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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成26年7月4日(金)11時36分~12時05分)

【冒頭発言】

財務省及び金融庁幹部の人事異動につきまして、本日の閣議で内閣の承認を得ております。財務省、本省局長クラス以上の幹部人事については、まず木下事務次官にはこの度勇退してもらい、後任には香川主計局長を就任させます。香川主計局長の後任には田中主税局長を、田中主税局長の後任には佐藤大臣官房長を、佐藤大臣官房長の後任には福田主計局次長をそれぞれ就任させます。次に、古澤財務官には、この度勇退してもらい、後任には山崎国際局長を就任させます。山崎国際局長の後任には浅川大臣官房総括審議官を、浅川大臣官房総括審議官の後任には迫田関東信越国税局長をそれぞれ就任させます。また、稲垣国税庁長官にも勇退してもらい、後任には林理財局長を就任させます。林理財局長の後任には中原財務総合政策研究所長を就任させます。次に府省間人事交流については、これまでもやってきたところですが、今般の人事で新たな交流を行い、さらにしっかりと取り組むこととしております。新たに行う人事交流の主なものとしては、今政府が一体となって社会保障改革を推進する観点から、厚生労働省での勤務経験を有し、主計局において厚生労働予算を担当したことがある谷内理財局総務課長を厚生労働省審議官として転籍させます。また、経済官庁同士の人事交流を深める観点から、経済産業省より三田審議官を財務省副財務官として受け入れるとともに、財務省から黒澤IMF審議役を経済産業省の審議官として出向させます。この他、課長クラスでも、主計局と経済産業省の経済産業政策局との間で人事交流を行います。また、女性職員の幹部登用についてですが、今般の人事で広島国税局長の小部春美を、TPP交渉等を担当する関税局担当審議官に就任させます。財務省本省の原局審議官への女性職員の登用は今回が初めてです。また、内閣府参事官の木村秀美を、東京国税局課税第一部長に就任させます。

次に、今回の金融庁の局長クラス以上の幹部人事については、次の通りです。まず、畑中長官には勇退をしてもらい、後任には細溝監督局長を就任させます。細溝監督局長の後任は森検査局長を、森検査局長の後任には遠藤総務企画局審議官をそれぞれ就任させます。桑原総務企画局長にも勇退をしていただき、後任には池田監督局審議官を就任させます。河野国際政策統括官、三井総括審議官、大森証券取引等監視委員会事務局長は留任させます。金融庁の府省間人事交流につきましては、金融庁は審議官、次長級に従来から3名の幹部職員を他府省から受け入れておりまして、これを継続いたします。また、新たな幹部の人事登用につきましては、能力・実績を踏まえ、監督局総務課長の西田直樹を財務局の採用職員としては初めて監督局審議官に登用しております。

【質疑応答】

問)

今発表された人事に関してですが、財務省・金融庁の人事の狙い、とりわけ田中主税局長を主計局長に、主税局長から主計局長という人事というのはかなり異例かと思うのですけれども、この辺りを含めた今回の人事の狙いについて御説明いただけますでしょうか。

答)

本内閣の最重要課題は、経済再生と財政の健全化の両立に加えて、TPPの交渉からアジア諸国との金融協力等々を推進など、グローバル化という名のもとにいろいろ進んでおります課題に対応できるような体制を整備するという観点から、当然のこととして適材適所ということで行わせていただいております。女性の登用、また省庁間の人事交流にも力を入れて発揮できるようにしたということです。田中主税局長の件につきましては、戦前はありますけれども、戦後は初めて。戦前は浜口雄幸内閣の時に主税局長から主計局長の例がある。昭和4年の時にあると思いますけれども、それ以来だということだと思います。狙いとしましては、当然のこととして我々としましては、法律で来年10月から消費税の2%引上げを考えていますから、我々としましては、万全の体制でいくという立場にありますので、少なくともそれに見合うだけの、附則第18条第3項にきちんと対応できるような予算を編成していく等々を考えて、この人事を行うことにしました。

問)

昨日、平成25年度決算見通しが公表されまして、税収がそれまでの想定を約1.6兆円上回るという結果になりました。政府内、とりわけ甘利大臣はアベノミクスの成果である税収増は、法人実効税率引下げの財源に充てるべきと主張されておりますけれども、この税収増と法人税の問題に対する大臣の御見解について改めてお伺いさせてください。

答)

財政法上、純剰余金については、そのうち2分の1を下らない金額を公債の償還に充てることとされています。これはまず法律で決まっています。残余の剰余金については、一般的には、翌年度の補正予算において歳入計上する場合、また、翌々年度の当初予算において歳入計上する場合など、いろいろな処理方法があると思いますが、具体的にそれをどうするかということにつきましては、財政需要等を踏まえて、今後、考えていくということになるのだと思います。法人税改革の話は、骨太の方針で示されたとおり、2020年度のプライマリーバランスの黒字化というものを目標にして、これとの整合性を確保していくということになっていますので、これは当然のこととして法人税というのは恒久減税ですから、恒久減税には恒久財源を確保していくということと思っております。また自民党税制調査会、また政府税制調査会においても、この点は同様の方向で議論を行っているはずですから、こうしたことも踏まえて、今から約6カ月、年末に向けて財政状況等々を見ながら恒久財源の確保について検討していくというのが我々の立場です。

問)

甘利大臣が昨日の講演で、数年かけて法人実効税率を20%台に引き下げていく、その数年というのは5年が基準だとおっしゃられました。茂木経済産業大臣は3年が望ましいということも言われているのですけれども、この数年の解釈について、大臣の御見解を改めてお伺いさせてください。

答)

数年は数年です。

問)

来週火曜日から軽減税率について、各団体にヒアリングが始まりますけれども、軽減税率については先日の政府税制調査会でも導入に関しては厳しい意見があり、また各団体からも厳しい声が上がっています。大臣御自身もイギリスでの経験を踏まえて、なかなか難しいのではないかというような話をされていますが、この軽減税率に関して、どういった議論がなされることを望んでいらっしゃるのでしょうか。また、導入については、導入しないという回答もあるのか、導入しないということも議論の内容としてはそれでいいのか、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

ヒアリングはもちろんのことですが、いろいろなところから御意見が多く出てくると思っていますので、それをよく拝聴しなければいけないところだと思っています。消費税10%への引上げの時にヒアリングを実施する理由は、基本的には3つぐらいあります。軽減税率を受けるためには、まずインボイスを作っていただきます。商店街の事業者の方ですとか、今まで消費税の課税対象外になっていた課税売上高一千万円以下の事業者の方も、軽減税率を受ける際にはインボイスを作っていただきますという手間は、おそらく膨大なものになるでしょう。整理する側はもちろんのこと、書く方も手間がかかります、それが1点です。また、どれとどれを軽減税率の対象として区分するのですか。イギリスで行ったのは、キャビアは駄目だけれどもイクラはいいとか、そういうのを全部、ジンはいいけれどもウイスキーは駄目とか、どこで区分けするのかということが、当時もめにもめてという記憶があります。区分の話になりますと、業界ごとに大変騒ぎになると思いますので、そういったもの等々はすごく大変な作業ということも頭に入れておいてもらいませんと、そんな簡単な話ではありません。加えて、これによって財源が幾らかという話を、その分の安くなった分の財源を出さなければいけませんから、その財源をどうするか等々は考えていただかなければいけないところだと思います。今からいろいろなところでヒアリングを始め、きちんと御意見を拝聴させていただいた上で、私共としては判断をしていかなければいけないことになるのだと思っています。

問)

人事についてですが、TPP交渉からアジアとの金融協力などグローバル化で対応できる体制整備と、これまでもしっかりした体制があったのだと思いますが、今、特に国際面の課題と新財務官・国際局長に期待されているところをまず改めてお伺いさせてください。

答)

アジアの中において、アメリカのテーパリングのためとか、いろいろな理由はありますけれども、極めて不安定なものになる確率があります。その時にそれに対応できるきちんとした財政的な支援や金融的な支援というのができる国というのは、これは間違いなくアジアの中、また世界の中において、おそらく日本。これは1997年のアジア通貨危機の時も、韓国、タイ、インドネシアでしたか、あの時の対応も、最終的には日本ということになりましたので、そういった意味では、今の状況において日本の持っておりますいろいろな対外純資産、また外貨等々を考えますと、直ちに通貨スワップ等々で対応できる力がある国は、やはり日本ということになるのだと思います。また、日本としていろいろな国の財政支援等々を行い、アジア全体で伸びていくということを考えませんと、日本だけが伸びると言いましても、人口の問題等を考えますと、伸びるアジアの国々で、今、金融で弊害が起きているなどの難しさがあるのでしたら、それを支援する等々、結果として日本の国益にもつながっていきますし、アジア全体の底上げにもなります。そういった意味では、この支援というのは、非常に大きな要素を持っていると私共は考えて、少なくとも今いろいろな形で人材を、世界銀行やIMFやADBといったところに、日本としては積極的に人を送ったり出したり、我々としては今後ともしていかざるを得ないと、私共はそう思っております。

問)

法人税と所得税のざっくりとした今後の見通しですけれども、今回もともと全体で43兆円を見込んでいたところが、47兆円と非常に大きく伸びました。しかし、法人税、所得税については、いろいろ一時的な要因がかなり大きかったということで、今後それがはげ落ちるとなりますと、消費税は大きく伸びるかと思うのですが、法人税については、例えば来年度については前年を下回るようなこともあり得るということなのでしょうか。

答)

それは分かりません。上振れ1.6兆円と言いますけれども、法人税分は0.4兆円です。その意味では、上振れ上振れという分の1.6兆円のうち法人税は4分の1ですから、我々から見ますと今後どういう形を企業がとられるかということは一番問題になります。また、以前から申し上げていますように、仮に、財源を見つけて法人実効税率を下げるということになった時に、企業にとってはその分だけ収益と言いますか、税金を払わなくてよくなる分だけ、結果として純利益がそこに残ることになります。それを何に使うのですか。24年度で法人の内部留保は約304兆円、また、今年に入ってからも銀行における預貯金や設備投資は間違いなく増え、機械受注も数字としては増えていますけれども、その増加の割には銀行貸し出しが増えていないということでしょう。ということは、間違いなく企業の内部でたまっている自分達の資金で行っているわけです。それが悪いわけではないですが、そういうことになっているということは、まだ企業としては銀行からお金を借りてまで設備投資をするというような景気の良さには回復していないということです。金利が6%、7%あった時でも、景気が良ければ銀行からお金を借りて、金利を6%払って、そして設備投資していたわけですから。今、金利はほとんどゼロでも設備投資をしないということは、景気はいま一つということですし、事実として現預金も増えているでしょう。1.6兆円のうち特殊要因が1兆円ぐらいありますから、我々から見ますと法人が今後どうされるかというのは、企業経営者のマインドの問題です。ですから、そこが銀行からお金を借りてまで設備投資をする気になるかどうかというのが、一番の我々が見ているところなのであって、少なくとも、今、個人を見ても企業を見ても現預金はまだ増えています。ですから、個人金融資産で約1,600兆円と言いますけれども、その中でその比率は、絶対額が伸びていますから、景気が良ければ消費してそれが減らなければおかしいです。増えているということは、新たにどんどんお金をためているわけです。パソコンを買い換えないで、そのまま古いパソコンを使用するというわけです。私共としては消費というものがどれだけ伸びるか、消費はGDPに占める比率が大きいので、設備投資より個人消費の方が大きいわけですから、そういったものがどれだけ増えていくか等々はこれからなのであって、景気の気の部分というのがどう動いてくるかというのは、私らがどうとかと言う筋の話ではなく、我々としてはその気の部分が冷えないようなことを考えるというのが基本的に正しいので、私共としてはそれが伸びるまでは財政でいろいろな面をできる範囲カバーするなり、税制でやるなり、いろいろなことを今後やらなければいけないことは確かです。

問)

金融庁の人事のことで、お聞かせください。細溝新長官を昇格させられた狙いと期待について、お伺いします。今は平時ですが、大臣は、かねてから金融行政の方向性として、金融育成庁になるべきではないかとおっしゃられていますが、そういう方向性の継続というのでしょうか、そういうのをこれからの金融庁に求めていくのかなどを踏まえてお聞かせください。

答)

金融の不祥事が続いたということもありましたから、金融庁は金融監督・検査等々があり、金融処分庁みたいな傾向があったと思いますし、デフレの時にそれを助長するようなことにもなったとは思いますが、今、間違いなく政府として景気を良くしていこうというためには、銀行貸出を増やさないと、銀行から市中にお金が出ていくマネーサプライの部分が、日本銀行がいくら銀行に金融緩和をしても、そのお金はその銀行にとどまって、日銀当座預金が増えるだけで、その当座預金から銀行外、個人とか企業とかにお金が出ていかないと、お金は回らないということになるので、そこを出やすくするようにしてやる方向にしないと景気が良くなることはないです。日銀が金融を緩和して、円だけ刷れば、いかにも景気が良くなると言っている学者が多くいましたけれども、良くならなかったのだから。要は、そこから先にお金がきちっと出るようにしていくためには、監督する金融庁として、大丈夫か大丈夫かと言っても問題が起きるし、これまで土地を担保にしてお金を貸すということに、かなり偏重してきた時代もありました。日本の場合は、土地神話というものがありましたから、土地を担保に取っておきさえすれば、だいたい土地の値段が上がっていくことによって、仮に取りっぱぐれても、その土地を売却処分してどうにか埋め合わせをするというような時代もありましたけれども、なかなかそんな時代ではありませんから、要は計画とか、やろうとしている事業の内容とか人とかを見て銀行もお金を貸せるように、きちんとした対応をすべきだという方向で金融庁も監督していかないと、何か担保が足りないではないかと、そこだけやっていても駄目ですよという話を去年1月に言いましたけれども、その方向で事を進めていきますので、細溝長官になりましても、その方向は変わらないというように御理解いただければと思います。

問)

税収についてですが、税収の上振れは昨年12月時点からの見積もりに比べれば確かに1.6兆円上振れたということですけれども、年間で見れば3兆円ほど前年度、24年度より増えているということで、これはアベノミクスの成果と見ることもできるかもしれません。一方で、今までが少し悪過ぎたので、ようやく元に戻ったと言いますか、むしろアベノミクスの成果というのは、これからではないかという見方もできるかもしれないですけれども、大臣は税収が3兆円回復したということについては、どういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。

答)

これはアベノミクスの成果と、担当している大臣としては言いたいところですけれども、なかなかそう簡単には、それだけですかと言われますと、それはいろいろ国際情勢等も手伝って、円安に振れてみたり、株でぼんと増えてきてみたり、いろいろな要素がありました。今後、やはり私達が考えておかなければいけないのは、やはりイラクの話で、WTI、ウェスト・テキサスの石油の価格というのは今104ドルまで上がっています。これがさらに上がっていくと言いますと、日本の場合はそこのところはかなり難しい課題で、そういったものが今後上がっていくというのであれば、これは石油の値段が上がるということで、WTIが上がればドバイも全部影響してきます。そういったものが出てくるとなりますと、日本の今原発の問題等で日本は石油やガスを買って、むりやり古い火力発電を稼働していますから、そういったようなものの値段が更に上がるということは、結論的には日本の電力料金がそれに影響してきます。その分をどうするかということ等々を考えていかなければいけないという問題も含んでいるのですが、少なくとも今の3兆円の部分というのが今後どうなっていくかというのは、これは正直、今の段階で上振れ分のどれだけがアベノミクスの効果で、その他、それ以外の外的要素があった等々いろいろ聞きますけれども、少なくとも外需という部分に関して言わせてもらいますと、外需は予想より下回りました。日本の中の財政出動等々によって内需が増え、外需のマイナスを内需でカバーしたという形になっていますので、そういったものは更に内需というものをきちんとやっていきませんと、なかなか難しいのかなという感じはします。もう少し詰めてみないと、今の段階でこれという答えがあるわけではありません。

(以上)

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