日野金融庁長官記者会見の概要

(平成12年8月28日(月)18時09分~19時07分)

【質疑応答】

  • 長官) 今日は本来定例記者会見の日で17時から記者会見を行う予定でしたが、これから申し上げるようなことになりましたので、1時間延長させて頂きました。突然のことで皆さんにもいろいろご迷惑をかけたのではないかと思いますけれども、そういった事情ですので、ご了解頂きたいと思います。それでは、お手元に既に配布しているかと思いますが、金融庁長官談話を発表させて頂きます。

    (金融庁長官談話―大正生命保険株式会社について―)

    以上が談話でございます。なお、金融再生委員長の談話も既にお配りしておりますが、読まさせて頂きますと、

    (金融再生委員会委員長談話―大正生命保険株式会社について―)新しいウィンドウで開きます

    以上が金融再生委員長の談話でございます。以上です。

  • 問) そもそもの原因なんですが、増資の引受をしようとしていた投資会社が、今日東京地検がその投資会社の社長を逮捕されておりますが、その関係について説明して頂けませんか。

  • 長官) 大正生命に対する業務停止命令を発動した理由は先程も申し上げましたように、資産運用に係る業務の運営が著しく不適切で、その保険業の継続が保険契約者等の保護に欠ける事態を招くおそれがあると認められることから、保険業法第241条第1項に基づいて業務の一部停止を命じたところでございますが、処分に至った経緯でございますけれども、昨年の立入検査の結果、財務の状況が極めて厳しいことが認められましたために、本年2月14日、リスクの高い資産運用の抑制等を命じていたところであります。更にその後、関連会社から紹介された外国債券の購入等に関して、極めて不適切な業務運営が認められましたために、6月3日、保険業法第132条第1項に基づいて、資産運用に係る業務改善計画の策定等を命令致しました。その前に2月14日に第2区分の早期是正措置を発動して、保険金等の支払能力の充実に係る合理的な計画の策定・実行、リスクの高い資産運用の抑制、契約者配当の額の抑制、事業費の抑制等を命じたわけでございますが、6月3日には改めて資産運用に係る業務改善計画の策定等を命令したわけでございます。

    しかしながら、その後も極めて不適切な資産運用業務が行われていることが認められました。増資の関係で言いますと3月31日に50億円を第三者割当増資でクレアモント社の古倉氏等が引受け、増資がなされ、それから6月22日には同じく第三者割当増資で、クレアモント社の古倉氏が引受けた13億円、それから8月1日にはクレアモント社の古倉氏が引受けた45億円がございますけれども、当庁といたしましては、このまま大正生命に業務を継続させますと、保険契約者等の保護に欠ける事態を招くおそれが大きいと判断して、先程申し上げましたように保険業法第241条第1項に基づいて、業務の一部停止を命じたところでございます。先程から早期是正措置を2月14日発動したこと、6月3日には資産運用に係る業務改善計画の策定を命令したこと、それから8月10日にも保険業法第132条第1項に基づき、資産運用に係る業務改善計画の策定を命令しておりますし、その間、例えば6月27日には先程申し上げましたが、外国社債に係る監査法人の適法意見が得られていないことについての報告徴求を求めたり、あるいは8月3日にも8月1日現在の様々な係数等についての報告徴求を求めたりしていたところでございますが、現在に至るまで正式な報告はなされていなかったところでございます。詳細の経緯を申し上げると長くなりますので、かなり要約して申し上げたわけですけれども、また何かお尋ねがあれば。

  • 問) 今後の大正生命の取扱いなんですが、保険業法とか、更生特例法なんかも改正されてますけれども、どういう対応の仕方になってくるんでしょうか。

  • 長官) 保険業法が改正されまして、去る6月30日から施行されていることはご案内のとおりですが、大正生命につきましては、先程から申し上げておりますように保険業法第241条第1項に基づいて業務の一部停止を命じたところでありますし、更に大正生命の業務及び財産を適正に運営・管理するために速やかに保険管理人を選任して、保険管理人による業務及び財産の管理を命ずることとしております。

    お尋ねの更生特例法でございますが、これは前の通常国会での改正によりまして、保険株式会社に関する更生手続き適用の簡素化が図られるとともに、保険会社に破産の原因たる事実が生じるおそれがある時には、監督庁…今は金融庁ですが…が裁判所に対して、更生手続きの開始の申し立てをすることができることとなったところでございます。当社に対する更生特例法の適用につきましては、これから保険管理人が選任されますが、当社の資産状況等をよく精査しながら、更生手続き開始の申し立てを行うことが適当であるかどうかということを見極めて参りたいというふうに考えているところでございます。

  • 問) 今日は会社側から何か申し立てなり何なり特には無いんですか。

  • 長官) この処分は行政処分ですから行政手続法に則って、その手続きを行ったところでございます。

  • 問) 弁明では何と答えているんですか、その時に。

  • 監督部長) 特に弁明する事項はないというふうに返事を頂いております。

  • 問) 6月3日のお話をもうちょっと詳しく聞かせてください。どういうものに投資をしていたので、改善命令を打つことになったのですか。

  • 監督部長) 外国の企業が発行する社債で、それについて100億円購入してたわけですが、それについて3月期決算で監査法人の適法意見がもらえないという報告が5月30日時点で決算状況表の提出に併せてそういう説明があったわけであります。

  • 問) 今日、これは破綻の申し出があったということですか。

  • 長官) そういう申し出はありません。

  • 問) 破綻の申し出はなくて、行政の方としても要するに、業務の運営に不適切な業務があるから保険業法第241条に基づき、破綻処理を通告して、それに対して行政手続法に基づく弁明の機会を設けてやったというのが、今日の流れですか。

  • 長官) そうですね。保険業法第241条第1項に基づいて、これこれの処分をするということを大正生命に対して告げた上で、行政手続法に基づいて手続きを行った結果、先程監督部長からも話がありましたように、特に弁明することはないという申し出があったということでございます。

  • 問) 外国の社債100億円を購入したのはいつですか。

  • 監督部長) これは3月28日に購入したというふうに承知してます。

  • 問) これは古倉氏とは関係あるんですか。

  • 監督部長) これは古倉氏の紹介で買ったというふうに聞いております。

  • 問) どういうことが適法でなかったと見ているんですか。

  • 監督部長) これは要は銀行保証は付いているということであったんですが、その銀行保証は本当に付いているのかどうか、その真正性について会社側が説明できなかった。その結果監査法人が適法な意見を出せなかったということだと承知してます。

  • 問) 破綻処理に移行した理由なんですけれども、資産運用に係る業務の運営が著しく不適切だということで、先程のような外国企業発行債の話のような理由をご説明頂いたのは分かるんですけれども、これは大正生命の財産の状況に係ることは理由になっていないのですか。

  • 長官) 保険業法第241条第1項は、理由というのが2つ…並列的と言いますか、書いてあるわけです。一つは業務もしくは財産の状況に照らして保険業の継続が困難であると認めること、それから「又は」以下では業務運営が著しく不適切でありその保険業の継続が保険契約者等の保護に欠ける事態を招くおそれがあると2つ書いてあるんですが、先程から申し上げているようにこの第241条第1項を適用したということを度々申し上げておりますが、特にそのどちらというわけではない。もちろん、大変厳しい財務状況にある中で大正生命が行ってきたこの資産の運用が不適切であったと、著しく不適切であったということで認定しているわけです。

  • 問) 添付資料の中で検査結果が出ているわけですけれども、ここでソルベンシー・マージンについては基準は満たしているわけですが、有価証券の含み損を入れると実質債務超過になるという、この辺の状況だと思うんですけれども、これとクレアモントによる追加の増資が見込めなくなったという、この辺のことが理由になっているんですか。

  • 長官) この検査の結果の方は去年、平成11年3月末の資産査定の結果なんですね、この資料として既にお渡しておりますように。検査結果の通知は今年の1月6日に検査結果の通知をしているんですが、もちろん検査結果の通知に基づいて報告を求め、2月14日に早期是正措置を発動し、資本の充実を求めたわけですけれども、その関連で3月31日に50億円の増資がなされましたので、これでかなり回復しているというふうに当時は認められているわけです。ただ、この3月31日の増資にも関わらず、決算を行うに際して、監査法人に検討して頂いたところ、先程監督部長の方から申し上げたように、監査法人から、適法な意見を得ることができなかったということです。この増資が行われたということ自体は別に怪しむべきことでもなんでもなくて、その増資はきちっと50億円、13億円、45億円行われたということです。監査法人の方はいろんなところを調査された結果、資産の方の状況で先程のように得られなかった。いろいろあろうかと思いますが、主としてそういうところに原因があったのかなあというふうに承知しています。

  • 問) 7月末でも6月末でもいいんですけれども、最近のソルベンシー・マージンや自己資本比率はどうなっているんですか。古倉さんの方にお金が還流するようになっていて、そうすると増資に応じて現状は大正生命の自己資本として形式上は成り立っていても、実質的には意味のない自己資本ではないかという感じがするんですけれども、そこら辺も含めて勘案した上でのソルベンシー・マージンや自己資本の状況というのはどうなんですか。

  • 長官) 今お話がありましたように資本の充実はなされていると、しかし、その資産の運用の方がいろいろ問題があるということになると、今ご指摘頂いたように実質的に増資したことにならないのではないかといったような問題点がおそらく指摘されるだろうと思いますが、そういったこともあって私どもとしては、例えば6月3日には資産運用に係る業務改善計画の策定を命令したわけです。それから繰り返しになって恐縮ですが、6月22日に13億円の増資が行われた後も6月27日に報告徴求を求めておりますし、それから8月1日に45億円が増資された後も同じように8月3日に財務状況について、その財務の係数等についての報告を求めていたわけです。ただ、8月24日というのは一応の報告の期限でしたけれども、正式な報告はなかったということになります。

  • 問) 形式上は今は要するに自己資本比率もソルベンシー・マージンも自己資本も300何%からプラマイαぐらいの方にずれているということなんですか。実質的な部分についてソルベンシー・マージンというのはどういうふうに評価しているのかよく分からないんですけれども。

  • 監督部長) 要は今長官から申し上げましたように増資が合計108億あるわけです。一方で資産として、会社側がうまく説明できない、回収可能性についてうまく説明できない資産が上がっているわけです、これは額面で上がっているわけです。それについて監査法人の適法意見ももらえないと、それについて説明を求めているうちに結局、クレアモントないし古倉氏の方がそれを買い戻すというふうな話になってきて、現実にある程度買い戻されて、それで更に残りはいついつ払うというふうなことになってきているわけです。これが現実に払われないという場合には向こうの言っているソルベンシー・マージン比率ももっと下がるはずなんです。ところが、途中まではそれが現実に買い戻されていたという事実があるわけです。ところが最近になって約束通り買い戻されないで更に時間を、買い戻し時期を先送り、延期するというふうな事態になってきて、そうすると自主的にそれが本当に履行されるのかどうかということについて大変疑念があって、それを踏まえるとソルベンシー・マージン比率の実態はもっと低いかもしれません。もちろん、長官から申し上げましたように報告を求めても正式な数字は向こうが持って報告できないという状況にあって、そのこと自体がもう既に問題があったわけですけれども。

  • 長官) 一応向こうが言ってきているのは、これは正式な報告ではなく、暫定的な数字なんですけれども、24日に示してきたところによると8月1日時点では、ソルベンシー・マージン比率というのは220%ということになってます。ただ、私どもとしてはこれは監査法人との協議が済んでるわけでもありませんし、実態を正確に反映しているというふうには言い難いというふうに思っております。また、一応暫定的な資産として言ってきている220%ということを前提としても実質的な資産・負債の差額は12億円のマイナスになっていると、これは一番新しいと言いますか最新の数字なんですが、ただこれ自体が先程申し上げたように、別に監査法人との協議が終了している、済んでるわけでもありませんし…。

  • 問) あの12億円のマイナスというのは8月の…。

  • 長官) 1日時点での財務状況の報告です。

  • 問) これは12億円の債務超過ということですか。

  • 長官) 実質ですね、オン・バランスではなくて実質。

  • 問) 銀行も保険もそうなんですけれども、異業種からの参入というのも、一つの大きなテーマになっているんですけれども、こういう形で不健全な企業が免許行政を買収して、自らの財布替わりに使おうとしているということも関して、今後の行政に対してインプリケーションの問題はどういうふうにお考えですか。長官の方からお聞きしたいのですが。

    また、その関連で、例えば早期是正措置を出した後でクレアモントが入ってくる過程でも、そのクレアモントというのはちょっと後々禍根を残すのではないかという指摘も庁内にも相当あったと思うんですけれども、結果的にクレアモントが引受けた後で新規契約を大正生命に申し込んだ人もいると思うんですが、そういうことも含めてどんなふうにお考えなんですか。

  • 長官) 異業種による保険業への参入については、6月27日の金融審の答申で、「当面の課題として新たな形態による銀行業への新規参入への対応が求められているほか、保険業についても同様な観点から検討する必要がある」と、こうされているわけです、今お話になったとおりなんですが。今後金融審で異業種による銀行業への参入の問題が検討される過程で、この保険業への参入の問題についても従って検討されることとなるというふうに考えています。銀行監督の分野ではご案内のとおり8月3日に運用上の指針を策定して公表したところですけれども、この指針が掲げている監督上の留意点の中には、おそらく保険会社にも当てはまると考えられる点が幾つかあるように思います。例えば経営の独立性の確保でありますとか、あるいは事業リスクの遮断でありますとか、顧客の個人情報の保護の必要性でありますとか、そういった保険会社にも当てはまると考えられる点がございますが、一方で銀行と保険の業務内容が違いますので、必ずしも銀行と同列に論ずることはできない点もあるかなあというふうに思います。こういった点も踏まえまして、これから私どもこの保険会社の監督にあたりましては、運用上の指針で掲げている留意点のうち、保険会社にも当てはまると考えられる点につきましては、今後の保険会社の監督にあっても十分に参考にしていきたいと、こういうふうに考えているところでございます。

  • 問) 確認ですけれども、大正生命は経営が破綻したということでよろしいんでしょうか。

  • 長官) 破綻の定義なんですけれども、先程申し上げたように更生法を将来適用する場合に、破綻の原因…、破産というような事実が明確に認定されれば、もちろん破綻は破産とほとんど同義にあるわけですけれども、今日のところは先程から申し上げてますように、一番最初に私どもが把握している財務の状況では財務の状況から見て保険業法上の破綻にあたるかどうかというところまでの認定はまだ行っていない。むしろ、保険業法第241条第1項にいうところの今後の不適切な業務運営が極めてこれまで不適切であったので、今後その保険契約者に対して与える影響の大きさというものを考えて、本日の行政処分を行ったというふうに捉えて頂きたいと思います。これが将来保険管理人による管理を通じ、あるいは資産内容が精査されることによって、真正といいますか、正しい係数が把握されることによって内容が自ずから明らかになるのではないかなあというふうに思ってます。

  • 問) 前の質問との関連ですけれども、クレアモント社はもともとそんなにクレディビリティの高いところではなかったと思うんですけれども、そこの増資を認めて、大正生命の再建を図ろうとした行政側の責任についてはどうお考えでしょうか。

  • 長官) 増資は増資だけでそこで完結しているわけですから、それだけの資本金が資本勘定にきっちり実質的に見せ金でなくて、本当のお金が入っていれば、それは増資ということで、これは認められるのではないかと思います。問題は先程から申し上げているように、資本の部ではなくて、資産の方の勘定の中に監査法人から見て適正な意見が付けられないというところ、それから業務運営、資産の運営維持について、いろいろ問題点が認められたということで私どもとしては何か増資を認めるとか認めないとかいったような立場にあるわけではなくて、もちろん早期是正措置を発動しておりますから、資本の充実が行われれば、これはこれとして容認するということになるわけです。

  • 問) 今年の3月末の自己資本の増強、充実の状況については。

  • 長官) 3月末は先程申し上げたように50億増資したんですね。

  • 監督部長) ソルベンシー・マージン比率で言うと67.7%ということであります。

  • 問) 資本は資産超過がいくらですか、再評価を入れて。

  • 監督部長) 貸借対照表上の資本の部の額はプラス26億という状況になります。

  • 問) 含み損益を含めるとどの程度ですか。

  • 監督部長) 実質資産負債差額でいいますとマイナス54億円というふうに承知してます。

  • 問) 東京地検の捜査の逮捕容疑は確か85億円のお金をだましとったことになっていたんですけれども、これはさっき仰った100億円の外国社債を買って15億円は買い取っていたということですか。

  • 監督部長) 検察の方で仰っているのは、バンク・インド・スエズ・インクと称するところが発行したCD85億を問題にされていると思うんですね。それはそれを基に詐欺で逮捕されたと。私がさっき申し上げましたのは、その他にも外国の社債について100億買ってると、それの銀行保証の真正性について企業側が立証できなかった、説明できなかったということであります。

  • 問) そうすると今回の地検の逮捕容疑の話とは全く別だと考えていいんですね。

  • 監督部長) 別だと思っておりますが、ちょっと仰るご趣旨が…。

  • 問) バンク・インド・スエズ・インクの話と外国社債の話というのは…。

  • 監督部長) 外国社債の話とCDの話はもちろん別の話です。不適切な運用と我々が申し上げているのは、当然両方含めての話であります。

  • 問) そうすると別に不適切な運用とみなしている、社債の運用とかそういうものは他にもあるんですか。

  • 監督部長) 私どもで把握している限りでは3件把握しております。いずれもクレアモント・グループが何らかの形で関与しているというふうに承知しています。

  • 問) 今仰った2件以外に3件あるということですか。

  • 監督部長) もう1件。

  • 問) そうすると総額でいくらぐらいを購入したわけですか。

  • 監督部長) 総額でですか…、260億程度です。

  • 問) 3月以降に購入した分ですか。

  • 監督部長) 3月以降です。

  • 問) 3件ともですね。

  • 監督部長) そうですね。

  • 問) いずれも古倉氏側の紹介を受けて購入されたわけですね。

  • 監督部長) そういうことです。

  • 問) 取引内容はどういったものだったんですか。

  • 監督部長) 大正生命が設定している信託で買われているものなんですが、これは外国の投信を買っておられるわけです。ただ、それについてもそれがどういうものかという説明が大正生命側からないと、納得いくような説明がないということであります。

  • 問) 確認ですが古倉氏側が買い戻した金額というのはいくらですか。

  • 監督部長) 古倉氏の方から確実に現金として買い戻したのは、100億余り…、100億強ですね。

  • 問) どれの数字ですか。

  • 監督部長) これはですね最初の2つの外国投信以外のものですね。

  • 問) 逮捕容疑となったインド・スエズと…。

  • 監督部長) それからさっきの外国企業の発行する社債、その2つで100億強買い戻しがなされている。あと一部担保等も出されているという部分はあるんですけれども、買い戻しの実行のためにですね、担保とも出されている部分があるんですが、それについてもその担保の評価がうまくできないという状況にあるわけです。

  • 問) 残りの160億は今後どうなるんですか。保険管理人の方から損害賠償とかはあるのですか。

  • 監督部長) 保険管理人の方は、もちろん民事・刑事上の責任を追求しなければいけない義務がありますから、それはそれで色々調査の結果を踏まえて、保険管理人の方でやっていくということになると思います。今仰った160億弱が現実には買い戻しがなされていないわけですけれども、これについてどうなるかは、もちろん一部担保が出されています。それでその担保の価値が、いくらあるかによって決まってきますし、残りの部分については、我々で、なかなか確認できない部分があるわけです。ですから会社側に説明を求めていくと。だけどそれが向こうの方から、説明ができないので、今現状それが、どの程度値打ちがあるものかということについては、私どもは正確なコメントはできない。

  • 問) 担保処分で穴埋めできない部分はどうなるのですか。

  • 監督部長) それは、残りの部分の評価がいくらか判りませんから、現実に買っている外国投信だとか、あるいはバンク・インド・スエズの発行するCDだとか、あと外国の企業の発行する社債について、それが何と言いますか、我々として、最終的に全く無価値なものかどうかということを確認しているわけでなくて…。

  • 問) 多分、価値はあると思うんですけれども、担保でカバーできない部分が発生した場合には。

  • 監督部長) ですから、担保でカバーできている部分は担保の処分で返ってくると思いますね。それで、残りがいくら返ってくるかについては、まさに今、大正生命が所有している社債なりCDが…。

  • 問) いやいや残りがいくら返ってくるのかをお聞きしているのではなくて、返ってこない部分が発生した場合に、その扱いはどうなるかということをお聞きしたいのです。

  • 長官) それは保険管理人において、貸借対照表上の借方の部分に恐らく欠損が生じるわけでしょうから、そういう状態で管理を行わざるを得ないわけです。ただ、当然、その穴が開いたと言いますか、穴が開いた部分については、損害賠償の請求をするとかそういった手段は、もちろんあるわけです。ただ、どういった手段を尽くしても、結局穴が開いたままということになってくると、そこは貸借対照表上そこが欠損ということで処理せざるを得ないと思いますが、そこはこれから計数を整理してみないと何とも申し上げられませんわけですね。

  • 問) そうすると保険機構が穴埋めするわけですね。

  • 長官) 穴埋めするというか、資産・負債の差額の部分について、アイテムがどういうアイテム…勘定科目になるかはともかくとして、相対的に不足する部分については保護機構に結局お願いするということになるわけですね。

  • 問) この前の保険業法の改正で公的資金が入りましたけれども、公的資金の方に繋がるようなことは今回あるのですか、処理の過程で。

  • 長官) それがまだ計数が確定しているわけではないので、にわかに今日ここでそれが公的資金に繋がるかどうかということを、断定的に申し上げるということはちょっとできないかなと思います。

  • 問) 6月以降は買っていないんですかね。改善命令を出された6月以降にはこういう社債とか投信は買っていないんですか。

  • 長官) 7月に買っているわけでしょう。確か今日の逮捕事実というか、被疑事実によると7月17日から25日までの間、前後6回に渡り85億円と書いてありますから。

  • 問) そうすると改善命令を出しているのに、またそういうものを買って、その後、また改善命令を出して報告を待っているだけというのも、ちょっと解せないのですが。監督者責任を果たしていないわけでしょう。金融庁としては、もうちょっと何か対応の仕方がなかったのかと。

  • 監督部長) 要はあれなんですね、最初に判ったのは、さっき申し上げましたような外国企業の社債で、それについては買い戻しと、それから担保も差し入れられて、残りいついつ買い戻しますということになったわけですね。その時に、それに合わせて資産運用に係る業務改善計画の策定等の命令をしたわけですが、その後、今仰ったようなCDの話が出てきて、それで業務改善計画の再提出…、これじゃだめだからもっときちっとしたものを作って来いという命令を出しているわけですね。

  • 問) その後も投信を買ったわけですか。

  • 監督部長) 投信を買ったのは、実はそれより前なんです。これを実際判ったのは後なんですが、買ってるのは、投信を買っているのは5月から6月の間ですね。

  • 問) 1回ではないのですか。

  • 監督部長) これは、5回に渡って買っているようです。

  • 問) いろいろ入り繰りしているので、後でペーパーをまいて頂けませんか。業務改善命令を出すのも行政権の行使なんだから、破綻、だからいつの時点で何を出してですね、3回か4回出されているわけですよね。それについてどういう理由で出されたのかというのを財研の方にでも貼り出して頂きたいのですけれども。

  • 長官) 今、あるんですけれども、後でそれでは。時系列的に書いたのがありますので。仰るとおりだと思います。業務運営の不適切に関することですから、一番そういった点をきちっと整理したものがありますので、財研の方に後で届けさせて頂きます。

  • 問) 今後もですね、資本不足の金融機関にですね、こういった支援の増資を行われる際にですね、見せ金でなくて、ちゃんと資本勘定にお金が入る場合なら、それはそれでいいということでしょうか。それとも出し手…、今回は、だめと言えなかったと思うのですが、今後その辺について出し手の査定とか、後々のことでなかなか判らないと思いますが、その辺はどうでしょうか。

  • 監督部長) 要は、さっきも、長官も仰いましたけれども、出資はですね現実に現金で払われているかどうか当然確認してます。今回の問題は、見せ金ではなくて、むしろ見せ有価証券なんですね。運用の方について、やっぱり今まで以上にきちっとチェックしていかないといかんなというふうに思っております。いずれにしても株主…どういう人に増資してもらうかとか何かという話はですね、これは届け出制になってまして、認可とか承認にかかっているものでもなくて、現状では、当方でなかなかチェックし難いという面があるわけです。何と言いますか、例えば本件についても、これを増資の引受けだとか、あるいは取締役の就任時にですね、いずれにしても、これが不適当だという特段の理由もなかったというふうに考えております。

  • 問) クレアモントに三洋なんとかという証券会社と、金融庁のパワーエリアで二つ会社がありますけれども、この二つの会社について顧客資産の保護について大丈夫であるとチェックされているんでしょうか。

  • 長官) 一つは、エヌシーエス證券というのがありますね。これは現在バンク・インド・スエズ・インク発行のCDに関わる取引について報告を求めて、更に詳細につき調査中です。これはまだ調査中ですので詳細は判明しておりません。更にこのエヌシーエス證券とクレアモントグループ関係会社との取引についても報告を求めているところでありまして、いずれにしても法令違反が認められれば、法令に則り監督上適切な措置を講じていかなければならないと考えているところです。

  • 問) 三洋投資信託は。

  • 長官) これは、今のところ特に何かございません。

  • 問) 大丈夫だということですか。顧客に影響を与えるようなことはないと。

  • 監督部長) いずれにしても、大正生命と違って三洋投信とかは現在ピンピンしている会社ですから、そういう個別の問題についてコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として当然顧客の保護に問題が生じるようなことがあれば、適切に対応する必要があるということです。

  • 問) 普通、常識的に考えたら、古倉さんというのがやっててね、その下の会社で逮捕されているんですよ。その隣の会社の話ですよ。それについて一般論とか言っている場合ではなくて、そういう問題を越えちゃっているわけですよ。三洋投信については顧客資産というのがあるわけですよね。これについて顧客資産として大丈夫だというのはチェックされたのですか。あるいはチェックしている途中なのですか。

  • 監督部長) 三洋投信は、我々が今まで調査した限りでは、三洋投信の顧客資産について問題があるということは承知しておりません。

  • 問) 先程仰ってたエヌシーエス證券ですが、こことどういう取引関係にあったか、あるいは当該大正生命の間では、どんな取引関係があったのでしょうか。CDの取扱いについての報告を求めていると先程仰ったわけですが、これはどこの証券会社を通じて販売・購入したということですか。

  • 監督部長) ですからCDについてはですね、私らが承知している限りではエヌシーエス證券を通じてCDのオファーがあったというふうに聞いてます。

  • 問) このCDというのは、その問題になっているCDですか。

  • 監督部長) そうです。

  • 問) そのCDなんですけれども、これは、なぜ不適切ということになったのですか。

  • 監督部長) 検察側にもありますけれども、真正というのは変ですけれども、バンク・インド・スエズ・インクそこのCDでないということははっきりしているんですよ、それではどこのあれだということが、そういうきちっとしたCDだということが証明できない、説明できないということなんです。

  • 問) 100億円の外国の社債というのは、同じようなものですか。

  • 監督部長) 同じような話ですね。

  • 問) どこの発行企業か判らないような…。

  • 監督部長) 発行企業はもちろん書いてあるのですけれども、それについてそこの確認よりも、香港上海銀行の保証が付いているということになったんですね。その保証がしっかりしていれば、もちろん償還にそんな問題はあるわけではないのですが、その保証が本当に付いているのかどうか、そこを公認会計士が確認できなかったので、適法意見を付けてもらえなかったということなんですね。

  • 問) 投信についてはどうなんですか。

  • 監督部長) 投信についても、説明を求めたわけですけれども、そういうきちっとしたものだという説明が大正生命側からなされなかったということです。

  • 問) 偽物の可能性が高いということですか。

  • 監督部長) 偽物というか外国投信ですから、存在するかも…、外国のですね、偽物というのは、さっきのように人の名前を使って、そこの奴が発行していないのが偽物でしょうけれども、要はどこまで価値があるかということを立証できない、証明できないということです。

  • 問) 外国というのはケイマンとか、ああいうところですか。

  • 監督部長) 本件は、会社から聞いているところで、そこもはっきりしないということなんですね。

  • 問) どこが発行しているかも判からないんですか。

  • 監督部長) 会社名は書いてありますから。会社型投信ですから、その投信の名前は判かるんです。

  • 問) 三件とも、エヌシーエス證券についてなのですか。

  • 監督部長) いや、そのうち二件がエヌシーエス證券を通じていたんだと思います。

  • 問) 二件とはどこですか。

  • 保険課長) エヌシーエス證券を通じているのは、バンク・インド・スエズの件です。

  • 問) 他はどうなんですか。

  • 保険課長) 外国社債の件は、古倉氏からの紹介ということです。

  • 問) 投信はどうなんですか。

  • 保険課長) 投信はですね、これは信託を設定しているわけですけれども、投資顧問業者によるものでこういった状況です。

  • 問) エヌシーエス証券は、CDが実際こういう性格のものだということを理解していなかったのですか。

  • 監督部長) 要は、これはクレアモントのグループといいますか、向こうの説明によりますと、大正生命の役員で入っておられる方がいて、取引が決まった後で、決まったところで証券会社が間に立てるということがよくあるのですけれども、そういうことで自分達が、エヌシーエス證券は中身については、関知していないというふうな説明をしています、我々の今までの調査によりますと。

  • 問) エヌシーエス證券側がそういうふうに説明しているということですね。

  • 監督部長) そういうことです。

  • 問) そうすると全然そういう故意がなかったと。

  • 監督部長) 向こうはそう言っています。我々は、まだ調査をしています。

  • 問) 投信というのは、どこの国のものですか。

  • 監督部長) それは、さっき申し上げたように、向こうの説明がきちっとしていないのでよく判らないわけです。それにはもちろん会社型投信ですから、会社の名前は書いてある。

  • 問) 社債は。

  • 監督部長) 社債はですね、ちょっと今承知していないのですけれども、いずれにしてもこの議論は、きちっとした然るべき香港上海銀行の保証が本当がどうかという部分について、ずーっとちょっと争われていたものですから、中身はおおよそ向こうがうまく説明できないということです。

  • 問) 今伺っているとですね、こんないい加減なものが260億円まで膨れ上がるまで、行政として打つ手は採ってなかったのでしょうか。

  • 監督部長) 要はさっきの…また、後でお配りしますけれども、その措置の状況・経緯を書いた紙をお配りしますけれども、いずれにしても最初の社債の話が問題になったのは、結局11年度の決算で、監査法人の適法意見がもらえないと、これが5月から6月にかけての話なのですけれども、それでその一件がその時点で判っていて、それについては、クレアモントが古倉さんの対応ですとかいう話になって、現実に一部借り主が担保に入っていると。その後、インド・スエズ・CDの件が判かったのは7月の後半です、下旬ですね。下旬に判って、それについても直ちにうちの方で、これは紙屑だというふうなアレもできませんし、いろいろ報告徴求し、これはなんだという説明も求めてきたんですね。結局最終的に8月24日期限の報告を求めたところ、正式な回答もないという状況だったもんですから、そこで業務停止を命じたということなんで、私どもはできる限り速やかにやったというふうに思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る