英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

茂木内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成20年 9月 2日(火)10時48分~11時14分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

おはようございます。

今日の閣議、それから閣僚懇(閣僚懇談会)の話題につきまして、詳細は官房長官の方からまとめてご発言があると思いますが、総理からは「国政に停滞をかけない、新しい体制が必要と判断して、今回の決断をした。皆さんにご了解をいただきたい」というご発言がございました。どういった状況におきましても、行政に遅滞は許されないわけでありまして、最後まで閣僚としてしっかり仕事を続けるということを全閣僚で確認をさせていただきました。

閣議におきましては、私の方から先週米国に出張いたしましたので、その模様を報告させていただきまきました。

8月27日から2泊4日の日程で米国に出張しまして、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長、コックスSEC(証券取引委員会)委員長、ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁、ストロス=カーンIMF(国際通貨基金)専務理事等と面談いたしました。面談におきましては、米国のサブプライム・ローン問題に端を発する金融市場の混乱が世界的な局面を迎える中で、この問題はグローバルな金融市場を通じて各国の実体経済に影響を及ぼす深刻な問題であるという認識を共有した上で、両国金融当局の間でさらに緊密な協力関係を構築していくことが重要であるとの共通認識に至りました。また、米国や欧州の金融市場の混乱と今後の対応が、我が国の金融機関であったり金融システム全体にどのような影響を及ぼしうるかについても、様々な角度から率直な議論を行うことができました。

さらに、日本の金融・資本市場の国際競争力を強化する観点から、米国金融当局者のみならず、米国の市場関係者等とも直接、意見交換を行ってまいりました。

以上につきまして、報告を申し上げた次第でありますが、金融担当大臣を拝命して、早速米国の金融当局者や市場関係のトップと会談を実施いたしましたが、現下の厳しい情勢の中で率直な意見交換ができたことは、非常に有意義だったと、このように考えています。

それから、閣議におきまして、谷垣国土交通大臣から発言がございまして、「地域の金融に関連しまして、地域の建設業、不動産業等関連業界については経営力の強化等の施策に取り組むこととしておりますが、現在、金融機関からの円滑な資金調達が特に重要となっており、金融担当大臣、経済産業大臣をはじめ関係閣僚におかれましても、特別のご配慮をお願いいたします」というご発言がございましたので、閣僚懇におきまして、私の方からは、「金融庁といたしましても、幹部職員を8月に一斉に地方出張へ出し、ヒアリングを通じて、中小企業金融のきめ細かい実態把握と円滑化に向けた監視の強化に努めているところであります。また、本日9月2日、『安心実現のための緊急総合対策』を受けて、金融機関に対し中小・零細企業に対する金融円滑化の要請を行う予定であります。金融庁といたしましても、引き続き、中小企業金融の円滑化に向けて全力で努力をしていく所存であり、実体経済面の施策対応を担当する中小企業庁をはじめ、関係省庁と連携・情報交換も強化していきたいと考えているので、引き続きよろしくお願いしたい」という発言をさせていただきました。

これに関連しまして若干詳しく申し上げますと、先月から申し上げておりますように、地方出張によります中小企業金融のヒアリングもある程度一巡しまして、そろそろ、ヒアリングの状況を受けての対策を打ち出さなければならないと考えております。

まず、ヒアリングの状況でありますが、全国11の全ての財務局管内の15道府県に幹部を派遣いたしました。合計で中小企業・関係団体等51社・団体、それから、地域金融機関16機関から、中小企業の業況・資金繰り、更には金融機関の融資姿勢等についてヒアリングを実施いたしました。これと並行しまして、全都道府県の商工会議所、中小企業の経営指導員約450人等へのアンケート調査も実施をしたところであります。これは集計しておりますので、9月のしかるべきタイミングでこの集計結果については発表できるのではないかと思っておりますが、この地方派遣によりますヒアリング等の現段階での状況を聞いたところ、かいつまんで私の方から申し上げますと、まず一つに、中小企業等から、業種によりバラツキがあるものの、実体経済面の厳しさを指摘する声が多かった。二つ目に、ヒアリングの範囲内では、金融機関の審査が慎重になっているとの声も示されたが、特に地域金融機関については、地域の中小企業向け融資に真剣に取り組んでいる、との声も示され、逆にいいますと、大手銀行等で若干ドライになっている、という声も出ていたようであります。そして三点目といたしまして、信用保証協会の保証、政府系金融機関に関する意見・要望も多かった、とこのように報告を受けています。

こういったことを受けての中小企業金融の円滑化に向けた今後の対応についてでありますが、まずは、中小企業の業況は極めて厳しい状況にありまして、適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が求められているわけであります。こうした状況の下、民間金融機関は、借手企業の経営実態や特性に応じたリスクテイクとリスク管理をきめ細かく行い、中小企業に対する円滑な資金供給の確保と自らの財務の健全性の維持とが、好循環をもって、つまりこの円滑な資金供給の確保と自分の財務諸表の健全化、これが好循環をもって実現していく業況を目指していくことが重要であります。地域金融機関は、特に地域密着型金融の一層の推進等を通じて、地域における適切かつ積極的な金融仲介機能を発揮することが求められております。また、主要行については、先ほども申し上げたように若干ドライな対応が見えるという報告もきておりまして、主要行につきましても、借手企業の経営実態や特性を踏まえたきめ細かい融資判断を行い、それを顧客に対して十分に説明することが必要であります。

このような基本的な考え方に基づきまして、今後いくつかの具体的な対策を実施してまいりたいと思っております。

まず一つは、実態把握の問題でありますが、今回も現地でのヒアリング、アンケート調査を行ってまいりましたが、まだまだ足下の経済の状態は厳しいところにありまして、この商工会議所等へのアンケート調査につきましては、これからも定期的に実施していきたいと思っております。

それから二つ目に、金融機関等への働きかけでありますが、先ほどの閣僚懇でも発言をさせていただいている件でありますが、金融機関に対して、中小・零細企業に対する金融の円滑化を要請する文書を本日発出する予定であります。また、民間金融機関に対しましては、信用保証協会等と連携して中小企業に対する円滑な資金供給に努めるよう促したいと思います。

それから三点目でありますが、こういった実態を踏まえた適切な検査・監督行政の推進ということでありまして、今後の検査運営にあたりましては、全ての検査官、金融機関、中小企業経営者等に対しまして、いくつかの点をしっかりと周知し実践を図っていきたいと、こんなふうに考えておりまして、その一つは、検査の基本方針としまして、中小企業の実態を踏まえた円滑かつ積極的な金融仲介機能が発揮できる態勢が構築されているかを中心に検証していくとうことであります。そして、金融検査を質的に向上させ、重要な問題に焦点をあてた検査、つまり、重箱の隅をつつくようなことに終始しない、重要な問題に焦点を当てた、金融機関の自主的な経営改善につながる「納得感」の高い検査を行う。そして、金融機関の規模、特性等に配慮して検査負担の軽減を図っていきたい。検査に当たっては、事務負担等々が多大であるということも言われておりまして、ザックリ申し上げると、今提出してもらう書類等をできればボリューム的に三分の二くらいまでに圧縮したい、簡素化したいと、こんなふうに考えております。それから、中小企業の特性を十分に踏まえた評価を金融機関に促す「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」でありますが、この趣旨の周知・広報を更に徹底していきたいと、こんなふうに思っておりまして、こういったことを検査官はもちろんでありますが、金融機関、中小企業経営者にもきちんと周知をしていく、こういう努力を払っていきたいと思っております。

今申し上げた詳細につきましては、事務当局にて問い合わせをいただければと思っておりますが、書類等を整理しまして、説明もさせていただきたいと、こんなふうに思っているところであります。

私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

今の大臣の話にもございましたけれども、昨晩、福田首相が辞任を表明されて、安倍前首相に続いて二度目の政権の投げ出しということで、国民から無責任だとの批判の声も出ておりますけれど、福田内閣の閣僚として、今回の辞任についてどう受け止めておられるのか、特に、大臣は一か月前の内閣改造で就任されたばかりですから、その点も含めまして、ご所見をお願いします。

答)

今回の辞任の総理の決断は、どなたにも相談されずに決断されたということで、突然のことでありまして、率直にいいまして、驚いているところであります。ただ、私が担当します、経済・金融の分野は、まさに日々動いている分野でありますし、中小企業金融と、本当に今、正念場でありますから、行政が遅滞なく運営できるように、このような思いで仕事に取り組んでいきたいとこういうことです。

問)

こういった政治の混迷が、現状日本経済が景気後退局面に陥っている中で、悪影響を与えるのではないかという声も非常に出ているわけでありますけれども、その点についてはいかがですか。

答)

そうならないように努めていきたいと思いますし、今も金融庁として今後中小企業面でどのようなことをやっていくか発表もさせていただきましたが、着実にそういったことを進めさせていただいて、そういったご懸念が出ないように最大限もっていきたいと思っています。

問)

もう一点、訪米に絡んでコックス委員長と会談なされて、いわゆる国際会計基準の関係で話合いがあったと思うのですが、昨日日本公認会計士協会が、日本も上場企業の連結決算については、国際会計基準を採用すべきではないかというふうな意見も出しているわけですが、今のところ政府はコンバージェンス(収斂(しゅうれん))で対応していくお考えですけれども、その意見等についてはどのようにお考えでしょうか。

答)

アメリカについても、コックス委員長とこの問題について率直な意見交換をしてきましたが、日本と立場が基本的に同じだと、こんなふうに考えておりまして、会計基準につきましては、EUによる同等性の評価の期限が本年中ということでありますが、この期限を目前といたしまして、コンバージェンスが最優先の課題であって、その後も東京合意の下、2011年に向けてコンバージェンスを進めていくことになると、こういった意味では、若干、カナダであったり、韓国であったり、また、中国と日本、アメリカの置かれている位置というのは違うのかなと思っておりますが、そういった意味で、この国際会計基準自体について申し上げますと、我が国の国際会計基準の使用の現状については、国際会計基準採用国において開示をしている外国企業によります使用は既に認めているわけであります。それから、先般の金融商品取引法の改正に伴いまして創設されます、特定投資家、プロ向け市場では、国際会計基準を念頭に置きまして、取引上の判断で使用可能な会計基準が定められると、こういうことにされているわけであります。

これらに加えまして、日本企業に対して一般的に国際会計基準の使用を認めるかにつきましては、いくつかの論点をこれから詰めていかなければならない、また、国内の関係者の間でも幅広く議論していく必要があると、そういうことで、私の方からもコックス委員長に提起をさせていただいたのですが、一つは、国際会計基準に基づきます、財務報告の執行の適切性の問題です。それから、国際会計基準委員会財団のガバナンスの改革の状況でありまして、この点につきましては、コックス委員長も「ご提起していただいてありがとう」という話をされておりました。それから、三点目が投資家や監査人等に対する教育や研修の状況がどうなっているのか、また、今後どうなっていくのか、さらに、諸外国やプロ向け市場における国際会計基準の運用状況がどうなのか、こういったいくつかの点につきまして、更に議論を深めていく必要があると、こんなふうに考えておりまして、今後、コックス委員長とも先日相当突っ込んだ議論もしてまいりましたし、我が国と似たような状況に置かれているアメリカとも緊密に連携、協力関係を維持・強化しつつ、議論を進めてまいりたいと、こんなふうに思っているところであります。アメリカにつきましても、報道のされ方によりますが、2009年から110社についてその国際会計基準の適用を容認する、それから2011年以降順次義務化をしていくことについて2011年段階で判断ということでありますから、考え方としてはそれほど日本と変わっていないのではないかと思っておりまして、その間に相当な議論も進めていきたいと思いますし、また、今申し上げたような四つの課題を中心にして、こういったこともきちんと詰めていくということが重要なことだと思っております。

問)

中小企業貸出について2点お伺いしたいのですが、まず大臣は今回のアンケート調査等やヒアリングを通じて、メガバンクは中小・零細企業に対する融資がドライであるとお思いであるのか、2点目は銀行に対して文書、通達を発出するとおっしゃいましたが、どの程度の効果・強制力を持つ文書なのか、送る前と送った後でどのように状況が変わるのか、2点お聞かせください。

答)

前者は、私も慎重に申し上げたつもりですが、地域の金融機関は地域の中小企業向け融資に真剣に取り組んでいるとの声が示された、メガバンクについては、ドライだという意見もあったと。誤解を与えると良くないのですが、できるだけ皆さんに率直な意見も紹介したほうが良いとの理由で、少ない意見でもそういう意見もあったと、ただ少ない意見でもそういう意見にも耳を傾けてきちんと対策を取っていくということでありまして、先ほども申し上げたように「借手企業の経営実態や特性を踏まえたきめ細かい融資判断を行い、それを顧客に対して十分に説明を行うことが必要である」と考えております。

今回の要請(文書の発出)は強制力を持っているものではありません。ただ、単に文書の要請だけではなくて、例えば、今後の検査の基本的な考え方や併せ技のなかで状況が改善するように持っていきたいと考えております。なかなか現下の状況、例えば、借り手からしても原油や原材料高で営業そのものが厳しいという状況があるなかで、単に中小企業の努力だけでもうまくいかない、民間の金融機関の努力だけでもうまくいかない、また政府系金融機関の努力だけでもうまくいかないということで、しっかりと連携し全体のコーディネートをしていくことも政府の重要な仕事だと思っております。

問)

今日、「(私の)しごと館」の視察が取止めになった理由を教えてください。また、雇用・能力開発機構と「(私の)しごと館」の見直しについて、これまで大臣は解体、廃止という方向を示されていますが、総理が代わることで見直し自体に与える影響、スケジュールに与える影響があるのか教えてください。

答)

どういう形で皆さんに伝えられたかわかりませんが、今日予定していた「(私の)しごと館」の視察を延期しました。昨日から今日の状況を考えた場合、金融庁に残り全体の指揮・監督を行うことが重要と考えまして、近い将来視察をするかもしれませんが、昨日から今日の状況を考えた場合に、大臣としては東京にとどまるべきだという判断をして延期をしました。

雇用・能力開発機構について申し上げますと、全体を廃止するという発言をしたことはございません。それぞれの機能を解体した上で本当に必要な機能かどうか、またそれを機構で担う必要があるのかどうか、一つ一つきめ細かく検証していきたいと思っており、廃止すべき施設や機能も出てくると思いますし、地方や民間に移管する、ほかの団体に移管する機能も出てくると思います。

問)

総理が代わることでお考えに影響はありますか。

答)

そのようには考えておりません。また、そうあってはいけないと思います。

問)

国民の側からすると、今回の退陣のやり方には批判やわかりにくい点があると思いますが、大臣のご所見をお聞かせください。

答)

昨日以来、街角のインタビュー等をテレビ、ニュース、新聞の報道等で見て読んでいますが、様々な意見があることをしっかり踏まえて今後いかしていきたいと思います。

問)

総裁選があるかと思いますが、今現在ふさわしい人がいるのかどうかお考えがあるのか。念のため伺いますが、ご自身総裁選に出る予定はありますか。

答)

今は福田内閣の閣僚という立場です。冒頭申し上げたように、金融・経済が日々動いており、行政の遅滞があってはならず、今は与えられた職務を全うすることしか考えておりません。

問)

中小企業の取組みも含めた先の総合経済対策を実行するには次の臨時国会で補正予算を成立させることが必要になってくるわけですが、解散総選挙の時期が取りざたされる中で、まずは補正予算を成立させることが最重要だとお考えですか。

答)

現下の経済情勢を考えたときに、「安心実現のための緊急総合対策」を速やかに実行していくことが最重要だと思っております。

問)

早期に解散に踏み切るのではないかという見方もありますが、やはり補正予算を通すことがまずは優先されるべきということでしょうか。

答)

国会の状況ですから、まさにこれからどうなるかということで、今の状況でどうこう言うのは難しいですが、何が優先かいうと、「安心実現のための緊急総合対策」を速やかに実行させていくことが最重要だと思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る