英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

柳澤金融担当大臣記者会見の概要

(ペイオフ解禁について)

(平成14年4月1日(月)9時50分~10時19分)

【冒頭大臣より】

おはようございます。本日は4月1日でして、新年度が始まる日でございます。金融行政の面でも以下申し述べますように、預金保険の適用を流動性預金を除きまして原則に戻すということが始まりますので、この機会にそのことについて国民の皆さんに改めて十分なご理解をお願いし、また、新しい制度の下での関係者の心構えについてお願いをしたいと、こういう趣旨で皆さんにお集まりをいただきました。

申し上げたいことの趣旨はお配りしました私の談話で明らかにしておりますが、改めてそれを少しフォローするような形で申し上げたいと思います。

-金融担当大臣談話「ペイオフ解禁について」-

以上です。

【質疑応答】

問)

大臣はかねがね「4月1日には、今開いている金融機関については健全なものである」ということを仰っていましたけれども、「健全性の基準を満たした財務状況となった」という表現をされていますけれども、基本的に、中小も含めて金融機関は全て安全な状態になったというふうに理解してよろしいでしょうか。

答)

安全な状態と言うか、今は安全な状況にあると、こういうことでございます。この点はご信頼していただいて良いということです。

しかし、経済というのは、これはもう非常に、元々生き物ですし、それからまた、最近の経済状況というのは非常に変化が激しい時代を経過しているということもありまして、今後の金融機関の足取りについては預金者の方の監視も重大ですし、我々の監督も非常に大きな責務を負っていますし、それから何よりも経営者の方々が、談話にもありますように、その責務を十二分に自覚されて、健全性の確保、それから、そうしたことが何か自ら心配だというような事態に対しては、的確な経営判断をして行くということが望まれるということです。

そういうことが正に構造改革ということでして、ペイオフを構造改革政策として我々が位置付けているということの意味、それはそういう相互の監視、監督、あるいは批判というようなものが厳しく金融機関に向けられて、それに対して何としても金融機関の経営者は応えて行かなくてはいけないということの中で、金融機関あるいは金融界というものの構造改革が進むということが期待されると、こういうことでございます。是非そうしたことを実現して、日本の金融システムの安定というものを確保すると同時に、また安定性だけではなくて、金融機関が、あるいは金融というものが国民経済の中で担うべき役割をきちっと果たし、また産業としても発展をして行くと、そういうことを期待しているということです。

問)

一方で、預金者、顧客側からすると、厳しく自己責任が問われる時代というふうにも言えると思うのですが、対顧客、預金者に対して、大臣は「これから金融機関の責任は大きい」というふうに仰られていますが、現時点、これまでのところで預金者に対して、例えば説明責任であるとかディスクロージャーの体制とか、この点についてはもう完備されているというふうにご認識されているのでしょうか。

答)

制度的には談話にも書いてありますように、法律を改正して、まああの当時一番問題であった「不良債権を隠しているのではないか」というようなことに応えて、各金融機関がリスク管理債権というものをディスクローズするということを始めたわけですね。それは今日までずっと遵守されておるということです。それから大手行などについては、いずれ体制が整備されるに当たって、私としては大手行以外にも波及して行くことだろうと思うのですけれども、四半期毎に財務状況の基本的なポイントというものをディスクローズすると、こういう動きもあります。

そういうことで、金融機関の側のディスクロージャーというものも進んでいくわけですが、預金者との関係で言うと、預金者が求めて行けば、これはもう金融機関としてはいろいろとディスクローズする以外にないですね。今、ペイオフ相談窓口みたいなものもあるようですけれども、いずれいろいろなことで、それがどういう形に変遷して行くかというのは私は経営者でもないし、経営者の心構えとしてどうなっているか詳らかでないのですけれども、ディスクロージャーの窓口的なものも、窓口というか専門のところまでやるとコストリーになる懸念もありますから、それを工夫してもらうのですけれども、いろいろなディスクロ誌とか預金者の疑問に答えるということは、これは非常に窓口なんかでも大きな責務になって来るのだろうと私は思っています。

そういう意味で、預金者の方も積極的に自分の預金の安全というものを確保するために、どしどし金融機関の側に情報を求めて行くということをしていただきたいし、また、金融機関の側は必ずそれに応えて行かないと預金者の信頼は勝ち得ないだろう、得られないだろうと私は思っているわけです。

問)

ペイオフ解禁の延期が99年12月に1年延期というのが決まった際は、大臣は直接のご担当ではなかったわけなんですけれども、昨年度と言いますか去年の3月末ではなくて、この3月末に1年間延びて、この間に制度的な面はお話がありましたけれども、この間に金融機関、金融システムとしてはどのようなものを得て来たのかというところのご見解をお伺いしたいのですが。

答)

これは今度決算も発表されるわけでありまして、まだその決算を見ないことには確定的なことを私から申し上げるわけにも行かないのですけれども、私が良く申し上げるように、平成11年3月期に10兆円くらい、これは大手行ベースで申しますけれども、大きな不良債権の引当不足の解消というか、それを目指した不良債権処理をしましたね。そうしてその後は12年3月期、13年3月期と4兆円ちょっとくらいの不良債権の処理を進めて来たわけですけれども、どうもその後、いろいろと経済環境、まあ詳しくは特に申しませんが、なかなか厳しさを増して行くということの中で、更に今年は特別検査というものを実施しました。元々検査は平成13年度に入って非常に強化をすると、2年に1回の検査を年1回にするとかですね、さらにはフォローアップ検査をするとかというようなことで強化してあったのですが、その上にさらに特別検査をするということで、非常にここのところはリアルタイムの不良債権処理をするということになりました。

そういうことでそれをまた見習って、いろいろな形で地方の方々も頑張ってくれたという状況が13年度にありました。その13年度の決算がそう大きな波乱もなく、具体的に言えば自己資本比率も基準を維持する形で組めるということであれば、私としてはかなり重荷と言うか、金融機関の持っている負担というものが13年度でもう一山越したと、越せたと、こういう事態になっているのだろうと、こういうように思っておりまして、そういう事実の下に今回のペイオフ解禁を迎えたと、こういうことだと思います。

問)

遡ると数ヶ月前から、一部にペイオフ解禁はさらに延期すべきだという議論がありましたが、大臣ご自身はこの中で迷った時点というのはなかったのでしょうか。

答)

これはないですね。ないと言うか、私は一貫してもっともっと厳しい金融機関経営が行われて、それを別の言葉で言えば構造改革ということですけれども、これをやらなければ日本の金融の将来は開けないと思っております。従って、今度のペイオフでさらに批判の眼が強くなるということは、逆に経営者の責任が重くなるということなんですね。もちろん我々の責任も重くなるということですけれども、何よりもそういう批判の眼が、甘えを許さないぞという批判の眼が多くなる、あるいは強くなることによって、それに応えようとする経営者の努力、こういうものが結びついて私は日本の金融の構造改革が進み、日本の金融の強化が図られると、こういうように思っていますので、それにはむしろペイオフを、混乱があってはこれは困るわけですが、混乱がない中で、やはりやり抜いて行かないといけないと、こういう考え方で私に関しては一貫して参ったつもりです。

問)

3月の特別検査というのがとりあえず一通り立ち入り終了かと思われるのですが、この結果発表について、今、一区切りついたところではどのようにお考えでしょうか。

答)

これはもう予てから表明しておりますように、これでもう、とにかくケリがついたということでございますので、遅くとも2週間ぐらいの間には取りまとめて発表をさせていただきたいと、こういうふうに思っております。

問)

特別検査のことで、「ケリがついたということなので」と仰いましたけれども、今の足元の感じとして教えて頂きたいのですが、特別検査によって各行の不良債権の残高とか引当が大幅に変わってくるということは、あまり想定されていないということなのでしょうか。

答)

「ケリがついた」という意味は、検査というのは検査官の方の考え方を言って、それに対して当該の対象金融機関の方でいろいろと反論したり議論したりするという、そういう議論のプロセスがあるわけですね。それが、3月31日までにはいずれにせよ、決着をつけなければいけないわけです。そういう意味で、「論議にケリがついた」と、こういうことを意味しています。

それで、今仰られたことですが、ここで若干のことを言ってみてもすぐまた近々に正確な数字で申し上げるわけですから、不良債権の処理損についてもね。その時に委ねたいと思いますのでご理解頂きたいと思います。

問)

数字の方はその時ということなのですけれども、今期で銀行の不良債権の処理というのは底を打つと考えられていますか。

答)

そうですね、これはもう今回でというか、まあ我々は10兆円には行かないと思っていますから、10兆円の不良債権処理をした平成11年3月期ですね、それが大きな山だったわけですね、これまでの経緯を言うと。いわば4兆円ベースに落ちてきたものがもう一回上がると、こういうことだろうと思うんですね。そういう形になりますよということですね。

問)

もう一回上がって、14年度以降は下降線を辿るということですか。

答)

そういうふうに展望しています。

問)

大臣自身のペイオフ対策について、お話できる範囲でお願いしたいのですが。

答)

私は、別段全然、分散もしなければ、移動もしませんでした。まあ、別に何か意識もしなかった…つまり、私が移動したら窓口の人に「ニヤッ」とされたり、そういうようなことを意識も別にしませんでしたけれども、私の場合はそういうことはいろんな判断でしていません。

問)

日銀の総裁が、中核的な自己資本の不足とか、そういうことを言及されて、内外の見方として、まだやはり公的資金の必要性等についてお話されることがあるのですが、現状と将来との違いなのかもしれませんが、預金者から見ればやはりこの辺は金融庁と日銀の食い違いというふうに見られても仕方がない面もあると思うんです。ですから、ここはちょっと詳しく、その辺にもし誤解があると思われるのでしたら説明頂きたいのですが。

答)

これは、日本銀行総裁は、いろんな局面でいろんな話をされたというふうに私も報道等を通じては知っておりますが、少なくとも私と同席している時には、違う考え方を述べられるということはないわけですね。

総裁は二つ仰っていまして、一つは自己資本のレベルのことも仰るわけですが、その時も、「今必要だと私は言っているわけではない」と。「しかし、必要な場合にはできるだけ早めに入れた方がいい」ということを基本的に仰られているのだろうと、こういうふうに思います。

それから、時たま資本の質について仰っているのですけれども、これもどういうことを仰っているかというと、「質は決して充実したものではないから」と、こういって言うのですが、その時、何を仰るかというと、「だから収益が大事なんです」と、同じことなんですね、私が言っていることと。私はあえて、何と言うか本当の株主資本のダイリューションを起こさない、質も高いというものは、収益で生み出すしかないんですよということを、これはもう皆さんもご理解頂けると思うんですが、ずっと言ってきている人間ですからね。

その意味では、いろいろ表現の仕方は違うにしろ、本当の核心のところはそんなに違わないと、表現が違うのだろうと、こういうように思っております。

問)

今の質問に関連してなのですが、そうすると今回も多額の不良債権処理というのが予想されて、益々収益力向上とかに金融機関は努めなければいけないと思いますけれども、その中で過少資本に陥るというような不安があれば公的資金を注入されると仰っているのですけれども、それを事前に芽を摘むような形で公的資金を注入するということについては否定的なお考えということでよろしいわけでしょうか。

答)

つまり、まず一つはモラルハザードというか、私が今言ったような緊張感を持った経営というものが、どうしても緩んでしまうのではないかと。これは容易に予想されることですね。

それが一つあるのと、それからもちろん入れる時の条件にもよると言えばそれまでなんですけれども、通常国民がおそらく納得する入れ方ということになれば、それなりの配当なり何なりというものをとってくださいよということになると思うんですね。そういうことになると、それは収益を、全く即物的な話ですけれども、やはり奪ってしまうわけですね、そういうことをやればですね、そういうことになります。これはまあ別の角度から言うとダイリューションが起こると。つまり、既存の株主に対する配当の原資がそれだけ薄くなってしまうと、そういうダイリューションの問題がありますね。

そういうことが主とした理由ですが、まあこれはもう経済に対する基本的な考え方が根底にあると思うんですが、例えば資産の切り分けなり何なりというような場合も、官が介入してやるのがいいのかというのは、ずっと一貫して論争がありますよね、国有化してというような手法があるだけにですね。そういう官が介入してやってしまうんだということなのか、そうでないのかという基本の問題がもう一つありまして、これについて私はやはり民のそういう経営判断というものを粘り強く求めていくと、粘り強くと言ってもあんまり時間ばかりかけていては困るわけですけれども、厳しく求めていくと、こういうことの方が私はいいと、私はそういう市場原理を使っていくのがいいんだという考え方です。これはもう根本の問題です。

勿論、私は、そんなことを言っていられないような金融の危機のおそれという時には、果断に躊躇なく判断していくけれども、そうでない限りは、モラルハザード、それからダイリューションと言ってもいいし、それから官の介入があるべきかどうか、こういうような観点から、我々が今とっている道が正しいと思っています。

問)

今朝、ペイオフが解禁されましたが、各金融機関の窓口とかに混乱とか、そういうことは何か聞いておられますか。

答)

聞いていません。

問)

順調に滑り出したというふうな理解でよろしいでしょうか。

答)

まあ、そこのところは情報を聞いていないですが、まあ多分、何か問題といって報告が上がっていない以上、まあ円滑に行っているのではないかと、このように思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る