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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成26年6月6日(金)9時12分~9時31分)

【質疑応答】

問)

法人税についてですが、自民・公明両党で昨日、法人税改革に当たっての基本認識をまとめました。その中では、世界で行われている課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという法人税の構造改革を行うとか、法人税改革は恒久減税には恒久財源を確保するとの方針で臨むといった文言が入っております。ただ一方で、当初案にありました法人減税については、単年度の税収上振れを財源にすることは現に慎むべきといった表現は、最終的にはなくなってしまいました。骨太方針の策定段階で、法人減税について、政府内の一部から出ています税収の上振れ分を財源に回すということについては、検討されるということもあるのでしょうか。

答)

与党税制協議会においてまとめられた法人税改革に当たっての基本認識と論点というのですが、2020年度のプライマリーバランスの黒字化との整合性を考えないといけないというのは、税制調査会におられる方は皆さん分かっておられます。恒久減税には恒久財源が必要という方針で臨むとされていますので、財政健全化と経済成長の両立を目指すということに関しましては、必要性が強く示されたものになっているのだと、あの文章を読めばそうなのだと思っています。文章が修正された背景について、そこのところはよく承知していませんが、少なくとも野田税制調査会長も、趣旨は変わっていないということを御説明されたのだと承知をしていますので、そういった意味では、特に私共の方から言うことはありません。言わずもがなのことを、役所の文章のようにしつこく何回もくどくど書いてある文章を、短く簡単にしたというぐらいに考えたらいいのではないでしょうか。

問)

ヨーロッパ中央銀行の金融緩和についてですが、ECBが昨日の政策理事会において、政策金利を引き下げるとともに中央銀行に民間の銀行が預金を預けた際に手数料を取るというマイナス金利の政策を導入しました。これについては日銀も過去に検討した経緯があるのですが、銀行のコストが増えてかえって悪影響が出るのではないかという見方もあります。これについて、今回のECBの金融緩和をどのように評価されるか、それから今後の日本経済にどのような影響を与えると見ていらっしゃるか、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

政策金利を0.25%から0.1%下げて0.15%にされるということを決めたことと、いわゆる中央銀行に対する預金金利、日本で言う日銀の準備預金の超過準備分の金利の話ですけれども、そういったものを0.1%引き下げるというので、今までが0%だったものがマイナス0.1%になるということです。準備預金については今までどおりですけれども、いわゆるそれを超えた超過準備や、預金ファシリティが対象になっていますので、それに対して行うということです。ヨーロッパもデフレーションという、かつて日本が非常に悩まされたものに関する懸念が出てきましたので、あらかじめ手を打とうとしておられるようにも見えないこともないと思います。こちらが10年ぐらい悩みましたいろいろな問題について、今からヨーロッパ中央銀行においてもいろいろ努力をされるので、その効果がどう出てくるかというのは、正直、他国の金融政策についてあれこれ言う立場にありませんが、これが良い結果に出るか、悪い結果に出るか、少しそこのところはよく分かりません。日本にとってどういう影響が出るかというのはECBのその効果次第です。それなりの効果があって、法定準備金以上のものを預金してもマイナス金利だからということになり、いわゆるマネーサプライ、市中に出回るお金を増やす方向にうまく行けば、それはそれなりの成果があったということでしょうけれども、銀行からお金を借りようという需要が今ヨーロッパの中にあるかということとの関係ですから、一概にこれがどうかということは、今の段階ではよく分かりません。

問)

昨日の与党税制協議会では、財源の話はあるにせよ、方向性としては法人税に関しては引き下げる方向で一致したという認識でいます。税制改正大綱では見直すというところから一歩踏み込んで、引き下げという表現になっていくのだろうと思いますが、この件に関して大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

これはずっと最初から言ってきていると思いますけれども、いわゆる法人実効税率の引下げという話は大分前からよく財界の方が言っておられるのを、私は知らないわけではありませんし、国際的に見ても高いと仰いますけれども、ヨーロッパと比較しますと我々は課税対象範囲が狭いです。したがって、納税している法人が約30%、残りの約70%はそれなりの恩恵を被っておられますけれども、税金は全く納めておられないというのであれば、応益負担をいただきたいと。ヨーロッパの各国ではそうですので、そこで今いろいろな形で、いろいろな話が出てきています。応益負担として課税対象を広げるのは反対と、法人税だけ下げるという話を言っておられる方がいらっしゃるように見受けますが、日本としては、少なくとも2020年度にプライマリーバランスを黒字化しますということを目標にしています。今から6年間で黒字にするという話ですが、内閣府の中長期試算で、3.5%前後の経済成長を前提としても、なお2020年度のプライマリーバランスがマイナス12兆円ですので、これは法人税減税を幾らで行うのかによりますけれども、例えば仮に2兆円ぐらいのもので5年間となれば、マイナス14兆円です。そうすると14兆円の分は、プライマリーバランスの黒字化には12兆円足りない上に、さらにもう2兆円上乗せするという話でしょう、この話は。当然、代替財源が要りますと。その分は、法人税収の上振れでというのなら、税収には下振れもありますから、下振れした時は法人税を上げても良いのですねという話になりかねません。上振れというものは恒久的なものではありませんから、そういった意味では、法人税実効税率を引き下げましたら、2兆円の減収はずっと続きますので、どうしてもきちんとした恒久財源が要るという話なのだと思います。そこらのところが理解されていませんと、何となく法人税率という話ばかりが出ていますけれども、IMFの日本に対する勧告の内容を見ましても、課税ベースを拡大するということが書いてありますけれども、あのとおりやって良いですかと言いますと、それは勘弁してくださいと仰るのです。それは少し自分に都合の良い話ばかりではありませんかということになるのではないでしょうか。

問)

そういうふうに考える方がいる一方で、今、経済財政諮問会議でも民間議員は数年間で20%台というような話も出ていまして、やはり今後そういう方向に法人税というのは向かっていく可能性があるのかどうかというところについて、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

経済財政諮問会議の財界の委員の方々が、御自身できっと代替財源を見つけてこられるのではないでしょうか。そうしませんと、なかなか私共の知恵では代替財源に期待するほどの、5%に見合う代替財源を、その他から探してくるというのは、私達のところでは今なかなか知恵が出てきませんので、財界の方が探されるのではないでしょうか。

問)

GPIFについてお伺いしたいのですけれども、今朝の報道で総理が資産構成の見直しを前倒しして行うように指示したとの報道がありました。GPIFは、もともと早ければ年内にも見直しをするという方針だったのですが、こういった報道もありまして、8月や9月頃にも見直しが行われるのではないかと観測が出ています。大臣は、以前6月以降に動きが出ると御発言されていましたが、総理の指示について、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

6月3日の閣議の後に、厚生労働大臣から総理に対して、いわゆる財政検証の公表を受けてGPIFの基本ポートフォリオの見直しを実施させると報告した際に、総理から前倒して実施するように指示があったということは承知しています。ただ、見直しの時期については、GPIFがお決めになることだと思います。以前、三谷理事長が、年末までにポートフォリオを見直すという発言をされましたが、私としては、その時間よりは前倒して結論が得られるものなのではないのかなとは思っています。いずれにしましても、こうした動きというのは、年金財政の一番肝心なことは、これは儲かるとか儲からないという話で書いてありますけれども、それは少し違います。一番肝心なのは、年金を預けている人達の話です。その人達の年金の安全性はどうかと言えば、野田内閣の最後の半期は24年4月から9月までマイナス1.6兆円でしょう。ですからこれは大変だということになったのですが、それ以後、15カ月間ぐらいの間に24兆円の黒字になったわけです。24兆円の黒字と、1.6兆円の赤字という話では大変意味が違うのであって、そういった意味では、年金は大丈夫ですかという話はなくなったわけです。ですが、現実問題としては、24兆円も黒字になったら何が問題なのですかという話になるので、そういった意味では、一番肝心なのはそこです。ですから、そういった意味では、きちんとコミッティみたいなものを作ってやっておられるわけですので、そういったところを今後やっていかれるのだと思います。どういう形にされるのか知りませんけれども、その内容は今からいろいろ検討されていかれるのだと思います。基本は安心な基金の運用で、それが大事なのですが、GPIFの運用資産は約130兆円あり、公的年金のファンドとしては世界最大です。それが仮に10%動いただけで13兆円、十何兆も動いたらそれは、日本で運営されているファンドとは運用資産の桁が違います。そういった意味では、その動きを皆さん関心を持って見ていらっしゃるというのは分からないことはないですけれども、重ねて言いますが、それは金儲けの話ではなく、年金基金がきちんとしたもので、今後とも安心なものにしておくための1つの手段であって、目的と手段が混線しておられると、少し話は込み入ると思います。

問)

先ほどの税収の上振れ、下振れという点で、今後、2020年ぐらいまで見通した時に、経済の強さというのをどれくらいで見れば良いのでしょうか。今までに内閣府が出している見通しは、保守的に見た方が良いのか、それとも今まで出しているのは保守的過ぎたのか、どういうふうに見ていけば良いのでしょうか。

答)

景気の悪い時に見れば、皆さん大変堅く見積もりますし、うまくいき始めますと大変甘めになります。人間の心理としてそうなりますので、今からどうなるかということは、うまく言えませんけれども、今後3%以上の名目成長率で見積もってまだ12兆円の赤字です。その意味では、これ以上もっと成長するか、これ以上成長するというほど強気の見通しがあるかと言いますと、国内で見ますと日本の場合は、少なくとも外需への依存は、GDPの中に占める比率は約15%で、国内の需要がGDPの85%ぐらいを賄っていますので、国内需要が堅調であれば3%から更に伸びて上がってくる可能性はあります。しかし、海外で何か起きた時には外需が減ってきますし、前回のクォーターも外需はマイナスでしたから、そういった意味では、そのあたりの要因も見えないところがあります。少し今の段階で、税収の上振れがもっと出るのではないかという強気な読みをするほど、そんな情勢を言えるほど、我々を取り巻いている環境は甘くないと思います。

(以上)

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