森金融庁長官記者会見の概要

(平成14年3月11日(月)17時01分~17時22分)

【質疑応答】

問)

長官の方から何かございますか。

答)

特にございません。

問)

先週末に第二地方銀行の中部銀行が破綻いたしました。当局としては柳澤大臣が、「ペイオフ解禁日の4月1日には、金融機関は全て健全で信頼されるようなものにする」というふうな方針を示されてきましたが、今回の中部銀行の破綻で、いわゆるペイオフ解禁に向けた金融機関の再編というのは一段落したとのご認識でいらっしゃいますでしょうか。

答)

柳澤大臣も「4月1日に店を開ける金融機関は全て健全でなければならない」と仰っておりますし、さらに先般発表されました「早急に取り組むべきデフレ対応策」の中にも、「ペイオフ実施後、金融機関の破綻により金融システムの安定性が損なわれることがないよう、それまでに、的確な検査・監督を通じ、金融機関の健全性を確保する。」ということが盛り込まれておりますことはご承知の通りかと思います。

これを受けまして当局としては、ペイオフ実施まであと20日ほどになりましたが、その間、各金融機関がそうした方向で最大限の経営改善努力というものを行っていくものと認識しております。

現時点で、早期是正措置を受けて経営の健全性を回復すべく増資の努力、あるいは強固な健全性を既に持っているところとの合併、そうしたことを計画中の金融機関も若干あるというふうに認識しておりますが、当庁としてはそうした取り組みがあと20日の間に実を結ぶことを強く期待しております。

問)

破綻した金融機関の暫定的な受皿の機能・役割を果たす承継銀行(ブリッジバンク)を今月の下旬を目処に設立されるということを先週発表されました。この承継銀行ですが、具体的に今月末までのペイオフ解禁前に活用されるようなケースというのは、現時点でどのような見通しにあるのかお聞かせください。

答)

見通しという意味では、何も見通しはございません。現時点、即ち3月11日現在で被管理金融機関が62機関ございまして、その内訳は銀行が2行、信用金庫が11金庫、信用組合が49組合ということになっていまして、ここの全てに金融整理管財人が送り込まれております。金融整理管財人の責務として、3月31日までに受皿を探すべく最大限の努力を行っておるわけでございますけれども、今日時点で、なお受皿が明確に定まっておらないところは2つの金融機関であるというふうに承知しております。

この2つの金融機関と言いますか、銀行ですか、明確に言えば石川銀行と先週末に破綻いたしました中部銀行の2つでございますけれども、これにつきましても金融整理管財人は3月末までにギリギリの受皿探しの努力を行うと思われますし、我々もそれを最大限支援していきたいと思っておりますので、今の時点で、「この銀行はとりあえずブリッジバンクだなあ」というような予断を持っている金融機関は一つもございません。

問)

最近、上場企業の再建スキームの発表、あるいは法的整理の発表とかが続いておりますけれども、このスピード感、3月末に向けて割と出ておりますが、このスピード感については満足されておりますでしょうか。

答)

かねがねこの席で申しましております通り、我々は大手銀行に対しまして、世の中で問題企業とされている企業のメインバンクであるならば、迅速にかつ市場で評価される処理の仕方で、当然それは再建型の処理、法的であれ私的であれ再建型の処理が優先されると思いますけれども、そういう形で行って欲しいと。

より具体的には、できる限りこの3月期決算に反映されるような形でやって欲しいということを強く要請しておりますけれども、具体的な再建策の中身につきましては、何遍もこの席で申しましたように我々は関与する立場ではございませんで、それは銀行の経営判断と借り手企業の経営判断によるというふうな立場に立っております。

そうした中で今のご質問に対しては、私は満足か満足ではないかという、そういうことに答える立場にはないと思うんですけれども、当局の要請について大手銀行も我が身のこととして懸命な努力をされておるということは感じております。

問)

内容と言いますか、結果の「質」についてなのですけれども、私的整理ガイドラインというのが去年の秋に出来たと思いますが、これが使われていないということに対してどう思われていますでしょうか。何か原因等は分析されていますでしょうか。

答)

去年の9月でしたか、私的整理ガイドラインが出来た時も我々は申しました通り、これは私的整理の唯一のガイドラインではないと。私的整理は必ずこのガイドラインでなければならないというわけではないと。それはその時の高木座長もそう仰っているわけでございまして、これは私的整理の一つのやり方だという認識を持っています。

私的整理ガイドラインについては、既に3号案件まで世の中に出ているわけでございまして、1号、2号、3号と、それはそれなりに私は着実に例が出てきているというふうに認識しております。

問)

受皿が決まっていないのは2機関ですか。

答)

正確に言えば、未処理の民族系の6信用組合が、私が先程言った2機関に加わるわけでございますけれども、これにつきましてはご承知の通り、新設受皿組合を設立の上、この6信用組合からの事業譲渡を受けるという構想が出来ているわけでございます。そして現在、その新設受皿組合、これは関東に1つ、関西に3つの合計4つでございますけれども、その設立認可に係る予備審査申請が現在なされており、各財務局におきまして設立認可に係る審査が行われているわけです。

その審査の視点としては、ご承知の通り当該民族系というか、もっと明確に言えば北朝鮮系の信用組合については、いろいろ世の中で問題にされている点があるわけでございまして、現在審査の中において二度とそうした問題が起きないような歯止めがきちんとかかっているかどうかというところに重点を置いた審査が行われているというふうに認識しております。

問)

資本注入行の債権放棄についてなのですけれども、これについては幾つかの条件に該当しないと、やはり認めないというのが基本的な考え方だと思うんですけれども、この審査というのはいつそういうものを見るのですか。

答)

これは前から、金融再生委員会当時からご説明してきたつもりでございますけれども、各資本注入行とも自行の経営健全化計画で債権放棄する際の方針というものを経営健全化計画の中に盛り込んでおります。そして経営健全化計画のレビューの際に、当方の方からその債権放棄についてきちんと、そうした自分のプレッジングと言いましょうか、経営健全化計画で定めた要件というものを満たした債権放棄を行っているかどうかということは当方からチェックをしております。従いまして、現在出ているものについては、経営健全化計画の審査時、これは3月の決算が出た後、夏にかけて行われるかと思うんですけれども、その際にチェックしていくということになろうかと思います。

問)

私的整理ガイドラインのことに戻りますが、理念としてはインソールの考え方があったと思うんですけれども、例えばダイエーの例でいくと主要3行だけでの話し合いになって、その下の地銀とかは全然手つかずと言いますか、何もせずに債務者の格付けが上がってしまうというか、落ちないというか、そういう事態になっていると思うのです。しかし、その辺は皆さん話し合う中で、ちゃんとしたルールというものをせっかく作ったんですから適用されてもしかるべきだと思うんですが、これは唯一の方法ではないと仰いますが、ガイドラインを作った時というのはこれでやっていこうということを考えられていたのではないですか。

答)

そこは、今仰られた記者の方と少し認識の差があると思うんですけれども、あそこで出来上がった私的整理のガイドラインというのは、相当ハードルの高いものだというふうに金融庁としては認識しております。即ち関係金融機関みんなが賛成しなければ前に進まないという、非常にハードルの高い私的整理ガイドラインという認識を持っております。もちろん、理想的に言えばどの私的整理についても、それにあって地銀も含めて関係金融機関がみんな話し合いの場に着いて、私的整理案に合意が迅速に進むという担保があるならば、どんどん私的整理ガイドラインが採られるんだろうと思うんです。しかし、それはケース・バイ・ケースの話であって、どれだけの時間的間隔を置いて話をまとめるかということとの兼ね合いの問題なんだろうと思うんですね。それはもう関係者間の、いわばある意味でメイン行の経営判断によるところが大きいのではないかと思うんです。ですから私が申し上げたのは、私的整理ガイドラインの意義を、少しも否定するつもりは毛頭ありませんで、やはり私的整理ガイドラインというものが一つの機軸だと思いますし、それによることが好ましいと思いますけれども、ケース・バイ・ケースの判断よっては、当該メインバンクの経営判断によって、もうちょっと迅速な処理という観点から、大宗は概ねは私的整理ガイドラインに乗りながらも、厳密には私的整理ガイドラインにはよらないというケースも出てくることは当初からやはり想定されていたのではないかなあというふうに思っております。

問)

障害になるものの一つとして、瑕疵担保特約を持っている銀行が混ざっている場合、これが障害になるという指摘があるのですが、それはどういうふうにお考えでしょうか。

答)

私はそういう認識は特に持っておりません。

理屈を言えば、債権放棄をみんなと一緒に迫られて、債権放棄をしてしまえば解除権行使ができなくなると判断するならば、解除権行使を優先すれば良いだけであって、解除権行使を優先されれば今度は預金保険機構が新たな債権者になるわけでございまして、それは債権者が変わるというだけであって、瑕疵担保そのものが何か私的整理ガイドラインによることのハザード、障害になっているというふうには私は認識しておりません。

問)

債務の株式化の場合も、資本注入行が債権放棄した場合の審査の対象になるんですか。

答)

厳密に言えば違うのではないでしょうか。

デッド・エクイティ・スワップに債権放棄的要素がないとは申しませんけれども、違う経済的効果とか要素もあるわけでございまして、再生委員会当時に定めた再生委員会の基本的考え方の中に入っている債権放棄にデッド・エクイティ・スワップが入っているかというと、当時私は事務局長としてその議論を見守っていた者として、承認と指針には、デッド・エクイティ・スワップがその時入っていたという認識はありませんでした。

問)

ゼネコンの再建スキーム等の作成の際、国土交通省とはどういう連携と言いますか、どういう連絡等を取り合ったのでしょうか。

答)

個々具体的なことはコメントを差し控えたいと思うんですけれども、きちんと連絡はとっております。とっておりますけれども、何と申しましょうか、再建計画の中身、あるいはその再編ということに関して言えば、先程も申しましたように当方からはもうそこは「国土交通省さんは監督官庁として良く見てください」ということのみであって、我々の方から「どういう再建策が良い」とか、「どういう再編をお願いします」とか、そういう立場には全くありません。つまり金融庁は中身については関与しないという立場を明確にしておりますので、まあどちらかというと、ひたすら国土交通省に「一つよろしくお願いします」ということが多いと思いますけれども。

問)

現時点では、その期待に応えてくれたと思われていますか。

答)

私は、それはそれなりに国土交通省も大変努力しておられる、また努力しておられる最中だというふうに思っております。

(以上)

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