麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成27年5月22日(金)9時04分~9時34分)

【冒頭発言】

今日の閣議において平成26年末の対外資産負債残高の合計及び平成26年中の国際収支の状況について報告を行っております。平成26年末の対外純資産は、前年末比で約41兆円増加、過去最高の367兆円、各国の発表に基づきますと24年連続世界最大の純資産保有国となっております。対外負債残高については日本に住んでいない非居住者による日本の株等々の証券の取得が増加する一方、対外資産の残高については円の価格の減価の影響がありますし、加えて対外、日本から海外への直接投資、本邦投資家による証券投資が増加したということなどによるものと思われます。一方、平成26年中の国際収支については、これは公表済みですけれども、経常収支で約2.6兆円の黒字、これは第一次所得収支、投資収益などの第一次所得収支といわゆる特許権等、知的財産権等の使用料が過去最大の黒字、また訪日外国人旅行者が増加したことによって旅行収支が過去最少の赤字となったことなどによるものが大きなその背景です。旅行収支を見てみると、これまでの収支で一番多いときで赤字が約3兆円。今回約400億円の赤字ということになっていますから、大幅に訪日外国人旅行客が増えているということを意味しているのだと思っております。おもしろかったのは旅行者の国籍・地域別訪日外国人一人当たり旅行支出は中国約23万1,000円、オーストラリアは約22万8,000円なのですが、その内容が中国は宿泊費に約4万4,000円、オーストラリアは約9万3,000円、ただし中国は買い物代が約12万7,000円、オーストラリアは約3万9,000円という違いがあること。

【質疑応答】

問)

明日23日ですけれども、東京で日韓財務対話が開かれます。2年半ぶりの開催は今年2月に通貨スワップ協定の終了の発表と併せて発表されました。日韓関係というのは現状冷え込んでいるように思われますけれども、今回の対話ではどんな議論を期待されていますでしょうか。

答)

あれは2年半前の11月か、やったのは。あの時やって以来ですから、今いろいろ国際情勢、アジアの話等々いろいろありますので、二国間、多国間の話等々いろいろな話をするのに、こういった公式な話を二国間だけでやるということがありませんでしたけれども、G20とかADBとかいろいろな会合で韓国の財務大臣とはよく会いますので、特に取り立ててこれというような、これについて話をしようということを決めているわけではありません。

問)

冒頭の御発言でありました旅行収支なのですけれども、一概にいい悪いということは言えないと思うのですが、こういった中国、オーストラリア等からの旅行者の増大について大臣はどのように評価をされていますでしょうか。これは非常にいいことだという感じですか。

答)

いいことですよ。旅行、向こうから人が来る、こっちからも行く、いいことだと思いますね。新聞が書くようなグローバルなんて言葉は僕は信じないけれども、インターナショナルになっていることは確かですよ。

問)

2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設費、最近話題になっておりますが、それについて伺います。去年5月に示された基本設計案というのがありまして、それによりますとスタジアム本体とその周辺整備で合計1,625億円がかかるとされていますが、ここに来て文部科学省側が6月、来月見直しの案を公表したいというふうに言っています。その見直し案では建設費が現在の1,625億円という計画から大きくなるという可能性が高いようなのですが、財務当局としては幾らまでが許容範囲と考えているのか、教えてください。

答)

物を買うとき、買えるのはこれまでですと言ったら、値段はそれまでに上がるのですよ。先に値段ありきで決めるなんて愚かなことはしないのです。向こうから積み上げてきた値段をどれだけ安くできるかを考えるのがお金を払う人にとって当然のことじゃないのでしょうか。

問)

厳しく査定していく方針であるということは間違いないということですか。

答)

財務省はいつもそうですよ。

問)

先日下村大臣が東京都の舛添知事と会談しまして、東京都側に500億円の費用負担を要請しました。都民も当然競技場を利用することがあるのですが、一方で国立の競技場である、施設であるということもあります。財務省としては東京都に負担を求める妥当性というのは、妥当と考えているかどうかというのをお聞かせください。

答)

あの一部が東京都のものか誰の持ち物なのかによって大分意味合いは違ってくると思うけれども、少なくとも今の中で東京がオリンピックをとったら、そのときにはこの競技場を使う、そのときには50年前の建物でとてもではないと。貴賓室に屋根がないなんていうのは世界のメインスタジアムの中で日本だけというのははっきりしているから、そういった意味ではちゃんと建て替えなければいけないという話をしておられましたのが石原慎太郎さんで、そのときにとれたら東京都も応分の負担をという話を当時しておられたので、それで500億円という話はそこで出ていたのだと思いますが、その後、知事が2人代わっているからね。その後、それがちゃんと引き継がれたかどうか。

問)

猪瀬さんはその500億円の費用負担については反発しておりました。

答)

引き継いでいないということだよね。そういうことだろう。前の知事が約束したのを、聞かされていなかったらそれは聞いていないと言うさ。聞いていないから次の、今の舛添さんの方に同じような話が伝わっていないとするならば、それは全然聞いていませんという話になるのではないのかね。ただ、役人では聞いた人はいるけれどもね。その役人でちゃんと聞いていた人はいるのだろうけれども、それが伝えていない、引き継いでいないということであるならばゼロからということになるのでしょうね、そこのところは。

問)

若干早いのですけれども来週ドイツのドレスデンで開かれるG7の財務相・中銀総裁会議なのですけれども、議題として当然世界経済の不安要素だとか、そういったことが議論になるとは思うのですけれども、大臣として今世界経済について議題となるとすればどのようなことが主要テーマとなるでしょうか。また大臣からは、日本としてはどのようなことを意見として伝えていくか、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。

答)

日本ではニュースにならないけれども、G7の中でNATOのメンバーでないのは日本だけだからね。だから当然のこととしてウクライナの話というのは出てくる可能性はすごく大きいと思いますね。少なくともCNNとかBBCとかというのを見ていれば間違いなくギリシャ、ウクライナ、そして急激にイラクで勢力が伸びているISILの話なんかは議題に上ってくる確率が高いと思いますけれども、今これが議題、話題になるとこちらから思われる話であって、特にその話をするという話をしているわけではありません。あれは結構フリーにしゃべれる会議ですから、いろいろな問題が出てくると思いますよ。

問)

大臣としては日本の現状だとかについて、どのような話を。

答)

日本の状態としては、我々のやってきた経済の再生ということに関しては2四半期連続でプラスのQEがちゃんと出ていますけれども、そういったものを見て、我々はちゃんと言ったようにやってきた、発表したときにPBのバランスで2015年は半分、2020年チャラにしますと言ったときに信じたG8のメンバーはいませんから。しかし、日本はきちんと出しましたよと。ちゃんと達成しましたよと。半分は。今年の2015年で。従って2020年も同じ方向で事を進めていきますから、2020年はチャラという方向までやっていきますということをきちんと言わないと、何となく日本の新聞を訳して読んでいる人たちは間違えてしまうものね。いかにも達成しそうもないようなことが書いてあるから。いや、ちゃんと達成しますよと。達成しないと書いてあったけれども、2015年達成したじゃないですかと。うちはちゃんと言ったことはやりますと。だから2020年ちゃんとやりますということによって市場、いわゆるマーケットというところにきちんとしたメッセージが伝わるということになったらいいなという感じがしますね。

問)

マーケットについてはあまり大臣はコメントされないということを聞いているのですが、昨年11月に円安が若干進んだ際にややペースが速いというふうにおっしゃっています。今週に入ってややドル高円安、2カ月ぶりの水準になっておりますけれども、11月と同じような、やや速いという御認識はお持ちでしょうか。

答)

マーケットとか為替とかそういったようなことに財務大臣がコメントすることはありません。マーケットについてコメントしないというルールになっているのだから。世界中の財務大臣でコメントしている人なんていませんから。そういったことはコメントすることはありません。それが答えです。

問)

昨日安倍総理大臣がアジアへの支援、良質なインフラ投資を拡充するという構想を発表されて、5年間で1,100億ドル、日本円に換算で13兆円という巨額の資金をアジアの良質なインフラ投資を促進するために投じていくという発表をされました。JICA、ADB、そしてJBICを使っていくということですけれども、こうした日本の取り組みが開発途上国の方から見てどういうふうに、支持されるのかどうか、やはり膨大なインフラ需要の中で、質よりもどちらかというととにかく量をと求める声も強いというふうに聞きますけれども、そういった日本の良質なインフラ投資を促進するという哲学が途上国に理解されるのかどうか、その辺の大臣の見通しと、やはりこのタイミングでこういう構想が出てくるということは、中国が主導するアジアインフラ投資銀行への対抗策ではないのかというような見方も出てくると思うのですけれども、こうした見方について大臣はどのようにお考えか、お答えいただけますでしょうか。

答)

今の話は2つに分けなければいけないのでしょうけれども、1つはアジアの中においてインフラに対する需要が非常に高いのはこの数年間はっきりしています。アジア開発銀行とかいろいろなところでそういった需要に応えるために検討を進めていく中で需要はどんどん上がっていると。そこで日本としてはこれまで、融資量を増やそうというアジア開発銀行を応援したり、いろいろなことをしてきているのですが、今それにも増してさらに需要が高まっているのに対して我々としてはまずお金の絶対額というのが要ることは確かなので、少なくとも日本の経済協力のツールとして量的な拡大、プラスしてスピードアップをしなければいけないと。いちいちマニラに持ってきてと非常に手間がかかるので、現地で判断ができるように機構改革をする、そのために人も増やす、判断ができる人材も増やすというようなことをアジア開発銀行とこの1年半ぐらいやってきていますので、そのとおりの方向でしますということはこの間ADB総会で発表したとおりです。それが1つ。

PPPの話やら何やらの話で、インフラ投資をPPPでやるようなことになっていった場合にアジア開銀とJICAというものも一緒に協調融資などをやろうと。査定能力はJICAの方がありますから、そういったものはきっちりやっていこうと、ADBの方もありますからということで、PPPでやるのにそういったものをくっつけてやるというのはどうですかという話が2つ目。

3つ目がJBICというものを我々持っていますので、JBICの投融資の機能というものをさらに強化しますというのが3つ目。

そして4つ目には、今あなたの言った質の高いインフラをやらないと、作ったらしばらくしたら壊れるとか、効率が悪いとか、何とか作ったけれども、CO2がやたら出るとか、そういったような話で国際スタンダードというものからいったら、後進国というか、発展途上国の方から上がってくるいろいろなインフラは、目先の電力欲しさに質の悪いものがどんどんできるというのは今の地球環境やら何やらの話と全然合いませんので、きちんと質の高いものにしますというような話を持ち出しているので、この4つはADB総会のときに既に大筋の話はしてありますので、それをきちんと昨日総理がああいう場で、数字も入れて発表していただくという段取りになっていましたので、そのとおり総理に言っていただいて、1,100億ドルという数字があのとき出たのだと思いますけれども、1,100億ドルというのは今の4つの柱というものとパッケージとして実行するものなのであって、AIIBの話は総理の頭の中にはないと思いますね。対抗するような種類の話ではありませんから、これは。

問)

もうちょっと先の話になるのですけれども、6月6日に日中財務対話が開催されることが昨日正式に発表されたわけなのですけれども、今のところAIIBの参加の問題など、どういうことを議論するのかというのは決まっているのでしょうか。

答)

どういう話なのだろうね。どういう話が話題に出るか、韓国と同じように今の話やら、AIIBの話をするのかもしれないし、アジアの中においてそういった資金需要に対応していくというのは大事なことなのだと思いますので、ただ、資金需要というのは何回も言うけれども、その資金をいかに有効に活用してくれるかというのは借りた国のそれに対応する能力と非常に関係してきますので、需要がそこにあるのは分かりますが、その需要に対応するためには、例えば電力で言えば、電力はガスですか、石炭ですか、石油ですか、水力ですかというような話はいろいろ市場調査、フィージビリティスタディというものをきちんとやって、それに対してはこれだけのお金がかかりますけれども、おたくで今電力の需要というのはそんなにないでしょうと。1,000万キロもないでしょうと。100万キロしかないのだから、だったらまずは大きさはこんなもので、それに当たっては一番安く電力需要で水力を利用されたらただでおたくはできますから、水力発電で110万キロワットぐらいのものを作られたらどうですかというようなリコメンデーションというようなものがきちんとやれていくというのは、それなりの市場調査というものをやる能力、またそれに対して融資をした場合は、それに当たって返済をしないといけないわけで、返済をするに当たってはどういう返済計画で返済していくかというのは、これの調査専門家というのが要るのですよ。それが無いとなかなかできませんから、そういったものを含めると、今のような話できちんとやっていくというような話を双方でしないといけない。金はあるけれども人はいないとか、需要はあるけれども金がないとか、ばらばらですから、そこのところをみんな折り合ってやっていくというような協調ができるといいのでしょうけれどもね。

問)

冒頭大臣が発表されました対外純資産について2つお尋ねします。24年連続で世界最大の対外純資産国になったことについて、大臣はこれまでもこの対外純資産国については国会答弁などでは日本の強みであるという文脈で触れてこられました。その額がまた増えたことについての大臣の御評価をお伺いしたいのが1点と、もう1点は、ともすればこうした強みが財政再建に厳しく臨む姿勢を緩ませる、安心させるような一因になっていないか、大臣や財務省はそうではないとしても、与党ですとか内閣の中ですとか諮問会議の中でそうした空気を感じることがあれば教えてください。

答)

367兆って薄気味悪い金ですよ、純資産として。個人金融資産1,700兆、個人よ。個人金融資産1,700兆、アメリカに次いで世界第2位。だけれども対外の、外国に対しての純資産367兆円というのはダントツに一番。最大の債務国は多分アメリカです。従って今の状況というのは日本にとって間違いなくそういったようなものがあるというようなのは事実ですから、今後ともこういったものはきちんと、日本の大事な財産ですから、これはフローではなくてストックで持っているわけだからね。そういったようなものをきちんと日本として、国力の非常に大きなものですから大事にするという話と、傍ら、いわゆる日本の財政収支というものの話と、基本的には全然別の話なのであって、ストックはあるけれどもフローがないとか、フローはあるけれどもストックはないとか、いろいろな言い方があろうかと思いますけれども、日本の場合の財政収支というものがGDPに対して200%を超えているような状況というのは普通でないことははっきりしていますので、そういったようなものをきちんとやっていくというのは、これは今後国際収支というものを考えたときに日本は約定どおりPBバランスを2015年は半分にしました。次に2020年PBバランスをチャラにしますという目的を達すると、やはり国際収支というものは世界から見ていて大きな要素ではありますけれども、財政健全化に関してもきちんと日本は対応していっているというのは、日本の国としての信用になりますし、PBがバランスしたからといっても、それは基礎的財政収支だけの話で、財政収支としては利払費が計算されていませんから、利払費の分も含めて計算しないとバランスしていくということになりませんので、将来に借金を残さないというのであれば、次はきちんと財政収支が合ってマイナスになっていくということをしないと、PBの黒字化を達成してもその後の利払費はずっと増えていくことになりますので、利払費も含めてきちんと収められるように財政をバランスさせるということ、対外純資産とはまた別の話なので、緩むとかというのは、よほどそういったことの分からない人は話をされていくのかもしれないけれども、それによって私共の対応が変わるということはありません。

(以上)

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