平成12年5月29日(月)

 
公認会計士審査会

第7回監査制度小委員会議事録


於 大蔵省第四特別会議室
(本庁舎4階)

大蔵省金融企画局市場課
  


午後3時0分開会

三原小委員長 まだお見えにならない委員もいらっしゃいますが、予定の時間も参りましたので、ただいまから、「監査制度小委員会」の第7回会合を開催いたします。
 本日は、当小委員会の検討事項を大きく三つに分けました各テーマのうち、前回の「適正・公正な監査の確保について」の残りの検討事項と二つ目、三つ目の検討テーマであります「公認会計士の質の充実に向けて」「環境の変化に適合した監査法人制度及び業務範囲のあり方」につきまして、前回と同様に事務局の方で整理していただいた「たたき台」に基づきまして、より深い審議を行ってまいりたいと思います。
 一つ目のテーマであります「適正・公正な監査の確保に向けて」につきましては、前回活発な御審議をいただきまして、とりあえず二つ目の検討事項まで御意見をお伺いしたということで、本日は三つ目の検討事項であります「監査報告書の署名のあり方」から御審議をお願いしたいと思います。
 実は、二つ目の検討事項であります「監査法人の審査体制のあり方」を巡りましてはまだ議論を十分尽くしていない半ばといったところでございますけれども、改めて「たたき台」を整理してもらって議論するということで前回終わったわけですが、議事進行の都合上、その点も含めまして、次回に整理してもらった「たたき台」で議論することとしたいというふうに思っております。
 それでは、事務局から基本的な考え方と考えられる方策について説明をお願いしたいと思います。お願いします。


福地課長補佐 お手元に配付しております「資料1-1」6ページを開いていただきたいと思います。それでは読み上げます。

   

.監査報告書の署名のあり方

(1)

 基本的考え方

マル1

 監査法人の責任の明確化
 現行制度では、監査法人が監査証明をする場合には、監査法人の業務を執行した社員(関与社員)が署名・押印をすることになっているが、監査証明の責任は第一義的に監査法人にあることをより明確にする必要があり、また、監査報告書に関与社員名を自署させることは、監査対象会社と署名する関与社員との関係を強調することになり、関与社員の交替を妨げる要因の一つとなっているとの指摘もある。
 また、現在の監査は、いわば個人の職人芸というよりは、法人で組織的な監査が行われ、審査体制も法人として整備されており、監査の実務もマニュアル化されていることなどから、法人が責任を負っていることが明確になるような署名のあり方が大体の世界の流れになっているとの指摘もある。
 このようなことから、監査証明の責任は第一義的に監査法人にあることをより明確にするとの観点から、諸外国にならって、監査法人名のみの記名・押印とすることが考えられる。

マル2

 署名と責任追及の関係
 一方、監査報告書の署名の問題は監査法人及び業務を執行した関与社員に対する責任追及の問題とも関わってくるものであり、監査報告書において法人としての責任と業務を執行した関与社員の責任の所在を明らかにする必要があるとの考えがある。
 現行公認会計士法においては、監査法人は組織体として監査証明を行うこととされており、監査法人の業務を執行した関与社員が故意又は相当の注意を怠り虚偽又は不当の証明をしたときは、当該監査法人が処分の対象となり、また、当該関与社員に対しても懲戒処分を行うことができることとされているが、監査報告書の署名を監査法人名のみとすれば、却って、業務を執行した関与社員の責任意識が希薄化することを危惧する声があることも考慮すれば、今後も、このような監査法人が行った虚偽証明等に係る監査法人及び関与社員に対する責任追及のあり方を維持することが適当であると考えられる。

(2)

 考えられる方策
 現行の監査法人が行った虚偽証明等に係る監査法人及び関与社員に対する責任追及のあり方を維持することを前提として、
現行どおり、監査報告書において法人としての責任とともに業務を執行した関与社員の責任の所在を明らかにすることが望ましいとの観点から、監査法人名の記名及び業務を執行した関与社員の署名・押印とするほか、

マル1

 監査法人としての責任を明確化するとの観点から、監査法人名のみの記名・押印か、又は監査法人名及び代表者の記名・押印とする。

マル2

 マル1の記名・押印に加え、業務を執行した関与社員名を監査報告書の記載事項(自署、押印は求めない)とする。

ことなどが考えられる。



 以上でございます。


三原小委員長 ありがとうございました。
 これから御意見をお伺いするわけですが、ちょっと確認させていただきたいと思うんですが、今までは業務を執行した関与社員は署名・押印するという場合に、関与社員が複数いる場合、全員これは書いているんでしょうか。


福地課長補佐 複数いる場合には、複数の方の署名・押印をしております。


三原小委員長 その場合の関与社員の範囲ですけれども、例えば、相手の会社へ複数でチームを作って行くわけですね。その場合の全員の名前を書くということだと思いますが、また、監査法人の内部で関与する社員というのはいないんですか。その辺はどうなんでしょうか。


富山委員 日本では、関与社員は複数になっているケースが多いです。アメリカではエンゲージメントパートナーと呼ばれていますが、基本的には1人、どんなに大きな会社でもエンゲージメントパートナーは1人ということで、責任関係が明確になっています。日本の場合には、複数の会社の株主総会の日がぶつかった場合や、総会会場への招集がかかった場合に、2人以上いないと対応できないということもありまして、通常、2人以上でやっています。
 例えば、銀行同士が合併して共同監査という形でやっている場合は、4名とか6名とかの人数の関与社員になるケースもあります。
 それから、うちの法人の場合には、コンカーリングパートナーと呼んでいますが、監査にはタッチせず、審査だけを担当するパートナーがおり、公開会社には必ず1人のパートナーが審査員として就いているという形になっています。サインはしませんが、実質的に意見形成には重要な影響を与えることになります。


三原小委員長 分かりました。どうもありがとうございました。
 それでは、御意見、御質問をお受けしたいと思います。
 岸田委員、どうぞ。


岸田委員 法律の観点から申しますと、監査契約を締結するのが被監査会社と監査法人であれば、当然にその監査報告書の宛先も被監査会社であり、その監査報告書を作った者も監査法人であって、監査法人の代表者が署名をするのが、契約の当事者としてするのが筋ではないかと思います。ただ、その場合に、関与社員についても名前を書く必要があるかもしれませんけど、それは必ずしも契約の当事者でありませんので、誰がしたかということさえ明らかになれば、私の契約の考え方からすると、関与社員の署名は必ずしも必要ないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。


三原小委員長 ほかにいかがでしょうか。
 宮島委員、どうぞ。


宮島委員 今のお話で、私も法律論としてそうだと思うんですが、一つ岸田先生にちょっとお伺いしたいのは、この場合、今事務局が考えてきているのは監査法人名の記名・押印ということなんですね。代表社員の名前は出てこない。とすると、法律論としてはやっぱりちょっとおかしいので、監査法人名だけの記名・押印というのは今まで法律の世界の中には出てこなかったんじゃないかと思うんですね。ですから、代表社員名が出てくるんなら分かるけれども。
 関与社員の問題はまた別の問題として、今、岸田先生おっしゃったように私も考えております。


三原小委員長 その点、協会の方の御意向を確認したいんです。


富山委員 まず、商法の規定では、代表者と関与した人との両方がサインするようになっており、商法規定を変えない限り、代表者だけのサインでは済まないことになります。


奥山委員 会計士協会の方の要望としては、基本的には海外と同じような記載方法にしてほしいということで、監査法人名と言っていますけれども、日本の法律上どうしても具合が悪いということであれば、この考えられる方策に出ている代表者で記載する。これはやむを得ないと思います。ただ、関与社員の署名を変えていただきたい、こういう主張でございます。


三原小委員長 要するに監査法人の代表者の記名・押印までは差し支えないと、こういう御意見ですね。分かりました。
 岸田委員、どうぞ。


岸田委員 先ほどの宮島委員の御質問ですが、私もちょっと言葉が足りなかったかもしれませんけど、監査法人と監査法人の代表者、普通の会社が署名する場合と同じで、会社と会社の代表取締役と同じように、監査法人と監査法人の代表者の名前。私申し上げたのはあくまでも監査契約というのが、監査法人が契約の主体である以上は監査法人の代表者が署名すべきであるということで、関与社員というのは、あくまでも署名というのは法律上の直接の効果ではない。つまりそれについて責任を負うと、商法特例法上の責任を負うかもしれませんけれども、あくまでも契約の責任というのは監査法人が負うわけですから、監査法人と監査法人の代表者の名前が必要ではないかというふうに申し上げただけでございます。


三原小委員長 白石委員、どうぞ。


白石委員 少し話を戻すようで申し訳ないんですが、前に津田参考人の御報告の中にあったんですけれども、監査法人は独立して監査業務を営むことを予定していない。監査を行うのは自然人である公認会計士であるというお話があったと思うんですが、このあたりはいかがなものでしょうか。そのあたりが署名にも関わってくるんじゃないかと思いますが、ちょっと教えていただきたいんです。


三原小委員長 いかがでしょうか、協会の方の御意見として。


富山委員 例えば、アメリカのSECのルールでは、エンゲージメントパートナーについては7年を超えて継続してやってはいけないとかの規定はありますが、監査報告書の上で個人名をサインすることはありません。エンゲージメントパートナーは、事務所の中でコントロールされていますから、当然に分かるということで、監査報告書のサインとは完全に切り離した形で運営されています。
 それで、何か問題があった場合には、エンゲージメントパートナーとコンカーリングパートナー、要するに審査員ですね、その両方がSECのチェックの対象になるというふうに伺っています。


三原小委員長 私もちょっと白石委員と同様の疑問を持っているんですけれども、監査報告書というのが確かに監査法人と被監査会社との間の契約で成り立つということであったにしても、監査報告書というものは一般の株主にも公開される。そして、監査をした関与社員そのものが何も責任を負わないかといえば、例えば、行政上の責任を負うということもありますし、また、前回までの議論で、法人の債務に対して無限の連帯責任というものも負う立場である。そういうことを考えますと、監査報告書から名前を消していいものかどうか。
 また、私の素人考えなんですが、それは監査法人としてやるということについては変わりないとは言いながら、その中にいろいろな関与社員がいて、税法に得意な人もいれば、国際法に得意な人もいるということだと、誰がやっても全く同じというじゃなくて、ある程度違いがあるんだとすれば、それに必要な情報として関与社員の名前を書くということもあっていいんじゃないか。これまでの議論の中にもそういう意見があったように思うんですが、その点もう少し議論してみたいと思うんですが……。


奥山委員 意見としてちょっと申し上げたいんですが、監査法人にとってみますと、ある会社の監査というのは、その中の一つのプロジェクトになるわけですね。これは例えて言えば、建設会社でも、あるいは設計事務所でも、ある建築を請け負うということになれば、それが一つのプロジェクトなわけです。もちろん監査法人が、あるいは建設会社が、会社ですから、そのこと自体をやれるわけではなくて、どなたか担当責任者を当然つけるわけですね。それはある意味では、自然人がやるという意味では当たり前だと思います。
 ただし、どこが公認会計士個人でやることと違うかというと、やはり監査法人でやるからには、監査法人全体の品質管理、品質を保証するという意味で意味合いが全く違う。そういう意味では組織的監査という全体の中で、ある担当責任者をつけるということであって、そういう意味では個人が単独で監査をしていくケースと、監査法人が監査をやるという意味合いがそこで全く異なるということは言えようかと思うんですね。
 その場合に、例えば、ゼネコンで工事をする場合でも、工事会社名は一々関与社員、工事責任者が誰かということは出さないで、清水建設なら清水建設という形でやると思います。我々もその監査について保証を与えるという意味で、監査法人は監査法人としてしっかり責任を持ってやるということが大前提でありますので、やはりそれはそれでいいのではないか。
 ただ、おっしゃるように、責任追及が無限責任ということからすれば、それは別の形でどこかに名前を出すという必要はあるかと思います。これはディスクローズの世界で、必ずしも監査報告書の中で署名・捺印という形でなくてもできるのではないかと、このように考えています。


富山委員 補足させてください。
 まず、従来、関与社員の交替ということは余り表だって取り上げられることはなかったのですが、うちの法人の場合に、ある会社の関与社員を誰にするかということは法人自体が決めることになっています。昔から誰々がやっていたから、ずっとやらせるということはあり得ないことで、難しい会社については、やはり能力の高い人にやってもらうとか、そういう選別をしており、誰を関与社員として指名するかは法人が決めています。
 それから、監査を執行するのは関与社員ですが、その結果を先ほど言いましたコンカーリングパートナーがまず審査をして、そこでスムーズに決まればいいんですが、双方の意見がぶつかりますと、うちの法人の場合には、3段階の審査機構がありまして、まず地域審査、その次に本部審査があって、最後には経営全体の問題として上げます。そういう意味で、個人色は非常に薄いんですよね。たまたまある人が担当しているとしても、結局その仕事は法人全体の品質管理手続の中でやっているわけでして、そういう意味で個人名でサインすること自体がある意味では誤解を与えるのではないかと思っています。


三原小委員長 関委員、どうぞ。


関委員 7ページの3行目のところ、「押印とするほか、」マル1マル2を書いてあるわけですが、このマル2のところの「マル1の記名・押印に加え、」というのがこの両方なんですね。「監査法人名及び代表者の記名・押印に加え、」というのがあって、それに「業務を執行した関与社員名を監査報告書の記載事項とする。」とこうなっているわけで、この記載事項も監査法人全体がオーソライズするわけですから、誰が関与社員かというのをそれで分かるということだと思うんですけれども、「自署、押印は求めない」と、この自署、押印があることと自署、押印がないことというのは、どこにその効果が違いが出てくるかというのを教えていただきたいと思うのが一つ。
 それから、もう一つ、全体に議論が関与社員の責任追及というところを中心に今までの議論もそうなっていますけれども、もし公認会計士というのが、もちろん個人としてのプロフェッションという捉え方をすると、その人の個人の公認会計士のキャリアということも考える必要があるかどうかということだと思うんですね。今監査法人に所属をしていても、ずっとその監査法人に所属しているとは限らんというのが考え方だと思うんですね。
 そうすると、個人の公認会計士からすると、関与社員ということで監査法人が請け負った契約であるけれども、この会社の監査の仕事については、自分は何年度と何年度は関与をしましたよと、それについては自信を持ってやりましたし、その後何も問題起きていませんと、こういうのが自分のキャリアですよということを言えることは、公認会計士という職業にとって何らかのプラスとかマイナスとか、そういうことはないんだろうかというのが私のもう一つの疑問なんですけど、そのあたりもし御意見があれば教えていただきたいと思います。


三原小委員長 今のマル1マル2の区別といいますか、このマル2を書いた気持ちを、「たたき台」を書いた事務局の方でお願いします。


大藤大臣官房参事官 事務局の考え方といたしましては、現行の記載方法というのは、法人名はあくまでも記名というか、〇〇法人ということだけが書いてございまして、関与社員の方が押印をするということでございますので、現在監査法人が責任を負っているということでございますけれども、どちらかというと関与社員がやや前面に出た記載になっている。それを基本的には全面的に転換して、やはりマル1にございますように監査法人の方に記名・押印を求める、あるいは監査法人名と代表者ということで記名・押印を求めるというのがマル1でございます。
 それにマル2の方は、やや折衷的な感じになるのでございますけれども、監査報告書の記載事項ということで、マル1の基本的な考え方に立ちながら、先ほど公認会計士協会の方からございましたディスクロ的な観点で、まさに記載事項ということで関与社員名を明らかにしてはいかがかというのがマル2でございます。そういった気持ちで事務局としては提示させていただきました。


三原小委員長 関委員はマル2の今のような趣旨で改めるなら、それはそれで賛成であると、こういうことでしょうか。


関委員 その3行目の「するほか、」というのは、今の制度も残して選択的にマル1マル2を認めるという考え方ですね。


大藤大臣官房参事官 現在のものと選択制ということではなく、これはいずれかの方法を決めることになります。


関委員 そういうふうに読むんですか、これは。


大藤大臣官房参事官 そこは文脈がやや明らかでないかも分かりませんけれども、選択肢としては、現行どおりとするか、あるいはマル1マル2に変えるということが考えられます。


関委員 この三つの中からどれかを選ぼうという考え方ですね。


大藤大臣官房参事官 ええ、どれかを選ぶということになります。ですから、併存しているということは、それはあり得ないんだろうと思います。ちょっと文章が不正確で申し訳ございません。


関委員 もう一つの「自署、押印は求めない」というのは、求めるか求めないでどこが違ってくるということになるんでしょうか。


三原小委員長 恐らく趣旨としては、監査法人としての責任が曖昧になることのないように、関与社員の自署、押印はやめておこうと。しかし、情報としては一応表示しておこうと、こういう趣旨じゃないかと思うんですけれども、どうですか。


大藤大臣官房参事官 まあそういう気持ちで整理しております。


関委員 関与社員の責任の所在を明らかにすることは残るわけですか。


大藤大臣官房参事官 いずれにしましても、自署、押印がなくても、先ほど協会の方からもありましたように、関与社員というのが事実上明らかになるわけでございますので、アメリカの方でもそこは責任追及されていますし、日本の法制でもそこは引き続き関与した社員に責任を追及するということは可能なんだろうと思っております。ですから、そこのところは維持した上ということでございますので、その自署、押印があるかないかということで法律的な責任追及のあり方が基本的に変わってしまうということはないのではないかと思っております。


関委員 明確にするためにもう一回だけお許し願いたいと思うんですが、そうすると、要するに自署、押印を求めないということは、本来的に監査法人が主たる責任を持つんだよということに考え方を変える、言うならば象徴的な、そういう取扱いということになるんでしょうか。


大藤大臣官房参事官 はい。及びその意識改革とか、そういったようなものではないかと思っております。


三原小委員長 岸田委員。


岸田委員 今の関委員からの御質問ですけれども、普通法律的に署名・押印の場合には、何々があったということで責任を負うという、責任の所在を明らかにするために署名することが多いと思うんですけれども、ただ、この場合にはあくまでも契約の当事者は監査法人ですので、関与社員が署名・押印したからといって当然に責任が生ずるものではなくて、責任の根拠はあくまでも契約の当事者である監査法人だろうと、そう考えますと、これはあくまでも確認と定義といいますか、契約責任のほかに不法行為責任がありますけど、そういう別個の責任を発生させる根拠、すなわち履行補助者としての責任が生ずる場合にその責任を追及しやすいというだけであって、法律的な意味はないのではないかというふうに思います。
 それから、先ほど富山委員の御説明で、奥山委員だったかもしれませんけれども、監査報告書に関する規則の第5条では、監査報告書には、監査法人の代表者の名前を署名・押印しなきゃいけないとあって、さらに、監査法人の場合には社員も署名・押印しなければならないと書いてございますけれども、実務上は監査法人と監査法人の代表者は当然に署名されているだろうと思うんです。ちょっと確認させていただきたい。


富山委員 代表者といいますと、普通、理事長を思い浮かべるんですが、監査法人の代表社員というのは数多くおります。代表社員の権限として、対外的な契約行為ができるという点が社員と違うわけですが、そういう意味で現状では、監査に関与しながら代表社員であるという人がサインしていると思います。


岸田委員 1人だけということですね。


富山委員 いいえ、何名もいるということです。


岸田委員 関与社員と区別せずにやっているんですか。


富山委員 代表社員・関与社員という形でサインしているケースが多いと思います。今後、協会で提案したいと思っておりますのは、理事長とかそういう意味での代表者がサインするという方向に持っていきたいということです。


三原小委員長 山浦委員、どうぞ。


山浦小委員長代理 個人の関与社員の責任追及の問題と絡めて署名の話が出ているんですけれども、事実上、個人の責任追及については、監査報告書に記名する、しないは関係ないような気がするんですね。日本の法律、民法等の契約条件としては、クライアントと監査法人、その監査法人のサインだけでは日本の法律になじまないとすれば、今言った理事長クラスのまさに法人の総代表というんですか、それでの署名、あるいはその署名が要らないのであれば、まさに法人と代表者名、それだけの契約事項で済むんじゃないかと思うんですね。
 この問題が出ているのは、やはり監査の品質を法人として保証するんだと、そういう姿勢でありまして、先ほど白石委員の方で御質問があったように、これまで個人の一種の職人芸的な監査行為というのが日本では比較的重く見られた。さらに言いますと、法人でもこれまで多くの法人が個人事務所あるいは中小監査法人等が合併を繰り返して大きくなってきたために、ある大きな法人に入るときに当たって、私のお客さんといった感覚で、個人名と企業名をドッキングさせた形で、そういう一種の慣行みたいなのが一部の法人にあったんですね。
 ただ、もうそういう時代でもなくなってくるだろうということでありますので、できれば、ここで言いますと、監査法人と代表者だけが監査報告書に署名あるいは名前を記入すると、それだけでいいのではないかと私は考えております。
 ただ、もう一つ、LLPとか、そういった先々の監査法人の組織形態のあり方等も関わってきますし、それから、もう一つは、たとえ監査法人の今の議論であっても、個人の会計士あるいは共同監査という形態も何らかの形で残っていかざるを得ないと思いますので、そういうものも含めますと、そういった署名のあり方というのは複数の選択肢が併記されるような形も可能かと、そういうように考えます。


三原小委員長 伊藤委員、どうぞ。


伊藤委員 実際に企業の現場をやっている者の意見を言わせていただければ、私だけの意見じゃなくて、この前何人か経団連で集まりまして、各部会長やっている人といろいろ話をいたしまして、その人たちの意見も含めて私の意見として言わせていただきたい。今回のこの議論にずっと一貫して流れている思想は、公認会計士協会が新しくチャレンジをして、よりファームとしての一体感を醸成しつつ、変革していこうというその意欲と考え方は非常によく理解できる。これは確かによく分かる。
 それがアメリカの現状というものをベースとしつつ、日本の方にアプライしていこうということもよく分かるんですが、日本的な土壌というものは、我々企業の実態をやっている面からよく理解していただきたい。
 例えば、私どもの会社でいきますと、3名の代表社員が署名をしております。もちろん株主総会では私どものファームを選定して、そこに任せているんですが、代表社員の方々、日本で言う代表権のある者ですから、代表社員が先ほどの説明のように何人もいらっしゃるんでしょうけど、私どもはたまたま3人がいて、それから、別にその人たちとは違う審査をする人がいて、それは名前は書いてないので、おっしゃるとおりなんです。それで代表社員の人がサインをしている。
 従って、企業としては基本的に監査法人にお任せをしているんだけれども、やはり代表社員が誰かということが分かっているわけです。その人が署名をしている。そうすると、その人たちが基本的に署名をして、我々の会社について適切であると判断をして署名していただければ、我々の実態を非常に良く理解し、もし仮に不適切であったとすれば、何か起こったとしても、その人たちが最終的な責任を持っていただけるんだろうと。つまり先ほどの無限責任、有限責任の論に入るわけですけど、その関与社員というのは有限責任じゃなくて、無限責任をとるとこの間お話を伺ったわけです。つまり、この前、ファームは無限責任で、関与社員は無限責任で、非関与社員は有限責任だという議論と、あるいは処分の問題、いろいろ全部一貫して考えて、その中における議論をしていかないと、大変大学の先生方に恐縮なんだけれども、法律論だけでこれはいいという形で個別に判断をしていくと、我々企業の実態をやっている者から見ますと、非常に困るわけですね。
 従いまして、私は小委員長がおっしゃったように、全てがつながって、ロジカルに考えていただきたい。企業としては、基本的にどちらでもいいなという人もあったんですが、やはり会計士の責任のあり方と関連して、きちっと整理していただきたいということをお願い申し上げたいということなんですが、そこは白石さんも同じようなお考えだと思いますけれども、そういうふうに思うんです。
 以上です。


三原小委員長 今の伊藤委員の御発言がないと、大勢としては、監査法人、代表者名でいいよとなりそうだったんですけれども、有力な意見もありまして……。


伊藤委員 いやいや、まあそういうこともあるということで、決して私は反対というわけじゃないんです。ただ、現場をやっている私が、何人かの方々、経団連内部で議論したら、大体みんな同じような意見を感じておりましたということを申し上げておきます。しかし、それが絶対ということでは決してありません。


三原小委員長 まだまだ御発言したい方がいらっしゃると思うんですけど、何しろ今日はテーマを三つやることになっておりまして、今の両方の議論、もう一度整理しまして、またこの次に「たたき台」を事務局の方で用意していただいて、この問題を改めて議論したいと思います。
 それでは、次のテーマに入らせていただきまして、次は、「公認会計士・監査法人の処分・責任のあり方」に移らせていただきたいと思います。
 同じように、最初に事務局の方から説明をお願いしたいと思います。


福地課長補佐 7ページでございます。

   

.公認会計士・監査法人の処分・責任のあり方

(1)

 行政による処分

マル1

 基本的考え方
 各方面から、公認会計士制度を高い水準で維持し、公認会計士監査に対する信頼を維持・向上するためには、公認会計士又は監査法人の監査証明に問題があると認められた場合、行政当局において法律に基づいた厳正な懲戒処分が行われる必要があるとの指摘がなされている。
 また、近年における監査法人の大規模化や監査対象会社の拡大等の環境の変化等により、例えば、証券取引法監査と商法特例法監査との関係において、処分内容の整合性等に留意する必要があるとの指摘もあり、このような要請に的確に応えていく必要があると考えられる。

マル2

 考えられる方策


.厳正な懲戒処分の実施と懲戒処分の多様化等
 公認会計士法による処分が、問題の内容に応じてより一層有効なものとなるよう処分形態の多様化(業務改善命令の導入等)を検討するとともに、公認会計士制度を担当する部署の充実を図っていく必要があると考えられる。
 また、これらに関連して、商法監査特例法の規定においては、監査法人等が公認会計士法上の業務停止処分を受けた場合には会計監査人の資格を喪失することになるが、このような関係についても検討を行うことが考えられる。


.懲戒処分の実施機関
 監査法人・公認会計士の懲戒処分を行う機関として、例えば、第3条委員会のような行政機関組織、公認会計士協会内部の審査機関(外部の学識経験者などによるモニタリング制度の導入を条件)等が考えられるとの指摘がある。
 この点については、監査法人又は公認会計士に対する懲戒処分は、公認会計士制度に対する信頼を維持・向上していくことを目的に行政機関(現在は大蔵大臣)が行う処分であり、公認会計士協会の会則上の責任、民事責任及び刑事責任とは異なる責任追及であることから、公認会計士法を所管し、公認会計士制度の最終的な監督責任を負う行政機関が一元的に処分権を行使することとされているところであり、当該行政機関においては法律に基づいた厳正な懲戒処分が行われる必要があると考えられる。

(2)

 自主規制機関による処分

マル1

 基本的考え方
 監査法人等が法令等に違反する行為を行った場合には、公認会計士協会としても、適切な規律を確保する観点から、会則等に照らし厳正に対処していく必要がある。
 また、公認会計士監査に対する信頼を高めるためには、監査証明業務が法律により独占して行うことが認められている公認会計士界として、社会に対して十分な説明をしていくことが求められており、監査手続き等が問題となった個別の事案について、必要に応じて、具体的な監査の状況を開示することは透明性の向上や監査のあり方についての改善の促進に有益であると考えられることから、このような個別事案の公表のあり方について早急に検討する必要がある。

マル2

 考えられる方策


.自主規制機関による処分の透明性の確保等
 公認会計士協会が会員に対する規律保持を担保することを目的に行う会則に基づく懲戒については、厳正に対処するとともに、自主規制機関としての規律保持の徹底や透明性・中立性等の向上の観点から、第三者機関(例えば、協会が資金負担する外部機関)に委ねることなどを検討することが考えられる。


.公認会計士協会における綱紀委員会の調査・審議結果等について、透明性を確保し改善を促進するという観点から、問題となった個別事案の調査結果等を含めた対外的公表のあり方について早急に検討を進める必要がある。

(3)

 損害賠償責任等


 基本的考え方
 近年の企業の経営破綻に伴い監査を担当した監査法人に対する損害賠償請求訴訟が提起されている現下の状況に鑑みれば、損害賠償責任に対する履行能力を高めるため賠償責任保険の義務付け等をすべきとの指摘があり、一方、損害賠償責任の上限額の法定化、会社役員と会計監査人の比例責任制度の導入を検討すべきとの指摘もなされているが、これらについては、監査法人等における品質管理体制の充実・強化等の観点から、監査法人の有限責任形態の導入に係る検討と併せて慎重に検討を行う必要があると考えられる。


 以上でございます。


三原小委員長 ありがとうございました。
 議論に入る前に、確認させていただきたいんですけれども、7ページですが、(1)の「行政による処分」のマル2の「考えられる方策」のところですが、イの「公認会計士法による処分が、問題の内容に応じてより一層有効なものとなるよう処分形態の多様化を検討するとともに、」となっていますね。その後、この処分がと受ける言葉が何になるのか。この「処分が、」というのは、一層有効なものとなるように処分形態の多様化、そういうふうに読めますよね。それはそれでいいのですが、そうすると、その後に出てくる「公認会計士制度を担当する部署の充実を図っていく必要がある」というのは、これは何を受けた言葉になるんでしょう。
 どういう論拠でこういうことになっていくのかというのがちょっと分からないんですが。


大藤大臣官房参事官 誠に申し訳ございません。ややそういう意味では御指摘のとおり舌足らずということかも分かりませんが、「考えられる方策」のところで「厳正な懲戒処分の実施と懲戒処分の多様化等」ということになっておりまして、厳正な懲戒処分の実施をするに当たっては、やはり公認会計士制度を担当する部署の充実が必要があるという趣旨で書いておるのでございますが……。


三原小委員長 要するにきちっとした懲戒処分やるために、もっと部署の充実を図る必要があると。


大藤大臣官房参事官 はい。


三原小委員長 何かちょっと、懲戒処分を充実するためにやるような部署を充実するように読めるんですね。そういうことですか。骨子はそういうことなら、それで分かりました。
 それと、その下のロなんですが、これは懲戒処分の実施機関として、今行政機関があるわけなんですが、そういった行政機関に代えてということでしょうか。例えば、第3条以下に書いてあることは。


大藤大臣官房参事官 これは、前回と申しましょうか、これを議論いたしましたときに協会から「代えて」と御指摘があったところでございます。私どももあの後検討いたしましたが、「公認会計士協会内部の審査機関」ということで、やはり我々今の対外的ないろいろなことを考えますと、行政処分と協会の自主的な処分が今あるわけで、行政処分をどこがやるか、あるいはどういう形でやるのかというのが議論になるんだろうと思いますけれども、行政処分をやめて、協会の処分だけでいいというような御指摘は、協会以外からは余り聞いたこともございません。ここは協会の御指摘をそのまま書いてございますけれども、厳密に言いますと、「例えば、第3条委員会のような行政機関組織」というのはこの文脈に当てはまると思いますが、「公認会計士協会内部の審査機関」というのは厳密に言うと、この文脈には当てはまらない内容なのかなという感じがしております。
 ですから、ここは文脈としては、現在の大蔵省がやっているものに代えてということだろうと思います。


三原小委員長 どうもすみませんでした。
 それでは、どうぞ御意見をお願いいたします。
 富山委員、どうぞ。


富山委員 7ページの下から6行目に特例法の規定について触れているんですが、会計士協会の方から出した資料では、監査法人等が業務停止処分を受ける場合ではなくて、監査法人に属するある社員が業務停止処分を受けた場合に、監査法人が持っている他の会社の会計監査人の資格を全て喪失するということはおかしいという指摘をしているのであって、監査法人そのものが処分された場合は当然全部だめでいいと思うんですよ。
 監査法人に属する1人の社員が何かでミスした場合に、全体に及ぶのはまずいのではないですかというふうに言ったつもりなんですが。


三原小委員長 何かそういう御発言があったように記憶しておりますよね。これだと当たり前のことを書いているような気がして、ちょっと私も聞こうかなと思ったところなんですが、では、その辺は明確に分かるように直していただきたいと思います。


大藤大臣官房参事官 はい。


三原小委員長 ほかにいかがでしょうか。
 白石委員、どうぞ。


白石委員 私も不勉強なんですが、この「公認会計士・監査法人の処分・責任のあり方」では、読んでいると何となく分かるんですけれども、基本的に今の法の規定とかいろんな懲罰・懲戒の運用の中で、具体的に何が問題なのかというのがよく分からないんです。分かっているのは、商法特例法との関係で今お話があったようなところが具合悪いということですし、それから、損害賠償のところでは、やはり損害賠償がいつでも起こるという状況になってきているのでどうするのかというところです。従って、何が具合が悪いのかというのがもう少し分かりますと、それは法で決めなきゃならないのか、今のいろんな処分の期間とか運用を強めたりするのかと、こういうように整理ができるのではないかというふうに私思っているんです。厳正な懲戒処分というのはよく分かるんですが、何が厳正に今されてないのかということになりますと、そのことがおかしいんじゃないかなという気がしております。


三原小委員長 ごもっともな御質問だと思います。私もちょっと気になっていたんですが、自民党のこの問題を検討する小委員会で意見として、処分が少ないんじゃないかというような発言があったやに記憶しているんですけれども、少ないといっても、そういう事例がなければ少ないのは当たり前なので、問題があった事例に対して少ないという意味なのかどうか、ちょっと私も聞こうと思ったんですが、確かにこの問題を議論する前提として、何が今処分として問題があるのか、その辺まず議論してみたいと思うんですが、どなたかこれについて御意見ありますでしょうか。
 今私が言った疑問は、つまり自民党の小委員会の趣旨は、どなたか説明ができればお願いしたいと思います。


大藤大臣官房参事官 自民党のときに出ていた議論は、これは多分に感覚論もあるんだと思いますけれども、今まで公認会計士制度が戦後スタートしてから、いわゆる監査法人が直接処分されている例が少し少ないのではないか。これはここ最近かなり虚偽・粉飾事案とか出ておりますので、そこら辺の感じも含めてだと思いますけれども、そういう御指摘がございます。
 ですから、むしろ関与社員と申しましょうか、個人は処分された例があるわけですが、監査法人の処分というのがやや少ないのではないかというような御指摘をいただいておりますが、余り厳密な論理的な御指摘ではないと思いますけれども。


三原小委員長 どうぞ、山浦委員。


山浦小委員長代理 監査法人の処分の問題については、実は今の公認会計士法の34条の20に設立の認可の取消しがあります。それから、また、34条の21で虚偽又は不当の証明等についての処分。ところが、実はこの公認会計士法が制定された当時は、まだ公認会計士の数が5人以上と、ある意味では個人の監査人が集まって、小規模な監査法人を前提にしたような規定であるわけですね。
 ところが、現在の監査法人は、公認会計士の数において 1,000人を上回るところがたくさんある。そういうところをいわば設立の認可の取消しかどうかという、シロかクロかという形で処分するのは非常に難しいんですね。その中間と言ったらおかしいんでしょうけれども、事実上、中間ですけれども、業務改善命令、こういう事実上の監査法人に対する注意の喚起と、それなりの対応を求める。それが進まなければ、もしかしたら認可の取消しになるかも分からないけれども、そこまでいかないまでも、例えば、内部的な審査体制とか、業務執行のあり方についての管理体制をしっかりしてくれと、こういう処分のあり方もやはり必要ではないかということなんですね。
 ですから、この辺の多様化という意味がまさにそうなんですけれども、現実的な監査法人のあり方に対する行政側の対応としては、こういうことが今必要とされるということだと思うんですね。


三原小委員長 ありがとうございました。
 ほかに。
 伊藤委員、どうぞ。


伊藤委員 私も山浦先生と同じ考え方なんですけど、つまり先ほどの議論に戻るんですけれども、代表社員という名前がなくて、法人名であれば、もし事故が起これば、それは故意ではなくても、要するに過失があっても、非常に重大な過失につながったという場合には、やはり何らかの形で責任を、もしこれが我々のような企業であれば、社長ほかが退任をするとか、そういう形で世間を騒がしたことに対して責任をとるわけですね。そうすると、会計事務所というか、会計ファームがどこかで事故を起こされて、その場合、会計ファームの停止が行われた場合には、それによってほかの会社をやっているところはみんな機能ができなくなるということですから、結局は、何らかの形で具体的に個人の処罰で済むという形でやっていかないと不可能だと思うんですね。
 そういう意味では先ほどの署名の問題にも関わってくるわけですけど、あるいは責任の無限責任なり有限責任にもかかってくるわけで、従って、私はそういうことを含めて、このいわゆる処罰の問題に関しても、何らかの基準を現実的なところでなるようなものを具体的な形で出して、それを例えば公の機関の御当局で決めるなり何なり、一つのある基準を明確にディスクローズしていただくということの方が、より現実的じゃないかというふうに思いますけど、この議論を行う場合については。
 以上です。


三原小委員長 関委員、どうぞ。


関委員 既に御紹介がありましたけれども、公認会計士法で、公認会計士については30条と31条ですか、大蔵大臣の懲戒規定があり、それが監査法人になると34条の21というのがあって、監査法人を処分するときには、その社員である公認会計士についても30条、31条を要するに両方働かせても構わないという規定まで入っている。これはいずれも「できる」というふうに確かなっているんですね。大蔵大臣ができるとなっているわけですから、問題は多分、こういう30条とか31条とか、そういった法律違反みたいな現象が何回発生しているか。それで、発生しているけど大蔵大臣が懲戒権を行使してない。その行使してないところが問題だということなのかどうかという問題だと思うんですね。
 それで、私この公認会計士の審査会の委員になりましてからいろんな議論は公認会計士審査会でやりましたけれども、どうも余りこの35条の公認会計士審査会の権限の、公認会計士又は監査法人に対する処分に対し、調査・審議させるという個別の議案を調査・審議したという記憶があまりない。余り大蔵大臣の懲戒権というのは行使してないんじゃないかなという気もするわけですね。
 ですから、どのくらい発生していて、しかし、行使してなかった。それで、行使してないのは多分、公認会計士協会の自主規制とか、そちらの方で対処してきたんだと思うんですが、その体制がいいか悪いか、そのあたりの判断をしないといかんのじゃないかというのが一つあると思うんですね。
 それから、もう一つは、実は監査法人は、なかなか全体として処分できないじゃないかというお話がありましたけれども、これは確かに監査法人の設立を取り消しするとか、業務を停止してしまうということは、これは難しいかもしれませんが、ある範囲を区切って一定期間業務を停止するということは可能だと思いますし、普通例えば、証取法の証券会社のことなどを考えますと、過怠金という制度、罰金という制度がありますね。監査法人に対する処分に対して、事実上、一般予防的な効果を持たせるというのであれば、そういう法人については過怠金という制度を設けておく。要するに罰金を取るという制度を設けておくという考え方だってあり得るわけなんですね。
 ですから、今、懲戒が30条が個人を前提にして書いてありますし、個人の懲戒が登録抹消までいくようになっていますから、罰金はあえて入ってないんだと思いますけれども、そういったところも併せて議論する必要があるんじゃないかなと、こういうふうに思います。


三原小委員長 奥山委員、どうぞ。


奥山委員 処分される方の側の者として、これについては発言は控えていたんですけれども、私、今までの会計士協会の事例で、やはりこの辺はぜひ見直した方がいいんじゃないかということで提案している内容を改めてちょっと申し上げたいんですが、今の公認会計士法の処分は、今御指摘がありましたけれども、基本的には、監査法人に対しては戒告と業務停止と設立の認可の取消しなんですね。それから、担当する公認会計士については、やはり戒告と1年以内の業務停止、登録の抹消。そして、問題は先ほど申し上げたと思うんですけれども、部分的な業務停止であっても監査法人は全ての業務ができなくなる。これは今残っているわけですね。ましてや、社員の一部分の人が業務停止、部分的な業務停止になったとしても監査法人全体が業務ができなくなると、これが大問題であるということを一つ申し上げているわけです。
 しかしながら、今世間で騒がれているように、監査法人がなかなか処分されないとか、あるいは問題を起こしているのにどうなっているんだとかという話があるときに、やはり世の中のそういう批判を受ける中できちっとやっていくという上においては、今の戒告と業務停止と登録の抹消という組立てがもう時代に合ってないんじゃないか。世間から見ると監査法人というのは一つの組織として見ていますから、だとすれば、その組織に対して何らかの改善命令を出すとか、あるいは商法特例法とつながらない形での部分的な業務停止とか、そういう方法は確かにあり得るんじゃないかと思うんです。
 ですから、そういう意味において、現代のスピードで監査法人に対する認識の問題があるとすれば、そのスピードに合わせて、そういう意味での処分を出しやすいような形で法律も変えていかないと、やはり問題があるんじゃないかと、そういう意味で私どもは提案をしているつもりです。


三原小委員長 今の協会の方の御意見については特に反対の御意見はないですね。問題は、今の1人の社員でも懲戒処分を受けると監査法人全体の業務ができなくなると、これは裁量の問題なんですか。常にできなくなっちゃうんですか。


奥山委員 法律の解釈の問題です。


三原小委員長 そうですか。それがいいかどうかというところがもう一つ問題があるわけですよね。この辺についてはいかがでしょうか。
 宮島委員、どうぞ。


宮島委員 先ほどの話で、例えば、民事の問題として、その契約の相手方が誰かとか、それを保証したのが誰かという意味で法人が責任を負ってくるというのが出てくるんだと思うんですけど、刑事とか、あるいは行政処分の問題、あるいは資格の問題みたいなものを考えたときは、これはむしろ政策的な問題なので、どこの範囲で責任を負わせる、あるいはどこの範囲で資格を剥奪するかという観点で見れば、まさに政策上どこまで今の時代に応じて処分を課すべきか、そういう問題で考えればよろしいのかなというふうに思っているんですけれども。


三原小委員長 そういう裁量の余地のあるものはおっしゃるような線でまた考えていくとして、今問題になっているのは、1人の社員が懲戒処分を受けると監査法人全体として業務ができなくなるという今の商法特例法の規定が、果たして実態に合っているかどうか。もしその辺が実情に合っていないということであれば、この際、改善の方向で意見を表示するということもあり得るだろうということで御意見をお願いしたいと思っているんです。


大藤大臣官房参事官 ちょっと補足させていただきますと、これは有権解釈権でありますとか、法務省の問題になるのかと思いますが、商法監査特例法との関係で、検討に値されると思われる事項としては、まず、社員が1人でも業務停止を受けているとその監査法人は監査ができないという問題と、あと、業務停止というのについて、例えば、将来に向かって、1カ月新しい法人の監査はやってはいけませんよというような業務停止の方をある程度制限した形で、あるいはこういうものについてはというような形で、部分的に業務停止を行った場合も、やはり現在の商法監査特例法によりますと、反射的に、会計監査人の資格を喪失するということになるように聞いておりますので、そういう意味では、いわゆる商法監査特例法の効果がかなり大きいというふうに考えています。


三原小委員長 奥山委員、どうぞ。


奥山委員 それから、これは付随しての話なんですけれども、公認会計士法の監査法人の要件として、34条の4で出ているんですけれども、この4号で、「社員のうちに次のいずれかに該当する者がいないこと」ということで、業務停止の処分を受け、当該業務の停止の期間を経過しない者というのが入っているわけですね。そうすると、その経過しない者がいるということ、つまり処分を受けた社員がいる監査法人は要件を欠くことになるわけです。その要件を欠いた場合、34条の20というのがありまして、そこでは、要件を欠くこととなったときは、その設立の認可を取り消すことができる。これはできる規定ですから、先ほどどなたかおっしゃったように、しなければいけないということではないんですけれども、ここでも社員の1人でも停止処分になったときは、その監査法人が不安定な存在になるという意味では、やはり同じ趣旨の問題は含んでいるなという理解はしていますけれども、これはあえて今まで言っておりません。


三原小委員長 今の奥山委員の御発言の点も含めまして、どうやらここの小委員会の大方の御意見としては、実情に合ってない、今の商法監査特例法の規定、それから、今の34条の20ですか、その辺の適用の問題とか、それから、先ほどの処分のあり方として、もう少し業務の実態に合った処分の仕方、多様性を与えてもいいんじゃないかと、その辺はそういう方向で検討するべきであるということで一応まとめさせていただきたいというふうに思っております。
泰田検事、どうぞ。


泰田法務省局付 まず、商法監査特例法の欠格事由の点について、立法の経緯だけ簡単に御説明させていただきます。
 この商法監査特例法の欠格事由の4条2項第3号になりますが、この規定は昭和49年、この商法監査特例法ができたときから入っていた規定でございますけれども、このときの政府が提出した原案の段階では、社員が1人だけでも業務の停止の処分を受けていたらだめだということではなくて、半数以上の社員が業務の停止処分を受けていた場合にはこうした欠格事由に当たるというのが政府の原案でございました。ただ、詳しいいきさつは分からないんですが、国会の審議中、これは衆議院であったと記載されておりますが、衆議院の法務委員会での審議中で、そのような欠格事由では甘いというふうに判断されたのかよく分かりませんけれども、政府原案が修正されまして、社員が1人だけでも業務停止処分を受けていたら欠格事由に当たるというふうに修正されたとこちらは文献等に記載がされております。
 以上です。


三原小委員長 どうもいろいろと調べていただきまして、ありがとうございました。参考になりました。そういう経緯はあるにしても、今の時代に合わせて、できればお願いしたいということだと思います。
 それから、処分の問題なんですけど、これはやっぱり問題は、問題があった事案については、それなりの処分をしているんだろうと私は思うんですね。問題が表に出ないのが多いから自民党の意見のようなことが出ているんじゃないかと思いますので、これはむしろ審査体制を厳密にやるという方向で是正を図る問題かなと、こんなふうに思います。
 いずれにしましても、具体的にこの事案について、こういうふうな処分が軽過ぎたとか、そういうふうな現実な議論がない以上は、余りこの問題はそれ以上の記述はしなくてもいいんじゃないか。今の2点だけに絞らせていただけたらと思います。
 それでは、この程度にしておきまして、続きまして、「適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方」について、事務局からまず説明をお願いしたいと思います。


福地課長補佐 9ページでございます。

   

.適正な監査日数等の確保と監査報酬のあり方

(1)

 基本的な考え方
 現在の監査は、各クライアントについてそれぞれの監査責任者が通常実施すべき監査手続きを構築していくことにより行われており、データ的に、計量的に適正な監査日数が何日ということを機械的には判断できず、また、監査報酬としていくらということも決まるものではないと考えられる。むしろ審査体制等の関わりで、適正な監査日数と適正な費用の見積もりの関係において当事者間の協議で決定されるべきものと考えられ、そのような観点から現行の標準監査報酬制度の見直しがなされるべきではないかと考えられる。
 なお、標準監査報酬制度については、監査対象の範囲の拡大や過当競争による監査の質の低下を防ぐためにも、当面の間はメルクマールとしての位置づけでこれを維持する必要があるとの考えもあるが、契約の相手方は基本的には法人であり、監査報酬に対する知識・理解もあると考えられること、また、監査の質の低下は監査人に対する責任追及を厳正に行うことなどにより防止することが可能であると考えられ、現状においては標準監査報酬制度を維持する必要性は薄れてきており、各方面の理解を得ることが困難になってきていると考えられる。

(2)

 考えられる方策

マル1

 標準監査報酬制度の廃止
 上記のとおり、監査報酬は、適正な監査日数と適正な費用の見積もりの関係において当事者間の協議で決定されるべきものと考えられ、早急に標準監査報酬制度を廃止する方向で検討すべきと考えられる。

マル2

 監査報酬等監査に関する情報の開示
 監査報酬等の監査に関する情報の開示を行うことは、企業のコーポレートガバナンスの向上等に資するとの意見も強く出されており、標準報酬制度の廃止の検討と併せて、監査に関する情報(例えば、監査日数、監査報酬、等)の開示を何らかの方法で行う方向で検討することが必要と考えられる。


 以上でございます。


三原小委員長 ありがとうございました。
 この最初の「基本的な考え方」というのは、要するに標準監査報酬制度を廃止するという、そういう基本的な考え方ということですね。
 それでは、そういうことがいいかどうかということで、御意見をお願いしたいと思います。
 中村委員、どうぞ。


中村委員 この方向でよろしいと思います。標準監査報酬制度を存続させる意義はどんどん失われてきていると思いますし、やはり監査報酬というのは、企業と監査法人との個別の交渉で決定されるべきものと考えております。
 ただ、企業の中の交渉力の弱い中小企業については、何らかの別途手当てが必要なのではないか。経団連企業はよろしいかと思いますけど、交渉力の弱い企業に対する何らかの手当ても考えておく必要があるのではないかなと思っております。


三原小委員長 その中小企業の対策を考えた上で、とにかく標準監査報酬制度はない方がいいだろうと、こういう御意見でございますね。


中村委員 はい。


三原小委員長 ほかにいかがでしょうか。
 奥山委員、どうぞ。


奥山委員 監査報酬の問題は、規制緩和の問題から出ていたんでしょうか。私どもとしては、監査日数の確保と監査報酬だけの問題というふうに捉えているのではなくて、やはり適正な監査日数の確保というのが、今非常に監査日数が足りないのではないかということの中で、このIは確か「適正・公正な監査の確保に向けて」ということですから、そういう意味で適正な監査日数を確保するためにどうしたらいいかと、こういう問題が含まれていると思うんですね。確か最初の論点ではそういうのが入っていたと思うんですけれども、ここでは適正な監査日数の確保と監査報酬のあり方で、監査報酬のあり方の方にちょっといっている感じがするんですけれども、適正な監査日数の確保というのは私どもとしてはぜひ欲しい論点であります。
 それで、最近、会計士協会でも海外の監査日数と国内の監査日数を調べたものもありますので、今時間が大変窮屈なところで恐縮なんですけれども、若干時間が許せば、次の機会にでもそれを御提示したいと思っていますけれども、ぜひ適正な監査日数ということについての力点も残しておいていただきたいなと思います。


三原小委員長 それは非常に大きなテーマだと思うんですけれども、不思議に今まで余り議論はされていないと思います。まだそこまで話がいってなかったということだと思いますけど、おっしゃるとおりです。
 白石委員、どうぞ。


白石委員 監査日数の話は最初、「資本金等の外形基準で決めてはどうか」という説明があったように思っておりますけれども、例えば資本金というものも、現在は額面発行ということだけではなく、時価発行ということになっていますので、必ずしも会社の規模を現わすものではありません。また、今、まさに連結の時代になっているわけで、基本的に連結時代を踏まえた内部統制や、あるいは会計基準の統一といったものが求められているわけですね。従って、企業はグループとしての経理制度を整え、それから内部統制を組み込むといったところを真剣に考えているわけです。
 もちろんこれからの問題だというところもいっぱいあるわけですけれども、そういったところをぜひ監査法人と企業が一緒になって考えて、適切な監査日数を決めるというふうにしていただきたいという思いです。資本金等の外形基準だけでは適切に決めきれないと私は思っています。


三原小委員長 ありがとうございました。
 ほかに。
 伊藤委員。


伊藤委員 その問題は極めて重要な問題なので、ちょっと言わしていただくと、私も白石さんと同じ考えでございまして、単純なる基準ではまずいんじゃないか。もちろん会社の格付が資本コストに大きく影響しますから、格付が良ければ資本コストが下がるという形になっているわけですね。従って、企業が内部統制をきちっとして体制を整えれば、監査期間は逆に短くするとか、つまり企業の努力が監査の効率性を高めさせるというふうに企業にも持っていかせるべきであるし、逆に言えば、企業がきちっとすれば、それだけの効果が上がる。
 つまり、監査というのは公認会計士だけでできるものではなくて、企業も一体となってやらないといけないんだ。だから、非常に質の悪い企業、例えば、非常に不適切だとなれば、監査期間は長くすべきであるとか、何かそういうような一律ではない、ある程度の大ざっぱな基準というものは私は何らかの形で公表すべきではないかと思います。監査期間の問題は個々の企業との間の問題だけれども、大きなフレームワークとか考え方、誰が見ても納得できるようなものをやるべきであって、報酬となると、これは価格、プライシングの問題ですから、公正取引委員会との関連もありますし、これはやはり個々の企業とファームの問題だと思うんですが、監査期間となれば、それは自ずから何らかの納得性のあるような、そういうものが考えられるべきではないか。それはむしろ私は公認会計士協会が海外の状況を見ながら判断して、それをディスクローズしてほしいと、こういうふうに思うんですね。
 基本的には我々の考え方は、全般的にそうなんですが、自主規制をできるだけやるということは非常に望ましいのだけれども、それのディスクローズを絶えずやっていただきたいというのがお願いで、もしどうしてもそれが公認会計士協会でできなければ、この委員会や審査会とか、そういった第三者が入っているところでそれを出して、オーソライズしてもらうとか、そういうことが重要じゃないかと思います。
 以上です。


三原小委員長 関委員、どうぞ。


関委員 今の御議論でこういうことを考えられるのかということと、それから、一つ関連して奥山委員の方で分かったら教えていただきたいのですが、標準日程みたいのを既にもうアメリカや何かで作っているとすれば、そう単純なものじゃなくて、いろいろ複雑な表、マトリックスか何かになっているんじゃないかと思いますが、どんなふうに作られているのか。細かいことはいいんですが、イメージだけちょっと教えていただきたいと思うんです。
 今、伊藤委員がおっしゃったディスクロージャーということも非常に重要だと思うんですが、企業側、それから公認会計士が両方を考えて、例えば、もし何らかの機関で標準の監査日数というのがあったと。そうすると、この期のこの監査については実際どのくらいかかったと、何で計るか知りませんけれども。それで、標準日程よりかかっているのはどういう理由でかかりましたと、もし標準日程より少なくて済んだというなら、かくかくこういう今の会社の内部体制は非常に良くできているからだと、そういうことを監査報告書に付記するとか、そういうことまで考えてみたらどうかなと思ったんですけど、いかがでしょうか。また、いろいろ専門的な意味で、いや、それはこういう問題があるというようなことにもなるかもしれませんが。


三原小委員長 ついでに、ここまで議論があった日数について、どなたか御意見ありますか。
 奥山委員。


奥山委員 日数のことは富山委員からお答えしたいと思うんですが、その前に、標準日数の問題なんですけれども、今私ども、結局、いろんな事件を振り返ったり、あるいはアメリカの事例を振り返ってみると、どこまで会社の内部事情、内部統制を含めた管理体制に食い込んできたかという問題が実際あるような気がするんですね。やはりこの辺は日本の企業の内部統制がどこまでできていて、それに対して私ども監査もどこまでそれをある程度把握して、きちっと監査していたか。この辺は今までの反省もしなきゃいけないし、今後の改善もしていかなきゃいけないと思いますが、しかし、実はかなりの日数が実際にはかかりそうだと。これは日本の企業でも、きちっと内部統制のあるところとないところと見たときに、監査を実際やるときに明らかにそれは出ているわけですね。海外の事例でもどうもそれがありそうだ。
 そして、今の企業会計審議会の第二部会でも、全体として監査の体制のあり方について、特に内部統制をどうするかという問題を検討されているようですけれども、そういう問題と併せて、会計監査と言いながら、企業の内部統制をどこまで把握して、どこまできちっとチェックしていくかということを、やはり基準の上で明らかにした上で新たな日数を考えていかないと、なかなかうまくいかないんじゃないか。そういうことで第二部会の議論も私どもとしてはぜひ参考にしたいと思っているところなんです。
 日数の具体的な話は、富山委員の方から。


富山委員 まず、海外で標準日数みたいのがあるかということなんですが、ないと思いますし、そういう考え方も基本的にないと思います。いわゆるリスク・アプローチの考え方に基づいて、重要な虚偽記載がないと確信するまで監査を実施して監査証拠を入手し、それで結論を出すということですから、会社によっても全然違うでしょうし、それから、事務所のアプローチにもそれぞれ若干の違いがありますから、そういう意味で標準日数という考え方は基本的にないと思います。
 先ほど奥山の方からお願いしたんですが、会計士協会でGプロジェクトチームというのを作りまして、アメリカとドイツでの監査制度の具体的な適用状況といいますか、監査実績日数の調査をしました。同時に、アメリカと日本の監査制度の基本的な違いは何かということを逐一チェックしまして、一覧表を作っております。
 この結果、同じ業種で同じ規模の会社について日本とアメリカの監査時間を比較した場合に、最低で2倍から3倍ぐらい、金融機関については、もっと差があるという調査結果が出ております。日本の監査法人はビッグ・ファイブと提携しておりますから、それぞれのビッグ・ファイブの品質管理のグループにお願いして実態調査をした結果であり、結果として2倍から3倍ぐらいの時間的な差が出ております。
 その分析内容等につきましても、ぜひ機会をいただいて、説明させていただきたいと思っております。基本的にはリスク・アプローチの徹底の仕方が相当違うと思います。内部統制を厳密に調査した上で、それに基づいて徹底的にチェックしていくという考え方をとっています。また、アメリカは訴訟社会なので、将来、裁判になった場合、どうやって立証するかということを重視して監査していますから、より客観的な手続を実施して、厳密に証拠能力を高めるような形で調書を作成するということを徹底しており、そのためにどうしても時間がかかると思っています。これについてはぜひ機会をいただいて、お話しさせていただきたいと思っています。


奥山委員 ちょっとすみません。


三原小委員長 はい。


奥山委員 今の説明で誤解を与えるとまずいので、一言だけ、今日、企業の方がいらっしゃるので申し上げておきたいんですけれども、決して、日本の企業において今監査が不十分だということを申しているつもりではありません。


三原小委員長 今までの議論の大勢としては、どうやら監査報酬の標準、こちらの方は必ずしも要らないと。しかし、監査の日数については、ある程度標準的なものがあった方がいいんじゃないかと、そういう議論が一つあるわけですね。
 それと、もう一つは、ケース・バイ・ケースで、標準はなかなか作るのは難しいけれども、全体として、もっと増やす必要があるんじゃないかと、こういう議論もあったように思いますが、いずれにしてもこれはかなり重要なテーマでありまして、今まで十分な資料のもとに議論してないような気がしますので、次回、そういった関係の資料を用意していただけますか。それで、もう一度議論をしてみたいと。
 中原委員、どうぞ。


中原委員 その前に、アメリカで金融機関に対して監査日数が非常に日本に比べて多いというのは、アメリカの場合には金融監督当局による業務監査が条件付けられているものですから、通常の財務会計の監査のほかに、内部管理といいますか、業務監査の契約も受けてやっておりますので、その辺が一緒に入っているんじゃないかという気もします。
 それから、監査日数については、商法上の、あるいは有価証券取引法上の財務諸表の発表ですね、有価証券報告書の発表のタイミングとの関係もあるんだろうという気がしていまして、今でも日本の報告はアメリカに比べて遅い。もちろんアメリカは3カ月ごとの四半期のオーディットをやっているんだと思いますけれども、我々海外でいろいろ商売をやっていく、あるいは起債していく、資本調達していくときに、この遅れというのは結構大きな意味を持っておりまして、それから、その理由のもう一つは、さらに問題を悪くしていますのは、SEC基準とか、日本連結とか、アメリカ基準、日本基準というのがありまして、これもばらばらにやっている。その辺にも原因があるので、むしろアメリカの場合は、いわゆる監査期間だけの問題じゃなくて、投入する会計士さんの量といいますか、その辺の違いは日本とないんだろうか。これは会計士さんをもっと日本で増やすべきだという議論にもつながってくるんだろうと思うので、その辺からもちょっとアプローチする必要があるんじゃないかという気がいたします。


白石委員 ちょっと一つだけ。


三原小委員長 はい、白石委員、どうぞ。


白石委員 今おっしゃったとおりでございまして、今度また議論する機会があるようですが、アメリカではタックスに相当会計士が入っていますし、それから、財務諸表の作成、調製にも入っていると思います。日本の場合には大体企業が財務諸表を作りまして、オーディットだけお願いすると、こういうことになっていると思います。そのあたりの区分をひとつよろしくお願いしたいと思います。


富山委員 まず、銀行に関しては、確かに銀行の内部統制といいますか、内部管理体制についての監査があり、そのために時間が非常にかかると思います。先ほど3倍と言いましたが、銀行では7倍とかそんな数字になっておりますが、それが反映している結果だと思います。
 それから、今回の調査は、あくまで監査時間ということで調査をお願いしましたので、タックス、コンサルティングの時間は入っておりません。ただし、四半期報告のレビュー等の時期は入ってきますが、そういう意味では監査だけの時間です。あとは後日、詳しくお話しさせていただきます。


三原小委員長 いろいろと前哨戦たけなわですが、次回に。


大藤大臣官房参事官 ちょっとよろしいでしょうか、事務局から。


三原小委員長 はい。


大藤大臣官房参事官 適正な日数の確保ということで具体的な方策等をぜひ御議論いただきたいと思っていますけれども、ただ、標準的な監査日数を行政当局が示すとか、そういうようなのはやや現実的ではないのではないかという感じがいたします。


三原小委員長 まだ御意見あろうかと思いますが、時間の関係もありますので、それでは、二つ目の大きなテーマ、「公認会計士の質の充実に向けて」に移らせていただきたいと思います。
 最初の検討事項であります「公認会計士の登録制度のあり方」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。


福地課長補佐 それでは、「資料1-2」でございます。

  II

.「公認会計士の質の充実に向けて」
 職業専門家である公認会計士が社会の期待に応え、公認会計士監査に対する社会的信頼を維持するうえで、公認会計士が資格取得後もその専門的能力と幅広い識見を維持向上させていくことが重要であり、継続的研修制度の見直し等により公認会計士監査の担い手である公認会計士の質の向上を担保する必要がある。


.公認会計士の登録制度のあり方

(1)

 基本的考え方
 近年、わが国においては、連結中心のディスクロージャー、退職給付会計、金融商品の時価評価等、国際的な会計基準との調和も踏まえつつ、会計基準の抜本的な改革が進められ、監査人のより実質的でかつ専門的な判断を求められる局面が多くなってきており、今後においてもこのような傾向は一層強まるものと考えられる。
 職業専門家である公認会計士がこのような社会の期待に応え、公認会計士監査に対する社会的信頼を維持するうえで、公認会計士の資格取得後も、社会経済環境の変化等に対応し、継続的な専門研修の受講等により、自らがその専門的能力と幅広い識見を維持向上させていくことが重要であることは言うまでもない。
 以上のような観点から、公認会計士の登録制度のあり方については、継続的研修制度の充実・強化との関係も踏まえ、検討を行う必要がある。

(2)

 考えられる方策

マル1

 登録更新制度の導入


.米国の例に倣い、公認会計士の登録を数年ごと(例えば、3年)の更新制に改めるとともに、現行の「継続的専門研修制度」の研修内容の充実や履修の義務付けを行い、少なくとも公認会計士の名称を用いて業務を行う公認会計士については、当該研修による一定単位以上の履修を更新の必要要件として義務付ける制度を、法令等の枠組みを設けることにより導入することが考えられる。


.一方、上記の措置については、職業自由の問題、規制緩和等により行政の関与を縮小するという観点からは、登録更新制を法制化することは慎重に検討すべきではないかとの指摘や急激に制度を変えるよりは、まず自主規制により対応し、登録更新制の法制化についてはその効果を見つつ検討すべきとの指摘もあり、当面、自主規制による継続的専門研修制度の義務付け及びそれを担保するための必要な措置(ペナルティ等)を講ずることにより、法令上の措置と同様の効果を確保することも考えられる。

マル2

 資格登録と業務登録制度の導入
 公認会計士試験制度のあり方と関連して検討すべき事項であるが、今後の公認会計士監査については、高い資質を持った公認会計士が十分な規模で存在することが必要であり、社会人を含む多様な人材が公認会計士有資格者として監査法人や公認会計士事務所に限らず企業等に多数存在することが、競争等を通じ質の向上に有効であるとの観点から、米国の制度に倣い、資格の登録と業務を行うための登録(ライセンス)を分けることについても検討を行うことが考えられる。


 以上でございます。


三原小委員長 どうもありがとうございました。
 登録制度のあり方を専ら基本的な考え方として見ますと、研修制度の義務付けとの関係で立論しているように思われるんですが、もう一つの考え方としては、研修制度の義務付け化と関係なく、そもそもある年限が過ぎたらば、登録を更新するということが必要であると、そういう考え方はあるんでしょうか、ないんでしょうか、その辺についてどなたか。もしこれは研修制度との関係で考えているのであれば、その次の研修制度の義務化の問題と一緒に議論したいと、こんなふうに考えますけれども。何かそれとは別にやっぱり更新するという意味があるんでしょうか。余りなさそうな、逆に言いますと、研修の義務を確実に履行される保証さえあれば登録の更新は必要ないんじゃないかと、こういう議論になるわけなんですけど。ですから、いかに義務を履行を保証するかという、その辺の議論と一緒に考えていいような気がします。
 ただ、この2ページの2)の、アメリカの例に倣って、資格登録と業務登録制度の導入、資格と業務のライセンスと別けて考えるべきじゃないか、やった方がいいんじゃないかと、こういう議論も一応ここには出ておりますけれども、この辺はどうでしょうか。この方がいいんだという御意見の方いらっしゃいますでしょうか。一応議論として出てきたことは確かですが、余り積極的な御意見はなかったように記憶しておりますけれども。


富山委員 ちょっとよろしいですか。


三原小委員長 はい、富山委員、どうぞ。


富山委員 共存制度についてですが、アメリカでは公認会計士の合格者数が多いわけですが、最初は、会計事務所に入って、そこでいろんな経験を積んでノウハウを身につけて、一般企業に行くという形での共存になっていると思います。合格者が大勢いて、受かった人のある部分がストレートに企業へ行く訳ではなくて、一種のキャリアパスとして会計事務所を経由して、専門家として企業へ入っていくのだと思いますので、そういう意味ではちょっとイメージが違うかなと思います。


三原小委員長 白石委員、どうぞ。


白石委員 私も今おっしゃった点が一つと、それから更新制、3年ごとといえども、何をもってこの人はパスにする、この人はだめだということができるのか。これは協会でやられるとしても大変な工数あるいは労力がかかるのではないかなというふうに実は思っております。更新制はいわゆる絶えず資格がブラッシュアップされるということでいいと思うんですけれども、具体的な運用となると、かなりこれは大変で、逆に言えば形式化する可能性もあるのかなと思います。
 従って、今おっしゃいましたように、やっぱり日頃の試験制度も絡んで相当選抜された方がそういう職に就かれるということでもいいのかなと思ったりしております。


三原小委員長 山浦委員、どうぞ。


山浦小委員長代理 更新制、確かに先ほど富山委員おっしゃったように、米国で毎年の会計士の合格者が多い。それから、会計士協会の会員全体もかなり多い。その中でおっしゃるような意味での更新制の意義があるんだろうと、こういうことなんですけれども、先ほどの小委員長の御質問にもあったんですが、実はこの更新制は、単に研修制度の義務付けとの関連だけで言っているのではなくて、3年間にわたってのいわば業務実績というか、そういったことを見るという趣旨もあるんですね。
 それから、CPE、継続研修の単位取得についても、例えば日本で言いますと、証券取引法関係の監査をやっているのか、あるいは商法監査をやっているのか、あるいはそういった監査業務をやってなくて、例えばコンサルティング等で行っているのか、それぞれアメリカ流で言いますと、要求されるCPEの単位の数も違う。
 それから、もう一つは、ピアレビュー制度との連携もあるわけですね。過去3年なら3年の更新期間中にピアレビューを受けることは、特に監査業務については要求されているわけでありまして、その期間を3年がいいかどうかという話は別としても、更新制の意味は、一つは、会計士としての能力を維持向上させる。それから、定期的に過去の業務等についてチェックを受ける。その二つの意味を持っているわけで、そういう意味で、今の日本の公認会計士制度で、一旦取ってしまえば、あとは一生それで資格が生きて、いつでも使えるという制度よりは、やはり目鼻がついていいのではないかと私自身は考えているんですけれども。


三原小委員長 やればやったで、それなりの効果はあるかもしれませんが、白石委員の言われたような多大な手間暇をかけてまで、日本の場合にやる必要があるかどうかというところが議論の分かれ目だと思います。
 伊藤委員。


伊藤委員 白石さんと私、意見が若干違うんですが、同じ企業の立場なんだけれども、つまり白石さんのように監査をやっている監査室というのを我々持っていますが、例えば、この2ページの「資格登録と業務登録制度の導入」に関連するんですけれども、つまり企業に、私どもの会社にも公認会計士の資格を持った人がいるんですが、その人が話をすれば、公認会計士の監査期間が短くなって、その人が言うことは公認会計士のファームが言っているのと同じ評価をしてくれるかと、必ずしもそうじゃないわけですね。そうすると、こういうふうにここに書いているんですけれども、日本として、そういう公認会計士を企業が抱えて業務をさせれば、公認会計士の会計監査の方と一緒になって、先ほどの内部管理の問題ですけど、信頼が高まって監査期間が短くなるとか、そういうような何らかのことをやらないと、公認会計士を企業内部で何人か抱えてやるという意味が非常に薄れてくるんですね。
 例えば、弁護士の場合も、我々の会社で社内弁護士がいるわけですね。ロースクールへ行かせて取らせる。そうすると、渉外担当の弁護士は、「社内の弁護士で結構です」とこう言ってくれるわけです。それで会社のいろんな法律問題は処理できていくわけですね。
 ですから、そういう意味で、公認会計士の資格を絶えず維持するということを質を高めると同時に、企業内部でもそういうのを持っておれば、それは監査期間の短縮につながるとか、何かそういうようなことがないといけないのではないかと私は思うわけです。
 ということは逆に言えば、資格に関しても、先ほど山浦先生おっしゃったように、私は公認会計士協会がディスクローズをして、つまり3年ごとに登録をするのがだめだったら、少なくともこれとこれとこういうのは3年ごとにきちっと彼らに責務として負わせますということを明確にして、ファームに入っている人は必ずそれをクリアしていっていると、あるいは企業内部の人はそれはクリアしないけれども、こういうメリットをちゃんと特典として与えてあげるとか、そういうことをある程度分けてやっていかないと余り意味がないわけです。ここに書いておられることの現実的な意味がなくなるので、このこと自体は私は大変重要だと思うから、それの成果をきちっと整理してディスクローズし、法律ではなくても、公の場で承認をして、規則を作っていただくことが重要じゃないかと思います。あるいはもう全く意味がないということでやめてしまうのか。私は意味があると思うんですけど、公認会計士の質を高めるにおいて。


三原小委員長 意味があるというのは、更新制が意味があるということですか。研修制ですか。


伊藤委員 更新制が意味があると同時に、更新制を公のものにしてあげないと意味がない。


三原小委員長 岸田委員。


岸田委員 更新制の意味がよく分からないんですけれども、万が一、更新できなかった場合にどうなるのか。例えば、車の運転免許で更新できなかったら、もう一回最初から受け直さないといけない。だから、アメリカの例をちょっと教えていただきたいんですけれども、仮に公認会計士がうっかり忘れて、切れてしまった。もう一回公認会計士が1次試験から受けなきゃいけないのか。それとも、研修を受けたら簡単に救済できるのであれば、実際上余りこういうことを設けても意味がないと思いますので、アメリカの実情を踏まえて、どういうふうに更新、登録があるのか、教えていただければ幸いでございます。


富山委員 すみません。今日は用意していませんので、次回にお話しします。


三原小委員長 白石委員。


白石委員 私ちょっと言葉足らずだったんですが、実は後の継続的研修制度も、それから強制入会制度も含めての私の思いだったんです。公認会計士というのは、弁護士とか建築士、いわゆる国家資格のほかの資格者とは私は基本的に違うのかなというふうに思います。弁護士は企業の問題を企業の立場で解決していきます。もちろんそこに公正なる判断が要るんでしょうが、公認会計士というのはやはり独立性というものを非常に強く求められますので、他の資格者と少し違うのではないかなという思いがしております。
 つまり、登録制度にしても、継続研修にしても、強制入会制度にしても、やはりこれは協会としての自主的な拘束、規制というものが非常に強く求められる資格者なのではないか。従って、登録制度だけを要らないというのじゃなくて、むしろ継続研修も、強制入会の中でやはりそれなりの規制をかけていけばいいのではないかというふうな思いがあるものですから、そういうふうに申し上げました。


三原小委員長 分かりました。どうも継続的研修制度と非常にこの問題は密接に絡んでいるということで、皆様の御意見も非常に研修制度に関係した御発言が多いように思いますので、一応この問題はこの程度にしておいて、次の「継続的研修制度のあり方」を議論する中で、もう一度議論してみたいというふうに思います。
 それでは、次のテーマをお願いします。


福地課長補佐

   2

.継続的研修制度のあり方

(1)

 基本的考え方
 上記のとおり、職業専門家である公認会計士が社会の期待に応え、公認会計士監査に対する社会的信頼を維持するうえで、公認会計士の資格取得後も社会経済環境の変化等に対応し、継続的な専門研修の受講等により、自らがその専門的能力と幅広い識見を維持向上させていることが重要であることは言うまでもない。
 こうした観点から、公認会計士協会においては、既に「継続的専門研修制度」を導入しているところであるが、現在の制度では、各公認会計士の自発的参加が前提となっている点や事後評価のない自己学習でも可能としている点等、改善すべき点も多いと考えられ、公認会計士の登録更新制度の導入いかんに関わらず、今後とも公認会計士協会においては「継続的専門研修制度」の充実・強化について検討する必要がある。

(2)

 考えられる方策

マル1

 履修の義務付け
 現行の「継続的専門研修制度」は、各公認会計士の自発的参加が前提となっているが、これを諸外国の制度に倣い、早急に履修を義務付けることが必要であると考えられる。

マル2

 研修形態・内容の充実等
 研修の履修を義務付けるとともに、最低取得単位数や研修形態を集合研修等の受講したことが客観的に確認できる形態とし、事後評価のない自己学習は除外するなどの見直しを行うことが必要であると考えられる。
 また、社会経済環境の変化を踏まえ、研修内容(カリキュラム等)の充実等を図る必要があり、特に、研修内容としては、監査に必要な最新の会計基準・実務知識、ケースワークの他、職業倫理面に関連した事項等が重要であると考えられる。

マル3

 履修を担保するための措置
 研修の履修を担保するための措置を講ずることが必要であると考えられ、例えば、履修義務を果たしていない者に対しては、氏名等の公表や会則上の懲戒(戒告、会員権の停止等)の適用を含めた制裁措置を検討する必要がある。


 以上でございます。


三原小委員長 ありがとうございました。
 初めに、余り議論はないかと思いますけれども、一応お伺いしたいのは、継続的研修制度についての基本的な考え方として、義務付けが必要であると、こういう議論があり、それを前提として次の方策が出てくるわけなんですが、これが今義務化するということについてどう考えるか、どなたか御意見ございますでしょうか。大体今までの議論からいくと、どうも義務付けが必要であると、こういうふうな御意見が大勢を占めていたというふうに承知しておりますが、その辺はよろしいでしょうか、特に御異論がないということで。
 それでは、次の方策として、その義務付けの方策としては、それは法令で決めるということもあるし、それから、公認会計士協会の方でしっかりやってもらうと、こういうやり方とあるわけですが、一つお伺いしたいのは、「履修を担保するための措置」としてマル3で書いてある懲戒ですね。これは中身として、戒告、会員権の停止等と。つまり研修を受けない場合に、その人が業務を行えなくなると、こういうことまで懲戒として考えておられるんでしょうか。協会がおやりになるんですね。


富山委員 まだ具体的な検討はしておりませんが、アメリカの事例では、研修をちゃんと受けてない場合は、所定の資格要件を満たしてないので、品質管理の基準に違反します。そういう意味で品質管理手続上の限定が付くという形になりますので、カバーせざるを得ないのだと思いますが、そういう意味での縛りが必要だと思いますね。


三原小委員長 協会でそこまでおやりになることを考えていることを前提にして。


奥山委員 ちょっと誤解があるといけないんですが、会計士協会の懲戒は、業務を停止することはできないんです。あくまでも業務を停止できるのは大蔵大臣の行政処分ですから、協会としては公表したり、それから、戒告とか会員権を停止するという意味での理解でお願いしたいと思うんです。


三原小委員長 それでお伺いしたかったのは、会員権の停止というのは業務はできるんですか。


奥山委員 会員権の停止というのは、要するに例えば、いろいろな情報を渡さないとか、あるいは選挙権、被選挙権がないとか、そういうことなんです。業務そのものの停止云々は、先ほど申し上げた法の処分でしかできない、そういう自主規定になっています。


三原小委員長 会員にならないと業務は行えないのでは。


奥山委員 会員権の停止であって、会員権の削除じゃない、除外じゃないんです。
 停止しかできないので、停止期間が業務停止イコールとならないんです。


三原小委員長 そうですか。


奥山委員 そこは会計士法上の懲戒処分と自主規則としての公認会計士協会の会則による懲戒との関係になっているんです。


三原小委員長 例えば、3年として、3年の間に研修を受けなくて、会員権の停止をしても、残り1年の間に受ければ、また業務を行えるようになるというような意味で、とにかくその1年の間は業務を行えないようにすると、そういうことはできないんですか、この会員権の停止で。


奥山委員 それは法律上のというか、形式上の担保ではなくて、氏名を公表したり、それから、品質管理レビューの上で限定報告が付いたり、それをまた公表する道を今後作りますから、その中で、この会員に監査を頼むと問題になるということで、実質上、業務がしにくいと、そういう効果になると思うんですけれども、業務そのものをしてはならないという形で協会が停止することはできないんじゃないかと思いますけど、今の規定では。


三原小委員長 関委員。


関委員 もしそういうことであれば、先ほどの行政と自主規制の分担の話ですから、そういうときは行政が業務停止をかけると、そういう方針をはっきりさせておけば、それで済む話ですね。それがはっきりしないのであれば、小委員長がおっしゃっている継続的教育義務があれば更新制は要らないという話には必ずしも結び付かないことになるかもしれないと、こういう関係じゃないか思います。


三原小委員長 岸田委員、よろしいですか。いかがですか。


岸田委員 私、実際よく知らないんですけど、その研修を受けるということは、具体的には、黙って座って聞いていればよろしいんじゃないんでしょうか。つまりこれが本当に効果があったかどうかということをわざわざ試験をして、この人が評価が悪いとか良いとかやるわけじゃないとすれば、極めて形式的なものだと思うんですけど、それにもかかわらず、それで資格がなくなるとかいうのは、ちょっと重過ぎるんじゃないかと思いますので、もう一度その研修というのはどういうことか。つまり今申し上げたように、黙って聞いていればいいのか、そうでないのかということだけちょっと教えていただきたいと思うんですけど、現状ですね。


奥山委員 今は、例えば新しい法律とかいろんな改訂の協会の委員会報告が出たときに、それを集合研修として研修所へ行って聞いていれば単位になります。
 ただ、私、ここでぜひ訴えたいのは、会計士もプロフェッショナルですから、自分が研修してないという名前が公表されるというのは、これは非常に不愉快。あるいは不愉快どころじゃなくて、自分として失格だと思うんですね。だから、やはり私どもとしては、今そういうプロフェッショナルの気持ちに訴えたいということから、自ら自主規制できちっとやってみて、それで、そういうふうな会計士を明確に公表するなり、会計士協会の処分でやって、それでなおかつ、そういう会計士が言うことを聞かないとすれば、これはやはり行政処分なり、あるいは法を作って、協会の自主規制でだめだという判断がまた出るかと思うんですけれども、私どもの気持ちとしては、やはりプロフェッショナル集団としてきちっと自主規制でやってみたい。また、やらなければいかんのじゃないかと、こういうことで今私どもの仕組みを訴えたいと思っているわけです。


三原小委員長 プロフェッショナル集団と言いながら、1万何千人という今の数ですよね。必ずしも倫理意識の強い人ばかりとは限らないような気がするんです。その辺は本当に自信がありますか。


奥山委員 非常に厳しいお言葉ですが、私は1万何千人というのは、まだ緊密度が高いと思っていますから、十分これに耐えられる会計士の資質だと思っていますが、もし本当に耐えられなかったら、また議論をお願いしたいと思います。


三原小委員長 富山委員何か。


富山委員 まず、アメリカでどういうことをやっているかということをお話ししたいんですが、アメリカでは研修会に参加するという形が原則的な形だと思います。そうでない場合、例えば文書類を読んで自己研修をする場合には、ペーパーテストに解答させて、それでちゃんとやったということを確認するそうです。最近では、ビデオの教材が非常に増えて、教材のあるステップまで来たら解答をさせて、それをクリアしないと先へ行けないという形でチェックするようです。
 それから、日本の研修制度について申し上げますと、研修が必要とされるほとんどの場合は監査法人のメンバーだと思いますが、この場合は会場へ行って研修を受けるわけではなくて、事務所内での研修が義務付けられており、それを会計士協会で認定してもらって、CPEの仕組みの中に取り入れてもらうという形でやっています。事務所内での研修ですから、相当厳しいチェックされると思いますので、そういう意味では実効があると思っています。


三原小委員長 大きな監査法人だけじゃなくて、個人の公認会計士業務をやっているその人に対するチェックはどうなるんでしょうか。


富山委員 個人の事務所の場合は、会計士協会主催の研修会に依存するしかないわけですね。アメリカではこのような研修制度が非常に発達していまして、研修そのものが商売になっているようですね。研修機関としてはいろんなところがありまして、そこでいろんなセミナーを企画して、1週間〇〇のコース、1千ドルとか、そういう形で商売になっているそうです。それから、テキスト類が会計士協会でも相当売れていまして、そういう意味では一つの業務として出来上がってきているということらしいです。


山浦小委員長代理 よろしいですか。


三原小委員長 山浦委員、どうぞ。


山浦小委員長代理 CPE制度というのはまだ導入されたばかりなので、これから恐らく充実させることになると思うんですけれども、いずれにしても、今のような形ではまだ手緩いし、それから、先ほどの岸田委員の御質問であったんですけれども、現実にはアメリカなどでは、きちんとした評価制度があって、しかもその評価の結果が、受講した個人だけでなくて、例えば、監査法人に所属していますと、その監査法人に送られまして、勤務評定に関わってくる、そういった仕組みになっているんですね。
 いずれにしても、CPEの制度そのものについてはそういう話なんですけれども、やはり何らかの形で、先ほど関委員がおっしゃいましたように、処分等の資格停止、それと行政の関与がドッキングしないと、どうもやっぱりうまくいかないだろうと。これを段階的に当面は自主規制策として見守っていくと、こういうソフトランディングのための一時的な措置はあるかも分かりませんけれども、これも先々は、もっと会計士の数が増えていきまして、いろんなタイプの会計士が出てきますと、何らかの形できちんとした制度として入れざるを得ないんじゃないかという気がします。


三原小委員長 中原委員、どうぞ。


中原委員 先ほど停止しかできないというお話と、今も行政の処分とドッキングというお話なんですが、公認会計士規則だと、除名とか、あるいは大蔵大臣に登録の抹消を請求するとかと書いてあるんですが、これはどういうことなんでございますか。


奥山委員 除名は、これは例外というか──今何ページお読みでしょうか。


中原委員 第6章懲戒。


奥山委員 除名は会計士補しか確かできないと思うんですが、14ページの上から2で、「懲戒の方法は、次の4種とする。ただし、第3号の懲戒は、準会員に対するものとする。」ということで、その3号は除名となっていますね。会員は除名の対象になってないんです。これはどうしてこうなっているかといいますと、蛇足ですけれども、準会員は協会に入るのは強制入会じゃないんですね。協会に入らなくても、別に業務上は差し支えないということになっていますので、そういう意味では除名しても本人の業務については影響がない。会員の場合は除名すると、会員でなければ直ちに職務ができませんので、従って、この除名から会員を外していると思うんです。
 それから、4号の大蔵大臣への懲戒処分の請求ですけれども、これはお話のように確かに会則上、問題がある会員は処分請求をするということはあり得ると思うんですけれども、事実上は、非常に本業の業務に問題があった場合の話が本質的にはここで対象ではないかということで、いわば会費の未納とか、あるいは行われた研修の未修とか、そういうことが直ちにここに入るのかどうかということについては、まだ検討を要するのではないかと、こういうふうに思っています。


三原小委員長 入るように解釈する余地はないんですか。


奥山委員 それはこれからそういうふうな解釈をしようということであれば、あると思いますけれども、ただし、それにはやはりそういうことをもう一度見直さないといけないと思います。


三原小委員長 まだ継続的研修制度自体が歴史が浅くて、これが過渡期の状態で、これからいろいろ整備されていくんだろうと思いますが、そういう段階でいきなり更新制度を採用して、厳密に研修を受けない人は直ちに資格がなくなるというのも、ちょっと厳しいかなという気はいたしますけれども、しかし、今までの御意見を総合いたしますと、そういう更新制度の改正までは直ちにいかないにしても、とにかく研修を受けない人は仕事をできないように、そういう保証は欲しい。その方法をどうするかについては、また、山浦委員のようにソフトランディングの方法もあろうかと思いますけれども、いずれにしても、大体そういうことで皆さんの御意見がまとまっているような気がいたしますので、その辺をまた文章にまとめていただいて、この次の機会にまた確認していただきたいというふうに思います。
 ちょうど時間が来まして、大分テーマが残ったのですが、残った点につきましては、また次回にこの後から続けて議論をさせていただきたいと、そういうふうに思っております。
 ということで、今日はここまでで小委員会を終わりにしたいと思います。予定の時間が参りましたので、この辺で終了させていただきたいと思います。
 前回及び本日いただきましたここまでの御意見等につきましては、整理させていただきまして、当小委員会としての「審議結果のとりまとめ」にまた反映させてまいりたいと思います。
 それから、時間の関係でかなり急いだわけなんですが、何か途中で言い足りなかった方もいらっしゃるかと思いますが、そういう方は、事務局の方に何らかの形で御意見を寄せていただければ、事務局の方でとりまとめ文章を書くときにそれを反映させていただきたいと思います。期限を限って恐縮なんですが、後からの御意見、今までのテーマについての御意見ございましたらば、6月2日(金曜日)までに事務局の方にお送りいただきたいと、こういうふうにお願いしたいと思います。
 今日予定していたテーマでまだいかなかったところについても、予め御意見を寄せていただければありがたいと、こういうことでございます。
 それから、とりまとめの文章化の作業についてでございますが、大変お手数をかけて恐縮なんですが、山浦小委員長代理にもお手伝いをしていただきまして、正確性を期する意味で事務局の方で先生に見ていただきたいと、こういうことでございますので、とりまとめの文章化につきまして事務局とともに作成してまいりたいというふうに考えておりますが、山浦小委員長代理にお願いしてよろしゅうございましょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原小委員長 ありがとうございます。お手数ですが、よろしくお願いいたします。
 なお、次回会合は6月8日(木曜日)の午前10時から12時まで、隣の第三特別会議室で開催させていただきたいと思いますので、御出席くださいますようよろしくお願いいたします。
 また、皆様の席上に第6回会合の議事録(未定稿)をお配りさせていただいております。御覧いただきまして、お気づきの点がございましたら、お手数ですが、次回会合までに事務局までお知らせくださるようお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、本日の小委員会を終了いたします。
 どうもありがとうございました。

午後5時5分閉会

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