講演等

早稲田大学 ~「公認会計士をめざす人のために」について~
平成19年12月12日
公認会計士・監査審査会常勤委員 脇田 良一
早稲田大学 西早稲田キャンパス 大隈小講堂
 平成19年12月12日(水)早稲田大学において、脇田委員により「公認会計士をめざす人のために」という題目で講演が行われ、多数の方に参加いただきました。講演の概要は以下のとおりです。

1.公認会計士・監査審査会について
2.平成19年公認会計士試験について
3.試験実施面での改善について

1.公認会計士・監査審査会について
 公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)の業務は、大きく3つあります。
 まず一つ目は、日本公認会計士協会の実施する「品質管理レビュー」に対する審査及び検査であります。自主規制機関である日本公認会計士協会は、会員である監査法人や公認会計士が行う監査の品質管理の状況をチェック(レビュー)します。審査会は協会からその報告を受け、内容の審査を行い、必要に応じて監査事務所や、日本公認会計士協会に対して立入検査を行います。その結果、必要があれば金融庁長官に対して行政処分その他の措置をとるように勧告します。アメリカには、約500人の職員を擁しているPCAOBという監査監督機関がありますが、審査会は平成16年にできたばかりの職員47名のまだ小さな機関です。
 二つ目として、公認会計士や監査法人が不適切な監査を行ったこと等に対して金融庁が懲戒処分を行う場合、事前に金融庁から意見を求められ、審議を行った上で意見を述べる調査審議という業務があります。
 三つ目の業務としては、公認会計士試験の実施があります。監査業務に対する社会的な期待の高まりを受けて、さらに多くの公認会計士を確保するために、より多様な人々にとって受験しやすくするとの観点から、平成15年の公認会計士法の大幅な改正が行われました。試験制度改正の趣旨の1つに幅広い資質を持つ人に会計士の世界に入っていただくことがあげられます。そのためには、従来からの試験合格者の水準を確保することを前提に、まず、会計士の世界を多くの人々に知ってもらい、また、今まで試験の仕組みの複雑さ等から受験してこなかった人にも試験を受けてもらい受験層を広げていくことが大切です。

2.平成19年公認会計士試験について
 先月(11月)、平成19年試験の合格発表を行いました。短答式試験受験者等の最終合格者は、2,695名と昨年の約2倍となっております。昨年(平成18年)の短答式試験合格により短答式試験を免除された受験者や論文式試験の一部科目が免除になった受験者が、最終合格者数の大幅な増加に大きく影響したのではないかと考えられます。これは、平成15年の公認会計士法改正に基づき、平成18年から実施された試験制度改革の効果が現れた結果といえると思います。

3.試験実施面での改善について
 この平成18年から実施されている新試験については、多様な人々にとってより魅力的なものとなることにより、多くの人々が同試験に挑戦することとなり、もって公認会計士の質を確保しつつ、多様な人材が監査証明業務やその他の監査と会計に係る業務の担い手となることを図るという試験制度改革の趣旨を一層実現するために、審査会では試験の実施方法についても工夫しようということになりました。この検討結果が平成19年10月25日に「公認会計士試験実施の改善について」という形で公表されました。
 この報告書は、公認会計士試験は、一定の基準に達した者を合格者とする認定試験、資格試験であることを改めて確認した上で、公認会計士試験の現状、改善策、検討課題等を取りまとめたものです。審査会としては、同報告書の提言を踏まえて、改善を行っていくこととしております。
 その改善策の主な内容を説明させていただきますと、短答式試験と論文式試験の役割が明確化され、短答式試験については、従来2日で行っていた試験を平成20年試験から1日で実施すること、受験機会を増やすことを目的として、平成22年試験から短答式試験を年2回実施する方向で検討することがあげられます。
 また、論文式試験については、思考力、判断力、応用能力、論述力等を問うものであり、論文式試験の出題範囲は短答式試験よりも絞り込んだものとすべきであるとの考えから、平成20年試験より重点出題範囲を明示することとし、また、主に暗記偏重型の勉強を強いられていると感じる受験者の心理的負担の軽減を図るため、法令基準集等を配布する科目を増やした上で試験を実施することとしています。このようにして、論文式試験について、暗記力を問うのではなく、思考力を問うとのメッセージを明確に打ち出しています。
 公認会計士試験は、受験者の能力を認定し、一定の基準に達した者を合格者とするわけですから、あらかじめ決められた人数を合格させる趣旨の試験ではございません。平成19年試験で合格した2,695人は、一定の基準に達した方々であり、今後も一定の基準に達した方が合格するということに変わりはありません。
 公認会計士試験は、後に公認会計士として活躍する資質を持っているかを判定するという位置づけであり、試験合格後は、実務補習により公認会計士としての実務能力が養われ、公認会計士協会の実施する修了考査、金融庁長官の確認、協会の登録を経て公認会計士となります。このような趣旨の試験でありますので、より多くの多様な方々に試験を受験していただきたいと考えております。
(以上)
早稲田大学 ~「公認会計士をめざす人のために」について~

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