麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成28年6月28日(火)11時10分~11時23分)

【冒頭発言】

本日、熊本地震復旧等予備費の第3弾として、河川・道路等の公共土木施設の災害復旧や、熊本城の応急復旧を含む文化財の災害復旧などに対応するために、210億円を使用することを閣議決定しております。

また、平成28年度の予算執行調査につきましては、4月に対象事案を公表し、52件の調査を実施しておりますが、そのうち調査の終了した37件については、今般、調査結果を取りまとめております。このため、今朝の閣僚懇談会において、私の方から各大臣に対して今回の調査結果を平成29年度概算要求や今後の予算執行に確実に反映していただくようお願いしたいというように申し上げてきております。

【質疑応答】

問)

英国のEU離脱決定を受けた対応についてお尋ねいたします。昨日、官邸で緊急会合が開かれ、総理からは積極的な対応をと指示があったとのことです。足元の市場の動きについて、現状をどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。また、今後、想定するリスクと、その対応についてどのように検討されていますでしょうか、お教えください。

答)

イギリスにおける国民投票でEU離脱が決定した後、御存じのように市場では変動が見られております。市場の安定が極めて重要とたびたび申し上げておりますが、先日24日以降に財務大臣として必要な対応を矢継ぎ早に行ったところです。まず24日に開催された英国のEU離脱問題に関する関係閣僚会議において総理の方から指示を受け、同日、G7の議長国として財務大臣・中央銀行総裁の電話による会談、各国の中央銀行総裁はバーゼルの会議に出ていますので、電話を使ってG7の声明を発表させていただいております。あわせて、財務大臣・日本銀行総裁共同談話も発出をしたところです。全体として他のG7諸国とも緊密に連携をし、金融市場の安定に万全を期していくというメッセージを出したところです。25日の土曜日には、財務省・日本銀行・金融庁による情報交換会合を開催し、足元の市況と今後の対応について意見交換を行っております。そして昨日、金融市場の安定に向けた政府・日本銀行緊急会合が開催され、本日、先ほど経済財政諮問会議が開催されました。これらの会議においては、総理の方から、これまで以上に為替市場を含む金融市場の動きに注意を払い、G7と協調して必要な対応をとるように御指示があったところです。金融市場は今週に入ってからひとまず落ち着きを取り戻している状況であるが、総理からの御指示を踏まえて今後とも日本銀行や他のG7の諸国とも緊密に連携を行いながら、世界経済の成長と為替市場を含む、いわゆる金融市場の安定というものに万全を期していきたいと考えております。とりわけ、為替市場では極めて神経質な動きが見られましたが、このような動きが継続することがないよう、為替市場の動向を緊張感を持ってこれまで以上に注視して、必要なときにはしっかりと対応していかなければならないと考えております。

問)

同じくイギリスのEU離脱について、このイギリス国民の判断についてお尋ねしたいと思います。大臣は今御紹介されたG7の財務大臣の共同声明で、イギリス国民の意思は尊重するというコメントを発表されています。一方で大臣はイギリスでの留学経験もおありですし、開票前には世論調査は当てにならない、離脱もあり得るという可能性を予言されておられて、そのとおりになりました。この一連の動きを見て大臣個人としてはイギリス国民の判断というものにどのように感想をお持ちでしょうか。

答)

若い人は総じて残留希望が多い、したがって投票率が上がれば若い人が投票に行く、結果として離脱しない、そのリミットは65%ぐらい、世論調査はそうなっていたのですが、実際は72%で、離脱。130万票ぐらい差がつきました。したがって、かなり差がついた。選挙というのは、52対48になったらもう見えているはずですから、そういった意味ではかなり差が開きました。世論調査は当てにならないというのは、これで3回目ですから、とてもではないという感じはしますけれども。代議員制度をスタートさせたイギリスにおいて、代議員による意見ではなくて直接投票をやるというのが果たして、民主主義とか二院内閣制とか代議員という制度をよしとしているイギリスにおいて、この制度を選択したというので、間違いなくキャメロン首相が自分で選択をし、これで勝てると思って負けたのだから退陣ということになるのは分かりやすいのですけれども、少なくともルールとして代議員ではなくて直接投票に及んだというところはいかがなものかと、これは今後の評価によるでしょう。それはそう思います。

問)

2015年度の税収なのですけれども、年初の見込みよりも伸び悩むのではないかというような報道がありましたけれども、こうなってくると補正の財源探しというのが難しくなってくる可能性があると思うのですが、赤字国債の可能性も含めて大臣はそのあたりどのように見ていらっしゃるか教えていただけますでしょうか。

答)

税収に関する見積もりの精度が上がってきたのだと思います。今まではかなり大幅に税収の方が伸びるという見積もりになっていましたから、この3年間の間に税収見積もりの精度がかなり上がってきているというように思うのが1点。また、27年度の税収については最終的に7月1日を予定しており、7月1日の決算の公表に向けて、申し上げることになっていると思いますので、今の段階で申し上げることはありません。

問)

昨日、アメリカのルー長官が米CNBCテレビの番組のインタビューで今の為替というか、金融市場は秩序を保っていると。介入には無秩序な動きになっているなどの理由が必要だという形で、秩序的だという考え方を示されているのですけれども、そのあたりはどう受け止められますか。

答)

少なくともG7の緊急電話会談をやる前はイギリスのBOE、英中央銀行がどれくらいの外貨準備を予定し、どれくらいのポンドの売りというものを支えられるか等については、他国はあまりよくその内容を知っているわけではありませんから、もしそういうことになったら協調介入にならざるを得ないと思っていたのですけれども、現実問題としては、一番最初に開いたのが日本ですから、そのこともあったせいか、変動幅が非常に大きく動いたのが日本のマーケットであり、ロンドンのマーケットはそれほど大きな変動はなかった。事実、イギリスもポンドの買い支えの協調介入を要請はしてきませんでした。そういった意味では株価が一番大きく動いたのが日本とか、EUの中ではイタリアとかスペインとか、そんなところかと思います。為替は、我々が23日の前にいろいろなことを想定して、最悪を想定していましたから、そういうのに比べれば安定しているという表現は正しいと思いますけれども。

問)

今回のイギリスのEU離脱による市場の変動というのを見て、リーマンショックと比べる方もいらっしゃると思うのですけれども、大臣から見て今の状況はリーマンショックに何か似ているのか、あるいは今後そういうことに陥るリスクがあるのかどうかというところの考え方を教えてください。

答)

ショックという言葉を使っているところだけは似ています。そのとき総理大臣をやっていたから言わせてもらえれば、リーマンショックのときには少なくとも市場から流動性の高いドルという資金が全くなくなるという、流動性が不足する金融システム上のリスクが発生したわけです。おまけにサブプライムローンなる怪しげな証券というものがあって、それがどの国のどの銀行にどれだけ散っているか、全く不明だったから。そういった意味ではリスクの所在が不明確という2つで疑心暗鬼が非常に多かったのだと思います。今度の話は、イギリスがポンド・ドルとの交換でドル資金が不足しているという話も全くありませんし、政治的な不確実性というのが最大の問題なので、資金の不確実性が大きいというわけではありませんから、短期的には為替市場をよく見なければいけないとは思いますけれども、少なくとも中期的には、政治的な不確実性という問題の方がむしろ重石になる可能性があるのではないかと思いますので、根本的には違うと思います。これを一緒にするというのはショックという言葉以外は、いわゆる金融の上での共通点というのはほとんどないのではないでしょうか。

(以上)

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