IV. 監督上の評価項目と諸手続(第一種金融商品取引業)

IV-1 経営管理(第一種金融商品取引業)

金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。IVにおいて同じ。)の経営管理に関しては、以下の点に留意して検証することとする。

なお、第一種金融商品取引業を行う外国法人については、「 III-1経営管理(共通編)」の適用に際し、代表取締役を本邦における代表者、取締役会等を本邦における営業所又は事務所における最高意思決定機関等と適宜読み替えるものとする。

IV-1-1 金融商品取引業者の役員

  • (1)主な着眼点

    金融商品取引業者の取締役、執行役又は監査役(外国法人にあっては、国内における代表者を含む。以下「役員」という。)の選任議案の決定プロセス等においては、以下の要素が適切に勘案されているか。

    • マル1欠格事由(金商法第29条の4第1項第2号イからリまで)のいずれかに該当すること又は登録当時既に該当していたことがないこと。

    • マル2金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令(金商法第46条の6第2項を除く。)又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反していないこと。

    • マル3投資助言・代理業又は投資運用業の運営に関し、投資者の利益を害する事実がないこと。

    • マル4金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をし、その情状が特に重いと認められることがないこと。

    • マル5金商法第30条第1項の認可に付した条件に違反していないこと。

  • (2)監督手法・対応

    金融商品取引業者の役員が、金商法第29条の4第1項第2号イからリまでのいずれかに該当することとなったとき、金商法第29条の登録当時既に同号イからリまでのいずれかに該当していたことが判明したとき又は金商法第52条第1項第6号若しくは第8号から第10号までのいずれかに該当することとなったときは、金商法第52条第2項の規定に基づき当該役員の解任命令等の処分を検討するものとする。

    併せて、当該金融商品取引業者の役員の選任議案の決定プロセス等について深度あるヒアリングを行い、必要な場合には金商法第56条の2第1項の規定に基づき報告を求め、更に、当該業者の経営管理態勢に重大な問題があると認められる場合であって、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、業務改善命令等の処分を検討するものとする。

IV-1-2 金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成

  • (1)主な着眼点

    金融商品取引業者の役員又は使用人に関する以下の事項に照らし、金融商品取引業(第一種金融商品取引業に限る。IVにおいて同じ。)を適確に遂行するに足りる人的構成が確保されていると認められるか。

    • マル1金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、並びに金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有している者を確保していること。

    • マル2暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)でないこと(過去に暴力団員であった場合を含む。)。

    • マル3暴力団(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第2号に規定する暴力団をいう。以下同じ。)と密接な関係を有していないこと。

    • マル4金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないこと。

    • マル5暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の2第7項の規定を除く。)若しくはこれに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないこと。

    • マル6禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたことがないこと(特に、刑法第246条から第250条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝及びこれらの未遂)の罪に問われた場合に留意すること。)。

  • (2)監督手法・対応

    上記マル1からマル6までに掲げる要素は、金融商品取引業者が金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者と認められるか否かを審査するために総合的に勘案する要素の一部であり、特定の要素への該当をもって直ちにその人的構成の適否を判断するものではない。まずは金融商品取引業者自身がその責任において、こうした要素を踏まえつつ、適切な人的構成の確保に努めるべきである。

    ただし、金融商品取引業者の役員又は使用人の選任プロセス等において、こうした要素が十分に勘案されていないと認められる場合であって、金融商品取引業者の業務の運営に関し公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、当該人的構成に関する金融商品取引業者の認識、及び役員又は使用人の選任プロセス等について深度あるヒアリングを行い、必要な場合には金商法第56条の2第1項の規定に基づき報告を求めるものとする。

    報告徴求の結果、金融商品取引業者の経営管理態勢に重大な問題があると認められる場合であって、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令等の処分を検討する。

    また、報告徴求の結果、金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しないと認められる場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-1-3 利益相反管理体制の整備

  • (1)利益相反管理体制の整備に関する基本的な考え方

    金融機関の提供するサービスの多様化や、世界的な金融コングロマリット化の進展に伴い、金融機関内又は金融グループ内において、競合・対立する複数の利益が存在し、利益相反が発生するおそれが高まっている。こうした状況を踏まえ、証券会社等(第一種金融商品取引業(有価証券関連業に限る。)を行う者をいう。以下同じ。)においても、顧客の利益が不当に害されることのないよう、各証券会社等及びグループ会社の業務の内容・特性・規模等に応じ、利益相反のおそれのある取引を管理することが求められている。

    こうしたことから、金商法第36 条第2項に基づき、証券会社等が自社及びその子金融機関等における適切な利益相反管理体制を整備することが重要である。

    なお、証券会社等は、一定の条件の下で、その親法人等又は子法人等(以下「親子法人等」という。)との間で非公開情報の授受を行うことが認められている。これを踏まえ、当該証券会社等及びその金融グループ内において行う全ての業務(金融商品取引業以外の業務を含む。)に関して生じ得る利益相反に留意した経営管理を行うことが望ましい。また、その際には、顧客の利益を直接的に害するおそれ以外にも、証券会社等又は金融グループとしてのレピュテーション・リスク(社会的評価又は金融市場における信用が傷つくリスクをいう。以下同じ。)が顕在化するおそれにも留意した経営管理が行われることが望ましい。

    一方、証券会社等のグループ会社の中には、当該証券会社等の顧客とは無関係の業務を行っているものがあり得ることも踏まえれば、証券会社等が行う利益相反管理の水準・深度は、必ずしも同一である必要はないと考えられる。また、証券会社等がグループ会社との間で非公開情報を共有しない措置を講じている場合は、当該グループ会社との間の利益相反管理について、必要十分な措置を講じていると認められる場合があると考えられる。このように、証券会社等がグループ内で利益相反管理の水準・深度に差異を設ける場合には、対外的に十分な説明が求められることに留意する必要がある。

    また、証券会社等が行うこととされている利益相反管理を当該証券会社等の親会社等が行っている場合であっても、当該証券会社等がその管理方法や実施状況を適確に把握し、かつ、必要に応じ適切に関与している場合には、必要十分な措置を講じていると認められる場合があると考えられる。

    これらを踏まえ、以下のような点に留意して監督するものとする。

  • (2)利益相反のおそれのある取引を特定するための体制の整備

    • マル1あらかじめ、利益相反のおそれのある取引を特定し、類型化しているか。

    • マル2利益相反のおそれのある取引の特定にあたり、証券会社等及びその親金融機関等又は子金融機関等の行う業務の内容・特性・規模等を適切に反映できる態勢となっているか。

    • マル3特定された利益相反のおそれのある取引について、例えば新規業務の開始等に対応して、その妥当性を定期的に検証する態勢となっているか。

  • (3)利益相反管理の方法

    • マル1特定された利益相反のおそれのある取引の特性に応じ、例えば以下のような点に留意しつつ、適切な利益相反管理の方法を選択し、又は組み合わせることができる態勢となっているか。

      • イ. 部門の分離による管理を行う場合には、当該部門間で厳格な情報遮断措置(システム上のアクセス制限や物理上の遮断措置)が講じられているか。

      • ロ. 取引の条件若しくは方法の変更又は一方の取引の中止の方法による管理を行う場合には、親金融機関等又は子金融機関等の役員等が当該変更又は中止の判断に関与する場合を含め、当該判断に関する権限及び責任が明確にされているか。

      • ハ. 利益相反のおそれがある旨を顧客に開示する方法による管理を行う場合には、想定される利益相反の内容及び当該方法を選択した理由(他の方法を選択しなかった理由を含む。)について、当該取引に係る契約を締結するまでに、当該顧客に対して、顧客の属性に応じ、当該顧客が十分理解できるような説明を行っているか。

      • 二. 情報を共有する者を監視する方法による管理を行う場合には、独立した部署等において、当該者の行う取引を適切に監視しているか。

    • マル2自社及び子金融機関等が新規の取引を行う際には、当該取引との間で利益相反が生じることとなる取引の有無について、必要な確認が図られる態勢となっているか。

    • マル3利益相反管理の方法について、その有効性を確保する観点から、定期的な検証が行われる態勢となっているか。

  • (4)利益相反管理方針の策定及びその概要の公表

    • マル1利益相反管理方針(金商業等府令第70条の4第1項第3号に規定する方針をいう。以下同じ。)は、証券会社等及びその親金融機関等又は子金融機関等の業務の内容・特性・規模等を勘案した上で、利益相反のおそれのある取引の類型、主な取引例及び当該取引の特定のプロセス、利益相反管理の方法(利益相反管理の水準・深度に差異を設ける場合は、その内容及び理由を含む。)、利益相反管理体制(利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理に関する全社的な管理体制を統括する者(以下「利益相反管理統括者」という。)の職責及びその独立性並びに利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理の方法についての検証体制)並びに利益相反管理の対象となる会社の範囲を記載したものとなっているか。この場合において、利益相反のおそれのある取引の類型、取引例及び利益相反管理の方法は、対応して記載されているか。

    • マル2公表すべき利益相反管理方針の概要は、証券会社等及びその親金融機関等又は子金融機関等の業務の内容・特性・規模等を勘案した上で、利益相反のおそれのある取引の類型、利益相反管理の方法、利益相反管理体制及び利益相反管理の対象となる会社の範囲を分かりやすく記載したものとなっているか。

    • マル3利益相反管理方針の概要は、店舗での掲示・閲覧やホームページへの掲載等の方法により、適切に公表されているか。

  • (5)人的構成及び業務運営体制

    • マル1証券会社等及びその子金融機関等の役員は、利益相反管理の重要性を認識し、その実践に誠実にかつ率先垂範して取り組んでいるか。

    • マル2利益相反管理方針を踏まえた業務運営の手続が書面等において明確化されているか。また、当該証券会社等及びその子金融機関等の役職員に対し、利益相反管理方針及び当該手続きに関する研修の実施等により、利益相反管理についての周知徹底が図られているか。

    • マル3利益相反管理統括者を設置するなど、利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理を一元的に行う体制となっているか。

    • マル4利益相反管理統括者等は、利益相反管理方針に沿って、利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理を的確に実施するとともに、その有効性を適切に検証しているか。

    • マル5利益相反管理統括者等は、営業部門からの独立性を確保し、営業部門に対し十分な牽制を働かせているか。

    • マル6利益相反管理統括者等は、その親金融機関等又は子金融機関等の取引を含め、利益相反管理に必要な情報を集約し、適切な利益相反管理を行う態勢を整備しているか。

    • マル7利益相反管理に係る人的構成及び業務運営体制について、定期的に検証する態勢となっているか。

  • (6)監督手法・対応

    利益相反管理体制は、各証券会社等の業務の内容・特性・規模等に応じ、まずは各証券会社等が自ら整備すべきものであり、上記(1)から(5)までに掲げる事項は、その基本的な枠組みを示したものである。各証券会社等においては、自社及びその子金融機関等の業務の内容・特性・規模等に応じ、それぞれ適切な利益相反管理体制を整備することが求められる。

    ただし、証券会社等による利益相反管理体制の整備状況に関わらず、顧客の利益が不当に害されるおそれがあると認められる場合であって、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には、金商法第56条の2第1項又は第3項の規定に基づく報告を求めることとする。また、報告徴求の結果、証券会社等の利益相反管理体制に重大な問題があると認められる場合であって、公益又は投資者保護のために必要かつ適当と認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令及び金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-2 財務の健全性等(第一種金融商品取引業)

金融商品取引業者の自己資本規制は、金融商品取引業者の業務が市場環境の変化に影響されやすいことを踏まえ、市況の急激な変化に伴う収入の減少や保有資産の価値の下落等に直面した場合においても、金融商品取引業者の財務の健全性が保たれ、投資者保護に万全を期すことを目的としている。金融商品取引業者は適切な自己資本規制比率を維持すること等を通じて、その業務に伴うリスクを総体的に把握・管理し、各種リスクが顕在化した場合でもそれに伴う損失に十分耐えられるだけの流動的な資産(=固定化されていない自己資本)を保持しなければならない。当局としては、自己責任原則の下で行われる適切な自己資本規制比率の維持等を補完する役割を果たすものとして、オフサイト・モニタリングを通じ、金融商品取引業者の財務の健全性の確保のための自主的な取組みを促していく必要がある。

IV-2-1 自己資本規制比率の正確性

自己資本規制比率の算出の正確性については、金商法第46条の6第1項及び金商業等府令等の規定を十分に踏まえ、以下の点に留意して検証することとする。

  • (1)劣後債務・劣後特約付社債の適格性について

    • マル1金商法第50条第1項(金商業等府令第199条第12号)の規定に基づき、劣後特約付借入金を借り入れた場合又は劣後特約付社債を発行した場合の届出があったときは、少なくとも破産及び会社更生といった劣後状態が生じた場合には、劣後債権者の支払い請求権の効力が一旦停止し、上位債権者が全額の支払いを受けることを条件に劣後債権者の支払い請求権の効力を発生する、という条件付債権として法律構成することにより、結果的に上位債権者を優先させる契約内容となっているか。

    • マル2金商業等府令第176条第2項各号又は第3項各号に掲げる性質のすべてを有しているか。

    • マル3上位債権者に不利益となる変更、劣後特約に反する支払いを無効とする契約内容となっているか。

    • マル4次のような場合には、金商業等府令第176条第4項第3号に規定する劣後特約付借入金の借入先又は劣後特約付社債の保有者に意図的に資金の提供を行っているものとして、当該資金の額を控除しているか。

      • イ. 当該借入先又は当該保有者に劣後特約付借入金を供与している場合又はこれらの者が発行した劣後特約付社債を保有している場合(当該劣後特約付社債を、引受けにより取得したもので保有期間が6月を超えない場合及びマーケットメイク等のために一時的に保有している場合を除く。)。

      • ロ. 当該借入先又は当該保有者に、経営再建・支援・資本増強協力目的として、資金の貸付けを行っている場合

      • ハ. 当該借入先又は当該保有者の株券その他の有価証券等を、経営再建・支援・資本増強協力目的として、新たに引き受けている場合(経営再建・支援・資本増強協力目的以外の場合で、当該株券その他の有価証券等を、純投資目的等により流通市場等からの調達により保有している場合、引受けにより取得したもので保有期間が6月を超えない場合及びマーケットメイク等のために一時的に保有している場合を除く。)。

  • (2)控除資産から控除する担保金等について

    金商業等府令第177条第2項及び第3項の規定に基づき土地・建物の評価額等を控除している場合又は同条第5項及び自己資本規制告示第2条第5項の規定に基づき担保金その他の資産の評価額を控除している場合においては、次の点に留意の上、控除額が適切であるか確認するものとする。

    • マル1土地・建物の評価額等を控除している場合に、当該土地・建物の評価額が適切に算出されているか。

    • マル2担保金その他の資産の評価額を控除している場合に、当該担保金その他の資産が担保としてふさわしいものであるか、並びにその評価額及び当該評価額から控除すべき市場リスク相当額が適切に算出されているか。

  • (3)リスク相当額の把握について

    金商業等府令第178条第2項の規定に基づき、以下の点に留意の上、業務の態様に応じた合理的な方法により、市場リスク相当額及び取引先リスク相当額を、毎営業日、把握しているかを確認するものとする。

    • マル1すべての保有する有価証券等の評価額(月末にあっては、客観性の検証を行った評価額)に基づき、市場リスク相当額を適切に把握しているか。ただし、月末以外においては、固定化されていない自己資本の額に比しポジションが恒常的に小さい等、重要性の乏しいものについては、概算により把握することができるものとする。

    • マル2対象となるすべての取引又は資産等の与信相当額に基づき、取引先リスク相当額を適切に把握しているか。ただし、月末以外においては、未収入金及び未収収益については、金融収益に係るもの及び経過的に約定日に計上されるもの(受渡日に入金されなかったものを除く。)を除くことができるものとする。

    • マル3市場リスク相当額及び取引先リスク相当額を、毎営業日、リスク管理について責任を負っている取締役が了知しているか。

      特に、顧客から約定元本の一定率の証拠金(保証金)の預託を受け、差金決済による外国為替の売買を行う取引(いわゆる「外国為替証拠金取引」)を行っている金融商品取引業者については、為替相場の急激な変動などが財務の健全性や自己資本に及ぼす影響を的確かつ適正に把握できるリスク管理及び内部管理態勢を整備しているか。

  • (4)貸付有価証券の確認

    保有する有価証券のうち貸し付けたものについては、取引先リスク相当額に加え、市場リスク相当額を算出しているか。

IV-2-2 金融商品取引業者の自己資本規制比率が法令に定められた水準を下回った場合の監督上の対応

金融商品取引業者の経営の健全性を確保していくための手法として、金商法第46条の6第1項の規定に基づき、自己資本規制比率による「早期是正措置」が定められており、金融商品取引業者はその健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みを行う必要がある。

このため、自己資本規制比率が法令に定められた水準を下回った場合の監督上の対応として、以下に掲げるような措置を講ずることにより、金融商品取引業者に早期の改善を促していくものとする。

  • (1)金商業等府令第179条第3項の規定に基づく届出があったときは、届出書に添付された「自己資本規制比率の状況を維持するために自らとるべき具体的措置に関する計画書」を確認するとともに、ヒアリング等を通じて自己資本規制比率の当面の見通し等について確認し、自主的な改善を促すこととする。

    なお、長期に亘り自己資本規制比率が140%を下回っている場合や、繰り返し140%を下回っている場合は、金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴求を行う等により当該金融商品取引業者の自己資本規制比率の状況の把握に努めるものとする。

    また、金商業等府令第179条第5項の規定に基づく届出書が提出されるまでの間、営業日ごとの自己資本規制比率に関する届出書の確認やヒアリングを行う等により、当該金融商品取引業者の自己資本規制比率の状況や各リスクの状況の把握に努めるものとする。

  • (2)上記の届出において、自己資本規制比率が120%を下回っている場合は、届出書に添付された「自己資本規制比率の状況を回復させるために自らとるべき具体的措置に関する計画書」を確認するとともに、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴求を行う等により、自己資本規制比率回復のための具体的方策及び時期、顧客資産の分別管理の状況、資金繰りの状況を把握し、改善のための努力を促すこととする。

  • (3)上記(2)の状態において、報告徴求やヒアリング等により把握した当該金融商品取引業者の状況を踏まえ、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認める場合には、その必要性に応じて、

    • マル1自己資本規制比率について、法定の自己資本規制比率を回復し、恒常的に維持するための方策(その具体的内容及び実施時期を含む。)を立案し、講ずること、

    • マル2不測の事態に備え、有価証券、金銭等の適切な保全管理、資金繰りのきめ細かな管理等により投資者保護のために万全の措置を講ずること、

    • マル3会社財産を不当に費消する行為を行わないこと、

    • マル4自己資本規制比率回復のための具体策を反映した日々ベースの貸借対照表、資金繰り及び自己資本規制比率の見通しの策定、

    などについて、金商法第53条第1項の規定に基づく命令の発出を行うこととする。

IV-2-3 市場リスク管理態勢

市場リスクとは、有価証券等の価格、金利、為替等の様々な市場のリスク・ファクターの変動により、保有する資産(オフ・バランス取引に係るポジションを含む。)の価格が変動し損失を被るリスク及びそれに付随する信用リスク等を合わせたものである。金融商品取引業者は、市場リスクを適切に管理していくことが重要である。

  • (1)主な着眼点

    総合的なリスク管理態勢の整備、適切なリスク認識と評価、ポジション枠等の適切な設定と管理、役割分担と権限の明確化による相互牽制体制の構築等により、市場リスクが適切に管理されているか。

  • (2)監督手法・対応

    月次のオフサイト・モニタリング報告やそれに基づくヒアリング等を通じて、市場リスクの状況やリスク管理態勢の把握に努めるものとし、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴求を行い、改善を促すこととする。

  • (3)具体的取扱い

    • マル1自己売買業務に係るリスク管理

      株式の自己売買に係る市場リスクの把握・管理に当たっては、金商業等府令第178条第2項の規定に基づき市場リスク相当額を毎営業日把握することに加え、以下の点に留意するものとする。

      • イ. 株式の自己売買業務に係る適切なリスク管理

        • a. 自社の財務状況等を十分に勘案した適正な自己資本規制比率を設定した上で、株式の自己売買業務に割り当てることのできる最大許容市場リスク額又はこれに相当する合理的な限度枠・リスク額等(以下「許容市場リスク額等」という。)を設定すること。

        • b. 許容市場リスク額等の範囲内で自己売買業務が日々適切に行われているかモニターすること。

        • c. 許容市場リスク額等については、自己売買の損益等自社の財務状況の変化等に応じ、設定した自己資本規制比率を維持する観点から、適時見直す等必要な措置を講ずること。

      • ロ. 日中における自己売買業務の適切な管理

        • a. 株式の自己売買業務については、許容市場リスク額等の範囲内で行われることを管理する態勢を整備すること。

        • b. 日中における株式の自己売買業務が許容市場リスク額等の範囲内で行われることの管理については、上記イに代え、自己売買業務に係る現在の管理手法を勘案した、例えば以下のようなポジション額を用いた近似的な手法により行うことができる。

          i) 日中の各時点でのポジション額の合計に、社内であらかじめ定めた日中の損切変動幅を掛け合わせた額が、許容市場リスク額等を上回っていないことを適時確認する手法
          ii) 日中の各時点までのポジション額の累計に、社内であらかじめ定めた日中の損切変動幅を掛け合わせた額が、許容市場リスク額等を上回っていないことを適時確認する手法
          iii)  イで設定した許容市場リスク額等を踏まえたポジション限度枠をトレーダーごと又はユニットごとに配分した上で、当該ポジション限度枠の遵守状況を適時確認する手法
      • ハ. 財務の健全性に大きな影響を与える状況が確認された場合において、適切な措置が講じられる態勢を整備すること。

    • マル2市場リスク算出方法を選択する合理的な理由の確認

      自己資本規制告示第3条第4項の規定に基づき、リスク・カテゴリーごと、業務の種類ごとに、標準的方式又は内部管理モデル方式を選択して市場リスク相当額を算出している場合には、次の点に留意の上、その合理的な理由があるか確認するものとする。

      • イ. リスク・カテゴリーごとに市場リスク相当額の算出方法を選択している場合

        • a. リスク・カテゴリーごとに異なる算出方法を選択することにより、より適切に市場リスクを把握できているか。

        • b. 市場リスク全体を統合的に把握する部署が他の部署から独立して存在しているか。

      • ロ. 業務の種類ごとに市場リスク相当額の算出方法を選択している場合

        • a. 業務の種類ごとに異なる算出方法を選択することにより、より適切に市場リスクを把握できているか。

        • b. 市場リスク全体を統合的に把握する部署によりリスク・カテゴリーごとの市場リスク相当額が把握される態勢となっているか。

    • マル3指定国の代表的な株価指数

      標準的方式により株式リスク相当額を算出する場合において、次に掲げる株価指数以外のものを指定国の代表的な株価指数としているときは、取引の状況等に鑑み、その国の代表的な株価指数として相応しいか確認するものとする。

      • イ. 日本国 日経平均株価、日経300指数、東京証券取引所株価指数

      • ロ. アメリカ合衆国 S&P500種

      • ハ. イタリア共和国 MIB30指数

      • ニ. オーストラリア連邦 ASX200指数

      • ホ. オランダ王国 AEX指数

      • ヘ. カナダ S&Pトロント総合指数

      • ト. グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 FT100指数

      • チ. スイス連邦 SMI指数

      • リ. スウェーデン王国 OMX指数

      • ヌ. スペイン IBEX35指数

      • ル. ドイツ連邦共和国 DAX指数

      • ヲ. フランス共和国 CAC40指数

      • ワ. ベルギー王国 BEL20指数

      • カ. 香港特別行政区 ハンセン指数

    • マル4国際機関

      標準的方式により金利リスク相当額を算出する場合において、国際復興開発銀行、国際金融公社、多数国間投資保証機関、アジア開発銀行、米州開発銀行、アフリカ開発銀行、欧州投資銀行、欧州投資基金、北欧投資銀行、欧州復興開発銀行、カリブ開発銀行、イスラム開発銀行、予防接種のための国際金融ファシリティ及び欧州評議会開発銀行は、国際機関に該当するものとする。

    • マル5内部管理モデルに係る外部監査結果の確認

      内部管理モデル方式を利用している金融商品取引業者に対しては、毎年、前年度におけるリスクの計測の過程及びリスク計測モデルに係る外部監査の結果を確認するものとする。

    • マル6国債の入札前取引

      国債の入札前取引を行う場合の、表面利率等発表前における自己資本規制比率の算出については、以下のとおり取り扱うことに留意するものとする。

      • イ. リスク相当額の算出に当たっては、算出時点の流通市場における実勢価格を考慮して合理的に算定された利率、又は当該取引の対象となる国債と償還年限及び発行形式が同一である国債の直近発行例における表面利率(利率が「基準金利-α」により決定される国債については、「直近の基準金利-前回債のα」)を、仮の表面利率として利用するものとし、その際、当該計算方法については、継続して使用すること。

      • ロ. 当該国債に係る入札が実施され、銘柄名、表面利率等が発表された際には、遅滞なく、当該表面利率等に基づき再計算を実施し、当該表面利率発表日以降の自己資本規制比率の計算に適用すること。

    • マル7証券化商品等のクレジット投資のリスク管理

      証券化商品をはじめとする市場性のあるクレジット商品への投資では、以下のような点に留意して、リスク管理を行っているか。なお、市場性のあるローン(自社でオリジネートする場合、セカンダリー市場で取得する場合を問わない。)やCDS取引についても、同様の留意が必要となる。

      • イ. 商品の適切な価格評価

        市場性のあるクレジット商品(市場性のあるローンやCDS取引も含む。)に関して、以下のような点を留意して、価格評価を行っているか。

        • a. 価格評価にあたっては、頻繁に取引されている価格が存在する場合は当該価格で評価し、このような価格が存在しない場合でも、類似商品の価格を用いて評価するなど、可能な限り客観的な価格評価を行っているか。また、価格評価モデルを用いる場合、モデルが一定の前提の上に作られていることを理解し、定期的にモデルの前提やロジックを見直し、適切性を検証しているか。

        • b. フロント部門において算出された商品の価格を、リスク管理上の時価評価額として使用する場合は、当該価格について、リスク管理部門等において、独立した立場から検証を行っているか。

        • c. ブローカーや外部ベンダーから価格評価を取得する場合は、可能な限り価格評価手法にかかる情報の提供を求め、当該価格評価の妥当性の検証に努めているか。また、外部ベンダー等が提供する価格評価モデルを用いる場合は、可能な限り詳細な情報の提供を当該ベンダー等に求め、モデルの前提・特性や限界の把握に努めているか。

        • d. 価格評価モデルを用いるにあたって、流動性リスクや価格評価モデルの不確実性リスク等に重要性があると認められる場合には、これらが適切に考慮されているか。

      • ロ. 証券化商品等投資における商品内容の適切な把握

        • a. 証券化商品等への投資や期中管理にあたり、格付機関の格付手法や格付の意味を予め的確に理解した上で外部格付を利用する等、外部格付に過度に依存しないための態勢が整備されているか。

        • b. 証券化商品等の投資において、裏付となる資産内容の把握、優先劣後構造(レバレッジの程度)や流動性補完、信用補完の状況、クレジットイベントの内容といったストラクチャーの分析及び価格変動の状況の把握等、自ら証券化商品等の内容把握に努めているか。

        • c. 証券化商品投資では、原資産ポートフォリオの運用・管理をオリジネーター、マネージャー等の関係者に依存していることから、関係者の能力・資質、体制等の把握・監視に努めているか。

        • d. 証券化商品については、オリジネーターによる原資産の組成において、その組成当初から当該原資産の全てを証券化ビークルに譲渡することを意図した場合、投資分析等が疎かになるなど不適切な原資産組成がなされ、その結果当該証券化商品の持分のリスクが高くなるおそれがある。そのため、当該証券化商品のリスクの一部を、オリジネーターが継続保有することが望まれる。これらを踏まえ、オリジネーターが証券化商品に係るリスクの一部を継続保有しているか確認しているか。また継続保有していない場合には、オリジネーターの原資産に対する関与状況や原資産の質についてより深度ある分析をしているか。

      • ハ. 市場流動性リスクの管理

        • a. 証券化商品等への投資や期中管理において、市場流動性を適切に検証しているか。なお、市場流動性を検証する方法としては、

          i) 市場規模と自己の投資額とを比較し、過大なシェアとなっていないかを確認すること
          ii) ヒアリング等を通じて、市場のビッド・オファー・スプレッドや実際に売却可能な価格水準を把握すること
          iii) 各種指数等(証券化商品のインデックス等)の分析により市場環境の変化をモニターすること
          iv) 市場流動性枯渇に関するストレスシナリオを作成し、証券化ポートフォリオの損益等を確認すること

          等が考えられる。

        • b. 証券化商品等の市場流動性につき、懸念が認められた場合、適時に対応を検討する態勢が整備されているか。

      • ニ. 証券化商品の組成等に係るリスク管理

        • a. 証券化商品等を組成し、販売する(又は市場性のあるローンを売却する)までの過程において、市場環境が変化し、原資産にかかるリスク(又は当該ローンのリスク)を投資家に移転することが困難になる可能性(パイプラインリスク)について検討されているか。また、証券化商品等の販売後、買戻し特約等により再び原資産に係るリスクを負う可能性がある場合に、買戻し等を行った際の対応(新たな投資家の確保や自己のポートフォリオへの組込み等)があらかじめ検討されているか。証券化(シンジケーション)業務を行うに当たっては、以上のリスクも織り込んで、リスク・リターンの判断を行っているか。

        • b. 非連結の特別目的会社等を用いて、証券化商品等を組成・販売する等により、原資産に係るリスクを投資家に移転した場合であっても、レピュテーショナルリスクなどから、市場環境の変化によっては、再び原資産に係るリスクを負う可能性について、ストレステストに織り込む等の方法によりあらかじめ検討されているか。証券化(シンジケーション)業務を行うに当たっては、以上のリスクも織り込んで、リスク・リターンの判断を行っているか。

IV-2-4 取引先リスク管理態勢

取引先リスクとは、取引先に対する債権の保有に伴うリスクをいい、取引先が義務を履行しないことなどにより、金融商品取引業者が損失を被るリスクである。金融商品取引業者は、取引先リスクを適切に管理していくことが重要である。

  • (1)主な着眼点

    総合的なリスク管理態勢の整備、適切なリスク認識と評価、新商品・新規業務導入時の社内検証の実施、役割分担と権限の明確化による相互牽制体制の構築等により、取引先リスクが適切に管理されているか。

  • (2)監督手法・対応

    月次のオフサイト・モニタリング報告やそれに基づくヒアリング等を通じて、取引先リスクの状況やリスク管理態勢の把握に努めるものとし、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴求を行い、改善を促すこととする。

  • (3)具体的な取扱い

    • マル1与信相当額から控除している担保金等の確認

      自己資本規制告示第15条第5項及び第6項の規定に基づき担保金その他の資産の評価額を控除している場合においては、次の点に留意の上、控除額が適切であるか確認するものとする。

      • イ. 当該担保金その他の資産が担保として相応しいものであるか。

      • ロ. 当該担保金その他の資産の評価額及び当該評価額から控除すべき市場リスク相当額が適切に算出されているか。

    • マル2法的に有効な相対ネッティング契約の確認

      取引先リスク相当額を算出する場合において、法的に有効な相対ネッティング契約下にある取引について、相殺した後の額により与信相当額を算出しているときは、次の点を確認するものとする。

      • イ. その法的有効性について、取引の相手方が破綻した場合又は取引の相手方との間で紛争が生じた場合に、関連する法律に照らして、金融商品取引業者の与信が当該ネッティング契約の下で相殺された金額に留まると所管の裁判所又は監督機関が合理的に判断するであろうことを示す、法的見解(リーガル・オピニオン)を必要に応じ書面により確認しているか。

      • ロ. 関連する法律について、少なくとも、次に掲げるものを調査しているか。

        • a. 取引の相手方に設立の免許又は許可を与えた国の法律及び取引の相手方の国外の営業所又は事務所の所在する国の法律

        • b. ネッティングの対象となる個々の取引に係る法律とネッティングの根拠

        • c. ネッティングを行うために必要な契約に係る法律とネッティングの根拠

    • マル3保証予約の確認

      形式及び名義の如何にかかわらず、将来において債務保証契約の成立を約する契約を保証予約として取引先リスク相当額を算出しているか確認するものとする。この場合において、名義上、経営指導念書(子会社等が金融機関等から借入れを行う際に子会社等への監督責任を認め、子会社等に対し経営指導等を行うことを約して債権者に差し入れる文書をいう。)であっても、その記載内容に基づく法的効力が債務保証又は保証予約と同様と認められるもので、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「財務諸表等規則」という。)第58条の規定により貸借対照表に注記しなければならないものは、保証予約に該当するものとする。

    • マル4債務超過と認められた法人の確認

      公表又は未公表を問わず、検査部局による検査又は外部監査の結果、債務超過と認められた法人は、自己資本規制告示第15条第3項第3号の表(注3)(4)の「客観的に債務超過状態にあると認められた法人」に該当する。

    • マル5連結財務諸表提出会社の確認

      自己資本規制告示第15条第3項第3号の表(注1)に規定する連結財務諸表提出会社が付与されている適格格付により取引先リスク相当額を算出することができる連結子会社とは、連結決算の対象会社であって、当該連結決算について適切な外部監査を受けているものをいうことに留意し、当該事実を監査報告書により、適宜、確認するものとする。また、関係会社に対する与信相当額及び取引先リスク相当額の計算については、その内容が適正であることを、契約書及び監査報告書等を参考に、適宜、モニタリングするものとする。

    • マル6国際機関

      標準的方式により取引先リスク相当額を算出する場合において、国際復興開発銀行、国際金融公社、多数国間投資保証機関、アジア開発銀行、米州開発銀行、アフリカ開発銀行、欧州投資銀行、欧州投資基金、北欧投資銀行、欧州復興開発銀行、カリブ開発銀行、イスラム開発銀行、予防接種のための国際金融ファシリティ及び欧州評議会開発銀行は、国際機関に該当するものとする。

  • (4)非清算店頭デリバティブ取引

    • マル1変動証拠金

      金融商品取引業者(金商業等府令第123条第10項第4号ロに該当する店頭デリバティブ取引に係る想定元本額の合計額の平均額が3,000億円未満の者を含む。)は、金融機関等を相手方とする非清算店頭デリバティブ取引において、金商業等府令第123条第1項第21号の5その他関連する規定並びにバーゼル銀行監督委員会及び証券監督者国際機構「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」(平成27年3月)を踏まえ、例えば以下の点に留意し、変動証拠金の適切な管理に係る態勢整備に努めているか。

      • イ. 取引の相手方との変動証拠金に係る適切な契約書(例えば、ISDAマスター契約及びCSA契約)の締結

      • ロ. 金商業等府令第123条第9項第1号において、変動証拠金が金銭をもって充てられる場合については、為替リスクに係るヘアカットを適用しない旨規定されているところ、変動証拠金を主要な通貨(日本円、米国ドル、ユーロ等)以外の金銭で受領した場合で、取引の当事者がそれぞれあらかじめ定めた一の通貨と異なる場合における一定の為替リスクの考慮

      金商業等府令第123条第10項第4号ロに該当する店頭デリバティブ取引に係る想定元本額の合計額の平均額が3,000億円未満の金融商品取引業者は、取引の規模、リスク特性等を勘案した十分な頻度での定期的な非清算店頭デリバティブ取引の時価の合計額等の算出及び変動証拠金の授受並びにアドホックコール(証拠金の随時請求)に対応した変動証拠金の授受を行うための態勢整備に努めているか。

    • マル2当初証拠金

      金商業等府令第123条第1項第21号の6の規定(当初証拠金)の対象となる金融商品取引業者は、同号で対象となる非清算店頭デリバティブ取引において、同号その他関連する規定並びにバーゼル銀行監督委員会及び証券監督者国際機構「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」(平成27年3月)を踏まえ、例えば以下の点に留意し、当初証拠金の適切な管理に係る態勢整備に努めているか。

      • イ. 取引の相手方との当初証拠金に係る適切な契約書(例えば、ISDAマスター契約及びCSA契約並びに当初証拠金管理に係る契約(信託の設定に係る契約等))の締結

      • ロ. 金銭で受領した当初証拠金を信託設定する場合等については、当初証拠金を安全な方法により運用することが金商業等府令第123条第1項第21号の6ホにおいて許容されているところ、当該安全性の適切な確保

      • ハ. 当初証拠金の算定

        • a. 「金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第21号の6 イの規定に基づき、金融庁長官が定める潜在的損失等見積額を算出する方法」(以下「潜在的損失等見積額の算出告示」という。)第1条において、定量的計算モデル又は標準表の使用が規定されているところ、潜在的損失等見積額の算出告示に基づくいずれの方法を使用する場合でも、対象取引のリスクを適切に捕捉できる取引区分を用いた潜在的損失等見積額の算出

        • b. 定量的計算モデルを使用する場合、潜在的損失等見積額の算出告示第6条第2号から第5号に基づく、モデル管理部署による、適切な管理手続きの作成並びに運営及びバックテストその他検証の実施

        • c. 定量的計算モデルを使用する場合、潜在的損失等見積額の算出告示第6条第6号を踏まえた適切な内部監査の実施

    • マル3当初証拠金及び変動証拠金共通

      マル1又はマル2における金融商品取引業者は、例えば以下の点に留意し、当初証拠金及び変動証拠金の適切な管理に係る態勢整備に努めているか。

      • イ. 証拠金に用いられる資産について、例えば、流動性の低い有価証券は一定未満とするなどの適切な分散

      • ロ. 証拠金に係る紛争について、紛争が発生した場合の対応策の事前の策定、適切な対応の実施並びに紛争内容の記録及び保存

      • ハ. 一括清算の約定の法的有効性が確認されていない外国の金融機関等を取引相手とした、証拠金の授受等の措置を講ずることが求められていない非清算店頭デリバティブ取引に係る適切なリスク管理

IV-2-5 流動性リスク管理態勢

流動性リスクとは、金融商品取引業者の業績の悪化等により必要な資金が確保できなくなり、資金繰りがつかなくなる場合や、資金の確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスク(資金繰りリスク)と、市場の混乱等により市場において取引が出来なかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスク等(市場流動性リスク)からなる。金融商品取引業者は、流動性リスクを適切に管理していくことが重要である。

  • (1)主な着眼点

    総合的なリスク管理態勢の整備、適切なリスク認識と評価及び役割分担と権限の明確化による相互牽制体制の構築等を図るため、業務の内容・規模に応じて例えば以下のような措置を講じるなど、流動性リスクを適切に管理しているか。

    • マル1日々の資金繰りの管理及び中長期の資金繰り見通しの策定・管理

    • マル2各資産の運用限度額(リミット)の設定・管理

    • マル3円建取引・外貨建取引や国内取引・海外取引の統合的な管理

    • マル4業容又は市場環境の急変に備えた資金調達手段(支払準備資産)の確保

    • マル5流動性リスク管理の担当者に対する、情報収集・業務管理権限の付与

  • (2)監督手法・対応

    月次のオフサイト・モニタリング報告やそれに基づくヒアリング等を通じて、流動性リスクの状況やリスク管理態勢の把握に努めるものとし、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴求を行い改善を促すこととする。

IV-2-6 早期警戒制度

金融商品取引業者の経営の健全性を確保していくための手法としては、金商法第46条の6第1項の規定に基づく、「早期是正措置」が定められているところであるが、本措置の対象とはならない金融商品取引業者であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みがなされる必要がある。

このため、金融商品取引業者が、以下に掲げる自己資本規制比率の変動、有価証券の価格変動等について、あらかじめ設定した基準に該当することとなった場合には、早期警戒制度に基づくヒアリングや報告徴求等を行うことによって、早め早めにリスクを特定することとする。

(注) 早期警戒制度の枠組みの下では、個々の基準に該当する金融商品取引業者に対しヒアリング等の監督上の対応を実施していくこととなるが、そうした場合であっても、当該金融商品取引業者の経営が不健全であると自動的にみなされるものではなく、当局としても、必ずしも直ちに経営改善を求めるものではない。

また、業者側のコストや監督行政の効率性の観点から、早期警戒のモニタリングは金融商品取引業者の規模及びリスク特性等に応じて柔軟に運用するものとする。

  • (1)自己資本規制比率の変動

    自己資本規制比率の毎月の変動幅、変動割合について、オフサイト・モニタリングのデータ等に基づき把握し、顕在化しているリスクに関する分析等を行う。

  • (2)有価証券の価格変動

    金融商品取引業者の有価証券保有額について、オフサイト・モニタリングのデータ等に基づき把握し、一定の価格変動を仮定したストレステストを基に、市場リスクに関する分析等を行う。

  • (3)為替変動の影響等

    店頭金融先物取引を行う金融商品取引業者に対しては、為替変動の影響についてオフサイト・モニタリングのデータ等に基づき把握し、分別管理の方法やレバレッジ率、取引形態等に関する状況と照らして、為替変動によって自己資本が毀損するリスク等に関する分析等を行う。

  • (4)監督手法・対応

    上記(1)から(3)までのデータを元に、それぞれの状況についてあらかじめ設定した基準に該当することとなった場合には、当該金融商品取引業者に対し、早期警戒制度に基づくヒアリングや報告徴求等を行うことによって、早め早めにリスクを特定することとする。

    また、現状について改善策を確実に実行させる必要があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。

IV-3 業務の適切性(第一種金融商品取引業)

IV-3-1 有価証券関連業に係る業務の適切性

IV-3-1-1 法令等遵守態勢

証券会社等は、個人投資家、機関投資家、有価証券の発行体である企業等が、金融商品市場にアクセスする際に、市場仲介者として機能し、円滑な取引を可能とする役割を果たしている。こうした業務には高い公共性が付随しており、証券会社等は、適正な投資者保護を図りつつ、信頼性の高い業務を遂行することにより、市場仲介機能を効率的かつ安定的に発揮することが求められている。また、そのためには、市場プレイヤーとしても、高い自己規律の下で健全かつ適切に業務を運営することが求められている。

こうした証券会社等のコンプライアンス態勢については、基本的には III-2-1における態勢整備の着眼点及び監督手法をもって対応することとするが、それ以外にも、市場仲介機能等の適切な発揮の観点から策定された自主規制ルールの遵守状況も含めた幅広い検証を行うこととする。

IV-3-1-2 勧誘・説明態勢

  • (1)説明書類に係る留意事項

    金商法第46条の4(金商業等府令第174条第4号)に規定する説明書類の「内部管理の状況の概要」には、顧客からの相談及び苦情に対する具体的な取扱い方法及び内部監査体制について、記載することとする。

  • (2)有価証券の受渡状況その他の必要情報の通知に係る留意事項

    証券会社等が、次に掲げる事項を顧客に適切に通知(下記マル4については顧客の同意した方法による場合を含む。)していない場合は、金商業等府令第123条第1項第8号の規定「顧客の有価証券の売買その他の取引等に関し、受渡状況その他の顧客に必要な情報を適切に通知していないと認められる状況」に該当するものとする。

    • マル1金商法第37条の4第1項に規定する契約締結時等の書面に記載すべき事項

    • マル2顧客が国債の入札前取引を行った場合であって、当該国債に係る入札が成立した後においては、当該取引に係る銘柄、単価及び金額並びに当該取引の約定の際に取引報告書において通知した事項(償還予定日及び約定利回りを除く。)

    • マル3顧客が国債の入札前取引を行った場合であって、当該取引契約に係る停止条件が不成就となった後においては、当該事実及び当該取引の成否に係る事項(通知しないことについて顧客から同意を得た場合を除く。)

    • マル4上記マル1からマル3までに掲げるもののほか、金銭若しくは有価証券の受渡しに関する事項(ただし、金融機関を通じて金銭の受渡しを行う場合、振替決済により有価証券の受渡しを行う場合等、顧客との間で直接金銭又は有価証券の受渡しを行わない場合における当該受渡しに関する事項を除く。)

  • (3)高齢顧客への勧誘に係る留意事項

    高齢顧客は、過去の投資経験が十分であったとしても、身体的な衰えに加え、短期的に投資判断能力が変化する場合もあることから、高齢顧客に対する投資勧誘においては、適合性の原則に基づいて、慎重な勧誘・販売態勢を確保するとともに、問題のある勧誘・販売を早期に発見するためのモニタリング態勢を整備する必要がある。また、商品販売後においても、丁寧にフォローアップしていく必要がある。以上を踏まえ、以下の点に留意して監督するものとする。

    • マル1日本証券業協会自主規制規則「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」及び「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則第5条の3の考え方」(高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン)を踏まえ、高齢顧客に対する勧誘・販売に関する社内規則を整備するとともに、社内規則の遵守状況をモニタリングする態勢を整備しているか。

    • マル2商品の販売後においても、高齢顧客の立場に立って、きめ細かく相談にのり、投資判断をサポートするなど丁寧なフォローアップを行っているか。

  • (4)投資信託の勧誘に係る留意事項

    投資信託は、専門知識や経験等が十分ではない一般顧客を含めて幅広い顧客層に対して勧誘・販売が行われる商品であることから、顧客のライフステージ、財産の状況、投資目的等を踏まえたニーズを把握し、これに見合った商品を提供するとともに、顧客の知識、経験、投資意向に応じて適切な勧誘を行うことが重要である。

    また、顧客の安定的な資産形成を支援する勧誘・販売態勢を構築し、投資信託の預り資産を拡大していくことは、顧客の資産形成はもとより、証券会社等にとっても、市況に左右されづらい安定的な収益構造への転換につながるものと考えられる。

    以上の観点を踏まえ、投資信託の勧誘に関し、以下の点に留意して監督するものとする。

    • マル1投資信託の勧誘を行う際、販売手数料等の顧客(特定投資家を除く。マル2及びマル3において同じ。)が負担する費用について、次に掲げる事項を分かりやすく説明しているか。

      •  イ.勧誘を行う投資信託の販売手数料の料率及び購入代金に応じた販売手数料の金額(勧誘時点で確定できない場合は概算額)

      •  ロ.販売手数料は、投資信託の保有期間が長期に及ぶほど1年当たりの負担率が逓減していくこと(保有期間別(1年、3年、5年)の1年当たりの負担率の状況を例示する等)。

      •  ハ.勧誘する投資信託の購入後、顧客が負担することになる費用(信託報酬(ファンド・オブ・ファンズ方式での運用を行う投資信託については投資対象とするファンドの運用管理費用を含めた実質的な負担率)、信託財産留保額等)

    • マル2投資信託の分配金に関して、分配金の一部又は全てが元本の一部払戻しに相当する場合があることを、顧客に分かり易く説明しているか。

    • マル3通貨選択型ファンドについては、投資対象資産の価格変動リスクに加えて複雑な為替変動リスクを伴うことから、通貨選択型ファンドへの投資経験が無い顧客との契約締結時において、顧客から、商品特性・リスク特性を理解した旨の確認書を受け入れ、これを保存するなどの措置をとっているか。

  • (5)投資信託の乗換えに関する重要事項の説明に係る留意事項

    投資信託の短期乗換え勧誘は、顧客にとっては販売手数料の負担が増加するほか、運用面においても設定後短期間で解約が増加することにより、効率的な運用が行えず、運用成果の低下を招くなど、必ずしも顧客の安定的かつ効率的な資産形成にはつながらない問題がある。このため、顧客の投資意向や市場動向等に鑑み、投資信託の乗換えに合理性があると判断される場合であっても、顧客に対し、当該乗換えに係る投資信託の特性や当該乗換えのメリット・デメリット等を丁寧に説明し、顧客がこうした点を十分理解したうえで取引の必要性の有無を判断できるようにする必要がある。

    こうした点を念頭に、証券会社等が、乗換えに関する次に掲げる事項について説明を行っていない場合において、説明の実績について社内記録の作成及び保存並びにモニタリングを行う等の社内管理体制を構築していないと認められるときは、金商業等府令第123条第1項第9号の規定「投資信託受益証券等の乗換えを勧誘するに際し、顧客に対して、当該乗換えに関する重要な事項について説明を行っていない状況」に該当するものとする。

    • マル1投資信託又は投資法人(以下「投資信託等」という。)の形態及び状況(名称、性格等)

    • マル2解約する投資信託等の状況(概算損益等)

    • マル3乗換えに係る費用(解約手数料、販売手数料等)

      •  (注)解約手数料、販売手数料等については、各料率並びに解約代金及び購入代金に応じた各手数料の金額(乗換え勧誘時点で確定できない場合は概算額)についても説明する必要があることに留意する。

    • マル4償還乗換優遇制度に関する事項

    • マル5その他投資信託等の性格、顧客のニーズ等を勘案し、顧客の投資判断に影響を及ぼすもの

  • (6)債券の売出し等の際の重要事象の説明に係る留意事項

    • マル1証券会社等が、金商法第2条第8項第8号又は第9号(私募の取扱いを除く。)の行為により債券(金商業等府令第123条第1項第11号に規定する有価証券をいう。(6)において同じ。)を個人である顧客(特定投資家を除く。)に取得させ又は売り付けようとする際に、次に掲げる事象について説明を行っていないと認められる場合は、金商業等府令第123条第1項第11号に規定する「これらの有価証券の取得又は買付けの申込みの期間中に生じた投資判断に影響を及ぼす重要な事象について、個人である顧客(特定投資家を除く。)に対して説明を行っていない状況」に該当するものとする。

      • イ. 当該債券の利回りが、当該債券と同じ発行体が既に発行している類似の債券の利回りと比較して、顧客にとって著しく不利な状況となっている場合においては、その旨

      • ロ. 当該債券の償還条件が、金融商品市場における相場その他の指標(以下「指標等」という。)の状況により決定される仕組みのものである場合において、当該債券を取得させ、又は売り付けようとする時点における当該指標等の状況が、当該債券の発行条件又は売出条件の設定時に基準となった当該指標等の状況と比較し、顧客にとって不利な状況となっている場合においては、その旨

    • マル2上記マル1イについては、以下の点に留意すること。

      • イ. 「当該債券」とは、個人向け社債等(日本証券業協会自主規制規則「個人向け社債等の店頭気配情報の発表等に関する規則」第2条第1号に規定する個人向け社債等をいう。以下同じ。)に該当する債券をいうこと。

      • ロ. 「類似の債券」とは、個人向け社債等であって、当該債券(新発債)の償還日に6ヵ月を加えた期間内に償還日が到来するもののうち、当該債券(新発債)の償還日に最も償還日の近い銘柄(複数銘柄が存在する場合は、直近に発行が行われた銘柄とする。)をいうこと。

      • ハ. 「顧客にとって著しく不利な状況」については、募集(売出)時点の金利水準その他の事情を勘案し、例えば、以下の値(α)を基に判断すること。

        • α=Χ(類似の債券のクレジット・スプレッド相当分)-Υ(当該債券(新発債)のクレジット・スプレッド相当分)

        • Χ=(類似の債券に係る「個人向け社債等の店頭気配情報発表制度」上の報告値(募集を行う日の前日付で発表された値)の平均値(注))-(類似の債券と償還日が最も近い国債の日本証券業協会発表の公社債売買参考統計値の平均値単利(募集を行う日の同日付で発表された値))

        • Υ=(当該債券(新発債)の応募者利回り(単利))-(当該債券(新発債)と償還日が最も近い国債の公社債売買参考統計値の平均値単利(条件決定日の翌日付で発表された値))

        • (注)「類似の債券に係る「個人向け社債等の店頭気配情報発表制度」上の報告値の平均値」は、「個人向け社債等の店頭気配情報発表制度」に基づき日本証券業協会に報告・発表される、当該類似の債券に係る各報告会員の報告値(単利)を単純平均したものとする。

    • マル3上記マル1ロについては、以下の点に留意すること。

      • イ. 「顧客にとって不利な状況」とは、証券会社等があらかじめ一定の値幅を定め、債券を取得させ又は売り付けようとする時点の(又はその前日の対象銘柄の終値等を基にした)当該債券の理論価格が募集(売出)価格からの当該値幅を超えて下落している場合をいうこと。

      • ロ. 上記イの理論価格は債券の発行(売出)条件を決定した際に基となった算定式によって算定すること、値幅は募集・売出期間後の販売に係る社内ルールにおいて定められた水準(仕切値幅制限)を踏まえたものであること、理論価格の算定式等の記録の整理・保存を行うこと及び当該取扱いに係る社内ルールの整備など適切な社内管理体制を整備すること。

      • ハ. 他社株転換権付社債や償還特約付日経平均リンク債といった株式市場の相場により償還条件が決まる債券(以下「EB等」という。)に関する「顧客にとって不利な状況」については、イの方法に代えて、EB等を取得させ又は売り付けようとする時点の対象銘柄の価格(又はその前日の対象銘柄の終値)が、当初価格(発行条件設定の基礎となった対象銘柄の価格又は当該価格に準ずるものとして各社において定める価格をいう。)と比較して7%以上下回る場合とすることも認められること(募集(売出)期間前に当該方法によることをあらかじめ定めている場合に限る。)。

      • ニ. 募集・売出期間中に上記のいずれの方法を採用するかにかかわらず、募集・売出期間経過後のEB等の販売に当たっては、社内ルールに基づいて算出した適正な取引価格を提示しない場合には、金商業等府令第117条第1項第2号違反となる場合があること。

    • マル4金商業等府令第123条第1項第11号に規定する説明については、委託契約において、「取得させようとする行為」を証券会社等が行うこととされている場合には、証券会社等が説明を行うこととなる。

  • (7)証券化商品の販売に係る留意事項(証券化商品の追跡可能性(トレーサビリティ)の確保)

    証券化商品の中には、複雑な構造を有し、組成・販売の過程に複数の関係者が介在するものがあり、原資産の組成者から、証券化商品の組成者、販売者(場合によっては二次販売者)、投資家に至る一連の流れの中で、原資産の内容やリスクにつき適切な情報伝達がなされない場合には、投資家におけるリスクの的確な把握が困難になるおそれがある。

    証券化商品の取引は、基本的にはプロ同士(証券会社等と適格機関投資家等)の取引と考えられるため、法令上の開示規制や業者の説明義務の対象にはならない可能性が高いものの、その販売に関しては、上記の視点も勘案し、日本証券業協会自主規制規則「証券化商品の販売等に関する規則」を踏まえ、以下のような点に留意するものとする。

    なお、証券会社等が単なる売買の媒介しか行わないなど限定的な役割しか担わない場合であっても、投資者と接点を有する限りにおいては、実務上可能な範囲で協力をすることが望ましい。

    • マル1販売に先立ち、原資産の内容やオリジネーターのリスクの継続保有状況、リスクに関する情報を収集し、適切な説明が可能となるよう、分析を行っているか。

    • マル2販売の際に、格付けのみに依存することなく、原資産のリスク、格付けに反映されない流動性リスク等についても情報伝達を行うよう、社内手続き・ルールが定められており、必要な態勢が整備されているか。

    • マル3投資者である顧客からの要望があれば、当該顧客が原資産の内容やリスクに関する情報を適切にトレースすることができるよう、情報伝達のための社内手続き・ルールが定められており、必要な態勢が整備されているか。

    • マル4市場価格の特定が困難となった場合にも、理論価格等を評価・算定し、顧客に迅速かつ的確に提示することができる態勢が整備されているか。また、当該理論価格等の評価・算定に当たっては、情報利用者による意図的な特定の利用に資することを優先した恣意的な算定等がなされていないか。

  • (8)少額投資非課税制度を利用する取引の勧誘に係る留意事項

    家計の安定的な資産形成を支援する仕組みとして、平成26年1月より、成人を対象とした少額投資非課税制度(以下「一般NISA」という。)が導入されている。以降、平成28年4月より、未成年者を対象とした少額投資非課税制度(以下「ジュニアNISA」という。)が導入され、また、平成30年1月より、成人を対象としつつ、積立投資に特化した少額投資非課税制度(以下「つみたてNISA」といい、一般NISA、ジュニアNISA及びつみたてNISAを総称して以下「NISA制度」という。)が導入されている。

    NISA制度は、年間の投資上限額の範囲内で購入した金融商品について、所定の非課税期間を通じて、その収益を非課税とする制度であり、これまで金融商品に対する投資を通じた資産形成を行ってこなかった者を中心に、当該方法による資産形成を促すことを目的としたものである。

    こうした点を踏まえ、NISA制度が、その趣旨に則り適切に利用されるよう、NISA制度を利用する取引の勧誘等に関し、「NISA制度の口座開設及び勧誘並びに販売時等における留意事項について(ガイドライン)」(NISA推進・連絡協議会)(以下本(8)において「ガイドライン」という。)を踏まえつつ、以下のような点に留意して監督するものとする。

    • マル1顧客に対する説明態勢の整備

      • イ.顧客の金融リテラシー向上への取組み

        NISA制度は、初めて投資を行う者や若年層など、投資知識・経験の浅い顧客による利用が想定されるところ、こうした顧客に対しては、単に法令上の適合性原則を遵守することだけではなく、顧客の金融(投資)リテラシーの向上を図り、自らの資産形成に取り組んでもらうことが顧客・証券会社等相互の利益につながるとの観点に立って、中長期投資や分散投資の効果等の説明といった投資に関する基礎的な情報を、適切に提供するよう努めているか。

      • ロ.NISA制度に関する説明

        一般NISA及びつみたてNISAに係る非課税口座並びにジュニアNISAに係る未成年者口座(以下これらを総称して「NISA口座」という。)開設の勧誘・申込みの受付時等に、適合性原則等を踏まえた説明がされているか。例えば、ガイドラインで説明すべきとされている事項を、必要に応じて、顧客に誤解を与えることのないよう正確に、分かりやすく説明しているか。

    • マル2制度設計・趣旨等を踏まえた金融商品の提供

      NISA制度が家計の安定的な資産形成を後押しする制度として導入された趣旨やNISA制度を利用する顧客の目的等を考慮しつつ、適合性原則等を踏まえて真に顧客の安定的な資産形成に資するような金融商品を中心とした商品提供を行っているか。

      なお、顧客の安定的な資産形成に資するかどうかの判断にあたっては、個別の商品の特性だけでなく、顧客のポートフォリオ全体のバランスに十分留意する必要がある。

    • マル3ジュニアNISAについて留意すべき事項

      ジュニアNISAが未成年者向けの制度であることを踏まえ、ジュニアNISA口座が、親権者等によって仮名口座として利用されるといったことのないよう留意する必要がある。

      こうした観点から、例えば、ジュニアNISA口座開設者の年齢等に応じて取引残高報告書等を当該口座開設者本人宛に送付することや、ジュニアNISA口座開設時や払出し時に、当該口座内の資金が口座開設者本人の資金であり、本人のために利用される旨の確認を行うことといった、適切な口座管理がなされているか。

  • (9)営業員の業務上の評価に係る留意事項

    顧客の中長期的な資産形成を支援する勧誘・販売態勢を構築する観点から、営業員に対する業務上の評価が投資信託の販売手数料等の収入面に偏重することなく、預り資産の増加等の顧客基盤の拡大面についても適正に評価するものとなっているか留意して監督するものとする。

  • (10)監督手法・対応

    日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された証券会社等の勧誘・説明態勢に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、証券会社等における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-1-3 取引一任契約等

  • (1)関係外国証券業者との取引一任契約に係る留意事項

    定義府令第16条第1項第8号ロの規定に基づく契約を締結しようとする場合の届出の受理に関しては、以下の点に留意して行うものとする。

    • マル1当該契約に係る取引を執行する部門と他の委託取引を受託・執行する部門が明確に分離されているか。

    • マル2帳簿書類の作成において、当該契約に係る取引であることが判別可能な方法により処理されることとなっているか。

  • (2)証券会社等の特定同意の範囲について

    金商業等府令第123条第1項第13号ロ及びハにおける特定同意は、次に掲げる同意を含む。

    • マル1特定の価格(あらかじめ定める方式により決定される価格を含む。)以上(売り注文の場合)又は以下(買い注文の場合)。

    • マル2特定の価格を基準値として適切な幅を特定したもの。

    • マル3証券会社等に一日の取引の中で最良執行を要請した上で価格について当該証券会社等が裁量で定めること(いわゆる「CD注文」)。

    • マル4一日の出来高加重平均価格等あらかじめ定める方式により決定される価格を目標とすること。(いわゆる「VWAPターゲット注文」が含まれる。)

  • (3)監督手法・対応

    日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された金商業等府令第123条第1項第13号イからホまでに掲げる取引に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、証券会社等における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-1-4 親子法人等との非公開情報の授受

  • (1)法人顧客に対するオプトアウトの機会の提供

    証券会社等は、金商業等府令第153条第1項第7号及び第8号並びに同条第2項に基づき、法人顧客に対してオプトアウト(あらかじめ非公開情報を共有する旨を通知された上で、共有を望まない場合に親子法人等への非公開情報の提供の停止を求めることをいう。以下同じ。)の機会を提供することにより、その親子法人等との間で、当該法人顧客に係る非公開情報の授受を行うことが認められている。法人顧客に対するオプトアウトの機会の提供の適切性については、以下の点に留意して検証するものとする。

    • マル1法人顧客に対し、あらかじめ親子法人等との間で授受を行う非公開情報の範囲、非公開情報の授受を行う親子法人等の範囲、非公開情報の授受の方法、提供先における非公開情報の管理の方法、提供先における非公開情報の利用目的及び親子法人等との間での非公開情報の授受を停止した場合における当該非公開情報の管理方法を通知しているか。なお、これらの事項の詳細について店舗での掲示・閲覧やホームページへの掲載を行っている旨及び問合せ先を法人顧客に対する通知において明らかにするなど、法人顧客が必要な情報を容易に入手できるようにしていれば、当該通知においてこれらの事項の詳細が含まれていなくても、適切に通知が行われていると認められる場合があると考えられる。

    • マル2法人顧客に通知した内容に軽微な変更があった場合は、その都度通知を行う必要まではないが、例えば、最新の情報をホームページに常時掲載するとともに、その旨を法人顧客に適切に説明するなど、法人顧客が必要な情報を入手できるようにしているか。

    • マル3オプトアウトの機会の通知は、契約締結時に書面等により行うなど、法人顧客がオプトアウトの機会について明確に認識できるような手段を用いて行っているか。

      さらに、オプトアウトの機会に関する情報について店舗での掲示・閲覧やホームページへの掲載を常時行うとともに、例えば、ホームページにおいて法人顧客が常時オプトアウトできるようにすることや、法人顧客がオプトアウトする場合の連絡先を内部管理部門に常時設置することなどにより、法人顧客に対し、オプトアウトの機会が常時提供されていることを明確にしているか。

    • マル4法人顧客にオプトアウトの機会の通知を行ってから、親子法人等との間で当該法人顧客に係る非公開情報の授受を開始するまでの間に、当該法人顧客がオプトアウトするか否かを判断するために必要な期間を確保しているか。

    • マル5証券会社等において、オプトアウトの機会を提供せず、オプトイン(非公開情報を共有されることについて書面により積極的に同意することをいう。以下同じ。)した場合にのみ親子法人等との間でその非公開情報の授受を行う取扱いとする法人顧客がある場合には、どのような属性の法人顧客に対してオプトアウトの機会を提供するのか(又は提供しないのか)の情報の店舗での掲示・閲覧やホームページへの掲載等を通じて、各法人顧客において、自己がオプトアウトの機会の提供を受ける顧客に該当するかを容易に認識できるようにしているか。

  • (2)親子法人等との非公開情報の授受に係る留意事項

    証券会社等が、金商業等府令第153条第1項第7号及び第8号並びに同条第2項に基づき、親子法人等との間で顧客の非公開情報の授受を行うに当たっては 、III-2-4のほか、以下の点に留意する必要がある。

    • マル1親子法人等との間で授受を行う非公開情報の範囲が、あらかじめ特定されているか。

    • マル2親子法人等との間で授受を行う非公開情報について、アクセス管理の徹底、関係者による持ち出し防止に係る対策及び外部からの不正アクセスの防止など、十分な情報管理がされているか。

    • マル3証券会社等及び非公開情報の授受を行う親子法人等のそれぞれにおいて、内部管理部門に非公開情報の管理を行う責任者を設置するなど、非公開情報の管理を一元的に行う体制が整備されているか。また、オプトアウトした法人顧客やオプトインしていない顧客に係る非公開情報(以下「非共有情報」という。)については、その他の非公開情報と分離して管理されているか。さらに、非公開情報及び非共有情報の管理状況について、定期的に検証する態勢となっているか。

    • マル4内部管理部門に設置する非公開情報の管理を行う責任者等が、営業部門等に対し十分に牽制機能を発揮できるよう、例えば以下の措置が講じられているか。

      • イ. 内部管理部門の職員と営業部門その他の非公開情報を利用して業務を行う部門の職員との間で、兼務を認めないこと。

      • ロ. 非公開情報の管理に関する事項について、内部管理部門の判断が営業部門等の判断に必ず優先するなど、的確な牽制権限を有していること。

      • ハ. 非公開情報の管理に関する事項について、営業部門等(経営責任者を除く。)から指揮命令を受けないこととされていること。

    • マル5非公開情報の管理を行う責任者等の権限及び責任体制や非公開情報の取扱いに関する手続きが、書面等において明確にされているか。特に、営業部門における非共有情報の取扱手続が、具体的に定められているか。さらに、こうした手続きについて、当該証券会社等及びその親子法人等の役職員への研修の実施等により、周知徹底が図られているか。

    • マル6証券会社等又は非公開情報の授受を行う親子法人等の営業部門その他の非公開情報を用いて業務を行う部門の役職員について、以下の措置が講じられているか。

      • イ. 当該職員が、当該証券会社等又は非公開情報の授受を行う親子法人等のうち、一の法人等が管理する非共有情報以外の非共有情報にアクセスできないこと。

      • ロ. 当該役職員が、そのアクセスできる非共有情報を管理する法人等以外の法人等が非共有情報を管理する顧客に対して、当該非共有情報を用いて勧誘等を行わないこと。

    • マル7非公開情報を取り扱う各部門と非公開情報を取り扱わない各部門との間の人事異動等に際し、非公開情報が漏えいしないような措置(守秘義務規定の整備及び資料管理等)が講じられているか。また、例えば、証券会社等において非共有情報を取り扱う営業部門その他の非公開情報を用いて業務を行う部門とその親子法人等の営業部門その他の非公開情報を用いて業務を行う部門との間の人事異動等に際しても、同様の措置が講じられているか。

    • マル8証券会社等が事務の外部委託を行う場合には 、III-2-7(2)のほか、非共有情報が委託先を経由して親子法人等に提供されることがないよう、以下の措置が講じられているか。

      • イ. 委託先において、非共有情報とその他の顧客の情報を分離して管理すること等により、非共有情報が親子法人等に提供されない措置を講じていること。

      • ロ. 委託先を通じて顧客へのサービス提供を行う場合において、当該サービスが、当該証券会社等の親子法人等が提供するものと誤認されないような措置を講じていること。

      • ハ. 上記イ及びロの措置が適切に講じられるよう、証券会社等が委託先を適切に監督していること。

  • (3)内部管理業務等を行うために必要な非公開情報の授受に係る留意事項

    証券会社等と当該証券会社等の親子法人等は、電子情報処理組織の保守・管理又は内部の管理及び運営に関する業務(以下(3)において「内部管理業務等」という。)を行う部門(以下(3)において「内部管理部門等」という。)から非公開情報が漏えいしない措置を的確に講じている場合には、金商業等府令第153条第1項第7号ト又はリに基づき、内部管理業務等を行うために必要な非公開情報(非共有情報を含む。)の授受(内部の管理及び運営に関する業務については、証券会社等から特定関係者以外の親子法人等に提供する場合を除く。また、子法人等の経営管理に関する業務については、当該証券会社等の子法人等からの受領又は親法人等への提供に限る。)を行うことができるが、その際には、以下の点に留意が必要である。

    • マル1例えば以下のような証券会社等における業務は、金商業等府令第153条第3項第1号の「法令遵守管理に関する業務」に該当するものと考えられる。

      • イ. 取扱い商品・サービスに関連する法律問題の検討

      • ロ. 顧客等からの苦情・照会等への対応及び顧客等との紛争の処理

      • ハ. 利益相反管理及び非公開情報の管理

      • 二. 監督当局への対応

      • ホ. 営業部門の取引等における法令等違反の管理(社内処分の検討を含む。)

      • ヘ. インサイダー取引等の不正行為防止のための法人関係情報の管理及びモニタリング

      • ト. レピュテーション・リスク及び企業倫理の観点からの業務の検証

      • チ. その他法令に基づく義務を履行するために必要な事務

    • マル2例えば以下のような証券会社等における業務は、金商業等府令第153条第3項第2号の「損失の危険の管理に関する業務」に該当するものと考えられる。

      • イ. 市場リスク(保有する有価証券等の価格の変動等により損失が発生するリスク)の管理

      • ロ. 信用リスク(取引の相手方の契約不履行その他の理由により損失が発生するリスク)の管理

      • ハ. オペレーショナル・リスク(事務処理の誤りその他日常的な業務の遂行において損失が発生するリスク)の管理

      • 二. 流動性リスク管理

      • ホ. 災害時等の業務継続体制(BCM)の整備・管理

    • マル3内部管理部門等において、非公開情報が漏えいしないよう、例えば以下のような措置が的確に講じられているか。

      • イ. 内部管理部門等と、営業部門その他の非公開情報を利用して業務を行う部門の職員との間で、兼務を認めないこと。

      • ロ. 内部管理部門等とそれ以外の部門の間の人事異動に際し、非公開情報が漏えいしないような措置(守秘義務規定の整備及び資料管理等)を講じていること。

      • ハ. 内部管理部門等と非公開情報を取り扱わない部門との間で兼務をする職員がある場合には、非公開情報を取り扱わない部門において、上記イ及びロに準じた措置を講じていること。

    • マル4役員等(役員又は法令遵守管理に関する十分な知識・経験を有し、他の職員の指導・監督を行う立場にある職員をいう。以下マル4において同じ。)が、経営管理又は内部の管理及び運営に関する業務を行うために、その従事する一の法人等が管理する非共有情報以外の非共有情報の提供を受けることは、非共有情報の漏えいには該当しないと考えられるが、その場合には、例えば以下のような措置が講じられているか。

      • イ. 当該役員等から当該非共有情報が漏えいしないこと。

      • ロ. 当該役員等が、当該非共有情報を、経営管理又は内部の管理及び運営に関する業務を行う以外の目的(例えば営業目的)で利用しないこと。

    • マル5上記マル3及びマル4の措置に関する社内規則を整備するとともに、その遵守状況を検証する態勢となっているか。

  • (4)兼職による優越的地位の濫用防止

    証券会社等の営業部門の職員が、親銀行等又は子銀行等(以下(4)において「親子銀行等」という。)の営業部門の職員との間で兼職し、非公開情報の授受を行う場合については、金商業等府令第153条第1項第10号において親子銀行等の取引上の優越的地位を不当に利用する行為が禁止されていることも踏まえ、以下のような点に留意して監督するものとする。

    • マル1親子銀行等との兼職者が、顧客に対して、金融商品取引行為を行うことを内容とする契約(以下「金融商品取引契約」という。)の締結に応じない場合には、融資等にかかる取引を取りやめる旨又は当該取引に係る不利な取り扱いをする旨を示唆し、当該金融商品取引契約を締結することを事実上余儀なくさせていないか。

    • マル2顧客が競争者(他の金融商品取引業者等)との間で金融商品取引契約を締結する場合には、兼職する親子銀行等固有の業務にかかる取引を取りやめる旨又は当該取引に関し不利な取り扱いをする旨を示唆し、競争者との契約締結を妨害していないか。

    • マル3優越的地位を不当に利用する行為を防止するための措置を講じる責任を有する部署を設置し、又は担当者を配置し、かつ、それらの部署又は担当者によって当該行為の防止措置が適切に講じられているかを検証するための内部管理態勢が整備されているか。

    • マル4優越的地位を不当に利用する行為を防止するため、銀行業務に関する知識及び実務経験を有するものにより、定期的かつ必要に応じて適宜研修が実施されているか。

    • マル5優越的地位を不当に利用する行為に係る顧客からの苦情受付窓口の明示、苦情処理担当部署の設置、苦情案件処理手順等の策定等の苦情対応体制が整備されているか。

  • (5)金商業等府令第32 条の解釈について

    • マル1金商業等府令第32 条第1号に規定する「金融商品取引業等又は金融 商品仲介業の 遂行のための業務」とは、金融商品取引業等又は金融商品仲介業に関して経営管理上 の判断等を伴うことのない次に掲げる業務を行うことをいう。

      • イ. 店舗等の不動産及び設備の取得、所有、賃貸借、保守、警備及び 管理業務

      • ロ. 現金自動預入・支払機等の保守・運行等管理業務

      • ハ. 帳簿、計算書、伝票等の作成、整理、保管、発送及び配送業務

      • 二. コンピュータ関連業務(システム開発、保守管理、データの保管管理、電算処理等)

      • ホ. 計算業務(給与計算及び月次決算の計算等の会計事務を含む。)

      • ヘ. 有価証券の管理、整理等に関する業務

      • ト. 名義書換の取次業務

      • チ. 公社債・投資信託の元利金請求業務

      • リ. 金融商品取引所・金融商品取引業者等間等の有価証券の受渡決済業務

      • ヌ. 従業員のカウンセリング等役職員の福利厚生業務及び事務の用に供する物品・サービスの一括購入及び管理業務

      • ル. 人事(金融商品取引業者等又は金融商品仲介業者への労働者の派遣に関する業務を含む。)に関する文書作成等事務的補助業務

      • ヲ. 役職員の教育・研修に関する業務

      • ワ. 広告宣伝業務

      • カ. 自動車の運行、保守、点検等の管理業務

      • ヨ. 統計目的の資料の作成業務

      • タ. 出版物等公開情報の提供を行う業務

      • レ. 書類等の印刷、製本、発送及び配送業務

    • マル2金商業等府令第32 条第2号に規定する「専ら次に掲げるいずれかの 者の業務の遂 行のための業務」とは、経営管理上の判断等を伴うことのない上記マル1に掲げる業務(ハ を除く。)をいう。

      なお、上記マル1ニについては「コンピュータ関連業務(システム開発、保守管理、データの保管管理のためのハードウェア及びソフトウェアの管理、電算処理等)」と、ヘについては「有価証券の管理、整理等に関する業務(親子法人等の自己の財産として保有しているものに限る。)」と、トについては「名義書換の取次業務(親子法人等の自己の財産として保有しているものに限る。)」と、ルについては「人事(金融商品取引業者等又は金融商品仲介業者及び親子法人等への労働者派遣業務を含む。)に関する文書作成等事務的補助業務」と読み替えて適用するものとする。

    • マル3上記マル1ハ(発送及び配送業務は除く。)、ニのデータの保管管理及びヘからリまでの業務は当該金融商品取引業等又は金融商品仲介業及び銀行業等の遂行のために密接に関連する業務であり、合理的な理由がある場合を除き、当該業務は当該金融商品取引業者等若しくは金融商品仲介業者の親子法人等又は金商業等府令第32条第1号及び第2号に規定する会社以外に外部委託できないことが原則であることに留意するとともに、当該業務の遂行状況を適宜監督することに留意する。

      また、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う者に限る。)が上記マル2に掲げる業務を受託する場合、上記マル1イ、ロ、ホ及びヌからレまでの業務については、金商法第35 条第4項に規定するその他業務の承認が必要となることに留意する。

    • マル4上記マル1及びマル2に掲げる業務について当該金融商品取引業者等又は金融商品仲介業者から外部委託する場合においても、当該業務に関する顧客に対する責任及び行政上の責任については当該金融商品取引業者等又は金融商品仲介業者が免れるものではないことに留意する。

  • (6)監督手法・対応

    証券会社等と親子法人等との間の非公開情報の授受に関して、日常の監督事務や事故届出等を通じて把握された課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、証券会社等における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令違反等が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-1-5 誤認防止措置

  • (1)他の金融機関との誤認防止措置に係る留意事項

    顧客が証券会社等を他の金融機関と誤認することを防止する観点から、以下の点に留意して検証することとする。

    • マル1証券会社等が、本店その他の営業所を他の金融機関と同一の建物に設置してその業務を行う場合には、以下の点について、顧客に対して十分に説明しているか。

      • イ. 当該証券会社等と当該金融機関又は親子法人等は、別法人であること。

      • ロ. 当該証券会社等が提供する有価証券関連業に係る商品・サービスは、当該金融機関又は親子法人等が提供しているものではないこと。

    • マル2証券会社等の営業部門の職員が、その親子法人等の営業部門との間で兼職をしている場合には、以下のような措置が適切に講じられているか。

      • イ. 職員が同一の店舗内で取り扱う商品・サービスの内容及びその提供主体である法人名を、当該店舗に掲示することなどにより、来訪した顧客が容易に認識できるようにすること。

      • ロ. 当該職員が、顧客に対し、その兼職する親子法人等の範囲を分かりやすく明示すること。特に、例えば窓口業務のように、不特定多数の顧客を相手にする業務を行う場合は、当該職員が取り扱う主な商品・サービスの範囲や当該職員の兼職の状況について、当該窓口への掲示等により、顧客に対し常時明示されていることが望ましい。

      • ハ. 特に、当該職員が新規顧客に対し勧誘を行う場合や、顧客に対し新たな商品・サービスの勧誘を行う場合には、その兼職状況及び取り扱う商品・サービスの範囲について、十分な説明を行うこと。

      • 二. 顧客と契約を締結する際には、書面等による確認を行うなど、当該契約の相手方である法人名を顧客が的確に認識できる機会を確保すること。

  • (2)監督手法・対応

    日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された証券会社等の誤認防止措置に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、証券会社等における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-1-6 業務継続体制(BCM)

  • (1)意義・対応

    金融商品市場の仲介者として、重要な役割を果たしている証券会社等においては、危機発生時において、迅速な復旧対策を講じ、必要最低限の業務の継続を確保する等適切な対応を行うことが、国民生活・経済にとっても極めて重要であることから、平時より業務継続体制(Business Continuity Management;BCM)を構築し、危機管理(Crisis Management;CM)マニュアルの策定等を行っておくことが必要である。こうした観点から、証券会社等の監督に当たっては、その業容に応じ、例えば以下の点に留意して、その適切性について検証することとする。

  • (2)主な着眼点

    業務継続計画(BCP)においては、テロや大規模な災害等の事態においても早期に被害の復旧を図り、金融システムの機能の維持にとって必要最低限の業務の継続が可能となっているか。その際、証券市場BCPフォーラム等における検討結果に基づき、金融商品取引業協会、他の証券会社等及び関係機関等と連携し対応する体制が整備されているか。また、業務の実態等に応じ、国際的な広がりを持つ業務中断に対応する計画となっているか。

    例えば、

    • マル1災害等に備えた顧客データ等の安全対策(紙情報の電子化、電子化されたデータファイルやプログラムのバックアップ等)は講じられているか。

    • マル2コンピュータシステムセンター等の安全対策(必要に応じたバックアップセンターの配置、要員・通信回線確保等)は講じられているか。

    • マル3これらのバックアップ体制は、地理的集中を避けているか。

    • マル4顧客の生活、経済活動及び金融商品市場の機能維持の観点から重要な業務(顧客に対する金銭の払出し、MRF又はMMFの解約、保護預り株式等の売却注文、信用取引、先物・オプション取引の決済のための注文及び既約定未受渡の取引の決済等)を、暫定的な手段(手作業、バックアップセンターにおける処理等)により再開(リカバリー)するまでの目標時間が具体的に計画されているか。

    • マル5業務継続計画の策定及び重要な見直しを行うに当たっては、取締役会による承認を受けているか。また、業務継続体制が、内部監査、外部監査など独立した主体による検証を受けているか。

    (参考) 「金融機関における業務継続体制の整備について」(日本銀行、2003年7月)
      「業務継続のための基本原則」(ジョイント・フォーラム、2006年8月)

    このほか、基本的に、III-2-9に基づき、対応することとする。

IV-3-1-7 災害時における金融に関する措置

  • (1)災害地に対する金融上の措置

    災害対策基本法第36条第1項の規定に基づく金融庁防災業務計画並びに武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下「国民保護法」という。)第33条第1項及び第182条第2項の規定に基づく金融庁国民保護計画において、金融に関する措置が規定されている。こうしたことから、災害(災害対策基本法第2条第1号に規定する災害又は国民保護法第2条第4項に規定する武力攻撃災害若しくは国民保護法第183条に規定する緊急対処事態における災害をいう。以下同じ。)が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、現地における災害の実情、資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、証券会社等に対し、機を逸せず必要と認められる範囲内で、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

    • マル1届出印鑑喪失の場合における可能な限りの便宜措置

    • マル2有価証券喪失の場合の再発行手続きについての協力

    • マル3被災者顧客から、預かり有価証券の売却・解約代金の即日払いの申し出があった場合の可能な限りの便宜措置

    • マル4証券会社等において、窓口業務停止等の措置を講じた場合、業務停止等を行う営業店舗名等を、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、取引者に周知徹底

    • マル5その他、顧客への対応について十分配意すること。

  • (2)東海地震の地震防災対策強化地域内外における金融上の諸措置

    大規模地震対策特別措置法により地震防災対策強化地域の指定が行われると、指定行政機関は、事前に地震災害及び二次災害の発生を防止し災害の拡大を防ぐための措置を定めなければならないこととされている。

    しかし、金融商品取引業務の事務処理については、機械化とその無人サービス網の普及等により、地域的に分断して対応することが困難であることから、東海地震への対応については、現地における資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、証券会社等に対し、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

    • マル1東海地震の地震防災対策強化地域内に営業所又は事務所を置く証券会社等の警戒宣言時の対応について

      • イ. 営業時間中に警戒宣言が発せられた場合には、証券会社等において、営業所又は事務所の窓口における業務を停止するよう要請する。

      • ロ. 業務停止等を取引者に周知徹底させる方法は、証券会社等において、業務停止等を行う店舗名等を、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載するよう要請する。

      • ハ. 休日、開店前又は閉店後に警戒宣言が発せられた場合には、発災後の証券会社等の円滑な遂行の確保を期すため、証券会社等において窓口業務の開始又は再開は行わないよう要請する。

      • ニ. その他

        • a. 警戒宣言が解除された場合には、証券会社等において、可及的速やかに平常の業務を行うよう要請する。

        • b. 発災後の証券会社等の応急措置については 、IV-3-1-7に基づき、適時、的確な措置を講ずることを要請する。

    • マル2当該強化地域外に営業所又は事務所を置く証券会社等の警戒宣言時の対応について

      証券会社等において、地震防災対策強化地域内の営業所又は事務所が業務停止の措置をとった場合であっても、当該業務停止の措置をとった当該強化地域外の営業所又は事務所については、平常どおり業務を行うよう要請する。

  • (3)行政報告

    以上のような金融上の諸措置をとったときは、遅滞なく監督局長に報告するものとする。

IV-3-2 証券会社等の市場仲介機能等の適切な発揮

証券会社等が金融商品市場において果たしている役割は、その中心に市場仲介者としての機能があり、そこには高い公共性が付随している。また、証券会社等は、市場プレイヤーとして金融商品市場に参加している。

金融ビッグバン以降の制度改革の成果が現れる一方で、金融商品市場における大規模な誤発注や証券会社等のシステム障害、インサイダー取引、相場操縦などの投資者による不公正取引、有価証券報告書の虚偽記載等の発行体による不正行為が相次いで見られたこと踏まえ、平成18年3月に金融庁監督局に「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」が設置され、6月には「論点整理」が策定・公表された。

「論点整理」に盛り込まれた(1)市場仲介者としてのオペレーションの信頼性の向上、(2)発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮、(3)投資者に対する証券会社のチェック機能の発揮、(4)市場プレイヤーとしての証券会社の自己規律の維持、といった4つの課題に関する提言等は、基本的には日本証券業協会等の自主規制機関の策定する自主ルール等として確立するものであるが、監督当局においても、証券会社等の市場仲介機能等の適切な発揮による金融商品市場の信頼性向上の観点から、自主ルール等も踏まえつつ、以下のような着眼点・監督手法をもって必要な対応を行っていくことが重要である。

IV-3-2-1 市場仲介者としてのオペレーションの信頼性向上

  • (1)注文管理体制に係る留意事項

    • マル1証券会社等は、日本証券業協会自主規制規則「協会員における注文管理体制の整備に関する規則」を踏まえ、社内規則を適切に整備し、役職員に対する周知、徹底を図っているか。

    • マル2売買発注に関するハードリミット・ソフトリミットの設定を含む注文制限の設定をシステムに組み込むなど、誤発注防止のためのシステム対応が十分に果たされているか。

    • マル3売買システムを統括するCIOの選任を含む人員配置や研修、定期的な検査などを通じ、注文管理体制の充実強化・機能維持が図られているか。

    • マル4発注制限・警告解除への管理者の関与が適切に果たされる体制となっており、また適切に実施されているか。特にホールセール部門において、適切な取扱いが行われているか。

    • マル5大規模な誤発注に対する危機対応策が策定され、役職員に対する周知、徹底が図られているか。

    • マル6誤発注が発生した場合でも、決済日の決済時限にフェイルが発生しないよう、適切な措置を講ずる態勢が整備されているか。

  • (2)信用取引に係る代用有価証券の掛目変更に係る留意事項

    証券会社等においては、日本証券業協会自主規制規則「信用取引に係る委託保証金代用有価証券の掛目の変更等の取扱いに関する規則」を踏まえ、掛目の変更等を行う事象の顧客への事前説明・周知、掛目変更に当たっての顧客への通知、変更に当たっての周知期間の設定、社内規則の制定等が適切に図られているか。

  • (3)証券会社等の電子情報処理組織の管理に係る留意事項

    証券会社等の電子情報処理組織の管理について、次に掲げる場合に該当する事実が認められる場合には、金商業等府令第123条第1項第14号「電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況」の規定に該当するものとする。

    • マル1自社の電子情報処理組織について、電子情報処理組織の専門家によるシステム監査等、適切なチェックを定期的に行っていない場合

    • マル2売買発注に関するハードリミット・ソフトリミットの設定を含む注文制限の設定をシステムに組み込んでいないなど、誤発注防止のためのシステム対応が十分に果たされていない場合

    • マル3 III-2-8に掲げる事項等に照らし、適切な態勢が整備されていないと認められる場合

IV-3-2-2 発行体に対するチェック機能の発揮

  • (1)引受け等の審査に係る留意事項

    • マル1日本証券業協会自主規制規則「有価証券の引受け等に関する規則」等を踏まえ、発行体の財務状態及び経営成績その他引受けの適否の判断に資する事項の審査に関する適切な規程が整備され、実質的な審査が的確に行われているか。また、これらの審査結果を確実に検証できる体制が整備されているか。

    • マル2共同主幹事である他の証券会社等の審査に依存し、自らは審査を行わないこととしていないか。

    • マル3審査を行う部署の営業部門からの独立性が、機能・効果の面から適正に確保されるなど、審査を適切に行うための体制整備が図られているか。

    • マル4引受けを行うに当たり、社内の他の部署との利益相反を検証・評価する機能を有しているか。また、それにより、利益相反となる状態を適切に防止するための態勢が整備されているか。

    • マル5著しく不適当と認められる数量、価格その他の条件により引受けを行うことを防止するために、法令や自主規制規則を踏まえ、価格の算定方法等に関する適切な規程が整備されるとともに、引受けの条件を適切に決定するための態勢整備が図られているか。

  • (2)親子法人等が発行する株券等の引受けに関する留意事項

    証券会社等が、金商業等府令第153条第1項第4号ニに基づき、その親子法人等が発行する株券等の引受けの主幹事会社となる場合には、当該引受けに係る発行価格の決定に関して他の証券会社等の適切な関与を確保するため、以下の措置が講じられているか。

    • マル1引受主幹事会社である当該証券会社等と発行体との間で取り交わす引受審査手続に係る契約書において、以下の点を明記すること。

      • イ. 当該発行価格の決定に関与する他の証券会社等(以下(2)において「独立引受幹事会社」という。)が、引受主幹事会社と同等の権限を有すること。

      • ロ. 独立引受幹事会社は、引受審査の内容の妥当性に関する意見を、発行者に対し、又は対外的に表明できること。

    • マル2以下の点に照らして引受業務に十分な経験を有する証券会社等を独立引受幹事会社とすること。

      • イ. 過去5年以上引受業務に従事していること。

      • ロ. 過去2年以内に、主幹事会社としての実績を有していること。なお、株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券の場合にあっては、過去に、当該株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券の発行体と同じ業種に属する者が発行した株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券の引受けについて、主幹事会社としての実績を有していることが望ましい。また、社債券の場合にあっては、過去に、当該社債券の発行体と同じ業種に属する者が発行した社債券の引受けについて、主幹事会社としての実績を有していることが望ましい。

        (注) 各発行体の業種については、例えば、証券コード協議会が設定・公表する「大分類」によることが考えられる。

  • (3)私募CB等の引受け・買受けに係る留意事項

    第三者割当増資やいわゆる私募CB(MSCBを含む。)等については、企業再生等に係る資金調達手段として有効と考えられる一方で、発行条件及び利用方法次第で希薄化による既存株主に対する不利益が生じるリスクもある。これを踏まえ、証券会社等がこうした案件を取扱う場合(自社や関連会社が買受ける場合、他のファンド等が買受ける場合を含む。)には、マル1既存株主への影響等を踏まえた適切な商品設計がなされているか、 マル2発行体(の経営者)に対して商品の理解度に応じた十分な商品説明が行われているか、マル3発行体による適切な開示がなされているか、といった点について留意することとする。

  • (4)反社会的勢力関係発行体に係る留意事項

    反社会的勢力又は反社会的勢力と密接な関係のある企業の株式等の上場を未然に防止する観点から、証券会社等は、関係当局や日本証券業協会等との連携の下、引受け等審査においてその事実を適切に把握するとともに、場合によっては引受け等を行わないこととするなどの対応を行うことが望まれる。

IV-3-2-3 投資者に対するチェック機能の発揮

  • (1)顧客の不公正取引防止のための売買管理体制に係る留意事項

    証券会社等は、実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら有価証券の売買取引等の受託等をする行為や、インサイダー取引のおそれがあることを知りながら顧客の有価証券の売買等の受託をする行為などを適切に防止することで、投資者に対するチェック機能を発揮する必要がある。そのため、日本証券業協会自主規制規則「不公正取引の防止のための売買管理体制の整備に関する規則」も踏まえ、顧客の不公正取引を防止するための売買管理に関して、以下の点に留意する必要がある。(特に、インターネット取引については、その非対面性に鑑みて細心の注意を払うこと。)

    • マル1顧客の売買動向の的確な把握及び管理の徹底

      • イ. 顧客の売買商品、取引手法・形態等の売買動向を把握するための具体的な取扱方法を策定し、当該取扱方法に基づき、適時、モニタリング等を行うなどにより顧客の売買動機等の的確な把握を行っているか。

      • ロ. 内部管理部門においては、当該取扱方法について、役職員に周知・徹底を図るとともに、必要に応じ見直しを行う等、その実効性を確保する態勢を整備しているか。

      • ハ. 内部者登録の正確性を確保する観点から、日本証券業協会自主規制規則「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」を踏まえ、金商法第166条に規定する上場会社等の特定有価証券等に係る売買等を初めて行う顧客から、上場会社等の役員等に該当するか否かにつき届出を求め、該当する者について上場会社等の特定有価証券等に係る売買等が行われるまでに内部者登録カードを備え付けるとともに、顧客からの変更の届出があったときには遅滞なくその内容を更新するほか、定期的に顧客の氏名、生年月日及び住所について、J-IRISS(日本証券業協会の内部者登録・照合システム)に照合した上で、必要に応じて、上場会社等の役員等に関する他の情報等と照合するなど、内部者登録カードの整備に努めているか。

      • ニ. 相場操縦的行為やインサイダー取引等を未然に防止する観点から、投資事業組合等との取引や海外からの注文について、原始委託者や最終投資家を特定するよう努めているか。

      • ホ. 証券会社等が、顧客が仮名口座を利用しているおそれがあると認識した場合に、実取引者の解明に努めるとともに、特に注意してモニタリングを行うこととしているか。

    • マル2売買審査基準の策定及びその効果的活用

      • イ. 顧客の取引の公正性を確保するため、個別銘柄について、その騰落率や自社の市場関与率及び特定顧客による売買状況等を勘案した具体的な抽出基準を策定し、当該基準に基づく適正な抽出を行っているか。

      • ロ. 抽出銘柄について、具体的な審査基準を策定し、作為的相場形成等の不公正取引を排除するために必要な措置(例えば、顧客等に対する照会、注意喚起、取引停止等)を講ずる等適切な売買管理を行っているか。

      • ハ. 内部管理部門においては、抽出基準、審査基準及び措置状況について、適時、実態との整合性の検証を行い、必要に応じ見直しを行う等、その実効性を確保する態勢を整備しているか。

    • マル3その他

      • イ. 顧客が価格制限を潜脱する目的を持ったと認められる短時間に連続して行う信用新規売り注文については、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第15条第1項第2号に規定する取引に該当しない等空売り規制の趣旨を周知することとしているか。

      • ロ. 価格制限を潜脱する注文を受託することのないよう、適時、注文内容のチェックを行い、必要に応じ顧客への照会、注意喚起、取引停止等の措置を講ずる等適切な売買管理を行っているか。

      • ハ. インサイダー取引を行っていると疑われる場合には、犯収法第8条の規定に基づき、速やかに監督当局に届出を行うこととしているか。

  • (2)プレ・ヒアリングに係る留意事項

    証券会社等がプレ・ヒアリングを自ら又は第三者に委託して行う場合には、金商業等府令及び日本証券業協会自主規制規則「協会員におけるプレ・ヒアリングの適正な取扱いに関する規則」を踏まえ、マル1法令遵守管理部門による承認、マル2調査対象者との間における当該有価証券等の売買等及び当該法人関係情報の提供をしないことを約する契約の締結、マル3記録書面の作成・保存を、自ら行う又は第三者に行わせることとしているか。

  • (3)反社会的勢力関係投資家に係る留意事項

    証券会社等は、関係当局や日本証券業協会等との連携の下、反社会的勢力との関係を有する可能性のある投資家について十分な売買管理・売買審査を行うことが望まれる。

IV-3-2-4 市場プレイヤーとしての自己規律の維持

プリンシパル投資やM&A助言業務、複雑な商品性を有する資金調達の提案、証券化取引など、市場プレイヤーとしての証券会社等の業務が多様化・複雑化していることを背景に、証券会社等の業務において潜在的な利益相反や企業倫理の観点から問題を孕むケースが増加している。

こうした状況を踏まえ、証券会社等の市場プレイヤーとしての自己規律の維持に関して、以下のような点に留意する必要がある。

  • マル1利益相反防止の観点や倫理規範を遵守する観点から、社内方針・規則が策定され、適切な内部管理態勢(内部監査態勢を含む。)が構築されているか。また、研修等を通じてその周知徹底を図るなど、遵守態勢が適切に整備されているか。

  • マル2利益相反のリスクが大きいと考えられるような取引等の洗出しを行っているか。

  • マル3利益相反防止の観点から、必要に応じ、社内組織の分離、営業部門から独立した立場からの適切な事前審査態勢の構築(審査した上で、当該取引等の実施の可否を決定)を行っているか。

  • マル4必要に応じ、利益相反の状況について顧客・投資者への適切な説明・開示を行っているか。

(参考)(潜在的な)利益相反等の問題を孕む事例

  • 株式の誤発注に乗じて、誤発注であることを認識しながら行う株式の買付け
  • 証券会社等(又はその同一グループ内の他の会社)が投資している未公開企業の上場時に、主幹事として行う引受業務及びその後の当該株式の売却
  • 証券会社等(又はその同一グループ内の他の会社)がプリンシパル投資で取得した資産を原資産とする証券化商品を組成し、十分な説明なく他の投資家に販売する行為(リスク転嫁)
  • SPC等を利用した会計操作目的、脱税目的が疑われる証券化スキームの提案・検討

IV-3-2-5 監督手法・対応

上記の着眼点を踏まえ、金融商品取引業協会を含む関係機関との連携の下、証券会社等の市場仲介機能等の適切な発揮を促していくこととする。また、公益又は投資者保護の観点から必要があると認められる場合には、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、証券会社等における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-3 店頭デリバティブ取引業に係る業務の適切性

IV-3-3-1 法令等遵守態勢

店頭デリバティブ取引業者(金商法第2条第8項4号に掲げる行為を業として行う第一種金融商品取引業者をいう。以下同じ。)が、店頭デリバティブ取引の担い手としての自らの役割を十分に認識して、法令や業務上の諸規則を厳格に遵守し健全かつ適切な業務運営に努めることは、店頭デリバティブ取引業者に対する投資者からの信頼を確立する上で重要である。

こうした店頭デリバティブ取引業者のコンプライアンス態勢については、基本的には III-2-1における態勢整備の着眼点及び監督手法をもって対応することとするが、それ以外にも、自主規制機関の策定する自主規制ルールの遵守状況も含めた幅広い検証を行うこととする。

  • (1)通貨関連店頭デリバティブ取引等業者の区分管理に係る留意事項

    店頭デリバティブ取引業者が通貨関連店頭デリバティブ取引等(金商業等府令第143条第3項第2号に掲げる行為をいう。以下同じ。)に係る金銭その他の保証金を管理する場合、以下の点に留意して監督するものとする。

    • マル1金商業等府令第143条第1項第1号に定める信託(顧客区分管理信託)を、金商業等府令第141条第1項に定める信託(顧客分別金信託)と明確に区分して管理しているか。

    • マル2金商業等府令第143条の2第1項第6号に規定する個別顧客区分管理金額(顧客ごとに預託を受けた金銭又は保証金の額)及び顧客区分管理必要額(個別顧客区分管理金額の合計額)を適切に算定しているか。

      また、顧客区分管理必要額の計算に当たっては、顧客から預託を受けた金銭又は保証金に、次のイからハまでに掲げる額を加減算しているか。

      • イ. 実現損益

      • ロ. 評価損益

      • ハ. スワップ損益

    • マル3金商業等府令第143条の2第1項第6号の信託財産の元本の評価額が顧客区分管理必要額に満たないこととなるかどうかの判定を、顧客区分管理必要額の計算基準となる時点の属する日本時間における日を基準日として行っているか。例えば、日本時間における特定の日の午前7時からその翌日(以下 、IV-3-3-1において「計算日」という。)の午前7時までの取引について、計算日の午前7時を基準時点として顧客区分管理必要額の計算を行う場合には、計算日の翌日から起算して2営業日以内に不足額を追加しているか。

    • マル4顧客区分管理信託の受託者である金融機関等からカバー取引相手方に対して保証状等(以下「LG」という。)が差し入れられる場合、LGに基づく支払いがなされた場合でも、常に、信託財産が顧客区分管理必要額を上回ることとなっているか。また、店頭デリバティブ取引業者に係る破産手続・再生手続・更生手続の開始の申立て等により顧客区分管理信託が終了する場合において、顧客に対する金銭又は保証金の返還がカバー取引相手方に対する支払いに優先する契約内容になっているか。

    • マル5区分管理の状況について、例えば、定期的に、外部監査又は独立した部署による内部監査を受けること等により、適切に管理しているか。

  • (2)有価証券関連店頭デリバティブ取引業者の分別管理に係る留意事項

    店頭デリバティブ取引業者が有価証券関連店頭デリバティブ取引(金商業等府令第117条第1項第29号に規定する取引をいう。以下同じ。)に係る金銭その他の保証金を管理するにあたっての留意事項は 、IV-3-3-1に準ずるほか、IV-3-3-1(1)マル2における必要額の計算に当たっては、金利調整額及び配当金調整額を加減算することに留意するものとする。

  • (3)監督手法・対応

    • マル1個人向けの通貨関連店頭デリバティブ取引等及び有価証券関連店頭デリバティブ取引に係る金銭その他保証金の管理の状況の適切性を確認するため、店頭デリバティブ取引業者に対し、原則として週1回、信託銀行発行の残高証明書等の信託残高を疎明する資料及びこれに対応する計算日における管理必要額を算出した書面の提出を求めることとする。

    • マル2個人向けの通貨関連店頭デリバティブ取引等及び有価証券関連店頭デリバティブ取引に係る金銭その他保証金の管理の状況の適切性を確認するため、店頭デリバティブ取引業者に対し、定期的に又は必要に応じて、外部監査又は内部監査の状況の報告を求めることとする。

    • マル3その他、日常の監督業務を通じて把握された店頭デリバティブ取引業者の法令等遵守態勢に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項に基づく報告を求めることを通じて、店頭デリバティブ取引業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-3-2 勧誘・説明態勢

  • (1)広告等に係る留意事項

    • マル1損失が一定比率以上になった際に、自動的に反対取引により決済する契約(以下「ロスカットルール」という。)が設けられている場合であっても、相場の急激な変動により委託証拠金その他の保証金の額を上回る損失が生じることとなるおそれがある場合には、その旨が適切に表示されているか。

    • マル2セミナー等において、顧客がセミナー等の受講の継続を希望しない旨の意思表示を行ったにもかかわらず受講させていないか(事実上強制した場合も含む。)。この場合、金商法第38条第6号(いわゆる「再勧誘の禁止」)の規定に該当することに留意するものとする。

  • (2)説明書類に係る留意事項

    金商法第46条の4に規定する説明書類の「内部管理の状況の概要」には、顧客からの相談及び苦情に対する具体的な取扱い方法及び内部監査体制について、記載することとする。

  • (3)店頭デリバティブ取引の勧誘方法等に関する注意喚起文書の配布に係る留意事項

    店頭デリバティブ取引業者が、店頭デリバティブ取引を行うときには、日本証券業協会自主規制規則「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」及び金融先物取引業協会「金融先物取引業務取扱規則」を踏まえ、マル1不招請勧誘規制の適用関係、マル2リスクに関する注意喚起、マル3トラブルが生じた場合の指定ADR機関等の連絡先等を分かりやすく大きな文字で記載した簡明な文書(注意喚起文書)を配布し、顧客属性等に応じた説明を行うことにより、顧客に対する注意喚起を適切に行っているか。また、その実施状況を適切に確認できる態勢となっているか。

    (注)金融商品取引業者が、市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・投資信託の販売を行う場合についても、準じた取扱いとしているかに留意するものとする。

  • (4)店頭金融先物取引業者の説明責任に係る留意事項

    • マル1取引時に表示した数値の提示等

      • イ. 金商業等府令第123条第1項第21号に関し、店頭金融先物取引について、店頭金融先物取引業者が顧客の取引時に表示した金融商品、金融指標又はオプションの価格を、当該価格の提示を要求した当該顧客に提示する場合には、各取引日ごとの始値、高値、安値及び終値の提示によることができる。

      • ロ. 店頭金融先物取引業者は、取引時に表示した金融商品、金融指標又はオプションの価格について、3年間は保存するものとする。

    • マル2両建て取引

      • イ. 店頭金融先物取引の受託等(証拠金その他の保証金を預託する取引に限る。)につき、顧客に対し、当該顧客が行う取引と対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引をいう。いわゆる「両建て取引」)の勧誘その他これに類似する行為を行っていないか。

      • ロ. 顧客から両建て取引を行いたい旨の積極的意思表示があった場合や、顧客から両建て取引を行うことができるか否かについて照会があった場合に、両建て取引を行うことができる旨を告げることは、直ちに金商業等府令第117条第1項第26号に該当するものではない。しかし、両建て取引について、「手数料が二重にかかること、通貨間の金利差調整額(以下「スワップポイント」という。)により逆ざやが生じるおそれがあること、仲値を基準とする売値及び買値の価格差(いわゆる「店頭金融先物取引業者の受け取るスプレッド」)について顧客が二重に負担することとなることなどのデメリットがあり、経済合理性を欠くおそれがある取引である」旨に言及することなく、上記の記載又は表示を行うことは、金商業等府令第117条第1項第26号に規定する「その他これに類似する行為」に該当する。

    • マル3顧客及びカバー取引相手方との取引

      以下の点について、顧客から説明を求められた場合には、適切な説明を行っているか。

      • イ. カバー取引の発注方法

      • ロ. カバー取引の執行基準

      • ハ. カバー取引相手方との間でシステム障害が発生した場合の対応

    • マル4相場が急激に変動した場合の対応

      相場が急激に変動した場合の対応について、顧客から説明を求められた場合には、適切な説明を行っているか。

    • マル5自己勘定取引に係る社内管理態勢

      自己勘定による取引を行っているか否か、行っている場合のリスク管理態勢等について、顧客から説明を求められた場合には、適切な説明を行っているか。

    • マル6区分管理の状況

      金商業等府令第143条第1項第1号に定める顧客区分管理信託の状況について、顧客から説明を求められた場合には、適切な説明を行っているか。

    • マル7ロスカット取引

      通貨関連店頭デリバティブ取引等を行う場合には、ロスカット取引(金商業等府令第123条第1項第21号の2に規定する取引をいう。以下同じ。)に関する取決めが設けられていること及びその内容について、適切な説明を行っているか。また、ロスカット取引が予定どおり行われなかった場合の損失のおそれ等について、適切な説明を行っているか。

    • マル8低スプレッド取引

      スプレッド又は手数料が特に低い取引(以下「低スプレッド取引」という。)を提供する通貨関連店頭デリバティブ取引等業者が、広告等でスプレッド又は手数料が低いことを強調する表示をしている場合には、例えば、以下のようなおそれが生じていないか。

      • イ. 他に顧客が支払うべき手数料、報酬、その他の対価又は費用があるにも関わらず、顧客が支払う対価又は費用が、実際よりも著しく低額であるかのように誤解させるおそれ

      • ロ. 顧客の注文時に表示されている価格又は顧客が注文時に指定した価格と約定価格との相違(以下「スリッページ」という。)が生じ、広告等で表示するよりも高いスプレッドで取引を行うこととなるおそれ

  • (5)有価証券関連店頭デリバティブ取引業者の説明責任に係る留意事項

    個人向けの有価証券関連店頭デリバティブ取引業者が、顧客に対して行う説明事項に係る留意事項は、上記(4)に準ずるものとする。

  • (6)通貨オプション取引・金利スワップ取引等を行う店頭デリバティブ取引業者の説明責任に係る留意事項

    上記(4)・(5)に該当しない場合でも、店頭デリバティブ取引業者が、例えば通貨オプション取引・金利スワップ取引等の店頭デリバティブ取引を行うときには、以下のような点に留意しているか。

    (注)金融商品取引業者が、店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・投資信託の販売を行う場合についても、準じた取扱いとしているかに留意するものとする。

    (注)例えば、仕組債の販売の場合には、「中途解約」を「中途売却」と、「解約清算金」を「中途売却に伴う損失見込額」とそれぞれ読み替えるものとする。なお、下記ロ.について、中途売却に伴う損失見込額の試算が困難である場合でも、可能な限り、最悪のシナリオを想定した説明がされることが望ましい。

    (注1)例えば、為替や金利の相場が変動しても、その影響を軽減させるような価格交渉力や価格決定力の有無等を包括的に判断することに留意する。

    (注2)例えば、ヘッジ手段自体に損失が発生していない場合であっても、前提とする事業規模が縮小されるなど顧客の事業の状況等の変化により、顧客のヘッジニーズが左右されたりヘッジの効果がそのニーズに対して契約終期まで有効に機能しない場合があることに留意する。

    (注3)ヘッジによる仕入れ価格等の固定化が顧客の価格競争力に影響を及ぼし得る点に留意する。

    (注)不招請勧誘の禁止の例外とされている「外国貿易その他の外国為替取引に関する業務を行う法人」(金商業等府令第116条第1項第2号)には、例えば、国内の建設業者が海外から材木を輸入するにあたって、海外の輸出者と直接取引を行うのではなく、国内の商社を通じて実態として輸出入を行う場合は含まれるが、単に国内の業者から輸入物の材木を仕入れる場合は含まれないことに留意する必要がある。

    例えば、契約しようとする店頭デリバティブ取引が顧客の今後の経営に大きな影響を与えるおそれのある場合、当該顧客の取締役会等で意思決定された上での契約かどうか確認することが重要となることに留意する。

    • マル1当該店頭デリバティブ取引の商品内容やリスクについて、例えば、以下のような点を含め、具体的に分かりやすい形で解説した書面を交付する等の方法により、適切かつ十分な説明をしているか。

      • イ.当該店頭デリバティブ取引の対象となる金融指標等の水準等(必要に応じてボラティリティの水準を含む。以下同じ。)に関する最悪のシナリオ(過去のストレス時のデータ等合理的な前提を踏まえたもの。以下同じ。)を想定した想定最大損失額について、前提と異なる状況になればさらに損失が拡大する可能性があることも含め、顧客が理解できるように説明しているか。

      • ロ.当該店頭デリバティブ取引において、顧客が許容できる損失額及び当該損失額が顧客の経営又は財務状況に重大な影響を及ぼさないかを確認し、上記の最悪シナリオに至らない場合でも許容額を超える損失を被る可能性がある場合は、金融指標等の状況がどのようになれば、そのような場合になるのかについて顧客が理解できるように説明しているか。

      • ハ.説明のために止むを得ず実際の店頭デリバティブ取引と異なる例示等を使用する場合は、当該例示等は実際の取引と異なることを説明しているか。

    • マル2当該店頭デリバティブ取引の中途解約及び解約清算金について、例えば、以下のような点を含め、具体的に分かりやすい形で解説した書面を交付する等の方法により、適切かつ十分な説明をしているか。

      • イ.当該店頭デリバティブ取引が原則として中途解約できないものである場合にはその旨について、顧客が理解できるように説明しているか。

      • ロ.当該店頭デリバティブ取引を中途解約すると解約清算金が発生する場合にはその旨及び解約清算金の内容(金融指標等の水準等に関する最悪シナリオを想定した解約清算金の試算額及び当該試算額を超える額となる可能性がある場合にはその旨を含む。)について、顧客が理解できるように説明しているか。

      • ハ.当該店頭デリバティブ取引において、顧客が許容できる解約清算金の額を確認し、上記の最悪シナリオに至らない場合でも許容額を超える損失を被る可能性がある場合は、これについて顧客が理解できるよう説明しているか。

    • マル3提供する店頭デリバティブ取引がヘッジ目的の場合、当該取引について以下が必要であることを顧客が理解しているかを確認し、その確認結果を踏まえて、適切かつ十分な説明をしているか。

      • イ.顧客の事業の状況や市場における競争関係を踏まえても、継続的な業務運営を行う上で有効なヘッジ手段として機能すること(注1)。

      • ロ.上記に述べるヘッジ手段として有効に機能する場面は、契約終期まで継続すると見込まれること(注2)。

      • ハ.顧客にとって、今後の経営を見通すことがかえって困難とすることにならないこと(注3)。

    • マル4上記マル1からマル3までに掲げる事項を踏まえた説明を受けた旨を顧客から確認するため、例えば顧客から確認書等を受け入れ、これを保存する等の措置をとっているか。

    • マル5不招請勧誘の禁止の例外と考えられる先に対する店頭デリバティブ取引の勧誘については、法令を踏まえたうえ(注)、それまでの顧客の取引履歴などによりヘッジニーズを確認し、そのニーズの範囲内での契約を勧誘することとしているか。

    • マル6顧客の要請があれば、定期的又は必要に応じて随時、顧客のポジションの時価情報や当該時点の解約清算金の額等を提供又は通知する等、顧客が決算処理や解約の判断等を行うために必要となる情報を適時適切に提供しているか。

    • マル7当該店頭デリバティブ取引に係る顧客の契約意思の確認について、契約の内容・規模、顧客の業務内容・規模・経営管理態勢等に見合った意思決定プロセスに留意した意思確認を行うことができる態勢が整備されているか。

  • (7)契約締結前の書面交付に係る留意事項

    • マル1金商業等府令第82条第4号ロに規定する「元本超過損が生ずるおそれがある理由」には、ロスカットルールが設けられている場合であっても、相場の急激な変動により委託証拠金その他の保証金の額を上回る損失が生じることとなるおそれがある場合には、その旨を含む。

    • マル2金商業等府令第82条第8号に規定する「当該金融商品取引契約の終了の事由」には、ロスカットルールに関する事項を含むものとする。

    • マル3金商業等府令第93条第1項第4号に規定する「顧客が当該デリバティブ取引等に関し預託すべき委託証拠金その他の保証金の種類及び金額の計算方法」には、最低保証金に関する事項及び当該保証金の総額が、相場の変動等により必要額より不足した場合に追加しなくてはならない保証金(以下「追証」という。)に関する事項を含むものとする。

    • マル4通貨に係る取引である場合、金商業等府令第93条第1項第7号に規定する「デリバティブ取引に関する主要な用語及びその他の基礎的な事項」には、金融商品等の価格等の決定方法に関する事項及びスワップポイントを含むものとする。なお、スワップポイントについては、顧客が受け取る場合と支払う場合の双方があり、また、結果として損失が生じることとなるおそれがある場合に、その旨が適切に表示されていること。

    • マル5金商業等府令第94条第1項第1号に規定する「カバー取引相手方」については、複数のカバー取引相手方がある場合は、その全てを記載することとする。ただし、銀行間外国為替市場(いわゆる「インター・バンク市場」)参加者が当該取引をインター・バンク市場において行う場合等であって、あらかじめカバー取引相手方が特定できない場合には、その旨を記載すれば足りるものとする。

    • マル6金商業等府令第94条第1項第4号に規定する「預託先」には、有価証券店頭デリバティブ取引の場合にあっては顧客分別金信託の受託者、有価証券関連店頭デリバティブ取引等以外の店頭デリバティブ取引等の場合にあっては保証金等の預託先となる金商業等府令第143条第1項第1号又は第2号イからニまでに掲げる預託先の具体的な名称を記載することとする。

  • (8)委託証拠金その他の保証金の受領に係る書面交付に係る留意事項

    金商業等府令第114条第1項第4号に規定する「当該金融商品取引業者等が保証金を受領した日付」については、各社において顧客との間で約した取決めに基づき、入金された当日又は翌営業日等とすることができるものとする。

  • (9)不招請勧誘の禁止規定に係る留意事項

    店頭金融先物取引の勧誘においては、過去に、一部において、電話や戸別訪問による勧誘を受け、リスクや取引の仕組みなどについて十分に理解しないまま受動的に取引を開始したことによるトラブルから社会問題に発展した経緯がある。これを踏まえ、金商法第38条第4号において、店頭デリバティブ取引業者又はその役員若しくは使用人が、店頭デリバティブ取引(店頭金融先物取引以外のものである場合にあっては、個人である顧客を相手方として行う店頭デリティブ取引に限る。以下(9)において同じ。)に係る契約の締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、店頭デリバティブ取引に係る契約の締結の勧誘をする行為(いわゆる「不招請勧誘」)が禁止されている。

    一方、金商業等府令第116条の規定により、継続的取引関係にある顧客に対して店頭デリバティブ取引に係る契約の締結を勧誘する行為、並びに外国貿易その他の外国為替取引に関する業務を行う法人に対する勧誘であって、当該法人が保有する資産及び負債に係る為替変動による損失の可能性を減殺するために店頭金融商品取引契約の締結を勧誘する行為は認められている。

    こうした取扱いを確保するため、店頭デリバティブ取引業者は、顧客からの招請状況等に則した適正な勧誘の履行を確保する観点から、顧客からの招請状況を的確に把握し得る顧客管理態勢を確立することが重要であり、例えば以下のような点に留意して監督するものとする。

    • マル1不招請勧誘への該当性

      • イ. 金商法第38条第4号に規定する「訪問し又は電話をかけて、金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」には、勧誘を行ってよいか否かを尋ねることが含まれる。

      • ロ. 金商業等府令第116条第1項第1号に規定する「未決済の店頭金融先物取引の残高を有する者」、同項第4号に規定する「未決済の有価証券関連店頭デリバティブ取引の残高を有する者」及び同項第5号に規定する「未決済の店頭デリバティブ取引の残高を有する者」には、権利行使期間が満了していないオプションを有する者を含む。

      • ハ. 広告等を見た顧客が、店頭デリバティブ取引業者に対して電話等により、一般的な事項に関する照会や取引概要に関する資料請求を行ったことのみをもって、当該顧客が「金融商品取引契約の締結の勧誘の要請」をしたとみなすことはできない。

    • マル2顧客からの招請状況等の把握

      • イ. 顧客からの招請状況及び過去の取引実態等について、例えば、顧客カードの整備等により、適時の把握に努めるとともに、勧誘に当たっては、当該顧客からの招請状況及び過去の取引実態等に則した適正な勧誘に努めるよう役職員に徹底されているか。

      • ロ. 顧客からの招請状況及び過去の取引実態等の顧客情報の管理について、具体的な取扱方法を定め、当該方法を役職員に周知徹底すること。特に、顧客情報については、守秘義務等の観点から十分に検討を行った上で取扱方法を定めているか。

      • ハ. 内部管理部門においては、顧客からの招請状況及び過去の取引実態等の把握及び顧客情報の管理の状況を把握するように努め、必要に応じて、適切な勧誘が行われているか等についての検証を行うとともに、顧客情報の管理方法の見直しを行う等、その実効性を確保する態勢の構築に努めているか。

  • (10)店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・投資信託の勧誘に係る留意事項(合理的根拠適合性・勧誘開始基準)

    店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・投資信託の販売に関しては、顧客にとってリスク等が分かりにくい等の問題により、特に個人顧客との間でトラブルが増加している。こうしたことを踏まえると、個人顧客に対してこれらの仕組債・投資信託の勧誘を行う金融商品取引業者においては、投資者保護の充実を図る観点から、適合性原則等に基づく勧誘の適正化を図ることが重要であり、例えば、以下の点に留意して検証することとする。

    • マル1日本証券業協会自主規制規則「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」を踏まえ、投資者へ販売する商品としての適合性(合理的根拠適合性)の事前検証を行っているか。

    • マル2日本証券業協会自主規制規則「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」を踏まえ、商品のリスク特性や顧客の性質に応じた勧誘開始基準を適切に定め、当該基準に従い適正な勧誘を行っているか。

  • (11)監督手法・対応

    日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された店頭デリバティブ取引業者の勧誘・説明態勢に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、店頭デリバティブ取引業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-3-3 取引一任契約等

  • (1)関係外国金融先物取引業者との取引一任契約に係る留意事項

    定義府令第16条第1項第8号ロの規定に基づく契約を締結しようとするときの届出の受理に関しては、以下の点に留意して行うものとする。

    • マル1当該契約に係る取引を執行する部門と他の委託取引を受託・執行する部門が明確に分離されているか。

    • マル2帳簿書類の作成において、当該契約に係る取引であることが判別可能な方法により処理されることとなっているか。

  • (2)店頭デリバティブ取引業者の特定同意の範囲について

    金商業等府令第123条第1項第13号ロ及びハにおける特定同意は、次に掲げる同意を含む。

    • マル1特定の対価の額又は約定数値(あらかじめ定める方式により決定される対価の額又は約定数値を含む。)以上又は以下。

    • マル2特定の対価の額又は約定数値を基準値として適切な幅を特定したもの。

    • マル3店頭デリバティブ取引業者に一日の取引の中で最良執行を要請した上で対価の額又は約定数値について当該店頭デリバティブ取引業者が裁量で定めること。

  • (3)監督手法・対応

    日常の監督事務や、事故報告等を通じて把握された、店頭デリバティブ取引業者の金商業等府令第123条第1項第13号イからホまでに掲げる行為に関する課題については、上記の着眼点に基づきながら、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、店頭デリバティブ取引業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-3-4 業務執行態勢

  • (1)通貨関連店頭デリバティブ取引等におけるスリッページの取扱いに係る留意事項

    スリッページは、注文の伝達に係る時間の経過等に伴い必然的に発生するものであるが、スリッページの取扱いについては、店頭デリバティブ取引業者が誠実・公正に業務を執行する態勢の整備を図る観点から、以下の点に留意して監督するものとする。

    • マル1店頭デリバティブ取引業者が、顧客との取引において発生するスリッページに関して、例えば、以下のような顧客にとって不利となる非対称な取扱いを行っていないか。

      • イ.顧客にとって不利なスリッページが発生する場合(注文時の価格より約定価格の方が顧客にとって不利な場合)には、顧客にとって不利な価格で取引を成立させる一方、顧客にとって有利なスリッページが発生する場合(注文時の価格より約定価格の方が顧客にとって有利な場合)にも、顧客にとって不利な価格で取引を成立させること。

      • ロ.店頭デリバティブ取引業者が、顧客にとって不利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲を、顧客にとって有利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲よりも広く設定すること(顧客がスリッページを指定できる場合に、顧客にとって不利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲が、顧客にとって有利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲よりも広くなるよう設定しておくことを含む。)。

      • ハ.顧客にとって不利なスリッページが発生する場合に成立させる取引額の上限を、顧客にとって有利なスリッページが発生する場合に成立させる取引額の上限よりも大きく設定すること。

    • マル2店頭デリバティブ取引業者が、上記マル1のような顧客にとって不利となる非対称な取扱いを行わない場合であっても、顧客との取引においてスリッページが発生する場合には、顧客に対し、スリッページが発生する旨とその原因、スリッページが顧客にとって有利・不利のいずれにも働く可能性があること、スリッページが発生した場合の業者における有利・不利の取扱い等について、適切かつ十分な説明を事前に行っているか。

  • (2)特定店頭オプション取引に係る留意事項

    いわゆるバイナリーオプション取引等の個人向けの特定店頭オプション取引(金商業等府令第123条第6項に規定する特定店頭オプション取引をいう。以下同じ。)の中には、短時間で損益の結果が判明するため顧客による過度の投機的取引が行われるおそれのあるものや、複雑な理論的根拠に基づく商品であるにもかかわらず一見単純な商品性であるとの誤解を招きやすく顧客による正確なリスクの把握が困難なものが存在する。

    そこで、店頭デリバティブ取引業者が、個人向けの特定店頭オプション取引を取り扱う場合には、公益又は投資者保護のため必要かつ適切な商品設計や業務を執行する態勢の確保・整備を図る観点から、以下の点に留意しつつ、自主規制機関の策定する自主規制規則の内容を遵守しているかについて検証を行うこととする。

    • マル1商品性に係る留意事項

      店頭デリバティブ取引業者は、自社の提供する個人向けの特定店頭オプション取引について、金融商品取引としての適切性及び健全性を確保するため、以下の点に留意しているか。

      • イ.取引期間・取引期限について

        • a.取引期間(取引開始時刻から判定時刻までの期間)について、過度の投機的取引を助長するような短い期間に設定していないか。

        • b.同一の銘柄に係る各取引期限の間隔について、過度の投機的取引を助長するような短い間隔に設定していないか。また、異なる銘柄(通貨ペア等)に跨る取引期限に関し、合理的な理由がないにもかかわらず、互いに短い間隔のずれを設けることにより、銘柄を跨って反復・継続的に過度の投機的取引を助長するような形となっていないか。

        • c.取引期間中、取引期限に至るまで、可能な限り、顧客の買付取引注文又は売付取引注文(新規取引注文を含む。)に応じているか。

      • ロ.権利行使価格について

        • a.顧客が取引に係るリスクを正確に把握して適切に投資判断を行えるよう、取引期間の開始前に、取引に係る権利行使価格(一定の方法により定められるものにあっては、その算定方法)を決定・提示しているか。

        • b.過度の投機的取引を助長するような、取引期間の開始時点の原資産の価格から著しく乖離した価格に権利行使価格を設定していないか。

      • ハ.取引の公正性について

         同一の原資産、取引期間及び権利行使価格を有する商品について、新規買付取引と新規売付取引の機会を同時に提供する方法、又は、権利行使価格について、全ての顧客が損失を被る場合が発生するような設定(いわゆる「総取り」)を排除する方法により、店頭デリバティブ取引業者のみが有利となる取引条件を取り除いているか。

      • ニ.取引価格(対価)について

         権利行使期間、権利行使価格及び原資産の価格等に照らし、公正な方法により取引価格(対価)を算出しているか。

    • マル2顧客管理・取引管理に係る留意事項

      店頭デリバティブ取引業者は、個人向け特定店頭オプション取引について、例えば以下の点に留意して、顧客の属性等に応じた適切な取扱いを行っているか。

      • イ.顧客の知識・経験・資力に応じた取引開始基準を設定しているか。

      • ロ.顧客の属性に応じた取引限度額を設定し、モニタリングを行っているか。

    • マル3顧客への情報提供に係る留意事項

      店頭デリバティブ取引業者は、顧客が取引に係るリスクを正確に把握して適切に投資判断を行えるよう、個人向け特定店頭オプション取引について、そのリスク、商品内容及び損益実績等について、必要かつ十分な説明・情報提供を行っているか。また、店頭デリバティブ取引業者の広告により、投資者が過度な期待や誤った認識を持つことがないよう、広告・宣伝の適正化や適切な広告審査態勢の整備を行っているか。

    • マル4適切な取引条件に係る留意事項

      • イ.取引条件の算出根拠の開示について

         顧客が合理的な投資判断を行うことができるよう、取引価格、権利行使価格及び判定価格の設定根拠について、十分に顧客に説明しているか。

      • ロ.取引停止(いわゆる「売切れ」)について

         取引停止は顧客へのサービスの中断、流動性の供給の停止となることを踏まえ、顧客への影響を考慮し、以下の対応を行っているか。

        • a.顧客に対し、事前に取引停止の判断基準を説明しているか。

        • b.取引停止の発生時に、発生した旨及びその理由をホームページ等に公表するほか、文書で保存しているか。

        • c.取引停止の発生時に、担当部署以外の第三者等による発生原因の解明やモニタリングを行い、再発防止に取り組んでいるか。

      • ハ.取引条件に関するモニタリングについて

         取引価格や判定価格について、担当部署以外の第三者等によるモニタリングを行い、適切性を検証しているか。

  • (3)電子取引基盤運営業務に係る留意事項

    金融商品取引業者等が、金商業等府令第1条第4項第16号に掲げる電子取引基盤運営業務を行う場合については、第一種金融商品取引業者として法令等遵守の徹底を求めるとともに、店頭デリバティブ取引の公正性・透明性確保の観点から、以下の点に留意して監督するものとする。

    • マル1電子取引基盤運営業者(電子取引基盤運営業務を行う第一種金融商品取引業者をいう。以下同じ。)が、電子取引基盤の板上において、売付け及び買付けの気配等を正確に公表するための態勢・システムが確保されているか。また、顧客の間の交渉に基づき取引価格を決定する場合に、当事者から提示された売付け又は買付けの気配を正確かつ迅速に相手方当事者に伝達するための態勢・システムが確保されているか。

    • マル2電子取引基盤を使用して成立した店頭デリバティブ取引の概要について、電子取引基盤運営業者が、法令等に従い、正確かつ適時に公表するための態勢・システムが確保されているか。

      特に、当該公表業務(成立した取引の公表業務)を外部委託している場合、委託先は、公表に際して電子取引基盤運営業者(委託元)のために公表していることを明らかにしているか。また、電子取引基盤運営業者(委託元)は、公表が法令等に従い正確かつ適時に行われるよう、外部委託先の選定・モニタリング等を社内規則等に基づき、適切に行っているか。

  • (4)監督手法・対応

    日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された店頭デリバティブ取引業者の業務執行態勢に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、店頭デリバティブ取引業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-3-5 通貨関連店頭デリバティブ取引に係るリスク管理態勢

通貨関連店頭デリバティブ取引(金商業等府令第123条第4項に規定する通貨関連店頭デリバティブ取引をいう。以下同じ。)について、自己が負うリスクの管理が重要であることから、リスク管理態勢の整備及び業務運営の遂行について、以下の点に留意し監督するものとする。

  • (1)顧客及びカバー取引相手方との取引に係る留意事項

    • マル1顧客との取引後、カバー取引を行うまでの間に時間差が生じる可能性がある場合には、その間の相場の急激な変動等に備えたリスク管理態勢を整備しているか。

    • マル2カバー取引を顧客との取引ごとにその都度行うのではなく、一定の時間ごと若しくは一定の金額ごとに行う又はディーラーの判断によって行うこととしている場合には、顧客との取引とカバー取引とに時間差が生じることに十分留意し、その間の相場の急激な変動等に備えたリスク管理態勢を整備しているか。

    • マル3顧客からの指値注文又はロスカット注文について、情報ベンダー等が示す相場の気配等から判断して注文を約定させその後カバー取引を行う場合には、その間の相場の急激な変動等に備えたリスク管理態勢を整備しているか。

    • マル4システムによるカバー取引に係るシステムリスクについては、基本的には III -2-8における態勢整備の留意点をもって対応することとするが、カバー取引を行う際にカバー取引相手方との間でシステム障害により、取引が行えない場合があることを勘案し、その間の相場の急激な変動等に備えたリスク管理態勢を整備しているか。

    • マル5カバー取引相手方との間の契約内容等を十分に把握し、トラブル発生時の対応が迅速かつ適切になされるような態勢が整備されているか。

  • (2)相場が急激に変動した場合の取引に係る留意事項

    相場が急激に変動した場合に備え、自己勘定取引を停止する又はカバー取引相手方との取引ができない場合には顧客からの受注を行わない等の具体的なリスク管理の方針を定め、そのための態勢を整備しているか。

  • (3)自己勘定取引に係る留意事項

    顧客取引に係るカバー取引以外に自己勘定による取引を行っている場合には、以下の点に留意する必要がある。

    • マル1自己勘定取引を行う担当者のポジションリミット、ストップロスリミット(日次・月次)、オーバーナイトポジションのリミット等について社内規程を整備しているか。

    • マル2自己勘定取引を行う担当者の取引の発注に関し、誤発注を回避するためのソフトリミット・ハードリミットを設けているか。

    • マル3担当者の行う取引における社内規程の遵守について、バックオフィスにおいて常時モニタリングする態勢となっているか。

  • (4)個人向けのロスカット取引に係る留意事項

    日常の監督事務を通じて把握された店頭金融先物取引業者のリスク管理態勢に関する課題及び対応状況については、ヒアリングや金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を通じて把握することとする。また、当該業者の状況が公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、業務又は財産の状況に照らし支払不能に陥るおそれがある等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

    • マル1顧客の損失が、顧客が預託する証拠金を上回ることがないように、価格変動リスクや流動性リスク等を勘案してロスカット取引を実行する水準を定めているか。

    • マル2ロスカット取引に関する取決めを明確に定めた社内規程等を策定し、顧客との契約に反映しているか。

    • マル3取引時間中の各時点における顧客のポジションを適切に把握し、上記マル1の水準に抵触した場合には、例外なくロスカット取引を実行しているか。

    • マル4ロスカット取引を実行した状況を、定期的に又は必要に応じて随時に、取締役会等に報告しているか。

  • (5)低スプレッド取引に係る留意事項

    低スプレッド取引を提供する通貨関連店頭デリバティブ取引業者は、相当程度の取引量を確保・維持しなければ、財務状況が悪化するおそれがある。一方、経営の安定を確保するに足りる取引量について、適切に管理できる態勢を整備する必要がある。

    こうしたことから、例えば以下のような点を含め、十分なリスク管理態勢を構築しているか。

    • マル1全社的なリスク管理態勢の整備(例えば、リスク管理基本方針の策定等)を行う際に、低スプレッド取引に伴うリスクを十分認識し、適切に反映しているか。

    • マル2低スプレッド取引の提供を開始する際には、その収益構造及び取引量に照らして十分な収益性を確保できるかを検討した上で、スプレッド又は手数料を決定しているか。また、当該決定について、自社の収益構造及び取引量の変化等を踏まえて定期的に検証し、必要に応じて見直しを行っているか。こうした手続きについて、社内規程等において明確化しているか。

    • マル3低スプレッド取引を提供する通貨関連店頭デリバティブ取引業者は、当該取引の取引量、取引内容及び自社の財務状況に与える影響等を把握し、適時適切に取締役会等に報告する態勢を整備しているか。

    • マル4低スプレッド取引を提供する通貨関連店頭デリバティブ取引業者は、その想定する収益構造を実現するため、システムその他の必要な態勢を十分に整備しているか。また、実際の収益状況を随時検証し、当該態勢を適切に見直しているか。

  • (6)法人向けの特定通貨関連店頭デリバティブ取引(金商業等府令第117条第1項第39号に規定する特定通貨関連店頭デリバティブ取引をいう。)の為替リスク想定比率に係る留意事項

     

    • マル1通貨関連店頭デリバティブ取引業者が、金商業等府令第117条第27項及び28項に規定する為替リスク想定比率の算出を自社で行う場合

      • イ. 正確性及び合理性が確保されたモデル(「特定通貨関連店頭デリバティブ取引に係る為替リスク想定比率の算出方法を定める件」に定める定量的計算モデルをいう。以下(6)において同じ。)を構築するとともに、合理的な方法により継続して算出したデータに基づき為替リスク想定比率を算出する態勢を整備しているか。

      • ロ. モデルを用いて算出した為替リスク想定比率について、算出の都度及び事後的に検証するとともに、必要に応じてモデルの見直しを行うための態勢を整備しているか。

    • マル2通貨関連店頭デリバティブ取引業者が、金商業等府令第117条第27項及び28項に規定する為替リスク想定比率の算出を外部委託等する場合

      • イ. 外部委託先が、正確性及び合理性が確保されたモデルを構築するとともに、合理的な方法により継続して算出したデータに基づき為替リスク想定比率を算出する態勢を整備しているかをモニタリングしているか。

      • ロ. 外部委託先が、モデルを用いて算出した為替リスク想定比率について、算出の都度及び事後的に検証するとともに、必要に応じてモデルの見直しを行うための態勢を整備しているかをモニタリングしているか。

      • ハ. 上記イ及びロの業務の一部又は全部について、二段階以上の委託が行われた場合には、外部委託先が再委託先に対して十分なモニタリングを行っているかを確認しているか。また、必要に応じ、通貨関連店頭デリバティブ取引業者が再委託先に対して、直接モニタリングを行っているか。

      • ニ. 金融商品取引業協会が為替リスク想定比率の算出・公表を行う場合(当該協会が当該比率の算出・公表の一部又は全部を委託する場合を含む。)であって、通貨関連店頭デリバティブ取引業者が当該比率を利用する場合には、当該比率を正確かつ継続的に利用するための態勢を整備しているか。

      • (注)なお、上記二の場合には、監督当局が当該協会に対して、適切な業務運営がなされているか、検証するものとする。

  • (7)監督手法・対応

    • マル1通貨関連店頭デリバティブ取引業者のリスク管理態勢の適切性を確認するため、ヒアリング等を通じて、通貨関連店頭デリバティブ取引業者の提供する商品や取引の内容(スプレッド及び手数料等)を把握するものとする。

    • マル2日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された通貨関連店頭デリバティブ取引業者のリスク管理態勢に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、通貨関連店頭デリバティブ取引業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-3-6 有価証券関連店頭デリバティブ取引に係るリスク管理態勢

個人向けの有価証券関連店頭デリバティブ取引に係るリスク管理態勢の整備及び業務運営の遂行については、IV-3-3-5(1)から(5)及び(7)の各規定に準ずるものとする。

IV-3-4 電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者に係る業務の適切性

IV-3-4-1 電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者に対する基本的考え方

電子募集取扱業務(金商法第29条の2第1項第6号に規定する電子募集取扱業務をいう。以下同じ。)を行う金融商品取引業者については、インターネット上の情報が投資者の投資判断に影響を及ぼすことが想定されることから、投資者保護の観点からインターネットを通じて適切な情報提供を行うことが求められる。当該業者に対しては、以下で示す留意点を踏まえて監督するものとする。

IV-3-4-2 電子募集取扱業務の適切性

金融商品取引業者が、法第3条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(金商法施行令第15条の4の2に規定するものを除く。IV-3-4及びV-2-4において同じ。)について、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱いを行う場合には、当該行為は電子募集取扱業務に該当する。電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者の業務の適切性に関しては、以下の点に留意して検証することとする。

IV-3-4-2-1 法令等遵守態勢

電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者のコンプライアンス態勢については、基本的にはIII-2-1における態勢整備の着眼点及び監督手法をもって対応することとするが、それ以外にも、自主規制機関の策定する自主規制ルールの遵守状況も含めた幅広い検証を行うこととする。

IV-3-4-2-2 投資者保護のための情報提供

電子募集取扱業務を行うにあたっては、投資者の投資判断に重要な影響を与える事項について、電子募集取扱業務を行う期間中、電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者が作成するホームページ(当該業者が外部委託する場合を含む。IV-3-4及びV-2-4において同じ。)で投資者が閲覧することができる状態に置くことが必要とされている。このため、電子募集取扱業務については、以下の点に留意する。

  • (1)商号等の表示

    電子募集取扱業務を行うにあたって、金商法第36条の2第1項の規定により同項の標識に表示されるべき事項をホームページ上の見やすい箇所に表示しているか。また、第一種少額電子募集取扱業者(金商法第29条の4の2第9項に規定する第一種少額電子募集取扱業者をいう。以下同じ。)にあっては金商法第29条の4の2第8項に規定する事項をホームページ上の見やすい箇所に表示しているか。

  • (2)投資者の判断に重要な影響を与える事項の表示

    電子募集取扱業務を行うときは、金商業等府令第146条の2第3項に規定する事項をホームページで投資者が閲覧できる状態に置く必要がある。当該事項の表示については、以下の点に留意するものとする。

    • マル1当該事項をホームページの見やすい箇所に明瞭かつ正確に表示しているか。また、投資者保護の観点から、適切かつ分かりやすい表示がなされているか。

    • マル2当該事項をホームページで表示する趣旨や当該事項の記載方法に関する規定の趣旨等を踏まえ、投資者の判断に影響を及ぼす重要な事項を先に表示するなど、投資者が理解をする意欲を失わないよう努めているか。

    • マル3当該事項をホームページに掲載する際には、電子募集取扱業務を行う期間中、投資者が容易に当該事項を記載した箇所にアクセスできるような表示がなされているか。

IV-3-4-3 電子申込型電子募集取扱業務等の適切性

電子申込型電子募集取扱業務等(金商業等府令第70条の2第3項に規定する電子申込型電子募集取扱業務等をいう。以下同じ。)を行う金融商品取引業者については、発行者の事業計画に対する適切な審査及びインターネットを通じた適切な情報提供のための体制整備、並びにインターネットを通じた発行者や金融商品取引業者自身に関する情報の提供が義務付けられている。電子申込型電子募集取扱業務等の適切性に関しては、IV-3-4-2のほか、以下の点に留意して検証することとする。

IV-3-4-3-1 業務管理体制

  • (1)発行者の事業計画等に係る適切な審査

    金商業等府令第70条の2第2項第3号に規定する事項の審査に関する適切な規程が整備され、実質的な審査が的確に行われているか。また、これらの審査結果を確実に検証できる体制が整備されているか。さらに、事業計画が合理的な根拠に基づいて作成されていること、及び、当該事業計画や発行者の財務状況に照らして、合理的な目標募集額が規定されているかについて適切な審査が行われる体制が整備されているか。

  • (2)目標募集額の設定及び応募額の取扱いに関する留意点

    • マル1金商業等府令第70条の2第2項第4号に規定する「目標募集額に到達しなかった場合及び目標募集額を超過した場合の当該応募額の取扱いの方法」について、投資者に誤解を生じさせることのないように、わかりやすく明示することとしているか。例えば以下のような点に留意して検証することとする。

      • イ.応募額が目標募集額に到達しなかった場合であっても有価証券を発行する場合には、発行者の事業計画の内容及び資金使途等との関係で有価証券を発行することが合理的と認められる理由を投資者に誤解を生じさせることのないように明示することとしているか。

      • ロ.応募額が目標募集額を超える場合に当該超過分についても有価証券を発行する場合には、目標募集額を上回る金額についての資金使途及び発行者の事業計画の内容に与える影響等について投資者に誤解を生じさせることのないように明示することとしているか。

    • マル2目標募集額に到達したときに限り当該有価証券が発行される方法を用いる場合において、例えば、応募額が目標募集額に到達した段階で応募代金の振込先口座を通知するなど、金商業等府令第70条の2第2項第5号に規定する「目標募集額に到達するまでの間、発行者が当該応募額の払込みを受けることがないことを確保するための措置」がとられているか。

  • (3)申込みの撤回等に関する留意点

    電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に関して、相手方が有価証券の取得の申込みをした日から起算して8日を下らない期間が経過するまでの間(以下「申込撤回期間」という。)において、相手方が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との契約の解除(以下「申込みの撤回等」という。)を行うことができることを確認するための措置がとられているか。

    上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、例えば、以下に掲げる事項に留意する必要がある。

    • マル1申込撤回期間内は申込者が無条件で申込みの撤回等を行えることとなっているか。例えば、申込みの撤回等があった場合において、電子申込型電子募集取扱業務等を行う金融商品取引業者又は発行者が、その申込みの撤回等に伴う違約金(損害賠償、手数料等の名目の如何を問わない。)の支払を請求することができることになっていないか。

    • マル2投資者に対して、申込撤回期間内は申込みの撤回等を行えること、及び、申込みの撤回等を行うために必要な事項(申込みの撤回等の方法、手続き、連絡先及び既に応募代金の払込みを受けている場合においてはその返金方法等)について明確に表示しているか。

  • (4)事業の状況についての情報提供の確保

    発行者の事業の状況についての情報を、発行者が顧客に対して定期的に提供できることを確認するための措置がとられているか(例えば、発行者の事業に係る報告書等を電子申込型電子募集取扱業務等を行う金融商品取引業者が受領し、当該金融商品取引業者のホームページ又は電子メールによる送付を通じて投資者に対する開示を行う方法が考えられる。)。

IV-3-4-4 第一種少額電子募集取扱業務の適切性

第一種少額電子募集取扱業務(金商法第29条の4の2第10項に規定する第一種少額電子募集取扱業務をいう。以下同じ。)は、電子募集取扱業務のうち、有価証券(株券又は新株予約権証券(金融商品取引所に上場されていないものに限り、金商法施行令第15条の4の2第4号及び第5号に掲げる有価証券を除く。)をいう。IV-3-4-4において同じ。)の発行価額が少額であること等の要件を満たすもののみを行う金融商品取引業者について、第一種金融商品取引業の登録要件が一部緩和されたものである。第一種少額電子募集取扱業務の適切性に関しては、IV-3-4-2及びIV-3-4-3に準ずるほか、以下の点に留意して検証することとする。

IV-3-4-4-1 勧誘・説明態勢

  • (1)着眼点

    第一種少額電子募集取扱業者の行う有価証券の募集の取扱い又は私募の取扱いは、金商業等府令第6条の2各号に掲げる情報通信の技術を利用する方法によってのみ行われるものであるため、当該第一種少額電子募集取扱業者が当該方法以外の方法による有価証券の取得勧誘(例えば、電話や個別訪問による勧誘が該当する。)を行うことはできない。従って、第一種少額電子募集取扱業者が当該方法以外の方法による取得勧誘を行う場合には、金商法第29条の4の2の特例は適用されず、当該第一種少額電子募集取扱業者は金商法の登録を受けずに第一種金融商品取引業を行うことになることに留意する必要がある。

  • (2)監督手法・対応

    第一種少額電子募集取扱業者が金商業等府令第6条の2各号に掲げる情報通信の技術を利用する方法以外の方法により有価証券の募集又は私募の取扱いを行っていることが判明した場合には、深度あるヒアリングや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、第一種少額電子募集取扱業者における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-4-4-2 有価証券の発行価額の総額等に関する留意点

  • (1)基本的留意事項

    第一種少額電子募集取扱業者については、その取り扱う募集又は私募に係る有価証券の発行価額の総額が1億円以上となること及び当該有価証券を取得する者が払い込む額が50万円を超えることをそれぞれ防止するための必要かつ適切な措置がとられているか。

    上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、例えば、以下に掲げる事項に留意する必要がある。

    • マル1金商業等府令第16条の3第1項の規定に基づく算定方法に関して、募集又は私募に係る有価証券の発行者が、当該募集又は私募を開始する日前1年以内に他の金融商品取引業者を通じて、又は金商法第2条第8項第7号に掲げる方法により当該有価証券と同一の種類の有価証券を発行していないか(発行している場合にはその具体的な発行価額)について、例えば計算書類等を確認するとともに、必要に応じヒアリングを行う等により、有価証券の取得勧誘を開始する前に当該事情の有無を適切な方法により確認しているか。

    • マル2金商業等府令第16条の3第2項の規定に基づく算定方法に関して、募集又は私募に係る有価証券の投資者が、当該募集又は私募を開始する日前1年以内に、同一の発行者により発行された当該有価証券と同一の種類の有価証券を取得していないか(取得している場合にその具体的な取得価額を確認できる場合についてはその額)について適切な方法により確認しているか。

  • (2)第一種少額電子募集取扱業務に該当しなくなった場合の留意点

    第一種少額電子募集取扱業者が取り扱う募集又は私募に係る有価証券の発行価額の総額が1億円以上となる場合又は当該有価証券を取得する者が払い込む額が50万円を超える場合には、金商法第29条の4の2の特例は適用されず、当該第一種少額電子募集取扱業者は金商法の登録を受けずに第一種金融商品取引業を行うことになることに留意する必要がある。

  • (3)監督手法・対応

    第一種少額電子募集取扱業者が取り扱う募集又は私募に係る有価証券の発行価額の総額が1億円以上となること又は当該有価証券を取得する者が払い込む額が50万円を超えることが判明した場合には、深度あるヒアリングや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、第一種少額電子募集取扱業者における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

IV-3-5 協会未加入業者に関する監督上の留意点

  • (1)主な着眼点

    • マル1金融商品取引業協会に加入しない金融商品取引業者(IV-3-5において「協会未加入業者」という。)は、金融商品取引業協会の定款その他の規則(以下「協会規則」という。)に準ずる内容の社内規則を適切に整備しているか。

    • マル2社内規則の適正な遵守を確保するための態勢整備(役職員への周知、従業員に対する研修等やその遵守状況の検証など)が図られているか。

    • マル3協会規則に改正等があった場合には、それに応じて直ちに社内規則の見直しを行うこととしているか。

  • (2)監督手法・対応

    協会未加入業者の社内規則の策定・改正・遵守状況等に関して問題が認められる場合には、深度あるヒアリングや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、金融商品取引業者における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、報告徴求の結果、協会規則に準ずる内容の社内規則を作成していると認められない場合又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していないと認められる場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。

 

サイトマップ

金融庁についてページ一覧を開きます
大臣・副大臣・政務官
金融庁について
所管の法人
予算・決算
採用情報
お知らせ・広報ページ一覧を開きます
報道発表資料
記者会見
講演等
月刊広報誌アクセスFSA
パンフレット
談話等
白書・年次報告
アクセス数の多いページ
更新履歴
車座ふるさとトーク
新着情報メール配信サービス
金融庁twitter新しいウィンドウで開きます
政策・審議会等ページ一覧を開きます
全庁を挙げた取り組み
金融制度等
金融研究センター新しいウィンドウで開きます
取引所関連
企業開示関連
国際関係
銀行等預金取扱金融機関関係
証券会社関係
保険会社関係
金融会社関係
法令関係
その他
法令・指針等ページ一覧を開きます
法令等
金融関連法等の英訳
金融検査マニュアル関係
監督指針・事務ガイドライン
Q&A
金融上の行政処分について
公表物ページ一覧を開きます
審議会・研究会等
委託調査・研究等
政策評価
白書・年次報告
金融機関情報ページ一覧を開きます
全金融機関共通
銀行等預金取扱機関
保険会社関連
金融会社関連
店頭デリバティブ取引規制関連
日本版スチュワードシップ・コード関連
国際関係ページ一覧を開きます
国際関係事務の基本的な方針等
グローバル金融連携センター(GLOPAC)
職員による英文講演新しいウィンドウで開きます
職員が務めた国際会議議長等
日本にある金融関係国際機関
金融安定理事会(FSB)
バーゼル銀行監督委員会(BCBS)
証券監督者国際機構(IOSCO)
保険監督者国際機構(IAIS)
その他

ページの先頭に戻る