時代を迎えて、それぞれの地域金融機関がまさに生き残りをかけて経営戦略の再構築に努めておられると思います。その中で合従連衡があったり、あるいはいろいろな先進的な取組みが行われたり、今日公表いたします事例などはまさにそういった最先端の事例集も含まれておりますけれども、そういった様々な創意工夫が行われている中での足利銀行の再生、スタートであります。競争が促進されることによって、さらに地域の金融サービスを享受できる、そういう立場が強化されることが望ましいと思います。

(以上)

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