麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成27年10月6日(火)10時07分~10時31分)

【質疑応答】

問)

TPP交渉が関係国の閣僚会議で大筋合意に達したと発表されましたけれども、大臣の率直な所感と今後の対応についてお聞かせください。

答)

5年、6年ぐらいかかりましたけれども、この太平洋の中において12カ国で世界のGDPの40%ぐらいと大きなものです。これまでFTAとかいろいろありましたけれども、そういったものをはるかに上回る大きなものができ上がったということは歓迎すべきことなのだと、私はそう思います。日本の今後の経済成長等をいろいろ考えても、これは歓迎するというものなのだと思っています。モノの関税の撤廃とかそういうものだけではなくて、サービスとか投資とかそういったものの自由化を進めて、さらに知的財産とか国有企業等、幅広い分野で新しいルールが構築されたということは良いことだと私はそう思っています。これができると大企業に限らず、中小企業、零細企業でも、アジア太平洋地域のマーケットにつながっていくということになりますので、日本の経済成長ということを考えたときでも、これは貢献していくだろうと思いますから高く評価されてしかるべきだと思っています。基本的にはそれが感想です。

問)

今後の対応について、何か今の時点でお考えはありますか。

答)

これはまだ大分時間がかかる話ですからね。アメリカのTPAの規定によると、署名は、最速でいっても1月過ぎでしょう。逆算してみれば1月の初旬まで、最速でいってもそれくらい時間がかかりますから、そういった意味ではかなり時間がかかる話で、それからいろいろなものが、10年後からこうしますとか、何とか後からこうしますというので、自動車など即という部分もありますけれども、そうではないものを含めていろいろ中身が分かれています。我々の立場で言えば関税暫定措置法とかそういったようなものを変更、修正していかないといけないという部分は出てくるかなとは思います。

問)

今のTPPに関連してですが、農業の関係ではかなり対策が必要ではないかという声が出ることも予想されます。補正予算の編成も含めて、農業対策についてどのような考え方で当たりたいかお願いいたします。

答)

農業の話というのは最初から報道でもいろいろあったように記憶しますけれども、基本的には一番時間のかかる先の話で、何年据え置くとか、ものによって違いますけれども、基本的に農業の部分では重要5品目等については、国家貿易制度の維持というのがそのまま獲得されていますし、長い時間かけて関税撤廃などをやっていくということも決められているというところだと承知していますので、その点に関しても即来年度予算からというような話ではなくて、どういうものが出てくるかというのはじっくり話を聞かなければいけないところだろうと思っています。それから国内農業への影響ということなのだと思いますけれども、これはきちんと丁寧に説明していかなければいけないところだと思いますけれども、いずれにしても具体的な内容とか実施の時期等については、現時点でまだ予断を持って言えるようなものは何もまだでき上がっていません。

問)

今週、日銀が決定会合を開きますが、4-6月期にGDPがマイナス成長になった後、7-9月期も生産輸出が弱くて、エコノミストの間ではまたマイナス成長か、成長したとしてもほとんど成長しないというふうに言われています。そういう中で日銀は追加緩和すべきでしょうか。また、リマのIMF総会やG20の会合で日本の経済について説明する際に、こうした足元の景気の弱さについてはどういう解説をされるのでしょうか。

答)

財務省として日銀の政策に介入しろというふうに聞こえるような話でしたけれども、そんなことをするつもりはありません。IMF、またG20等における説明は基本的には今までどおり、日本の景気、ファンダメンタルズは全然悪くありませんから、そういった意味では私共としては今の状況が極めて厳しい状況にあるとも思いませんし、今までどおり景気は緩やかにきちんとした方向で回復している、それを裏付ける数字は幾らでもありますから、そういったものを説明することになるのだと思います。

問)

税制の負担の軽減措置についてお尋ねします。租税特別措置についてですが、大臣は来年度予算の編成のお考えの中で期限を迎える租税特別措置については見直す考えを示されています。一方で、この租税特別措置の中では不特定多数の企業や個人を対象にしているものでも特定の企業や業種に集中していたいとか、その政策効果が税収見込みを大きく上回るくらいに減収しているものなど、適用実態を踏まえて期限を迎える前にもこうした租税特別措置を見直す、つまりなくすような考えはありませんか。

答)

いわゆる減税、法人税等を含めてそういったものの減税という部分を傍らに抱えながら、それに見合うだけの税の確保というのは、今いろいろなことをやりつつあるところですけれども、その中に租特というものがあることは間違いないところですが、基本的に租特というものは期限というものがありますので、そういったものを中心として見直しなどはしていかなければならないものだと思っています。今具体的にこの部分をといっているものが挙がっているわけではありません。

問)

税制についての質問ですが、今度の内閣改造で公明党の石井政調会長が入閣されるのではないかということが報道されています。石井さんは政調会長としてこれまでも軽減税率について欧州型の軽減税率、あるいは簡易な経理方式という公明型の経理方式の導入を訴えてこられたわけですが、これについては与党税制協議会でも軽減税率は非常に対象品目の線引きが難しいことだとか財源確保の問題があると、様々な問題点が指摘されて、大臣もその趣旨に沿って御発言をこれまでもされてきたと思います。これについて、公明党の案について、これまでも伺っているところで恐縮ですが、改めて今の時点での大臣の御所見をお聞かせください。

答)

消費税10%時に軽減税率を導入するという話は前々から決まった話で、そういったところで軽減税率という話が出ている。それは公明党との間できちんとそういう話をしていますから、それは確かです。問題はそれに当たってどういう問題点があるかといえば、インボイス等、業者は大変手間ひまがかかりますよ、消費税を払う義務のない事業者が500万者ぐらいあり、その500万者にそれを全部書き出してもらいますよと。それから、これは良くて、これは駄目だ、どういう基準でやるのか。飲食も含めて全部という話が出れば、その分だけ消費税の税収が減りますから。その税収が減った分はそのまま社会保障費が減ります。税と社会保障の一体改革なのだから、基本的なところとして、その分は社会保障、介護、医療、年金等は減るということでよろしいのですねと。分類する手間ひまの面倒くささは、年末になると今年はこれとか、来年はあれとか、大変な騒ぎになるということは昔よく税制調査会でやっていましたけれども、それが再来するということになる可能性が大きいと思いますがよろしいのですね、という話で、結論、与党ではできなかったわけでしょう。それで財務省が出した案が良くないなら自分達で考えてください。それだけのことなのだと思います。基本的には、頼まれたから、ではマイナンバーが入るときにこういうのはどうですかと申し上げただけであって、反対なら別の案をどうぞという立場だと思いますけれども。だから石井さんもよくわかっていますよ。

問)

明日、内閣改造が行われる予定ですけれども、第2次安倍内閣発足から御自身を振り返られて、財務大臣あるいは副総理、金融担当大臣として手応えのあった仕事とか、最も印象に残った仕事、逆にやり残した仕事ですとか課題があれば教えていただければと思います。

答)

就任したときは、数字で言えば株価7,000~8,000円台が今1万7,000~8,000円まで上がり、企業の経常利益が大幅に上がりました。会社の内部留保は、この2年少々で50兆円内部留保が増えている等、数字を見ているとその割に労働分配率は下がっているのではないですか。これだけ景気が良くなって労働分配率が下がるというのは、どういうことですかね。昔は70%の後半だったけれども、今は60%台まで落ちていると思います。そういったことを考えると、給与の交渉を組合等の労働者側と企業側が通常双方でやり合う話を政労使、政がそこにかんでくるというような状況というのは、自由主義経済ではあまり考えられません。おかしいと思いますから、そういったことはなるべく早く労使交渉に戻してもらって、きちんとした対話、対応というものがなされてしかるべき、度々政治が介入するのを労使が期待するという状況は明らかにおかしい。また、企業も内部留保が毎年24兆円、26兆円と上がって、月割り2兆円も上がっているのだったら、そのお金は賃金に、配当に、設備投資に、そういったものに向かうというのが基本的な姿勢であるべきだと思っています。資産のデフレーションによる不況からの脱出というのが2年8カ月前から掲げた目標でしたから、その方向に向かっているのは間違いないと思っていますけれども、その数字をきちんと仕上げていく上に、石油の値段が100何十ドルから一挙に40数ドルまで落ちましたから、経済には良い影響でしたけれども、インフレターゲットという面から言えば、それは極めて難しくしたことは確かだと思いますので、そういった意味では、きちんとしたものを仕上げていく点では、まだまだいろいろやらねばならないことがあるだろうなと思っています。少なくとも資産デフレ状況からの脱却というのは達成したように思いますけれども、これが資産デフレ不況を脱出してインフレの方まで振っているかというと、まだそこまではいっていないというような感じがしますので、引き続き努力していかなければいけないところかなと思っています。

問)

13日から新日銀ネットの全面稼働が始まりますけれども、先日、人民元の国際通貨認定の話もありましたが、日本円の国際競争力の向上について、大臣はどのようにお考えでいらっしゃるか、お聞かせ願えますでしょうか。

答)

日本の国際競争力の向上というのは、一番大きなマイナス原因は通貨の対ドル交換レートが79円だ80円だという状況でしたから、それが120円というようなところまでなると、それは大幅に円安方向に動いたということですから、輸出競争力を極めて高めたということは間違いないと思っていますけれども、それは日銀の通貨供給量の増加に伴って、今言ったような話になったので、リーマンショック直後にこれが残念ながらできていませんから、他の国がやった中で日本だけというか、日銀はそれをやりませんでしたから、そういった意味では黒田さんになってからそれが行われるようになっている、結果として今言ったような形で国際競争力に寄与したこと確かだと思います。ただし、競争力というのは、基本的には生産性の向上ですから、幾らやっても生産性が上がらなければいずれ駄目になりますので、生産性を上げるために各企業はこの20年間設備投資をしていなかった分を新しいものに切り換える、いろいろなやるべきことがいっぱいあるはずですけれども、そういったようなものをきちんとやっていくということが必要なので、そういうきちんとした経営者としての姿勢というものが問われているのかなとは思います。いずれにしても生産性が上がらなければ給与も上がりませんから、状況として引き続き生産性が上がっていくような努力というのが今後とも企業で行われるということが大切なのだろうなと思っています。これは製造業に限りません。サービス業も同じです。

問)

8日からG20があり、9・10日と世銀、IMFの会合がありますけれども、この中でバイ会談など予定されているものがありましたら教えてください。

答)

今幾つか予定されています。今決まっているのは中国の楼継偉財政部長かな、今の段階できちんと決まっているのはそれだけです。

問)

月末にも日中韓の首脳会談が行われるような話もありますけれども、これで財務大臣のレベルでの会合とか、そういった話というのはありますでしょうか。

答)

個別の会談というのは、そのところへ行ってからいろいろいっぱい依頼が来ますので、我々の方としてその中で選択していくのですけれども。日中韓とか。いろいろ言ってくると思いますよ。それはその段階で調整していくのだと思いますし、アメリカともあるし、毎回の話ですから。今の段階で何月何日この時間にこれということを言えるのは楼継偉部長です。

問)

G20で日中財務相会談が行われるということですが、議題といいますか、具体的にはどういった話についてお話しされたいと思っていらっしゃいますでしょうか。

答)

何と言ってくるでしょうね。この前の感じでいくと構造改革を是非やりたいというのは、あの上海の株の暴落の前の6月でしたから、そういった意味ではあのときはそういった構造改革をやりたいという話をしたので、良いのではないですかという話をして、そのためにBEPSがOECDで通って、11月の総会ではもう1回きちんとこれが通ると思うから、その段階でこれも加えてやったら良いのではないかという話をして、いろいろしましたので、マクロ経済とか金融協力といったようなテーマについて出てくる可能性というのはあるのではないでしょうかね。大体こういった会談というのはその場で、事前に約束されるようなことではなく、ほとんどその場で出たものです。あらかじめ決まった話というよりは、その場でパッという話の方が多いように思います。

(以上)

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