五味金融庁長官記者会見の概要

(平成16年7月12日(月)17時02分~17時16分)

【質疑応答】

問)

構造改革の成果を訴えた自民党が改選議席割れをしました。この国民のメッセージについて長官としてはどのような感想をお持ちかということと、民間大臣として活躍してこられた大臣が当選されたことで、政治家大臣に対して期待されることはございますでしょうか。

答)

まず、選挙の結果については、国家公務員ですからこれを公の場でコメントすることは控えさせていただきます。それから、大臣の御当選ということですけれども、大臣は出馬を決意なさった後の6月18日の記者会見で何を訴えていくかということについて、「構造改革は本当に必要なのだ、どこまで今きているのか、今後更にそれを進めていかなくてはならない、そのために今パワーアップが必要なのだということを訴えていきたい」と会見で述べておられます。これは、この出馬の前からやってこられたことと、そしてこうした訴えをなさってその結果当選なさった後で大臣の方針に何ら変更があるわけではないということでありますから、大臣の御指導の下で金融システムの安定強化、或いは金融資本市場の更なる基盤整備、こういったことに向けた取組みを今まで同様、或いは今まで以上に促進して取り組んでいきたい、そのために大臣から色々御指導をいただきたいと思っております。

問)

8月1日施行の金融機能強化法について改めてお伺いします。先日の就任会見で、「使おうという経営者が出てきて当然ではないか」という趣旨のお考えを示されました。金融庁としては、この法律による資本注入の申請を積極的に金融機関に促していきたいというお考えなのか、それとも今景気回復が進んでいると言われてますし、金融機関の自助努力で申請がないならないでそれは評価すべきであると、あくまでも一つの制度として準備したわけですので、ないならないで、それはそれで評価できるとお考えか、どちらでしょうか。

答)

この法律が立案された趣旨と言いますか、これを申し上げますと、地域経済の活性化は、今非常に重要な状況にある、そうした状況の中で、地域における金融機能というのが十分な安心感をもって円滑に果たされているということが必要で、そのためには金融機関がリスク対応のために必要な、十分な体力を持つこと、或いは体力を高めることである。リスク対応というのは、企業再生でありますとか、不良債権を処理していくとか、こういったことへの対応という意味で体力を十分高めていく必要がある。これが課題である。従って、この課題を地域金融機関が、自分の努力で、自助努力で達成できる、将来的に持続可能な状況でこうした課題に対応し続けていくことができるというのであれば、それは最も望ましいことでありますし、おそらく多くの地域金融機関はそうだろうと思います。この法律で予定しているのは、この状況の中、現在の経済状況の中で見ますと、金融機関の自己資本を自力で調達をするということが必ずしも容易ではないという環境にあること、他方で不良債権問題というような問題には引続き注意をしていくことが必要な状況にあること、こうしたものを踏まえて公的なサポートというものがあったら万全の対応ができると、自助努力でもある程度はできるけれども、法的なサポートがあれば万全の対応ができるというところがあれば、そこに仕組みを提供できるようにしようということであります。ですから、課題をきちんと達成できるという前提であれば、自助努力も大いに結構。自助努力では限界があるということであれば、この仕組みを使って万全の体制をしいてもらうというのもこれまた結構という位置付けでございます。そういう意味で考えますと、合併・再編によって体力を高めたいというニーズというのは、これまでの合併・再編の歴史を見ても、恐らくこれは潜在的なニーズは相当にあるだろうという判断に至っているということであります。であるならば、この抜本的な組織再編の場合、比較的使い勝手よく、また資本参加する資本の量についても、従来の合併促進法、特措法とは違った位置付けがされている法津なので恐らく使い勝手も良いし、資本参加を求めるという銀行・金融機関も出てくるのではないかと思っています。

問)

それに関連して、よくオーバーバンキング、銀行の数が多すぎるというのは、色々な論評でよく言われるのですが、一般論として日本の金融機関の数が多すぎるとお考えですか。

答)

銀行の数とか、規模がどの程度であれば適切かというのは、一概に言える話ではないように思います。地域の具体的な事情もありますし、当然それに応じた貸出先の状況・相違というのもある。或いは、金融サービスに対するニーズというのも様々であるし、時代によって、時期によって変化もするということですので、一概になかなか言えないということだろうと思います。ただ、一般的に再編を行うということは、数を減らすためにということはちょっと置いておいて、合併・再編というのは、経営の強化という意味では有力な選択肢であることは間違いないだろうと。規模の経済、範囲の経済を発揮できるケースが多いわけで、そうであれば、経営効率は向上しますから、そういう意味で合併・再編というのは、経営安定のための有力な選択肢であろうと。結果として金融機関の数が減ると、効率も上がるということはあるでしょう。しかし、それは、オーバーバンキングだからそうなのかは一概には言えないと思います。

問)

今月下旬から、みずほ銀行のシステム完全統合というのが順次始まります。2年前に大混乱を起こしたシステム統合なのですが、今回、万全を期してシステムが統合されるために金融庁として、採られた対応、或いは採られる予定の対応等があれば教えてください。

答)

これは長くなりますが、お許しいただいて申し上げないといけないと思いますが、要するに2年前のシステム障害というところから物語が始まっているわけでございます。平成14年4月以降、その後のシステム統合に向けて当局がどういうことをしてきたかということを申し上げることになると思います。

最初に14年4月にみずほのシステム障害が発生しました時は、まず銀行法24条等で報告徴求をした、そして検査も実施をしたということで、事実関係を確認し、また改善策、対応策或いは経営責任の明確化、こういったようなことについても確認をしていったということがまずございました。これを踏まえまして同じ年の6月に業務改善命令を発している。この改善命令で求めましたのは、一つは24条報告に既に記載されております改善策、対応策、こういったものを確実に実行してくださいということ、それからもう一つは、その時点ではまだできていないけれども更に詳細な計画が必要であると、こういったようなものについては速やかに計画を策定して提出をしてくださいと、これを業務改善命令で命じたということがございます。その後、この提出をされました計画、翌7月に計画が提出されておりますけれども、この詳細計画、それから報告に記載されていた様々な改善策、こういったものの実施状況をその後3ヶ月ごとにフォローアップをしていくと、報告を受けてフォローアップをしていく、こういうやり方をずっと採ってきております。

これ以外の行政上の対応としては平成14年の8月以降、みずほの各拠点、これはみずほ銀行、みずほコーポレート銀行、それからみずほフィナンシャルグループとみずほホールディングス、これらに対して延べ10回、立入検査を実施したということでございます。それぞれの検査において、当然のことながら検査結果通知で問題点を指摘し、これに対する改善、対応策の報告をいただいて、この報告に基づきまして、システム統合リスクについてのフォローアップを行っているということでございます。これは検査に関連した対応でございます。

こういったようなことをずっと続けておりまして、今月を迎えているということでございまして、実際の移行までにまだ多少の時間があるわけでございますので、引続きその日に向けて、或いはその日を挟んでその後も厳正なフォローアップを続けるということで臨むということにしたいと考えております。

問)

それに関連してみずほの旧3CEOに役員退職慰労金を支給するしないという話で、支給するとか支給を見送るとかという報道があったのを御記憶かと思うのですけれども、結局この間の株主総会で「システム完全統合後に改めて検討したい」「前向きに検討したい」そういう趣旨の話をみずほの前田社長がされました。この旧3CEOへの退職慰労金の支給について長官はどうお考えになってますか。

答)

退職慰労金の支給という話ですから、これは経営判断の問題というふうに位置付けております。従って具体的にこのみずほグループの退職慰労金の支給についてコメントするということは差し控えさせていただきます。一般論で申しますならば、今申しましたように経営判断の問題ということでありますし、株主総会で御決めいただくという話ではありますけれども、公的資本増強行であるということがあるわけです。公的資本増強行として自らが置かれている状況は何なのかということは、これはよく考えて適切な対応をしていただく必要がある。すなわちステイクホルダーである国民に対してどのような説明ができるのか。或いは同じように14年4月のシステムトラブル以来、顧客対応等で大変な苦労をしているみずほの従業員の皆様に対してどういう説明ができるのか等、こうした説明が十分できるようなことであるのかどうかということを、経営判断としても、或いは株主総会としても、よく御議論をいただいた上で適切な対応をしていただくということであろうと思います。

問)

大臣が、「民間大臣から学者大臣」と御本人は仰っていましたけれども、そのバッジを付けた国会議員の大臣になるということで何か変わることとか、更に期待できることとか、あとメリット、デメリット等何かあれば教えてください。

答)

私は金融庁の事務方を統括する者としては、大臣が国会議員であってもなくても、大臣という立場の政治判断をなさる方に対してできるだけ多くの情報を収集した上で有効な選択肢を御示しをする。その上で必要があれば御議論もさせていただくし、御判断の助けになるのであれば御手伝いもすると、こういう姿勢で臨んでまいります。従って、大臣はもちろん今回の御当選で様々な抱負もお持ちでありましょうけれども、金融行政の実務の担当者としては、あくまで大臣の御指示、御指導というものに従って必要な仕事をしていくということに尽きます。

(以上)

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