柳澤金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成14年9月27日(金)10時21分~10時51分)

【閣議案件等】

本日の閣議ですけれども、公務員給与の改定について勧告通りということになりました。平成13年度郵政事業の損益計算等が発表になりました。外国出張をされた閣僚から出張のご報告がありました。8月の完全失業率の統計が出まして、5.4%ということで対前月比プラスマイナス0ということでした。8月の有効求人倍率は0.54倍で対前月比プラスマイナス0ということですが、離職者が14ヶ月ぶりにプラスになったということでした。9月の東京都区部のCPIですが、対前月比マイナス0.2%、対前年同月比マイナス0.9%ということでした。赤い羽根共同募金が始まるということでした。平成14年警察白書の発表がありました。平成13年度の大気汚染状況の報告がありました。人事についてですが、国民生活センター会長、農畜産業振興事業団理事長は双方とも再任ということでございました。塩川大臣のご出張中は尾身大臣が臨時代理を務められるということでございました。以上です。

【質疑応答】

問)

内閣改造がかなり取り沙汰されているのですけれども、30日ということなのですけれども、これを前に、今はどういうご心境かということをお聞かせ願えますか。

答)

心境と申しましても格別なものはありませんで、極めて淡々としていますし、それからまた、休みと言えども自分達の課題については考えたり検討したりし続けるでしょうと、こういうことです。

問)

金融面の話題がかなり盛り上がっているのですけれども、まず公的資金については現状、必要の是非について、この辺りは再度の確認になるかもしれませんけれども、お考えをお聞かせいただけますか。

答)

これは考えは変わっておりません。繰り返し申し上げることもはばかられるように、何ら変更はありません。

問)

一部の報道でRCCの機能強化の話が出ているのですけれども、山崎幹事長なども実質簿価での買取についてかなり発言をしているのですけれども、RCCの機能強化としていわゆる簿価買取、この辺りについてはどういうふうにお考えでしょうか。

答)

RCCも今の買取の状況は極めて積極的なのですね。買取価格の水準、これを何で見るかはなかなか難しいですけれども、少なくとも従前に比べると、対象になっている債権の状況にも拠るのでしょうけれども、機械的に比較をすれば、かなり簿価に対する比率が高まっているという状況がありますし、それと関連があるのかどうかということは定かではないにせよ、非常に金額も伸びているということですから、基本的に私はこの状況を進めて行くべきだというように思っています。まあ、なお技術的に「ここを改善したら」ということはあり得るかとも思いますけれども、基本は今の事で成果が上がっているというふうに認識をしています。

問)

そこの点で確認したいのですけれども、全銀協などは価格を上げて欲しいという事を要望しているのですけれども、清算ではなくてゴーイングコンサーンで見て欲しいと、この辺りの考えというのは大臣の今のお話の中に入っているということでしょうか。

答)

これはあり得る事ですね。あり得る事ですが、あの発言があってから改めて確認しているわけではないのですけれども、多分、現状もそうなっているのだろうと思います。ただ、要はゴーイングコンサーンというのは、再生について目処が立っているというような場合には当然ゴーイングコンサーンになるし、「これはもう、ちょっと清算ですね」あるいは「破産ですね、回収ですね」というようなものについては、これは清算価格になるという事だろうと思います、概念的な整理として。

ただ、その場合に、ひょっとするとあのような発言が出る背景には、売る側は「これは再生型だ」というふうに思っていると、それをいろいろ調べてくれてはいるのでしょうけれども、RCC側は「ちょっとその確率は低いのではないの」ということで、清算型に限りなく近いというような、そういう債権の全般的な評価が価格の評価にも影響しているという事があるかもしれないと。しかし、基本のところは「これは再生型ですよね」ということであれば、そんなに変わらないはずだろうと思っています。

問)

そうなりますと、一律にプライシングを上げていくという事ではないということですか。

答)

そんなに私は技術的な事まで実務を知っているわけではありませんから、あまりこれ以上踏み込んだ話は出来かねるわけですが、先日の全銀協会長の発言をどう思うかと言われれば、今のような事なのかなあと思っているということに尽きます。

ですから先程も言ったように、もし、なおまだ改善の余地があるということがあれば、それはRCCの買取が進むように改善して行けば良いと思っています。いや、改善するところがあると言っているわけではないですよ。あればそうすれば良いと、こう思います。

問)

一部の報道で、RCCが実質簿価で購入する方針を金融庁がその方向でまとめるのではないかという記事が出ていますが、この記事の内容については否定されるということなのでしょうか。

答)

記事もよくは読んでいないのですけれども、ひょっとすると我々の方のいろいろな検討を刺激するために「こういう問題があるのではないか」という事を論説ではなくて報道の形をとって刺激してくれているのかもしれないなと思っております。

しかし、それは若干表現をそういうふうにわざとするぐらい、実はあのような事を検討しているという事実はないのです。ですから、この問題については先程言ったように、技術的になお検討すべきところがあれば検討するという事ではありますけれども、基本のところは今の事を基本にして行けば良いのではないかと思っているということです。

問)

公的資金の問題については考えは変わっていないということですが、これは予防的再注入は必要ないということでよろしいのですか。

答)

そうです。

問)

RCCに関してなのですけれども、基本は今仰られた通りですが、なお改善すべきところがあれば改善すれば良いということですが、大臣の問題意識と言いますか、その記事をご覧になって、改善すべきところがあるとすれば、これはどういうところにあるというふうにお考えでしょうか。

答)

いや、「改善すべきところが今の私の頭の中にあるというわけではないですが」ということを申し上げたつもりですけれども。それ程私は実務に凄い詳しいというわけではありません。一般的に良く状況を把握しているつもりではいますけれども。なお改善すべきところがあるという事があるかもしれない、そういう時には手直しはありますよと・・・。そんなに凄い目つきで見なくても大丈夫です、一般的な事を言っているわけですから。何か「あの発言に裏があるのではないか」と、そういう深読みは一切必要ありません。素直な事を言っているに過ぎないです。

問)

実質簿価買取のために公的資金を使うというお考えはあるのですか。例えば買取価格が上がれば2次ロスの問題が出て来ますよね。その穴埋めのために公的資金を使うとか、そういうお考えはあるのでしょうか。

答)

それは要するに、最終的には全部預金保険機構の勘定で清算をされるという仕組みになっているわけですから。いずれにしても、いろんな勘定は全部損を出したり益を出したりしますね。そういうものをトータルして最終的に全ての勘定を締める時に決まるということですから、そういうプロセスがちゃんと予定されているのに、そこに公的資金を投入するというような事は制度的にはないですよね。

問)

その辺がちょっと分かり難いところがあって整理させていただきたいのですが、金融再生勘定の12兆円の枠があると思うのですけれども、いずれにしても2次損失が出たら、最終的には12兆円で埋め合わせるという仕組みは、これは公的資金だと思うのですけれども、これちょっと制度的には・・・。

答)

それは政府保証が付いているから、保証の履行という形をとるということです。

問)

それはすなわち公的資金を出すという事ですよね。

答)

それはそうですよね。保証債務の履行ということをお願いするということです。今は預保が預保債を発行するなりして資金が貸借関係になっていますから、最終的には預保債を返せないという事になれば、それは保証を履行してもらって、それは予算措置が改めて必要ですが、それで耳を揃えて預保債の保有者に対してそれを返済するということです。

問)

不良債権処理を加速するために、いろんなパターンの公的資金の投入の仕方が議論されていると思うのですけれども、大臣は、今は制度になっていない公的資金の使い方も含めて、公的資金全般的に投入される事を否定されるのでしょうか。それとも、場合によっては公的資金を使っても仕方ないというケースもあるとお考えでしょうか。どちらでしょうか。

答)

そこまで概念を広げてしまうと、「おまえは何をしているのだ」というような話になるのですが、まず、公的資金を資本として入れるという事と、大枠ですが、それともう一つは、RCCの買取で2次ロスが出た時に埋めるという事。これは今説明した通り、今そうなっていますよね、最終的に政府保証の保証債務の履行という格好で、もしここに2次ロスが発生すれば、それは埋めるという事が保証を付けるという段階で決断されているわけです。

私が今まで言って来た事は何かと言えば、政府のお金で資本を作るということは、これはその必要性も今はないし、これはやると凄い弊害、副作用が多いということなのですね。そういう両面を念頭に置いて、私は賛成出来ないという事を言っているわけです。

もう一つについても基本的に今の価格で、つまり時価という事をやってもらった事によって進んでおりますよと。それで先程言ったように2次ロスが仮に出た場合には、これは保証債務の履行ということになっていますよということです。それ以上に基本的にどこでどう公的資金を使う道が残されているのか、それはちょっと教えてもらって言わないと、私はちょっと念頭にないです。

問)

G7で塩川大臣は、銀行に対する予防的な資本注入の考えを表明すると言っていて、そうなった場合、金融庁と金融庁以外の経済閣僚の言っていることと二つの考えが出てくるわけですが。要するに塩川大臣が仰っているのは、「銀行は貸出先企業の整理をしてほしい。そのために自己資本不足になった場合には必要であれば公的資金を入れてもいい」ということをG7で表明すると言っている訳です。そうなった場合、G7の各国は「日本の政府は一体どちらの立場なのだ。金融庁は違うことを言っている、塩川大臣はこう言った、日銀の総裁も何か言おうとしている」と。そうなった状況を、どう整合性をとって行くのかということをお伺いしたいのですが。

答)

どういうプロセスをお考えでそういうことを仰られるのかまだお聞きしていないので、コメントをするのは基本的に適当ではないと思います。ただ敢えて言えば、企業を整理するというのは多分、中心は破綻懸念先になると思うのですね。そうすると破綻懸念先の企業を整理した場合、それはどういうふうに整理をするかにもかなりかかってきますけれども、追加ロスが起こることもありえますね。かなりの部分清算してしまうということになると、今は担保等を取っているところ以外、つまり信用部分の7割程度を引当してありますから、あとの3割というのは裸、しかしこれも価値がゼロだという訳ではないのですよ。ですから引当金を7割程度にしてあるのですが、「そこから損が生まれてくることもあるではないか」ということを言われれば、それは我々としては「ありますね」と言わざるを得ないですね。しかし「確実にその3割が価値がゼロだ」と言っている訳ではないので、そこは間違えないでもらいたいのですが、そういう前提にしても「損が出る可能性があるではないか」と言われれば、我々は「ある」というふうにお答えせざるを得ない。

そういうものが積み重なって、不良債権処理の追加損がどの位出るかという問題ですね。それを今の見通しでは、大体業務純益の範囲内に収まってきつつあるというふうに思っています。業務純益の範囲内に収まるというのは何を言っているのかというと、今決めてある2年3年ルールだとか、5割8割ルールだとかに乗っていけば、これは大体業務純益の範囲内に追加損失を含め、その他のクレジットコストが収まるという考え方なのですね。そういうことでは駄目で、破綻懸念先以上のものを整理していってしまうということは、具体的に銀行でそのようなことが出来るのか、良くわからないですね。

塩川大臣は練達な方で良く実務もご存知ですから、そういう誤解は起こっていないかと思うのですが、我々が金融庁として指示を出すときは、きちっとした実務的にも法律的にもこなせる指示を出さない限り、法治国家ですから出来ない訳です。そういう前提を置いて考えると、我々としては今の枠組みを前提として、今何か追加の資本注入があるとは考えられないですよ、ということを申し上げているのですね。

問)

業務純益の範囲内に収まるというのは、全預金金融機関について仰っているのですか、それとも大手だけについてなのでしょうか。

答)

基本的に大手が頭にありますけれども。地域金融機関の貸出先である中小企業については、今言ったような2年3年だとかあるいは5割8割だとかいうようなことは直接的には申し上げていないのです。これはもう地域金融機関の融資先である中小企業の見方というのは、もっと実質的に見なさいと。サラリーマンの人達と株主が作っている会社とは違うのですね。つまり経営者と企業とが一体ですから、経営者の資産だとか、場合によっては経営者の親類の資産であっても投入される可能性を持っている訳です。ですから同じ様には考えられないということを昔から言っている訳です。

問)

RCCに絡んだ話なのですが、いわゆる実質簿価というのは銀行のバランスシート上で、今、債権の価値がいくらあるのでしょうか、というところを表わしているのだと思うのですけれども、それがRCCの買取価格である時価に満たないという状況を考えると、銀行の引当不足ということになるのではないかと思うのですが、その辺りはどういうふうに考えておられますか。

答)

追加損が3割のところで起こるというのはあり得るということを、先程から言っていましたね。そういう問題なのですよ。

問)

政府として売却等を進める上で、マーケットが買ってくれる価格、時価ですね、時価で売ることによって銀行が損失を出さなければいけないというのは、逆に言えば引当がもう少し必要なのではないですか。

答)

それは必ずしもそうではないのですね。一つは一般の売却の場合、バルクセールなどでは正常債権も含めて売ります。例えば条件緩和債権等の要管理債権も含めて売りますね。そうするとその条件緩和債権の引当というのは、個別の債権との関係でどうなっているかと言うと、1対1の対応をしていないのです。つまり確率で決めています。ですからそこのところは、ほとんど恐らく簿価と売値との関係では、簿価と売却額の差というのは取り敢えず100%損として出ると思います。そうすると引当の率でいった額というのは「不足だったのではないか」というふうに言われても、それは後で残った要管理債権について計算をし直すと。つまり1対1で対応していないから恐らく帳簿上の現象的には丸ごと損に出てしまう訳です。それだから引当不足かというと、それはそうではない。まず前後関係から言ったら、後でそれは埋め合わせがつく場合があるということと、もう一つは他にも破綻懸念先の中でそういう売却のところとの間で損が出るようなものがあったとしたら、逆に今度はその破綻懸念先に属している債権の中からすごい益が出るというか、引当を積み過ぎている、つまり丸ごと全額簿価で回収できますよ、というものも入っているものだから、確率の問題としてそれがそういう率として積算されているという、この二つの意味があるのです。タイミング的には全額マイナスと認識される場合がありますよ、ということと、それからもう一つは実態的には非常に不足のものもあるかもしれないし、逆に積み過ぎているものもあるということで、大数の法則から言ってこの率で大丈夫だね、というふうな考え方の下で引当金が決まっているということなのです。

問)

内閣改造に絡めて、与党側から公的資金の注入を求める声が出ていると思うのですが、今お話を聞いている限りでは大臣のお考えと接点があまり見えないのですけれども、今後何らかのすり合わせだとか調整をされていくおつもりがあるのかどうかお聞かせ下さい。

答)

私は以前から言っているように、非常にオープンなのです。いい知恵があれば、これまでにもなかったような問題に直面する時に、自分達の知恵だけでもう十分だ、余分なことを言うな、という気持ちは初めからないのです。何でもオープンにいろいろな意見を聞きますよと、こういうことを言っている訳です。しかしやるのは我々だし、それからまた対象は民間の企業なのです。ですからそういうことで各方面から検討した結果、我々が、これは為すべきである又はフィージブルであるというものを採用して施策をしていると、こういうことです。オープンだし、考えるところがあれば考えるという意味では柔軟です。

問)

内閣改造前に不良債権処理の加速策について、大臣から総理にお伝えになることはないのでしょうか。

答)

総理からお呼びがかかればいつでも出かけますけれども、私の方からそれで何かお話し申し上げるということはないです。実際にやるのはまだ先だということは聞いていますし。ただ総理が呼んでいますということであれば直ぐに飛んで行きます。

問)

引き続き、もう少し先の場合でも、今のお考えを通じて金融庁の指揮を執っていかれる意思はおありですか。

答)

もちろんですよ。私の今の考え方で、オープンに皆の意見を聞くけれども筋の通ったことをやって行くということです。

(以上)

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