講演等

東京富士大学 ~「公認会計士の社会的使命と試験制度の改正」について~
平成19年11月30日
公認会計士・監査審査会常勤委員 脇田 良一
東京富士大学 二上講堂
 平成19年11月30日(金)東京富士大学において、脇田委員により「公認会計士の社会的使命と試験制度の改正」という題目で講演が行なわれ、多数の方に参加いただきました。講演の概要は以下のとおりです。

1.はじめに
2.公認会計士・監査審査会について
3.公認会計士の使命、社会的な役割について
4.公認会計士試験について

1.はじめに
 公認会計士の最も大切な仕事は、監査を行うことであります。公認会計士は、監査報告書を作成し、その会社が発信する財務情報の適正性を保証します。適正性とは、この財務情報には重大な誤りはないということであります。これは日本だけでなく、世界的にみても同じです。保証をすることで、その結果として、財務諸表等を利用する人たちが安心してそれを使えるようになります。企業がどのような状況かを正しく知るためには、その財務情報等が信じられないといけません。信頼性を保証してあげなければならないのです。公認会計士は、信頼性を保証する大きな役割を果たしています。

2.公認会計士・監査審査会について
 公認会計士・監査審査会は公認会計士法に基づき、平成16年4月1日に設置された合議制の機関です。常勤の会長1名と委員9名(うち1名は常勤)で構成されています。会長及び委員は国会同意人事といい、衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣より任命されます。
 公認会計士・監査審査会の業務は、3つあります。まず、日本公認会計士協会の実施する「品質管理レビュー」に対する審査及び検査です。審査会はそのレビューに関する報告を受け、内容の審査を行い、必要に応じて監査事務所や、日本公認会計士協会等に対して検査を行います。
 二番目の業務は公認会計士試験の実施であります。なお、英米等では、職業会計士の団体等の民間団体が公認会計士試験を実施しております。
 三番目として、公認会計士等に対する懲戒処分等を調査審議するという業務があります。
 現在、世界各国に監査監督機関があります。一番大きな組織はアメリカのPCAOBですが、そのPCAOBの設立より2年遅れて我が国の公認会計士・監査審査会(CPAAOB)が設立されました。各国の監査監督機関はお互いに連携しながら、会計士や監査法人の監査監督を行っています。

3.公認会計士の使命、社会的な役割について
 過去にいくつもの監査の信頼性を疑わせる事件が発生しました。ある会社は、出資元の銀行に対して融資を続けてもらいたい、あるいは株主の方に会社の経営は順調であるとアピールしたいといったことから、自分の会社の財務諸表を大きく歪めてしまいました。このように、会社が財務諸表を粉飾してしまうことがあります。財務諸表に偽装や、粉飾がないということについて、誰かが保証しなければならないのです。それが公認会計士の仕事であります。
 企業の行動としては自分の財務諸表等を良くみせたいという心理があるのですが、経済活動の中ではこれを厳しく律していかなければなりません。不適切な財務諸表がでてしまうと、投資活動や、商品の購入などについて懐疑的になり、経済活動が不活発になります。我々の現在の市場社会を円滑に運営し、我々の生活が豊かに行われるためには適切な情報をお互いに出し合うことが必要です。

4.公認会計士試験について
 平成19年の公認会計士試験の願書提出者の人数は20,926名ですが、このうち2,706名は、平成15年の公認会計士法改正以前の旧2次試験の合格者等の短答式試験みなし合格者の方 などです。これを除いた短答式試験受験者等の人数は18,220名でございますが、この中には、前年度の短答式試験合格者による短答式試験免除者等が含まれております。以前は、短答式試験に合格したものの論文式試験を不合格になった人は、もう一度短答式試験から受けなおさなければならない仕組みでしたが、平成15年の試験制度の改革により、短答式試験に合格すると、それから2年以内に行われる短答式試験については免除となり、論文式試験から受験できることになりました。
 平成19年試験の結果は、短答式試験合格者が6,321名、論文式試験受験者が9,026名となり、旧2次試験の合格者を除く論文式試験の合格者は2,695名となりました。この2,695という数字は過去に比べ非常に人数が増えているという印象を受けるでしょうが、これは2年間の短答式試験免除制度が大きく左右したのであろうと思います。また、論文式試験に不合格になっても、一部の科目について論文式試験合格者の平均点以上を獲得すると、その後2年間はその科目が免除となります。そうなると、短答式試験のための対策は行う必要はなく、その上、論文式試験の科目についても絞って勉強できるようになります。このように、試験の仕組みの改革が本年度の合格者の増加につながっているのではないでしょうか。現在、公認会計士の業務は拡大しており、また、社会の公認会計士の果たす役割への期待というのは大変大きいものです。公認会計士の世界により一層多様な人々を迎え入れるということが必要であると思っています。
東京富士大学 ~「公認会計士の社会的使命と試験制度の改正」について~
(以上)

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